JP2016216485A - フルオレン骨格を有するエピスルフィド化合物およびその硬化物 - Google Patents
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Abstract
【課題】高耐熱性や高屈折率などの優れた特性を有する硬化物を提供することのできる化合物の提供。【解決手段】式(1)で表されるエピスルフィド化合物。好ましくはZがナフタレン環であるエピスルフィド化合物。(環Zはナフタレン環等の縮合多環式芳香族炭化水素環;R1はH又は置換基;R2はアルキレン基;R3は置換基;kは0〜4の整数、mは1、nは0以上の整数である。)【選択図】なし
Description
本発明は、フルオレン骨格(詳細には、9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格)を有する新規なエピスルフィド化合物およびその硬化物に関する。
エポキシ樹脂は、種々の硬化剤で硬化させることにより、機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物を形成する。そのため、エポキシ樹脂は、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来、工業的に最も使用されているエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが知られているが、このようなエポキシ樹脂には、用途によっては、耐熱性が不十分な場合もあった。
一方、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有する化合物は、耐熱性において優れた機能を有することが知られており、このような化合物をエポキシ樹脂原料として用いることも知られている。
例えば、特許第3659533号公報(特許文献1)には、下記式(1)で表されるエポキシ樹脂が開示されている。
(式中、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Gはグリシジル基を表す。)
この文献のエポキシ樹脂は、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有する化合物の中でも、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)などを原料とするオキシエチレン単位を有するエポキシ化合物であるため、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンのようなフェノール性化合物由来のエポキシ化合物に比べると、低粘度であり、ハンドリング性に優れている。しかし、オキシエチレン単位の導入により、BPFGなどに比べて、耐熱性や屈折率などが低下する。
この文献のエポキシ樹脂は、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有する化合物の中でも、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)などを原料とするオキシエチレン単位を有するエポキシ化合物であるため、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンのようなフェノール性化合物由来のエポキシ化合物に比べると、低粘度であり、ハンドリング性に優れている。しかし、オキシエチレン単位の導入により、BPFGなどに比べて、耐熱性や屈折率などが低下する。
そのため、高耐熱性や高屈折率などの優れた機能を損なうことなく、優れたハンドリング性を有する材料の開発が望まれている。
なお、特開2001−181276号公報(特許文献2)には、下記式で表されるエピスルフィド化合物が開示されている。
(式中、Xは酸素原子又は硫黄原子を示し、少なくとも一つは硫黄原子である。また、R1〜R8は水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、同じであっても、異なってもよい)
この文献の実施例では、9,9−ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂を用いて、前記式において、Xがいずれも硫黄原子であり、R1〜R8がいずれも水素原子である芳香族エピスルフィルド化合物を得たこと、この芳香族エピスルフィド化合物と、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライドおよびS−フェニルチオアセテートとを混合した組成物を加熱し、25℃における屈折率が1.678の自己硬化物を得たことが記載されている。
この文献の実施例では、9,9−ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂を用いて、前記式において、Xがいずれも硫黄原子であり、R1〜R8がいずれも水素原子である芳香族エピスルフィルド化合物を得たこと、この芳香族エピスルフィド化合物と、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライドおよびS−フェニルチオアセテートとを混合した組成物を加熱し、25℃における屈折率が1.678の自己硬化物を得たことが記載されている。
上記式のエピスルフィド化合物は、前記のように、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンのようなフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物由来のエポキシ化合物をエピスルフィド化することにより得られる化合物であり、この文献ではオキシエチレン単位を有するフルオレン化合物由来のエポキシ化合物のエピスルフィド化を想定していない。また、上記のエピスルフィド化合物は、固体であり、溶融粘度も高いため、成形性やハンドリング性が十分でない。
従って、本発明の目的は、高耐熱性や高屈折率などの優れた特性と、優れたハンドリング性とを両立できるフルオレン骨格含有エピスルフィド化合物およびその硬化物を提供することにある。
本発明の他の目的は、硬化性に優れたフルオレン骨格含有エピスルフィド化合物およびその硬化物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、比較的低温であっても硬化可能なフルオレン骨格含有エピスルフィド化合物およびその硬化物を提供することにある。
本発明の別の目的は、高耐熱性や高屈折率などの優れた特性を有しつつ、優れた透明性を有する硬化物を形成可能なフルオレン骨格含有エピスルフィド化合物およびその硬化物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物の中でも、特に、9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレンなどのオキシアルキレン単位を有するエポキシ化合物をエピスルフィド化(又はチオエポキシ化又はエピチオ化)した化合物が、高耐熱性や高屈折率などの優れた特性と優れたハンドリング性とをバランスよく備えていること、また、このような新規なエピスルフィド化合物は、意外にも、硬化剤のみならず、特許文献2で想定しているような硬化触媒や開始剤さえも使用することなく、単独で硬化可能なほどに硬化性に優れ、比較的低温であっても硬化可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のエピスルフィド化合物(チオエポキシ化合物)は、下記式(1)で表される。
(式中、環Zは芳香族炭化水素環、R1は置換基、R2はアルキレン基、R3は置換基を示し、kは0〜4の整数、mは1以上の整数、nは0以上の整数である。)
上記式(1)において、Zは、例えば、ベンゼン環又はナフタレン環であってもよく、2つのmの合計は、例えば、2〜20程度であってもよい。また、前記式(1)において、2つのmの合計が2〜6又は7〜16であってもよい。
上記式(1)において、Zは、例えば、ベンゼン環又はナフタレン環であってもよく、2つのmの合計は、例えば、2〜20程度であってもよい。また、前記式(1)において、2つのmの合計が2〜6又は7〜16であってもよい。
前記エピスルフィド化合物は、単独で硬化可能であってもよい。
本発明には、前記エピスルフィド化合物で構成された硬化性成分が硬化した硬化物も含まれる。前記硬化性成分は、硬化剤および硬化促進剤を含まない硬化性成分であってもよい。前記硬化性成分は、さらに、エポキシ樹脂(特に、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂)で構成された他の硬化性樹脂を含んでいてもよい。
本発明の硬化物は、透明性に優れ、例えば、波長350nm、400nmおよび450nmにおける光線透過率が、いずれも90%以上であってもよい。
このような本発明の硬化物は、前記硬化性成分を加熱処理して硬化させることにより製造できる。特に、このような方法では、比較的低温(例えば、160℃以下)で加熱処理してもよい。
なお、本明細書において、化合物名などの「類」とは、「置換基を有さない」場合と「置換基を有する」場合とを含み、「置換基を有していてもよい」ことを意味する場合がある。
本発明の新規なエピスルフィド化合物は、優れた特性(高耐熱性、高屈折率、低弾性率など)を有しているにもかかわらず、優れた溶媒溶解性や低粘度などの特性を有しており、優れた特性と優れたハンドリング性とを両立できる。しかも、このようなエピスルフィド化合物は、硬化性に優れている。このことは、硬化剤や硬化触媒などを用いることなく、単独で硬化可能である点にも確認できる。そのため、単独で用いる場合はもちろんのこと、硬化触媒などを用いる場合であっても効率よく硬化可能であり、上記のような優れた特性を効率よく硬化物に付与できる。特に、本発明の新規なエピスルフィド化合物は、比較的低温であっても硬化(又は成形)可能である。なお、エピスルフィド化合物は、硫黄の近接効果などが作用するためか、高温において着色しやすい傾向がある。また、高温での硬化は、分解により硫化水素が発生する。これらの観点からも、硬化性や優れた機能(高屈折率など)を損なうことなく、比較的低温で硬化可能な(さらには硬化性に優れた)本発明のエピスルフィド化合物は、極めて有用性が高い。
さらに、本発明では、優れた硬化性や低温硬化可能であることなどにも関連して、高耐熱性、高屈折率、低弾性率などの優れた特性を有しつつ、優れた透明性を有する硬化物を形成できる。
さらにまた、本発明では、オキシアルキレン単位の量を調整することで、高屈折率、高耐熱性などの特性を有しつつ、所望の硬さの硬化物を得ることができる。そのため、本発明では、用途に応じて、硬質又は軟質の硬化物を得ることができ、粘着性を有する硬化物を得ることもできる。
[エピスルフィド化合物]
(式(1)で表されるエピスルフィド化合物)
本発明のエピスルフィド化合物は、下記式(1)で表される。
(式(1)で表されるエピスルフィド化合物)
本発明のエピスルフィド化合物は、下記式(1)で表される。
(式中、環Zは芳香族炭化水素環、R1は置換基、R2はアルキレン基、R3は置換基を示し、kは0〜4の整数、mは1以上の整数、nは0以上の整数である。)
上記式(1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、インデン環、ナフタレン環などのC8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式炭化水素環など]などが挙げられる。好ましい芳香族炭化水素環は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特に、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましい。なお、フルオレンの9位に置換する2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
上記式(1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、インデン環、ナフタレン環などのC8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式炭化水素環など]などが挙げられる。好ましい芳香族炭化水素環は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特に、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましい。なお、フルオレンの9位に置換する2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
なお、フルオレンの9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9位に置換するナフチル基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよく、特に2−ナフチル基であるのが好ましい。
また、前記式(1)において、基R1で表される置換基としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などの非反応性置換基(特に非エポキシ系置換基)が挙げられ、特に、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基(特にアルキル基)である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基R1は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基R1は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基R1の結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2および7位などが挙げられる。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(1)において、基R2で表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基、特にエチレン基が挙げられる。なお、mが2以上であるとき、アルキレン基は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、2つの基R2は同一であっても、異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
オキシアルキレン基(基OR2)の数(付加モル数)mは、1以上の整数であればよく、例えば、1〜25(例えば、1〜20)程度の範囲から選択でき、通常、1〜18、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜12(例えば、1〜10)、特に1〜8(例えば、1〜7)程度であってもよい。なお、2つのmは、同一又は異なっていてもよい。
また、式(1)において、2つのmの合計は、例えば、2〜30(例えば、2〜25)、好ましくは2〜20(例えば、2〜18)、さらに好ましくは2〜16(例えば、2〜14)であってもよい。
なお、2つのmの合計により、硬化物における硬さや粘度などが変化する。そのため、所望の特性に応じて、2つのmの合計を調整してもよい。例えば、式(1)において、2つのmの合計を比較的小さく(例えば、2〜6、好ましくは2〜5、さらに好ましくは2〜4、特に2〜3程度に)してもよい。このように2つのmの合計を小さくすると、高屈折率、高耐熱性で硬質の硬化物を得やすい。また、より一層硬化性に優れたエピスルフィド化合物を効率よく得ることができる。
一方、式(1)において、2つのmの合計を比較的大きく[例えば、6以上(例えば、6.5〜20)、好ましくは7〜18(例えば、7〜16)、さらに好ましくは8〜14(例えば、8.5〜12)、特に9〜12(例えば、9.5〜11.5)程度に]してもよい。このように2つのmの合計を大きくすると、比較的高い屈折率や耐熱性を有しつつ、軟質の又は柔軟性を有する硬化物を得やすく、粘着性(タック)を有する硬化物を得ることもできる。また、2つのmの合計を大きくすると、より一層低粘度でハンドリング性に優れたエピスルフィド化合物を得やすい。
なお、式(1)で表されるエピスルフィド化合物は、mの値が同一の化合物の集合体であってもよく、mの値が異なる化合物の集合体であってもよい。後者の場合、mの値および2つのmの合計は、平均値(相加平均又は算術平均)である。
環Zに置換する置換基R3としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−12アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−8シクロアルキル基、好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基などのC6−14アリール基、好ましくはC6−10アリール基、さらに好ましくはC6−8アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基などのC1−8アルコキシ基、好ましくはC1−6アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(C5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(C6−10アリールオキシ基など)などの基−OR4[式中、R4は炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基などのC1−8アルキルチオ基、好ましくはC1−6アルキルチオ基など)などの基−SR4(式中、R4は前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ヒドロキシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など)などの非エポキシ系置換基が挙げられる。
これらのうち、基R3は、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などであるのが好ましく、特に、好ましい基R3は、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−4アルキル基)]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)などである。
なお、同一の環Zにおいて、nが複数(2以上)である場合、基R3は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数nは、0〜8、好ましくは0〜6(例えば、1〜5)、さらに好ましくは0〜4、特に0〜2(例えば、0〜1)であってもよい。なお、2つの環Zにおいて、置換数nは、互いに同一又は異なっていてもよい。
なお、式(1)において、下記式
で表される基[チオエポキシ基含有基又はエピスルフィド基含有基]の置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な位置に置換していればよい。例えば、環Zがベンゼン環である場合、チオエポキシ基含有基は、3位又は4位、特に4位に置換していてもよい。また、環Zが縮合多環式芳香族炭化水素環である場合には、特に、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に置換していてもよく、代表的には、ナフタレン環のチオエポキシ基含有基とフルオレンの置換位置との組み合わせが、1,5位、又は2,6位である場合が多い。
代表的なエピスルフィド化合物には、下記式(1A)で表される化合物(式(1)において環Zがベンゼン環である化合物)、下記式(1B)で表される化合物(式(1)において環Zがナフタレン環である化合物)などが含まれる。
(式中、n1は0〜4の整数、n2およびn3はそれぞれ0〜3の整数を示し、R1、R2、R3、k、mは前記と同じ。)
代表的な前記式(1)で表されるエピスルフィド化合物には、9,9−ビス[(2,3−エピチオプロポキシ)(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン類(又は式(1A)で表される化合物)、9,9−ビス[(2,3−エピチオプロポキシ)(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレン類(式(1B)で表される化合物など)などが挙げられる。
代表的な前記式(1)で表されるエピスルフィド化合物には、9,9−ビス[(2,3−エピチオプロポキシ)(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン類(又は式(1A)で表される化合物)、9,9−ビス[(2,3−エピチオプロポキシ)(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレン類(式(1B)で表される化合物など)などが挙げられる。
9,9−ビス[(2,3−エピチオプロポキシ)(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス{4−[2−(2,3−エピチオプロポキシ)エトキシ]フェニル}フルオレン(又は9,9−ビス{4−[2−(2,3−チオエポキシプロポキシ)エトキシ]フェニル}フルオレン、以下同じ)などの9,9−ビス[2−(2,3−エピチオプロポキシ)C2−4アルコキシフェニル]フルオレン;9,9−ビス{4−[2−(2,3−エピチオプロポキシ)エトキシ]−3−メチルフェニル}フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(2,3−エピチオプロポキシ)エトキシ]−3,5−ジメチルフェニル}フルオレンなどの9,9−ビス[2−(2,3−エピチオプロポキシ)C2−4アルコキシ−アルキルフェニル]フルオレン;9,9−ビス{4−[2−(2,3−エピチオプロポキシ)エトキシ]−3−フェニルフェニル}フルオレンなどの9,9−ビス[2−(2,3−エピチオプロポキシ)C2−4アルコキシ−アリールフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[(2,3−エピチオプロポキシ)アルコキシフェニル]フルオレン類(式(1A)において、mが1である化合物)、これらの化合物に対応し、式(1A)において、2つのmの合計が2を超える化合物などが含まれる。
9,9−ビス[(2,3−エピチオプロポキシ)(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス{6−[2−(2,3−エピチオプロポキシ)エトキシ]−2−ナフチル}フルオレン、9,9−ビス{5−[2−(2,3−エピチオプロポキシ)エトキシ]−1−ナフチル}フルオレンなどの9,9−ビス[2−(2,3−エピチオプロポキシ)C2−4アルコキシナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス[(2,3−エピチオプロポキシ)アルコキシナフチル]フルオレン類(式(1B)において、mが1である化合物)、これらの化合物に対応し、式(1B)において、2つのmの合計が2を超える化合物などが含まれる。
(複合エピスルフィド化合物)
エピスルフィド化合物は、後述のように、通常、対応するエポキシ化合物(後述の式(A)で表される化合物)をエピスルフィド化することで得られるが、このようなエポキシ化合物には、エポキシ化合物の多量体(後述の式(B)で表される化合物)や、1つのエポキシ基を有する単官能性エポキシ化合物(後述の式(C)で表される化合物)が含まれる場合がある。製造条件や精製により、このような多量体や単官能性エポキシ化合物を含まないエポキシ化合物を得ることもできるが、このような多量体や単官能性のエポキシ化合物を含む複合エポキシ化合物(エポキシ組成物)を原料としてエピスルフィド化すると、前記式(1)で表されるエピスルフィド化合物に加えて、下記式(2)で表されるエピスルフィド化合物(多量体エポスルフィド化合物)や下記式(3)で表されるエピスルフィド化合物(単官能エピスルフィド化合物)を含む複合エピスルフィド化合物(エピスルフィド組成物)が得られる。
エピスルフィド化合物は、後述のように、通常、対応するエポキシ化合物(後述の式(A)で表される化合物)をエピスルフィド化することで得られるが、このようなエポキシ化合物には、エポキシ化合物の多量体(後述の式(B)で表される化合物)や、1つのエポキシ基を有する単官能性エポキシ化合物(後述の式(C)で表される化合物)が含まれる場合がある。製造条件や精製により、このような多量体や単官能性エポキシ化合物を含まないエポキシ化合物を得ることもできるが、このような多量体や単官能性のエポキシ化合物を含む複合エポキシ化合物(エポキシ組成物)を原料としてエピスルフィド化すると、前記式(1)で表されるエピスルフィド化合物に加えて、下記式(2)で表されるエピスルフィド化合物(多量体エポスルフィド化合物)や下記式(3)で表されるエピスルフィド化合物(単官能エピスルフィド化合物)を含む複合エピスルフィド化合物(エピスルフィド組成物)が得られる。
このような多量体エピスルフィド化合物や単官能性エピスルフィド化合物は、硬化性や硬化物の物性などを低下させる虞があるため、多量に含まれることは好ましくないが、ハンドリング性の向上などの観点から微量であればむしろ含まれている方が好ましい場合もある。そのため、エピスルフィド化合物は、前記式(1)で表されるエピスルフィド化合物と、式(2)で表されるエピスルフィド化合物(多量体化合物)及び/又は式(3)で表されるエピスルフィド化合物(単官能エピスルフィド化合物)とを含む複合エピスルフィド化合物(エピスルフィド組成物)であってもよい。
(式中、pは1以上の整数を示し、Z、R1、R2、R3、k、m、nは前記と同じ。)
上記式(2)において、nは、例えば、1〜10、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3、特に1〜2程度であってもよい。通常、式(2)で表される化合物は、式(2)において、nが1である化合物を少なくとも含んでいる。式(2)で表される化合物全体に対して、式(2)においてnが1である化合物の割合は、例えば、40%以上(例えば、45〜100%)、好ましくは50%以上(例えば、55〜99%)、さらに好ましくは60%以上(例えば、65〜97%)、特に70%以上(例えば、75〜95%)であってもよい。
上記式(2)において、nは、例えば、1〜10、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3、特に1〜2程度であってもよい。通常、式(2)で表される化合物は、式(2)において、nが1である化合物を少なくとも含んでいる。式(2)で表される化合物全体に対して、式(2)においてnが1である化合物の割合は、例えば、40%以上(例えば、45〜100%)、好ましくは50%以上(例えば、55〜99%)、さらに好ましくは60%以上(例えば、65〜97%)、特に70%以上(例えば、75〜95%)であってもよい。
複合エピスルフィド化合物において、式(1)で表されるエピスルフィド化合物の割合は、用途などに応じて複合エピスルフィド化合物全体の50%以上(例えば、50〜99%)の範囲から選択でき、例えば、55%以上(例えば、55〜98%)、好ましくは60%以上(例えば、60〜97%)、さらに好ましくは65%以上(例えば、65〜96%)、特に70%以上(例えば、70〜95%)、特に好ましくは75%以上(例えば、75〜94%)、通常80%以上(例えば、80〜95%、好ましくは85〜93%)であってもよい。
複合エピスルフィド化合物において、式(2)で表される化合物の割合は、複合エピスルフィド化合物全体の50%以下(例えば、1〜45%)、好ましくは40%以下(例えば、2〜35%)、さらに好ましくは30%以下(例えば、3〜25%)であってもよい。
複合エピスルフィド化合物において、式(3)で表される化合物の割合は、複合エピスルフィド化合物全体の30%以下(例えば、0.5〜25%)、好ましくは25%以下(例えば、1〜22%)、さらに好ましくは20%以下(例えば、2〜18%)であってもよい。
また、複合エピスルフィド化合物において、式(2)で表される化合物および式(3)で表される化合物の総量の割合は、複合エピスルフィド化合物全体の50%以下(例えば、1〜45%)、好ましくは40%以下(例えば、3〜35%)、さらに好ましくは30%以下(例えば、5〜25%)であってもよく、通常3〜20%(例えば、5〜15%)程度であってもよい。
なお、複合エピスルフィド化合物において、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との割合は、例えば、前者/後者=99/1〜1/99(例えば、97/3〜10/90)、好ましくは95/5〜15/85(例えば、93/7〜20/80)、さらに好ましくは90/10〜30/70(例えば、85/15〜40/60)程度であってもよい。
なお、複合エピスルフィド化合物において、式(1)〜(3)で表される化合物の上記割合は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による純度(面積比、面積%)を測定することにより求めることができる。
なお、複合エピスルフィド化合物において、式(2)で表される化合物や式(3)で表される化合物の割合は、原料となるエポキシ化合物の製造条件などにより容易に調整することができる。また、式(2)で表される化合物や式(3)で表される化合物を別途調製し、式(1)で表される化合物と混合して複合エピスルフィド化合物を調製することもできる。
なお、複合エピスルフィド化合物は、少量であれば、完全にエピスルフィド化が進行しなかった化合物(片末端エピスルフィド化合物)、例えば、前記式(1)や前記式(2)において、一方の硫黄原子が酸素原子である化合物などを含んでいてもよい。
ただし、このような化合物の割合が大きすぎると、所望の特性が得られなくなる場合があるため、複合エピスルフィド化合物中の割合は少量であるのが好ましい。なお、このような片末端エピスルフィド化合物の割合は、エピスルフィド化の反応条件の選択などにより容易に調整可能である。
(製造方法)
式(1)で表されるエピスルフィド化合物は、例えば、下記式(A)で表されるエポキシ化合物をエピスルフィド化することにより製造できる。
式(1)で表されるエピスルフィド化合物は、例えば、下記式(A)で表されるエポキシ化合物をエピスルフィド化することにより製造できる。
(式中、Z、R1、R2、R3、k、m、nは前記と同じ。)
式(A)で表されるエポキシ化合物は、市販品を用いてもよく、慣用の方法(例えば、下記式で表される化合物と、エピクロロヒドリンとを反応させる方法など)により製造したものを用いてもよい。
式(A)で表されるエポキシ化合物は、市販品を用いてもよく、慣用の方法(例えば、下記式で表される化合物と、エピクロロヒドリンとを反応させる方法など)により製造したものを用いてもよい。
(式中、Z、R1、R2、R3、k、m、nは前記と同じ。)
なお、式(A)で表される化合物は、特開2009−155256号公報などを参照して製造することもできる。
なお、式(A)で表される化合物は、特開2009−155256号公報などを参照して製造することもできる。
なお、上記のようにして製造する場合、式(A)で表されるエポキシ化合物の他に、式(A)で表されるエポキシ化合物の多量体(下記式(B)で表される化合物)や、単官能性のエポキシ化合物(下記式(C)で表される化合物)が生成する場合がある。
(式中、Z、R1、R2、R3、k、m、n、pは前記と同じ。)
そして、式(A)で表されるエポキシ化合物と、上記式(B)で表される多量体エポキシ化合物や、式(C)で表される単官能性エポキシ化合物を含むエポキシ組成物(複合エポキシ化合物)をエピスルフィド化すると、前記のような複合エピスルフィド化合物が得られる。
そして、式(A)で表されるエポキシ化合物と、上記式(B)で表される多量体エポキシ化合物や、式(C)で表される単官能性エポキシ化合物を含むエポキシ組成物(複合エポキシ化合物)をエピスルフィド化すると、前記のような複合エピスルフィド化合物が得られる。
式(2)で表されるエポキシ化合物をエピスルフィド化する方法としては、特に限定されないが、代表的には、式(2)で表されるエポキシ化合物と硫黄含有化合物(チオ尿素、チオシアン酸)とを反応させる方法が挙げられる。
硫黄含有化合物としては、エピスルフィド化可能であれば特に限定されず、例えば、チオ尿素、チオシアン酸又はその塩などが挙げられる。硫黄含有化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。代表的には、チオ尿素を使用してもよい。
なお、硫黄含有化合物の割合は、エポキシ基の割合に応じて選択でき、式(A)で表されるエポキシ化合物(又は複合エポキシ化合物)1モルに対して、例えば、2モル以上(例えば、2.1〜30モル)、好ましくは2.5〜20モル、さらに好ましくは3〜15モル(例えば、3〜10モル)程度であってもよい。
なお、反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、アルコール類(エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類など)、炭化水素類(ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルムなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、セロソルブ類、カルビトール類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、グリコールエーテルエステル類(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)などの有機溶媒が挙げられる。溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用できる。
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択できる。反応温度は、例えば、30〜120℃、好ましくは35〜100℃、さらに好ましくは40〜70℃程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜100時間、通常、1〜80時間、好ましくは2〜60時間程度であってもよい。
反応は、還流しながら行ってもよく、副生成分を除去しながら行ってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧、加圧下又は減圧下で行ってもよい。
なお、生成した化合物(前記式(1)で表されるエピスルフィド化合物又は複合エピスルフィド化合物)は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
[硬化物]
本発明の硬化物は、前記エピスルフィド化合物(複合エピスルフィド化合物を含む)で構成された硬化性成分の硬化により形成されている。特に、本発明のエピスルフィド化合物は、硬化性に優れているため、単独硬化可能である。そのため、硬化性成分は、硬化剤や硬化触媒を含んでいなくても、硬化物を形成できる。
本発明の硬化物は、前記エピスルフィド化合物(複合エピスルフィド化合物を含む)で構成された硬化性成分の硬化により形成されている。特に、本発明のエピスルフィド化合物は、硬化性に優れているため、単独硬化可能である。そのため、硬化性成分は、硬化剤や硬化触媒を含んでいなくても、硬化物を形成できる。
硬化性成分を構成する硬化性樹脂(硬化性樹脂成分)は、前記のように単独硬化可能であるため、エピスルフィド化合物のみで構成してもよく、用途や所望の特性に応じて、エピスルフィド化合物と他の硬化性樹脂とで構成してもよい。
他の硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂など)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール(又はクレゾール)ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂(トリフェノールメタン型エポキシ樹脂など)、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂(キサンテン単位を含むエポキシ樹脂を含む)、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂(1,6−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、ビス(2,7−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン)アルカンなどのナフタレン環含有エポキシ樹脂など)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
エポキシ樹脂と混合することで、硬化剤との反応性を改善又は向上できる。そのため、酸無水物系硬化剤などを含む広範な硬化剤が使用可能となる。
特に、エポキシ樹脂は、少なくともフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂で構成してもよい。フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂は、共通するフルオレン骨格を有しているためか、エピスルフィド化合物との親和性に優れ、また、屈折率、耐熱性などの特性を保持しやすく、好適である。また、エピスルフィド化合物は前記のように硬化性に優れているため、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂と混合することで、保存安定性を向上させつつ、エピスルフィド化合物由来の特性を保持できる。さらに、硬化温度を効率よく下げることもできる。
フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば、下記式(D)で表される化合物などが含まれる。
(式中、m1は0又は1以上の整数を示し、Z、R1、R2、R3、k、nは前記と同じ。)
上記式(D)において、m1は、0又は1以上の整数であればよく、1以上である場合、前記式(1)におけるmと同様の範囲から選択できる。2つのm1の合計も、m1が1以上の場合には、前記と同様である。特に、m1は、mと同様に1以上であってもよい。硬化物に柔軟性などが要求される場合には、mが1以上のエポキシ樹脂を好適に用いてもよい。また、エピスルフィドの原料となる式(A)で表されるエポキシ化合物を好適に用いてもよい。
上記式(D)において、m1は、0又は1以上の整数であればよく、1以上である場合、前記式(1)におけるmと同様の範囲から選択できる。2つのm1の合計も、m1が1以上の場合には、前記と同様である。特に、m1は、mと同様に1以上であってもよい。硬化物に柔軟性などが要求される場合には、mが1以上のエポキシ樹脂を好適に用いてもよい。また、エピスルフィドの原料となる式(A)で表されるエポキシ化合物を好適に用いてもよい。
エピスルフィド化合物と他の硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)とを組み合わせる場合、これらの割合は、ハンドリング性、硬化性、所望の特性などを考慮して選択できるが、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜1/99(例えば、98/2〜2/98)程度の範囲から選択でき、97/3〜3/97、好ましくは96/4〜4/96、さらに好ましくは95/5〜5/95(例えば、93/7〜7/93)、特に90/10〜10/90程度であってもよい。
このような他の硬化性樹脂の割合は、所望の要求性能(屈折率、耐熱性、柔軟性、保存安定性、硬化性など)などに応じて、比較的小さく又は大きくしてもよい。比較的小さくする場合、エピスルフィド化合物と他の硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜40/60(例えば、98/2〜45/55)、好ましくは97/3〜50/50、さらに好ましくは96/4〜55/45、さらに好ましくは95/5〜60/40(例えば、90/10〜65/35)程度であってもよい。
一方、比較的小さくする場合、エピスルフィド化合物と他の硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=50/50〜1/99(例えば、45/55〜2/98)、好ましくは40/60〜3/97(例えば、35/65〜5/95)、さらに好ましくは30/70〜7/93(例えば、25/75〜10/90)程度であってもよい。
硬化性成分は、硬化剤を含んでいてもよい。前記のように、本発明のエピスルフィド化合物は、単独硬化可能であるが、硬化性を促進したり、前記のように他の硬化性樹脂(エポキシ樹脂)を含む場合などにおいて、硬化剤を含んでいてもよい。
硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤[特に、第1級アミン、例えば、鎖状脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの鎖状脂肪族ポリアミン類)など、環状脂肪族アミン(例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどの単環式脂肪族ポリアミン;ノルボルナンジアミンなどの架橋環式ポリアミンなど)、芳香脂肪族ポリアミン(例えば、キシリレンジアミンなど)、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど)など]、ポリアミノアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤(例えば、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族系酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの脂環族系酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などの芳香族系酸無水物)、フェノール系硬化剤{例えば、フェノール樹脂(フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック樹脂など);フルオレン骨格を有するフェノール類[例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど)、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン)、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン)などの9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類など]などのフェノール化合物}などが挙げられる。これらの硬化剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、硬化性成分が硬化性樹脂としてエピスルフィド化合物のみを含む場合や、エピスルフィド化合物の割合が多い場合などにおいては、酸無水物系硬化剤などでは硬化が促進されない(硬化剤として作用しないか又は作用しにくい)場合がある。このような場合には、アミン系硬化剤などのエピスルフィド化合物の硬化剤を好適に使用できる。なお、硬化剤は、用途に応じて選択でき、例えば、半導体や構造材料用途ではフェノール系硬化剤など、接着剤用途などではアミン系硬化剤など、透明材料用途などでは酸無水物系硬化剤などを好適に使用してもよい。本発明では、前記のように、エポキシ樹脂(特に、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂)などと組み合わせることで、酸無水物系硬化剤などを含む幅広い硬化剤を使用可能である。
硬化性成分において、硬化剤の割合は、エピスルフィド化合物におけるエピスルフィド基の割合や他の硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂におけるエポキシ基の割合などに応じて選択できる。例えば、硬化剤の割合は、硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜1000重量部、好ましくは0.5〜500重量部、さらに好ましくは1〜300重量部程度であってもよい。
硬化性成分は、さらに、硬化促進剤を含んでいてもよい。前記のように、本発明のエピスルフィド化合物は、単独硬化可能であるが、硬化性を促進したり、前記のように他の硬化性樹脂(エポキシ樹脂)を含む場合などにおいて、硬化促進剤を含んでいてもよい。また、硬化剤として酸無水物系硬化剤を使用する場合には、好適に硬化促進剤を含んでいてもよい。
硬化促進剤(又は硬化触媒又は開始剤)としては、硬化剤の種類などに応じて選択でき、例えば、アミン類[例えば、第3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−1など)、イミダゾール類(例えば、2−メチルイミダゾールなどのアルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾールなどのアリールイミダゾールなど)およびその誘導体(例えば、フェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩などの塩)など]、第4級アンモニウム塩[例えば、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライドなどの前記第3級アミンに対応する第4級アンモニウム塩など]、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシド、ホスフィン類(トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィンなど)、アミド化合物(ダイマー酸ポリアミドなど)、ルイス酸錯体化合物(3フッ化ホウ素・エチルアミン錯体など)、硫黄化合物[例えば、ポリサルファイド、メルカプタン化合物(、例えば、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸エステル、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)など)、チオエステル化合物(例えば、S−フェニルチオアセテートなど)など]、ホウ素化合物(フェニルジクロロボランなど)、縮合性有機金属化合物(有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物など)などが挙げられる。硬化促進剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
硬化性成分において、硬化促進剤の割合は、その種類にもよるが、例えば、硬化性樹脂100重量部に対して、0.001〜50重量部、好ましくは0.005〜30重量部、さらに好ましくは0.01〜10重量部程度であってもよい。
なお、硬化性成分(又は硬化性組成物)は、必要に応じて、希釈剤(単官能性エポキシ化合物などの反応性希釈剤など)の他、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤などを含んでいてもよい。希釈剤や添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
硬化物は、前記硬化性成分を反応させる(硬化処理する)ことにより得ることができる。このような硬化処理は、硬化物の形状に応じて、硬化性成分を成形しつつ又は成形(又は予備成形)した後、行ってもよい。なお、硬化物の形状としては、三次元的硬化物、硬化膜や硬化パターンなどの一次元又は二次元的硬化物、点又はドット状硬化物などが挙げられる。具体的には、前記成形体は、前記硬化性成分の硬化物で形成された所望の形状の製品、基材上に形成された前記硬化性成分の硬化物で形成された硬化膜(塗膜)などであってもよい。例えば、前記硬化性成分を、加熱溶融し、所定の型に流し込んで加熱することにより硬化し、所望の形状の成形体を得ることができる。また、硬化膜は、液状の硬化性成分を、基材上に塗布し、乾燥し、次いで加熱することにより、基材上に形成することができる。なお、硬化成分を溶媒に溶解又は分散し、液状の硬化性成分を得てもよい。成形方法および硬化条件は特に限定されないが、例えば、所定の金型を用いて成形する場合には、加熱加圧による成形法やコールドプレスと呼ばれる低温成形法が用いられる。
硬化処理は、加熱などにより行うことができ、これらを組み合わせて行ってもよい。通常、少なくとも加熱により硬化処理を行う場合が多い。
硬化処理において、加熱温度としては、例えば、50〜250℃、好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは70〜180℃(例えば、80〜170℃)、さらに好ましくは90〜150℃程度であってもよく、160℃以下[例えば、60〜155℃、好ましくは150℃以下(例えば、70〜145℃)、好ましくは140℃以下(例えば、90〜135℃)]であってもよい。本発明のエピスルフィド化合物は、硬化性に優れており、単独硬化させる場合であっても、比較的低温で硬化可能である。
また、加熱時間(硬化処理時間)は、例えば、10分〜24時間、好ましくは30分〜18時間、さらに好ましくは1〜12時間(例えば、2〜8時間)程度であってもよい。なお、硬化による内部応力を緩和するため、硬化処理は段階的に行ってもよく、例えば、比較的低温で加熱処理したのち、より高温で加熱処理してもよい。
なお、硬化処理(加熱処理)は、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。不活性ガス中で行うことで、硬化物の着色を効率よく抑制できる場合がある。また、硬化処理は、常圧下又は加圧下で行ってもよい。
また、硬化物を膜状(フィルム状、薄膜状)に形成する場合には、硬化性成分を、基板(又は基体)に塗布することにより形成してもよい。基板は、例えば、樹脂、ガラス、セラミックなどの絶縁性基板、結晶シリコンやアモルファスシリコンなどの半導体基板、金属などの導体基板、これらの基板上に導体層を形成したもの、さらにはこれらを複合したものなどが挙げられる。
基板に塗膜(薄膜)を形成する塗布法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法、スリットコーティング法、グラビアコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。
塗膜(又は硬化物)の厚みは、硬化物の用途に応じて、例えば、0.01μm〜10mm、好ましくは0.05μm〜1mm、さらに好ましくは0.1〜100μm程度であってもよい。本発明では、比較的厚みの大きい[例えば、1μm以上(例えば、5〜1000μm)、好ましくは10μm以上(例えば、15〜800μm)、さらに好ましくは20μm以上(例えば、30〜500μm)の]硬化物を得ることもできる。
基板に塗布した硬化性成分は、必要に応じて、乾燥処理を行ってもよい。乾燥処理は、公知の方法を用いて行うことができる。乾燥処理は、例えば、常圧下、加圧下または減圧下において行ってもよく、加熱手段(ホットプレート、オーブンなど)により加温して行ってもよい。加温時の温度は、使用する溶媒や乾燥方法によっても異なるが、通常、40〜200℃、好ましくは50〜170℃、さらに好ましくは60〜150℃程度であってもよい。
基板に塗布された塗膜は、上記のように、必要に応じて乾燥処理されたのち、通常、硬化処理される。硬化処理において、加熱温度や加熱時間は、前記と同様の範囲から選択できる。
本発明の硬化物は、高屈折率、高耐熱性などの特性を有している。また、透明性に優れ、例えば、波長350nm、400nmおよび450nmにおける光線透過率が、いずれも80%以上(例えば、82〜100%)、好ましくは85%以上(例えば、88〜99.9%)、さらに好ましくは90%以上(例えば、92〜99.5%)の硬化物を得ることもできる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、各種特性の測定や評価は以下の方法によって行った。
(GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ))
東ソー(株)製、HLC−8320GPCを用い、試料をテトラヒドロフランに溶解させ、流量1.0mL/分、注入量100μL、温度40℃で測定した。
東ソー(株)製、HLC−8320GPCを用い、試料をテトラヒドロフランに溶解させ、流量1.0mL/分、注入量100μL、温度40℃で測定した。
(HPLC)
日立製 L−2000を用い、試料の希釈倍率2000倍(アセトニトリル)、温度30℃、波長254nm、流量0.5mL/分の条件下、水/アセトニトリル(重量比)=30/70で30分、その後、水/アセトニトリル(重量比)=0/100で30分測定した。
日立製 L−2000を用い、試料の希釈倍率2000倍(アセトニトリル)、温度30℃、波長254nm、流量0.5mL/分の条件下、水/アセトニトリル(重量比)=30/70で30分、その後、水/アセトニトリル(重量比)=0/100で30分測定した。
(屈折率)
多波長アッベ屈折計「DR−M2/1550」(株式会社アタゴ製)を用い、光源波長589nm、測定温度25℃で測定した。
多波長アッベ屈折計「DR−M2/1550」(株式会社アタゴ製)を用い、光源波長589nm、測定温度25℃で測定した。
(光線透過率)
分光光度計「U3000」(日立ハイテク株式会社製)を用い、300〜800nmの波長で測定した。
分光光度計「U3000」(日立ハイテク株式会社製)を用い、300〜800nmの波長で測定した。
(実施例1)
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、以下、BPEFという)42g(0.096モル)をクロロメチルオキシラン(特級、キシダ化学(株)製)88g(0.96モル)に溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(特級、関東化学(株)製)2.0gを加え、60℃にて1時間攪拌した。次に、減圧下(650mmHg)、45℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液30gを1.5時間かけて滴下した。その間、生成する水をクロロメチルオキシランとの共沸により系外に除き、留出したクロロメチルオキシランは系内に戻した。滴下終了後、さらに3時間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、クロロメチルオキシランを留去して粘性液体を得た。得られた粘性液体をHPLCおよびGPCにて分析した結果、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン[又は9,9−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、BPF−2EOGという]を主として含むエポキシ化合物(エポキシ樹脂)であることを確認した。
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、以下、BPEFという)42g(0.096モル)をクロロメチルオキシラン(特級、キシダ化学(株)製)88g(0.96モル)に溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(特級、関東化学(株)製)2.0gを加え、60℃にて1時間攪拌した。次に、減圧下(650mmHg)、45℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液30gを1.5時間かけて滴下した。その間、生成する水をクロロメチルオキシランとの共沸により系外に除き、留出したクロロメチルオキシランは系内に戻した。滴下終了後、さらに3時間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、クロロメチルオキシランを留去して粘性液体を得た。得られた粘性液体をHPLCおよびGPCにて分析した結果、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン[又は9,9−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、BPF−2EOGという]を主として含むエポキシ化合物(エポキシ樹脂)であることを確認した。
得られた粘性液体60.46重量部およびテトラヒドロフラン(THF、ナカライテスク社製)567重量部を添加し、溶解させた。
また、別の1Lのフラスコにチオ尿素(ナカライテスク製)29.27重量部(385mmol)およびメタノール462重量部を添加し、チオ尿素のメタノール溶液を得た。
2Lのフラスコに滴下ロートを取り付け、チオ尿素のメタノール溶液を入れ、室温にて0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、40〜54℃に加熱して44時間反応させた。反応の進行は、HPLC分析により確認し、BPF−2EOGに対応するピークが消失するまで反応を行った。その後、室温に戻した反応液をロータリーエバポレーターで約100gまで濃縮し、蒸留水400mLを投入した後、酢酸エチルにて抽出(400mLおよび200mLでそれぞれ一回抽出)し、ブライン洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。
その後、溶媒を留去し、粘性液体(66.39重量部)を得た。なお、粘性液体には、酢酸エチルが5.3重量%残っており、固形分の収率は99.1重量%であった。得られた粘性液体をHPLC、GPC、FT−IRおよびNMRにて分析した結果、9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンのエピスルフィド化合物(下記式で表される化合物)を主として含む粘性液体であることを確認した。なお、純度はHPLCによる面積比で求めた。
1H−NMR:δ(ppm)=7.7(d,2H)、7.2−7.4(m,6H)、7.1(d,4H)6.8(d,4H)、4.1(dd,2H)、3.8(dd,2H)、3.7(dd,2H)、3.5(dd、2H)、3.1(q、2H)、2.5(dd,2H)、2.2(dd,2H)
さらに、得られたエピスルフィド化合物の屈折率(25℃、589nm)は、1.6262であった。
さらに、得られたエピスルフィド化合物の屈折率(25℃、589nm)は、1.6262であった。
(実施例2)
実施例1で得たエピスルフィド化合物を、硬化剤や硬化触媒(硬化促進剤)を用いることなく、以下のようにして単独で硬化させた。
実施例1で得たエピスルフィド化合物を、硬化剤や硬化触媒(硬化促進剤)を用いることなく、以下のようにして単独で硬化させた。
まず、実施例1で得られた粘性液体を酢酸エチルに溶解した。得られた30重量%の酢酸エチル溶液を、スライドガラスに厚み約60μmでバーコーティングし、60℃で24時間乾燥させた。その後、130℃で2時間加熱し、厚み43μmの無色透明の硬化物のフィルムを得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、フィルムの触感は硬かった。また、フィルムの屈折率(25℃、589nm)は、1.6487であった。さらに、厚み100μm換算のフィルムの透過率は、350nmで94.3%、400nmで97.1%、450nmで97.7%であり、高い透明性を有していた。
(実施例3)
実施例2において、厚み約80μmでバーコーティングし、加熱を段階的に(130℃で2時間、150℃で2時間の順に加熱)行ったこと以外は、実施例2と同様にして、厚み61μmの無色透明の硬化物のフィルムを得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、フィルムの触感は硬かった。
実施例2において、厚み約80μmでバーコーティングし、加熱を段階的に(130℃で2時間、150℃で2時間の順に加熱)行ったこと以外は、実施例2と同様にして、厚み61μmの無色透明の硬化物のフィルムを得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、フィルムの触感は硬かった。
(実施例4)
実施例2において、バーコーティングに代えて、厚み約80μmでスピンコーティング(3000rpm、3秒)したこと以外は、実施例2と同様にして、厚み68μmの無色透明の硬化物のフィルムを得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、フィルムの触感は硬かった。
実施例2において、バーコーティングに代えて、厚み約80μmでスピンコーティング(3000rpm、3秒)したこと以外は、実施例2と同様にして、厚み68μmの無色透明の硬化物のフィルムを得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、フィルムの触感は硬かった。
(実施例5)
実施例2において、バーコーティングに代えて、厚み約90μmでスピンコーティング(3000rpm、3秒)し、加熱を段階的に(130℃で2時間、150℃で2時間の順に加熱)行ったこと以外は、実施例2と同様にして、厚み74μmの無色透明の硬化物のフィルムを得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、フィルムの触感は硬かった。
実施例2において、バーコーティングに代えて、厚み約90μmでスピンコーティング(3000rpm、3秒)し、加熱を段階的に(130℃で2時間、150℃で2時間の順に加熱)行ったこと以外は、実施例2と同様にして、厚み74μmの無色透明の硬化物のフィルムを得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、フィルムの触感は硬かった。
(実施例6)
実施例2において、実施例1で得た粘性液体(エピスルフィド化合物)を酢酸エチルに溶解させることなく金型に入れ、段階的に加熱(80℃で24時間、100℃で24時間、120℃で18時間の順に加熱)したこと以外は、実施例2と同様にして、透明の単独硬化物(33mm角、厚み4.1mm)を得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、硬化物の触感は硬かった。
実施例2において、実施例1で得た粘性液体(エピスルフィド化合物)を酢酸エチルに溶解させることなく金型に入れ、段階的に加熱(80℃で24時間、100℃で24時間、120℃で18時間の順に加熱)したこと以外は、実施例2と同様にして、透明の単独硬化物(33mm角、厚み4.1mm)を得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、硬化物の触感は硬かった。
(比較例1、実施例7〜12)
アルミカップにBPF−2EOGを測りとり、80℃に設定したホットプレート上で完全に溶解させた。続いて、実施例1で得られた粘性液体を加え、80℃に設定したホットプレート上で均一になるまで攪拌した。その後、硬化剤として4,4−ジアミノジフェニルメタン(DDM)を加え、80℃に設定したホットプレート上で均一になるまで再度攪拌した。この混合物を80℃減圧下で15分加熱した後、100℃で2時間、120℃で2時間、140℃で2時間、160℃で2時間の順に段階的に加熱して硬化させた。昇温速度は2℃/分とした。
アルミカップにBPF−2EOGを測りとり、80℃に設定したホットプレート上で完全に溶解させた。続いて、実施例1で得られた粘性液体を加え、80℃に設定したホットプレート上で均一になるまで攪拌した。その後、硬化剤として4,4−ジアミノジフェニルメタン(DDM)を加え、80℃に設定したホットプレート上で均一になるまで再度攪拌した。この混合物を80℃減圧下で15分加熱した後、100℃で2時間、120℃で2時間、140℃で2時間、160℃で2時間の順に段階的に加熱して硬化させた。昇温速度は2℃/分とした。
各成分の割合は表の通りであり、各種割合にて各種特性を測定したものを表に示す。なお、表には、比較のため、BPF−2EOGのみを硬化させた比較例(比較例1)も記載した。比較例1では、130℃で2時間、170℃で2時間、200℃で2時間の順に加熱して硬化させた。なお、表において、エポキシとは「BPF−2EOG」、エピスルフィドとは「実施例1で得られた粘性液体の固形分」、エピスルフィドの「重量%」とは、エピスルフィドおよびエポキシの総量に対する割合を示す。
表1の結果から明らかなように、エピスルフィドの含有量を大きくするにつれて、意外にもアッベ数がほぼ一定の値を保持していたにもかかわらず、屈折率は上昇した。また、弾性率は低下した。
(合成例1)
特開2009−139651号公報の実施例2と同様の方法にて、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、以下、BPEFという)1モルに対してエチレンオキシド(EO)8モルを使用して反応させ、生成物755g(BPEF基準の収率96%)を得た。得られた生成物の水酸基価から、BPEF1モルに対して、EOが8.0モル付加した化合物、すなわち、9,9−(4−ヒドロキシ)フェニルフルオレン(BPF)1モルに対して、10.0モルのEOが付加した化合物であることがわかった。
特開2009−139651号公報の実施例2と同様の方法にて、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、以下、BPEFという)1モルに対してエチレンオキシド(EO)8モルを使用して反応させ、生成物755g(BPEF基準の収率96%)を得た。得られた生成物の水酸基価から、BPEF1モルに対して、EOが8.0モル付加した化合物、すなわち、9,9−(4−ヒドロキシ)フェニルフルオレン(BPF)1モルに対して、10.0モルのEOが付加した化合物であることがわかった。
続いて、得られたBPF−10EOの95g(0.12モル)をクロロメチルオキシラン(特級、キシダ化学(株)製)88g(0.96モル)に溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(特級、関東化学(株)製)2.0gを加え、60℃にて1時間攪拌した。次に、減圧下(650mmHg)、45℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液30gを1.5時間かけて滴下した。その間、生成する水をクロロメチルオキシランとの共沸により系外に除き、留出したクロロメチルオキシランは系内に戻した。滴下終了後、さらに3時間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、クロロメチルオキシランを留去して粘性液体を得た。得られた粘性液体をHPLCおよびGPCにて分析した結果、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン1モルに対して平均10モルのエチレンオキサイドが付加した化合物のジグリシジルエーテル(BPF−10EOGという)を主として含むことを確認した。
(実施例13)
2Lのフラスコに合成例1で得られたBPF−10EOG(52.85g)およびTHF(461g)を添加して溶解させた。また、別の1Lのフラスコにチオ尿素(15.60g,205mmol)を入れメタノール(373g)を添加し、チオ尿素のメタノール溶液を得た。
2Lのフラスコに合成例1で得られたBPF−10EOG(52.85g)およびTHF(461g)を添加して溶解させた。また、別の1Lのフラスコにチオ尿素(15.60g,205mmol)を入れメタノール(373g)を添加し、チオ尿素のメタノール溶液を得た。
2Lのフラスコに滴下漏斗を取り付け、チオ尿素のメタノール溶液を入れ、室温で2時間掛けて滴下した。滴下終了後、40℃に加熱して43時間反応させた。反応の進行はHPLC分析により確認し、BPF−10EOGに対応するピークが消失するまで反応を行った。室温に戻した反応溶液をロータリーエバポレーターでおおよそ300gまで濃縮した後、蒸留水1Lに投入し、酢酸エチルで抽出(300mLおよび200mLでそれぞれ一回抽出)し、ブラインで洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、溶媒を留去し、粘性液体(57.69g)を得た。生成物中に酢酸エチルが7.9%残っており、固形分の収率は97.1重量%であった。得られた粘性液体をHPLC、GPC、FT−IRおよびNMRにて分析した結果、BPF−10EOGのエピスルフィド化合物(下記式において、2つのmの合計(平均値)が10である化合物)を主成分として含むことを確認した。なお、純度はHPLCによる面積比で求めた。
1H−NMR:δ(ppm)=7.7(d,2H)、7.2−7.4(m、6H)、7.1(d,4H)、6.7(d,4H)、4.0(dd,2H)、3.8(dd,2H)、3.6(m、34H)、3.5(m,2H)、3.2(q,2H)、2.5(dd,2H)、2.2(dd,2H)
さらに、得られたエピスルフィド化合物の屈折率(25℃、589nm)は、1.5789であった。
さらに、得られたエピスルフィド化合物の屈折率(25℃、589nm)は、1.5789であった。
(実施例14)
実施例13で得たエピスルフィド化合物を、硬化剤や硬化触媒(硬化促進剤)を用いることなく、以下のようにして単独で硬化させた。
実施例13で得たエピスルフィド化合物を、硬化剤や硬化触媒(硬化促進剤)を用いることなく、以下のようにして単独で硬化させた。
まず、実施例13で得られた粘性液体を酢酸エチルに溶解した。得られた30重量%の酢酸エチル溶液を、スライドガラスに厚み約90μmでバーコーティングし、60℃で24時間乾燥させた。その後、130℃で2時間加熱し、厚み76μmの無色透明の硬化物のフィルムを得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、フィルムはやや粘着性(タック)のある柔軟性を有するフィルムであった。また、フィルムの屈折率(25℃、589nm)は、1.5841であった。さらに、厚み100μm換算のフィルムの透過率は、350nmで96.7%、400nmで98.1%、450nmで98.7%であり、高い透明性を有していた。
(実施例15)
実施例14において、厚み約60μmでバーコーティングし、加熱を段階的に(130℃で2時間、150℃で2時間の順に加熱)行ったこと以外は、実施例14と同様にして、厚み53μmの無色透明の硬化物のフィルムを得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、フィルムはやや粘着性のある柔軟性を有するフィルムであった。
実施例14において、厚み約60μmでバーコーティングし、加熱を段階的に(130℃で2時間、150℃で2時間の順に加熱)行ったこと以外は、実施例14と同様にして、厚み53μmの無色透明の硬化物のフィルムを得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、フィルムはやや粘着性のある柔軟性を有するフィルムであった。
(実施例16)
実施例14において、実施例13で得た粘性液体(エピスルフィド化合物)を酢酸エチルに溶解させることなく金型に入れ、段階的に加熱(80℃で24時間、100℃で24時間、120℃で18時間の順に加熱)したこと以外は、実施例14と同様にして、透明の単独硬化物(33mm角、厚み3.7mm)を得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、フィルムはやや粘着性のある柔軟性を有するフィルムであった。
実施例14において、実施例13で得た粘性液体(エピスルフィド化合物)を酢酸エチルに溶解させることなく金型に入れ、段階的に加熱(80℃で24時間、100℃で24時間、120℃で18時間の順に加熱)したこと以外は、実施例14と同様にして、透明の単独硬化物(33mm角、厚み3.7mm)を得た。なお、加熱の際、硫化水素は発生せず、フィルムはやや粘着性のある柔軟性を有するフィルムであった。
(比較例2)
酸無水物系硬化剤[リカシッドMH700(新日本理化製)]10gに、合成例1で得た粘性液体(エポキシ化合物)17.4gおよびトリフェニルホスフィン0.4gを混合し、130℃で2時間加熱したが、この条件では硬化しなかった。
酸無水物系硬化剤[リカシッドMH700(新日本理化製)]10gに、合成例1で得た粘性液体(エポキシ化合物)17.4gおよびトリフェニルホスフィン0.4gを混合し、130℃で2時間加熱したが、この条件では硬化しなかった。
(実施例17)
酸無水物系硬化剤[リカシッドMH700(新日本理化製)]10gに、合成例1で得た粘性液体(エポキシ化合物)17.4g、実施例13で得た粘性液体(エピスルフィド化合物)3.0gおよびトリフェニルホスフィン0.4gを混合し、130℃で2時間加熱したところ硬化が進行した。
酸無水物系硬化剤[リカシッドMH700(新日本理化製)]10gに、合成例1で得た粘性液体(エポキシ化合物)17.4g、実施例13で得た粘性液体(エピスルフィド化合物)3.0gおよびトリフェニルホスフィン0.4gを混合し、130℃で2時間加熱したところ硬化が進行した。
本発明のエピスルフィド化合物(又は硬化物)は、高屈折率、高耐熱性などの優れた特性を有している。また、フルオレン骨格を有しているため、顔料などの添加剤の分散性にも優れている。
このような本発明のエピスルフィド化合物(又は硬化物)は、電子部品の層間の絶縁材、プリント基板用のソルダーレジスト、カバーレイなどのレジスト材料などとして有用である他、カラーフィルター、インキ(印刷インキなど)、封止剤(半導体封止剤など)、塗料、コーティング剤、接着剤、粘着剤、アンダーフィル、帯電防止剤、充填材、導電部材又は導電材料、積層材料、感熱材料(感熱紙用材料など)、カーボン材料、絶縁材料、発泡体、感圧材料、光学材料(透明材料)[例えば、レンズ(リフローレンズ、ピックアップレンズ、マイクロレンズなど)、偏光膜、反射防止フィルム、タッチパネル用フィルム、フレキシブル基板用フィルム、ディスプレイ用フィルム、燃料電池用膜、光ファイバー、光導波路、ホログラム]などのあらゆる材料(電気・電子材料、光学材料など)として有用である。
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