JP2011178014A - 液体噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の噴射ヘッドに供給される液体を合理的な方法によって循環させる。
【解決手段】噴射ヘッドに供給する液体を貯める液体貯留部を設け、圧力調整弁を介して
複数の噴射ヘッドに液体を供給すると共に、複数の噴射ヘッド内から循環ポンプで液体を
吸い出して液体貯留部に排出する。こうすれば循環ポンプは、個々の噴射ヘッドから液体
を吸い出すことになるので、通路抵抗が小さくなり、適切に循環させることができる。ま
た、噴射ヘッドには、液体貯留部から圧力調整弁を介して、適切な圧力で液体が供給され
るので、適切に液体を噴射することが可能となる。
【選択図】図3

Description

本発明は、容器内に収容された液体を、噴射ヘッドに設けられた噴射ノズルから噴射す
る技術に関する。
容器内に収容された液体を噴射ヘッドから噴射する液体噴射装置が知られている。この
液体噴射装置の噴射ヘッド内には、液体が供給される液体室と、液体を噴射する噴射ノズ
ルとが設けられており、液体室に設けた加圧機構を駆動して液体を加圧することにより、
噴射ノズルから液体を噴射するようになっている。このようにして液体を噴射している関
係上、液体とともに混入した気泡が液体室内に溜まると、液体室内の液体を適切に加圧す
ることができなくなって、噴射ノズルから液体を噴射することが困難となる。また、時間
内に多くの液体を噴射可能とするために、容器内の液体を複数の噴射ヘッドに供給して、
それらの噴射ヘッドから同時に液体を噴射可能とした液体噴射装置も開発されているが、
このような液体噴射装置では、噴射ヘッドが多くなる分だけ、液体室内に気泡が溜まる事
態も生じ易くなる。そこで、複数の噴射ヘッドから液体を噴射する液体噴射装置では、噴
射ヘッドに供給した液体を、噴射されるまで噴射ヘッド内に留めておくのではなく、一旦
、噴射ヘッド外に排出して再び噴射ヘッド内に供給することで、噴射ヘッドの内部と外部
とを循環させることにより、気泡が液体室内に溜まらないようにした構造が採用されるこ
とがある。
また、このように複数の噴射ヘッドを備えた液体噴射装置で液体を循環させる構造とし
ては、噴射ヘッドを直列に接続した構造と、並列に接続した構造とが提案されている。こ
こで、噴射ヘッドを直列に接続した構造とは、ある噴射ヘッド内を循環して外部に出てき
た液体を下流側の噴射ヘッドに供給し、その噴射ヘッド内を循環した液体を更に下流側の
噴射ヘッド内に供給することで、複数の噴射ヘッド内を次々と液体が循環するようにした
構造である。また、噴射ヘッドを並列に接続した構造とは、液体を循環させる為の通路を
途中で分岐させることで、複数の噴射ヘッドを互いに並列に接続し、それぞれの噴射ヘッ
ド内を独立して液体が循環するようにした構造である。
噴射ヘッドを直列に接続した構造では、噴射ヘッド内で生じる圧力損失の影響で、上流
側の噴射ヘッドに供給される液体の圧力と、下流側の噴射ヘッドに供給される液体の圧力
との圧力差が大きくなり、その結果、それぞれの噴射ヘッドで液体を安定して噴射するこ
とが困難となる。一方、噴射ヘッドを並列に接続した構造では、液体を循環させるための
通路の形状あるいは通路の長さの違い等の影響で、液体が循環し易い噴射ヘッドと循環し
難い噴射ヘッドとが発生し得る。そして、循環し難い噴射ヘッドが発生した場合には、そ
の噴射ヘッド内の気泡を排出することが困難となる。
そこで、複数の噴射ヘッドが直列に接続された状態と、それら噴射ヘッドが並列に接続
された状態とに切り換え可能に構成しておき、液体を噴射する際には複数の噴射ヘッドを
並列に接続し、気泡を排出する際には噴射ヘッドを直列に接続するようにした技術が提案
されている(特許文献1)。
特開2008−246843号公報
しかし、提案されている技術では、複数の噴射ヘッドが直列に接続されている状態と、
並列に接続されている状態とを切り替えているために複雑な構造が必要となる。また、液
体の流路形状が複雑となるために通路抵抗が増加し、そこに、切り替える為の構造が付加
されることによって、更に通路抵抗が増加する。加えて、液体を循環させる際には複数の
噴射ヘッドが直列に接続されるので、通路抵抗はますます大きくなる。その結果、循環ポ
ンプに大きな負荷がかかり、大きな容量の循環ポンプが必要になるという問題が生じる。
この発明は、従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、複数の
噴射ヘッドに供給される液体を循環させながら、循環ポンプに過大な負荷がかかることが
回避可能であり、しかも複数の噴射ヘッドから適切に液体を噴射することが可能な技術の
提供を目的とする。
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の液体噴射装置は次の構成を
採用した。すなわち、
液体容器に収容されている液体を複数の噴射ヘッドに供給して、該噴射ヘッドの噴射ノ
ズルから該液体を噴射する液体噴射装置であって、
前記複数の噴射ヘッドの上流側に設けられて、該噴射ヘッドに供給される液体を貯めて
おく液体貯留部と、
前記液体貯留部と前記複数の噴射ヘッドとの間に設けられると共に、該噴射ヘッド内の
液体の圧力が所定圧力以下に低下すると開弁して、該液体貯留部側から取り込んだ液体を
該噴射ヘッドに供給することにより、該噴射ヘッド内の液体の圧力を調整する圧力調整弁
と、
前記複数の噴射ヘッドに設けられた液体循環口から該噴射ヘッド内の液体を吸い出して
前記液体貯留部へと排出することにより、該複数の噴射ヘッドと該液体貯留部との間で液
体を循環させる循環ポンプと
を備えることを要旨とする。
このような本発明の液体噴射装置においては、液体貯留部に貯められた液体は、圧力調
整弁を介して複数の噴射ヘッドに供給されると共に、複数の噴射ヘッドに設けられた液体
循環口から循環ポンプによって吸い出されて、液体貯留部に戻される。このため循環ポン
プは、個々の噴射ヘッドから液体を吸い出すことになるので、液体を吸い出す際の通路抵
抗が大きくなることはなく、循環ポンプに過大な負荷がかかることを回避することが可能
となる。また、循環ポンプによって噴射ヘッド内の液体の圧力が低下すると、圧力調整弁
が開弁して、液体貯留部から液体が噴射ヘッドに供給される。すなわち、循環ポンプによ
って噴射ヘッド内の液体を吸い出すと、吸い出した分だけの液体が、液体貯留部から圧力
調整弁を介して供給されるので、それぞれの噴射ヘッド内の液体の圧力を常に適正な圧力
範囲に保っておくことが可能となる。その結果、多くの噴射ヘッドを搭載している場合で
も、噴射ヘッド内の気泡を完全に且つ容易に排出すると同時に、それぞれの噴射ヘッドか
ら適切に液体を噴射することが可能となる。
また、上述した本発明の液体噴射装置においては、次のようにしても良い。先ず、噴射
ヘッドには、液体貯留部から液体を取り入れるための液体取入口と噴射ノズルとの間に、
液体と共に流入した異物を捕捉するヘッドフィルターを設けておく。また、そのヘッドフ
ィルターと液体取入口との間に連通させて第1液体循環口を設け、更に、ヘッドフィルタ
ーと噴射ノズルとの間に連通させて第2液体循環口を設けておく。そして、噴射ヘッド内
の液体を、第1液体循環口または第2液体循環口の少なくとも一方から吸い出すことによ
って、液体を循環させることとしてもよい。
こうすれば、液体と共に噴射ヘッド内に流入する異物をヘッドフィルターで捕捉するこ
とができるので、噴射ノズルに異物が詰まってしまうことを防止することができる。また
、液体と共に流れてきた気泡がヘッドフィルターの部分に留まっていても、第1液体循環
口から液体を吸い出すことで、気泡を排除することができる。更に、ヘッドフィルターを
通り抜けるなどしてヘッドフィルターの下流(噴射ノズル側)に気泡が進入した場合でも
、第2液体循環口から液体を吸い出すことで、気泡を排除することが可能となる。その結
果、異物による不具合の発生を防止しながら、噴射ヘッド内の気泡を確実に排除すること
で、適切に液体を噴射することが可能となる。加えて、第1液体循環口または第2液体循
環口の何れか一方から液体を吸い出すこととすれば、液体の十分な流速を容易に確保する
ことができるので、噴射ヘッド内の気泡を容易に排除することが可能となる。
また、上述した本発明の液体噴射装置においては、液体に混入した異物を捕捉するタン
クフィルターを、液体貯留部と圧力調整弁との間に設けることとしてもよい。
こうすれば、液体に異物が混入した場合でも、圧力調整弁の上流側に設けられたタンク
フィルターで捕捉することができるので、噴射ヘッド内にはヘッドフィルターを設ける必
要がない。このため、噴射ヘッドを小型化することが可能となる。また、噴射ヘッド内が
ヘッドフィルターによって区切られないので、噴射ヘッド内の液体を吸い出すための液体
循環口を、ヘッドフィルターの上流側および下流側の2箇所に設ける必要がなく、1箇所
で良いので、この意味からも噴射ヘッドを小型化することが可能となる。加えて、噴射ヘ
ッド内から液体を吸い出す液体通路が1系統でよいので、循環ポンプにかかる負荷も軽減
することができる。更に加えて、圧力調整弁の上流側にタンクフィルターが設けられてい
るので、圧力調整弁に異物が流れ込むことが無く、従って、異物によって圧力調整弁の動
作に異常を来す虞もない。また、たとえタンクフィルターの部分に気泡が留まったとして
も、その直ぐ上流には液体貯留部があるので、液体の流れが止まると、やがて気泡は液体
貯留部に戻っていく。このため、タンクフィルターの上流側の液体を積極的に循環させる
必要はない。尚、タンクフィルターの上流側が、通路を介さず直接、液体貯留部となるよ
うにしておけば、タンクフィルターの部分に気泡が留まる可能性をより小さくすることも
可能となる。
尚、本発明の液体噴射装置では、次のような圧力調整弁を採用することができる。すな
わち、本発明の液体噴射装置で採用される圧力調整弁は、
前記液体貯留部に接続された第1液体室と、
前記第1液体室から隔壁によって隔てられて、前記噴射ヘッドに接続された第2液体室
と、
前記隔壁を穿って設けられ、前記第1液体室と前記第2液体室とを連通させる連通穴と

前記連通穴の前記第1液体室側の開口部に設けられた弁座と、
前記連通穴内に摺動可能に挿入されており、該連通穴内を前記第2液体室側に向かって
摺動すると、前記第1液体室側の端部が前記弁座に当接することで該連通穴を封止する弁
体と、
前記弁体を前記第2液体室の方向に付勢する付勢手段と、
前記第2液体室内の液体圧力が減少すると、前記弁体を前記第1液体室の方向に摺動さ
せることで、該弁体の前記端部を前記弁座から離間させる離間手段と
を備えることとしても良い。
このような構成の圧力調整弁を用いれば、たとえ第1液体室側に高い液体圧力がかかっ
ても、その液体圧力によって弁体の端部が弁座に押し付けられて連通穴を封止するので、
第1液体室内の圧力変動が第2液体室に及ぶことがない。その一方で、第2液体室内の液
体圧力が低下すると弁体が第1液体室に向かって摺動し、第1液体室側の弁体の端部が弁
座から離間する。このため、第1液体室から第2液体室へと液体が供給されるので、第2
液体室内の液体圧力を速やかに回復させることができる。その結果、第2液体室内の液体
圧力を、一定の圧力範囲に保つことができ、常に安定した圧力で噴射ヘッドに液体を供給
することが可能となる。
また、上述した本発明の液体噴射装置においては、圧力調整弁から噴射ヘッドに液体を
供給する液体供給通路を途中で分岐させることで、1つの圧力調整弁から複数の噴射ヘッ
ドに液体を供給するようにしても良い。
こうすれば、複数の噴射ヘッドで1つの圧力調整弁を共用することができるので、部品
点数が減少することで、液体噴射装置の小型化や、故障に対する信頼性の向上などの技術
的な効果を得ることが可能となる。
また、上述した本発明の液体噴射装置においては、
前記液体容器から前記液体貯留部に液体を供給するための液体供給通路と、
前記噴射ヘッドの液体循環口から吸い出された液体を前記液体貯留部に循環させるため
の液体循環通路と、
前記液体供給通路と前記液体循環通路とを切り替えて前記循環ポンプに接続する切替弁

を備えることとしても良い。
こうすれば、液体容器から液体貯留部に液体を供給するためのポンプと、噴射ヘッドに
供給した液体を循環させるための循環ポンプとを共用することができるので、部品点数が
減少することで、液体噴射装置の小型化や、故障に対する信頼性の向上などの技術的な効
果を得ることが可能となる。
また、上述した本発明の液体噴射装置においては、次のようにしても良い。すなわち、
前記圧力調整弁から前記噴射ヘッドに液体を供給する通路には、該噴射ヘッドから該圧
力調整弁の方向に液体が逆流することを防止する第1逆止弁を設け、
前記噴射ヘッドの前記液体循環口に接続された通路には、該液体循環口から吸い出され
た液体が該噴射ヘッド内に逆流することを防止する第2逆止弁を設けることとしてもよい
こうすれば、ある噴射ヘッドの噴射ノズルに負圧を作用させて、その噴射ヘッド内の液
体を吸引した場合でも、その負圧が他の噴射ヘッドには及ばないので、他の噴射ヘッドの
噴射ノズルから気泡を吸い込んでしまうことを回避することが可能となる。
ラインプリンターを例に用いて本実施例の液体噴射装置の大まかな構造を示した説明図である。 ヘッドユニットを底面側から見たときの状態を示す説明図である。 本実施例のラインプリンターが噴射ヘッドに供給するインクを循環させるための構成を示した説明図である。 圧力調整弁の詳細な構造を示した説明図である。 圧力調整弁がインクの供給圧力を調整する動作を示した説明図である。 切替弁の大まかな形状を示す斜視図である。 切替弁の詳細な構造を示す断面図である。 インクカートリッジ内のインクをサブタンクに供給する様子を示した説明図である。 ヘッドフィルターの上流側のインクを循環させる様子を示した説明図である。 ヘッドフィルターの下流側のインクを循環させる様子を示した説明図である。 変形例のラインプリンターが噴射ヘッドに供給するインクを循環させるための構成を示した説明図である。
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.ラインプリンターの構成:
B.インク循環システムの構成:
C.インク循環システムの動作:
D.変形例:
A.ラインプリンターの構成 :
図1は、ラインプリンター1を例に用いて本実施例の液体噴射装置の大まかな構造を示
した説明図である。図示されているように、本実施例のラインプリンター1は、大まかに
は箱型の外形形状をしており、上面には、モニターパネル2や、ユーザーが操作するため
の操作パネル3などが設けられている。また、ラインプリンター1の前面には、インクカ
ートリッジを交換するためのカートリッジ交換扉4や、印刷用紙を装填するための給紙扉
5が設けられており、更に、向かって右側面には、印刷された印刷用紙が排出される排紙
口6が設けられている。
ラインプリンター1の内部には、各種の機能を実行する複数のユニットあるいは部品が
搭載されている。先ず、ラインプリンター1のほぼ中央の位置には、印刷用紙にインクを
噴射するヘッドユニット30が設けられている。ヘッドユニット30の下方には、ヘッド
ユニット30にインクを供給するインク供給部60が設けられており、インク供給部60
には、インクが充填されたインクカートリッジ62が装着される。尚、本実施例のライン
プリンター1では、黒インク(Kインク)、シアンインク(Cインク)、マゼンタインク
(Mインク)、イエローインク(Yインク)の4色のインクを印刷に使用することが可能
であり、このことに対応して、インク供給部60には、各色のインクが充填された4つの
インクカートリッジ62が装着されるようになっている。
図1の紙面上で、ヘッドユニット30の左下の位置には、印刷用紙が装填される給紙カ
セット10が設けられており、給紙カセット10の右端の上面に接する位置に、給紙ロー
ラー20が設けられている。更に、給紙ローラー20の奥側には給紙モーター22が接続
されており、給紙モーター22を駆動して給紙ローラー20を回転させると、給紙カセッ
ト10から印刷用紙が1枚ずつ、ヘッドユニット30に向かって搬送されるようになって
いる。尚、図1では、印刷用紙の搬送経路が太い破線で示されている。
また、図1の紙面上で、ヘッドユニット30の右側の領域は空きスペースとなっており
、この空きスペースの下方には、キャップ40や、吸引ポンプ50、廃液タンク52など
が設けられている。本実施例のラインプリンター1では、ヘッドユニット30内のインク
が、時間の経過などによって性状が劣化した場合には、ヘッドユニット30を右側の空き
スペースへ移動させた後に、ヘッドユニット30の底面側にキャップ40を押し当てた状
態で吸引ポンプ50を作動させることで、性状の劣化したインクを吸い出すことが可能と
なっている。また、吸引ポンプ50によって吸い出されたインクは、廃液タンク52に溜
められる。
また、モニターパネル2や操作パネル3が設けられている部分の直ぐ下の位置には、ラ
インプリンター1に電力を供給するための電源ユニット70や、ラインプリンター1の各
種の動きを制御する制御ユニット80などが搭載されている。
このような構成を有するラインプリンター1では、次のようにして画像を印刷する。先
ず、給紙カセット10に複数枚の印刷用紙を装填すると、印刷用紙は図示しないバネによ
って押し上げられて、上方に設けられた給紙ローラー20に押し付けられる。給紙ローラ
ー20は、金属製の細長い円柱を長さ方向に半分に割って形成した略半円形断面の細長い
部材であり、円周部分に対応する側面はゴム材料によって形成されている。この給紙ロー
ラー20の一端には給紙モーター22が接続されており、給紙モーター22によって駆動
されて給紙ローラー20が回転することにより、給紙カセット10から印刷用紙が1枚ず
つ、ヘッドユニット30に向かって送り出される。
給紙ローラー20とヘッドユニット30との間には、複数のガイドローラー24が設け
られている。ガイドローラー24は、図示しないモーターによって駆動されて回転するこ
とにより、印刷用紙をガイドしながら、ヘッドユニット30へと搬送する。
ヘッドユニット30は、印刷用紙の搬送経路上に、印刷用紙を跨ぐような状態で設けら
れており、ヘッドユニット30の底面側(すなわち、印刷用紙に面する側)には、インク
を噴射する複数の噴射ヘッドが設けられている(図2を参照)。また、ヘッドユニット3
0には、インク供給部60のインクカートリッジ62が図示しない流路を介して接続され
ており、インクカートリッジ62内に収容されたインクが、ヘッドユニット30の下面側
に設けられた複数の噴射ヘッドから噴射される。
図2は、ヘッドユニット30を底面側(印刷用紙に面した側)から見たときの状態を示
す説明図である。図示されるように、本実施例のヘッドユニット30の底面には、略矩形
形状をした噴射ヘッド102が、6つずつを一組として4組(合計24個)設けられてい
る。また、各組の6つの噴射ヘッド102は、3つずつ二列に並べられるとともに、互い
の列の噴射ヘッド102が互い違いとなるように配列されている。更に、各噴射ヘッド1
02には、インクを噴射する複数の噴射ノズルが列状に設けられている。尚、こうした噴
射ノズルが設けられている噴射ヘッド102の下側の面を「ノズル面」と呼ぶことがある
ものとする。
このような噴射ヘッド102は、互い違いに配列されることにより、6つの噴射ヘッド
102が一体となって1つの噴射ユニット100を構成している。上述したように、本実
施例のヘッドユニット30には、24個の噴射ヘッド102が設けられているから、結局
、4つの噴射ユニットが設けられており、各噴射ユニット100が、Yインクを噴射する
噴射ユニット100y、Mインクを噴射する噴射ユニット100m、Cインクを噴射する
噴射ユニット100c、Kインクを噴射する噴射ユニット100kとなっている。
ヘッドユニット30の下方には、ヘッドユニット30の底面に向かい合うようにして、
印刷用紙を背面から支持するプラテンが設けられている(図示は省略)。給紙ローラー2
0およびガイドローラー24によって搬送されてきた印刷用紙はプラテン上を搬送され、
この間にヘッドユニット30の底面に設けられた複数の噴射ヘッド102からインクが噴
射されて印刷用紙に画像が印刷されていく。こうして画像が印刷された印刷用紙は、ヘッ
ドユニット30の下流側に設けられたガイドローラー24によって進行方向を下方に曲げ
られた後、廃液タンク52の下側を通って排紙口6からラインプリンター1の外部に排出
される。
以上に説明したように、本実施例のラインプリンター1は、複数の噴射ヘッド102に
よってヘッドユニット30を構成し、ヘッドユニット30の下方を、印刷用紙を通過させ
ることによって画像を印刷しているので、迅速に画像を印刷することが可能である。もっ
とも、複数の噴射ヘッド102の何れか1つでも気泡が混入すると、その噴射ヘッド10
2では適切にインクを噴射することができなくなり、その結果、適切に画像を印刷するこ
とができなくなる虞がある。そこで、気泡が混入した場合には、ヘッドユニット30をキ
ャップ40の位置まで移動させて、キャップ40に向けてインクを噴射するフラッシング
動作や、ヘッドユニット30の下面側にキャップ40を押し付けてインクを吸い出すクリ
ーニング動作を行うことにより、インクと共に気泡を排出することが行われる。しかし、
複数の噴射ヘッド102が搭載されているので、気泡が混入する度に、フラッシング動作
やクリーニング動作を行っていたのでは、インクの消費量が増大してしまう。そこで、本
実施例のラインプリンター1では、以下のようにして、噴射ヘッド102に供給するイン
クを循環させることにより、インクに混入した気泡を処理して噴射ヘッド102から適切
にインクを噴射することを可能にしている。また、インクを循環させるための循環ポンプ
に過大な負荷がかかることもない。以下では、本実施例のラインプリンター1で採用され
ているインク循環システムについて説明する。
B.インク循環システムの構成 :
図3は、本実施例のラインプリンター1に採用されたインク循環システムの構成を示し
た説明図である。尚、図1および図2を用いて前述したように、本実施例のラインプリン
ター1には、C(シアン)インク、M(マゼンタ)インク、Y(イエロー)インク、K(
ブラック)インクの4種類のインクが搭載されており、それらのインクは、インクの種類
毎に設けられた噴射ユニット100の噴射ヘッド102に供給されている。そして、イン
ク循環システムは、噴射ユニット100毎にインクを循環させている。もっとも、それぞ
れのインク循環システムの構成は全く同様であるため、図3では、代表として1つの噴射
ユニット100についてのみ表示されている。
図2を用いて前述したように、噴射ユニット100は6つの噴射ヘッド102で構成さ
れており、このことと対応して、図3には6つの噴射ヘッド102が表示されている。こ
れら6つの噴射ヘッド102に対して、インクカートリッジ62内からインクが供給され
ることになる。インクカートリッジ62内のインクを噴射ヘッド102に供給するための
経路は、次のようにして構成されている。先ず、インクカートリッジ62(液体容器)は
、インク通路118および切替弁130を介して循環ポンプ104に接続されており、循
環ポンプ104からは、インク通路116を介してサブタンク106(液体貯留部)に接
続されている。詳細には後述するが、サブタンク106は、噴射ヘッド102に供給され
るインクが貯められると共に、インクに混入した気泡を分離する機能を有している。また
、サブタンク106には、液面センサ106sが設けられており、サブタンク106に貯
められたインクの水位(インク液面の位置)を検出することが可能となっている。尚、液
面センサ106sは、インク液面の位置を検出するのではなく、インク液面が所定位置ま
で低下したことを検出するものであっても良い。あるいは、インク液面の位置を検出する
代わりに、インクの水頭による圧力を検出するようにしても良い。
また、サブタンク106の下流側には圧力調整弁150が接続されている。圧力調整弁
150の詳細についても後述するが、圧力調整弁150は、下流側(噴射ヘッド102側
)の圧力が低下すると自動的に開弁してインクを取り込むことで、噴射ヘッド102に対
して常に適切な圧力でインクが供給されるように調整する機能を有している。そして、圧
力調整弁150の下流側でインク供給通路110が分岐した後、逆止弁108を介して噴
射ヘッド102に接続されている。図3では、サブタンク106から噴射ヘッド102ま
でのインク供給通路110が、太い実線で表示されている。
本実施例のラインプリンター1では、噴射ヘッド102の内部にヘッドヘッドフィルタ
ー102fが設けられており、ヘッドヘッドフィルター102fを通って噴射ノズルに供
給されるようになっている。このため、たとえインク中に異物が混入していても、異物は
ヘッドフィルター102fで除去されるので、噴射ノズルを目詰まりさせる虞がない。
噴射ヘッド102内のインクを循環させるための経路は、次のようにして構成されてい
る。先ず、噴射ヘッド102内のフィルター上流室102u(噴射ヘッド102内でヘッ
ドフィルター102fの上流側の部分)には、第1循環口103u(第1液体循環口)が
設けられており、第1循環口103uから逆止弁108を介して、インクの循環通路11
2が接続されている。そして、各噴射ヘッド102のフィルター上流室102uに設けら
れたそれぞれの第1循環口103uからの循環通路112は合流して、切替弁130に接
続されている。また、噴射ヘッド102内のフィルター下流室102d(噴射ヘッド10
2内でヘッドフィルター102fの下流側の部分)には、第2循環口103d(第2液体
循環口)も、逆止弁108を介して、第2循環口103dには、インクの循環通路114
が接続されている。そして、各噴射ヘッド102のフィルター下流室102dに設けられ
たそれぞれの第2循環口103dからの循環通路114も合流して、切替弁130に接続
されている。尚、以下では、フィルター上流室102uに接続されている循環通路112
を、上流側循環通路112と称し、フィルター下流室102dに接続されている循環通路
114を、下流側循環通路114と称して区別することにする。
以上のような構成を有する本実施例のインク循環システムでは、サブタンク106(液
体貯留部)に貯められたインクが、圧力調整弁150を介して複数の噴射ヘッド102に
供給されるようになっている。このため、噴射ヘッド102でインクが噴射されると、噴
射した分のインクがサブタンク106から供給され、その結果、圧力調整弁150から噴
射ヘッド102までのインクの圧力は、常に一定圧力に調整されるようになっている。以
下では、このような機能を有する圧力調整弁150について説明する。
図4は、圧力調整弁150の詳細な構造を示した説明図である。尚、図4には、圧力調
整弁150の中心を通る縦断面をとることによって、圧力調整弁150の内部構造が示さ
れている。本実施例の圧力調整弁150には、噴射ヘッド102に接続された圧力室15
1と、サブタンク106に接続された圧力室152の2つの圧力室が設けられている。こ
れら2つの圧力室の間を隔てる隔壁には、狭い通路がうがたれており、この通路には、通
路とほぼ同じ径の通路軸153が通路内で摺動可能に設けられている。通路軸153の側
面には、複数本の通路溝154が設けられており、通路溝154の一端は、圧力室151
側に開口するとともに、他端は圧力室152側に開口している。
通路軸153の圧力室151側の端部には、ベース部材155が固定されており、ベー
ス部材155は、通路軸153を取り巻くように設けられた支持バネ156によって、圧
力室151の底面側から一定の高さに持ち上げられている。また、ベース部材155は、
圧力室151の一側面(図4では上面側)を構成する薄いフィルム膜157のほぼ中央位
置に接着されている。
また、通路軸153の圧力室152側の端部には、ゴム製の封止弁158が設けられて
いる。封止弁158は、圧力室152の底面側から封止バネ159によって押し上げられ
ており、通常は、封止弁158の上方に設けられた突出部分が、圧力室152の上面に押
し付けられることで、圧力室152側から通路軸153の周囲を密閉するようになってい
る。
図5は、圧力調整弁150が噴射ヘッド102にインクを供給する圧力を調整する動作
を示した説明図である。前述したように、圧力調整弁150には、インク供給通路110
を介してサブタンク106からインクが供給されている(図3を参照)。このとき、圧力
調整弁150の圧力室152(サブタンク106側の圧力室)には、サブタンク106内
のインクが水頭差によって供給されている。また、圧力室152側に設けられた封止弁1
58は封止バネ159によって押し付けられているので、通路溝154は封止弁158に
よって閉鎖された状態となっている。従って、この状態では、圧力室152から通路溝1
54を介して圧力室151にインクが供給されることはない。
図5(a)に示す状態で、噴射ヘッド102からインクを噴射すると、噴射した分だけ
のインクが圧力室151から噴射ヘッド102に供給される。その結果、噴射ヘッド10
2からインクを噴射するに従って、圧力室151内の圧力が低下する。ここで、圧力室1
51の上面側はフィルム膜157によって構成されているので、圧力室151内の圧力低
下に応じてフィルム膜157が引き下げられ、その結果、図5(b)に示されるように、
フィルム膜157に設けられたベース部材155および通路軸153が、支持バネ156
の反発力に逆らって移動する。すると、通路軸153に押されて封止弁158が開口し、
通路軸153に設けられた通路溝154を介して、2つの圧力室(サブタンク106側の
圧力室152および噴射ヘッド102側の圧力室151)が連通状態となる。その結果、
図5(c)中に太い破線の矢印で示したように、通路溝154を介して、サブタンク10
6側の圧力室152から、噴射ヘッド102側の圧力室151へとインクが供給される。
こうして圧力室151にインクが供給されると、圧力室151内の圧力が回復するので
、フィルム膜157が元の状態に戻り、それと共にベース部材155および通路軸153
も元の位置まで復帰する。その結果、図5(a)に示すように、再び封止弁158によっ
て圧力室152側の通路軸153の周囲は密閉されて、圧力室152から圧力室151へ
のインクの供給が終了する。
以上のように、圧力調整弁150では、通常は封止弁158が閉じているが、圧力室1
51内のインク量が所定量よりも少なくなることで圧力室151のインクの供給圧力が低
下すると、一時的に封止弁158が開口する。これにより、圧力室152からインクが供
給され、圧力室151のインク圧力が回復する。結局、噴射ヘッド102から噴射された
分だけのインクが供給されて、噴射ヘッド102にインクを供給する圧力が一定に保たれ
ることになる。このように、本実施例のラインプリンター1では、圧力調整弁150を介
して噴射ヘッド102にインクを供給することで、複数の噴射ヘッド102に供給される
インク圧力を一定に保つことができ、その結果、複数の噴射ヘッド102の間でのインク
の噴射量のバラつきを抑制して高画質な画像を印刷することが可能となっている。
また、図3を用いて前述したように、本実施例のインク循環システムでは、インクカー
トリッジ62(液体容器)からのインク通路118も、噴射ヘッド102のフィルター上
流室102uからの上流側循環通路112も、フィルター下流室102dからの下流側循
環通路114も、切替弁130を介して循環ポンプ104に接続されている。そして、切
替弁130では、循環ポンプ104に接続する通路を切り替えることによって、インクを
循環させる態様を切り替えることが可能となっている。
図6は、本実施例のインク循環システムで採用されている切替弁130の大まかな構造
を示した斜視図である。図6(a)には、切替弁130の外観形状が示されており、図6
(b)には、一部を破くことによって切替弁130の内部構造が示されている。図6(a
)に示されるように、切替弁130は、大まかには、直方体の浅い容器のような形状をし
たゴム製の本体ケース132を、開口部が下面側を向くように伏せたような形状となって
いる。そして、本体ケース132の開口部に向かい合う側の面には、インクカートリッジ
62からのインク通路118や、循環ポンプ104に接続されたインク通路116、噴射
ヘッド102からの上流側循環通路112、下流側循環通路114が開口している。更に
、インク通路118が開口する部分の上方には、本体ケース132の上面に、金属製の押
付部材134が接着されている。上流側循環通路112や、下流側循環通路114が開口
する部分についても同様に、金属製の押付部材134が、本体ケース132の上面側に接
着されている。
また、図6(b)に示されるように、本体ケース132の上面に押付部材134が接着
されている箇所の裏面側からは、それぞれインク通路118、上流側循環通路112、下
流側循環通路114が開口する部分に向かって、円環状のスカート部136が立設されて
いる。このスカート部136もゴム材料で形成されており、対向する面に開口したインク
の通路(インク通路118、上流側循環通路112、下流側循環通路114)の周囲に当
接することで、通路を封止することが可能となる。
図7は、切替弁130の詳細な構造を示す断面図である。図示されているように、イン
ク通路118、上流側循環通路112、下流側循環通路114が開口する部分には、コイ
ルバネ134sが設けられている。そして、本体ケース132の裏面側から立設されたス
カート部136は、コイルバネ134sによって押し上げられて、先端が開口部分の周囲
に当接しないようになっている。更に、本体ケース132の上方にはカム山142a、1
42b、142cが設けられたカム軸140と、カム軸140を回転させるモーター14
4とが設けられており、カム軸140を回転させることにより、カム山142a、142
b、142cが押付部材134を介して、本体ケース132の上面をコイルバネ134s
の反力に抗して押し下げられるようになっている。そして、カム山によって押し下げられ
たスカート部136は、インクの通路が開口した部分の周囲に当接して、そのインクの通
路を封止する。
図7に示した例では、インクカートリッジ62からのインク通路118が開口する部分
、および下流側循環通路114が開口する部分では、カム山142cおよびカム山142
bによってスカート部136が押し下げられており、その結果として、インク通路118
および下流側循環通路114は封止されている。これに対して、上流側循環通路112が
開口する部分では、カム山142aによってスカート部136が押し下げられておらず、
上流側循環通路112は封止されていない。その結果、図中に太い破線の矢印で表したよ
うに、上流側循環通路112とインク通路116とが連通した状態となる。
また、カム軸140を回転させて、カム山142a,142cはスカート部136を押
し下げるが、カム山142bはスカート部136を押し下げないようにすれば、下流側循
環通路114とインク通路116とを連通させることができる。同様に、カム山142a
,142bはスカート部136を押し下げるが、カム山142cはスカート部136を押
し下げないようにすれば、インク通路118とインク通路116とを連通させることが可
能である。もちろん、カム山142cのみがスカート部136を押し下げて、カム山14
2b,142aはスカート部136を押し下げないようにすれば、上流側循環通路112
および下流側循環通路114をインク通路116と連通させることも可能である。
本実施例の切替弁130は、このようにしてカム軸140を回転させることにより、イ
ンク通路116に連通する通路を、インク通路118、上流側循環通路112、下流側循
環通路114の中から選択して切り替えることが可能となっている。そして、本実施例の
インク循環システムでは、インク通路116に連通する通路を切り替えることで、インク
カートリッジ62からサブタンク106にインクを補充したり、また、噴射ヘッド102
に供給されたインクを循環させて、インクに混入した気泡を除去したりしながら、噴射ヘ
ッド102から適切にインクを噴射することが可能となっている。以下では、この点につ
いて詳しく説明する。
C.インク循環システムの動作 :
図8には、本実施例のインク循環システムが、インクカートリッジ62のインクをサブ
タンク106に供給する動作が示されている。噴射ヘッド102に供給されるインクの圧
力は、圧力調整弁150によって一定に保たれているが、サブタンク106内のインクが
不足すると、噴射ヘッド102に必要な分だけのインクを供給することができなくなる。
そこで、液面センサ106sで検出されたインク液面が低下すると、インクカートリッジ
62からサブタンク106にインクが補充されるようになっている。本実施例のインク循
環システムでは、このような場合、以下のようにしてインクの補充を行う。
先ず、切替弁130では、インクカートリッジ62からのインク通路118と、循環ポ
ンプ104に続くインク通路116とを連通させる。図7を用いて前述したように、イン
ク通路118に対応する位置のカム山142cだけは押付部材134を押し下げずに、他
の位置のカム山142a,142bは押付部材134を押し下げることで、インク通路1
18とインク通路116とを連通させることができる。そして、この状態で循環ポンプ1
04を作動させる。すると、インクカートリッジ62内のインクが循環ポンプ104によ
って吸い出されて、インク通路116を経由してサブタンク106に供給される。図8に
は、インクカートリッジ62から吸い出されたインクがサブタンク106に供給される様
子が、太い破線の矢印によって表されている。このように、本実施例のインク循環システ
ムでは、サブタンク106に設けられた液面センサ106sにより、サブタンク106内
のインク液面が常に所定範囲内に保たれるようになっている。
また、サブタンク106から噴射ヘッド102に向けて供給されるインクに、気泡が混
入することがある。あるいは、噴射ヘッド102に初めてインクを充填する初期充填を行
った場合、噴射ヘッド102までの経路中に気泡が残ってしまうことがある。このような
気泡は、インクによって流されて、やがて噴射ヘッド102内に設けられたヘッドフィル
ター102fに捕捉される。そして、ヘッドフィルター102fが気泡を捕捉した部分で
は、インクの流れが阻害されるので、噴射ノズルにインクを供給し難くなり、適切にイン
クを噴射することが困難となる。更に、多くの気泡がヘッドフィルター102fに付着し
てインクの流れが阻害された状態では、噴射ノズルからインクを噴射すると、ヘッドフィ
ルター102fに大きな負圧がかかって、付着している気泡を噴射ノズル側(フィルター
下流室102d側)に引き込むことも起こり得る。そして、フィルター下流室102dに
気泡が引き込まれると、その気泡が噴射ノズルの部分に入り込んで、適切にインクを噴射
することが困難となる。そこで、こうした事態の発生を回避するために、本実施例のイン
ク循環システムでは、以下のようにして、噴射ヘッド102内のヘッドフィルター102
fの上流側(フィルター上流室102u)のインクを循環させている。
図9は、本実施例のインク循環システムがフィルター上流室102uのインクを循環さ
せる動作が示されている。先ず、切替弁130では、フィルター上流室102uからの上
流側循環通路112と、循環ポンプ104に続くインク通路116とを連通させる。図7
を用いて前述したように、上流側循環通路112に対応する位置のカム山142aは押付
部材134を押し下げずに、他の位置のカム山142b,142cは押付部材134を押
し下げることで、上流側循環通路112とインク通路116とを連通させる。そして、こ
の状態で循環ポンプ104を作動させることで、フィルター上流室102u内のインクが
、逆止弁108および上流側循環通路112を介して循環ポンプ104によって吸い出さ
れ、インク通路116を経由してサブタンク106に供給される。図9には、フィルター
上流室102uから吸い出されたインクがサブタンク106に戻される様子が、太い破線
の矢印によって表されている。
また、こうしてフィルター上流室102uからインクを吸い出すと、圧力調整弁150
の下流側の圧力が低下するので、圧力調整弁150が開弁し、サブタンク106からイン
クが取り込まれて、インク供給通路110および逆止弁108を介してフィルター上流室
102uに供給される。図9には、サブタンク106からフィルター上流室102uにイ
ンクが供給される様子が、破線の矢印によって表されている。その結果、サブタンク10
6とフィルター上流室102uとの間でインクが循環することになる。
そしてサブタンク106は、フィルター上流室102uや、インクの通路(インク供給
通路110、上流側循環通路112、インク通路116)、圧力調整弁150などに比べ
て通路断面が大きく、インクの流れが緩やかなので、サブタンク106内では、インクと
共に流されてきた気泡が上方へと浮き上がって、インクと気泡とが分離される。従って、
気泡が分離されたインクが、圧力調整弁150を介してフィルター上流室102uに供給
される。こうして、サブタンク106で気泡を分離しながら、サブタンク106とフィル
ター上流室102uとの間でインクを循環させることにより、噴射ヘッド102内のヘッ
ドフィルター102fよりも上流側に混入した気泡を全て排除することが可能となる。ま
た、サブタンク106とフィルター上流室102uとの間でインクを循環させるだけで、
気泡と共にインクを排出しているわけではないので、インクが無駄になることもない。
もちろん、ヘッドフィルター102fの上流側のインクを循環させるだけでは、ヘッド
フィルター102fの下流側に混入した気泡を排除することはできない。そして、ヘッド
フィルター102fの下流側に混入した気泡が噴射ノズルの部分に入り込むと、適切にイ
ンクを噴射することができなくなる。そこで、本実施例のインク循環システムでは、フィ
ルター下流室102dのインクも循環させることにより、ヘッドフィルター102fの下
流側に混入した気泡も排除することが可能となっている。
図10は、本実施例のインク循環システムがフィルター下流室102dのインクを循環
させる動作が示されている。フィルター下流室102dのインクを循環させる場合には、
フィルター下流室102dからの下流側循環通路114と、循環ポンプ104に続くイン
ク通路116とが連通するように、切替弁130を切り替える。図7を用いて前述したよ
うに、下流側循環通路114に対応する位置のカム山142bは押付部材134を押し下
げずに、他の位置のカム山142a,142cは押付部材134を押し下げることで、下
流側循環通路114とインク通路116とを連通させることができる。そして、この状態
で循環ポンプ104を作動させることにより、フィルター下流室102d内のインクが、
逆止弁108および下流側循環通路114を介して循環ポンプ104によって吸い出され
、インク通路116を経由してサブタンク106に供給される。図10には、フィルター
下流室102dから吸い出されたインクがサブタンク106に戻される様子が、太い破線
の矢印によって表されている。
また、フィルター上流室102uからインクを吸い出した場合と同様に、フィルター下
流室102dからインクを吸い出した場合にも、圧力調整弁150の下流側の圧力が低下
して圧力調整弁150が開弁し、サブタンク106からインクが取り込まれて、インク供
給通路110および逆止弁108を介してフィルター下流室102dに供給される。図1
0には、サブタンク106からフィルター下流室102dにインクが供給される様子が、
破線の矢印によって表されている。その結果、サブタンク106とフィルター下流室10
2dとの間でインクが循環することになる。
こうして、サブタンク106とフィルター下流室102dとの間でインクを循環させる
ことで、サブタンク106で気泡が分離されていき、噴射ヘッド102内のヘッドフィル
ター102fよりも下流側に混入した気泡を全て排除することが可能となる。もちろん、
サブタンク106とフィルター下流室102dとの間でインクを循環させるだけなので、
気泡を排出するためにインクが無駄に消費されることもない。
以上に説明したように、本実施例のインク循環システムでは、切替弁130を切り替え
て循環ポンプ104を作動させることにより、ヘッドフィルター102fの上流側のイン
クも、ヘッドフィルター102fの下流側のインクも、サブタンク106との間で循環さ
せることができる(図9および図10を参照のこと)。その結果、ヘッドフィルター10
2fの上流側あるいは下流側に気泡が混入した場合でも、インクの流れによって気泡をサ
ブタンク106まで導いて、気泡だけをサブタンク106で捕捉することができる。この
ため、本実施例のラインプリンター1のように、複数の噴射ヘッド102が並列に接続さ
れている場合でも、それぞれの噴射ヘッド102内の気泡を完全に排出させることができ
る。もちろん、噴射ヘッド102内のインクを循環させているだけなので、気泡を排出す
るために無駄にインクを消費することもない。また、インクを循環させる際の通路抵抗は
、それぞれの噴射ヘッド102間で完全には同じにならないが、インクの循環量が大きく
相違するほどの違いはない。従って、何れの噴射ヘッド102についても、混入した気泡
を確実に排除することが可能となる。
また、噴射ヘッド102に設けられた噴射ノズルからインクを噴射することで、サブタ
ンク106内のインクが減少した場合には、切替弁130を切り替えて循環ポンプ104
を作動させることで、インクカートリッジ62内のインクをサブタンク106に補充する
ことができる(図8を参照のこと)。加えて、サブタンク106からは、圧力調整弁15
0を介して、それぞれの噴射ヘッド102にインクが供給されるので、各噴射ヘッド10
2へのインクの供給圧力を一定に保っておくことが可能となる。
そして、切替弁130を用いて、上流側循環通路112、下流側循環通路114、イン
ク通路118を切り替えることにより、噴射ヘッド102内のインクの循環と、インクカ
ートリッジ62からのインクの補充とを、1つの循環ポンプ104を用いて行うことがで
きるので、部品点数が減少し、その結果、故障の可能性や製造時の組み立てミスが減少す
ると共に、製造コストも抑制することが可能となる。
また、それぞれの噴射ヘッド102には、1つの圧力調整弁150を介してインクが供
給されるので、噴射ヘッド102毎に圧力調整弁150を設ける必要がない。このため、
圧力調整弁150の動作圧力のバラツキに起因して、噴射ヘッド102間でのインクの供
給圧力のバラツキを抑制することができる。加えて、それぞれの噴射ヘッド102で圧力
調整弁150を共用することができるので、部品点数が減少して、故障の可能性や製造時
の組み立てミスが減少すると共に、製造コストも抑制することが可能となる。
更に、噴射ヘッド102にインクを供給するインク供給通路110にも、噴射ヘッド1
02のフィルター上流室102uからインクを循環させる上流側循環通路112にも、フ
ィルター下流室102dからインクを循環させる下流側循環通路114にも、それぞれ逆
止弁108が設けられている。このため、たとえ噴射ヘッド102の噴射ノズルに負圧を
作用させて、噴射ヘッド102内のインクを吸い出す吸引クリーニングを行う場合でも、
隣の噴射ヘッド102からインクが逆流して、インクと共に気泡を吸い込んでしまうこと
がない。
加えて、本実施例のインク循環システムでは、噴射ヘッド102のヘッドフィルター1
02fより上流側のインク(すなわち、フィルター上流室102u内のインク)を循環さ
せる循環経路と、ヘッドフィルター102fより下流側のインク(すなわち、フィルター
下流室102d内のインク)を循環させる循環経路の2系統の循環経路が設けられており
、そして、切替弁130を切り替えることにより、何れか一方の循環経路のみ、インクを
循環させることが可能となっている。このように1つの循環経路だけ、インクを循環させ
ることで、循環ポンプ104の容量をむやみに大きくしなくても、噴射ヘッド102内あ
るいは途中の循環経路内でのインクの流速を十分な値に保って、より完全に気泡を排出す
ることが可能となる。もちろん、切替弁130の切り換えにより、2つの循環経路を同時
に循環させれば、インクの流速は低下するものの、噴射ヘッド102内の気泡を一度に排
出することが可能となる。
D.変形例 :
上述した実施例では、インク中に混入した異物を除去するためのフィルター(すなわち
、ヘッドフィルター102f)が、噴射ヘッド102の内部に設けられているものとして
説明した。しかし、インク中の異物を除去するためのフィルターを、圧力調整弁150の
上流側(すなわち、サブタンク106と圧力調整弁150との間)に設けるものとしても
良い。こうすれば、インクの循環経路が単純になり、その結果、より単純な構成のインク
循環システムを構成することが可能となる。以下では、このような変形例のインク循環シ
ステムについて説明する。尚、変形例では、上述した本実施例と共通する構成部分につい
ては、本実施例と同じ符番を付すことにより、その構成部分についての詳細な説明は省略
することとする。
図11は、変形例のインク循環システムの構成を示した説明図である。尚、図1および
図2を用いて前述したように、本実施例のラインプリンター1には、C(シアン)インク
、M(マゼンタ)インク、Y(イエロー)インク、K(ブラック)インクのインク毎に噴
射ユニット100が設けられており、それぞれの噴射ユニット100に、同様なインク循
環システムが設けられている。そこで、図11においても、代表として1つの噴射ユニッ
ト100についてのみ表示されている。
図11に示されるように、変形例のインク循環システムでは、サブタンク106と圧力
調整弁150との間に、インク中の異物を除去する為のタンクタンクフィルター150f
が設けられている。また、インク中の異物はこのタンクタンクフィルター150fで除去
されてしまうため、噴射ヘッド102内には、ヘッドフィルター102fは設けられてい
ない。このため、変形例では、噴射ヘッド102内がヘッドフィルター102fによって
2つに区切られていないので、2つの循環経路を設ける必要がない。すなわち、変形例の
インク循環システムは、図3に示した本実施例のインク循環システムの上流側循環通路1
12と下流側循環通路114とを1つの循環通路112にまとめたような構成となってい
る。
また、タンクフィルター150fは、サブタンク106と圧力調整弁150との間に設
けられているので、タンクフィルター150fとサブタンク106との間のインク供給通
路110は短くなっている。従って、たとえタンクフィルター150fの上流側の面に気
泡が付着しても、暫く放置しておけば、気泡の浮力によって比較的容易にサブタンク10
6に移動する。このため、変形例のインク循環システムでは、タンクフィルター150f
の上流側のインクを無理に循環させる必要性が乏しいということができる。特に、タンク
フィルター150fの上流側の面がサブタンク106に直接面するような位置にタンクフ
ィルター150fを設けておけば、タンクフィルター150fの上流側のインクを循環さ
せる必要は全く無い。
このように変形例のインク循環システムでは、インクの循環経路が単純になるので、イ
ンクを循環させる際の通路抵抗を更に抑制することができる。その結果、部品点数が減少
するので、故障の可能性や製造時の組み立てミスが減少すると共に、製造コストも抑制す
ることが可能となる。また、変形例のインク循環システムにおいても、それぞれの噴射ヘ
ッド102に対しては圧力調整弁150を介してインクが供給されているので、噴射ヘッ
ド102に供給されるインクの圧力を適切な圧力範囲に保つことができ、その結果、各噴
射ヘッド102で適切にインクを噴射することができる。
加えて、変形例のインク循環システムでは、圧力調整弁150の上流側に設けたタンク
フィルター150fで、インク中の異物を除去することができる。このため、インク中の
異物によって、圧力調整弁150の動作に不調を来すことも無い。その結果、それぞれの
噴射ヘッド102に供給されるインクの圧力を、常に安定した圧力範囲に保っておくこと
が可能となる。
以上、本願発明の実施例について説明したが、本発明は上記に限られるものではなく、
その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上述した実施例では、切替弁130がカムによって駆動されるものとして説明
した。しかし、カムに限らず、例えばソレノイドを用いた電磁的な方法を用いて切替弁1
30を駆動したり、あるいは空気圧を用いて切替弁130を駆動しても構わない。
1…ラインプリンター、 10…給紙カセット、 20…給紙ローラー、
30…ヘッドユニット、 40…キャップ、 50…吸引ポンプ、
52…廃液タンク、 60…インク供給部、 62…インクカートリッジ、
100…噴射ユニット、 102…噴射ヘッド、 102d…フィルター下流室、
102f…ヘッドフィルター、 102u…フィルター上流室、
103d…第2循環口、 103u…第1循環口、 104…循環ポンプ、
106…サブタンク、 106s…液面センサ、 108…逆止弁、
110…インク供給通路、 112…上流側循環通路、 114…下流側循環通路、
116…インク通路、 118…インク通路、 130…切替弁、
132…本体ケース、 134…押付部材、 134s…コイルバネ、
136…スカート部、 140…カム軸、 144…モーター、
150…圧力調整弁、 150f…タンクフィルター、 151…圧力室、
152…圧力室、 153…通路軸、 154…通路溝、
155…ベース部材、 156…支持バネ、 157…フィルム膜、
158…封止弁、 159…封止バネ

Claims (3)

  1. 液体容器に収容されている液体を複数の噴射ヘッドに供給して、該噴射ヘッドの噴射ノ
    ズルから該液体を噴射する液体噴射装置であって、
    前記複数の噴射ヘッドの上流側に設けられて、該噴射ヘッドに供給される液体を貯めて
    おく液体貯留部と、
    前記液体貯留部と前記複数の噴射ヘッドとの間に設けられると共に、該噴射ヘッド内の
    液体の圧力が所定圧力以下に低下すると開弁して、該液体貯留部側から取り込んだ液体を
    該噴射ヘッドに供給することにより、該噴射ヘッド内の液体の圧力を調整する圧力調整弁
    と、
    前記複数の噴射ヘッドに設けられた液体循環口から該噴射ヘッド内の液体を吸い出して
    前記液体貯留部へと排出することにより、該複数の噴射ヘッドと該液体貯留部との間で液
    体を循環させる循環ポンプと
    を備える液体噴射装置。
  2. 請求項1に記載の液体噴射装置であって、
    前記噴射ヘッドには、
    前記液体貯留部から液体を取り入れるための液体取入口と前記噴射ノズルとの間に設
    けられて、該液体取入口から前記液体と共に流入した異物を捕捉するヘッドフィルターと

    前記ヘッドフィルターと前記液体取入口との間に設けられた前記液体循環口である第
    1液体循環口と、
    前記ヘッドフィルターと前記噴射ノズルとの間に設けられた前記液体循環口である第
    2液体循環口と
    が設けられており、
    前記循環ポンプは、前記噴射ヘッド内の液体を、前記第1液体循環口または前記第2液
    体循環口の少なくとも一方から吸い出すことで、該液体を循環させるポンプである液体噴
    射装置。
  3. 請求項1に記載の液体噴射装置であって、
    前記液体貯留部と前記圧力調整弁との間には、前記液体に混入した異物を捕捉するタン
    クフィルターが設けられている液体噴射装置。
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