JP2011125329A - コラーゲンペプチド含有組成物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い利用効率でコラーゲンを含有すると共に飲みやすいコラーゲンペプチド含有組成物を提供する。
【解決手段】平均分子量1200以下のコラーゲンペプチドと、該コラーゲンペプチド1質量部に対して、該コラーゲンペプチド中のアミノ基とメイラード反応を生じうる糖類0.0001〜0.05質量部とを、pH5〜12の液体中で、70℃〜100℃、0.01時間〜2時間の条件で反応させるマスキング処理を行うこと、を含むコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、コラーゲンペプチド含有組成物の製造方法に関する。
コラーゲンは、ゼラチンとして食品分野で従来から用いられている動物性タンパク質であるが、真皮や結合組織などの主成分であることから、近年、医療分野や美容分野の面からも特に注目を集めている。このため、機能性の高いコラーゲンを簡便に摂取するために多くのコラーゲン入り飲食品が開発されている(例えば、特許文献1等)。また摂取したコラーゲンを体内で効果的に利用するために、高分子のコラーゲンを低分子量化したコラーゲンペプチド入りの飲食品も開発されている(例えば、特許文献2等)。
その一方で、コラーゲンは、ゼラチン様の不快臭とコラーゲン独特の不快味を有するため、食品にそのまま配合すると、食品そのものの美味しさや香りを損なう場合があり、消費者の嗜好性に合わないことがある。
このような不快な味又は香りをマスキングするため、例えば、特許文献3では、スクラロースを含有するマスキング剤を配合したコラーゲン含有可食性製品が開示されており、ゼラチン加水分解物の3重量%水溶液にスクラロースを配合することにより、コラーゲン特有の付加臭及び嫌味が有意にマスキングできると記載されている。
また、特許文献2では、スクラロース及びステビア抽出物を含有したコラーゲン含有飲食品が開示されており、コラーゲンペプチドと、スクラロースと、ステビア混合物と、アセスルファムカリウムを混合溶解して、pHを調整後、加熱殺菌したコラーゲン含有飲料が開示されている。
コラーゲンペプチドと同様に、苦みや渋みを呈するペプチドとして大豆タンパク質由来のペプチドも知られている。例えば特許文献4では、この大豆タンパク質由来のペプチドと、マルトシルトレハロースなどのオリゴ糖とが添加された飲食品を開示しており、オリゴ糖を添加することによって、甘味および酸味にほとんど影響することなく、ペプチド含有飲食品の苦み、渋みを低減させることができると記載されている。
また、特許文献5には、大豆ペプチドに、クエン酸ナトリウムなどの有機酸のナトリウム塩と、マルチトールなどの糖類とを添加して得られる苦味の低減した食品及び飲料が開示されている。
しかしながら、スクラロースなどのマスキング剤による苦みの低減効果は十分ではない。特に、コラーゲンの吸収性を高めるために分子量を小さくすれば、苦みの原因となる末端アミノ酸が増えるため、飲みやすいとは言い難い。苦みを緩和するために多量の甘味料を添加すると、味のすっきり感が損なわれることがある。このため、高い利用効率でコラーゲンを摂取できると共に飲みやすいコラーゲンペプチド含有組成物及びこれを含む飲食品に対する要望は十分に満足されていない。
特開平3−160956号公報 特開2006−204287号公報 国際公開00/24273号パンフレット 特開2007−97465号公報 特開2000−300190号公報
本発明の目的は、高い利用効率でコラーゲンを含有すると共に飲みやすいコラーゲンペプチド含有組成物を提供することである。
本発明は以下のとおりである。
[1]平均分子量1200以下のコラーゲンペプチドと、該コラーゲンペプチド1質量部に対して、該コラーゲンペプチド中のアミノ基とメイラード反応を生じうる糖類0.0001〜0.05質量部とを、pH5〜12の液体中で、70℃〜100℃、0.01時間〜2時間の条件で反応させるマスキング処理を行うこと、を含むコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
[2] 前記糖類の量が、前記コラーゲンペプチド1質量部に対して0.001〜0.03質量部である[1]に記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
[3] 前記コラーゲンペプチドが、平均分子量1000以下のコラーゲンペプチドである[1]又は[2]のいずれかに記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
[4] 更に、加熱滅菌処理を行うことを含む[1]〜[3]のいずれかに記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
[5] 前記糖類が、還元性単糖、還元性二糖、還元性三糖及び還元性オリゴ糖から選択された少なくとも1つの還元糖である[1]〜[4]のいずれかに記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
[6] リジン、プロリン及びオルニチンからなる群より選択された少なくとも1つの追加アミノ酸を、前記マスキング処理により得られた反応物に添加することを更に含む[1]〜[5]のいずれかに記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
[7] リジン及びプロリンからなる群より選択された少なくとも1つの追加アミノ酸を、前記マスキング処理により得られた反応物に添加することを更に含む[1]〜[5]のいずれかに記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
[8] 包摂剤及び甘味料からなる群より選択された少なくとも1つ添加成分を、前記マスキング処理により得られた反応物に添加することを更に含む[1]〜[7]のいずれかに記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
[9] アスコルビン酸を、前記マスキング処理により得られた反応物に更に添加することを含む[1]〜[8]のいずれかに記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法により得られ、糖類の総量が、前記コラーゲンペプチド1質量部に対して0.0001〜0.5質量部であるコラーゲンペプチド含有組成物。
[11] 平均分子量1200以下のコラーゲンペプチドを含み、該コラーゲンペプチドに対してニンヒドリン反応を行った際に示される遊離アミノ基末端量が、当該コラーゲンペプチドと同一質量のグリシンに対してニンヒドリン反応を行った際に示される遊離アミノ基末端量100に対して5以下であるコラーゲンペプチド含有組成物。
[12] [1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法により得られた[11]記載のコラーゲンペプチド含有組成物。
[13] 前記組成物中の糖類の総量が、前記コラーゲンペプチド1質量部に対して0.0001質量部〜0.5質量部である[11]又は[12]記載のコラーゲンペプチド含有組成物。
[14] [10]〜[13]のいずれかに記載のコラーゲンペプチド含有組成物を含む飲食品。
[15] 平均分子量1200以下のコラーゲンペプチド1質量部に対して、該コラーゲンペプチド中のアミノ基とメイラード反応を生じうる糖類0.0001〜0.05質量部とを、pH5〜12の液体中で、70℃〜100℃、0.01時間〜2時間の条件で反応させるマスキング処理を行うこと、を含む本発明のコラーゲンペプチド含有組成物の臭い低減方法。
本発明によれば、高い利用効率でコラーゲンを含有すると共に飲みやすいコラーゲンペプチド含有組成物を提供することができる。
本発明のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法は、平均分子量1200以下のコラーゲンペプチドと、該コラーゲンペプチド1質量部に対して、該コラーゲンペプチド中のアミノ基とメイラード反応を生じうる糖類0.0001〜0.05質量部とを、pH5〜12の液体中で、70℃〜100℃、0.01時間〜2時間の条件で反応させるマスキング処理を行うこと、を含むコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法である。
本発明によれば、平均分子量1200以下のコラーゲンペプチドと、メイラード反応を生じうる所定の糖類とを、pH5〜12の液体中、所定の条件で反応させるマスキング処理を行うので、コラーゲンペプチドの末端のアミノ酸と糖類との間でメイラード反応が生じて、コラーゲンペプチドに由来する苦みや不快臭が低減する。この結果、本コラーゲンペプチド含有組成物は、低分子量コラーゲンペプチドを含有するためコラーゲンの利用効率が高く、且つ苦みや不快臭が抑えられた飲みやすいコラーゲンペプチド含有組成物及び飲食品を提供することができる。
なお、本発明におけるコラーゲンペプチド含有組成物とは、飲料又は食品等として最終製品そのものを構成する組成物のみならず、最終製品の一部を構成する原料組成物であってもよい。原料組成物として場合には、飲料又は食品に適用される他の同様の組成物と混合し、また製品化のための処理に付されて、飲食品を構成してもよい。
また本発明におけるコラーゲンペプチド含有組成物は、マスキング処理において液体であればよく、その後、乾燥処理を行って粉末状としても、増粘剤を配合してゲル状としても、水性媒体と混合して溶液状としてもよい。また、コラーゲンペプチド含有組成物を含む飲食品も、同様に粉末状、ゲル状、溶液状など如何なる形態であってもよい。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下に本発明を説明する。
本発明で用いられるコラーゲンペプチドは、平均分子量1200以下の低分子量コラーゲンペプチドである。コラーゲンペプチドの平均分子量を1200以下とすることにより、飲食品として摂取したときのコラーゲンペプチドの吸収性が高くなる。またこの範囲の平均分子量のコラーゲンペプチドであれば、コラーゲンペプチドそのものが容器に付着する量を許容範囲まで低減できる。コラーゲンの吸収性の観点から、コラーゲンペプチドの平均分子量は1000以下であることが好ましく、800以下であることが更に好ましい。またコラーゲンペプチドの平均分子量は、味の観点や加熱処理を行うにあたっての栄養成分保護の観点で300以上であることが好ましく、400以上であることが更に好ましい。コラーゲンペプチドの平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて確認できる。即ち、GPCでコラーゲンペプチドの平均分子量を求めるには、あらかじめ分子量が既知でそれぞれ異なる複数のポリエチレングリコール(PEG)数種を同条件で測定して得られたリテンションタイムと分子量との関係の検量線を元に算出すればよい。本発明における平均分子量とは、この手法に従ってPEG換算で算出した重量平均分子量を指す。
コラーゲンペプチドは、ゼラチンを酵素や酸で加水分解して得られたものであり、グリシンを多く含むタンパク質であり、市販品としても入手可能である。コラーゲンとしては、哺乳類のコラーゲン組織から抽出したコラーゲンであっても、魚類のコラーゲン組織から抽出したコラーゲンであっても、特に限定されるものではない。近年、商品イメージや安全性等の観点から、魚類由来のコラーゲンであることが好ましい。魚類由来のコラーゲンの原料としては、海水魚であっても淡水魚であってもよく、マグロ(キハダ)、サメ、タラ、ヒラメ、カレイ、タイ、テラピア、サケ等の皮が挙げられる。哺乳類由来のコラーゲンの原料としては、ブタ、牛などが挙げられる。
また、コラーゲンペプチドを構成するアミノ酸組成及びアミノ酸数については、上記分子量の範囲内であれば特に制限はなく、例えば、アミノ酸を3残基(ペプチド結合2個)有するコラーゲントリペプチドなど、ペプチド結合を2〜6個有するオリゴペプチドが挙げられる。
本コラーゲンペプチド含有組成物において、マスキング処理時の溶液におけるコラーゲンペプチドの含有量は、メイラード反応が進行可能な量で存在すればよく、一般に溶液の全質量に対して0.1質量%〜90質量%とすればよく、溶解時間と反応性の観点から1質量%〜80質量%であることが好ましい。
本発明のマスキング処理で用いられる糖類は、コラーゲンペプチドの末端アミノ基との間でメイラード反応を生じ得るものである。このため、本コラーゲンペプチド含有組成物における糖類は、ケトン又はアルデヒドを少なくとも1つ有する糖を含むが、メイラード反応を生じ得ない糖アルコールは含まれない。
本発明のマスキング処理においてコラーゲンペプチドとの反応に用いられる糖類は、メイラード反応を生じうるケトン又はアルデヒドであればよく、還元糖を挙げることができる。コラーゲンペプチドとの間でのメイラード反応の効率よい発生の観点から、糖類としては、還元糖であることが好ましい。
このような還元糖としては、水溶液中で還元性を有する糖であればよく、還元性単糖、還元性二糖、還元性三糖及び還元性オリゴ糖から選択された少なくとも1つの還元糖であることがマスキング処理の観点から好ましい。還元糖としては、例えば、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース、ガラクトース、マンノース、イドース、アルトロース、グロース、タロース、アロース、キシロース、アラビノース、リキソース、リボース、トレオース、エリトロース、エリトルロース、キシルロース、リブロース、プシコース、ソルボース、タガトース等の単糖、マルトース、ラクトース、パラチノース等の二糖、ラフィノース等の三糖等が挙げられる。また、これらの異性化糖であってもよく、また所謂オリゴ糖であってもよい。オリゴ糖としては、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明においてオリゴ糖とは、糖単位を4〜20個有する糖類を意味する。
還元糖としては、反応制御の観点からの観点から、中でもマルトース(麦芽糖)であることが好ましい。
マスキング処理において、このような糖類は、コラーゲンペプチド1質量部に対して糖類0.0001〜0.05質量部の範囲でコラーゲンペプチドと反応を行う。糖類の量が、コラーゲンペプチド1質量部に対して0.0001質量部未満の場合には、効果的なマスキングが期待できず、一方、0.05質量部を超えると反応速度が増加し、制御が難しくなる。コラーゲンペプチドの効果的なマスキングの観点から、コラーゲンペプチド1質量部に対して0.001〜0.03質量部であることが好ましい。
本発明におけるマスキング処理は、pH5〜12の液体中、70℃〜100℃、0.01時間〜2時間の条件で行われる。
マスキング処理における加熱温度が70℃未満の場合は、実際的に許容される製造工程時間内でのマスキング反応によるコラーゲンペプチドのマスキングを行うことが困難となり、一方、100℃を超える場合は、反応の進行速度が速まるため、コラーゲンペプチドのマスキングの調節が難しくなる。
また、反応時間が0.01時間未満では、マスキング反応による効果的なマスキングが期待できず、一方、2時間を超えると反応が進行し過ぎて不快な風味が付与されることがある。
マスキング処理における加熱温度は、反応を安定に進め、かつ適切な程度に調節する観点から75℃〜95℃であることが好ましく、80℃〜90℃であることがより好ましい。
また加熱時間は、十分なマスキング効果を得るため及び副生成物による余計な風味を付与しない観点から、0.05時間〜1時間であることが好ましく、0.1時間〜0.5時間であることがより好ましい。
効果的なマスキング処理は、加熱温度と加熱時間との関係で決定されることが好ましい。効果的なマスキング処理と含有成分の劣化との関係から、75℃〜95℃且つ0.1時間〜3時間であることが更に好ましい。
またマスキング処理時の液体のpHはpH5〜12である。pH5以上であれば実際の製造を考えた場合に短時間で効果的なマスキングが期待でき、pH12を超えると反応速度が増加して反応制御が困難となり、不快な風味が付与されることがある。
マスキング処理時の液体は、マスキング反応の速度の観点からpH5.3〜10とすることが好ましく、pH5.5〜8であることがより好ましい。
pHの調整に使用可能なpH調整剤は、食品分野で通常用いられるものであればよい。使用可能なpH調整剤としては、特に制限はなく、クエン酸、グルコン酸、L−酒石酸、リンゴ酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、フィチン酸及びこれらの誘導体のような有機酸と、重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸カリウムなどの無機酸を挙げることができる。これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。また上記有機酸は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩の形態であってもよい。
pHの調整に関しては、マスキング処理時にpH5〜12となっていればよく、pH調整の時期は加熱の前後、加熱中のいずれであってもよい。特に、糖類の添加によるpHの変動幅は無視できる程度に小さいので、コラーゲンペプチドを含む溶液に対してpH調整した後であれば、糖類添加前のpHと同視してもよい。
マスキング処理のためのメイラード反応は、コラーゲンペプチド及び糖類の双方の存在と、pH条件及び温度条件がそろった時点で開始する。
このため、メイラード反応の反応系となる液体は、コラーゲンペプチド及び糖類の双方を溶解可能な液体であればよく、このような液体としては、一般に水を挙げることができる。また、メイラード反応開始前の液体は、コラーゲンペプチド及び糖類のいずれもが含まれない液体であってもよく、これらのうちのコラーゲンペプチドのみが溶解した溶液であってもよく、これらのうちの糖類のみが溶解した溶液であってもよく、コラーゲンペプチド及び糖類の双方が溶解した溶液であってもよいが、メイラード反応開始時の液体は、コラーゲンペプチド及び糖類の双方の混合溶液である。
マスキング処理のために、糖類及びコラーゲンペプチドを、反応系としての液体へ添加する時期には特に制限はなく、加熱の前後のいずれであってよく、加熱中に添加してもよい。また糖類とコラーゲンペプチドとの添加順序についても特に制限はなく、いずれが先であっても本発明の利益は同様に得ることができる。
例えば、液体へ糖類を添加する時期は、コラーゲンペプチドの添加の前後又は同時であってもよく、また、上記pH条件及び温度条件が満たされる前又は後のいずれであってよく、加熱しながら投入してもよい。加熱しながら糖類を添加する場合には、処理時間の短縮の観点からは、マスキング処理温度まで昇温しながら添加することが好ましく、反応の制御しやすさの観点からは、マスキング処理温度までの昇温幅が少ない時点で添加することが好ましい。加熱後に糖類を、コラーゲンペプチドを含む溶液へ添加する場合には、糖類の添加時点を、マスキング処理時間の始点とする。コラーゲンペプチドの反応溶液への添加時期は、コラーゲンペプチドの添加によってpHの変動を伴うことがあるので、添加後にpH調整を行うことが好ましい以外は、特に制限はない。反応均一性の観点から、コラーゲンペプチドを含む溶液を所定の温度に加熱しながら、糖類をこの溶液に添加することが好ましい。
本発明の製造方法では、マスキング処理後に得られた反応物に更に加熱滅菌処理を行ってもよい。マスキング処理後に行われる加熱滅菌処理は、通常、飲食品分野において用いられている加熱滅菌処理であればよく、例えば、65℃〜100℃による0.1時間〜1時間の処理が挙げられ、内容物の過剰な変質を引き起こさない観点から好ましくは65℃〜85℃で0.1時間〜1時間の処理が挙げられる。この加熱滅菌処理を行うことによって、滅菌済みのコラーゲンペプチド含有組成物が得られる。
加熱滅菌処理をマスキング処理後に得られた反応物に行うことから、上記コラーゲンペプチド及び糖類以外の他の添加成分を、マスキング処理後に得られた反応物に添加してもよい。マスキング処理後に添加される各添加成分の添加時期は、通常の添加時期であればよく、特に制限はない。
このような他の添加成分としては、リジン、プロリン及びオルニチンからなる群より選択された少なくとも1つの追加アミノ酸が挙げられる。追加アミノ酸を、マスキング処理により得られた反応物に対する添加成分とすることによって、リジン、プロリン又はオルニチンが、糖との反応した形態ではなく、アミノ酸構造を維持した単体の状態で提供される。リジン、プロリン及びオルニチンは、コラーゲンの構成成分又はコラーゲンの合成促進成分として知られている。体内でのこれらの追加アミノ酸を添加することによって、体内におけるコラーゲンの生成効率及び利用効率が高まる。
特にコラーゲン分子におけるリジン及びプロリンは、ヒドロキシル化などの修飾形態で含まれており、このような修飾形態では体内で利用できないことが知られている。本発明では、未修飾形態でリジン及びプロリンが添加されることにより、他のコラーゲンの構成成分と共に利用されて体内でのコラーゲンの生成効率が高まる。
リジン及びプロリンは、アミノ酸特有の苦味を有するため、コラーゲンペプチドへの追加が困難であるが、本マスキングにてコラーゲンペプチドの不快な風味を低減しておくことである程度の高配合が可能となる。リジン及びプロリンとしては、塩酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、α−ケトグルタル酸、アスパラギン酸塩などの有機酸塩の形態であってもよい。
オルニチンとしては、L−オルニチンおよびD−オルニチンが挙げられる。オルニチンは、化学的に合成する方法、発酵生産する方法等により取得したものであってもよく、市販品であってもよい。またオルニチンは、塩酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、α−ケトグルタル酸、アスパラギン酸塩などの有機酸塩の形態であってもよい。
添加成分としての追加アミノ酸の添加量は、特に制限はないが、コラーゲンペプチドの質量に対して0.01質量%〜50質量%であることがコラーゲンの生成効率および風味の観点から好ましく、0.1質量%〜30質量%であることが更に好ましい。
コラーゲンペプチド含有組成物におけるこれらの追加アミノ酸の添加量は、コラーゲンの利用効率の観点からそれぞれ決定でき、リジンの場合には、コラーゲンペプチドの質量に対して0.01質量%〜40質量%であることが好ましく、0.1質量%〜20質量%あることがより好ましく、同様に、プロリンの場合には、0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.1質量%〜30質量%であることがより好ましく、オルニチンの場合には、0.01質量%〜40質量%であることが好ましく、0.1質量%〜20質量%あることがより好ましい。
また追加アミノ酸と同様にコラーゲンの生成効率を高める観点から、更なる添加成分として、アスコルビン酸、その無機酸若しくは有機酸エステル誘導体又はそれら塩(以下、これらを総称する場合には、「アスコルビン酸類」と称する)を添加することが好ましい。これらのアスコルビン酸類は、マスキング処理により得られた反応物に添加することにより、加熱処理による分解を低減することができる。
アスコルビン酸若しくはその誘導体又はそれら塩としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸K、L−アスコルビン酸Ca、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせ使用してもよい。
添加成分としてのアスコルビン酸類の添加量は、特に制限はないが、コラーゲンペプチドの質量に対して0.01質量%〜100質量%であることがコラーゲンの生成効率の観点から好ましく、0.1質量%〜80質量%であることが更に好ましい。
また追加アミノ酸のためのマスキング剤を、更なる添加成分として、マスキング処理により得られた反応物に添加してもよい。これにより、追加アミノ酸による苦みや不快臭が低減する。このようなマスキング剤としては、飲食品分野において通常用いられている包摂剤及び甘味料が挙げられる。なお、包摂剤及び甘味料は、コラーゲンペプチド含有組成物の最終的な風味を調整にするために、追加アミノ酸の有無に拘わらず添加してもよい。
包摂剤としては、デキストリン化合物が好ましく、デキストリン化合物の中でも、シクロデキストリンが更に好ましい。シクロデキストリンは、α−、β−、γ−シクロデキストリン、分岐α−、分岐β−、分岐γ−シクロデキストリン等が挙げられる。これらのデキストリンは追加アミノ酸の質量に対して1質量%〜100質量%であることが好ましく、5質量%〜50質量%あることがより好ましい。
甘味料としては、マスキング処理において上述した糖類の他、天然又は人工甘味料であってよい。このような甘味料としては、通常用いられる単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、糖アルコール等を挙げることができ、例えば、スクラロース、α−グルコシルトランスフェラーゼ、処理ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、N−アセチルグルコサミン、アラビノース、アリテーム、イソトレハロース、イソマルチトール、イソマルトオリゴ糖(イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース等)、エリスリトール、オリゴ−N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、ガラクトシルスクロース、ガラクトシルラクトース、ガラクトピラノシル(β1−3)ガラクトピラノシル(β1−4)グルコピラノース、ガラクトピラノシル(β1−3)グルコピラノース、ガラクトピラノシル(β1−6)ガラクトピラノシル(β1−4)グルコピラノース、ガラクトピラノシル(β1−6)グルコピラノース、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、キシリトール、キシロース、キシロオリゴ糖(キシロトリオース、キシロビオース等)、グリセロール、グリチルリチン酸三アンモニウム、グリチルリチン酸三カリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、クルクリン、グルコース、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース等)、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラメート、スクロース、スタキオース、ステビア抽出物、ステビア末、ズルチン、ソルビトール、ソルボース、タウマチン(ソーマチン)、テアンデオリゴ、テアンデオリゴ糖、テンリョウチャ抽出物、トレハルロース、トレハロース、ナイゼリアベリー抽出物、ニゲロオリゴ糖(ニゲロース等)、ネオテーム、ネオトレハロース、パラチニット、パラチノース、パラチノースオリゴ糖、パラチノースシロップ、フコース、フラクトオリゴ糖(ケストース、ニストース等)、フラクトシルトランスフェラーゼ処理ステビア、フラクトフラノシルニストース、ブラジルカンゾウ抽出物、フルクトース、ポリデキストロース、マルチトール、マルトース、マルトシルβ−サイクロデキストリン、マルトテトライトール、マルトトリイトール、マルトオリゴ糖(マルトトリオース、テトラオース、ペンタオース、ヘキサオース、ヘプタオース等)、マンニトール、ミラクルフルーツ抽出物、メリビオース、ラカンカ抽出物、ラクチトール、ラクチュロース、ラクトース、ラフィノース、ラムノース、リボース、異性化液糖、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴、酵素処理カンゾウ、酵素分解カンゾウ、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)、大豆オリゴ糖、転化糖、水飴、蜂蜜等が挙げられる。これらは単独で又は2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
このほか、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
これらの添加成分は、マスキング処理後に得られた反応物に添加されてもよく、マスキング処理に供されるコラーゲンペプチド及び糖類のメイラード反応に影響しない限り、マスキング処理前の液体に添加してもよい。
[コラーゲンペプチド含有組成物]
本発明のコラーゲンペプチド含有組成物は、上記製造方法によって得られたコラーゲンペプチドを含有する組成物であり、マスキング処理されていることから、コラーゲンペプチドを含有しても苦みや不快臭が低減されている。
このため、甘味料やマスキング剤の量を通常用いられる量よりも少なくすることができる。本発明のコラーゲンペプチド含有組成物では、組成物全体として含有される糖類の総量として、コラーゲンペプチド1質量部に対して0.0001質量部〜0.5質量部のものであり、好ましくは0.0005質量部〜0.25質量部のものである。このように糖類の含有量が低減されているため、本発明のコラーゲンペプチド含有組成物は、コラーゲンペプチドを高い利用効率で含有すると共に、すっきりとした味を提供でき、飲みやすい飲食品の原料として好ましく用いられる。なお、目的等に応じて糖類の量を適宜変更することは可能であり、上記の含有量の範囲よりも糖類を多く含有する場合もある。
本発明のコラーゲンペプチド含有組成物におけるコラーゲンペプチドの含有量は、飲食品の種類及び目的等に応じて選択されるが、一般に、最終製品としてのコラーゲンペプチド含有組成物の全質量に対して1質量%〜99質量%、好ましくは5質量%〜80質量%とすることができる。
また本発明の他のコラーゲンペプチド含有組成物は、平均分子量1200以下のコラーゲンペプチドを含み、該コラーゲンペプチドに対してニンヒドリン反応を行った際に示される遊離アミノ基末端量が、当該コラーゲンペプチドと同一質量のグリシンに対してニンヒドリン反応を行った際に示される遊離アミノ基末端量100に対して5以下であるコラーゲンペプチド含有組成物である。
コラーゲンペプチドの平均分子量が1200以下になると苦みを生じることが知られているが、苦みの発生について鋭意検討した結果、苦みの原因がペプチドの遊離アミノ基末端であり、この量を減らすことで苦みが低減されることを見出した。上記コラーゲンペプチド含有組成物では、ニンヒドリン反応で示される遊離アミノ基末端量として、コラーゲンペプチドの遊離アミノ基末端量が、コラーゲンペプチドと同一質量のグリシンの遊離アミノ基末端量100に対して5以下であるので、平均分子量1200以下のコラーゲンペプチドを含有しても、苦味が低減され、飲食品として好ましく用いることができる。
コラーゲンペプチドの遊離アミノ基末端量は、ニンヒドリン反応により見積もることができる。ニンヒドリンはアミノ酸およびペプチドの発色試薬として用いられており、高温下で両者を反応させると、アミノ基由来のアンモニアを介して570nm付近に極大吸光度を持つルーヘマン色素が生成する。したがってこのルーヘマン色素の生成量とペプチドのアミノ基末端量は相関関係にあり、色素生成量から遊離アミノ基末端量を知ることができる。
組成物中のコラーゲンペプチドの量が、ニンヒドリン反応による上記の遊離アミノ基末端量としてグリシン100に対して5を超過すると、飲食品として許容される苦みが得られない。組成物中のコラーゲンペプチドの量は、上述した特定の遊離アミノ基末端量として、グリシン100に対して4.6以下であることが苦味の低減した飲料を得る観点から好ましい。
このようなコラーゲンペプチド含有組成物は、好適には、平均分子量が1200以下のコラーゲンペプチド1質量部と、該コラーゲンペプチド中のアミノ基とメイラード反応を生じうる糖類0.0001〜0.05質量部とを、pH5〜12の液体中で、70℃〜100℃、0.01時間〜2時間の条件で反応させるマスキング処理を行うことによって得ることができる。このマスキング処理については、上述した事項をそのまま適用することができる。
また、本明細書において既述した追加アミノ酸、マスキング剤、アスコルビン酸などの添加成分や、他の添加剤等についても同様に、1種又は2種以上を組み合わせて本コラーゲンペプチド含有組成物に含まれていてもよい。この場合には、本コラーゲンペプチド含有組成物の製造方法では、これらの追加成分を添加する工程を更に含んでいてもよい。
本コラーゲンペプチド含有組成物の製造方法は、マスキング処理を行って得られた反応物に対して更に加熱滅菌処理を行うことを含むものであることが、更に好ましい。
本発明の他のコラーゲンペプチド含有組成物についても同様に、コラーゲンペプチドを含有しても苦みや不快臭が低減されているので、甘味料やマスキング剤の量を通常用いられる量よりも少なくすることができる。本発明の他のコラーゲンペプチド含有組成物では、組成物全体として含有される糖類の総量として、コラーゲンペプチド1質量部に対して0.0001質量部〜0.5質量部のものとすることが好ましく、0.0005質量部〜0.25質量部であることがより好ましい。このように糖類の含有量が低減されているため、本発明の他のコラーゲンペプチド含有組成物は、コラーゲンペプチドを高い利用効率で含有すると共に、すっきりとした味を提供でき、飲みやすい飲食品の原料として好ましく用いられる。なお、上記のコラーゲンペプチド含有組成物と同様に、本コラーゲンペプチド含有組成物においても、目的等に応じて糖類の量を適宜変更することは可能であり、上記の含有量の範囲よりも糖類を多く含有する場合もある。
[飲食品]
本発明の飲食品は、上記のコラーゲンペプチド含有組成物を含むものである。特に、加熱殺菌済みのコラーゲンペプチド含有組成物を含むものであり、このコラーゲンペプチド含有組成物のみで構成したものであってもよく、更に他の原材料と組み合わせ構成してもよい。
本発明の飲食品は、上記コラーゲンペプチド含有組成物と同様に、組成物全体として含有される糖類の総量が、コラーゲンペプチド1質量部に対して0.0001質量部〜0.5質量部のものとすることが好ましく、0.0005質量部〜0.4質量部のものである。このように糖類の含有量が低減されているため、コラーゲンペプチドを高い利用効率で含有すると共に、すっきりとした味を提供でき、飲みやすい。
本発明の飲食品におけるコラーゲンペプチドの含有量は、飲食品の形態に応じて適宜選択可能である。例えば、溶液状の飲食品の場合には、コラーゲンペプチドの含有量は、一般に、飲食品全体の質量に対して0.1質量%〜75質量%であり、1質量%〜50質量%とすることが好ましい。
また本発明のコラーゲンペプチド含有組成物及び飲食品は、コラーゲンペプチドと糖類との混合溶液を加熱反応させることにより苦味マスキングしたものである。コラーゲンペプチド含有組成物及び飲食品には、マスキング反応による反応生成物が含有されており、この反応生成物の存在は、コラーゲンペプチドの構造解析、糖の検出、色素計、ニンヒドリン呈色反応などを用いて確認可能である。
本発明のコラーゲンペプチド含有組成物及び飲食品のpHは、20℃におけるpHとして、3.0〜5.0が好ましく、3.5〜4.0がより好ましく、3.8〜3.95が特に好ましい。pH3.5以上であれば飲用として適格であることが多く、一方pH4.0以下であれば安定性の点で好ましい。
本発明のコラーゲンペプチド含有組成物及び飲食品のpHは、上述したようなpH調整剤を用いて調整すればよい。また、上述した加熱殺菌処理は、pHを調整した後に行えばよい。
本発明の飲食品は、主として経口経路で体内へ供給可能な種々の形態を取ることができ、例えば粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、ドリンク剤等の形態として、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品等の飲食品として用いてもよい。
本発明のコラーゲンペプチド含有組成物の臭い低減方法は、平均分子量1200以下のコラーゲンペプチドと、該コラーゲンペプチド1質量部に対して、該コラーゲンペプチド中のアミノ基とメイラード反応を生じうる糖類0.0001〜0.05質量部とを、pH5〜12の液体中で、70℃〜100℃、0.01時間〜2時間の条件で反応させるマスキング処理を行うこと、を含むものである。
本発明の臭い低減方法では、コラーゲンペプチドに対して、所定の糖類を用いたマスキング処理を行うので、上述したように、メイラード反応が生じて、コラーゲンペプチドに特有の臭いを、効果的に低減することができる。これにより、コラーゲンペプチドを含有する組成物、例えば、コラーゲンペプチドを含有する飲食品について、コラーゲンペプチドによる機能性と高い嗜好性を共に満足させることができる。
本発明のコラーゲンペプチド含有組成物の臭い低減方法におけるコラーゲンペプチド、該コラーゲンペプチド中のアミノ基とメイラード反応を生じうる糖類、及びマスキング処理の諸条件については、上記のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法における内容をそのまま適用すればよい。
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、本発明はそれらに何ら限定されない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
[実施例1]
精製水10gにコラーゲンペプチド(魚由来)(平均分子量700)10gを添加して60℃に加温して溶解した後、マルトース0.05gを添加して溶解し、混合溶液を調整した。マルトース添加前の溶液のpHは、pH6.2であった。その後、70℃に昇温した後、2時間加熱して、マスキング処理を行った。
処理後、クエン酸を0.8g添加した後、40℃まで急速冷却した。その後、エリスリトール1g、スクラロース0.02g及びL−アスコルビン酸0.4gを順次添加し、精製水で全量を30mlとし、最終pHをpH3.9に調整した後、85℃で15分間殺菌消毒して、実施例1の試料液を調製した。
[実施例2〜9]
各成分の種類及び量を表1に記載されているように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9試料液を調製した。マルトースはコラーゲンペプチド溶解後、添加し、その後、85℃あるいは95℃に昇温した。指定時間加熱処理したのち40℃まで急冷し、途中70℃まで降温した時点で、クエン酸を添加した。なお、表1及び表2中の各成分の量は30ml中のmgで示した。
[実施例10]
実施例5において、マルトースの添加を85℃昇温完了後に行い、クエン酸の添加を急冷直前に行い、85℃加熱時間を40分にした以外は実施例5と同様にして実施例10の試料液を調製した。
[比較例1〜4、6〜10]
各成分の種類、量および加熱温度および加熱時間を表2に記載されているように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜4、6〜10の試料液を調製した。比較例7と8は、それぞれ平均分子量が1200および2000のコラーゲンペプチドを使用した。比較例1、6〜10についてはコラーゲンペプチドの加熱マスキング処理は実施しなかった。
[比較例5]
比較例4の調製において、クエン酸の添加をマルトースの添加と同時にし、反応時間を2時間に変更して、クエン酸量を700mgに減量した他は比較例4と同様にして、比較例5の試料液を調製した。
<評価試験>
(1)コラーゲン含有飲料の臭い、苦味評価試験
実施例1〜10及び比較例1〜10のコラーゲン含有飲料を飲んだときの苦味とペプチド臭について、被験者10人により評価した。評価基準は1〜6の6段階評価とし、苦味については1の方が苦いと感じる、臭気については1の方が臭気を強く感じるとして採点した。平均点を表1及び表2に示す(小数点以下は四捨五入して評価)。
(2)遊離アミノ基末端量
実施例1〜10および比較例1〜10について、マスキング処理後のコラーゲンペプチド溶液を取り出し、精製水でコラーゲンペプチド濃度0.5%(w/w)に希釈した。一方、ニンヒドリン試液(和光純薬製)を精製水で希釈し、ニンヒドリン30μmol/mL溶液を調製した。
この両液を1:1の比率(質量比)で混合し、95℃で15分加熱した後直ちに冷却した。冷却後適当な倍率で希釈し、この溶液の570nm吸光度を測定した。
また、0.025%(w/w)のグリシン溶液を調製し、コラーゲンペプチド溶液に対する上記と同様の処理を、この0.025%(w/w)のグリシン溶液に対しても行った。
両者の測定結果より遊離アミノ基末端量比を求めた。結果を表1及び表2に示す。
表1及び表2に示されるように、本発明に相当する実施例1〜実施例10の試料液は、いずれも苦味及び臭気が低減されて飲みやすいものであった。
また、遊離アミノ基末端量の結果から、熱処理したコラーゲンペプチド溶液の遊離アミノ基末端量が、該コラーゲンペプチドと同一質量のグリシン100に対して5以下である時、組成物の苦みが低減されていることが分かる。


(2)コラーゲン含有食品の連続摂取による効果実感の評価試験
比較例8、実施例2及び実施例9の試料液の効果実感について、被験者15人(女性5名ずつのA群からC群)により評価した。
被験者は、それぞれ試料液を30mlずつ1週間毎日飲み、以下の肌の状態に関する10項目について、毎日、10段階評価した。
肌の状態の記録項目:
(a)肌のうるおい、(b)肌ハリ、(c)肌のきめ、(d)肌のかさつき状態、(e)肌の弾力性、(f)化粧のり・使用感、(g)肌荒れ、(h)にきび、(i)肌のかゆみ、(j)肌のつや
コラーゲン含有食品の摂取後の肌の状態が、摂取前の肌の状態と比較して、10項目中1項目でも向上していれば、「効果を実感した」とし、効果を実感した人の割合(%)を算出した。
効果を感じた被験者の割合は、比較例8の試料液については79%なのに対して、実施例9の試料液については86%、実施例2の試料液については92%と、本発明の食品、特にコラーゲン分子量が低いものは高い割合を示した。
(3)容器内液残り評価
実施例2、実施例9及び比較例8の試料液を用いて、容器への付着の指標として容器内液残り評価を行った。
各試料液を、日本耐酸壜製の30ml容器(品番:No.2 30−25)に30mlの飲料を充填し、4℃にて冷却した後、内容物を別容器に空け替え、もとの質量と空け替え後の質量差を測定し、その差で評価した。空け替え方法は容器口を180°下に向け内容物を移し、口を下に向けてから10秒静置後、元にもどす方法で行った。
摂取後の液残りの量に基づいて、0〜0.5g未満:A、0.5g以上1.0g未満:B、1g以上:Cと評価した。その結果、実施例2及び実施例9はいずれもA(0〜0.5g未満)であったが、比較例8はB(0.5g以上1.0g未満)であった。これらの結果から、本実施例の試料液では、容器付着による損失が少ないものであった。
(4)繰り返し再現性
実施例5及び実施例10の試料液と同一の試料液を、それぞれN=5で調製してそれぞれ官能評価を行い、5つの風味バラツキを次のように評価した。A:ほぼ同等、B:わずかに異なるものあり、C:明らかに異なるものあり。
その結果、実施例5はB、実施例10はAの評価であり、マルトースの添加及びクエン酸のマスキング処理後の添加をそれぞれ高温で行った実施例10の試料液は、再現性の観点からより好ましいものであった。
これらの結果から、本発明によれば、低分子量のコラーゲンペプチドを含有すると共に、苦みや臭気が低減された飲みやすいコラーゲンペプチド含有組成物を提供することができる。

Claims (15)

  1. 平均分子量1200以下のコラーゲンペプチドと、該コラーゲンペプチド1質量部に対して、該コラーゲンペプチド中のアミノ基とメイラード反応を生じうる糖類0.0001〜0.05質量部とを、pH5〜12の液体中で、70℃〜100℃、0.01時間〜2時間の条件で反応させるマスキング処理を行うこと、
    を含むコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
  2. 前記糖類の量が、前記コラーゲンペプチド1質量部に対して0.001〜0.03質量部である請求項1記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
  3. 前記コラーゲンペプチドが、平均分子量1000以下のコラーゲンペプチドである請求項1又は請求項2記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
  4. 更に、加熱滅菌処理を行うことを含む請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
  5. 前記糖類が、還元性単糖、還元性二糖、還元性三糖及び還元性オリゴ糖から選択された少なくとも1つの還元糖である請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
  6. リジン、プロリン及びオルニチンからなる群より選択された少なくとも1つの追加アミノ酸を、前記マスキング処理後に得られた反応物に添加することを更に含む請求項1〜請求項5のいずれか1項記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
  7. リジン及びプロリンからなる群より選択された少なくとも1つの追加アミノ酸を、前記マスキング処理により得られた反応物に添加することを更に含む請求項1〜請求項5のいずれか1項記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
  8. 包摂剤及び甘味料からなる群より選択された少なくとも1つの添加成分を、前記マスキング処理により得られた反応物に添加することを更に含む請求項1〜請求項7のいずれか1項記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
  9. アスコルビン酸を、前記マスキング処理により得られた反応物に更に添加することを含む請求項1〜請求項8のいずれか1項記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の製造方法により得られ、糖類の総量が、前記コラーゲンペプチド1質量部に対して0.0001〜0.5質量部であるコラーゲンペプチド含有組成物。
  11. 平均分子量1200以下のコラーゲンペプチドを含み、該コラーゲンペプチドに対してニンヒドリン反応を行った際に示される遊離アミノ基末端量が、当該コラーゲンペプチドと同一質量のグリシンに対してニンヒドリン反応を行った際に示される遊離アミノ基末端量100に対して5以下であるコラーゲンペプチド含有組成物。
  12. 請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の製造方法により得られた請求項11記載のコラーゲンペプチド含有組成物。
  13. 前記組成物中の糖類の総量が、前記コラーゲンペプチド1質量部に対して0.0001質量部〜0.5質量部である請求項11又は請求項12記載のコラーゲンペプチド含有組成物。
  14. 請求項10〜請求項13のいずれか1項記載のコラーゲンペプチド含有組成物を含む飲食品。
  15. 平均分子量1200以下のコラーゲンペプチド1質量部と、該コラーゲンペプチド中のアミノ基とメイラード反応を生じうる糖類0.0001〜0.05質量部とを、pH5〜12の液体中で、70℃〜100℃、0.01時間〜2時間の条件で反応させるマスキング処理を行うこと、
    を含むコラーゲンペプチド含有組成物の臭い低減方法。
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