JP4939788B2 - 苦味、渋味が低減されたペプチド含有飲食品およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は苦味が低減されたペプチド含有飲食品の製造に関する。
タンパク質は、身体を構成するために必要な重要な栄養成分である。タンパク質は、アミノ酸で構成されている。特に近年、複数のアミノ酸で構成されたペプチドの栄養機能性が注目されている。これらのペプチドは、乳由来、大豆由来などのタンパク質をタンパク質分解酵素によって加水分解することにより得られる。これらのペプチドは、様々な食品・栄養補助食品・健康食品・飲料等に用いられている。
しかしながら、これらのペプチドは苦味や渋みを有するため、嗜好性の高い飲食品の成分として用いることは困難であった。このようなペプチドの苦味、渋味を低減させる方法としては、複合のタンパク分解酵素を用いてペプチドの苦味、渋味を低減させる方法(特開平7−274995号公報)、ペプチドにリン脂質を添加し苦味を低減させる方法(特開平8−173093号公報)、ペプチドに糖アルコール、酸味料、フレーバー等を加えて苦味を低減させる方法(特開平9−249694号公報)、有機酸と二糖類を添加する方法(特許公開2000−300190)等が試みられている。
しかしながら、例えば、ペプチドを含有する飲食品にプロテアーゼ、ペプチダーゼを含む複合酵素を添加すると、これら酵素によりペプチドの構造が変化し、本来ペプチドが有する栄養機能性が失われる。また、リン脂質を添加すると、リン脂質自体の味が好ましくないため、嗜好性の高い飲食品を調製する場合には好ましくない。さらに、糖アルコール、酸味料、特定のフレーバーを添加した場合には、各々が低分子であるために添加物の味が飲食品全体の味に過剰に強く影響して、本来の自然な味が損なわれることとなる。従って、これらの方法は、嗜好性の高い飲食品を製造するためには満足できるものではなかった。
特開平7−274995 特開平8−173093 特開平9−249694 特開2000−300190
苦味、渋味を有するペプチドを含有しているにもかかわらず、苦味、渋味を感じる程度を低減させることによって、高い嗜好性が確保された飲料または食品(飲食品)を提供することが本発明の課題である。
本発明者らは、ペプチドを含有する飲食品にオリゴ糖を添加することにより、苦味および渋味を低減させることができることを見いだした。すなわち、本発明は、ペプチドを含有する飲食品であって、単糖が3個以上結合したオリゴ糖が添加されていることを特徴とする飲食品を提供する。好ましくは、ペプチドは、乳タンパク質または大豆タンパク質由来である。また好ましくは、飲食品中のペプチドの含有量は0.2%〜10%である。
好ましい態様においては、オリゴ糖は、ガラクトシルスクラロース、ガラクトシルラクトース、キシロトリオース、ケストース、ラフィノース、ゲンチトリオース、スタキオース、ゲンチオテトラオース、サイクロデキストリン、マルトシルトレハロースからなる群より選択される。好ましくは、オリゴ糖の添加量は飲食品の重量に対して0.2%〜10%である。
好ましくは、ペプチドに対するオリゴ糖の添加量は、
(オリゴ糖wt%)≧0.0268(ペプチドwt%)2+0.0485(ペプチドwt%)+0.0580
[式中、オリゴ糖wt%とは飲食品中のオリゴ糖の含有量を重量パーセントで表した値であり、ペプチドwt%とは飲食品中のペプチドの含有量を重量パーセントで表した値である]
である。さらに、好ましい大豆ペプチドに対するオリゴ糖の添加量は、
(オリゴ糖wt%)≧0.0431(ペプチドwt%)2+0.0707(ペプチドwt%)+0.2990
である。
また、さらに好ましくは、本発明の飲食品にはさらに二糖が添加されている。
別の観点においては、本発明は、苦味および/または渋味が低減されたペプチド含有飲食品を製造する方法であって、ペプチド含有飲食品に単糖が3個以上結合したオリゴ糖を添加することを特徴とする方法を提供する。
本発明にしたがえば、オリゴ糖を加えることにより、甘味および酸味にほとんど影響することなく、ペプチド含有飲食品の苦み、渋みを低減させることができる。
本発明は、苦味、渋味を有するペプチドを含有する飲食品に単糖が3個以上結合したオリゴ糖を添加し、その苦味、渋味を低減した飲食品を特徴とする。本発明でいう飲食品は、一般の飲料・食品であれば特には限定されないが、例えば、清涼飲料、乳酸菌飲料・食品、大豆含有飲料・食品、滋養強壮飲料・食品、果実飲料・食品、酒類などが挙げられる。
本発明で使用するペプチドは、動植物性あるいは微生物由来のタンパク質、特に、乳タンパク質由来あるいは大豆タンパク質由来のものが望ましい。ペプチドは、タンパク質を酸または蛋白質加水分解酵素で加水分解することにより得ることができるが、蛋白質加水分解酵素により分解されたものが好ましい。また、分解によって得られたペプチドをさらに、遠心分離、フィルター、酸処理、イオン交換により処理して、不純物、沈殿物を除いて使用してもよい。さらには、殺菌したのち、濃縮または/及び乾燥させて得られた、いわゆるエキスまたは粉末状のペプチドも本発明において用いることができる。
飲食品中のペプチドの好ましい含有量は0.2wt%〜10wt%である。ペプチドの量が0.2wt%未満の場合、ペプチドの苦味を強く感じることがない。一方、ペプチドの量が10wt%を越える場合、ペプチドの苦味が強すぎるため、本発明の方法によっても苦味の低減が充分とはならない。
オリゴ糖とは、ブドウ糖や果糖などの単糖が数個結合した糖類を意味し、好ましくは単糖が3〜10個、より好ましくは3〜8個、さらに好ましくは3〜5個が結合したものである。オリゴ糖としては、一般に飲食に供されるものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ガラクトシルスクラロース、ガラクトシルラクトース、キシロトリオース、ケストース、ラフィノース、ゲンチトリオース、スタキオース、ゲンチオテトラオース、サイクロデキストリン、マルトシルトレハロース等を使用することができる。これらのオリゴ糖は、ショ糖や果糖ブドウ糖液糖等にくらべ甘味度が低い。従って、オリゴ糖を多量に添加した場合においても、飲食品本来の味を損なうことは少ない。このことは、他の苦味抑制剤と比較したときの本発明の利点である。
オリゴ糖の添加量は、甘味度に加えて、緩下性、溶解性、経済性等の特徴を考慮して選択して用いるのがよい。オリゴ糖の好ましい添加量は飲食品の重量に対して0.2wt%〜10wt%である。オリゴ糖の量が0.2wt%未満では十分に苦味、渋味を低減する効果は得られず、10%を越えると甘味、粘性、緩下性、溶解性、経済性が課題となり、飲食品の品質を損なう傾向がある。また、オリゴ糖の適当な添加量は、ペプチドの配合量によっても異なり、好ましくはペプチドの配合量の5〜25wt%、より好ましくは10〜20wt%、さらにより好ましくは13〜15wt%である。
特に好ましくは、大豆ペプチドに対するオリゴ糖の添加量は、
(オリゴ糖wt%)≧0.0268(ペプチドwt%)2+0.0485(ペプチドwt%)+0.0580
であり、さらに、好ましくは、
(オリゴ糖wt%)≧0.0431(ペプチドwt%)2+0.0707(ペプチドwt%)+0.2990
である。[式中、オリゴ糖wt%とは飲食品中のオリゴ糖の含有量を重量パーセントで表した値であり、ペプチドwt%とは飲食品中のペプチドの含有量を重量パーセントで表した値である。]
1つの好ましい態様においては、ペプチド4wt%を含む飲料に対して、オリゴ糖の一つであるマルトシルトレハロースの配合量を0.2〜10wt%とすることができる。また、マルトシルトレハロース配合量を0.5wt%〜5wt%とし、さらに砂糖を加えた場合にも、マルトシルトレハロースの効力は維持され、ペプチド由来の苦味の低減効果を得ることができる。
本発明の飲食品には、必要に応じて、フレーバー類、一般甘味素材、高甘味度甘味料、色素、ミネラル、ビタミン、食物繊維、その他の生理活性物質、またはこれらの組み合わせをさらに添加してもよい。
フレーバー類としては、一般に飲食品に供せられる風味を有するものであれば、特に制限されるものではないが、たとえば、ミルク、ココア、チョコレート、果実、野菜、ハーブ、コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶等が挙げられる。さらには、嗜好性をふまえ、これらの組み合わせによっても構わない。
一般甘味素材としては、一般に飲食品に供せられる風味を有するものであれば、特に制限されるものではないが、ブドウ糖、ショ糖、麦芽糖、果糖等の糖類および高甘味度甘味料を使用することができる。特に好ましくはショ糖などの二糖類を添加して基本的な甘みを得る。これは、ブドウ糖などの単糖類をあまり多く加えると単糖類とペプチドが反応して褐変反応が進みやすく、風味の劣化もおきやすくなるためである。また、高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース等が挙げられる。飲食品の品質を高めるために、一般甘味素材と高甘味度甘味料を併用することもできる。
色素としては、一般に飲食品に供せられる風味を有するものであれば制限されるものではないが、アナトー、赤キャベツ色素、ムラサキイモ色素、ブドウ果汁色素、コチニール色素、紫コーン色素、エルダベリー色素、ビートレッド色素、紅麹色素、ベニバナ色素、クチナシ色素、ウコン色素、アカネ色素、スピルリナ色素、パプリカ色素、カロチン色素が挙げられる。
ミネラルとしては、一般に飲食品に供せられる風味を有するものであれば、特に制限されるものではないが、鉄、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
ビタミンとしては、一般に飲食品に使用するものであれば特に限定されるものではないが、ビタミンA、B、C、D、E類、ナイアシン、パントテン酸カルシウム、葉酸、カロチン類等が挙げられる。
食物繊維としては、一般に飲食品に使用するものであれば特に限定されるものではないが、ポリデキストロース、イヌリン、難消化デキストリン、グアーガム、アップルファイバー等が挙げられる。
その他生理活性物質としては、一般に飲食品に使用するものであれば特に限定されるものではないが、レシチン類、サポニン類、イソフラボン類、カテキン類等のポリフェノール類、L-カルニチン、その他動植物由来のエキス類等が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これにより発明の範囲が限定されるものではない。
実施例1
大豆ペプチド(不二製油株式会社/商品名ハイニュートDC7)、マルトシルトレハロース(株式会社林原商事/商品名ハローデックス)、グラニュ糖(北海道糖業株式会社)、70°りんご透明果汁(三菱商事株式会社)、L−カルニチン(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、アスパルテーム(味の素株式会社)、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、DLリンゴ酸(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、クエン酸(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、クエン酸ナトリウム(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、香料を含む溶液を、表1に従い、100kg調製した。この溶液を95℃で加熱殺菌し、85℃で350mLのペットボトルに充填した。これに蓋をし、速やかに巻締めた後、冷却し、これをサンプル1として試飲に供した。
サンプル1の配合のうち、マルトシルトレハロースの含有量を変えて水で置き換えたサンプル2〜5を調製し、サンプル1と同様に95℃で加熱殺菌し、85℃で350mLのペットボトルに充填した。これを速やかに巻締めた後に冷却し、試飲に供した。その配合を表1に示す。サンプル1〜5の各々について、「苦味」、「渋味」について、風味評価を行った。風味評価は、熟練したパネル5名により、「++」強く感じる、「+」感じる、「±」やや感じる、「−」わずかに感じる、「−−」感じない、の基準で行った。その結果を表1に示した。
マルトシルトレハロースの配合量を増加させることにより、苦味、渋味が低減することが示された。この結果より、大豆ペプチド(ハイニュートDC7)1.487wt%(A)に対して、マルトシルトレハロース(ハローデックス)0.2wt%(B)以上、即ち、(B)/(A)×100で13.5程度以上を配合することがより望ましい。
Figure 0004939788
実施例2
サンプル1とサンプル2の風味評価を統計的に解析するために、2点比較法により官能評価を行った。官能評価に使用したパネルとしては、あらかじめ官能に対する試験を実施し、その感度が高いと認められたパネル30名を選定した。官能評価を実施した部屋は、室温23℃、湿度66%に制御されており、官能評価は各々独立したブースの中で実施された。サンプル1とサンプル2は、9℃でパネルに提示した。評価項目については、「全体の風味」、「甘みの強さ」、「甘みの好ましさ」、「酸味の強さ」、「渋み」、「苦味」、「味の濃さ」、「すっきり感」、「後味のよさ」とし、評点は、−2、−1、0、+1、+2で与えた。解析は、分散分析によって行った。P<0.001で「高度に有意差あり」、P<0.05で「有意差あり」、P<0.10で「傾向あり」と評価した。その結果を、表2に示す。
表2によれば、マルトシルトレハロースを配合することにより、評価項目のうち、「全体の風味」、「渋味」、「苦味」に有意差が認められており、特に、苦味、渋味に関し、風味上の改善が図られることが、統計的に確認された。また、「後味の良さ」についても、改善される傾向が認められた。また、マルトシルトレハロースを配合しても、「甘味」および「酸味」に差を与えないことも示され、これは本発明の好ましい特徴である。
Figure 0004939788
実施例3
大豆ペプチド(ハイニュートDC)量を変化させて、それぞれの量において苦味が十分許容されるために必要なマルトシルトレハロース(ハローデックス)の配合量を求めた。実施例1と同様にして、種々の濃度の大豆ペプチドおよびマルトシルトレハロースを含むサンプルを調製し、5名のパネルにより風味評価した。各々の大豆ペプチドの配合量に対して効果的に苦味を抑える(風味評価:−)ためのマルトシルトレハロースの最少配合量を求めた。結果を表3のサンプル6〜10に示す。
苦味を十分抑えるための大豆ペプチドwt%(A)とマルトシルトレハロースwt%(B)の配合量のバランス、すなわち(B)/(A)×100は、大豆ペプチドの濃度が低い場合(サンプル1、サンプル6、サンプル7)、33.6〜33.8であった。大豆ペプチドの配合量が増加するに従って、大豆ペプチド量に対するマルトシルトレハロースの配合量は相対的に多くなった。例えば、表3のサンプル10の場合、52.1となった。
Figure 0004939788
同様にして、種々の大豆ペプチドおよびマルトシルトレハロースを含むサンプルを調製し、風味評価して、大豆ペプチドの配合量と苦渋みをある程度抑える(風味評価:±レベル)ためのマルトシルトレハロースの最少配合量を求めた。結果を表4のサンプル11〜15に示す。
Figure 0004939788
表3および表4の結果を、大豆ペプチド濃度とマルトシルトレハロース濃度についてプロットした結果を図1に示す。x軸を大豆ペプチドの配合量、y軸をマルトシルトレハロースの配合量とした時の変化を満たす曲線式として、風味評価−レベルの配合量について、
(オリゴ糖wt%)≧0.0431(ペプチドwt%)2+0.0707(ペプチドwt%)+0.2990
の式を得た。また、風味評価±レベルの配合量について、
(オリゴ糖wt%)≧0.0268(ペプチドwt%)2+0.0485(ペプチドwt%)+0.0580
の式を得た。
実施例4
配合成分が少なく、かつ大豆ペプチドの配合量が高い飲料を調製し、オリゴ糖を添加してその風味を評価した。その結果を表5に示す。高濃度の大豆ペプチドを含む場合でも、マルトシルトレハロースの配合量を高くするにつれて、苦味、渋味を低減することができた。この時、±となる評価は、大豆ペプチド9.6wt%に対してマルトシルトレハロース2wt%以上[(B)/(A)×100で31以上]の配合程度でその効果は発揮された。
Figure 0004939788
本発明により、ペプチドを含む飲食品の苦み、渋みを低減させることができる。
図1は、種々の大豆ペプチドの配合量およびマルトシルトレハロースの配合量のサンプルの風味評価の結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 大豆タンパク質由来のペプチドを含有する飲料であってオリゴ糖が添加されており、ここで、ペプチドの含有量は0.2wt%〜10wt%であり、オリゴ糖はマルトシルトレハロースであり、オリゴ糖の添加量は0.2wt%〜10wt%であり、ペプチドに対するオリゴ糖の添加量は、
    (オリゴ糖wt%)≧0.0431(ペプチドwt%) 2 +0.0707(ペプチドwt%)+0.2990
    [ペプチドwt%とは飲食品中のペプチドの含有量を重量パーセントで表した値であり、オリゴ糖wt%とは飲食品中のオリゴ糖の含有量を重量パーセントで表した値である]
    である
    ことを特徴とする飲料。
  2. さらに、二糖が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の飲料。
  3. 苦味および/または渋味が低減されたペプチド含有飲料を製造する方法であって、大豆タンパク質由来のペプチド含有飲料にオリゴ糖を添加することを含み、ここで、ペプチドの含有量は0.2wt%〜10wt%であり、オリゴ糖はマルトシルトレハロースであり、オリゴ糖の添加量は0.2wt%〜10wt%であり、ペプチドに対するオリゴ糖の添加量は、
    (オリゴ糖wt%)≧0.0431(ペプチドwt%) 2 +0.0707(ペプチドwt%)+0.2990
    [ペプチドwt%とは飲食品中のペプチドの含有量を重量パーセントで表した値であり、オリゴ糖wt%とは飲食品中のオリゴ糖の含有量を重量パーセントで表した値である]
    であることを特徴とするペプチド含有飲料の製造方法。
  4. さらに、飲料に二糖を添加することを含む、請求項3に記載のペプチド含有飲料の製造方法。
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