JP2011124535A - 電磁波シールド材、及びその製造方法 - Google Patents

電磁波シールド材、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】パターンの線幅を、より一層微細化、具体的には、線幅30μm以下、より好ましくは15〜20μm以下の細線化が求められている電磁波シールド材において、より低い表面抵抗率とすることができる構成、及び表面抵抗率を、簡易かつ短時間の処理で低減させる処理方法を含む電磁波シールド材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】透明基材1と、透明基材1上に所定のパターンで形成された導電性組成物からなる凸状パターン層2を有する電磁波シールド材10であって、該導電性組成物は導電性粒子とバインダー樹脂を含んでなり、凸状パターン層2の横断面の電子顕微鏡写真による観察において、該導電性粒子の少なくとも一部が融合した連なりを有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、所定のパターンで形成された導電性を有する層によって電磁波をシールドする電磁波シールド材、及びその製造方法に関する。
テレビやパーソナルコンピュータのモニター等の画像表示装置(ディスプレイ装置ともいう)として、例えば、陰極線管(CRT)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、プラズマディスプレイ装置(PDP)、電場発光(EL)ディスプレイ装置等が知られている。これらのディスプレイ装置のうち、大画面ディスプレイ装置の分野で注目されているプラズマディスプレイ装置は、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、プラズマディスプレイ装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの前面側(観察者側)に、漏洩する電磁波をシールドするためのフィルム状の電磁波シールド材を設けるのが一般的である。この種の画像表示装置の前面(画面)に設置する電磁波シールド材は、可視光線は透過し、而かも電磁波はシールド(遮蔽)する為、導電性層をメッシュ等のパターン状に形成する。
なお、本願明細書中に於いて「電磁波」とは、広義の電磁波のうち、kHz〜GHz帯域の電磁波(電波)を意味し、広義の電磁波の中でも、赤外線、可視光線、紫外線帯域の電磁波は、各々、赤外線、可視光線、紫外線と呼称するものとする。
かかる電磁波シールド材は今までに種々検討されているが、近年、低価格で高生産性の利点を有することから、導電性組成物(導電性インキ、導電性ペースト等とも呼称する)を所定のパターンに印刷した仕様が注目されている。此の種の導電性組成物は導電性粒子を電気絶縁性の樹脂バインダー中に分散させてなる為、如何に導電性組成物の電気抵抗を低減化するか(導電率を高めるか)が課題となる。斯かる課題を解決するものとしては、例えば、特許文献1には、酸化物セラミックス等を主成分として含有する透明多孔質層を備えた透明性樹脂基材の該透明多孔質層面に、導電性粒子、バインダー及び溶媒を含む導電性組成物を幾何学パターンにスクリーン印刷した後、該印刷された透明性樹脂基材を加熱処理して幾何学パターンの導電部を形成する電磁波シールド材の製造方法、及び電磁波シールド材が提案されている。
また、特許文献2には、透明支持体上に、金属微粒子を含有する幾何学パターンを形成し、形成された幾何学パターンを熱処理して、該幾何学パターンの表面抵抗率を106Ω/□以下に作製された電磁波シールドフィルムが提案されている。
一方、めっきによる金属層を有するパターン層からなる電磁波シールド材として、特許文献3には、透明基材上に無電解めっき触媒ペーストをメッシュパターンでスクリーン印刷し、その上に金属層を無電解めっきしてなる電磁波シールド材が提案されている。また、特許文献2には、導電性組成物をメッシュパターンで転写体に凹版オフセット印刷し、転写体上のメッシュパターンを透明基材上に転写し、透明基材上のメッシュパターンに金属層を電気めっきしてなる電磁波シールド材が提案されている。また、特許文献5には、導電性組成物をメッシュパターンで透明基材に直接凹版印刷し、その透明基材上のメッシュパターンに金属層を電気めっきしてなる電磁波シールド材が提案されている。さらに、特許文献6には、基板の少なくとも片面に、網目状に金属微粒子層が積層された導電性基板の製造において、金属微粒子層を酸で処理する導電性基板の製造方法が提案されている。
WO2006/129568号パンフレット 特開2008−66574号公報 特開平11−170420号公報 特開2001−102792号公報 特開平11−174174号公報 特開2006−313891号公報 WO2008/149969号パンフレット
しかしながら、特許文献1に記載の電磁波シールド材は、印刷された透明性樹脂基材を加熱処理して幾何学パターンの導電部を形成するので、透明樹脂基材が熱的ダメージを受けることや、かかる熱的ダメージを避けるため熱処理に際して、透明樹脂基材として例えばPET樹脂を使用する場合、パターンが形成されていないPET樹脂基材側を、0〜40℃に冷却された冷却ロールに接触させた状態で180〜350℃の恒温槽に入れて10秒間〜20分間行うなど、特殊な熱処理装置を必要とし、コストの上昇を招く。
一方、熱処理温度は、金属粒子を焼結させる温度であり、透明樹脂基材の熱的ダメージを少なくするためには、金属粒子の結晶子径を小さくすることで金属粒子間の融着温度を著しく低下させることができる。特許文献1では、例えば銀粒子においては、焼成可能温度を300℃以下に低下させるには、結晶子径は20nm以下とすることが好ましく、10nm以下とすることが好ましいとしている。
また、特許文献2でも、金属微粒子の平均粒径が、5nm〜500nmが好ましいとしている。しかしながら、このようなナノメートルサイズの金属微粒子は、高価であり、より低コストの電磁波シールド材が求められている現状において、ナノメートルサイズの金属微粒子を採用することはコスト的に難しい。
一方、特許文献3に記載の電磁波シールド材は、微細パターンの形成が難しいスクリーン印刷でメッシュパターンを形成するとともに、成膜速度の遅い無電解めっきで金属層を形成するので、生産性の点で劣り、コスト低減を図ることができないという難点がある。また、特許文献4に記載の電磁波シールド材は、凹版印刷でメッシュパターンを形成するので微細パターンの形成は可能であるが、オフセット印刷を採用するので、凹版から転写体(ブランケット胴)に転写した後に転写体から透明基材に2回目の転写を行うので、原版である凹版のメッシュパターンが忠実に透明基材に転写されないことがある。
さらに、特許文献5に記載の電磁波シールド材は、凹版から透明基材に直接導電性インキ組成物を転写する方式の為、かかるオフセット印刷特有のブランケット胴によるパターン歪みの問題は無くなる。又、シルクスクリーン印刷に比べて微細パターン形成が可能である。但し、電磁波シールド材に適用する場合は、導電性インキの如き流動性の悪いインキを高塗布量で転写(転移とも言う)させる必要が有る。それ故に、新たに発生して来る問題として、導電性インキを転写する際に、未転写部が発生したり、密着性に劣る転写不良が発生したりすることがある。具体的には、図4に示すように、凹版101上に導電性インキ組成物103を塗布した後にドクターブレード102で掻き取って凹部104内に導電性インキ組成物103を充填する際、図4(B)に示すように、ドクターブレード102で掻き取った後の凹部104内の導電性インキ組成物103は、その上部に凹み105が生じる。この凹み105は、その後、凹版101上に透明基材106を圧着して透明基材106上に凹部104内の導電性インキ組成物103を転写する際に、図4(C)に示すように、透明基材106と導電性インキ組成物103との密着を妨げる要因となる。その結果、透明基材106上に、導電性インキ組成物の未転写部が発生したり、密着性に劣る転写不良が発生して、電磁波シールド特性を低下させる原因となる。
一般に、微細な凹版凹部内に充填された低流動性で高粘度の導電性インキの多くは通常の凹版印刷方式では該凹部内に残留する為、導電性インキの転移率〔=(凹部から転移したインキの体積/版凹部の体積)×100%、或いは印刷物と版とで線幅の変化が無視できると見做した場合には、(凹部から転移したインキの厚み/版凹部の深さ)×100%、の式で簡易的に概算する〕は低く、最大でも20%程度が限度であった。それ故、十分な厚みがあり十分な電気伝導度のパターンを形成することが困難となり、十分な電磁波シールド性を得ることが困難であった。
そこで、本出願人は、凹版印刷により導電性組成物を透明基材上に転写し、導電性を有するパターンを形成してなる電磁波シールド材において、導電性組成物の転写不良に基づくパターンの断線、形状不良、転移率不足や低密着性等の不具合が生じない電磁波シールド材について、特許文献7で提案している。この、特許文献7に記載の発明では、図8(A)に示す導電性インキ組成物15の凹み6を、図8(B)に示す様に、硬化するまで流動性を保持できるプライマー層3が形成された透明基材1と圧着することによって、プライマー層と凹部6内の導電性インキとを空隙無く密着する圧着工程を経て、プライマー層を硬化し、透明基材を版面から剥がして、凹部6内導電性インキ組成物を硬化したプライマー層3上に転写するものである。
しかしながら、かかる方法においては、なお、以下の如き要解決課題が残存していることが判明した。即ち、
〔課題1〕
最近の傾向として、高電磁波シールド性と高透明性との両立性を要求される各種利用分野、特に、ディスプレイ装置の画面前面用途の場合においては、より高透明のものを得る為には、パターンの線幅を、より一層微細化することが求められている。具体的には、線幅30μm以下、より好ましくは15〜20μm以下の細線化が求められて来ている。
一方で、導電性粒子とバインダー樹脂を含む導電性組成物から成る凸状パターン層の線幅が此のように細くなると;
(1)一般に物体の電気抵抗Rは、其の長さL及び体積抵抗率ρに比例し、その断面積Sに反比例する。即ち、R=ρL/Sとなる。その為、同じ導電性組成物(ρ一定)で同じ平面視パターン形状(L一定)且つ同じ厚みのパターンを印刷形成する場合、線幅の減少に比例して断面積Sも減少し、導電パターン部分の電気抵抗Rは高くなる。これに伴い、電磁波シールド性の指標である、シールド部材としての表面抵抗率も増大する。
(2)印刷厚みを一定として、パターン線幅が狭くなり、線幅と導電性粒子径とが近付いてくると、同じ粒子径及び粒子形状の導電性粒子であっても、該細線パターンの単位断面積中に於ける該導電性粒子同士が接触する部分の総面積の比率は低下する。其の結果、幾何学的断面積SGEOに比べて、現実の電流通路となり得る導電性粒子(群)の有効総断面積SAVは低下し(SAV<SGEO)、導電パターン部分の電気抵抗Rは、線幅減少による幾何学的要因(断面積S)の影響以上に高くなるため、電磁波シールド材の表面抵抗率も線幅から単純計算した値以上に上昇してしまう。其の結果、電磁波シールド性は低下する。この状況は、線幅を変えずに厚みを薄くした場合でも同様に生じるため、印刷厚みが薄くなり導電性粒子径と近づいた場合も、急激に表面抵抗率が増大するという結果となる。
勿論、該凸状パターン層上に、電解めっき等によって、低体積抵抗率の金属層を形成すれば、此の電気抵抗の上昇分は相殺し得る。しかし、その場合は、工程数及び材料費の増加と歩留まりの低下、及び重金屬を含む廃液処理の必要性を生じる為、好ましい形態とは言えなかった。
一方、金属微粒子溶液を基板に印刷して金属微粒子の導電層を設けた場合、一般に金属微粒子層の導電性を高めるためには、高温や長時間の熱処理が必要であるが、高温、長時間の熱処理は、例えば透明基材としてポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂を用いた場合には、熱可塑性樹脂の変形が起こってしまうなどの問題があった。この問題を解決するために、特許文献6には、金属微粒子層を酸で処理する導電性基板の製造方法が提案されている。特許文献6では、金属微粒子、金属酸化物微粒子、有機金属化合物から選ばれる少なくとも1種を溶媒に分散または溶解させた溶液を用いた場合、低濃度の酸の溶液により酸の処理の効果が認められるとしている。しかし、金属微粒子を形成しうる化合物を樹脂成分中に練込んだり、樹脂成分中に分散させた後、溶媒を加えて粘度調整したもの等は、低い濃度の酸の溶液を用いても優れた導電性が得られないことが開示されている。さらに、金属微粒子層に含まれる金属微粒子と樹脂成分の混合比は、最も好ましくは、樹脂成分は含まないことであるとしている。そして、実施例の金属微粒子層形成溶液は、全て樹脂成分を含まないものであり、線厚み3μm、線幅50μm、ピッチ300μmの格子状であって、得られる表面抵抗率は、5〜40Ω/□である。一方、実用上は、特に線幅30μm以下の細い線幅の凸状パターンで、しかも表面抵抗率が1.2Ω/□以下と、高電磁波シールド性が求められている現状においては、直接、教示乃至示唆されるものはない。
このように、従来においては、凸状メッシュパターンにおいて、線幅を減少しても低い表面抵抗率(高い導電率)が達成できる凸状メッシュパターンの構成や、電気抵抗低減化処理方法は提案されていない。
〔課題2〕
又、導電性粒子は一般に可視光線反射率も高い為、導電性組成物は可視光線反射率が高くなる。特に金属粒子はこの傾向が強く、中でも低抵抗化する為に通常採用される鱗片状の導電性粒子の場合、凸状パターン表面には大局的に見た場合に鏡面に近い面が形成される為、かかる反射は鏡面反射に近くなる。高可視光線反射率、中でも鏡面反射成分が多い場合、該凸状パターン表面は(透明基材側面及び透明基材とは反対側面の両面とも)電燈光、日光等の外光、或いはディスプレイ装置からの画像光を反射し、画面が白化したり、画像コントラストが低下したりする問題が生じる。
勿論、黒鉛のような可視光線反射率の低い導電性粒子を使用すれば、凸状パターンによる此の様な画面の白化、コントラスト低下は防げる。しかし、其の場合は、黒鉛の体積抵抗率が銀等の金属にくらべて高いため、同じ導電パターン設計をした場合には電磁波シールド性が劣る。これは、線幅が広い場合は比較的問題になり難いが、凸状パターンを細線化した場合には、前記の如く幾何学的要因による電気抵抗の上昇とも相俟って、電磁波シールド性能の不足につながると言う問題が生じる。更に、黒鉛のような炭素の粒子は、導電性組成物の構造粘性を上昇させ、流動性を低下させる場合も多い為、これが細線パターンの再現性不良、転移率低下の傾向を生じることも問題となる。
〔課題3〕
またさらに、課題として、該転写工程において、版面との広い接触面積を占めるプライマー層と版面との離型(以下、「離版」という。)が円滑でない(重い)と図7(A)に示すように正常ならば凹版ロール62とニップロール67の接線位置である、シートの剥離開始点(正常点)Pが、凹版ロール62の移動に引きずられ、例えば図7(B)に示す限界点P'に達して、再度正常点P迄戻る動作を周期的に繰返し、振動的離版状態を呈することがある。かかる振動的離版状態では、凸状パターン表面に振動的に厚みの増減等の変調がかかり、外観上の縞状ムラが発生する。また、離版時の振動で、パターン状線部の未硬化状態の導電性インキ組成物の一部が、開口部に点状に飛散するという問題が発生した。かかる飛散物が開口部に存在すると、外観不良や光透過率の低下を招来し、電磁波シールド材として使用不可となる場合がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、パターンの線幅を、より一層微細化、具体的には、線幅30μm以下、より好ましくは15〜20μm以下の細線化が求められている電磁波シールド材において、より低い表面抵抗率とすることができる構成、及び表面抵抗率を、簡易かつ短時間の処理で低減させる処理方法を含む電磁波シールドの製造方法、を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、電磁波シールド材は、その凸状パターン層を構成する導電性組成物が導電性粒子とバインダー樹脂を含み、該凸状パターン層の横断面の電子顕微鏡写真による観察において、該導電性粒子の少なくとも一部が融合した連なりを有してなるように構成し、表面抵抗率をより一層低減するには、導電層を形成する硬化工程と同時又は硬化工程以降に該導電層を温水処理及び/又は酸処理する工程、或いは酸処理する工程、及び酸処理した前記導電層を温水処理する工程、の順次の工程を施すことで解決しうることを見出した。本発明はかかる知見に基づき完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)透明基材の一方の面に所定のパターンで導電層が形成されてなる電磁波シールド材の製造方法であって、
透明基材の一方の面に導電性粒子とバインダー樹脂を含んでなる導電性組成物により所定の導電パターン層を形成する工程、
形成された前記導電パターン層のバインダー樹脂を硬化させて導電層を形成する硬化工程、
硬化させた前記導電層を酸処理する工程、及び
酸処理した前記導電層を温水処理する工程、の順次の工程を含み、
前記導電層の横断面の電子顕微鏡写真による観察において、該導電性粒子の少なくとも一部が融合した連なりを有してなる導電層を形成した、
ことを特徴とする電磁波シールド材の製造方法、
(2)前記酸処理が、該導電層を酸の溶液への浸漬及び/又は該導電層に酸の溶液を塗布することによる処理である前記(1)に記載の電磁波シールド材の製造方法、及び
(3)前記温水処理が、該導電層を水温30〜100℃の温水に浸漬することによる処理である前記(1)に記載の電磁波シールド材の製造方法、
を提供するものである。
本発明により得られる電磁波シールド材は、その凸状パターン層を構成する導電性組成物が導電性粒子とバインダー樹脂を含み、複数の導電性粒子の少なくとも一部が融合した連なりを有する導電層としているので、該パターンの線幅を微細化して透明性を高めた場合においても、高電磁波シールド性と機械的強度とを両立できると言う効果を奏する。
さらに、複数の導電性粒子が部分的に融合した連なり(経路)の長さが、凸状パターン層幅の1/2を超える経路を少なくとも1以上有する様にしたり、或いは該凸状パターン層の線幅が30μm以下で、かつ該凸状パターン層の表面抵抗率が0.8Ω/□以下となるよう構成することによって、より一層、上記効果を奏し得る。
なお、本発明において「融合」とは、複数の導電性粒子同士が合一(合体)することを言い、導電性粒子同士の「接触」、「接合」、「結合」或いは「融着」等の概念が含まれる。
また、該凸状パターン層の表面に、更に金属層が形成されるように構成することにより、より一層、該パターンの電気抵抗が低くなり、上記各種構成のみでは発現が難しい程度の高性能の電磁波シールド性が求められる用途にも適用が可能となるという効果を奏する。
さらに、上記(2)の電磁波シールド材は、プライマー層のうち凸状パターン層が形成されている部分の厚さは、凸状メッシュパターン層が形成されてい無い部分の厚さよりも大きく、かつ、凸状メッシュパターン層形成部におけるプライマー層と凸状パターン層との界面は、(a)プライマー層と凸状パターン層との界面が非直線状に入り組んでいる断面形態、(b)プライマー層を構成する成分と凸状パターン層を構成する成分とが混合している層を有する断面形態、及び、(c)凸状パターン層を構成する導電性組成物中に該プライマー層に含まれる成分が存在している断面形態、としているので、
(イ)プライマー層と導電組成物層との密着良好、
(ロ)凹版印刷でパターン形成する際に、導電性組成物の転移性が良好で、転移欠陥も無く、パターン再現性が良好で、而かも導電性組成物が凹版から転移する際の該導電性組成物の周囲の飛散を防止し、開口部の外観不良と光透過率低下を防止する。その結果良好な電磁波シールド性が得られる、
という効果を奏する。
さらに、上記(2)の電磁波シールド材の製造において、導電層を形成する硬化工程と同時又は以降に該導電層を温水処理及び/又は酸処理などの比較的安価な処理により、高コストな銅めっき処理を用いずに、未処理の場合は0.9〜2Ω/□である表面抵抗率を、0.8Ω/□以下に低減できるという効果を奏する。
本発明の電磁波シールド材は、焼成をしないにもかかわらず導電性粒子の融合が形成されており、少なくとも150℃程度以上の加熱を要する焼成時に起きる基材ダメージや導電性組成物の密着低下による剥落等の懸念がない。
本発明の電磁波シールド材の好ましい製造方法は、導電層の電気抵抗低減化処理が、酸処理と温水処理による。その為、従来から行われている、導電性粒子を焼結することを要件とする高温熱処理法と比較して、透明基材がダメージを受けることがない。よって、特に、透明基材として、PETフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムを使用でき、光学的物性、機械的物性を備えた低コストの電磁波シールド材を得ることができる。
また、処理設備としても、酸処理槽と温水処理槽のような簡易な設備で処理可能であり、複雑な透明樹脂基材の冷却設備等を要しないので、設備コスト抑制でき、かつ、比較的高速度で処理ができるので、電磁波シールド材の処理コストを低減することができる。
本発明の製造方法によれば、導電性組成物の選択により、表面に金属めっきをすることなく、0.8Ω/□以下の表面抵抗率を有する電磁波シールド材を得ることができ、めっき工程の削減により、環境負荷を削減でき、生産性の向上と低コスト化を図ることができる。
さらに、本発明の製造方法に用いる導電層の電気抵抗低減化処理によって、少なくとも導電性粒子の一部が融合するので、印刷(描画)されたパターンは、堅固となって変質することもない。また、導電層の耐溶剤性能、耐久性能が向上する。
電磁波シールド材の表面抵抗率は、温水処理の水温を制御することによって加減することができるので、表面抵抗率の品質管理がしやすく、再現性や歩留まりのよい生産が可能である。
また、さらに低い表面抵抗率を求められて、金属めっきを施す場合であっても、従来においては、一般に、5Ω/□程度の導電層に更に金属めっきして、例えば、0.5Ω/□の電磁波シールド材とするのであるが、幅方向に表面抵抗率のばらつきを有するため、この面内ばらつきを均一化するために、めっき速度を1〜2m/分程度の遅い速度にせざるを得ない。しかしながら、本発明の製造方法では、当初より、0.8Ω/□以下の表面抵抗率を有し、幅方向に表面抵抗率のばらつきの絶対値が小さい導電層となっているので、より高速で金属めっきを施すことができ、生産性の向上と製造コストの低減をはかることができる。
本発明の電磁波シールド材の一例を示す模式的な平面図である。 図1におけるA−A’断面の拡大図である。 図2の一部をさらに拡大して示す模式的な断面図である。 透明基材上に導電性インキ組成物の未転写部が発生する従来の現象の説明図である。 本発明の電磁波シールドの製造方法において(A)第1態様の製法発明、(B)第2態様の製法発明の一例を示す工程図である。 本発明の電磁波シールド材の製造方法の工程の一例を示す説明図である。 導電性組成物をプライマー層上に転写する転写工程において、(A)正常な離版状態、(B)異常な離版状態を示す場合の装置の概略構成図である。 凹部内の導電性組成物の凹みにプライマー層を充填し、その導電性組成物が転写する形態を示す模式図である。 本発明の電磁波シールド材に於ける、凸状パターン層とプライマー層との界面形態の模式的な断面図であり、(A)界面形態が第1態様、(B)界面形態が第2態様、(C)界面形態が第3態様を示す。 (A)は第1態様の電磁波シールド材の発明の、(B)は第2態様の電磁波シールド材の発明の導電パターン層に対して電気抵抗低減化処理を施す前の導電性粒子の状態の模式図である。 (A)は第1態様の電磁波シールド材の発明の、(B)は第2態様の電磁波シールド材の発明の導電パターン層に対して電気抵抗低減化処理を施した後の導電性粒子の状態の模式図である。 酸処理における塩酸濃度と表面抵抗率の関係を示すグラフである。 実施例2〜6で得られた温水処理における温水温度と表面抵抗率の関係を示すグラフである。 本発明の電磁波シールド材に於ける、温水処理(湿熱処理)条件、環境保持時間と表面抵抗率の関係を表すグラフである。 第2態様の電磁波シールド材の発明による実施例10の、(A)電気抵抗低減化処理前の導電パターンの断面SEM写真、(B)電気抵抗低減化処理後の導電パターンの断面SEM写真である。 本発明の第2態様の電磁波シールド材に於ける、図15(B)の湿熱処理後の凸状パターンの断面SEM写真における融合経路の説明図である。 本発明の電磁波シールド材に於ける、連結した融合経路の一側端(斜面)から他側端(斜面)への方向を示す模式概念説明図である。 第2態様の電磁波シールド材の発明による実施例11の酸処理(0.44%塩酸、1分)後の凸状パターンの断面SEM写真である。 第2態様の電磁波シールド材による実施例1の電気抵抗低減化処理後の導電パターンの断面SEM写真である。 第1態様の電磁波シールド材の発明による実施例8の、(A);電気抵抗低減化処理前の導電パターンの全体を示す断面SEM写真(倍率1000倍)、(B);(A)の部分拡大断面SEM写真(倍率10000倍)である。 第1態様の電磁波シールド材の発明による実施例8の、(A);電気抵抗低減化処理後の導電パターンの全体を示す断面SEM写真(倍率1000倍)、(B);(A)の部分拡大断面SEM写真(倍率10000倍)である。 界面形態が第1態様の変形例を示す模式図である。 (A)本発明の電磁波シールド材と積層される光学フィルタ層の1例を、(B)本発明の電磁波シールド材と光学フィルタ層とを積層して成る複合フィルタの1例を示す模式的な断面図である。
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。本発明の電磁波シールド材は、請求項1に記載の第1態様の電磁波シールド材の発明と、請求項2に記載の第2態様の電磁波シールド材の発明、請求項6に記載の第1態様の製法発明、請求項7に記載の第2態様の製法発明、請求項12に記載の画像表示装置の発明からなり、第1及び第2態様の製法発明は、導電層の酸処理工程及び温水処理工程において共通する。
[電磁波シールド材]
図1は、本発明の電磁波シールド材の一例を示す模式的な平面図であり、図2は、図1におけるA−A’断面の拡大図であり、プライマー層3は第2態様の電磁波シールド材の発明においてのみ存在し、金属層4及び保護層9は必要に応じて設けられる層である。
また、図3(A)は、第2態様の電磁波シールド材の発明における図2の一部をさらに拡大して示す模式的な断面図、図3(B)は、導電パターン層2上に形成された金属層4を有し、必要に応じてさらに保護層9(図2参照)を有している場合を示している。
図5(A)は、第1態様の電磁波シールド材の発明の電磁波シールド材の製造方法の一例を示す工程図、図5(B)は、第2態様の電磁波シールド材の発明の電磁波シールド材の製造方法の一例を示す工程図を示している。
本発明の第1態様の電磁波シールド材の発明により得られる電磁波シールド材10は、透明基材1と、透明基材1上にメッシュ形状に代表される所定のパターンで形成された導電パターン層2とを有し、導電パターン層2は、導電性粒子2aとバインダー樹脂2bとからなり、導電性粒子2aの少なくとも一部は、図11(A)に模式的に示し、かつ、図21(B)に示すように、導電パターン層2の横断面の電子顕微鏡写真による観察において、隣接する粒子同士が互いに融合(融着)した連なりを有してなる部分を形成している。
一方、本発明の第2態様の電磁波シールド材の発明により得られる電磁波シールド材20は、透明基材1の表面にプライマー層3を有し、該プライマー層3の表面に導電パターン層2を形成しており、製造方法による特徴を反映して、図3(A)に示すように、プライマー層3のうち前記導電パターン層2が形成されている部分の厚さTAは、前記凸状パターン層が形成されていない部分の厚さTBよりも厚くなっている。
また、導電パターン層2は、導電性粒子2aとバインダー樹脂2bとからなり、導電性粒子2aの少なくとも一部は、図11(B)に模式的に示し、図15(B)に示すように、導電パターン層2の横断面の電子顕微鏡写真による観察において、隣接する粒子同士の少なくとも一部が互いに融合(融着)した連なりを有してなる部分を形成している。
かかる導電性粒子2a同士の融合は、後述の電気抵抗低減化処理工程の結果として導電パターン2中の導電性粒子に2aに付与される特徴である。且つ、これが導電パターン層2の体積抵抗率、更には表面抵抗率が減少する理由でもある。
該電気抵抗低減化処理工程によって該導電性粒子2a同士が融合する理由は、現時点においては未解明であるが、例えば導電粒子として銀を用い、処理前後の銀粒子の状態変化をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察すると、銀の粒子形状変化、隣接する粒子同士の部分的な融着(粒子同士の接触面積の増加、点接触から面接触への移行)、粒子間距離の減少などが観察され、これらが体積抵抗率低減の直接の原因と推定される。なお、既に述べたように、本発明において「融合」とは、複数の導電性粒子同士が合一(合体)することを言い、導電性粒子同士の「接触」、「接合」、「結合」或いは「融着」等の概念が含まれる。
また、「横断面の電子顕微鏡写真による観察において、該導電性粒子の少なくとも一部が融合した連なりを有してなる」とは、当該該導電性粒子の少なくとも一部が融合した連なりは、導電層の厚みや幅が10〜50μmの断面寸法の部分に存在し、導電性粒子は数μm以下なので、目視では、確認し難く、1000倍程度以上の倍率であれば、確認が可能であり、好ましくは5000倍、より好ましくは10000倍程度であれば、確認が容易であるので、その確認手段として走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真を特定しているものである。光学顕微鏡や、他の顕微鏡であって、凸状パターン層の導電性粒子の融合状態を観察できるものであれば、電子顕微鏡写真に限らない。
電気抵抗低減化処理工程によって、体積抵抗率が減少する理由について、考察すると、図15(A)は、銀粒子を用いた実施例10により得られた電気抵抗低減化未処理の導電パターン2の横断面(線條部の延在方向と直交する断面)のSEM写真であるが、銀粒子は粒子径の大小はあるが概ね独立しており、一部の隣接間に接触(粒子間距離=0)が見られるが何れも点接触のみである。これは、隣接粒子同士が融合して無い状態に相当する。又、融合した粒子が3個以上連らなって(「連接して」、或いは「連結して」とも言う)一体化している構造も存在し無い。
一方、図15(B)は、電気抵抗低減化処理した、実施例10の横断面のSEM写真である。隣接粒子同士の中には面で(横断面上では線で)互いに接触(粒子間距離=0)している物、即ち互いに融合した隣接粒子が多数存在する。更に、3個以上の粒子が互いに融合して連らなった経路を形成しているのが観察され、その経路を結ぶと、折線状に、導電パターン層2の一方の斜面表面から他方の斜面表面に亙って連通する経路が形成されている。此の融合した粒子が連なって形成された経路は低抵抗で電流を流し得るものであり、直線状、折線状、及び/又は曲線状で導電パターン層2の一側端部から他の側端部まで連結した経路が1本以上存在していることが、体積抵抗率低減の点から、特に望ましいと考えられる。
このことから、複数の粒子が融合し電流を低抵抗で流し得る経路を構成する連結構造体(「クラスター」乃至は「団塊」ともいう。)は、好ましくは、その長さが導電パターン層2の線幅の1/2程度に連なった連結構造体が有れば、必ずしも、その部位の断面写真では融合が確認できないが、1側端部から他の側端部まで連結した経路が他の断面の部位で存在している確率が高いと推測され、結果的に体積抵抗率の低減が達成できているものと考えられる。なお、電気抵抗低減化処理未実施のパターンをアルコールで払拭試験をすると表面抵抗率が増大するが、実施後のパターンでは殆ど変化し無ないという現象が見られることからも、導電粒子間の強固な結合が形成されていることが推定され、前述のようなクラスター形成を裏付けていると考えられる。
酸処理、温水処理、或いはこれら処理の順次組み合わせ処理で粒子間の融合が何故起こり、体積抵抗率が低下するかについては、粒子表面が洗浄されることによる銀粒子同士の金属拡散の促進、水分或いは酸による樹脂バインダーの収縮、溶媒成分の減少、或いは一旦溶解した金属が隣接する複数個の粒子表面間を包絡し、或いは各粒子間の隙間を充填するような形態で再度固体化すること等も考えられるが、真の理由は未だ確認できていない。
なお、図14からもわかる様に、80℃で単に熱処理しただけでは、体積抵抗率は低減し無いことが確認されている。また、酸処理のみ、温水処理のみよりも、酸処理の後に温水処理を施した方が抵抗率の減少率が大きいことも確認されている。
なお、図1中、符号7は電磁波シールドパターン部であり、符号8は接地部である。
以下、本発明の製造方法に用いられる構成を詳しく説明する。なお、第1態様の電磁波シールド材の発明、第2態様の電磁波シールド材の発明で個別に使用するものは、その旨説明し、特に説明のないものは、それぞれで共通して使用されるものである。
(透明基材)
透明基材1は、可視光線領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよく、ガラス、セラミックス等の透明無機物の板、或いは樹脂板など板状体の剛直物でもよい。ただし、生産性に優れるロール・トゥ・ロールでの連続加工適性を考慮すると、フレキシブルな樹脂フィルム(乃至シート)が好ましい。なお、ロール・トゥ・ロールとは、巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工を施し、その後、巻取に巻き取って保管する加工方式をいう。
樹脂フィルム、樹脂板の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール−テレフタール酸共重合体、エチレングリコール−テレフタール酸−イソフタール酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリプロピレン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド(PI)系樹脂等である。なかでも、ポリエチレンテレフタレートはその2軸延伸フィルムが耐熱性、機械的強度、光透過性、コスト等の点で好ましい透明基材である。
透明無機物としては、ソーダ硝子、カリ硝子、硼珪酸硝子、鉛硝子等の硝子、或いはPLZT等の透明セラミックス、石英等である。
透明基材の厚みは基本的には特に制限はなく用途等に応じ適宜選択し、フレキシブルな樹脂フィルムを利用する場合、例えば12〜500μm、好ましくは25〜200μm程度である。樹脂や透明無機物の板を利用する場合、例えば、500〜5000μm程度である。
また、実施態様1の発明においては、導電パターン層との密着性、実施態様2の発明においてはプライマー層3との密着性を確保するために、透明基材表面に別途密着性改善のための表面処理や、易接着層、下地層などが設けられていてもよい。
下地層としては、例えば、透明基材の材料がポリエステル樹脂から成り、プライマー層がアクリレート系の電離放射線重合性組成物から成る場合は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等からなる厚さ0.1〜1μm程度の塗膜であってもよい。
(プライマー層)
実施態様2の発明に用いるプライマー層3は、その主目的が凸状パターン層2の印刷形成時に、版から被印刷物(透明基材)へのインキ(導電性組成物)転移性を向上させ、転移後の導電性組成物と被印刷物との密着性を向上させるための層である。すなわち、透明基材及び凸状パターン層の双方に密着性が良く、また開口部(凸状パターン層非形成部)の光透過性確保のために透明な層でもある。
更に、このプライマー層3は、流動性を保持できる状態で透明基材1上に設けられ、凹版印刷時の凹版に接触している間に液状から固化させる層として形成される層であり、最終的な電磁波シールド材が形成されたときに固化している層である。
かかるプライマー層を構成する材料としては、本来特に限定はないが、本発明では、未硬化状態において液状(流動性)の電離放射線重合性化合物を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工、硬化(固体化)してなる層が好適に用いられる。以下、この材料を中心に詳述する。
該電離放射線重合性化合物としては、電離放射線で架橋等の反応により重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーが用いられる。
かかるモノマーとしては、ラジカル重合性モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。尚、ここで(メタ)アクリレートとの表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。カチオン重合性モノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。
また、かかるプレポリマー(乃至オリゴマー)としては、ラジカル重合性プレポリマーとして、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオール系プレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー等が挙げられる。その他、カチオン重合性プレポリマーとして、例えば、ノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等が挙げられる。
これらモノマー、或いはプレポリマーは、要求される性能、塗布適性等に応じて、1種類単独で用いる他、モノマーを2種類以上混合したり、プレポリマーを2種類以上混合したり、或いはモノマー1種類以上とプレポリマー1種類以上とを混合して用いたりすることができる。
電離放射線として、紫外線、又は可視光線を採用する場合には、通常は、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性のモノマー又はプレポリマーの場合には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系等の化合物が、又カチオン重合系のモノマー又はプレポリマーの場合には、メタロセン系、芳香族スルホニウム系、芳香族ヨードニウム系等の化合物が用いられる。これら光重合開始剤は、上記モノマー及び/又はプレポリマーからなる組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加する。
なお、電離放射線としては、紫外線、又は電子線が代表的なものであるが、この他、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いはα線、各種イオン線等の荷電粒子線を用いることもできる。
プライマー層を版表面で硬化させた後に剥離する際、剥離が重い(版との密着が良い)材料系を用いる場合には、版表面に離型加工をしたり、離型材を塗布したりするなどの方法もとられるが、加工コストや離型能力の寿命などと勘案し、必要に応じてプライマー層に離型剤を添加することができる。本発明において用い得る離型剤とは、電磁波シールド材の製造において、プライマー硬化工程を経た透明基材上のプライマー層が、版面からの剥離に要する力(剥離力)を小さくして、円滑に剥がれるように剥離性を向上させるための添加剤をいう。かかる離型剤としては、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、炭素数1〜20の一価又は多価アルコールと炭素数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステル又は完全エステルであるものが好ましい。一価又は多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は完全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、べヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。
これらの中では、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のステアリン酸エステルが、透明性、離型性の観点から特に好ましい。
これらの離型剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
離型剤は、プライマー層を形成する電離放射線硬化性組成物全量に基づき、0.1〜5質量%添加することが好ましく、0.5〜3質量%が特に好ましい。0.1質量%未満では、プライマー層の版面からの離型性が向上せず、5質量%を超えて添加しても離型性能は飽和し経済的でない。
当該電離放射線硬化性組成物は、溶剤を含んでもよいが、その場合塗布後に乾燥工程が必要となるため、コストを考えれば溶剤を含まないタイプ(ノンソルベントタイプ乃至無溶剤型)であることが好ましい。外観改善や塗工適性改善などのために溶剤を添加する場合には乾燥が必要となるが、溶剤の添加量が数%程度の量であるならば、硬化後に乾燥させてもよい。残留溶剤量はなるべく少ない方が好ましいが、物性、耐久性に影響が無ければ完全にゼロでなくても良い。
プライマー層3の厚さ(TB;図3(A)の如く、導電パターン層(以下、「凸状パターン層」ということがある。)3の非形成部の厚みで評価)は特に限定されないが、通常は硬化後の厚さで1μm〜100μm程度となるように形成される。また、プライマー層3の厚さ(TB)は、通常は、凸状パターン層2とプライマー層3との合計値(総厚。図3(A)でいうと凸状パターン層2の頂部と透明基材1の表面との高度差)に対する比として1〜50%程度である。
(導電性組成物からなる凸状パターン層)
本発明における電磁波シールド材は、導電性組成物からなる導電パターン層2が、第1態様の電磁波シールド材の発明においては、透明基材1上に要すれば易接着層を設けた上に、第2態様の電磁波シールド材の発明では、プライマー層3を介してその上に所定のパターンで設けられたものである。該パターン形状としてはメッシュ(網目乃至格子)形状が代表的なものであるが、其の他、ストライプ(平行線群乃至縞模様)形状、螺旋形状等も用いられる。メッシュ形状の場合、単位格子形状は、正3角形、不等辺3角形等の3角形、正方形、長方形、台形、菱形等の4角形、6角形、8角形等の多角形、円、楕円等が用いられる。また、モアレを軽減する目的で、ランダム網目状、または擬似ランダム網目状のパターンなども使用可能である。その線幅と線間ピッチも通常採用されている寸法であればよい。例えば、線幅は5〜50μmとすることができ、線間ピッチは100〜500μmとすることができる。開口率(電磁波シールドパターンの全面積中における開口部の合計面積の占める比率)は、通常、50〜95%程度である。またメッシュの電磁波シールドパターンとは別に、其の周辺部の全周又は其の一部にそれと導通を保ちつつ隣接した全ベタ等の接地パターンが設けられる場合もある。この接地パターンはシールドパターン形成時に同時に形成しても良く、別途導電インキを使って形成してもよく、導電金属テープなどを貼ることにより形成しても良い。なお、かかる別途導電インキで該接地パターンを形成する場合の印刷法としては、特に微細パターン再現精度は不要の為、凸状パターン層2と同様の印刷方法でも良いし、或いはシルクスクリ−ン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の公知の各種印刷方法によっても良い。
なお、線幅は、より高透明のものを得る為により一層微細化することが求められている観点から、50μm以下、好ましくは30μm以下、特に20μm以下とすることが好ましい。
また、導電パターン層2の厚さは、その導電パターン層2の抵抗値によっても異なるが、電磁波シールド性能と該導電パターン層上への他部材の接着適性との兼ね合いから、その中央部(突起パターンの頂部)での測定において、通常、2μm以上50μm以下であり、好ましくは、5μm以上20μm以下である。
この導電パターン層2は、導電性粒子2aとバインダー樹脂2bを含む導電性組成物(導電性インキ或いは導電性ペースト)を、第1態様の電磁波シールド材の発明においては、シルクスクリ−ン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の公知の各種印刷方法によって形成することができる。
また、第2態様の電磁波シールド材の発明においては、導電パターン層2は後述する凹版印刷法によりプライマー層3上に形成することで得ることができる。
また、前記導電パターン層2の表面に安定して電解めっきにより金属層4の形成が可能になる為には、該導電性組成物から成る導電パターン層の表面抵抗率は低い程好ましい。具体的には、表面抵抗率が2Ω/□以下、となるよう構成することが好ましい。更に、前記導電パターン層の表面に金属層を形成すること無く、且つ電磁波シールドメッシュとして多用される線幅が25μm以下、線厚みが20μm以下、且つ開口率80%以上の領域にて十分な電磁波シールド性を発現せしめる為には、該導電性組成物から成る導電パターン層の表面抵抗率は、更に低い程好ましい。具体的には、表面抵抗率が1.2Ω/□以下、より好ましくは0.8Ω/□以下となるよう構成すると良い。該導電パターン層の表面抵抗率を0.8Ω/□以下とする為には、後述の様に、該導電性粒子の材料として体積抵抗率の低い銀、金、銅等の金属を選択すること、該導電性粒子の平均粒子径を3μm以下とすること、該導電性粒子の粒子径を小粒子径粒子と大粒子径粒子との混合系にすること、該凸状パターン層の頂部に於ける該導電性粒子の密度を密にすること、及び該凸状パターン層をプライマー層上に転写して以降、水分存在化且つ高温下にて処理(いわゆる湿熱処理)すること、酸で処理すること、或いは、該導電パターン層を形成した後、酸処理を施し、さらに引き続いて温水処理を施すことが有効である。これらのうち1乃至2以上の手段を併用すると良い。特に、導電パターン層を形成した後、酸処理を施し、さらに引き続いて温水処理を施すことが、電気抵抗低減化効果が顕著に現れるので好ましい。
導電性組成物自体の導電性を示す体積抵抗率は、印刷する形状により見かけの値が変化する。例えば、市販の導電ペーストをベタ形状(開口部がない形状)で形成した場合の体積抵抗率に比べ、下記の式で計算した、パターンで形成した場合の見かけの体積抵抗率は、形成するパターン形状を微細にするほど大きくなる。
(式):見かけの体積抵抗率〔Ω・cm〕=パターン部の表面抵抗率〔Ω/□〕× パターン部厚み〔cm〕×パターン占有率
・パターン部厚み:パターン形成部の厚み− パターン非形成部(開口部)の全厚み
・パターン占有率:単位面積のうち、パターン形成されている部分の面積の割合
例えば、市販の乾燥硬化型銀ペーストをベタ塗りし乾燥させた場合の体積抵抗率は、通常10-5〔Ω・cm〕以下のオーダーであるが、実際にメッシュパターン印刷すると、見かけの体積抵抗率は1桁以上高くなることが多い。これは銀粒子の充填率や粒子同士の接触の機会が低減することによる。例えば、同じパターン占有率であっても、線幅や厚みが導電粒子の粒径に近くなるほど抵抗は増大する。ここで上記の各種手段を用いれば、この体積抵抗率上昇を抑えられる。特に、温度と湿度による処理(電気抵抗低減化処理工程)を行うことで、見掛けの体積抵抗率は該処理を行う前に比べて、80〜50%の値に低減する。
また、酸処理によっても、見掛けの体積抵抗率は該処理を行う前に比べて、80〜50%の値に低減する。
特に、酸処理後に温水処理を行うことで、見掛けの体積抵抗率は該処理を行う前に比べて、60〜30%の値に低減する。
導電性組成物を構成する導電性粒子としては、金、銀、白金、銅、ニッケル、錫、アルミニウムなどの低抵抗率金属の粒子、或いは芯材粒子としての高抵抗率金属粒子、樹脂粒子、無機非金属粒子等の表面が金や銀などの低抵抗率金属で被覆された粒子、黒鉛粒子、導電性高分子粒子、導電性セラミックス粒子等を挙げることができる。
導電性粒子の形状は、正多面体状、截頭多面体状等の各種の多面体状、球状、回転楕円体状、鱗片状、円盤状、樹枝状、繊維状、針状等から選ぶことができる。特に、多面体状、球状、又は回転楕円体状が好ましい。これらの材料や形状は適宜混合して用いてもよい。
導電性粒子の大きさは種類に応じて任意に選択されるので一概に特定できないが、好ましくは、平均粒子径が0.01〜10μm程度のものを用いることができる。得られる凸状パターン層の電気抵抗を低く〔前記の如く、好ましくは、表面抵抗率(単に、表面抵抗とも略称)が0.8Ω/□以下〕して良好な電磁波シールド性を得る為には、平均粒子径は小さい方が好ましく、此の観点からは平均粒子径0.1〜3μmが好ましい。一般に「ナノ粒子」と呼ばれるような平均粒子径が数十nmと小さい粒子はコスト高につながり、また、結着用樹脂を入れると性能が低下し、インキとしての安定性も低下する。又、粒子径の分布については、得られる凸状パターンの電気抵抗を低くする為には、分布幅が狭く単一粒子径に近いものよりも、図15(A)の如く、相対的に大粒子径の粒子と相対的に小粒子径の粒子との混合系から成る方が良い。例えば、粒子径が0.01μm〜1μmの範囲の小粒子径粒子と粒子径5〜10μmの範囲の大粒子径粒子との混合系が好ましい。かかる混合系に於ける両粒子の混合比は、小粒子径粒子数:大粒子径粒子数=1:9〜9:1、特に、小粒子径粒子数:大粒子径粒子数=5:5〜9:1の範囲が好ましい。当然のことながら、パターンの線幅や厚みよりも大きな粒子が混入すると、印刷時に抜けやスジなどの不良が多発するため、大粒子径粒子の平均サイズ、あるいは最大粒子径はパターン設計により変わってくる。また、異なる平均粒子径を持つ複数種類の粒子を混合する以外に、ある程度の粒度分布を持った粒子を最初から用いても良い。
該導電性粒子の粒子径を小粒子径粒子と大粒子径粒子との混合系にすると該導電性組成物(から成る凸状パターン層)の表面抵抗率が低下する理由としては、かかる系から成る凸状パターン層の断面を電子顕微鏡で観察すると、大粒子径粒子の分布する間隙に小粒子径粒子が充填されて分布した形態が観察されることから推して、大粒子径粒子同士の接触が無い部分の間隙を、そこに介在する小粒子径粒子の接触によって補強し、導電性組成物内に分散する大小粒子相互の電気的接触面積の総和が増大する為(前記の式R=ρL/Sにおいて断面積Sが増加したことに相当)と考えられる。
また、該凸状パターン層内に於ける該導電性粒子の分布は、所望の特性や製造適性に応じて各種形態を選択可能であるが、特に好ましい形態としては、第2態様の電磁波シールド材の発明による図15(A)の如く、該凸状パターン層の頂部近傍(プライマー層から遠ざかる方向)においては、相対的に、粒子間の間隔が小さく、粒子数密度、即ち単位体積当りの粒子数が高く(密に)なり、一方、該凸状パターン層の底部近傍(プライマー層に近付く方向)においては、相対的に、粒子間の間隔が大きく、粒子数密度が低く(疎或いは粗)になる分布が挙げられる。
かかる分布形態の場合は、本発明の電磁波シールド材を画像表示装置の画面に設置する使用形態、即ち、該凸状パターン層側が画像表示装置側に向かい、該透明基材側が画像の観察者側に向かう向きで使用する場合において、観察者側に対峙する該導電性粒子は、密度が粗の為、外来光(電燈光、日光等)を散乱させて、観察者の目に入る反射光、特に鏡面反射光を低減する。その結果、外来光存在下に於ける画像の白化、周囲の風景の映り込みを防止し、画像コントラストの低下を防止することが出来、好ましい。この効果をより一層有効に発現させる為には、該導電性粒子形状としては、鱗片状よりも、多面体状、球状、又は回転楕円体状の形状を選択する方が、該凸状パターン層のプライマー層側表面に鏡面に近い面が形成され難い為、好ましい。又、該導電性粒子形状としては、鱗片状の物を採用する場合は、該凸状パターン層中の鱗片状導電性粒子の配向方向(例えば、該鱗片の一番広い面の法線方向として定義される)を乱雑(random)に分布するようにすると、鏡面反射が低減し、好ましい。尚、該導電性粒子形状が多面体状、球状、又は回転楕円体状の形状の場合でも、其の配向方向を乱雑化することは、鏡面反射光の低減の点では好ましい。
且つ、同時に、画像表示装置側に対峙する該導電性粒子は、緻密に集合し、各粒子間の電気的接触も良好になり、電気抵抗が下がり、電磁波シールド効果も高まる。尚、当然、かかる高密度に分布する導電性粒子は可視光線の反射率も高いが、該導電性粒子は画像観察者の目に触れない側(観察者と反対側)の面に位置する為、画像コントラスト等の低下の心配は無い。また、該導電性粒子層が画像観察者側に位置するように設置する使用形態の場合は、必要に応じて、該凸状パターン層表面に、黒化処理などを施せばよい。
また、該凸状パターン層の頂部近傍において粒子が緻密に存在するという構造は、本メッシュを電磁波シールド部材として用いる場合に、接地部品との接触において接触抵抗を下げるという効果もある。
該凸状パターン層中に於ける該導電性粒子の密度分布を制御し、図15(A)の如く、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該凸状パターンの頂部近傍において密である様にしたり、或いは該プライマー層近傍において粒子の配向方向が乱雑になり、且つ該凸状パターン層の頂部において平行乃至略平行に配向せしめる為には、例えば、後述の如くの凹版印刷法を応用した本発明の第2の態様の電磁波シールド材の製造方法(図8参照)において、版面凹部内に充填された導電性組成物上面の凹み(図8(A)の符号6参照)に、透明基材上の流動状態のプライマー層を押圧する圧力を高めに設定すると共に、未硬化状態に於ける該導電性組成物の粘度を低めに設定し、更に該導電性組成物を凹版凹部内で固化させずに、版面から離型後固化せしめることが有効である。其の他、これら導電性粒子の密度分布や配向状態は、導電性組成物のバインンダー樹脂の種類、導電性粒子の材料と粒子径と粒子形状、バインダー樹脂と導電性粒子との配合比、及び該導電性組成物の塗工条件や固化条件等に依存する。現実には、これら導電性粒子の密度分布や配向状態に影響する各種条件から実験的に、求める導電性粒子の密度分布及び配向に合致する条件を決定することになる。
該導電性組成物中の導電性粒子の含有量は、導電性粒子の導電性や粒子の形態に応じて任意に選択されるが、例えば導電性組成物の固形分100質量部のうち、導電性粒子を40〜99質量部の範囲で含有させることができる。なお、本明細書において、平均粒子径というときは、粒度分布計、またはTEM(透過型電子顕微鏡)観察で測定した粒子径を平均した値を指している。
導電性組成物を構成するバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等の樹脂を挙げることができ、電離放射線硬化性樹脂としては、プライマーの材料として前記した物を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は必要に応じて光重合開始剤を添加してもよい。
また、第2態様の電磁波シールド材の発明において、版の凹部への充填に適した流動性を得るために、これら樹脂は通常、溶剤に溶けたワニスとして使用する。導電性ペーストとして用いる溶剤の種類には特に制限はなく、一般的に印刷インキに用いられる溶剤の中から適宜選択して使用できるが、プライマー層3の安定硬化を阻害したり、硬化後のプライマー層を膨潤、白化、溶解させたりしないものが好ましい。溶剤の含有量は通常、10〜70質量%程度であるが、必要な流動性が得られる範囲でなるべく少ないほうが好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、もともと流動性があるため、必ずしも溶剤を必要としない。
また、導電性組成物の流動性や安定性を改善するために、導電性や、透明基材又はプライマー層との密着性に悪影響を与えない限りにおいて適宜充填剤や増粘剤、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、沈降防止剤などを添加してもよい。
[電磁波シールド材の製造方法]
第1態様の製法発明は、図5(A)に工程図を示すように、透明基材の一方の面に導電性粒子とバインダー樹脂を含んでなる導電性組成物により所定の導電パターン層を形成する工程、形成された前記導電パターン層のバインダー樹脂を硬化(乾燥)させて導電層を形成する硬化工程、硬化させた前記導電層を酸処理する工程、及び酸処理した前記導電層を温水処理する工程、を有しており、前記導電層の横断面の電子顕微鏡写真による観察において、該導電性粒子の少なくとも一部が融合した連なりを有してなる導電層を形成したことを特徴とする電磁波シールド材の製造方法である。
第1態様の製法発明においては、前記の導電性粒子とバインダー樹脂を含んでなる導電性樹脂組成物を、シルクスクリ−ン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の公知の各種印刷方法によって所定の導電パターン層を形成し、しかる後バインダー樹脂を硬化させて導電層を形成する。本発明において、硬化とは、硬化性バインダー樹脂の架橋反応、重合反応等による狭義の硬化のみならず、インキに含む溶剤の揮発乾燥等を含み、印刷されたパターンが固化して透明基材に固着した状態にすることをいう。
以下、硬化させた導電層の酸処理及び温水処理について説明するが、酸処理及び温水処理の内容は、第1態様の製法発明、第2態様の製法発明ともに共通している。
該導電性組成物を硬化させて導電層を形成した後、酸処理する工程、それに続く温水処理工程を経ることによって、該導電層の表面抵抗率が低下し、電磁波シールド性能が向上する。この現象は、特に導電性粒子が銀または銀を含む粒子である場合に顕著に観察され、以下、これを電気抵抗低減化処理工程とも呼称する。これはいわゆる焼成処理とは異なり、PETなど一般のフィルム基材にダメージを与えるような長時間の加熱処理ではなく、また低温焼成用印刷インキとして知られたナノサイズ粒子の分散液ではなく、樹脂等の結着材を含んだ一般的な性状の導電インキを使用した場合の処理方法として極めて有効である。
本発明において、酸処理とは、バインダー樹脂を硬化させて形成した導電パターン層を、酸と接触させることによって、導電パターン層の電気抵抗を低減化し導電層の表面抵抗率を低下させる処理をいう。
本発明における酸とは、特に限定されず、種々の無機酸、有機酸から選択することができる。無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸などが挙げられる。有機酸としては、酢酸、クエン酸、蓚酸、プロピオン酸、乳酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。これらは、強酸であっても、弱酸であってもよい。好ましくは酢酸、塩酸、硫酸、およびその水溶液であり、より好ましくは塩酸、硫酸、およびその水溶液であり、特に取扱い易さの観点から、塩酸が好ましい。
酸処理の時間は数分以下で十分であり、処理時間をより長くしても、導電性の向上効果が高まらない場合や、導電性の向上効果が悪化する場合がある。酸による処理時間は、15秒〜60分であることが好ましく、より好ましくは15秒〜30分であり、さらに好ましくは15秒から2分であり、特に好ましくは15秒〜1分である。
酸処理の温度は、常温で十分である。高温で処理を行うと、酸の蒸気が発生して周辺の金属装置を劣化させる原因となったり、透明基材として熱可塑性樹脂フィルムを用いた場合には、透明基材を白化させ、透明性を損ねる場合があるため、好ましくない。好ましい処理温度は40℃以下であり、より好ましくは30℃以下であり、さらに好ましくは25℃以下である。
酸処理の方法は特に限定されず、例えば、酸や、酸の溶液の中に凸状パターン層を浸したり、酸や、酸の溶液を導電パターン層上に塗布したり、酸や、酸の溶液のミスト(液滴)や蒸気を凸状パターン層にあてたりする方法が用いられる。これらの中でも、酸の溶液の中に導電パターン層を浸したり、酸や、酸の溶液を導電パターン層上に塗布したりするなど、導電パターン層と酸の液体を接触させる方法が、導電性向上効果に優れ、又酸のミストや蒸気による機械類の腐蝕や作業者の衛生環境上の問題も少ないため好ましい。すなわち、酸の処理条件としては、40℃以下の温度で、酸の溶液の中に導電パターン層を浸したり、酸や、酸の溶液を導電パターン層上に塗布したりすることが好ましい。
酸の溶液を用いる場合、酸の濃度は、好ましくは10mol/L以下であり、より好ましくは5mol/L以下であり、さらに好ましくは1mol/L以下である。酸の溶液の濃度が高いと、作業性が低下し、生産性が悪化する場合があったり、透明基材として熱可塑性樹脂フィルムを用いた場合には、透明基材を白化させ、透明性を損ねる場合があるため、好ましくない。また、酸の濃度が低すぎる場合にも、酸による処理の効果が得られないため、好ましくは0.05mol/L以上、より好ましくは0.1mol/L以上であることが好ましい。
なお、酸の溶液を用いる場合は酸の残渣による悪影響が懸念されるため、処理後に水での洗浄、すすぎ、乾燥工程が必要となるが、本発明では、引続き、温水処理を行うので、独立したすすぎ工程は省略することができる。
次に温水処理工程について説明する。
本発明において、酸処理工程に引続いて行う温水処理は、特に限定されず、例えば、水のみを成分とする所定の水温の温水、あるいは、水を主成分として、これに事後の粘着剤層の形成や積層を考慮して導電パターン層の表面清浄化剤、処理剤等を含む温水溶液の中に導電パターン層を浸したり(水中浸漬とも呼称する)、温水や、温水溶液を導電パターン層上に塗布乃至は掛け流したり、温水や、温水溶液を噴霧したり、或いはこれらのミスト(水滴)や蒸気を導電パターン層に当てたりする方法が用いられる。これらの中でも、温水の中に導電パターン層を浸漬したり、温水を導電パターン層上に掛け流したりするなど、導電パターン層と温水を直接接触させる方法が、導電性向上効果に優れるため好ましい。すなわち、温水処理の条件としては、水温30〜100℃、より好ましくは、40〜95℃、特に好ましくは70〜90℃の温水の中に導電パターン層を浸漬したり、あるいは温水槽中を連続走行させたり、温水シャワー中を連続走行させることが好ましい。
温水処理に用いられる水は、純水、イオン交換水、工水、上水道水等を使用できるが、不純物による導電パターン層の表面抵抗の上昇や錆発生等の問題、不純物が沈殿し不良を招く問題を回避する観点から、純水やイオン交換水を使用することが望ましい。
処理時間は、水温とも関係するが、90℃で30秒程度であり、30〜100℃で概ね5分〜20秒程度である。
又、水蒸気を当てる場合(湿熱処理とも呼称する)は、該水蒸気を満たした雰囲気中に所定時間放置するが、放置する空気(雰囲気)の相対湿度は70%RH以上、好ましくは85%以上とする。斯かる高温状態の温度(水蒸気を含む空気中への放置の場合は雰囲気温度、水中浸漬の場合は水温)は摂氏30℃以上、好ましくは60℃以上である。但し、余り高温になると樹脂バインダーや透明基材の変質、変更を生じることになる為、通常の材料の場合、120℃以下とする。
湿熱処理における処理時間(環境保持時間)は、図14に示すように、処理開始後48時間までは、表面抵抗率が時間の経過とともに低下するが、48時間以降は、ほぼ一定となるので、48時間程度とするのがよい。
次に第2態様の製法発明の電磁波シールド材の製造方法について図により詳細に説明する。
図5(B)は、本発明の実施態様2の電磁波シールド材の製造方法の一例を示す工程図である。また、図7は、本発明の第2態様の製法発明による製造方法を実施する装置の概略構成図であり、図8は、凹部内の導電性組成物の凹みにプライマー層を充填し、その導電性組成物が転写する形態を示す模式図である。
本発明の第2態様の製法発明の電磁波シールド材の製造方法は、透明基材1の一方の面に凸状パターン層2が形成されてなる電磁波シールド材20(図11(B)を参照)の製造方法であって、図6〜8に示すように、硬化するまで流動性を保持できるプライマー層3が一方の面S1に形成された透明基材1を準備する透明基材準備工程と、凸状パターンが形成された板状又は円筒状の版面63に、硬化後に導電性を有した硬化物を形成する導電性組成物15(2')を塗布した後、その凹部内以外に付着した導電性組成物を掻き取って凹部64内に導電性組成物15を充填する充填工程(図6(b)、8(A)参照)と、充填工程後の版面63の凹部64側と透明基材準備工程後の透明基材1のプライマー層3側とを圧着して、凹部64内の導電性組成物15とプライマー層3とを空隙無く密着する圧着工程(図8(B)参照)と、圧着工程後にプライマー層3を硬化するプライマー硬化工程と、プライマー硬化工程後に透明基材1を版面63から剥がして凹部内の導電性組成物15(2')をプライマー層3上に転写する転写工程(図8(C)参照)と、転写工程後、プライマー層3上に所定のパターンで形成された導電性組成物層2’を硬化させてなる導電層を形成する硬化工程と、を少なくとも有するものである。
なお、かかるプライマー層の硬化と導電性組成物の硬化とを同時に行うことも出来る。その場合は、該プライマー硬化工程と該導電層を形成する硬化工程とは1工程で兼用される。その後、該転写工程となる。以下、各工程について図面を参照して説明する。
(透明基材準備工程)
透明基材準備工程は、硬化するまで流動性を保持でき、必要に応じて溶剤や離型剤が添加されたプライマー層3が一方の面S1に形成された透明基材1を準備する工程である。プライマー層3はプライマー層用樹脂組成物を透明基材1上に塗布して形成するが、こうしたプライマー層用樹脂組成物は上述したとおりであるのでここではその説明を省略する。プライマー層3を有する透明基材1は購入品であってもよいし、図5(B)に示すような塗布法で形成したものであってもよいが、いずれの場合であっても、後述する圧着工程時に、プライマー層3が流動性を保持した状態であることが必要である。
例えば、プライマー層用樹脂組成物として室温で液体の硬化性樹脂組成物を用いた場合には、電離放射線を照射しない未照射状態で、その電離放射線硬化性樹脂組成物中の溶剤のみを乾燥除去し、透明基材上に流動状態からなるプライマー層3を塗膜として形成しておき、その状態で後述する圧着工程に供給することが好ましい。もちろん、ここで用いる電離放射線硬化性樹脂組成物が溶剤を含まない、いわゆるノンソルベント(無溶剤)タイプの場合には、プライマー層3を形成する際の乾燥工程は不要である。ノンソルベントタイプの場合、塗布時の粘度を調整するために加温または冷却して用いてもよい。
また、プライマー層用樹脂組成物として熱可塑性樹脂組成物を用いた場合には、後述する圧着工程において加熱による流動状態となっていれば良く、圧着工程の直前にプライマー層3の加熱処理を行っても良く、熱ロールなどでプライマー層3の加熱と版面への圧着を同時に行っても良い。
なお、プライマー層を塗布する方法については各種コーティング方式が使用でき、例えば、ロールコート、グラビアロールコート、コンマコート、ダイコート等の各種方式から適宜選ぶことができる。
図5(B)に示す塗布法はグラビアリバースコートの一例であり、ロール状に巻かれたフィルム状の透明基材1をグラビアロール51とバックアップロール52との間に導入してプライマー層用の電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布する方法である。この場合において、グラビアロール51は電離放射線硬化性樹脂組成物充填容器53に下方で接触し、電離放射線硬化性樹脂組成物を引き上げて透明基材1の一方の面に塗布する。このとき、余分な電離放射線硬化性樹脂組成物をドクターブレード54で掻き取る。透明基材1上に電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布した後においては、必要に応じて樹脂組成物に含まれる溶剤の乾燥処理を施す。この乾燥処理は、例えば、図5(B)に示す如くの乾燥ゾーン(内部で、温風吹付け、赤外線照射等を行う)中にプライマー層を塗工した透明基材を通過させて、コーティング装置に適した粘度に調整された電離放射線硬化性樹脂組成物中の溶剤のみを乾燥除去して、続く圧着工程に供する流動状態のプライマー層3を形成する処理である。コーティング装置に適した粘度を持つノンソルベントタイプの電離放射線硬化性樹脂組成物を用いる場合は、乾燥装置は不要である。流動性を保持したプライマー層3を有する透明基材1は、その後に圧着工程に供給される。
(樹脂充填工程)
導電性組成物充填工程は、図6、図7に示すように、メッシュ状等の所定のパターンで凹部64が形成された板状又は円筒状の版面63(図6は平板状の凹版、図7は円筒状の凹版を例示)に、硬化後に凸状パターン層2を形成できる導電性組成物15(2‘)を塗布した後、その凹部内以外に付着した導電性組成物をドクターブレード〔図6(b)に図示の形態〕、ローラ等で掻き取って凹部内に導電性組成物15を充填する工程である。導電性組成物15は上述したとおりであるのでここではその説明を省略する。
プライマー層用樹脂組成物に対する導電性組成物の組合せは特に限定されず、プライマー層用樹脂組成物の硬化処理と導電性組成物の硬化処理との方式が異なっていてもよいが、導電性組成物15として導電性粒子を含む電離放射線硬化性樹脂を採用する場合には、プライマー層用樹脂組成物も電離放射線硬化性樹脂組成物であることが好ましい。そうした組合せにすることにより、この樹脂充填工程後の圧着工程とそれに続くプライマー層の硬化工程時の電離放射線照射処理によって、プライマー層3の硬化と導電性組成物層15(2')の硬化を同時に行うことができる。このとき、照射する電離放射線が光、或いは紫外線の場合には、適切な光重合開始剤と光硬化樹脂の組み合わせを選ぶことにより硬化させることができる。なお、紫外線照射の場合においては、導電性粒子の色が黒などの光を通さないものでは表面だけが硬化されやすく、内側の樹脂は硬化しにくいことを考慮しておく必要がある。
また、電子線を照射する場合には特に導電性粒子の色は考慮する必要はない。
なお、図5(B)及び図7に示す塗布法は、プライマー層3を有する透明基材1を円筒状の版である凹版ロール62に圧着する前に行われる工程の一例であり、具体的には、ピックアップロール61は導電性組成物充填容器68に下方で接触し、導電性組成物15(2')を引き上げて凹版ロール62の版面63に塗布する。このとき、版面63上の凹部64以外の部分に導電性組成物15が乗らないように、ドクターブレード65で掻き落とす。
(圧着工程)
圧着工程は、図5(B)及び図7に示すように、樹脂充填工程後の版面63の凹部64側と、透明基材準備工程後の透明基材1のプライマー層3側とを圧着して、凹部64内の導電性組成物15とプライマー層3とを空隙無く密着する工程である。圧着はニップロール66で行われ、凹版ロール62に対して所定の圧力で付勢されている。そのニップロール66は付勢圧力の調整手段を備えており、その付勢圧力は、プライマー層3の流動性に応じて任意に調整される。この際に、図7に示す如く、該プライマー層3は、版面の凹部64内に充填された導電性組成物15上部に生じる、望まれない凹み6内に流入し、透明基材1と導電性組成物15との間の空隙を充填する。
(硬化工程)
硬化工程は、ニップロール66の付勢力による圧着工程後にプライマー層3を硬化する工程であり、圧着した後の状態で硬化処理することにより、プライマー層3と導電性組成物15とが密着した状態で硬化させることができる。具体的には、プライマー層用樹脂組成物が電離放射線硬化型樹脂組成物である場合には、照射ゾーン(図7にUVの符号で示し、凹版ロール62の上方に位置する)で電離放射線が照射され、硬化処理される。
この場合、プライマー層は透明基材と版面にはさまれた形になり、空気中の酸素による硬化阻害を受けないため、窒素パージ装置などは必ずしも必要ない。
なお、硬化処理は、上記と同様、プライマー層用樹脂組成物と導電性組成物の種類に応じて選択され、例えば、電離放射線照射処理、加熱、冷却処理等の硬化処理が施される。
(転写工程)
転写工程は、図8(C)に示すように、硬化工程後に透明基材1を凹版ロール62の版面63から剥がして凹部64内の導電性組成物15をプライマー層3上に転写する工程である。プライマー層3は、この工程前のプライマー硬化工程で硬化しているので、透明基材1を凹版ロール62の版面63から剥がすことにより、プライマー層3に密着した導電性組成物15は凹部内から離れてプライマー層3上に綺麗に転写し、導電性組成物層2’となる。この転写工程では、ほぼ100%に近い転移率(前記定義で、通常、80%〜95%程度、或いはそれ以上)で導電性組成物15の転移が可能である。引き剥がしは、図5(B)と図7(A)に示すように、出口側に設けられたニップロール67により行われる。そして、通常は、凹版ロール62からの剥離は、ほぼ、正常な剥離点Pにおいて円滑に行われるが、若し、プライマー層の版面からの離型性が不十分で剥離点Pの位置が図7(B)に示す如く剥離点P'に移動し、前後に振動する場合には、プライマー層への離型剤の添加等により、これを改善することが出来る。なお、転写工程において導電性組成物15は必ずしも硬化させる必要はなく、導電性組成物15に溶剤が含まれた状態でも転移させることができる。この理由は今のところ不明であるが、空隙なく密着した状態で硬化させたプライマー層3と導電性組成物15の間の密着力が、凹版ロールの凹部64の内壁と導電性組成物15の間の密着力よりも大きくなっているためと推測される。
(電気抵抗低減化処理工程)
該導電性組成物を凹版凹部内から該プライマー層を介して透明基材上に転写させて凸状パターン層とした後、更に、(i)温水処理として、水分存在下、且つ比較的高温下にて処理するか、或いは(ii)酸処理として、酸に接触させることによって、該凸状パターンの体積抵抗率が低下し、電磁波シールド性能が向上する。この現象は、特に導電性粒子が銀または銀を含む粒子である場合に観察され、以下、これを電気抵抗低減化処理工程とも呼称する。これはいわゆる焼成処理とは異なり、PETなど一般のフィルム基材にダメージを与えるような温度での長時間の加熱処理ではなく、また低温焼成用印刷インキとして知られたナノサイズ粒子の分散液ではなく、樹脂等の結着材を含んだ一般的な性状の導電インキが使用可能である。
電気抵抗低減化処理工程に於ける(i)の温水処理(水分存在下)及び(ii)の酸処理の各々それ自体については、第1態様の製法発明の場合と同様の為、其の記載を援用し、此処での重複した説明は省略する。
但し、第2態様の製法発明中での電気抵抗低減化処理工程に於いては、(i)の温水処理のみでも良いし、(ii)の酸処理のみでも良いし、(i)の温水処理の後引き続いて(ii)の酸処理を行っても良いし、或いは(ii)の酸処理の後引き続いて(i)の温水処理を行っても何れでも良い。これらの各種形態の電気抵抗低減化処理工程の中でも、電気抵抗低減化効果、作業性の点に於いて、(ii)の酸処理の後引き続いて(i)の温水処理を行うことが好ましい。
かかる電気抵抗低減化処理工程によって、凸状パターン全体の表面抵抗率は処理前の80〜30%程度に減少する(見かけの体積抵抗率も同様に処理前の80〜30%程度となる)。
また、導電性組成物の粒子形状、大きさや樹脂バインダーの種類に関わらずこの体積抵抗率の減少は見られるが、(a)導電性粒子の平均粒子径が0.1μm〜1μm、(b)導電性粒子が相対的に大粒子径の粒子と小粒子径の粒子との混合からなる導電ペーストを用いると、パターン形成後の表面抵抗率が前記以外の導電ペーストを用いた場合に比べ小さくなり、処理後の表面抵抗率の絶対値を小さくでき、一般的なパターン設計において処理後に0.8Ω/□以下の値にすることが可能である。また、後述する金属層を電解めっきにて形成する場合にも、本処理により表面抵抗率を下げることによってめっき処理速度を上げることができ、生産性が向上する。
第2態様の製法発明においては、第1態様の製法発明と同様に、電気抵抗低減化処理工程として、特に、該導電性組成物を硬化させて導電層を形成した後、酸処理する工程、それに続く温水処理工程を経ることによって、極めて短時間で、該導電層の表面抵抗率が低下し、電磁波シールド性能が向上するので好ましい。この現象は、特に導電性粒子が銀または銀を含む粒子である場合に観察される。これはいわゆる焼成処理とは異なり、PETなど一般のフィルム基材にダメージを与えるような長時間の加熱処理ではなく、また低温焼成用印刷インキとして知られたナノメートルサイズ粒子の分散液ではなく、樹脂等の結着材を含んだ一般的な性状の導電インキを使用した場合の処理方法として極めて有効である。
第2態様の製法発明における酸処理する工程及び温水処理を順次此の順序で処理する工程の詳細についても、その処理方法、内容が前述の第1態様の製法発明と同じなので説明を省略する。
かかる電気抵抗低減化処理工程によって、体積抵抗率が減少する理由は、前述の如く現時点では未解明であるが、例えば導電粒子として銀を用い、処理前後の銀粒子の状態変化をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察すると、銀の粒子形状変化、部分的な融着、粒子間距離の減少などが観察され、これらが体積抵抗率低減の直接の原因と推定される。
工程が少し前後するが、図8は、凹部64内の導電性組成物15の凹み6にプライマー層3を充填し、その導電性組成物15が転写する形態を示す模式図である。図8(C)及び図3に示すように、転写工程後のプライマー層3の形態と導電性材料層2’の形態を観察すると、プライマー層3のうち導電性材料層2’が転写された部分Aの厚さTAは、導電性材料層2’が転写されていない部分Bの厚さTBよりも大きい。そして、厚さの大きい部分Aのサイドエッジ5,5は、厚さの小さい部分Bの側に導電性材料層2が回り込んでいる。こうした形態は、流動性を保持したプライマー層3が形成された透明基材1のプライマー層3側と、樹脂充填工程後の版面63の凹部64側とを図8(A)、(B)に示すように圧着することにより、凹部64内の導電性組成物上部に生じやすい凹み6に流動性のあるプライマー層3が充填するので、転写後の形態は、図8(C)に示すように、透明基材1上に設けられたプライマー層3のうち導電性材料層2が形成されている部分Aの厚さTAは導電性材料層2が形成されていない部分Bの厚さTBよりも大きくなり、さらに、厚さの大きい部分Aのサイドエッジ5,5は厚さの小さい部分Bの側に導電性材料層2が回り込んだ形態になる。通常、凸状パターン層が形成されている部分Aに於けるプライマー層の厚さTAは、図3に示す如く、該部分の中央部に行く程厚みが厚くなる。即ち、電磁波シールド用パターン部の横断面(例えば図3)において、該プライマー層3の断面形状は、透明基材1から遠ざかる方向に向かって凸になった、半円、半楕円等の所謂釣鐘型形状、3角形、台形、5角形等の所謂山形形状、或いはこれらに類似の形状をなす。
本発明の第2態様の電磁波シールド材の発明の電磁波シールド材は、特に、凸状パターン層形成部におけるプライマー層と凸状パターン層との界面に特徴がある。
〔凸状パターン層とプライマー層の界面の断面形態〕
本発明の第2態様の電磁波シールド材の発明における導電性組成物からなる凸状パターン層2とプライマー層3の界面は、図9(A)〜(C)に示すような3つの態様の断面形態をとり得るものであり、凸状パターン層2とプライマー層3との界面が、(a)プライマー層3と凸状パターン層2との界面が非直線状に入り組んでいる断面形態(以下、「第1態様」という)、(b)プライマー層3を構成する成分と凸状パターン層2を構成する成分とが混合している層を有する断面形態(以下、「第2態様」という)、及び、(c)凸状パターン層2を構成する導電性組成物中にプライマー層3に含まれる成分が存在している断面形態(以下、「第3態様」という、また、断面形態を「界面形態」ともいう。)が密着性、導電性組成物の転移性の点で好ましい結果を与えている。
界面形態の第1態様は、図9(A)に示すように、プライマー層3と凸状パターン層2との界面11が、プライマー層3側と凸状メッシュパターン層2側とに交互に非直線状に入り組んだ形態である。
なお、この界面形態の第1態様において、入り組んだ界面は、全体としては中央が高い山型の断面形態となっている。
この形態において、その界面11が、プライマー層3を構成する樹脂と導電層2を構成するバインダー樹脂又は充填固体粒子との界面であるように構成されていても良い。この場合の「充填固体粒子」とは、任意の粒子乃至粉末であり、前記の導電性粒子であっても、或いは体質顔料等の非導電性粒子であっても構わない。例えば、導電性組成物が導電性粒子末とバインダー樹脂とで構成されている場合には、その界面は、導電層2中の導電性粒子とプライマー層3を構成する樹脂とが入り組んだ非直線状の態様で形成される。このときの入り組みの程度と形態は、導電性粒子乃至粉末の形状や大きさ、プライマー層3を凹部内に圧着する際の圧力等によって影響を受ける。或いは、この界面11が、プライマー層3を構成する樹脂と導電層2を構成するバインダー樹脂との界面で構成されていても良い。
なお、界面形態の第1態様において、プライマー層3と凸状パターン層2との界面11は、必ずしも図9(A)に示すような連続した凹凸状の曲線ではなく、図22に示すように、凸状パターンのある断面で観察した場合に、界面における導電性粒子2aが全て接触している訳ではなく、ところどころに導電性粒子2aが遊離して存在する状態であり、またその状態は凸状パターンの長手方向(紙面の奥行き方向)でも逐次変動する不定形の凹凸状の曲線を呈するものである。特に導電ペーストに溶剤を含むものを用いて硬化した場合には、図22に示すような形態を呈する。
こうした界面形態の第1態様は、そもそも平坦面でない山型のプライマー層3上に凸状パターン層2が形成されていることを以ってしても密着性が良いのに加え、上記のように界面11が入り組んだ形態になっているので、所謂投錨効果により、プライマー層3と凸状パターン層2との密着性が著しく高くなっている。さらに、こういう界面形態をとるゆえに、版凹部内に充填された導電性組成物がプライマー層3上に極めて高い転移率(ほぼ100%)で転写されるという格別の効果を備えている。
界面形態の第2態様は、図9(B)に示すように、プライマー層3と凸状パターン層2との界面11の近傍に、プライマー層に含まれるプライマー成分と、凸状パターン層を構成する成分とが混合する領域21が存在している形態である。図9(B)では界面が明確に現れているが、実際には、明瞭でない曖昧な界面が現れる。また、図9(B)では混合領域21は、界面11を上下に挟むように存在する。この場合は、プライマー層中のプライマー成分と凸状パターン層2中の任意の成分とが両層内に相互に侵入する場合である。なお、混合領域21は界面11の上側(透明基材とは反対側)に存在しても下側(透明基材側)に存在してもよい。混合領域21が界面11の上側に存在する場合としては、プライマー層中のプライマー成分が凸状パターン層内に侵入し、凸状パターン層中の成分がプライマー層内に侵入しない場合であり、一方、混合領域21が界面11の下側に存在する場合としては、凸状パターン層中の任意の成分がプライマー層内に侵入し、プライマー層中のプライマー成分が凸状パターン層内に侵入しない場合である。
こうした界面形態の第2態様は、そもそも平坦面でない山型のプライマー層3上に凸状メッシュパターン層2が形成されていることを以ってしても密着性が良いのに加え、上記のように界面11近傍に混合領域21を有するので、プライマー層3と凸状パターン層2との密着性が著しく高くなっている。さらに、こういう界面形態をとるゆえに、版凹部内に充填された導電性組成物がプライマー層3上に極めて高い転移率(ほぼ100%)で転写されるという格別の効果を備えている。
界面形態の第3態様は、図9(C)示すように、凸状パターン層2中に広く、プライマー層3に含まれるプライマー成分31が存在している形態である。図9(C)ではプライマー成分31が界面11付近で多く、頂部に向かって少なくなって態様を模式的に表しているが、こうした態様には特に限定されない。プライマー成分31は、凸状パターン層2の頂部から検出される程度に凸状パターン層2内に侵入していてもよいし、主として界面近傍で検出される程度であってもよい。なお、第3態様において、特に、プライマー成分31が凸状パターン層内に存在している領域が界面11の近傍に局在化している場合が、上記第2態様において混合領域が界面11の上側にのみ存在する形態に相当するといえる。
こうした界面形態の第3態様も上記第1及び第2形態の場合と同様、そもそも平坦面でない山型のプライマー層3上に凸状パターン層2が形成されていることを以ってしても密着性が良いのに加え、上記のようにプライマー成分31が凸状パターン層2に侵入しているので、プライマー層3と凸状パターン層2との密着性が著しく高くなっている。さらに、こういう界面形態をとるゆえに、版凹部内に充填された導電性組成物がプライマー層3上に極めて高い転移率(ほぼ100%)で転写されるという格別の効果を備えている。
本発明における導電性組成物からなる凸状パターン層2とプライマー層3の界面11は、上記の第1〜第3態様の界面形態の特徴を少なくとも1つ有しているが、それらの特徴を2つ以上有していてもよく、3つの全てを有していてもよい。
〔凸状パターン層〕
凸状パターン層が、特に、メッシュ形状となる形態(この形態を凸状メッシュパターン層とも呼称する)では、互いに方向の異なる2群以上の平行線群がから成る線部が交差して、これら線部に囲繞されて開口部(パターン非形成部)が形成される。尚、3群以上の平行線群(線部)が交叉する場合も、其の基本的な設計要領及び作用効果は共通の為、以下、通常広く用いられている2群の場合を例に絞って説明する。又、各線群の交叉角度、即ち、第一方向線部と第二方向線部との交叉角度θは、0°<θ<180°の範囲から選択できるが、θ=90°が通常広く用いられている。
〔金属層(めっき層)〕
本発明における電磁波シールド材は、導電性組成物からなる凸状メッシュパターン層2のみでは所望の導電性に不足する場合に、導電性を更に向上せしめるために、金属層を、必要に応じ形成することができ、凸状パターン層2上にめっきにより形成される。めっきの方法としては電解めっき、無電解めっきなどの方法があるが、電解めっきは無電解めっきに比べて通電量を増やすことでめっき速度を数倍に上げることができ、生産性を著しく向上させることができるため好ましい。
電解めっきの場合、凸状パターン層2への給電は凸状パターン層2が形成された面に接触させた通電ロール等の電極から行われるが、凸状パターン層2が電解めっき可能な程度の導電性(例えば、100Ω/□以下)を有するので、電解めっきを問題なく行うことができる。金属層を構成する材料としては、導電性が高く容易にめっき可能な、銅、銀、金、クロム、ニッケル等を挙げることができる。
金属層は凸状パターン層2に比べると一般的に体積抵抗率が1桁以上小さいため、凸状パターン層単体で電磁波シールド性を確保する場合に比べて、必要な導電性材料の量を減らせるという利点がある。
なお、めっき工程は、図5において追加処理ゾーンとした工程で行うことができるが、必ずしもインラインで行う必要は無い。
なお、金属層を形成した後においては、必要に応じて、その金属層を黒化処理したり、保護層9(図2参照)を設けてもよい。黒化処理は、例えば黒化ニッケルめっき、銅−コバルト合金めっき等の処理を例示できるが必ずしもこれらの処理に限定されない。また、保護層は、導電パターン層表面を被覆し保護する層である。通常は、保護層9は図2の如く、導電パターン層2の凹凸を充填、表面平坦化する所謂平坦化層としての機能も兼ねる。該保護層は、例えばアクリル系の紫外線硬化性樹脂を用いて形成することができる。導電パターン層や金属層に使用する金属が銅などの錆びやすい金属の場合には防錆処理を行うことが好ましく、クロメート処理剤等の一般的な防錆剤を使用でき、また防錆処理は黒化処理や保護層形成と兼ねてもよい。
〔光学フィルタ〕
こうして得られた電磁波シールド材は、単品で用いることも出来るが、その他該電磁波シールド材の表面、裏面、或いは表裏両面に各種の機能層を積層しても良い。斯かる機能層としては、光学機能層を設けて電磁波シールド機能と光学機能との両機能を具備する光学フィルタとして利用することができる。光学機能層としては、従来公知のものをそのまま用いればよく、例えば近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、調色層、紫外線吸収層、反射防止層、及び防眩層を挙げることが出来る。又、必要に応じて、該光学フィルタには、更に、光学機能以外の機能を発現する層を複合することが出来る。かかる層としては耐衝撃層、帯電防止層、ハードコート層、及び防汚層等を挙げることができる。
ここで、導電パターン層側の面上に上記の機能層を形成する場合には、直接形成する方法、および別途形成した機能層を貼合する方法がある。直接形成する場合には、機能を発現する材料を導電パターン層面にコーティング装置を用いて塗布形成する方法や、スパッタや蒸着などの一般的な手法が使用可能である。いずれにしても、本発明で使用しているプライマー層との密着性が良好な層であることが好ましい。
機能を発現する材料を塗布形成する方法としては、グラビア(ロール)コート、ロールコート、コンマコート、孔版印刷、ダイコートなどの一般的な装置が使用可能であり、材料の性状や必要な塗布精度に合わせて適宜選定する。また、面内に於いて凸状パターン層の一部領域を露出させる必要がある場合は、孔版パターン印刷、間欠塗工、ストライプ塗工などの塗工時にパターン形成する方法や、露出させるべき箇所をマスクして全面塗工した後マスクを剥がす方法、あるいは不要な箇所の機能層を除去するなどの方法を使用可能である。
直接形成した機能層が空気と接触する界面(フィルターの最表面、あるいは最裏面)に位置する場合には、画像光及び外光の散乱やレンズ効果による画質低下を抑制するために平坦化されていることが好ましい。
直接形成した機能層は単層で機能を発現するようにしても良く、複数の層で機能を発現するようにしても良い。単層の場合の例としてはハードコート機能、平坦化機能、近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、紫外線吸収機能、調色機能、反射防止機能、防眩機能、耐衝撃機能、帯電防止機能、防汚機能などの1つあるいは複数の機能を発現させてもよく、複数層の場合は例えば平坦化層+反射防止層、反射防止層+ハードコート層、近赤外線吸収層+ハードコート層などといった機能分担をさせることが可能である。
塗布形成する機能層が耐擦傷機能(ハードコート)層である場合は、JISK5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものであることが好ましく、このような硬度と前述の透明(樹脂)基材と同様な透明性を実現できるものであれば、材料は特に限定されない。用いる硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂などを要求性能などに応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂の例としては、前記プライマー層の材料の記載箇所に例示されているのでここでは省略する。
電磁波シールド材10、20と積層する光学機能層Foptの具体例の1例を模式的断面図を図23(A)に示す。図23(A)の光学機能層Foptは、画像観察者側(図23(A)に於ける上方)から順に、反射防止層100、透明基材シート200、ミクロルーバ層(300及び400)、遮断(バリア)層500、及び色素含有粘着剤層600を此の順に積層してなる。
反射防止層100は、隣接する直下の透明基材シート200よりも低屈折率の材料の層からなる。例えば、弗化マグネシウムの蒸着膜、中空シリカ粒子を分散させた弗素系樹脂の塗膜等が用いられる。
透明基材シート200は、前記透明基材1と同様の物の中から適宜選択する。例えば、ポリエチレンテレフタレートのシートが用いられる。
ミクロルーバ層(300及び400)は、特開2007−272161号公報等に記載のものであり、透明樹脂層300の中に複数條の吸光性楔形部400を互いに平行に一定周期で埋設してなる。斯かるミクロルーバ層(300+400)は、日光、電燈光等の外光を吸光性楔形部400で選択的に吸収し、画像光は吸光性楔形部400間の透明樹脂層300から透過せしめて、外光存在下での画像コントラストを向上せしめる。
尚、吸光性楔形部400内には、墨(カーボンブラック)、黒色酸化鉄等から成る暗色(代表的には黒色)色素を添加する。該黒色色素は、単一粒子が各個分離独立した形でバインダー樹脂中に分散(2次凝集無しで分散)したものでも良いが、外光吸收性、安定分散性等の点で、各個の単一粒子の複数個が2次凝集、会合、融合、乃至は接着した複合粒子の形でバインダー樹脂中に分散した形態の方が好ましい。
遮断層500は、色素含有粘着剤層600の中の色素がミクロルーバ層(300+400)中の物質と反応して、其の吸収スペクトルが変動することを防止する為の層である。色素の吸收スペクトルを変動させ得る物質としては、色素含有粘着剤層600中にジイモニウム系化合物、テトラアザポルフィリンの如き有機系色素を含む場合であって、且つミクロルーバ層の透明樹脂層300が(メタ)アクリレート系の紫外線硬化性樹脂からなる場合には、アセトフェノン、ベンゾフェノン等の光反応開始剤、吸光性楔形部400中の酸化鉄等の遷移金属原子を含む色素が挙げられる。斯かる物質と色素との組み合わせの場合に於いては、例えば、ガラス転移温度が80℃以上のポリメチルメタクリレートの厚さ1〜20μm程度の層が挙げられる。
色素含有粘着剤層600は、光学的機能層Foptを画像表示装置の前面やフィルタ基板と接着せしめる機能、及び所望の吸收スペクトル特性を付与する機能を兼備する層である。粘着剤としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ゴム等の樹脂からなる公知の物が用いられる。色素としては、ジイモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、微粒子上のセシウム−タングステン複合酸化物等の近赤外線吸収色素、テトラアザポルフィリン等のネオン原子の発光スペクトル中の波長590nm前後の光を吸収するネオン光吸収色素、フタロシアニンブルー、イソインドリノンイエロー、ポリアゾレッド等の着色色素、ベンゾトリアゾール系化合物、微粒子状亜鉛華等の紫外線吸収色素等の中から、1種以上適宜選択して添加する。通常は、近赤外線吸収色素、着色色素、及びネオン光吸収色素の3系統の色素を添加することが多い。
図23(B)に、斯かる光学機能層Foptと本発明の電磁波シールド材10とを積層してなる複合フィルタFcomの模式的断面図を示す。図23(B)の構成の複合フィルタは、其の透明基材1側を、透明粘着剤層を介して、画像表示装置の画面上に直接接着するか、或いはフィルタ基板上に、透明粘着剤層を介して、接着した上で、更に画像表示装置の画面前面に装着される。
例えば、図23(図23(A)及び図23(B)を総称して言う)の光学機能層Foptは、あくまでも1例であって、必要に応じて、適宜構成を変更し得る。斯かる図23の変形形態としては、例えば、図23では、ミクロルーバ層(300及び400)のは、吸光性楔形部400の広幅の底辺の方が画像表示装置側(図23に於ける下方)を向いているが、これとは逆に、吸光性楔形部400の狭幅の底辺の方が画像表示装置側(図23に於ける下方)を向いていても良い。
或いは、図23では、電磁波シールド材として電磁波シールド材10が用いられているが、これに代えて、図11(B)、図15(B)の如き電磁波シールド材20を用いても良い。
或いは、図23では、反射防止層100が用いられているが、これに代えて、透明塗膜の表面に微細凹凸を賦形したり、又は透明塗膜内に光拡散性粒子を分散させた構成からなる防眩層を用いても良い。
或いは、図23では、色素含有粘着剤層600中に全色素が添加されているが、これに代えて、色素を、色素含有粘着剤層600中及び他の層中と分散させて添加しても良い。例えば、色素含有粘着剤層600中には、着色色素及びネオン光吸収色素を添加し、近赤外線吸収色素は、基材シート200とミクロルーバ層の透明樹脂層300との間に、近赤外線吸収色素を含む塗膜として形成し得る。
或いは、図23では、色素含有粘着剤層600中に全色素が添加され、透明基材シート200と透明樹脂層300とが直接積層されているが、これに代えて、例えば、透明基材シート200の画像表示装置側(図23に於いては下方側)に、樹脂バインダー中に近赤外線吸收色素を含有する塗膜を形成し、該塗膜側と透明樹脂層300の観察者側(図23に於いては上方側)とを色素無添加の無色透明粘着剤層を介して積層せしめ、且つ色素含有粘着剤層600中には、着色色素及びネオン光吸収色素を添加し得る。
或いは、上記例示の各種形態に於いて、更に、基材シート200中に紫外線吸収色素を添加しても良い。
尚、画像表示装置から輻射される電磁波の強度が比較的弱く、周囲の機器に与える影響が無視し得る場合には、電磁波シールド材10、20は省略し、図23(A)の如き構成の光学機能層Foptのみを、色素含有粘着剤層600を介して、画像表示装置の画面上に直接接着したり、或いはフィルタ基板上に、色素含有粘着剤層600を介して、接着した上で、更に画像表示装置の画面前面に装着したりすることも可能である。
〔画像表示装置〕
本発明に係る画像表示装置は、画像表示装置の表示面に、上記電磁波シールド材又は電磁波シールド材を含む光学フィルタを備えてなることを特徴とする。このような画像表示装置においては、上記電磁波シールド材が有する電磁波遮蔽の作用により、画像表示装置本体から発生する電磁波の放出が遮蔽される。
画像表示装置としては、従来公知のディスプレイ、例えば、PDPの他、LCD、CRT、EL表示装置等を挙げることができる。
〔用途〕
本発明の電磁波シールド材の製造方法は、導電パターン層の表面抵抗率を0.8Ω/□以下とすることができるので、導電性組成物を透明基材に印刷して導電パターン層を形成する電磁波シールド材の製造方法に有効に利用できる。
また、本発明の電磁波シールド材は、各種用途に使用可能である。特に、各種のテレビジョン受像装置、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、遊戯機器、電算機器、電話機等の表示部等に用いられるPDP、CRT、LCD、ELなどの画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にPDP用として好適である。又、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジ等の各種家電製品の窓等の電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
また、本発明の電磁波シールド材は、電波吸収体として利用することもできる。かかる電波吸収体の一例を挙げると、本発明の電磁波シールド材の凸状パターン層上に、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン等の樹脂、或いはガラス等の無機材料から成る透明誘電体層、酸化錫、酸化錫インジウム(ITO )、銀等の薄膜から成る透明導電層を、此の順に、積層した積層体である。
本発明の電磁波シールド材の製造方法は、導電パターン層の表面抵抗率を0.8Ω/□以下とすることができるので、導電性組成物を透明基材に印刷して導電パターン層を形成する電磁波シールド材の製造方法に有効に利用できる。
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例、比較例において導電層の電気抵抗の測定は、三菱化学株式会社製 低抵抗率計 Lorest−EP MCP−T360によりJIS K7194「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験法」に記載されている方法にて測定された値である。なお、電気抵抗の測定は、室温雰囲気(気温23℃、相対湿度50%)中で実施した。
実施例1
本実施例は、第2態様の電磁波シールド材の発明に関する実施例である。
〔凹版の準備〕
先ず、凹版ロール62として、線幅が17μmで線ピッチが270μmで正方格子状のメッシュパターンであり、版深12μmであるグラビア版胴を準備した。
〔透明基材の準備〕
次いで、透明基材1として、片面にポリエステル樹脂系の易接着層を塗工して易接着処理がされた幅1000mmで厚さ100μmの長尺ロール巻2軸延伸透明ポリエチレンテレフタレー卜(PET)フィルムを用いた。また、プライマー層の紫外線硬化性樹脂組成物として、エポキシアクリレートプレポリマー12質量部、フェノキシエチルアクリレートからなる単官能モノマー44質量部、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレートからなる3官能モノマー9質量部、さらに光開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名;イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)3質量部添加したものを用意した。供給部にセットしたPETフィルムを繰り出し、斜線版のグラビアリバースロールコート方式で、該紫外線硬化性樹脂組成物を該PETフィルムの易接着処理面に厚み20μmにコーティングし、透明基材を準備した。
〔電磁波シールド材の製造〕
図7に示す装置により電磁波シールド材を製造した。先ず、版パターンが線幅17μm、ピッチ270μm、版深12μmである上記グラビア版ロール62を用い、充填容器68に満たされた導電性組成物15である銀ペーストインキ(略球形状から成り、粒子径分布が0.1〜0.5μmの粒子と粒子径分布が1〜3μmの粒子との混合系で平均粒子径2μmの銀粒子93質量部を熱可塑性のアクリル系バインダー樹脂中4質量部に分散させ固形分約88.5%)をピックアップロール61により版部にコーティングし、余剰インキをドクターブレード65により掻き取った版面63と、プライマー層が形成された透明基材(PETフィルム)のプライマー層側とをニップロール66で圧着し、引続き紫外線照射ゾーン(図示は略すが、図7で「UVゾーン」と示す部位の凹版ロール62の上方に存在)間を走行する間に、プライマー層の紫外線硬化性樹脂を硬化させた後、ニップロール67を介して、版面63から離版させて、PETフィルム上にプライマー層を介して上記版胴表面の版パターンを賦形された導電性組成物15を転写させてメッシュ形状の凸部から成る導電パターン層2’となし、電磁波シールド材(転移フィルム)を製造した。なお、透明基材はエンドレスのロールのものを用い、印刷速度10m/minでロール・トゥ・ロール方式にて印刷した。
次いで、転移フィルムを120℃の乾燥ゾーンに通過させて銀ペーストの溶剤を蒸発させて硬化せしめ、プライマー層上にメッシュパターンからなる導電パターン層2を形成した。このときの導電パターン層の厚さ(該導電パターン層が形成されているメッシュパターン部分とそれ以外の部分との厚さの差)は10μmであり、版の凹部内の銀ペーストが高い転移率(83%)で転移していた。また、断線や形状不良も見られなかった。
得られた電気抵抗低減化処理が未処理の電磁波シールド材からサンプルを切り出し、表面抵抗率を測定したところ、1.5Ω/□であった。又、得られた電磁波シールド材の導電パターン層2の線條部を其の延在方向と直交する断面で切断したものを透過型電子顕微鏡〔集束イオンビーム/走査電子顕微鏡(FIB−SEM)〕で撮影したところ一部の隣接する導電性粒子2a同士が点接触している部分が認められるのみで実施例10におけるSEM写真である図15(A)とほぼ同様であった。
〔電気抵抗低減化処理〕
次いで、電気抵抗低減化処理を以下の方法で行った。
サンプルを1質量%の塩酸を含んだ25℃の塩酸水溶液を満たした酸処理槽に30秒間浸漬することにより酸処理を施し、酸処理槽から取り出して、水温90℃の純水からなる温水槽に30秒間浸漬することにより温水処理を施し、しかる後、水分を飛ばす程度に乾燥させて、電磁波シールド材のサンプルを得た。この電磁波シールド材の表面抵抗率は、0.5Ω/□であり、約67%の表面抵抗率の低下が確認された。なお、酸処理後の電磁波シールド材の表面抵抗率は、0.8Ω/□であった。
得られた電磁波シールド材の導電パターン層2の線條部を其の延在方向と直交する断面で切断したものを透過型電子顕微鏡で撮影したところ図19の如く、一部の隣接する導電性粒子2a同士の中には、面(断面写真上では線)で接触しているものが多数存在することがわかる。これらは、導電性粒子2a同士が互いに融合していると判断される。そして、該導電パターン層2の左右の斜面表面の間が、斯かる融合した導電性粒子2aの連なり(クラスター乃至団塊)によって連通していることがわかる。
実験例1
電気抵抗低減化処理における酸濃度の影響を確認するため、実施例1で得られた未処理の電磁波シールド材のサンプルについて、塩酸水溶液の濃度を0.5質量%〜15質量%迄変化させた他は実施例1と同様に40℃の塩酸水溶液からなる酸処理槽に30秒間浸漬し、これを引上げて、20℃の水ですすぎ、水分を乾燥させた。得られたサンプルの表面抵抗率は、塩酸濃度の影響はなく、いずれも約0.8Ω/□であった。この実験例の結果を図12に示す。
実施例2〜6
実施例1において、酸処理後の温水処理温度を22℃(実施例2)、40℃(実施例3)、50℃(実施例4)、70℃(実施例5)、90℃(実施例6)として、各30秒間浸漬した他は実施例1と同様にして、電気抵抗低減化処理を行った。温水温度と表面抵抗率(値)の関係(実施例2〜6)を図13に示す。
温水温度の上昇に伴って、表面抵抗率が著しく低下することが確認された。なお、実施例6は水温90℃で実施例1と同一条件であるが、再現性を見ることも兼ねて、シリーズとして行ったものであり、表面抵抗率は、0.56Ω/□と実施例1より上昇しているが、実験誤差の範囲内と判断される。
実施例7
実施例1において、酸処理後、90℃の温水への浸漬処理に代えて、90℃の温水を30秒間スプレー(流量4L/分、圧力0.2MPa)する方法で温水処理を行った。得られた電磁波シールド材の表面抵抗率は0.65Ω/□で、62%の低下率であり、実施例1の浸漬による温水処理と比較して、電気抵抗低減効果が低かった。
実施例8
〔電磁波シールド材の製造〕
実施例1において、銀ペーストインキの印刷による導電パターン層の形成を、図5の凹版印刷による装置を用いる方法に代えて、シルクスクリーン印刷法を用いた以外は実施例1と同様にして電磁波シールド材のサンプルを得た。すなわち、実施例1と同じ銀ペーストインキを実施例1と同じ透明基材の易接着処理面上に印刷し、次いで120℃の乾燥ゾーンに通過させて銀ペーストの溶剤を蒸発させて硬化した。このときの導電パターン層の厚さは実施例1の厚さに合わせて10μmを目標とした。尚、導電パターン層2の断線や形状不良は見られなかった。
得られた電磁波シールド材は、電気抵抗低減化処理前の導電パターン層の断面SEM写真が図20(A)、(B)、電気抵抗低減化処理後の断面SEM写真が図21(A)、(B)の如き形態をなすものであり、電気抵抗低減化処理後の導電性粒子は、実施例1の断面SEM写真図19と同様に、一部が融合した連なりを有していた。
その電磁波シールド材の表面抵抗率は、電気抵抗低減化処理前に於いて1.7Ω/□、そして、電気抵抗低減化処理後に於いて0.6Ω/□であった。
なお、凸状パターンの線幅は、約100μm、厚みは約5.5μmとなったが、これは、実施例1の如くプライマー層がないため、透明基材の易接着処理層のみでは、銀ペーストとの接着が不十分等で、銀ペーストがその粘度等による安息角に対応する形状を呈したためと考えられる。
比較例1
実施例1において、酸処理後に水洗した後、サンプルの四辺を固定した状態において、120℃で10分間の乾熱温風乾燥処理を行った。得られた電磁波シールド材の表面抵抗率は、0.6Ω/□であった。サンプルの縁辺には若干の皺が認められた。この点から、乾熱温風乾燥処理による場合は、ロール・トゥ・ロールでの連続生産時には張力制御を厳密に行う必要があることが認識された。さらに、長い処理時間を要するため、生産速度を低速にするか、乾燥処理装置を長くして、処理時間を満足しなければならないことが知得された。
比較例2
比較例1において、120℃で10分間の乾熱温風乾燥処理に変えて、150℃で10分間の乾熱温風乾燥処理を行った。得られた電磁波シールド材の表面抵抗率は、0.5Ω/□で、実施例1の90℃での温水浸漬処理と同じ値が得られたが、電磁波シールド材はうねり状態となっていて、製品とはならない状態であった。
実施例9
〔凹版の準備〕
先ず、凹版ロール62として、線幅が18μmで線ピッチが270μmで正方格子状のメッシュパターンであり、版深10μmであるグラビア版胴を準備した。
〔透明基材の準備〕
次いで、透明基材1として、実施例1と同じ片面に易接着処理がされた幅1000mmで厚さ100μmの長尺ロール巻2軸延伸透明ポリエチレンテレフタレー卜(PET)フィルムを用いた。また、エポキシアクリレートプレポリマー12質量部、フェノキシエチルアクリレートからなる単官能モノマー44質量部、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレートからなるからなる3官能モノマー9質量部からなるウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂組成物に、光開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名;イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)3質量部添加し、さらに離型剤としてステアリン酸エステル1質量%添加したものを用意した。供給部にセットしたPETフィルムを繰り出し、斜線版のグラビアリバース方式で、該紫外線硬化性樹脂組成物を該PETフィルムの易接着処理面に厚み14μmにコーティングし、透明基材を準備した。
〔電磁波シールド材の製造〕
図7(A)に示す装置により電磁波シールド材を製造した。先ず、版パターンが線幅18μm、ピッチ270μm、版深10μmである上記グラビア版ロール62を用い、充填容器68に満たされた導電性材料15である銀ペーストインキ(略球形状から成り、粒子径0.1〜0.5μmの粒子と粒子径1〜3μmの粒子との混合系で平均粒子径1μmの銀粒子93質量部をアクリル系バインダー樹脂中4質量部に分散)をピックアップロール61により版部にコーティングし、余剰インキをドクターブレード65により掻き取った版面63と、プライマー層が形成された透明基材(PETフィルム)のプライマー層側をニップロール66で圧着し、引続き紫外線照射ゾーン間を走行する間に、プライマー層の紫外線硬化樹脂を硬化させた後、ニップロール67を介して、版面63から離版させて、PETフィルム上にプライマー層を介して上記版胴表面の版パターンを転写させてメッシュ形状の凸状パターン層2となし、電磁波シールド材を製造した。なお、透明基材はエンドレスのロールのものを用い、印刷速度10m/minでロール・トゥ・ロール方式にて印刷した。
次いで、印刷後、該電磁波シールド材を、気温80℃、相対湿度90%の雰囲気中で48時間放置して、電気抵抗低減化処理工程を行った後、室温雰囲気(気温23℃、相対湿度50%)中に取り出した。
なお、プライマー層の紫外線硬化型樹脂に離型剤を添加することにより、プライマー層(紫外線硬化樹脂)の凹版印刷版胴からの離型性が向上し、且つ、凹版からの導電性材料の転移量も向上し、版胴からの剥離張力が低下し、正常点Pで安定した離版ができたため、未硬化状の導電性材料の飛散りは軽減し、目視で判別不能な程度であった。また、紫外線硬化後の、進行方向とは垂直方向の縞状ムラは見えなかった。
また、転移した該凸状パターンには断線等の転移欠点も認められなかった。印刷された該凸状パターンの厚み(メッシュ非形成部のプライマー層を基準にして測定)は9μmであり、版深と印刷厚みの比で計算した転移率は、(メッシュパターン厚み9μm/版深10μm)×100=90%であったが、実際には銀ペーストインキの溶剤乾燥による体積収縮があるため、ほぼ100%に近い転移がなされていると推定される。
更に、該プライマー層3と該凸状パターン層2との界面の形態は、図9(A)の如く非直線状に交互に入り組んだ構造を有していた。かかる入り組み構造を電子顕微鏡で拡大撮影して観察した結果、凸状パターン層中の導電性粒子(銀粒子)がプライマー層3との界面において上下に不規則に乱雑分布して該界面を構成することが認められた。該導電性粒子の分布は、該凸状パターン層の頂部に行くほど密になり、逆にプライマー層側に行くほど粗になる様な粗密で分布していることが認められた。
更に又、図9(B)の如く界面近傍に、両層の成分が混合した混合領域も認められた。
次いで、得られた電磁波シールド材の該凸状パターン層の表面(電気)抵抗を測定した。
測定は、室温雰囲気(気温23℃、相対湿度50%)中で実施した。表面抵抗率は0.45Ω/□であった。
比較例3
実施例9において、電気抵抗低減化処理工程を行わなかった以外は、実施例9と同様にして、比較例3の電磁波シールド材を得た。
得られた電磁波シールド材について、表面抵抗率を上記同様の条件、方法にて測定したところ、1.0Ω/□であった。
参考例1
実施例9において、プライマー層の紫外線硬化型樹脂に、離型剤を添加しない透明基材を用いた他は上記実施例9と同様にして電磁波シールド材を製造した。
紫外線硬化型樹脂に離型剤を添加していないため、紫外線硬化後の凹版印刷版胴からの離型性が劣り、且つ、凹版からの導電性ペーストの転移性も悪く、離版点は図7(B)に示すようにP〜P'まで平均2cm変動し、剥離張力も高いので、振動的離版となって、未硬化の導電性ペーストの飛散りが多く、剥離時の縞状ムラが頻繁に発生するといった欠陥が多発し、製品歩留りが低下する結果であった。
実施例10
〔凹版の準備〕
先ず、凹版ロール62として線幅が17μmで線ピッチが270μm、版深12μmの格子状のメッシュパターンとなる凹部が形成された実施例1と同一のグラビア版胴を準備した。
〔透明基材の準備〕
透明基材1として実施例1と同一の片面に易接着処理がされた幅1000mmで厚さ100μmの長尺ロール巻ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。供給部にセットしたPETフィルムを繰り出し、易接着処理面にプライマー層用の光硬化性樹脂組成物を硬化後に厚さ5μmとなるように塗布形成した。塗布方式は、通常のグラビアリバース法を採用し、光硬化性樹脂組成物としては、エポキシアクリレート35質量部、ウレタンアクリレート12質量部、単官能モノマー44質量部、3官能モノマー9質量部、離型剤としてステアリン酸エステル1質量部、さらに光開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)3質量部添加したものを使用した。このときの粘度は約1300cps(at25℃、B型粘度計)であり、塗布後のプライマー層は触ると流動性を示すものの、PETフィルム上から流れ落ちることはなく、プライマー層の塗布厚みが約20μmであるものを、プライマー層が形成された透明基材として準備した。
〔電磁波シールド材の製造〕
実施例1と同様に図7(A)に示す装置により電磁波シールド材を製造した。先ず版パターンが、線幅が17μmで線ピッチが270μm、版深12μmである上記グラビア版ロール62を用い、充填容器68に満たされた導電性材料15である銀ペーストインキ(導電性粉末として平均粒径約1μmの銀粉末94質量部、バインダー樹脂として熱可塑性のアクリル系樹脂6質量部からなり、固形分約88.5%の導電性組成物)をピックアップロール61により版部にコーティングし、余剰インキをドクターブレード65により掻き取った版面63と、プライマー層が形成された透明基材(PETフィルム)のプライマー層側をニップロール66で圧着し、凹版ロールに対するニップロールの押圧力によって、導電性組成物とプライマー層とを隙間なく密着させた。
次いで行われる転移工程は以下の通りである。先ず、プライマー層が形成されたPETフィルムを、そのプライマー層が凹版ロールの版面側に対向した状態で、凹版ロールとニップロールとの間に挟む。その凹版ロールとニップロールとの間でPETフィルムのプライマー層は版面に押し付けられる。プライマー層は流動性を有しているので、版面に押し付けられたプライマー層は、導電性組成物が充填した凹部内にも流入し、プライマー層は導電性組成物に対して隙間なく密着した状態となる。その後、さらに凹版ロールが回転して図外のUVランプによって紫外線が照射され、光硬化性樹脂組成物からなるプライマー層が硬化する。プライマー層の硬化により、凹版ロールの凹部内の導電性組成物はプライマー層と密着し、その後、出口側のニップロール67によってフィルムが凹版ロール62から剥離され、プライマー層上には導電性組成物層が転移形成される。
このようにして得られた転移フィルムを、110℃の乾燥ゾーンを通過させて銀ペーストの溶剤を蒸発させ、プライマー層上にメッシュパターンからなる導電層を形成した。このときの導電層の厚さ(導電層が形成されているメッシュパターン部分とそれ以外の部分との厚さの差)は約10μmであり、線幅は17μmで、版の凹部内の銀ペーストの転移率は、(メッシュパターン厚み10μm/版深12μm)×100=83.3%であった。また、断線や形状不良も見られなかった。
〔電気抵抗低減化処理〕
得られたメッシュパターンを80℃で90%RHの湿熱環境に48時間静置したところ、未処理時の表面抵抗1Ω/□が0.5Ω/□に低減し、以後、表面抵抗率は0.5Ω/□に保持された。
また、集束イオンビーム/走査電子顕微鏡(FIB−SEM)により湿熱処理後のメッシュパターンの断面観察を行ったところ、図15(A)に示すように湿熱環境静置前には銀粒子はほぼ独立粒子状であったが、湿熱環境静置後には、同図(B)に示すように複数個の粒子が融合して連なったものが観察された。融合した経路の長さは、図16の折れ線部の総和が14.1μmであり、線幅と略同一であった。
実施例11
実施例10において、得られた未処理のメッシュパターンを希塩酸〔0.12mol/L=0.44質量%〕で1分間処理し、水洗・乾燥したところ、表面抵抗率が0.3Ω/□に低減した。
図18は、希塩酸処理後のSEM観察による断面写真であるが、実施例10の湿熱環境静置処理の場合とは、若干異なる粒子の融合状態が観察され、複数個の粒子が融合して連なった経路の長さは、10.6μmであり、線幅約14.1μmの1/2以上の長さを有していた。
実施例12
実施例10において、得られた未処理のメッシュパターンを80℃の温水に6分間の浸漬処理による温水処理をし、水洗・乾燥したところ、表面抵抗率が0.5Ω/□に低減した。
実施例13
実施例11において得られたメッシュパターン面に、下記のようにハードコート層を形成した。
〔メッシュ上へのハードコート層の形成〕
イソホロンジイソシアネート(IPDI)とペンタエリスリトール多官能アクリレートからなるウレタンアクリレートプレポリマー 80質量部とペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 20質量部を混合した組成物に、光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」]3質量部、MIBK200質量部を混合し均一化した電離放射線硬化性樹脂から成るコーティング剤を、ダイコーターによりメッシュ上に直接間欠塗布し、80℃で乾燥した。その後、高圧水銀燈により照射線量200mJ/cm2で紫外線照射を行うことにより硬化させてハードコート層を形成した。得られたハードコート層の厚みはメッシュ層込みで20μm、硬さはJIS K5600−5−4(1999)規定の鉛筆硬度でHであり、外観および密着も良好であった。
比較例4
実施例10において、得られた未処理のメッシュパターンを80℃の乾燥オーブン内に48時間静置したところ、表面抵抗率は1Ω/□のままであり、変化は観察されなかった。
比較例5
実施例10において、銀ペーストインキ(導電性粉末として粒子径分布が1〜5μmで平均粒径が3μmの銀粉末93質量部と、バインダー樹脂として熱可塑性のアクリル系樹脂7質量部からなり、固形分約88.5%の導電性組成物)を用いてメッシュパターンを作成したところ、離版硬化後(印刷上がり)の表面抵抗は5Ω/□であり、実施例10と同一の湿熱環境静置処理により表面抵抗率は約2.5Ω/□に低下したものの、0.8Ω/□には到達しなかった。
本発明の電磁波シールド材は、解像度のよい細線印刷による、電磁波シールドに十分な抵抗値(0.8Ω/□以下)を有しているので前記の如く各種の電磁波遮蔽乃至は電波の吸収の用途に使用可能である。また、その他、各種の透明アンテナ、並びに透明性と導電性との両特性を要求される様な電気回路、電極、タッチパネル等にも使用可能である。
本発明の電磁波シールド材の製造方法は、導電性ペーストを印刷する工程を経由する電磁波シールド部材の製造において、本印刷方法を用いることにより、効率的に精度良く基材上への印刷をすることができ、低抵抗で品質の良い電磁波シールドを低コストで製造する方法として利用することができる。
また、本発明の電磁波シールド材の製造方法は、導電層の電気抵抗低減化処理が、酸処理と温水処理によるものなので、透明樹脂基材がダメージを受けることがなく、特に、シート(乃至フィルム)状の透明樹脂基材をロール・トゥ・ロールで使用でき、低コストの電磁波シールド材を得ることができる製造方法として有効に利用できる。
さらに、処理設備としても、酸処理槽と温水処理槽のような簡易な設備で処理可能であり、複雑な透明樹脂基材の冷却設備等を要しないので、設備コスト抑制でき、かつ、比較的高速度で処理ができるので、電磁波シールド材の処理コストを低減することができる製造方法として有効に利用できる。
さらにまた、導電性ペーストの選択により、表面に金属めっきをすることなく、0.8Ω/□以下の表面抵抗率を有する電磁波シールド材を得ることができ、めっき工程の削減により、環境負荷を削減でき、生産性の向上と低コスト化を図ることができる電磁波シールド材の製造方法として利用できる。
本発明の画像表示装置は、画像表示装置本体からの電磁波の放出が遮蔽される画像表示装置として利用できる。
1、106 透明基材
2 導電パターン層(2’、103導電性組成物層)
3 プライマー層
4 金属層
5 サイドエッジ
6、105 凹み
7 電磁波シールドパターン部
8 接地部
9 保護層
10、20 電磁波シールド材
15、103 導電性組成物
51 グラビアロール
52 バックアップロール
53 樹脂組成物充填容器
54、102 ドクターブレード
61 ピックアップロール
62 凹版ロール
63 版面
64、104 凹部
65 ドクターブレード
66 ニップロール
67 ニップロール
68 充填容器
101 凹版
100 反射防止層
200 透明基材シート
300 ミクロルーバ層の透明樹脂層
400 ミクロルーバ層の吸光性楔形部
500 遮断(バリア)層
600 色素含有粘着剤層
A 導電性材料層が形成されている部分
TA Aの厚さ
B 導電性材料層が形成されていない部分
TB Bの厚さ
Fcom 複合フィルタ
Fopt 光学機能層
S1 透明基材1の一方の面

Claims (3)

  1. 透明基材の一方の面に所定のパターンで導電層が形成されてなる電磁波シールド材の製造方法であって、
    透明基材の一方の面に導電性粒子とバインダー樹脂を含んでなる導電性組成物により所定の導電パターン層を形成する工程、
    形成された前記導電パターン層のバインダー樹脂を硬化させて導電層を形成する硬化工程、
    硬化させた前記導電層を酸処理する工程、及び
    酸処理した前記導電層を温水処理する工程、の順次の工程を含み、
    前記導電層の横断面の電子顕微鏡写真による観察において、該導電性粒子の少なくとも一部が融合した連なりを有してなる導電層を形成した、
    ことを特徴とする電磁波シールド材の製造方法。
  2. 前記酸処理が、該導電層を酸の溶液への浸漬及び/又は該導電層に酸の溶液を塗布することによる処理である請求項1に記載の電磁波シールド材の製造方法。
  3. 前記温水処理が、該導電層を水温30〜100℃の温水に浸漬することによる処理である請求項1に記載の電磁波シールド材の製造方法。
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