JP5593848B2 - 透明導電材 - Google Patents
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Description
なお、本願明細書中において、「電磁波」とは広義の電磁波の中で、周波数30MHz〜1GHz帯域を中心とするkHz〜GHz帯域のもの(所謂電波)を意味する。より高周波数の赤外線、可視光線、紫外線等は、各々、赤外線、可視光線、紫外線等と呼称する。
このような問題の対策として、例えば、特許文献2のように、銀粒子含有導電インキに黒鉛を混合して外光を吸収することが考えられるが、導電性の低い黒鉛を混合するために導電性(電磁波遮蔽性)が低下することとなる。また、特許文献1には、導電性パターン層を黒化ニッケルめっき、銅−コバルト合金めっき等の黒化層で被覆することが開示されている。しかし、導電性(電磁波遮蔽性)と黒化度が両立し難いという課題、及びニッケル、コバルト等といった金属材料が更に必要となり、コストの増加、廃液中の重金属回収処理の手数の増加という課題がある。
すなわち、本発明は、
(1)透明基材と、該透明基材上に所定のパターンで形成された導電性パターン層を有する透明導電材であって、該導電性パターン層は金属粒子とバインダー樹脂を含み、該導電性パターン層の表面において金属粒子の一部分がバインダー樹脂から露出しており、該金属粒子露出部分がその表面に溝状凹部及び微小突起を有することを特徴とする透明導電材、
(2)(1)に記載の透明導電材において、前記透明基材と前記導電性パターン層の間にプライマー層を設けた透明導電材、
(3)(2)に記載の透明導電材において、前記導電性パターン層中の金属粒子の分布は、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電性パターン層の頂部近傍において密である透明導電材、
(4)(2)に記載の透明導電材において、前記導電性パターン層中の金属粒子の分布は、隣接する該金属粒子同士の間隔が、相対的に、該プライマー層近傍において大であり、又該導電性パターン層の頂部近傍において小である透明導電材。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の透明導電材を前面フィルタに用いてなることを特徴とするプラズマディスプレイパネル、
を提供するものである。
また、黒化層形成に際して、更なる金属めっき処理も不要の為、コストの増加、廃液中の重金属回収処理の手数の増加も最小限に抑制できる。
本発明の透明導電材30は、透明基材10と、透明基材10上にメッシュ形状に代表される所定のパターンで形成された、金属粒子1とバインダー樹脂2を含む導電性パターン層20とを有する。そして、導電性パターン層20の表面において、金属粒子1の一部分がバインダー樹脂2から露出し、該金属粒子露出部分は、その表面に溝状凹部1a及び微小突起1bを有することを特徴とする。この金属粒子露出部分の表面構造により、導電性パターン層表面が暗色を呈する。
なお、図1(A)、(B)及び図3は説明の便宜上、縦横の縮尺の比率は、適宜、実物よりも増減してある。また、導電性パターン層20内の導電性粒子の大きさ、分布状態等も誇張して図示している。
以下、本発明の透明導電材の構成を説明する。
透明基材10は、可視光線領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよく、特に制限はないが、生産性に優れるロール・トゥ・ロールでの連続加工適性を考慮すると、フレキシブルな樹脂フィルム(乃至シート)が好ましい。なお、ロール・トゥ・ロールとは、巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工を施し、その後、巻取に巻き取って搬送ないしは保管する加工方式をいう。
なお、透明導電材に可撓性を要求しない場合は、透明基材10として、硝子、石英等の透明な無機材料の板を使用することもできる。
また、透明基材上に後述するプライマー層を設ける場合には、プライマー層との密着性を確保するために、透明基材表面に別途密着性改善のための表面処理や、易接着層、下地層などが設けられていてもよい。
本発明の透明導電材における導電性パターン層20は、金属粒子及びバインダー樹脂を含み、透明基材上又は該透明基材上にプライマー層を形成する場合には該プライマー層上に所定のパターンで設けられた層である。
パターン形状としてはメッシュ(網目乃至格子)形状が代表的なものであるが、その他、ストライプ(平行線群乃至縞模様)形状、螺旋形状等も用いられる。メッシュ形状の場合、単位格子形状は、正3角形、不等辺3角形等の3角形、正方形、長方形、台形、菱形等の4角形、6角形、8角形等の多角形、円、楕円等が用いられる。また、モアレを軽減する目的で、ランダム網目状、又は擬似ランダム網目状のパターンなども使用可能である。その線幅と線間ピッチも通常採用されている寸法であればよい。例えば、線幅は5〜50μmとすることができ、線間ピッチは100〜500μmとすることができる。開口率(所定パターンの全面積中における開口部の合計面積の占める比率)は、通常、50〜95%程度である。また所定パターンとは別に、その周辺部の全周又はその一部にそれと導通を保ちつつ隣接した全ベタ等の接地パターンが設けられる場合もある。
なお、線幅は、より高透明のものを得るために、より一層微細化することが求められている。この観点から、30μm以下、特に20μm以下とすることが好ましい。
この導電性パターン層20は、金属粒子とバインダー樹脂を含む導電性組成物(導電性インキ或いは導電性ペースト)を、後述する印刷法により基材上又は透明プライマー層上に形成することで得ることができる。
金属粒子の形状は、正多面体状、截頭多面体状等の各種の多面体状、球状、回転楕円体状、鱗片状、円盤状、樹枝状、繊維状等から選ぶことができるが、本発明で使用する金属粒子は、表面に複数の溝状凹部を有するものであることを要する。
金属粒子の大きさは種類に応じて任意に選択されるので一概に特定できないが、好ましくは、平均粒子径が0.01〜10μm程度のものを用いることができる。得られる導電性パターン層の電気抵抗を低く(好ましくは、表面抵抗率が0.8Ω/□以下)して良好な導電性を得るためには、平均粒子径は小さい方が好ましく、この観点からは平均粒子径0.1〜1μmが好ましい。また、粒子径の分布については、得られる導電性パターンの電気抵抗を低くするためには、分布幅が狭く単一粒子径に近いよりも、相対的に大粒子径の粒子と相対的に小粒子径の粒子との混合系からなる方がよい。
導電性組成物中の金属粒子の含有量は、金属粒子の導電性や粒子の形態に応じて任意に選択されるが、好適な導電性の発現、導電性パターン層の機械的強度の維持、及び印刷適性を兼ね備える為には、例えば導電性組成物の固形分100質量部のうち、金属粒子を40〜99質量部、より好ましくは90〜97質量部の範囲で含有させることができる。なお、本明細書において、平均粒子径というときは、粒度分布計、またはTEM(透過型電子顕微鏡)観察で測定した値を指している。
なお、観察により粒子径を測定する場合、粒子形状が球の場合は、その直径が粒子径である。また、粒子形状が非球形状の場合は、該粒子の外接球の直径をもって粒子径とする。
かかる分布であるため、導電性パターン層の頂部近傍では、金属粒子は、緻密に集合し、各粒子間の電気的接触も良好になり、電気抵抗が下がり、導電性(更には、電磁波シールド効果等所望の効果)も高まる。
なお、導電性パターン層20が特に、メッシュ、ストライプ等の線條パターンから成る場合は、導電性パターン層20中における金属粒子1の分布状態は線條パターンの延在方向には依存性を持たない(延在方向には単位体積中の粒子数密度は一定)。そのため、かかる線條パターンを含む導電性パターン層20の場合には、単位体積中の金属粒子1の数密度の粗密は、該線條パターンの主切断面(延在方向に直交する断面)における単位面積中の金属粒子1の数密度(面密度)の粗密で評価できる。即ち図3の如く、主切断面内において、金属粒子1の数の面密度がプライマー層近傍に比べて頂部近傍の方が大きくなる分布であれば、すなわち、金属粒子1の数の体積密度もプライマー層近くに比べて頂部近くの方が大きくなる分布であると判断してよい。
金属粒子1の面密度の測定は、導電性パターン層20の主切断面の顕微鏡(拡大)写真を撮り、該写真上において、プライマー層40近傍から頂部近傍迄の間の特定の位置(点)を中心とした適当な測定面積内の金属粒子数を計数し、該測定面積で割り算することにより、該特定の位置における金属粒子数の面密度とする。
また、同様に、導電性パターン層20中における隣接する金属粒子1同士の間隔も、線條パターンの延在方向には依存性を持たない。その為、かかる線條パターンを含む導電性パターン層20の場合には、該線條パターンの主切断面における単位面積中の粒子間隔で評価できる。即ち図3の如く、主切断面内において、隣接する金属粒子1同士の間隔がプライマー層40近傍に比べて頂部近傍の方が小になる分布であれば、即ち、延在方向も含めた3次元空間内における隣接する粒子間の距離の分布についても、同様に、プライマー層40近くに比べて頂部近くの方が小になる分布であると判断してよい。
隣接する金属粒子1の間の間隔(距離)の測定は、導電性パターン層20の主切断面の顕微鏡(拡大)写真を撮り、該写真上において、プライマー層近傍から頂部近傍迄の間の特定の点に位置する金属粒子1について、該金属粒子からの距離が近い順に3乃至10個の他の金属粒子との間隔を測定し、これを平均した値をもって、該位置に存在する特定粒子についての、隣接する金属粒子間の間隔とする。
その他、これら金属粒子1の密度分布や配向状態は、導電性組成物のバインダー樹脂2の種類、金属粒子の材料と粒子径と粒子形状、バインダー樹脂と金属粒子との配合比、金属粒子とバインダー樹脂との比重差、及び該導電性組成物の塗工条件や固化条件等に依存する。現実には、これら金属粒子の密度分布や配向状態に影響する各種条件から実験的に、求める金属粒子の密度分布及び配向に合致する条件を決定することになる。金属粒子1とバインダー樹脂2との比重差については、一般には、金属粒子として通常の金属を用い、バインダー樹脂として有機高分子化合物を用いる場合には、「金属粒子の比重>バインダー樹脂の比重」となるため、比重差のみを利用して金属粒子の数密度を前記の如くの分布にする場合は、頂部が重力の向きと同じ向き(下向き)にして導電性パターン層20を流動状態から固化せしめることが有効である。
熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。紫外線(乃至可視光線)硬化型の電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は必要に応じて光重合開始剤を添加してもよい。
また、版の凹部への充填に適した流動性を得るために、これら樹脂は通常、溶剤に溶けたワニスとして使用する。導電性ペーストとして用いる溶剤の種類には特に制限はなく、一般的に印刷インキに用いられる溶剤の中から適宜選択して使用できるが、プライマー層を設ける場合には該プライマー層の安定硬化を阻害したり、硬化後のプライマー層を膨潤、白化、溶解させたりしないものが好ましい。溶剤の含有量は通常、10〜70質量%程度であるが、必要な流動性が得られる範囲でなるべく少ない方が好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、もともと流動性があるため、必ずしも溶剤を必要としない。
本発明における導電性パターン層20は、図1に模式的に示すように、表面において、金属粒子1の一部分がバインダー樹脂2から露出し、該金属粒子露出部分は、その表面に溝状凹部1a及び微小突起1bを有することを特徴とする。
該金属粒子露出部分における金属粒子1の露出割合は、該金属粒子表面の十分な暗色化及び該金属粒子の導電性パターン層20からの脱落防止との兼ね合いから、該金属粒子の全体積の10〜50%、好ましくは20〜60%の範囲とする。
また、かかる溝状凹部の形態は、好ましくは、該金属粒子露出部表面に溪谷状に走行する形態、分岐した形態、或いは溪谷上に走行し且つ分岐した形態を呈する。この金属粒子露出部分の表面構造により、導電性パターン層表面の鏡面反射性が低下して該表面が暗色を呈している。
金属粒子1の金属粒子径dmは0.1〜10μmであり、微小突起径dpは該金属粒子径よりも小さく、0.01〜0.1μmであって、1/1000≦dp/dm≧1/10の関係を有する。なお、粒子径dm、dpは、粒子が非球の場合、外接球の直径と定義する。
微小突起1bは、金属粒子1と独立した微粒子の付着、或いは金属粒子自体の突起のいずれであってもよい。また、微小突起1bは、金属粒子1と同材料、異材料のいずれであってもよい。また、微小突起1bの形状は、例えば、球、回転楕円体、多角形、或いは針状形状、乃至その一部分(半球等)である。
微小突起1bの突起数は、10〜1000個/1金属粒子露出部分であり、好ましくは、100〜1000個/1金属粒子露出部分である。
このような導電性パターン層20の表面が呈する暗色としては、金属粒子1の露出部分の溝状凹部1aの及び微小突起1bの構造如何(溝状凹部の平面視形状、溝幅、溝深さ、溝の横断面形状、溝の本数、分岐状態、及び微小突起の大きさ、形状、個数の面密度等)によって、更には後述の金属暗色化方法の処理条件如何によって各種の明度、彩度、及び色相を呈することが可能であるが、金属粒子表面の反射率、特に鏡面反射率を低減化させる為、低明度の無彩色又は有彩色、即ち暗色となる。暗色としては具体的には、黒色が代表的であるが、その他、(濃い)灰色、褐色、紺色、深緑色、臙脂色、濃紫色等が可能である。
すなわち、透明基材の一面側に、金属粒子及びバインダー樹脂を含み、表面において金属粒子の一部分がバインダー樹脂から露出している導電性パターン層が形成された導電部材を、例えば、後述する、テルルが溶解された塩酸水溶液、或いはBayer社から商品名NIGROSIN WLF(登録商標)で市販されているC.I. Acid Black2(C.I.No.50420)が溶解された塩酸水溶液などの金属暗色化処理液に浸漬することにより、金属粒子露出部分の上記の表面構造が形成され、水洗、乾燥を経て、導電性パターン層表面が暗色化された本発明の透明導電材を得ることができる。特に、上記の処理方法は、金属粒子1が銀粒子の場合に好適である。
金属粒子として銀粒子を用いた導電部材をテルル塩酸水溶液法で処理したものは、該微小突起には、TeCl2、Te、TeCl4、AgCl、TeO2、AgO、Ag2Oのうち少なくとも1種が含まれている可能性があるが、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX:Energy Dispersive X−ray Fluorescence Spectrometer)を用いて分析を行ったところでは、Cl元素とAg元素が確認された。
したがって、この分析結果及び暗色層の色調からは、該暗色層には、特に、AgCl、AgClが光と反応して生成した反応物(Ag(銀)と考えられる)、又はAg2Oが含まれていると推測される。
また、C.I. Acid Black2塩酸水溶液処理に関して次のようなことがいえる。
バインダー樹脂のみの塗膜をC.I. Acid Black2塩酸水溶液に浸漬しても樹脂は着色(染色)せず、金属粒子として銀粒子を用いた導電部材を塩酸のみ或いはC.I. Acid Black2のみの水溶液に浸漬しても導電性パターン層は着色(染色)せず、C.I. Acid Black2塩酸水溶液への浸漬ではじめて導電性パターン層表面の着色、暗色化がみられる。この場合も、導電性パターン層表面近傍からはC.I. Acid Black2は検出されず、微小突起1bが如何なる物質・材料からなるかは不明であるが、元素分析等の分析結果からは、AgCl又はそれが光等で還元されたAgと推測される。
本発明の透明導電材においては、透明基材10と導電性パターン層20との密着性を高めるために、該透明基材と該導電性パターン層との間にプライマー層40を設けることが好ましい。
該プライマー層40は、透明基材及び導電性パターン層の双方に密着性が良く、また開口部(導電性パターン層非形成部)の光透過性確保のために透明な層である。
更に、導電性パターン層の形成を後述の如き特定の凹版印刷法で行なう場合には、該プライマー層は、流動性を保持できる状態で透明基材上に設けられ、凹版印刷時の凹版に接触している間に液状から固化させる層として形成される層となり、最終的な導電部材が形成されたときに固化している層である。
該電離放射線重合性化合物としては、電離放射線で架橋等の反応により重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーが用いられる。
かかるモノマーとしては、ラジカル重合性モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、ここで(メタ)アクリレートとの表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。カチオン重合性モノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。
また、かかるプレポリマー(乃至オリゴマー)としては、ラジカル重合性プレポリマーとして、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオール系プレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー等が挙げられる。その他、カチオン重合性プレポリマーとして、例えば、ノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等が挙げられる。
これらモノマー、或いはプレポリマーは、要求される性能、塗布適性等に応じて、1種類単独で用いる他、モノマーを2種類以上混合したり、プレポリマーを2種類以上混合したり、或いはモノマー1種類以上とプレポリマー1種類以上とを混合して用いたりすることができる。
なお、電離放射線としては、紫外線、又は電子線が代表的なものであるが、この他、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いはα線、各種イオン線等の荷電粒子線を用いることもできる。
本発明に係る透明導電材の製造方法は、
(a)透明基材の一面側に、金属粒子及びバインダー樹脂を含み、表面において金属粒子の一部分がバインダー樹脂から露出している導電性パターン層が形成された導電部材を準備する工程、及び
(b)前記導電部材を、金属暗色化処理液に浸漬することにより、金属粒子露出部分に前記の表面構造が形成されて、導電性パターン層表面を暗色化する工程を含むことを特徴とする。
(導電部材を準備する工程)
本工程では、透明基材の一方の面に金属粒子及びバインダー樹脂を含む導電性組成物(導電性ペースト)を用いて導電性パターン層を形成する。
なお、本発明の透明導電材において、導電性パターン層表面の暗色化は、既述のように、表面に複数の溝状凹部を有する金属粒子を後述の暗色化処理を行うことでなされるものであるため、金属粒子としてはそのような表面構造のものを選択し使用することを要する。
該導電性パターン層の有する所定パターンは、例えば、シルクスクリ−ン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の公知の各種印刷法によって形成することができる。
また、透明基材と導電性パターン層との密着性を高めるために、該透明基材と該導電性パターン層との間にプライマー層を設ける場合には、上記導電部材の製造方法としては、特許文献1に記載される特定のプライマーを用いた凹版印刷が推奨される。さらに、本発明において、導電性パターン層表面を暗色化するためには、導電性パターン層の表面において、金属粒子の一部分がバインダー樹脂から露出している必要があるが、特許文献1に記載される凹版印刷がこのような導電部材を得やすいので好ましい。
以下、この凹版印刷法の概略を述べる。
このように、導電性組成物が未硬化或いは半硬化の状態で版から引き抜いて、離版後に(完全)硬化させると、バインダー樹脂が収縮して、金属粒子の一部分がバインダー樹脂から露出する形態となりやすく、導電性パターン層表面の暗色化処理に好適である。
一方、特許文献1の凹版印刷では、凹版凹部内に充填された導電性組成物の上部に窪み(凹み)が生じても、液状で流動性のプライマー層を介して印刷するので、印刷中にプライマー層を該窪みに流し込み隙間なく密着させた状態にでき、その後、プライマー層を固化させてから透明基材を凹版から離すので、透明基材上に固化したプライマー層を介して所定パターンの導電性パターン層を、細線でも、転移不足による断線や形状不良、インキ密着性不足などの印刷不良の発生なく形成できる。かくの如く凹版凹部内に充填されたインキの表面に生じる窪みをプライマー層が流入、充填する結果、得られた導電部材は、プライマー層の厚みが、前記導電性パターン層が形成されている部分の厚みが前記導電性パターン層が形成されていない部分の厚みよりも厚くなる。
(i)の温水処理は、水温30〜100℃の温水の中に導電部材を浸漬したり、温水を導電部材上に掛け流したり、或いは気温30〜100℃で相対湿度60%以上の雰囲気中に暴露する方法が好ましく、処理時間は、概ね5分〜20秒程度である。
(ii)の酸処理において、酸としては、特に限定されず、種々の無機酸、有機酸から選択できるが、好ましくは塩酸、硫酸、クエン酸およびその水溶液であり、酸による処理時間は数分以下で十分であり、処理温度は、常温で十分である。酸で処理する方法は特に限定されないが、酸の溶液の中へ浸漬させる方法が、導電性向上効果に優れるため好ましく、酸の濃度は、好ましくは1mol/L以下、より好ましくは0.1mol/L以上である。酸処理としては、1種類の酸を用い1回接触させる他、2種類以上の酸を用い順次別の酸に接触させても良い。特に、電磁波シールド材を、先ず塩酸に浸漬し、しかる後クエン酸に浸漬すると、塩酸のみ或いはクエン酸のみに1回浸漬するよりも、電気抵抗低減化効果は良好である。
これら電気抵抗低減化処理のうち、電気抵抗低減化効果、作業性の点から、(ii)の酸処理の後、引き続いて(i)の温水処理を行うことが好ましい。
かかる電気抵抗低減化処理によって、導電性パターン層全体の表面抵抗率は処理前の80〜30%程度に減少する(見かけの体積抵抗率も同様に処理前の80〜30%程度となる)。
上記の電気抵抗低減化処理によって表面抵抗率が減少する理由は、導電性パターン層20の横断面の電子顕微鏡写真による観察から、該電気抵抗低減化処理によって、間隔0で隣接する該金属粒子1同士の少なくとも一部が互いに融合(融着)した連なりを有してなる部分を形成しているためと推定される。ここで融合とは、電子顕微鏡観察において、隣接する金属粒子の間隔0で接する部分の境界面(線)が消失し、該接する部分において隣接粒子が一体化している状態を云う。一方、上記の電気抵抗低減化処理を施す前の状態においては、電子顕微鏡観察において、隣接する金属粒子の間隔0で接する部分には境界面(線)が存在し、単に接触している状態に留まっている。
また、上記の電気抵抗低減化処理を施した後も、尚、導電性パターン層20中において金属粒子1同士の間の空隙にはバインダー樹脂2が存在し、金属粒子1同士を、これら金属粒子同士が融合している領域を除いた領域において、互いに結合せしめている。言葉を換えて言えば、導電性パターン層20は、図3の断面図に示すように、バインダー樹脂2中に金属粒子1が複数分散してなると共に、これら金属粒子1同士の少なくとも一部の間において、隣接する金属粒子1同士が融合し、融合した金属粒子1同士が連なって電流を流し得る経路が形成されている。
本工程は、前記工程で製造した透明基材の一面側に、金属粒子及びバインダー樹脂を含み、表面において金属粒子の一部分がバインダー樹脂から露出している導電性パターン層が形成された導電部材を、金属暗色化処理液に浸漬することにより、金属粒子露出部分に前記の表面構造が形成されて、導電性パターン層表面を暗色化する工程である。
第1の金属暗色化処理液は、テルルが溶解された塩酸水溶液である。
このテルルの供給源として、酸化テルルを用いることが好ましい。
この金属暗色化処理液中には、テルルは、酸化物換算で、0.01〜0.45重量%の範囲内の量、好ましくは0.05〜0.40重量%の量で含有されている。この金属暗色化処理液は、従来この種の処理液を用いて行われている金属製品表面の黒化処理において使用されている処理液よりもテルル濃度が低いため、薄く暗色層をつくることができる。また、テルルは塩酸に溶解した状態で処理液中に存在し、大変安定性がよく、金属暗色化処理液を長時間放置した場合であっても配合物が析出しにくいため、一液型の処理剤とすることができる。更に、この一液型金属暗色化処理液は、処理金属と接触させた後も、その安定性が低下しないので、繰り返し使用することができる。
また、上記HCl濃度の暗色化処理液によれば、得られる暗色化処理品は反射防止性能に優れる。
HCl濃度が8重量%を超える場合は、反射防止性能に劣る場合があり、HCl濃度が0.05重量%未満の場合には酸化テルルを塩酸水溶液中に完全に溶解させることができないおそれがある。
上記暗色化処理液中における硫酸濃度は、更に10〜45重量%、特に15〜30重量%であることが、処理時間を短くすることができ、また得られる暗色化層の黒濃度に優れる点から好ましい。
この金属暗色化処理液と導電性パターン層との接触温度は常温でよく、好ましくは10〜40℃の範囲内の温度である。
上記のような温度条件において、導電性パターン層と金属暗色化処理液との接触時間は、通常15分以下、好ましくは1秒〜2分、特に好ましくは5秒〜30秒である。このように上記暗色化処理によれば、非常に短時間で導電性パターン層の表面を黒色或いは黒色に近い暗色に暗色化することができる。
耐酸性染料であるC.I. Acid Black2の水溶液に塩酸を添加して金属暗色化処理液を得、透明基材の一面側に導電性パターン層を有する導電部材を浸漬する。
この金属暗色化処理液中には、代表的組成としては、C.I. Acid Black2が固形分で15重量%含まれている。また、この金属暗色化処理液中のHCl(塩化水素)濃度は、1重量%である。
この金属暗色化処理液と導電性パターン層との接触温度(金属暗色化処理液の液温)は常温でもよいが、60℃程度まで温度を上げることで暗色化度が大きくなる。接触時間(浸漬時間)は30〜300秒の間で暗色化度の変化はない。
[導電部材の準備]
先ず、透明基材として、片面に易接着処理がされた幅1000mmで厚さ100μmの長尺ロール巻2軸延伸透明ポリエチレンテレフタレー卜(PET)フィルムを用いた。
供給部にセットしたPETフィルムを繰り出し、斜線版のグラビアリバースロールコート方式で、下記組成の紫外線硬化性樹脂組成物から成るプライマーを該PETフィルムの易接着処理面に厚み14μmにコーティングした。
(紫外線硬化性樹脂組成物の組成)
エポキシアクリレートプレポリマー:35質量部
ウレタンアクリレートプレポリマー:12質量部
フェノキシエチルアクリレートからなる単官能アクリレートモノマー:44質量部
エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレートからなる3官能アクリレー トモノマー:9質量部
光重合開始剤 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・ス ペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名イルガキュア184):3質量部
導電性組成物として、下記組成の銀ペーストインキを用意した。
(導電性組成物(銀ペースト)の組成)
金属粒子(平均粒子径1μmの鱗片状銀粒子(播磨化成社製、商品名「SV300 0」)):93質量部
バインダー樹脂(熱可塑性のポリエステルウレタン樹脂):7質量部
溶剤(ブチルカルビトールアセテート):25質量部
なお、鱗片状銀粒子は、鱗片形状を有し、粒子径0.1〜3μmの範囲の粒子から成る平均粒子径1μmの銀粒子であり、その表面に複数の溝状凹部を有している。該粒子径は、顕微鏡観察した各粒子の外接球の直径として求めた。
凹版として、版凹部パターンが線幅20μm、ピッチ300μm、版深25μmである上記凹版ロールを用いた。
充填容器に満たされた銀ペーストインキをピックアップロールにより版表面にコーティングし、余剰インキをドクターブレードにより掻き取った版面と、プライマー層が形成された透明基材(PETフィルム)のプライマー層側とをニップロールで圧着し、引続き高圧水銀灯を配置してなる紫外線照射ゾーン間を走行する間に、プライマー層の紫外線硬化樹脂を硬化させた。その後、出口側のニップロールによってフィルムが凹版ロールから剥離され、プライマー層上には導電性組成物層が転移形成される。このようにして得られた転移フィルムを、120℃の乾燥ゾーンを通過させて銀ペーストの溶剤を蒸発させ、プライマー層上にメッシュパターンからなる導電性パターン層を形成し、導電部材を得た。
次いで、電気抵抗低減化処理として、導電部材を、気温80℃、相対湿度90%の雰囲気中で48時間放置した後、室温雰囲気(気温23℃、相対湿度50%)中に取り出した。
印刷された該導電性パターン層の厚み(メッシュ非形成部のプライマー層表面を基準にして測定)は23μmであり、版深と印刷厚みの比で計算した転移率は、(メッシュパターン厚み23μm/版深25μm)×100=92%であったが、実際には銀ペーストインキの転写後の流動、溶剤乾燥による体積收縮があるため、転写直後には、ほぼ100%に近い転移がなされていると推定される。
また、導電性パターン層表面を走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:S−48000、日立ハイテクノロジーズ社製)による観察を行ったところ、全表面にわたって金属粒子の一部分がバインダー樹脂から露出していた。
且つ、導電性パターン層断面のSEM観察を行ったところ、該金属粒子の分布は、該導電性パターン層の頂部に行くほど密になり、逆にプライマー層側に行くほど粗になる様な粗密で分布していることが認められた。メッシュ線條部に直交する主切断面内において、単位断面積当たりの金属粒子の個数は、プライマー層と隣接する部分では、平均1個/μm2に対し、頂部近傍では平均3個/μm2であった。
また、電子顕微鏡観察により、該導電性パターン層の頂部の隣接金属粒子同士の間隔(距離)、及びプライマー層との界面近傍の隣接金属粒子同士の間隔を測定し、それぞれの平均を求めた結果、頂部の平均金属粒子間隔が0.5μm、プライマー層との界面近傍の平均金属粒子間隔は1.5μmであった。
また、得られた導電部材の導電性パターン層の表面抵抗率は0.45Ω/□であった。
次に、金属暗色化処理液として、二酸化テルル0.17重量%(テルル濃度として0.078重量%)、塩酸0.45重量%、硫酸34.3重量%の水溶液を用い、該金属暗色化処理液に上記導電部材を処理温度25℃条件下、30秒間浸漬し、水洗して乾燥し、実施例1の透明導電材を得た。
該透明導電材の導電性パターン層の外観は銀色から黒く変色し、該透明導電材の導電性パターン層側の面からの反射率は処理前と比較して5%低下した。反射率はJIS−K7105に準拠して、ヘイズメーターHM150(村上色彩社製、商品名)を用いて測定した。
また、導電性パターン層の表面抵抗値に変化は見られず、透過色度における色味変化も見られなかった。
また、SEMにより上記透明導電材の導電性パターン層表面の観察を行ったところ、金属粒子露出部分がその表面に複数の溝状凹部と多数の平均10nm程度の微小突起(微粒子)を有する構造であることが確認された(図2)。更に、該暗色化層に含まれる元素についてエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX:Energy Dispersive X−ray Fluorescence Spectrometer)(商品名:Genesis XM2、EDAX社製)を用いて分析を行ったところ、Cl元素とAg元素が確認された。
実施例1において、導電性パターン層表面の暗色化処理の金属暗色化処理液として、C.I Acid Black2(C.I.No.50420)水溶液(固形分15%)にHCl 1重量%となるように塩酸を添加した溶液を用い、該処理液に導電部材を常温下、30秒浸漬し、水洗して乾燥し、実施例2の透明導電材を得た。
該透明導電材の導電性パターン層の外観は銀色から黒色に変色し、該透明導電材の導電性パターン層側の面からの反射率は処理前と比較して2%低下した。導電性パターン層の表面抵抗値に変化は見られず、透過色度における色味変化も見られなかった。
また、SEMにより上記透明導電材の導電性パターン層表面の観察を行ったところ、金属粒子露出部分がその表面に複数の溝状凹部と複数の平均10nm程度の微小突起(微粒子)を有する構造であることが確認された。微小突起(微粒子)は、元素分析等の分析結果からは、AgCl又はそれが光等で還元されたAgと推測された。
1a 溝状凹部
1b 微小突起(微粒子)
2 バインダー樹脂
10 透明基材
20 導電性パターン層
30 透明導電材
40 プライマー層
Claims (5)
- 透明基材と、該透明基材上に所定のパターンで形成された導電性パターン層を有する透明導電材であって、
該導電性パターン層は金属粒子とバインダー樹脂を含み、該導電性パターン層の表面において金属粒子の一部分がバインダー樹脂から露出しており、該金属粒子露出部分がその表面に溝状凹部及び微小突起を有することを特徴とする透明導電材。 - 請求項1に記載の透明導電材において、前記透明基材と前記導電性パターン層の間にプライマー層を設けた透明導電材。
- 請求項2に記載の透明導電材において、前記導電性パターン層中の金属粒子の分布は、相対的に、該プライマー層近傍において分布が疎であり、又該導電性パターン層の頂部近傍において密である透明導電材。
- 請求項2に記載の透明導電材において、前記導電性パターン層中の金属粒子の分布は、隣接する該金属粒子同士の間隔が、相対的に、該プライマー層近傍において大であり、又該導電性パターン層の頂部近傍において小である透明導電材。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電材を前面フィルタに用いてなることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
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