JP5499943B2 - 電磁波遮蔽材の電気抵抗低減化処理を利用した製造方法 - Google Patents
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Description
そして、導電パターン層の形成には、コスト面で有利な印刷法が注目されている(特許文献1)。
しかし、強酸は腐食性が高い為に、処理槽、冶具、及び付帯設備に腐食や錆びを生じ易い。従って、これらの材質に、金、チタン等耐食性の高い物を用いれば腐食や錆びは解決できるが、設備費の高騰は避けられない。その上、酸の蒸気や湯気(霧)が発生し、作業者の衛生環境を悪化させることになる。
一方、室温以下の低温の強酸或いは弱酸を用いれば、設備費の高騰や衛生環境の悪化の問題は回避できるが、電気抵抗低減化効果を達成する時間が長くなり、生産性が低下するという問題がある。
(1)透明基材上に導電パターン層が形成された電磁波遮蔽材を製造する方法において、次の(a)、(b)の工程をこの順に含む、電磁波遮蔽材の電気抵抗低減化処理を利用した製造方法。
(a)透明基材上に金属粒子と樹脂バインダとを含有する導電パターン層が積層された導電パターン層積層物を準備する準備工程、
(b)導電パターン層積層物の導電パターン層に対して、以下の工程をこの順に行い、該導電パターン層中の金属粒子の少なくとも一部が融合した連なりを形成させて該導電パターン層の表面抵抗率を低下させる、電気抵抗低減化処理工程、
(b−i)室温の強酸水溶液と接触させる強酸処理工程、
(b−ii)室温よりも高温の弱酸水溶液と接触させる弱酸処理工程。
(b−iii)室温より高温の温水と接触させる温水処理工程。
(3)上記(1)又は(2)に於いて更に、金属粒子が銀粒子であり、強酸が塩酸であり且つ弱酸がクエン酸である、電磁波遮蔽材の電気抵抗低減化処理を利用した製造方法。
しかも、表面に金属めっきすることなく、簡便・低コストな方法で且つ透明基材を損傷させることなく、電気抵抗を低減させることができる。
(2)また、弱酸処理後に更に温水処理を実施することによって、酸の洗浄除去と同時に(室温よりも高い温度で行うので)更に、電気抵抗低減化効果が得られる。この為、その分、前工程の処理時間を短縮したり、処理温度を低下させたりすることもできる。
導電パターン層積層物を準備する準備工程は、図1中の図1(a)で示す様に、透明基材1上に、少なくとも導電パターン層2が積層された導電パターン層積層物3を準備する。また、該導電パターン層2は、金属粒子2aと樹脂バインダ2bとを含有し、メッシュ状などパターン状に形成された、導電性と光透過性を備えた層である(低減化処理後の図2を参照)。
この様な導電パターン層積層物3としては、例えば、透明基材1としてポリエチレンテレフタレートフィルム上に、銀ペーストで導電パターン層2を印刷形成した積層物等、公知のものを使用できる。また、好ましくは、「引抜プライマ方式凹版印刷法」で形成することができる導電パターン層2を、プライマ層4を介して透明基材1上に形成した導電パターン層積層物3を使用できる(導電パターン層積層物3を電気低減化処理後の電磁波遮蔽材10であるが図3を参照)。
以下、導電パターン層2、透明基材1等について更に詳述する。
導電パターン層2は、透明基材1にパターン状に印刷法により形成することができる。また、この導電パターン層2は、金属粒子2aとバインダ樹脂2bとを含む導電性組成物層として形成することができる。(導電パターン層積層物3を電気低減化処理後の電磁波遮蔽材10であるが、図2及び図3を参照)
なお、本明細書では、電気抵抗低減化処理の処理前、処理後も共に導電パターン層2と呼ぶが、処理前は導電性組成物層(2A)と呼び、処理後を導電パターン層(2)と呼んでも良い。
導電パターン層2を印刷形成する場合の印刷法には特に制限はない。例えば、(シルク)スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、凹版印刷などの有版印刷、或いはインクジェット印刷に代表される無版印刷等である。これらの印刷法の中でも、前記特許文献1で開示された凹版印刷の一種である所謂「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、高転移率、微細パターン再現性、及び透明基材1との高密着性などの点で特に好ましい印刷方式の一種である。また、当該印刷法では、電磁波遮蔽材に於いて優れた電磁波遮蔽性と優れた光透過性とを高度に両立させることができる。
導電パターン層2の(平面視の)パターン形状は、公知の形状など任意であり、例えば、メッシュ形状(六角形や四角形などの格子模様)、ストライプ形状(直線状縞模様、螺旋模様など)などの幾何学形状である。なかでもメッシュ形状、それも正方格子形状が代表的である。導電パターン層2の非形成部2nである開口部の形状は、メッシュ形状が例えば正方格子形状では正方形、ストライプ形状では帯形状となる。また、パターンの線幅、つまり導電パターン層2の形成部2cの線幅は、電磁波遮蔽性能とメッシュの不可視性の両立の観点から通常は5〜50μmである。更に、電磁波遮蔽性能と可視光透過性の両立の観点からは、線幅は好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
格子やストライプ等の幾何学模様のパターンの周期は通常100〜500μmである。また、導電パターン層2の開口率〔(導電パターン層2の開口部の合計面積/導電パターン層2の開口部及び導電パターン層2の形成部を含めた全被覆面積)×100で定義〕は、電磁波遮蔽性能及び可視光透過性との両立の観点から、50〜95%程度である。導電パターン層2の厚みは電磁波遮蔽性の点からは3μm以上、好ましくは10μm以上とする。又、通常最大100μm以下とする。これ以上の厚みでは、通常用途に於いては過剰性能となる上、パターン形成が困難となったり、導電パターン層2が外力を受けて破損し易くなったりする為である。
導電パターン層2は、金属粒子2aと樹脂バインダとを含む液状の導電性組成物(導電性ペースト、導電性インキ等とも呼ばれる)を用いて形成でき、該導電性組成物を溶剤乾燥、電離放射線照射、加熱などのエネルギー付加、化学反応などの固化プロセスによって固化させて得られる。なお、樹脂バインダは、上記導電性組成物から金属粒子2aを除いた残りの成分であり、また溶剤等の揮発散逸成分を含み得る成分であり、この樹脂バインダ中に含まれる樹脂分がバインダ樹脂2bである。また、樹脂バインダには、安定剤、分散剤、酸化防止剤、粘度調整剤など、公知の各種添加剤を含み得る。なお、バインダ樹脂が硬化性樹脂でその硬化に硬化剤や重合開始剤等を使用する場合、これらの硬化剤はバインダ樹脂の一成分であると捉える。
この様なバインダ樹脂を例示すると、熱硬化性樹脂は、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂などである。また、電離放射線硬化性樹脂には、電離放射線で架橋反応などによって重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーを含む組成物を使用する。なお、電離放射線としては、通常、紫外線、電子線などが使用される。また、該モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を使用する。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。
また、熱可塑性樹脂は、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂など、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂等である。
「引抜プライマ方式凹版印刷法」では、従来技術欄で説明した様に、透明基材1上の導電パターン層2が特定のプライマ層4を介して形成されるが、そのプライマ層4には、他の印刷法に見られない大きな特徴が形成される。それは、図4の断面図で概念的に示される様に、プライマ層4と導電パターン層2との界面について、プライマ層4は、導電パターン層2の形成部2cでの厚さTaが導電パターン層2の非形成部2nでの厚さTbよりも厚い形状となることである。なお、非形成部2nの厚さTbは、形成部2cの厚さTaの影響のない非形成部2nつまり、光透過性を確保する為の開口部の中央部での厚さとする。通常、非形成部2nの厚さTbは1〜10μm程度、形成部2cの厚さTaは、非形成部2nの厚さTbに較べて1〜10μm程度厚く形成される。
また、導電パターン層2の凸部内の金属粒子2aの分布が、相対的に、プライマ層4の近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密であることが好ましい。
すなわち、導電パターン層2の形成部2cである導電パターン層2の凸部の内部では、図4で概念的に示す様に、金属粒子2aが一様な均一な分布ではなく、金属粒子2aの分布が、相対的に、凸部の頂部P(頂上部)の近くが密で、頂部Pから遠いプライマ層4の近くが疎である分布を持つ内部構造が好ましい。密とは単位体積中の金属粒子2aの粒子数で見た数密度(体積密度)である。つまり、凸部内部の金属粒子2aの数密度が、プライマ層4近くに比べて頂部P近くの方が大きくなる分布である。数密度が大きい方が金属粒子2a同士の電気的接触が行われ易い。従って、例え導電パターン層2中の金属粒子2aの平均濃度が同じであっても、同じ数の金属粒子2aを数密度一様で分布させた場合に比べて、数密度が大きい部分での体積抵抗率の低下が寄与して全体として体積抵抗率が下がり、電磁波遮蔽性能が向上する。また、導電パターン層2の表面へ導電性金属層を電解めっきする場合には、電解めっき適性が向上する。更に、プライマ層4との境界近傍での金属粒子2aの数密度が小さいことによって、導電パターン層2とプライマ層4との密着性が向上する。
前記の如き所望の効果を奏する上では、主切断面に於ける金属粒子2aの(面積)数密度分布は、プライマ層4との境界での数密度に比べ、頂部の密度の密度が1.5〜10倍の範囲が好ましい。
この様に凸部の頂部Pの方に金属粒子2aを偏在させるには、例えば、プライマ流動層形成済みの透明基材1を版面に圧着する圧着力を強くすると共に、導電性組成物は粘度を低めにして且つ凹版凹部内では固化させずに版面から離版後に固化させると良い。この他、金属粒子2aと樹脂バインダとの比重差、固化前の導電性組成物の粘度(樹脂材料及び樹脂量、溶剤量、その他添加剤量、金属粒子2aの形状、粒度分布、含有量など関係)、固化条件などにも依存するので、これらは適宜実験的に決定すると良い。
なお、金属粒子2aと樹脂バインダとの比重差については、通常は金属粒子である金属粒子2aの比重>樹脂バインダの比重、となる為、プライマ層4に対して頂部Pを重力の向きと同じ向きにして導電パターン層2を固化させると良い。
なお、図4の如く導電パターン層2内に於ける金属粒子2aの数密度がプライマ層4側が疎で、頂部P側が密に分布する形態は、又、金属粒子2aの隣接粒子間距離がプライマ層4側が大で、頂部P側が小に分布する形態であるとも言える。隣接粒子間距離についても、導電パターン層2の延在方向での依存性は実質上無視出来る為、図4の如き主切断面に於ける隣接粒子間距離を測定し評価すれば良い。隣接粒子間距離は、通常、主切断面内の特定の位置の1粒子について、周囲に隣接する各粒子のうち該特定粒子に近い順に3〜10個の予め決められた数の粒子を選び、選んだ各粒子と該特定粒子との距離を求め、求めた各距離値を平均した値を、該特定粒子についての隣接粒子間の距離とする。
前記の如き所望の効果を奏する上では、主切断面に於ける金属粒子2aの隣接粒子間距離の分布は、プライマ層4との境界での隣接粒子間距離が0.5〜3μm、頂部の隣接粒子間距離が0〜0.5μmの範囲が好ましい。
なお、上記「引抜プライマ方式凹版印刷法」に於けるプライマ層4としては、透明な樹脂層で、その樹脂には熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用い、硬化性樹脂には熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができるが、固化が迅速な点で紫外線照射等で硬化する電離放射線硬化性樹脂が好ましい。これらの樹脂は、導電パターン層2で列記したバインダ樹脂などを使用できる。
また、このプライマ層4の樹脂も、前記バインダ樹脂と同様に非水溶性樹脂が好ましい。
透明基材1は、ディスプレイ用の電磁波遮蔽材としては、少なくとも透明であれば良く、その形状は、シート(含むフィルム)状が代表的であるが、この他、板でも良い。また、透明基材1の材質は、樹脂等の有機系材料、ガラス、セラミック等の無機系材料、或いは有機系材料と無機系材料を積層乃至は混合した複合材料でも良い。なかでも、代表的な透明基材1は、透明な樹脂シート(乃至フィルム)である。なお、「シート」は「フィルム」に対して一般に厚い物を意味することがあるが、本発明では単に呼称上の違いのみであり、その意味の厳密な区別は特にない。
樹脂シートの樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは好適な材料である。なお、透明基材1の厚みは、取扱性、コスト等の点で通常は12〜500μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。
但し、生産性に優れたロール・ツー・ロール方式での生産適性の点では、透明基材1として、フレキシブルな(可撓性の)材料を選べる樹脂シートが好ましい。
なお、ここで、ロール・ツー・ロール方式とは、ロール(巻取)から巻き出して所定の加工を施し、その後、再度ロールに巻き取る加工方式を言う。
また、製造方法を説明する図1では、概念図でもあるので、透明基材1の形態は枚葉シート状で描いてあるが、ロール・ツー・ロール方式を適用する場合は、勿論、帯状シートとなる。
電気抵抗低減化処理工程は、少なくとも2種2工程からなる特定の酸処理工程を含む。すなわち、(b−i)室温の液温の強酸水溶液と接触させる強酸処理工程と、この後の、(b−ii)室温よりも高温の液温の弱酸水溶液と接触させる弱酸処理工程である。
図1では、図1(b−i)が強酸処理工程を示し、図1(b−ii)が弱酸処理工程を示す。
ところで、酸処理による電気抵抗低減化効果とその効果との関係は、一般に、(A)酸が、弱酸よりも強酸である方が、効果がより大であり、(B)酸の温度(液温)が、より高温である方が、効果がより大であり、(C)処理時間が長い程、効果がより大である。一方、生産効率上は、処理時間は短時間である程好ましい。以上を考慮すると、(A)強酸を用い、(B)高温として、且つ(C)短時間で、処理することが好ましいことになる。
しかし、塩酸等の強酸を高温とした場合には、酸の腐食性(反応性)が高くなる為、酸の浴槽、酸と接触する周辺の機器及び治具に腐食や錆を生じ易くなる。そこで、該浴槽、機器、治具等を耐腐食性の高い材料(例えば、金、チタニウム等)で構成して、腐食等の問題を解決することも可能であるが、この場合、設備の設置、維持管理の費用が高騰する。また、高温になる程、酸の蒸気乃至は湯気の処理雰囲気中濃度が高くなり、(上記腐食性以外に)作業者の健康、安全衛生面での問題を生じる。勿論、付帯設備面での対策は可能で有るが、やはり、その場合、設備の設置、維持管理の費用が高騰する、と言う諸問題を生じる。
一方、クエン酸等の弱酸で高温処理をした場合は、高温時の腐食性、安全衛生面の問題は比較的小さいし、また、付帯設備面での対策負担も少なくて済む。但し、その代わり、酸の反応性が、強酸に比べて比較的低くなる為、処理時間が強酸に較べて長くなり生産性が低下する、と言う問題が生じてしまう。
また、酸の強弱の順序を逆にして、(b−ii)室温より高温での弱酸処理、(b−i)室温での強酸処理、の2工程をこの順に行った場合でも、室温でしかも1種類の酸で1工程のみの場合に比べて、上記効果を奏することは可能である。但し、弱酸処理の後に強酸処理を行った場合は、強酸処理の後に弱酸処理を行った場合に比較して、酸を除去する水洗等の水処理をより強化して行うこと等が必要になるので、本発明の様に、(b−i)室温で強酸処理、(b−ii)室温より高温で弱酸処理の2工程をこの順で行うことが、より好ましい。
強酸処理とは、図1中の図1(b−i)で概念的に示す様に、導電パターン層積層物3の導電パターン層2に対して、室温の強酸水溶液S1を接触させることによって、導電パターン層2の少なくとも表面近傍の金属粒子について、その電気抵抗、すなわち体積抵抗率を低下させる処理をいう。
これらの中でも、室温近辺の低温で、且つ比較的短時間で電気抵抗低減化効果が大きい点で、好ましくは、塩酸、硫酸であり、特に、金属粒子が銀粒子の場合に、より好ましくは塩酸である。
なお、強酸処理の後、次工程の弱酸処理を行うことも出来るが、導電パターン層2及び透明基材1の表面に残留強酸の残渣による悪影響が懸念される場合は、強酸処理後に、一旦、水洗した後、必要に応じて適宜水を乾燥させた上で、次の弱酸処理の工程を行う。
弱酸処理とは、図1中の図1(b−ii)で概念的に示す様に、導電パターン層積層物3の導電パターン層2に対して、室温より高温の弱酸水溶液S2を接触させることによって、導電パターン層2の少なくとも表面近傍の金属粒子について、その電気抵抗、すなわち体積抵抗率を低下させる処理をいう。
具体的には、高温処理の場合、強酸の処理温度よりも高温であれば良いが、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60℃以上である。但し、処理温度が高過ぎると酸の蒸気乃至は湯気の発生量が増え、強酸程では無いものの、腐食性や環境衛生面の問題も出て来る場合も有る為、この点からは、90℃以下、好ましくは80℃以下とする。
すなわち、金属粒子2aが銀の場合、弱酸の処理条件としては、弱酸としてクエン酸を採用し、40℃以上の温度で、クエン酸の水溶液中に導電パターン層2を浸漬したり、或いは該水溶液を塗布したりすることが好ましい。
なお、弱酸処理の後、導電パターン2及び透明基材1の表面に残留弱酸の残渣による悪影響が懸念される場合は、弱酸処理後に、更に、水洗する。
水洗後は水分を乾燥させる。但し、弱酸処理の後、更に温水処理を施す場合は、水洗後の水分が未乾燥の状態で、温水処理工程に入ることも出来る。或いは、温水によって残留する弱酸を十分洗い流すことが可能であれば、この水洗工程は省略し、温水処理工程と水洗工程とを1工程で兼ねることも出来る。
なお、上記の、強酸処理工程、及び弱酸処理工程の2工程の後に、更に(b−iii)温水処理工程を行っても良い。
この温水処理とは、図1中の図1(b−iii)で概念的に示す様に、導電パターン層積層物3の導電パターン層2に対して、室温より高温の水、つまり室温より高温の温水S3を接触させる処理をいう。
通常、酸処理の後には、導電パターン層2や透明基材1に付着した残留の酸を水洗して除去(した後、水分を乾燥)する工程が実施される。
従って、この様な水洗用の水を(室温よりも)高温にしておけば、水洗と同時に温水による電気抵抗低減化処理工程も行われることになる。すなわち、更に、温水処理を施すことによって、導電パターン層2の少なくとも表面近傍の金属粒子について、その電気抵抗を更に低減化させることが出来る。この為、温水処理による電気抵抗低減化の分だけ、前工程である上記(b−i)、(b−ii)、或いは(b−i)及び(b−ii)の処理時間を短縮したり、処理温度を低下させたりすることが可能となる利点が得られる。従って、この温水処理工程は、(b)電気抵抗低減化処理工程に含まれる工程である。
処理時の温水の温度は、室温の上限値である40℃よりも高温であれば良く、電気抵抗低減化効果上、好ましくは60℃以上である。但し、余り高温になるとバインダ樹脂や透明基材の変質、変形を生じることになる為、通常の材料の場合、90℃以下とすることが好ましい。
処理時間は、30秒〜20分程度であるが、温度とも関係し、例えば、90℃で30秒程度である。
以上の様な電気抵抗低減化処理工程によって、導電パターン層全体の、つまり導電パターン層2が形成された側の面としての、表面抵抗率は処理前の80〜30%程度に減少する(見かけの体積抵抗率も同様に処理前の80〜30%程度となる)。
また、金属粒子2aの粒子形状及び大きさ、並びに樹脂バインダの種類に関わらず、この表面抵抗率の減少は見られるが、金属粒子に平均粒子径0.1〜10μmの範囲の銀粒子を用いた導電ペーストの場合、電気抵抗低減化処理後の表面抵抗率の値は、一般的なパターン設計に於いて、処理前の値が1.5〜1.0Ω/□(Ω/sq)のものを、処理後に1.2〜0.3Ω/□程度の値にすることが可能である。
また、導電パターン層2の表面上に更に、金属層を電解めっきにて形成する場合にも、本処理により表面抵抗値を下げることによってめっき処理速度を上げることができ、生産性が向上する。
以上の様な電気抵抗低減化処理によって、体積抵抗率(乃至は表面抵抗率)が減少する理由は、現時点では未解明である。ただ、例えば、金属粒子2aとして銀を用いて形成した導電パターン層2の主切断面について、処理前後の銀粒子の状態変化をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察すると、電気抵抗低減化処理の結果、銀の粒子形状変化、部分的な融合、粒子間距離の減少などが観察され、これらが体積抵抗率低減の直接の原因と推定される。
このSEM観察結果を基に、電気抵抗低減化処理によって体積抵抗率が減少する理由について考察すると、電気抵抗低減化処理を未処理の導電パターン層2に於いては、銀粒子は粒子径の大小は有るが概ね独立しており、隣接する粒子間の接触部分には両粒子間の境界が認められる。また、複数の粒子が連結(或は連なるとも言う)して一体化していることはない。
一方、本発明の電気抵抗低減化処理を行った後の導電パターン層2に於いては、隣接する粒子同士の中には、隣接粒子間の接触部分の境界が消失し、隣接する粒子同士が融合し一体化しているものが存在することが判明した。そして、複数の粒子が融合して連接した経路を形成しているのが観察され、その経路を結ぶと、複数の融合粒子の連結経路は、直線状、折線状、及び/又は曲線状で導電パターン層2の1側端部から他の側端部まで連結した経路が1本以上存在していることが認められる。
この様な隣接する金属粒子同士が融合して連結した経路が形成されることが、体積抵抗率さらには表面抵抗率の低減の理由であると推定される。
従って、本発明で言う「金属粒子の少なくとも一部が融合した連なりを形成」の「融合」とは、複数の金属粒子同士がその境界が消失して合一(合体)することを言う。
このことから、複数の金属粒子が融合した連結(「クラスター」とも言う。)は、主切断面内に於いて、好ましくは、その長さが導電パターン層2の線幅の1/2程度に連なった融合部(クラスター)が存在すれば良い。この場合には、必ずしも、その部位の断面写真では融合が確認できなくとも、現実には、導電パターン層2の1側端部から他の側端部まで連結した経路が他の断面の部位で存在している確率が高いと推測され、結果的に体積抵抗率の低減が達成できているものと考えられる。なお、電気抵抗低減化処理を未実施の導電パターン層2をアルコールで払拭試験をすると表面抵抗率が増大するが、実施後の導電パターン層2ではほとんど変化しないという現象が見られることからも、金属粒子間の強固な結合が形成されていることが推定され、前述のようなクラスター形成を裏付けていると考えられる。
電気抵抗低減化処理に於ける酸処理、或いは酸処理後の温水処理で粒子間の融合が何故起こり、体積抵抗率(乃至は表面抵抗率)が低下するかについては、粒子表面が洗浄されることによる金属粒子同士の金属拡散の促進、水分あるいは酸による樹脂バインダの收縮、溶媒成分の減少、或は一旦溶解した金属が隣接する複数個の粒子表面間を包絡し、或は各粒子間の隙間を充填するような形態で再度固体化すること等も考えられるが、真の理由は未だ確認できていない。
なお、80℃で単に熱処理しただけでは、体積抵抗率は低減しないことが確認されている。また、酸処理した後に十分な乾燥をしないと体積抵抗率の減少率が小さいことも確認されている。
なお、本発明では、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、上記した以外のその他の工程を含んでもよい。例えば、電気抵抗低減化処理工程後の導電パターン層2に対して、その表面に電解銅めっき層を形成する電解銅めっき工程などの金属層を形成する電解めっき工程、該金属層の表面の酸化を防止する防錆層を形成する防錆工程等である。なお、防錆層は公知のクロメート処理で形成できる。
なお、黒化処理は、例えば黒化ニッケルめっき、銅−コバルト合金粒子めっき、或いは粗面化処理等を利用できる。また、光学フィルタは、近赤外線吸収層、紫外線吸収層、ネオン光吸収層、色補正層、反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)、微小ルーバによるコントラスト向上層(特開2007−272161号公報など参照)などであり、光学フィルタ以外の機能層では、保護層、ハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、粘着剤層などである。
上記の様な電気抵抗低減化処理を利用して製造した図1(c)で示す電磁波遮蔽材10は、更に詳しくは、図2の断面図で例示する電磁波遮蔽材10の如く、透明基材1上に、金属粒子2aとバインダ樹脂を含む導電パターン層2が少なくとも形成されている構成となる。しかも、該導電パターン層2中の金属粒子2aの少なくとも一部が融合した連なりが形成されている構成である。また、本発明による電磁波遮蔽材はその他の層を含んでも良く、例えば、図3の断面図で例示する電磁波遮蔽材10の様に、透明基材1と導電パターン層2間にプライマ層4を含んでも良い。同図に示すプライマ層4は、その層厚みが導電パターン層2の形成部2cで非形成部2nよりも厚い形状をしており、これは好適には前述した「引抜プライマ方式凹版印刷法」によって形成することができる構成である。また、導電パターン層2内の金属粒子2aは、図2の場合と同様に、該金属粒子2aの少なくとも一部が融合した連なりが形成されている。更に、図3の場合では、導電パターン層2内の金属粒子2aの分布が、相対的に、プライマ層4の近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密であること構成となっている(図4参照)。
本発明による電磁波遮蔽材は、特に、テレビジョン受像器、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器等の表示部等に用いられるPDP、CRT、LCD、ELなどの各種画像表示装置の電磁波遮蔽機能を有する前面フィルタ用として好適であり、特にPDP用として好適である。又、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジ等の各種家電製品の窓等に於ける電磁波遮蔽用途に使用出来る。なお、本発明の電磁波遮蔽材の構成は、その所定のパターンで形成された導電パターン層の導電性を利用して、電磁波遮蔽材以外の用途にも使用出来る。例えば、電気回路、各種電極、透明アンテナ(平面アンテナ)、タッチパネル等にも使用可能である。
なお、実施例1は(b−i)強酸処理、(b−ii)弱酸処理を行った形態であり、実施例2は、これに更に(b−iii)温水処理を行った形態であり、比較例1は、1種1工程の(b−I)室温での強酸処理を行った例である。
図3の断面図で例示する電磁波遮蔽材10を次の様にして作製した。すなわち、同図に示す電磁波遮蔽材10は、透明基材1の片面にプライマ層4が形成され、このプライマ層4の上に導電パターン層2が、金属粒子2a(銀粒子)とバインダ樹脂2bを含む導電性組成物の固化物として形成されている。そして、導電パターン層2の非形成部2nとして光透過性確保の為の多数の開口部が形成されている。また、導電パターン層2の形成部である凸部内部では、電磁波遮蔽材の主切断面の走査型電子顕微鏡観察で、金属粒子2aの分布が、相対的に、プライマ層4の近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密となっている。
先ず、図1(a)に様に、導電パターン層積層物3として、厚さ100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる透明基材1の片面に、導電性組成物(銀ペースト)を印刷し導電パターン層2を形成して、導電パターン層積層物3を準備した。なお、該導電性組成物は、熱可塑性アクリル系樹脂、溶剤等を含む樹脂バインダ中に金属粒子として平均粒子径2μmの銀粒子を分散させた、固形分約88.5質量%のインキである。また、上記印刷は「引抜プライマ方式凹版印刷法」で行った。その際、該凹版印刷法にて透明基材1と導電パターン層2との間に介在させるプライマ層4にはアクリレート系の紫外線硬化性樹脂のプライマを用いて、厚みは導電パターン層2の非形成部2n(開口部)の中央部で7μm、導電パターン層2の形成部2c(凸部)の中央部直下(最厚部)で9μmである。なお、図1中では、このプライマ層4は図示を省略した。
また、導電パターン層2の平面視パターン形状は、正方格子状のメッシュ形状であり、導電パターン層2の形成部2cである線部(ライン部)の線幅は17μm、格子ピッチは270μm、厚さ10μmである。そして、電気抵抗低減化処理前の導電パターン層2の表面抵抗率は1.5Ω/□(Ω/sq)である。
以下、強酸処理、弱酸処理をこの順に行った。
強酸処理は、図1(b−i)に示す様に、導電パターン層2を導電パターン層積層物3ごと、塩酸を水に溶解した液温20℃の室温の水溶液(塩酸濃度0.27mol/L=1.0質量%)中に30s間浸漬した。
次に、上記強酸処理の後、(室温での水洗工程を経ず)弱酸処理として、図1(b−ii)に示す様に、導電パターン層2を導電パターン層積層物3ごと、クエン酸を水に溶解した液温90℃の室温より高温の水溶液(クエン酸(分子量192)濃度0.052mol/L=1.0質量%、pH≒3.0)中に30s間浸漬した。
次いで、液温20℃の室温の水を30s間噴霧して、水洗して、目的とする電磁波遮蔽材10とした。
実施例1に於いて、弱酸処理の後の室温での水処理を、噴霧水の温度を90℃とした温水処理{図1(b−iii)参照}に変更した他は、実施例1と同様にして、電磁波遮蔽材を製造した。
実施例1に於いて、弱酸処理時のクエン酸濃度を、0.3倍、5倍、10倍及び20倍に変更し、0.3〜20質量%の間で変化させた他は、実施例1と同様にして電磁波遮蔽材を製造した。
つまり、酸濃度を、0.3質量%(0.016mol/L)、5質量%(0.26mol/L)、10質量%(0.52mol/L)、20質量%(1.04mol/L)とした。
実施例1に於いて、弱酸処理時のクエン酸を、酢酸に変更した場合と、蓚酸に変更した場合について、その他は同様にして実施例1と同様にして電磁波遮蔽材を製造した。
なお、各酸の濃度は、質量基準濃度で同じ1質量%とした。従って、モル濃度では、酢酸(分子量60)は0.17mol/L、蓚酸(分子量90)は0.11mol/Lである。
実施例4に於いて、弱酸処理時の酢酸及び蓚酸の濃度を、5倍、10倍及び20倍にした他は、実施例4と同様にして電磁波遮蔽材を製造した。つまり、各酸の酸濃度を5質量%)、10質量%、20質量%とした。
実施例1に於いて、弱酸処理を省略して酸処理を、(b−I)室温での強酸処理のみとした他は、実施例1と同様にして電磁波遮蔽材を製造した。なお、塩酸水溶液の塩酸濃度は同じで、その処理時間は実施例1の強酸処理と弱酸処理の各時間の合計と同じとし、最後は実施例1の弱酸処理時の温度と同じ室温より高温の90℃の(温)水処理を行っている。
実施例1に於いて、弱酸処理を省略して酸処理を、(b−I)室温での強酸処理のみとした他は、実施例1と同様にして電磁波遮蔽材を製造した。なお、塩酸水溶液の塩酸濃度は同じで、その処理時間は実施例1の強酸処理と弱酸処理の各時間の合計と同じとし、最後は室温(20℃)の水処理を行っている。
実施例1では、導電パターン層2の表面抵抗率(つまり、該導電パターン2が形成された側の電磁波遮蔽材の表面の表面抵抗)は、強酸処理前の1.5Ω/□が、上記一連の処理後は0.38Ω/□に低下し、処理前の25%(処理後値/処理前値の百分率)に低下した(低下率は75%)。
また、更に温水処理を追加した実施例2では、表面抵抗率は、強酸処理前の1.5Ω/□が、上記一連の処理後は0.32Ω/□に低下し、処理前の21%(処理後値/処理前値の百分率)に低下した。
また、弱酸処理時のクエン酸の濃度1質量%を、0.3質量%、5質量%、10質量%、20質量%と0.3〜20質量%の範囲で変化させた実施例3では、実施例1と同様の表面抵抗率の低下を示し実施例1と大差なかった(上記濃度順に一連の処理後の表面抵抗率が0.40Ω/□、0.38Ω/□、0.36Ω/□、0.38Ω/□。)
また、弱酸処理時に酸を、クエン酸から、酢酸又は蓚酸に変更した実施例4では、実施例1と同様の表面抵抗率の低下を示し実施例4と大差なかった。
また、上記実施例4の酢酸、蓚酸の濃度を各々、1質量%から、5質量%、10質量%、20質量%と高めた実施例5も同様に、実施例4と同様の表面抵抗率の低下を示し実施例4と大差なかった。
また、室温の強酸処理のみ(で温水処理無し)の比較例2では、表面抵抗率は、強酸処理前の1.5Ω/□が、処理後は0.8Ω/□に低下し、処理前の53%(処理後値/処理前値の百分率)に低下した。
また、各実施例及び比較例では、電磁波遮蔽材の切断面の走査型電子顕微鏡(FIB−SEM)による観察で、導電パターン層2中の金属粒子2aの一部が融合した連なりが形成されていた。
2 導電パターン層
2a 金属粒子
2b バインダ樹脂
2c 導電パターン層の形成部
2n 導電パターン層の非形成部
3 導電パターン層積層物
4 プライマ層
10 電磁波遮蔽材
P 凸部の頂部
S1 室温の強酸水溶液
S2 室温より高温の弱酸水溶液
S3 (室温より高温の)温水
Ta 導電パターン層の形成部(凸部)のプライマ層の厚み
Tb 導電パターン層の非形成部のプライマ層の厚み
Claims (3)
- 透明基材上に導電パターン層が形成された電磁波遮蔽材を製造する方法において、
次の(a)、(b)の工程をこの順に含む、電磁波遮蔽材の電気抵抗低減化処理を利用した製造方法。
(a)透明基材上に金属粒子と樹脂バインダとを含有する導電パターン層が積層された導電パターン層積層物を準備する準備工程、
(b)導電パターン層積層物の導電パターン層に対して、以下の工程をこの順に行い、該導電パターン層中の金属粒子の少なくとも一部が融合した連なりを形成させて該導電パターン層の表面抵抗率を低下させる、電気抵抗低減化処理工程、
(b−i)室温の強酸水溶液と接触させる強酸処理工程、
(b−ii)室温よりも高温の弱酸水溶液と接触させる弱酸処理工程。 - 上記(b−ii)の弱酸処理工程の後に、導電パターン層に対して以下の工程を行う、請求項1に記載の電磁波遮蔽材の電気抵抗低減化処理を利用した製造方法。
(b−iii)室温より高温の温水と接触させる温水処理工程。 - 金属粒子が銀粒子であり、強酸が塩酸であり且つ弱酸がクエン酸である、請求項1又は2に記載の電磁波遮蔽材の電気抵抗低減化処理を利用した製造方法。
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