JP2011113720A - Liイオン伝導性材料およびリチウム電池 - Google Patents

Liイオン伝導性材料およびリチウム電池 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、硫化水素発生量を低減させたLiイオン伝導性材料を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、Li、第13族〜第15族の元素、およびSを含有し、かつ、MSユニット(Mは第13族〜第15族の元素であり、Sは硫黄元素であり、xはSがMに結合できる最大の数である)を含有する硫化物固体電解質材料と、上記硫化物固体電解質材料に接触し、水素よりもイオン化傾向の小さい金属元素を含有する抑制材と、を有することを特徴とするLiイオン伝導性材料を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図4

Description

本発明は、硫化水素が生成する前に硫黄成分を安定化させることにより、硫化水素発生量を低減させたLiイオン伝導性材料に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム電池が注目を浴びている。
現在市販されているリチウム電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。
これに対し、電解液を固体電解質層に変えて、電池を全固体化したリチウム電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。さらに、このような固体電解質層に用いられる固体電解質材料として、硫化物固体電解質材料が知られている(例えば特許文献1)。
硫化物固体電解質材料は、Liイオン伝導性が高いため、電池の高出力化を図る上で有用である。しかしながら、硫化物固体電解質材料は水(水分を含む。以下同じ)と接触した場合に硫化水素が発生するという問題がある。そのため、発生した硫化水素をトラップする技術について、従来から種々の研究がなされている。例えば特許文献2には、硫化水素ガスをトラップし無毒化する物質(アルカリ性化合物)で、セルの外周部が覆われている硫化物系二次電池が開示されている。また、特許文献3には、硫化物系全固体電池素子を熱硬化性樹脂からなる外装材で被覆し、その外装材をさらに吸着材及び/又はアルカリ性物質含有材料で被覆した全固体電池が開示されている。
特開2002−109955号公報 特開2008−103245号公報 特開2008−103283号公報
特許文献2、3では、吸着剤またはアルカリ性物質を用いて硫化水素をトラップしているが、そもそも硫化水素の発生を抑制するものではなかった。本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、硫化水素発生量を低減させたLiイオン伝導性材料を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者等が鋭意研究した結果、水素よりもイオン化傾向の小さい金属元素を含む抑制材を用いることにより、硫化水素が生成する前に硫黄成分を安定化させることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明においては、Li、第13族〜第15族の元素、およびSを含有し、かつ、MSユニット(Mは第13族〜第15族の元素であり、Sは硫黄元素であり、xはSがMに結合できる最大の数である)を含有する硫化物固体電解質材料と、上記硫化物固体電解質材料に接触し、水素よりもイオン化傾向の小さい金属元素を含有する抑制材と、を有することを特徴とするLiイオン伝導性材料を提供する。
本発明によれば、水素よりもイオン化傾向の小さい金属元素を含有する抑制材を用いることにより、硫化水素が生成する前に硫黄成分を安定化できる。そのため、硫化水素発生量を低くすることができ、安全性の高いLiイオン伝導性材料とすることができる。
上記発明においては、上記抑制材の金属元素が、銅であることが好ましい。安価であり、安全性が高いからである。
上記発明においては、上記抑制材が、酸化銅であることが好ましい。硫化水素が生成する前に硫黄成分を効率良く安定化できるからである。
上記発明においては、上記硫化物固体電解質材料が、架橋硫黄およびLiSを実質的に含有しないことが好ましい。架橋硫黄およびLiSに起因する硫化水素の発生を防止でき、硫化水素発生量を全体として低減することができるからである。
上記発明においては、第13族〜第15族の元素がPであり、上記MSユニットはPSユニットであることが好ましい。さらに、上記発明においては、上記硫化物固体電解質材料が、LiSおよびPを含有する原料組成物をガラス化してなるものであることが好ましい。
上記発明においては、上記原料組成物に含まれる上記LiSおよび上記Pの割合が、モル換算で、LiS:P=70〜85:15〜30であることが好ましい。オルト組成またはその近傍の組成を有する硫化物固体電解質材料となり、硫化水素発生量が少ないからである。
上記発明においては、第13族〜第15族の元素がGeであり、上記MSユニットはGeSユニットであることが好ましい。さらに、上記発明においては、上記硫化物固体電解質材料が、LiSおよびGeSを含有する原料組成物をガラス化してなるものであることが好ましい。
上記発明においては、上記原料組成物に含まれる上記LiSおよび上記GeSの割合が、モル換算で、LiS:GeS=50〜80:20〜50であることが好ましい。オルト組成またはその近傍の組成を有する硫化物固体電解質材料となり、硫化水素発生量が少ないからである。
上記発明においては、第13族〜第15族の元素がSiであり、上記MSユニットはSiSユニットであることが好ましい。さらに、上記発明においては、上記硫化物固体電解質材料が、LiSおよびSiSを含有する原料組成物をガラス化してなるものであることが好ましい。
上記発明においては、上記原料組成物に含まれる上記LiSおよび上記SiSの割合が、モル換算で、LiS:SiS=50〜80:20〜50であることが好ましい。オルト組成またはその近傍の組成を有する硫化物固体電解質材料となり、硫化水素発生量が少ないからである。
また、本発明においては、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層と、を有するリチウム電池であって、上記正極活物質層、上記負極活物質層および上記電解質層の少なくとも一つが、上述したLiイオン伝導性材料を含有することを特徴とするリチウム電池を提供する。
本発明によれば、上述したLiイオン伝導性材料を用いることで、硫化水素発生量の少ないリチウム電池とすることができる。
本発明においては、硫化水素が生成する前に硫黄成分を安定化させることにより、硫化水素発生量を低減させたLiイオン伝導性材料とすることができるという効果を奏する。
本発明のLiイオン伝導性材料の一例を示す説明図である。 本発明のLiイオン伝導性材料を例示する概略断面図である。 本発明のリチウム電池の発電要素の一例を示す概略断面図である。 実施例および比較例1で得られたサンプルの硫化水素発生量の測定結果である。 実施例で得られたサンプルの硫化水素発生量の測定前後におけるX線回折の測定結果である。 比較例1で得られたサンプルの硫化水素発生量の測定前後におけるX線回折の測定結果である。 比較例2で得られたサンプルの硫化水素発生量の測定後におけるX線回折の測定結果である。
以下、本発明のLiイオン伝導性材料およびリチウム電池について詳細に説明する。
A.Liイオン伝導性材料
まず、本発明のLiイオン伝導性材料について説明する。本発明のLiイオン伝導性材料は、Li、第13族〜第15族の元素、およびSを含有し、かつ、MSユニット(Mは第13族〜第15族の元素であり、Sは硫黄元素であり、xはSがMに結合できる最大の数である)を含有する硫化物固体電解質材料と、上記硫化物固体電解質材料に接触し、水素よりもイオン化傾向の小さい金属元素を含有する抑制材と、を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、水素よりもイオン化傾向の小さい金属元素を含有する抑制材を用いることにより、硫化水素が生成する前に硫黄成分を安定化できる。そのため、硫化水素発生量を低くすることができ、安全性の高いLiイオン伝導性材料とすることができる。また、上述したように、従来、硫化水素の発生後に、アルカリ性物質等を用いて硫化水素をトラップする技術が知られているが、この技術は硫化水素の発生自体を抑制するものではなかった。これに対して、本発明のLiイオン伝導性材料は、硫化水素の発生前に、抑制材(例えばCuO)を用いて、硫黄成分(例えばPS 3−)をトラップし、安定化することで、硫化水素発生量を低減させたものである。そのため、本発明における抑制材と、従来の硫化水素トラップ材とは、トラップする対象が全く異なるものである。なお、硫化水素が生成する前に硫黄成分を安定化できるメカニズムについては後述する。
図1は、本発明のLiイオン伝導性材料の一例を示す説明図である。図1に示されるLiイオン伝導性材料10は、硫化物固体電解質材料1と、硫化物固体電解質材料1に接触する抑制材2と、を有するものである。さらに、本発明において、硫化物固体電解質材料1は、Li、第13族〜第15族の元素、およびSを含有し、かつ、MSユニット(Mは第13族〜第15族の元素であり、Sは硫黄元素であり、xはSがMに結合できる最大の数である)を含有するものである。また、抑制材2は、水素よりもイオン化傾向の小さい金属元素を含有する化合物である。
次に、本発明におけるMSユニットについて説明する。MSユニットは、硫化物固体電解質材料を構成するユニットの一つである。本発明におけるMSユニットを以下に例示する。
Figure 2011113720
MSユニットのxはMの価数に対応する数であり、通常は、Sが結合できる最大の数である。PSユニットは、Pの価数(5価)に応じて、Pに4個のSが結合したものである(x=4)。PSユニットは、Pの価数が5価であるため、結合した4個のSのうち、1個のSが二重結合になる。また、GeSユニットおよびSiSユニットは、Geの価数(4価)およびSiの価数(4価)に応じて、GeおよびSiに、それぞれ4個のSが結合したものである(x=4)。同様に、AlSユニットは、Alの価数(3価)に応じて、Alに3個のSが結合したものである。なお、上記の化学式では省略しているが、各ユニットのSにはカウンターとしてLiが存在する。
次に、本発明の抑制材が、硫化水素が生成する前に硫黄成分を安定化できるメカニズムについて説明する。例えば、硫化物固体電解質材料として、75LiS・25Pガラスを用いた場合を考える。75LiS・25Pガラスは、LiSおよびPをモル換算でLiS:P=75:25の割合で混合した原料組成物をガラス化したものである。さらに、75LiS・25Pガラスは、LiPSで表すこともでき、理論的にはPSユニットのみから構成されるものである。
後述する比較例1に記載するように、75LiS・25Pガラスは水と接触することにより、微量ではあるが硫化水素を発生する。そして、硫化水素発生後の75LiS・25Pガラスに対して、X線回折(XRD)測定を行うと、LiPOが生成していることが確認される。その結果から、75LiS・25Pガラスから硫化水素が発生するメカニズムは、次の通りであると推察される。
LiPS+3HO→3LiOH+HPS …(1)
PS+4HO→HPO+4HS↑ …(2)
3LiOH+HPO→LiPO+3HO↑ …(3)
すなわち、(1)において、LiPSがHOと反応することで電離し、LiOHおよびHPSが生じる。この反応は、LiPS水溶液が塩基性であることからも確かであると考えられる。次に、(2)において、HPSがさらにHOと反応することで、HS(硫化水素)が生じる。その後、(3)において、(1)で生じたLiOH、および(2)で生じたHPOから乾燥により水分が除去されることにより、LiPOが生じると考えられる。
これに対して、後述する実施例に記載するように、75LiS・25PガラスおよびCuO(抑制材)を有するLiイオン伝導性材料は、75LiS・25Pガラスのみの場合と比較して、大幅に硫化水素発生量を低減することができる。そして、硫化水素発生後のLiイオン伝導性材料に対して、X線回折(XRD)測定を行うと、CuPSが生成していることが確認される。その結果から、Liイオン伝導性材料と水との反応メカニズムは以下の通りであると推察される。
LiPS+3HO→3LiOH+HPS …(1)
PS+3CuO→CuPS …(4)
なお、上記(4)におけるCuPSのCuの価数は、理由は不明であるが、2価から1価に還元されているものと考えられる。Cuは1価または2価の価数をとることができるので、2価のCu(CuO)が何らかの理由により還元されたものと推測される。
上記の(2)および(4)を比較すると、(2)では、HPSがHOと反応することで、HS(硫化水素)が生成しているが、(4)では、HPSが、水素よりもイオン化傾向の小さい金属元素(Cu)の酸化物であるCuOと反応することで、CuPSが生成する。仮に、CuOではなく、水素よりもイオン化傾向の大きい金属元素を含む抑制材MXを用いると、HPSがMXと反応しMPSが生成しても、Mのイオン化傾向がHのイオン化傾向よりも大きいため、再びHPSが生じ、そのHPSが水と反応することによりHS(硫化水素)が生成してしまう。これに対して、水素よりもイオン化傾向の小さい金属元素を含む抑制材を用いることで、再びHPSが生じることはなく、硫化水素が生成する前に、硫黄成分を安定化することができる。
以下、本発明のLiイオン伝導性材料について、構成ごとに説明する。
(1)硫化物固体電解質材料
本発明における硫化物固体電解質材料は、Li、第13族〜第15族の元素、およびSを含有し、かつ、MSユニット(Mは第13族〜第15族の元素であり、Sは硫黄元素であり、xはSがMに結合できる最大の数である)を含有するものである。
MSユニットの存在は、例えばラマン分光スペクトルの測定により確認することができる。例えば、PSユニットのピークは、通常417cm−1に表れる。そのため、このピークを有していれば、PSユニットを含有する硫化物固体電解質材料であると判断することができる。PSユニット以外のMSユニットについても、同様に、ラマン分光スペクトルを測定し、MSユニットのピークを有するか否かで、MSユニットの存在を確認することができる。また、ラマン分光スペクトルの測定以外にも、原料組成物の組成比やNMRの測定結果からも、MSユニットの存在を確認することができる。また、特にPSユニットについては、31P MAS NMRによっても確認することができる(PSユニットのピーク=83ppm)。
また、硫化物固体電解質材料は、第13族〜第15族の元素を含有するものであるが、中でも、第14族または第15族の元素を含有することが好ましい。硫化水素発生量の少ない硫化物固体電解質材料を得ることができるからである。第13族〜第15族の元素としては、特に限定されるものではないが、例えばP、Si、Ge、As、Sb、Al等を挙げることができ、中でもP、Si、Geが好ましく、特にPが好ましい。硫化水素発生量が少なく、Liイオン伝導性の高い硫化物固体電解質材料を得ることができるからである。
本発明の硫化物固体電解質材料は、Li、第13族〜第15族の元素、およびSを含有し、さらにMSユニットを含有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも、LiSと、第13族〜第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物をガラス化してなるものであることが好ましい。良好なLiイオン伝導性を有する硫化物固体電解質材料とすることができるからである。
原料組成物に含まれるLiSは、不純物が少ないことが好ましい。副反応を抑制することができるからである。LiSの合成方法としては、例えば特開平7−330312号公報に記載された方法等を挙げることができる。さらに、LiSは、WO2005/040039に記載された方法等を用いて精製されていることが好ましい。一方、原料組成物に含まれる第13族〜第15族の元素の硫化物としては、例えば、P、P、SiS、GeS、As、Sb、Al等を挙げることができる。
原料組成物をガラス化する方法としては、例えばメカニカルミリング法および溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリング法が好ましい。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。メカニカルミリングは、原料組成物を、機械的エネルギーを付与しながら混合する方法であれば特に限定されるものではないが、例えばボールミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等を挙げることができ、中でもボールミルが好ましく、特に遊星型ボールミルが好ましい。所望の硫化物固体電解質材料を効率良く得ることができるからである。
また、メカニカルミリングの各種条件は、所望の硫化物固体電解質材料を得ることができるように設定する。例えば、遊星型ボールミルにより硫化物固体電解質材料を作製する場合、ポット内に、原料組成物および粉砕用ボールを加え、所定の回転数および時間で処理を行う。一般的に、回転数が大きいほど、硫化物固体電解質材料の生成速度は速くなり、処理時間が長いほど、原料組成物から硫化物固体電解質材料への転化率は高くなる。遊星型ボールミルを行う際の回転数としては、例えば200rpm〜500rpmの範囲内、中でも250rpm〜400rpmの範囲内であることが好ましい。また、遊星型ボールミルを行う際の処理時間は、例えば1時間〜100時間の範囲内、中でも1時間〜50時間の範囲内であることが好ましい。
本発明における硫化物固体電解質材料は、LiSを実質的に含有しないことが好ましい。硫化水素発生量の少ない硫化物固体電解質材料とすることができるからである。LiSは水と反応することで、硫化水素が発生する。例えば、原料組成物に含まれるLiSの割合が大きいと、LiSが残存しやすい。「LiSを実質的に含有しない」ことは、X線回折により確認することができる。具体的には、LiSのピーク(2θ=27.0°、31.2°、44.8°、53.1°)を有しない場合は、LiSを実質的に含有しないと判断することができる。
本発明における硫化物固体電解質材料は、架橋硫黄を含有しないことが好ましい。硫化水素発生量の少ない硫化物固体電解質材料とすることができるからである。「架橋硫黄」とは、LiSと第13族〜第15族の元素の硫化物とが反応してなる化合物における架橋硫黄をいう。例えば、LiSおよびPが反応してなるSP−S−PSユニットの架橋硫黄が該当する。このような架橋硫黄は、水と反応しやすく、硫化水素が発生しやすい。さらに、「架橋硫黄を実質的に含有しない」ことは、ラマン分光スペクトルの測定により、確認することができる。例えば、LiS−P系の硫化物固体電解質材料の場合、SP−S−PSユニットのピークが、通常402cm−1に表れる。そのため、このピークが検出されないことが好ましい。また、PSユニットのピークは、通常417cm−1に表れる。本発明においては、402cm−1における強度I402が、417cm−1における強度I417よりも小さいことが好ましい。より具体的には、強度I417に対して、強度I402は、例えば70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましい。また、LiS−P系以外の硫化物固体電解質材料についても、架橋硫黄を含有するユニットを特定し、そのユニットのピークを測定することにより、架橋硫黄を実質的に含有していないことを判断することができる。
本発明における硫化物固体電解質材料が、LiSおよび架橋硫黄を実質的に含有しない場合、通常、硫化物固体電解質材料は、オルト組成またはその近傍の組成を有している。ここで、オルトとは、一般的に、同じ酸化物を水和して得られるオキソ酸の中で、最も水和度の高いものをいう。本発明においては、硫化物で最もLiSが付加している結晶組成をオルト組成という。例えば、LiS−P系ではLiPSがオルト組成に該当し、LiS−Al系ではLiAlSがオルト組成に該当し、LiS−SiS系ではLiSiSがオルト組成に該当し、LiS−GeS系ではLiGeSがオルト組成に該当する。なお、オルト組成において、硫化物固体電解質材料は、理論的に上述したMSユニットのみから構成されることになる。例えば、LiS−P系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびPの割合は、モル換算で、LiS:P=75:25である。同様に、LiS−Al系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびAlの割合は、モル換算で、LiS:Al=75:25である。一方、LiS−SiS系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびよびSiSの割合は、モル換算で、LiS:SiS=66.7:33.3である。同様に、LiS−GeS系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびGeSの割合は、モル換算で、LiS:GeS=66.7:33.3である。
上記原料組成物が、LiSおよびPを含有する場合、上記原料組成物はLiSおよびPのみを含有するものであっても良く、その他の化合物を有するものであっても良い。LiSおよびPの割合は、モル換算で、LiS:P=70〜85:15〜30の範囲内であることが好ましく、LiS:P=70〜80:20〜30の範囲内であることがより好ましく、LiS:P=72〜78:22〜28の範囲内であることがさらに好ましい。両者の割合を、オルト組成を得る割合(LiS:P=75:25)およびその近傍を含む範囲とすることで、硫化水素発生量を低くすることができるからである。なお、上記原料組成物が、LiSおよびAlを含有する場合、LiSおよびAlの割合等は、上述したLiSおよびPの割合等と同様であることが好ましい。
一方、上記原料組成物が、LiSおよびSiSを含有する場合、上記原料組成物はLiSおよびSiSのみを含有するものであっても良く、その他の化合物を有するものであっても良い。LiSおよびSiSの割合は、モル換算で、LiS:SiS=50〜80:20〜50の範囲内であることが好ましく、LiS:SiS=55〜75:25〜45の範囲内であることがより好ましく、LiS:SiS=60〜70:30〜40の範囲内であることがさらに好ましい。両者の割合を、オルト組成を得る割合(LiS:SiS=66.7:33.3)およびその近傍を含む範囲とすることで、硫化水素発生量を低くすることができるからである。なお、上記原料組成物が、LiSおよびGeSを含有する場合、LiSおよびGeSの割合等は、上述したLiSおよびSiSの割合等と同様であることが好ましい。
本発明における硫化物固体電解質材料は、原料組成物をガラス化してなる硫化物ガラスであっても良く、その硫化物ガラスを熱処理してなる結晶化硫化物ガラスであっても良い。硫化物ガラスは、結晶化硫化物ガラスに比べて柔らかいため、全固体電池を作製した際に活物質の膨張収縮を吸収でき、サイクル特性が優れると考えられる。一方、結晶化硫化物ガラスは、硫化物ガラスに比べて、Liイオン伝導性が高くなる可能性がある。なお、熱処理の条件によっては、架橋硫黄またはLiSが生成する可能性があるため、本発明においては、これらが生成しないように、熱処理温度および熱処理時間を調整することが好ましい。熱処理の温度は、例えば270℃以上が好ましく、280℃以上であることがより好ましく、285℃以上であることがさらに好ましい。一方、熱処理の温度は、例えば310℃以下が好ましく、300℃以下であることがより好ましく、295℃以下であることがさらに好ましい。また、熱処理の時間は、例えば、1分間〜2時間の範囲内であり、30分間〜1時間の範囲内であることがより好ましい。
また、硫化物固体電解質材料は、Liイオン伝導度の値が高いことが好ましい。室温でのLiイオン伝導度は、例えば10−5S/cm以上であることが好ましく、10−4S/cm以上であることがより好ましい。また、本発明の硫化物固体電解質材料は、通常粉末状であり、その平均径は例えば0.1μm〜50μmの範囲内である。
(2)抑制材
次に、本発明における抑制材について説明する。本発明における抑制材は、硫化物固体電解質材料に接触するものであり、水素よりもイオン化傾向の小さい金属元素を含有するものである。抑制材の金属元素としては、水素よりもイオン化傾向が小さい金属元素であれば特に限定されるものではないが、例えば、Sb、Bi、Cu、Hg、Ag、Pd、Ir、Pt、Au等を挙げることができ、中でもCu、Sb、Bi、Hg、Agが好ましく、特にCuが好ましい。安価であり、安全性が高いからである。また、本発明における抑制材は、上記金属元素の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物または金属塩であることが好ましい。上記ハロゲン化物としては、例えばフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物等を挙げることができ、中でも塩化物が好ましい。また、上記金属塩としては、例えばリン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。
抑制材の形状は、特に限定されるものではないが、例えば粉末状であり、その平均径は例えば0.1μm〜50μmの範囲内である。また、Liイオン伝導性材料に含まれる抑制材の割合は、例えば5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることが特に好ましい。抑制材の割合が小さすぎると、硫化水素が生成する前に硫黄成分を充分に安定化できない可能性があるからである。そのため、硫化水素発生量を充分に抑制できない可能性がある。一方、Liイオン伝導性材料に含まれる抑制材の割合は、例えば50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることが特に好ましい。抑制材の割合が大きすぎると、抑制材がLiイオン伝導性を阻害する可能性があるからである。なお、本発明のLiイオン伝導性材料は、2種類以上の抑制材を含有していても良い。
(3)Liイオン伝導性材料
本発明のLiイオン伝導性材料は、上記硫化物固体電解質材料および上記抑制材を有するものであれば特に限定されるものではないが、通常は、両者が接触するものである。両者が接触することにより、硫化水素が生成する前に硫黄成分を充分に安定化できる。また、Liイオン伝導性材料の形状は、例えば粉末状およびペレット状等を挙げることができる。Liイオン伝導性材料がペレット状である場合は、Liイオン伝導性材料を、例えば全固体リチウム電池の固体電解質層として用いることができるという利点を有する。なお、ペレット状のLiイオン伝導性材料とは、粉末状のLiイオン伝導性材料に圧力をかけて成形したものをいう。
粉末状のLiイオン伝導性材料の一例としては、上記図1に示すように、硫化物固体電解質材料1および抑制材2が接触する粉末状のLiイオン伝導性材料10を挙げることができる。この粉末状のLiイオン伝導性材料は、硫化物固体電解質材料1および抑制材2を単純に混合することにより得ることができる。また、この場合、硫化物固体電解質材料1および抑制材2は互いに高分散されていることが好ましい。硫化水素が生成する前に硫黄成分を効率良く安定化できるからである。また、本発明においては、硫化物固体電解質材料および抑制材の一方の表面に、他方を浮島状に被覆させても良い。被覆型のLiイオン伝導性材料は、例えばゾルゲル法による塗布および乾燥、PLD法、スパッタリング法等により得ることができる。
一方、ペレット状のLiイオン伝導性材料の一例としては、図2(a)に示すように、硫化物固体電解質材料および抑制材が接触するペレット状のLiイオン伝導性材料10を挙げることができる。このペレット状のLiイオン伝導性材料は、例えば、上記図1に示す粉末状のLiイオン伝導性材料を圧縮成形することにより得ることができる。
また、ペレット状のLiイオン伝導性材料は、硫化物固体電解質材料および抑制材を混合していないものであっても良い。このようなペレット状のLiイオン伝導性材料としては、例えば、少なくとも硫化物固体電解質材料を含有する硫化物固体電解質材料含有部と、少なくとも抑制材を含有する抑制材含有部とを有し、硫化物固体電解質材料含有部および抑制材含有部が互いに接触しているものを挙げることができる。
上記ペレット状のLiイオン伝導性材料の一例としては、図2(b)に示すように、少なくとも硫化物固体電解質材料を含有する硫化物固体電解質材料含有部11と、硫化物固体電解質材料含有部11の端面に形成され、少なくとも抑制材を含有する抑制材含有部12とを有するものを挙げることができる。図2(b)に示すLiイオン伝導性材料10の端面は、水の攻撃を受けやすいため、その端面に抑制材含有部12を設けることにより、硫化水素の発生を効果的に抑制することができる。このペレット状のLiイオン伝導性材料10は、例えば、硫化物固体電解質材料含有部11を構成する材料と、抑制材含有部12を構成する材料とを用意し、硫化物固体電解質材料含有部11を構成する材料の周りに、抑制材含有部12を構成する材料を配置し、一度に圧縮成形することにより得ることができる。なお、硫化物固体電解質材料含有部11および抑制材含有部12の一方を最初の圧縮成形により成形し、次に、得られた成形体に他方の材料を添加し、二度目の圧縮成形を行うことにより、ペレット状のLiイオン伝導性材料を作製しても良い。
また、硫化物固体電解質材料含有部11は、硫化物固体電解質材料のみを有するものであっても良く、その他の材料を有するものであっても良い。同様に、抑制材含有部12は、抑制材のみを有するものであっても良く、その他の材料を有するものであっても良い。硫化物固体電解質材料含有部11および抑制材含有部12に用いられる他の材料としては、例えば結着材等を挙げることができる。また、その他の材料として、活物質を添加することで、正極活物質層または負極活物質層として有用なペレット状のLiイオン伝導性材料を得ることができる。この場合、その他の材料として、導電化材をさらに添加しても良い。
B.リチウム電池
次に、本発明のリチウム電池について説明する。本発明のリチウム電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層と、を有するリチウム電池であって、上記正極活物質層、上記負極活物質層および上記電解質層の少なくとも一つが、上述したLiイオン伝導性材料を含有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上述したLiイオン伝導性材料を用いることで、硫化水素発生量の少ないリチウム電池とすることができる。
図3は、本発明のリチウム電池の発電要素の一例を示す概略断面図である。図3に示される発電要素30は、正極活物質を含有する正極活物質層21と、負極活物質を含有する負極活物質層22と、正極活物質層21および負極活物質層22の間に形成された電解質層23と、を有するものである。さらに、本発明においては、正極活物質層21、負極活物質層22および電解質層23の少なくとも一つが、上述したLiイオン伝導性材料を含有することを大きな特徴とする。
以下、本発明のリチウム電池について、構成ごとに説明する。
1.電解質層
まず、本発明における電解質層について説明する。本発明における電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層である。電解質層は、Liイオンの伝導を行うことができる層であれば特に限定されるものではないが、固体電解質層であることが好ましい。安全性の高いリチウム電池(全固体電池)を得ることができるからである。さらに、本発明においては、固体電解質層が、上述したLiイオン伝導性材料を含有することが好ましい。固体電解質層に含まれる上記Liイオン伝導性材料の割合は、例えば10体積%〜100体積%の範囲内、中でも50体積%〜100体積%の範囲内であることが好ましい。特に、本発明においては、固体電解質層が上記Liイオン伝導性材料のみから構成されていることが好ましい。硫化水素発生量の少ないリチウム電池を得ることができるからである。固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。また、固体電解質層の形成方法としては、例えば、Liイオン伝導性材料を圧縮成形する方法等を挙げることができる。
また、本発明における電解質層は、電解液から構成される層であっても良い。電解液を用いることで、高出力なリチウム電池を得ることができる。この場合は、通常、正極活物質層および負極活物質層の少なくとも一方が、上述したLiイオン伝導性材料を含有することになる。また、電解液は、通常、リチウム塩および有機溶媒(非水溶媒)を含有する。リチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClO、LiAsF等の無機リチウム塩、およびLiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO等の有機リチウム塩等を挙げることができる。上記有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ブチレンカーボネート(BC)等を挙げることができる。
2.正極活物質層
次に、本発明における正極活物質層について説明する。本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つを含有していても良い。特に、本発明においては、正極活物質層が、上述したLiイオン伝導性材料を含有することが好ましい。硫化水素発生量の少ないリチウム電池を得ることができるからである。正極活物質層に含まれるLiイオン伝導性材料の割合は、リチウム電池の種類によって異なるものであるが、例えば0.1体積%〜80体積%の範囲内、中でも1体積%〜60体積%の範囲内、特に10体積%〜50体積%の範囲内であることが好ましい。また、正極活物質としては、例えばLiCoO、LiMnO、LiNiMn、LiVO、LiCrO、LiFePO、LiCoPO、LiNiO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等を挙げることができる。
本発明における正極活物質層は、さらに導電化材を含有していても良い。導電化材の添加により、正極活物質層の導電性を向上させることができる。導電化材としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。また、正極活物質層は、結着材を含有していても良い。結着材の種類としては、例えば、フッ素含有結着材等を挙げることができる。また、正極活物質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
3.負極活物質層
次に、本発明における負極活物質層について説明する。本発明における負極活物層は、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つを含有していても良い。特に、本発明においては、負極活物質層が、上述したLiイオン伝導性材料を含有することが好ましい。硫化水素発生量の少ないリチウム電池を得ることができるからである。負極活物質層に含まれるLiイオン伝導性材料の割合は、リチウム電池の種類によって異なるものであるが、例えば0.1体積%〜80体積%の範囲内、中でも1体積%〜60体積%の範囲内、特に10体積%〜50体積%の範囲内であることが好ましい。また、負極活物質としては、例えば金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。なお、負極活物質層に用いられる導電化材および結着材については、上述した正極活物質層における場合と同様である。また、負極活物質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内である。
4.その他の構成
本発明のリチウム電池は、上述した正極活物質層、電解質層および負極活物質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、リチウム電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的なリチウム電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。また、本発明のリチウム電池が全固体電池である場合、発電要素を絶縁リングの内部に形成しても良い。
5.リチウム電池
本発明のリチウム電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。本発明のリチウム電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
また、本発明のリチウム電池の製造方法は、上述したリチウム電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なリチウム電池の製造方法と同様の方法を用いることができる。例えば、本発明のリチウム電池が全固体電池である場合、その製造方法の一例としては、正極活物質層を構成する材料、固体電解質層を構成する材料、および負極活物質層を構成する材料を順次プレスすることにより、発電要素を作製し、この発電要素を電池ケースの内部に収納し、電池ケースをかしめる方法等を挙げることができる。また、本発明においては、上述したLiイオン伝導性材料を含有することを特徴とする、正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層をそれぞれ提供することもできる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例]
出発原料として、硫化リチウム(LiS)と五硫化リン(P)とを用いた。これらの粉末をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiS:P=75:25のモル比となるように秤量し、メノウ乳鉢で混合し、原料組成物1gを得た。次に、得られた原料組成物1gを45mlのジルコニアポットに投入し、さらにジルコニアボール(Φ10mm、10個)を投入し、ポットを完全に密閉した。このポットを遊星型ボールミル機に取り付け、台盤回転数370rpmで40時間メカニカルミリングを行い、硫化物固体電解質材料(75LiS・25Pガラス)を得た。次に、得られた硫化物固体電解質材料に、抑制材である酸化銅(CuO)を30重量%となるように添加し、メノウ乳鉢で混合することにより、Liイオン伝導性材料を得た。
[比較例1]
実施例で作製した硫化物固体電解質材料(75LiS・25Pガラス)を、比較用サンプルとして用意した。
[評価1]
(硫化水素発生量の測定)
実施例および比較例1で得られたサンプルを用いて、硫化水素発生量の測定を行った。硫化水素の発生量は以下のように測定した。すなわち、硫化物固体電解質材料の粉末を100mg秤量し、その粉末を密閉された1755ccのデシケータ(大気雰囲気、温度25℃、湿度50%)の中に入れ、硫化水素検知センサー(品番GX−2009、理研計器社製)によって硫化水素の発生量を測定した。その結果を図4に示す。図4に示されるように、実施例は、比較例1に比べて、硫化水素発生量が大きく減少することが確認された。
(X線回折測定)
実施例および比較例1で得られたサンプルを用いて、X線回折測定を行った。なお、X線回折測定は、上記の硫化水素発生量測定の前後のサンプルを用いた。また、硫化水素発生量の測定後のサンプルは吸湿していたため、真空乾燥した後に測定を行った。その結果を図5および図6に示す。図5に示されるように、実施例において、硫化水素測定前のサンプルでは、CuOのピークが確認された。また、硫化水素測定後のサンプルでは、CuPSおよびCuSが生成し、CuOが消失したことが確認された。一方、図6に示されるように、比較例1において、硫化水素測定後のサンプルでは、LiPOのピークが確認された。
(Li伝導度測定)
実施例および比較例1で得られたサンプルを用いて、Li伝導度測定を行った。Liイオン伝導度は以下のように測定した。すなわち、得られたサンプルの粉末をペレット化し、交流インピーダンス法によって室温でのLiイオン伝導度を測定した。その結果を以下に示す。
Figure 2011113720
表1に示されるように、CuOを含有するLiイオン伝導性材料は、CuOを含有しない比較用サンプルと同様に、10−4S/cm以上のLiイオン伝導度を有することが確認された。
[比較例2]
実施例で作製した硫化物固体電解質材料(75LiS・25Pガラス)に、水素よりもイオン化傾向の大きい金属元素の酸化物であるFeを30重量%となるように添加し、メノウ乳鉢で混合することにより、Liイオン伝導性材料を得た。
[評価2]
比較例2で得られたサンプルを用いて、X線回折測定を行った。なお、X線回折測定は、上記の硫化水素発生量測定の後のサンプルを用いた。また、硫化水素発生量の測定後のサンプルは吸湿していたため、真空乾燥した後に測定を行った。その結果を図7に示す。図7に示されるように、FeSのピークが確認された。このことから、Feを用いた場合は、実施例のようにPSユニットをトラップするのではなく、硫化水素をトラップしていることが確認された。
1 … 硫化物固体電解質材料
2 … 抑制材
10 … Liイオン伝導性材料
21 … 正極活物質層
22 … 負極活物質層
23 … 電解質層
30 … 発電要素

Claims (14)

  1. Li、第13族〜第15族の元素、およびSを含有し、かつ、MSユニット(Mは第13族〜第15族の元素であり、Sは硫黄元素であり、xはSがMに結合できる最大の数である)を含有する硫化物固体電解質材料と、
    前記硫化物固体電解質材料に接触し、水素よりもイオン化傾向の小さい金属元素を含有する抑制材と、
    を有することを特徴とするLiイオン伝導性材料。
  2. 前記抑制材の金属元素が、銅であることを特徴とする請求項1に記載のLiイオン伝導性材料。
  3. 前記抑制材が、酸化銅であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のLiイオン伝導性材料。
  4. 前記硫化物固体電解質材料が、架橋硫黄およびLiSを実質的に含有しないことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のLiイオン伝導性材料。
  5. 第13族〜第15族の元素がPであり、前記MSユニットはPSユニットであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のLiイオン伝導性材料。
  6. 前記硫化物固体電解質材料が、LiSおよびPを含有する原料組成物をガラス化してなるものであることを特徴とする請求項5に記載のLiイオン伝導性材料。
  7. 前記原料組成物に含まれる前記LiSおよび前記Pの割合が、モル換算で、LiS:P=70〜85:15〜30であることを特徴とする請求項6に記載のLiイオン伝導性材料。
  8. 第13族〜第15族の元素がGeであり、前記MSユニットはGeSユニットであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のLiイオン伝導性材料。
  9. 前記硫化物固体電解質材料が、LiSおよびGeSを含有する原料組成物をガラス化してなるものであることを特徴とする請求項8に記載のLiイオン伝導性材料。
  10. 前記原料組成物に含まれる前記LiSおよび前記GeSの割合が、モル換算で、LiS:GeS=50〜80:20〜50であることを特徴とする請求項9に記載のLiイオン伝導性材料。
  11. 第13族〜第15族の元素がSiであり、前記MSユニットはSiSユニットであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のLiイオン伝導性材料。
  12. 前記硫化物固体電解質材料が、LiSおよびSiSを含有する原料組成物をガラス化してなるものであることを特徴とする請求項11に記載のLiイオン伝導性材料。
  13. 前記原料組成物に含まれる前記LiSおよび前記SiSの割合が、モル換算で、LiS:SiS=50〜80:20〜50であることを特徴とする請求項12に記載のLiイオン伝導性材料。
  14. 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された電解質層と、を有するリチウム電池であって、
    前記正極活物質層、前記負極活物質層および前記電解質層の少なくとも一つが、請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に記載のLiイオン伝導性材料を含有することを特徴とするリチウム電池。
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