JP2009279806A - 積層板、積層板の製造方法および、表示装置用前面板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】耐衝撃性に優れるポリカーボネート樹脂層の少なくとも片面に高硬度な耐熱アクリル樹脂層を有し、更にその耐熱アクリル樹脂層上にハードコート層を配置、積層体や各層の厚みを特定の範囲に設定することにより、透明性、耐擦り傷性に優れ、かつ機械的強度や耐衝撃性も兼ね備えた積層板とする。
【選択図】なし
Description
一方、アクリル樹脂として透明性や硬度に優れた主鎖に環構造を有する耐熱アクリル樹脂が知られており、例えば特許文献2にはラクトン環構造を有するアクリル樹脂をポリカーボネート表面に積層してなる積層板が提案されている。しかしながら、この積層板構成では耐傷付き性に関しては十分な性能を有していなかったため、耐傷付き性と高い表面硬度が要求される表示装置用前面板などには用いられていなかった。
(イ)該積層板の全厚みが0.5〜2mm
(ロ)該耐熱アクリル樹脂層(B)の厚みが20〜200μm
(ハ)該ハードコート層(C)の厚みが2〜10μm
本発明はまた、耐熱アクリル樹脂層(B)、ポリカーボネート樹脂層(A)、耐熱アクリル樹脂層(B)がこの順序で配置された基材積層板(I)の少なくとも片面にハードコート層(C)を有する積層板であって、下記の条件を満足する積層板である。
(イ)該積層板の全厚みが0.5〜2mm
(ロ)該耐熱アクリル樹脂層(B)の厚みが20〜200μm
(ハ)該ハードコート層(C)の厚みが2〜10μm
本発明の積層板においては、下記の(1)〜(2)の条件を満たすことが望ましい。
(1)少なくとも片側の表面がJIS−K5400による鉛筆硬度が4H以上であること。
(2)#0000番のスチールウールを500g荷重で10回擦ったときに傷付きがない耐スチールウール性を有するであること。
前記耐熱アクリル樹脂層(B)が下記式(1)で示されるラクトン環構造を含有する樹脂からなることが好ましい。
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。)
本発明は、更に上記の積層板からなる透明かつ高硬度である表示装置用前面板に関する発明である。
(イ)該積層板の全厚みが0.5〜2mm
(ロ)該耐熱アクリル樹脂層(B)の厚みが20〜200μm
(ハ)該ハードコート層(C)の厚みが2〜10μm
本発明はまた、耐熱アクリル樹脂層(B)、ポリカーボネート樹脂層(A)、耐熱アクリル樹脂層(B)がこの順序で配置された基材積層板(I)の少なくとも片面にハードコート層(C)を有する積層板であって、下記の条件を満足する積層板である。
(イ)該積層板の全厚みが0.5〜2mm
(ロ)該耐熱アクリル樹脂層(B)の厚みが20〜200μm
(ハ)該ハードコート層(C)の厚みが2〜10μm
本発明の積層板においては、更に下記の(1)〜(2)の条件を満たすことが望ましい。
(1)少なくとも片側の表面がJIS−K5400による鉛筆硬度が4H以上であること。
(2)#0000番のスチールウールを500g荷重で10回擦ったときに傷付きがない耐スチールウール性を有するであること。
<ポリカーボネート樹脂層>
本発明におけるポリカーボネート樹脂層(A)に使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法または溶融法で反応させて得られるポリカーボネート樹脂を主成分として含有する。二価フェノールの代表的な例としては2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられ、なかでもビスフェノールAが好ましい。これらの二価フェノールは単独または2種以上を混合して使用できる。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で10,000〜50,000が好ましく、15,000〜35,000がより好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり好ましい。
ポリカーボネート樹脂のアイゾット衝撃強度(ASTM−D−256に準じた測定、ノッチ付き、厚さ3.2mm)が好ましくは10kJ/m2以上であり、さらに好ましくは20kJ/m2以上、より好ましくは30kJ/m2以上である。
かかるポリカーボネート樹脂を製造する際に、必要に応じて亜燐酸エステル、燐酸エステル、ホスホン酸エステル等の安定剤、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤、テトラブロムビスフェノールA、テトブロムビスフェノールAの低分子量ポリカーボネート、デカブロモジフェノール、トリス(ジブロムプロピル)ホスフェート、四臭化エチレン、酸化アンチモン、ジンクボレート等の難燃剤、後述する耐熱アクリル樹脂に使用可能な紫外線吸収剤、着色剤、アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性系の界面活性剤等の帯電防止剤、滑剤、無機顔料、有機顔料、染料等を添加することができる。これら添加剤の添加時期および添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜設定すればよい。
<耐熱アクリル樹脂層>
本発明にかかる耐熱アクリル樹脂層(B)の厚みは20〜200μmの範囲であり、好ましくは20〜150μmの範囲であり、更に好ましくは40〜120μmの範囲である。20μm未満であると、積層板の耐擦り傷性や鉛筆硬度が低下する場合があり、200μmを超えると積層板表面の耐衝撃性が劣ることがある。
具体的には、無水マレイン酸と(メタ)アクリレート共重合体、N−置換マレイミドフェニルマレイミドと(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリレート共重合体を分子内環化反応によりラクトン環構造を導入した所謂、ラクトン環重合体、(メタ)アクリレート共重合体を分子内環化反応によりグルタル酸無水物構造やグルタルイミド構造を導入した所謂、グルタル酸無水物ポリマーやグルタルイミドポリマー等が挙げられる。
ここで、ガラス転移温度とは、ポリマー分子がミクロブラウン運動を始める温度であり、各種の測定方法があるが、本発明においては、示差走査熱熱量計(DSC)によって、ASTM−D−3418に従って、中点法で求めた温度と定義する。ガラス転移温度が110℃以上あるアクリル樹脂は一般に当該業者の間では耐熱アクリル樹脂として認められる。
このように積層板中のアクリル樹脂を耐熱アクリル樹脂とすることにより、バランスのとれた透明性、表面硬度、耐衝撃性が得られる上に、耐熱性の向上も図れるため、温度の高い環境下でも積層板を好適に用いることができる。
上記(メタ)アクリレート単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられ、これらのうち1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上併存してもよい。中でも、重合して得られる樹脂が光学特性や熱安定性に優れる点でメタクリル酸メチルが最も好ましい。
本発明にかかる耐熱アクリル樹脂は、重量平均分子量が好ましくは1,000〜300,
000、より好ましくは5,000〜250,000、更に好ましくは10,000〜2
00,000、特に好ましくは、50,000〜200,000である。
上記、紫外線吸収性単量体の種類としては、ベンゾトリアゾール系化合物あるいはベンゾフェノン系化合物あるいはトリアジン系化合物と重合性不飽和基を有するアクリル系単量体が挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールなどを用いることができる。また、ベンゾフェノン系化合物としは、例えば、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノンなどを用いることができる。また、トリアジン系化合物としては、例えば,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジンなどを用いることができる。このような紫外線吸収性単量体を用いる場合には、全単量体の0.1〜25重量%共重合されることが好ましく、さらに好ましくは1〜15重量%共重合されることが好ましい。含有量が少ないと耐候性向上の寄与が低く、含有量が多すぎると耐熱水性、耐溶剤性が低下したり、黄変を引き起こす場合がある。
上記紫外線安定性単量体としては、ヒンダードアミン系化合物に重合性不飽和基が結合されたものを用いることができ、具体例としては、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。このような紫外線安定性単量体を用いる場合には、全単量体の0.1〜25重量%共重合されることが好ましく、さらに好ましくは1〜15重量%共重合されることが好ましい。含有量が少ないと耐候性向上の寄与が低く、含有量が多すぎると耐熱水性、耐溶剤性が低下したり、黄変を引き起こす場合がある。
上記、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、サリシケート系化合物、ベンゾエート系化合物、およびトリアゾール系化合物等が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジーヒドロキシベンゾフェノン、4−n−オクチルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノン)−ブタン等が挙げられる。サリシケート系化合物としては、p−t−ブチルフェニルサリシケート等が挙げられる。ベンゾエート系化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。また、トリアゾール系化合物としては、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9側鎖及び直鎖アルキルエステルが挙げられる。さらに、トリアジン系化合物としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス「2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル」−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン等が挙げられる。その中でも、耐熱アクリル樹脂と相溶性が高く吸収特性が優れている点から、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン骨格(アルキルオキシ;オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどの長鎖アルキルオキシ基)を有する紫外線吸収剤がより好ましく、下記式(2)で表される構造を有する紫外線吸収剤を主成分として含む紫外線吸収剤が特に好ましい。市販品としては、例えば、チヌビン477(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)などが挙げられる。
これらは単独で、または2種類以上の組み合わせて使用することができる。上記紫外線吸収剤の配合量は特に限定されないが、耐熱アクリル樹脂を主成分とする層中に0.01〜25重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜10重量%である。添加量が少なすぎると耐候性向上の寄与が低く、また多すぎると機械強度の低下や黄変を引き起こす場合がある。
本発明における耐熱アクリル樹脂を主成分とする層には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じ他の各種添加剤や、その他の樹脂を含有させておくことができる。但しその場合でも、本発明における耐熱アクリル樹脂を含有する層において、耐熱アクリル樹脂の占める割合は、50−100重量%の範囲が好ましく、75−100重量%の範囲がさらに好ましく、90−100重量%の範囲がより好ましい。
その他の樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの生分解性ポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール:ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド:ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン:ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;などが挙げられる。ゴム質重合体は、表面に本発明のラクトン環重合体と相溶し得る組成のグラフト部を有するのが好ましく、また、ゴム質重合体の平均粒子径は、押出しフィルム状とした際の透明性向上の観点から、100nm以下である事が好ましく、70nm以下である事が更に好ましい。
上記酸化防止剤は、公知の酸化防止剤が使用できる。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチル−α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシル−α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシル−α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコール−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミド−N,N−ビス−[エチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノ−N,N−ビス−[エチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル−7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコール−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリスリトール−テトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル−7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル−7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、3,9‐ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート^及び2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートが挙げられる。
本発明にかかる耐熱アクリル樹脂は、主鎖中に環構造を含有する重合体が好適であり、(メタ)アクレート共重合体を分子内環化反応によりラクトン環構造を導入した所謂、ラクトン環含有重合体を用いた場合が最も効を奏する。
主鎖中のラクトン環構造に関しては、4〜8員環でもよいが、構造の安定性から5〜6員環の方がより好ましく、6員環が更に好ましい。また、主鎖中のラクトン環構造が6員環である場合、一般式(1)や特開2004−168882号公報で表される構造などが挙げられるが、主鎖にラクトン環構造を導入する前の重合体を合成する上において重合収率が高い点や、ラクトン環構造の含有割合の高い重合体を得易い点、更にメタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルとの共重合性が良い点で、一般式(1)で表される構造であることが好ましい。
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。)
ラクトン環構造を含有する耐熱アクリル樹脂の製法は公知の製法を適用出来る。例えば、特開2006−96960号公報や特開2006−171464号公報や特開2007−63541号公報に記載の製造方法による製造が可能である。
<ハードコート層>
本発明において、ハードコート層(C)とは、JIS5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものをいう。また、本発明にあって、ハードコート層(C)はハードコートフィルム、ハードコート板、ハードコート膜等のいずれの形態をも包含するものである。ハードコート層の層厚(硬化時)は2〜10μmであり、好ましくは3〜8μm、更に好ましくは4〜7μmである。厚みが2μm未満では耐擦り傷性、鉛筆硬度が十分に発揮できない場合があり、10μmを超えるとハードコートの耐クラック性に劣ることがある。
活性エネルギー線を用いて硬化させるハードコート剤の一例としては、1官能あるいは多官能のアクリレートモノマーあるいはオリゴマー、3官能以上のウレタンアクリレート樹脂などの単独あるいは複数からなる樹脂組成物に硬化触媒として光重合開始剤が加えられた樹脂組成物が挙げられる。
熱硬化型樹脂としてはポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などのものが挙げられる。この様な樹脂組成物は、アクリル樹脂用ハードコート剤として市販されているものもあり、塗装ラインとの適正を加味し、適宜選択すれば良い。
これらのハードコート剤には、必要に応じて、有機溶剤の他、適切な単官能重合性モノマー、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などの各種安定剤やレベリング剤、消泡剤、増粘剤、易滑剤、帯電防止剤、防汚剤、防曇剤などの界面活性剤等を適宜添加してもよい。
また、ハードコート層の表面に各種コーティング層を設けることができ、帯電防止性、防汚性、すべり性、防眩性、反射防止性を付与することもできる。
<積層板>
本発明の積層板は、ポリカーボネート樹脂層(A)を含み、その片面もしくは両面に耐熱アクリル樹脂層(B)を有し、最表面の片側もしくは両面にハードコート層(C)を配する構成をとり、本来、その目的から、少なくともポリカーボネート樹脂(A)の片面には耐熱アクリル樹脂層(B)とハードコート層(C)をこの順序で配する必要がある。
具体的な積層板の構成としては、表面から、(C)/(B)/(A)、(C)/(B)/(A)/(C)、(C)/(B)/(A)/(B)、(C)/(B)/(A)/(B)/(C)である。(C)/(B)/(A)の構成は層数や厚みが最も少なく基本的な構成であるが、(C)/(B)/(A)/(B)、(C)/(B)/(A)/(B)/(C)の構成となった場合は、より対称的な構成となるため、成形時および、成形後に起こる積層体のソリが生じにくい。
上記耐熱アクリル樹脂層(B)の厚みは20〜200μmの範囲であり、好ましくは20〜150μmの範囲であり、更に好ましくは40〜120μmの範囲である。20μm未満であると、積層板の耐擦り傷性や鉛筆硬度が低下する場合があり、200μmを超えると積層板表面の耐衝撃性が劣ることがある。
上記ハードコート層(C)の厚みは2〜10μmであり、好ましくは3〜8μm、更に好ましくは4〜7μmである。厚みが2μm未満では耐擦り傷性、鉛筆硬度が十分に発揮できない場合があり、10μmを超えるとハードコートの耐クラック性に劣ることがある。
本発明における積層板の総厚みは0.5〜2mmであり、好ましくは0.7〜1.7mm、更に好ましくは0.8〜1.5mmである。総厚みが0.5mm未満であると保護板としての衝撃性や、剛性が保持できない恐れがあり、また、2mmを超えると光線透過率などの光学特性が劣る場合がある。
本発明の積層板においては、ASTM−D−1003に準じた方法で測定された全光線透過率が88%以上、さらに好ましくは90%、最も好ましくは92%であることが好ましい。全光線透過率は、透明性の目安であり、これが88%未満であると、透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できない場合がある。さらに、上記の透明性を有した積層板とする場合においては、ASTM−D−1003に準じた方法で測定された曇価が1.5%以下、好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。曇価は、透明性の目安であり、これが1.5%を越えると、透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できない場合がある。
また、本発明の積層板の光学的な均一性を確保するためには、基材積層板(I)表面の算術平均粗さRaが0.5μm以下であることが好ましく、更にこのましくは0.3μm以下、最も好ましくは0.2μm以下である。
本発明における積層板は表面硬度が、JIS−K5400で規定される鉛筆硬度が4H以上であり、好ましくは5H以上、更に好ましくは6H以上である。
本発明における積層板は耐スチールウール性を有する。耐スチールウール性とは、#0000番のスチールウールを一定荷重で10回擦ったときに傷付きがないことを言う。好ましくは、上記、荷重が700gで傷付きがないこと、より好ましくは荷重1000gで傷付きがないこと、さらに好ましくは荷重1500gで傷付きがないこと、最も好ましくは荷重2000gで傷付きがないことである。
本発明の積層板において、耐熱アクリル樹脂層(B)とハードコート層(C)の密着性はJIS K5600に基づくクロスカット法において、100マス目中、剥離しなかったマス目が95/100以上であることが好ましく、より好ましくは97/100以上であり、更に好ましくは99/100以上であり、最も好ましくは100/100で剥がれがないことである。
本発明の積層板中のポリカーボネート樹脂層(A)と、耐熱アクリル樹脂層(B)とを積層する方法としては、特に制限はなく、一般的な方法を採用することができる。例えば、各層を別々にシートあるいはフィルム化してから加熱して圧着する方法、少なくともいずれか一方の面にあらかじめ接着剤樹脂を塗布して接着する方法、押し出し機のダイ中において、上記ポリカーボネート樹脂と耐熱アクリル樹脂とを積層させてシートあるいはシート状のものを得る共押出成形法、耐熱アクリル樹脂をあらかじめ真空成形をおこなった後、基材となるポリカーボネート樹脂を射出成形するインモールド成形法などが挙げられる。コスト削減と生産性向上のためには、共押出成形する方法、インモールド成形法が好ましい。特にシート状、フィルム状の積層板を得る際に、コスト、生産性の点で、共押出成形法が好ましい。
上記ハードコート層の積層方法としては、上記ポリカーボネート樹脂層(A)と耐熱アクリル樹脂層(B)を積層後にハードコート層を形成する方法、または、耐熱アクリル樹脂層(B)にハードコート層を形成した後、ポリカーボネート樹脂層(A)と積層する方法などが可能である。ハードコート層の積層方法は特に制限がなく、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコート法などを用いることができる。
<積層体の成形方法>
本発明にかかる積層体の製造方法は、ポリカーボネート樹脂と耐熱アクリル樹脂を共押出して得られる該基材積層板(I)の少なくとも片面に該ハードコート層(C)を形成してなる製造方法が好ましい。
ポリカーボネート樹脂層(A)の少なくとも片面に耐熱アクリル樹脂層(B)を積層した基材積層板(I)は、次のような共押出しによって製造されることが好ましい。すなわち、ポリカーボネート樹脂を押出す一つの主押出機と、被覆層を構成するアクリル樹脂を押出す副押出機により構成され、通常副押出機は主押出機より小型のものが採用される。主押出機の温度条件は、通常230〜300℃、好ましくは250〜290℃であり、サブ押出機の温度条件は通常220〜290℃、好ましくは240〜280℃である。また、樹脂中の異物を除去するために押出機のTダイより上流側にメッシュやポリマーフィルタなどを設置することが好ましい。
積層板の外観、特にポリカーボネート樹脂層(A)と、耐熱アクリル樹脂層(B)の界面の平滑性を考慮するとマルチマニホールドダイがより好ましい。
成形ロールは3本で構成され、Tダイより共押出しされたシート状成形物はまず、第一ロールと第二ロールの間隙に導かれて、第二ロール表面に接触しながら第三ロールへ導かれる。続いて、シート状成形物が第二ロールと第三ロールの間隙を通過した後、第三ロール表面に接触しながら進み、成形が行われる。ロールは縦型ロールまたは、横型ロールを適宜使用することができる。
これらのロールの温度は通常80〜190℃、好ましくは90〜180℃である。また、第一ロールは弾性ロールであることがより好ましい。第一ロールを弾性ロールとすることにより、積層板(I)の表面平滑性、厚みムラが向上するためである。
また、第二ロールおよび第三ロールへのシート状成形物の接触時間を変える事により、第三ロールと接触する時間が第二ロールの接触時間に比べて少なくなるようにコントロールすることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂に比べて、耐熱アクリル樹脂のTgが低い場合や溶融粘度の違いにより、各ロールの温度コントロールだけでは成形安定性と、ソリやうねりなどの積層板(I)の外観を両立することが困難な場合があるためである。すなわち、シート状成形物が各ロールを通過するに従い冷却される過程で、表層樹脂である耐熱アクリル樹脂の冷却が不十分であるとロールへの巻き付きが起こり生産できない場合があり、逆に冷却しすぎると得たれた積層板のソリやうねりが生じる場合がある。
また、得られた基材積層板(I)は延伸することにより、強度を増すことが可能である。延伸される工程や時期は特に限定されないが、好ましくは共押出し成形工程上で、積層シート状成形物が形成されるのに続けて、延伸処理をおこなう方が、基材の温度コントロールや生産性に優れる。
本発明におけるハードコート層(C)の積層方法としては、ポリカーボネート樹脂と耐熱アクリル樹脂を共押出して得られる該基材積層板(I)の少なくとも片面に該ハードコート層(C)を形成してなる積層方法が好ましい。
ハードコート層の積層方法としては、樹脂層や基材積層板へハードコート剤を塗布、必要に応じて、乾燥・硬化する方法が好ましい。ハードコート剤の塗布方法については特に制限がなく、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコート法などを用いることができる。
密着性を向上させる目的でハードコート剤を塗布する前に、ポリカーボネート樹脂層(A)と耐熱アクリル樹脂層(B)が積層された基材(I)の片面もしくは両面に表面処理を施すことができる。表面処理の具体例としてはサンドブラスト法、溶剤処理法、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理、樹脂組成物によるプライマー処理などが上げられる
本発明におけるポリカーボネート樹脂層(A)、耐熱アクリル樹脂層(B)、およびハードコート層(C)の各材料は、フィルタ処理により濾過精製されることが好ましい。濾過精製した材料を用いて各層を成形、更に積層させることにより、異物や欠点の少ない積層体が得られる。濾過方法としては特に限定されず、溶融濾過、溶液濾過、あるいはそれらの組合せなどを用いることができる。
使用されるフィルタは特に限定されず、公知のものが使用でき、各材料の使用温度、粘度、濾過精度により適宜選択される。フィルタの濾材としては、特に限定はされないが、ポリプロピレン、コットン、ポリエステル、ビスコースレーヨン等、グラスファイバー等の不織布あるいはロービングヤーン巻物、フェノール樹脂含浸セルロース、金属繊維不織布焼結体、金属粉末焼結体、金網を複数枚積層したタイプ、あるいはそれらを組み合わせたハイブリッドタイプ等、いずれでも使用可能である。中でも耐熱性や耐久性、耐圧力性の観点から金属繊維不織布を焼結したタイプが好ましい。
濾過精度は、使用されるポリカーボネート樹脂、耐熱アクリル樹脂に関しては50μm以下、好ましくは30μm以下、更に好ましくは10μm以下、最も好ましくは5μm以下である。また、ハードコート剤の濾過精度は、積層板の最表面にくることから、20μm以下、好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、最も好ましくは3μm以下である。
ポリカーボネート樹脂層(A)、耐熱アクリル樹脂層(B)の各材料の濾過については例えば熱可塑性樹脂の溶融濾過に用いられているポリマーフィルタで処理することが好ましい。ポリマーフィルタは、その構造によって、リーフディスクフィルタ、キャンドルフィルタ、パックディスクフィルタ、円筒型フィルタなどに分類できるが、中でも有効濾過面積が高いリーフディスクフィルタが好適である。
<用途>
本発明の積層板は、光学特性、高い表面硬度(耐擦り傷性)、機械的強度や耐衝撃性とを兼ね備えたものであるので、自動販売機カバーや照明カバー等のカバー類、看板、道路透光板、防音壁、採光板、道路シェルター、カーポート等の土木建築材料類、建築用グレージング材、各種車両用グレージング材、バスタブ材料類、自動車用内装部品、ガーニッシュ等の車両外装類、各種家庭用品用シート、食品や医薬品等の包装材料等に好適に使用することができる。また、液晶ディスプレー、有機ELディスプレー、プラズマディスプレーの表示装置用前面板として使用することができ、特にパソコン、ゲーム機、PDA、携帯端末機器に使用される液晶ディスプレーや有機ELディスプレー等に好適に用いることができる。
ものではない。実施例、比較例中の各種物性の測定及び評価は以下の方法で行った。
<鉛筆硬度>
JIS K5400に準拠し、750g荷重でサンプル(ハードコート層が積層されている場合はハードコート層側の面)に対して測定を行った。
<耐擦傷性>
#0000番のスチールウールを一定荷重でサンプル(ハードコート層が積層されている場合はハードコート層側の面)に押しつけ、ストローク幅25mm、30mm/secで所定回数往復摩擦したあとの表面を目視で観察し、Aは傷が0本、Bは傷が1〜10本、Cは傷が11本以上、に分類して評価した。スチールウールは直径約10mmにまとめ、表面が均一になるようにカット、摩擦して均したものを使用した。
<ハードコート層の密着性>
JIS K5600に準拠し、剥離しなかったマス目の数を数えた。
<表面粗さ>
JIS K5400に規定される算術平均粗さRaを求めた。測定はレーザー顕微鏡(キーエンス社製 VK−9700)を用い、50μm四方以上の面積から求めた。ハードコート層が積層されている場合はハードコート層側の面で測定した。
<全光線透過率>
ASTM−D−1003に準じた方法で測定した。
<曇価>
ASTM−D−1003に準じた方法で測定した。
<ガラス転移温度>
樹脂の熱分析は、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50cc/minの条件で、DSC((株)リガク社製、装置名:DSC−8230)を用いて行った。なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に従い、中点法により求めた。
<ダイナミックTG>
樹脂(もしくは重合体溶液あるいはペレット)を一旦テトラヒドロフランに溶解もしくは希釈し、過剰のヘキサンもしくはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mmHg(1.33hPa)、80℃、3時間以上)することによって揮発成分などを除去し、得られた白色固形状の樹脂を以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
測定装置:Thermo Plus2 TG−8120 Dynamic TG((株)リガク社製)
測定条件:試料量 5〜10mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素フロー 200ml/min
方法:階段状等温制御法(60℃〜500℃の間で重量減少速度値0.005%/sec以下で制御)
<重合体中の揮発分測定>
樹脂中に含まれる残存揮発分量は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、装置名:GC−14A)を用いて測定を行った。
<異物数の測定>
成形品を20wt%となるように精製されたクロロホルム溶液に溶解し、直径47mm、濾過精度1μのテフロンフィルターで吸引を行い、テフロンフィルター上に残存する異物を顕微鏡下目視で計測した。20μm以上の異物とは、異物の最も大きな径が20μm以上である異物を意味するものである。
[製造例1](耐熱アクリル樹脂の製造1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた容量30Lの釜型反応器に、8,000gのメタクリル酸メチル(MMA)、2,000gの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10,000gのトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、重合開始剤として10.0gのt−アミルパーオキシイソノナノエート(ルパゾール570、アトフィナ吉富(株)製)を添加すると同時に、20.0gのt−アミルパーオキシイソノナノエートと100gのトルエンとからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下、約105〜110℃で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
[製造例2](耐熱アクリル樹脂の製造2)
製造例1の重合体溶液(a−1)を脱揮処理行うと同時にポリマーフィルタ処理を行う際、第三フォアベントと第四フォアベントとの中間で、紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製、チヌビン477)を、得られる熱可塑性樹脂組成物に対して重量比で1.6重量%となるように注入した以外は製造例1と同様の操作を行い、主鎖にラクトン環構造を含有する耐熱アクリル樹脂(b−2)のペレットを得た。得られた耐熱アクリル樹脂(b−2)のガラス転移温度は128℃であり、異物の数は4個/100gであった。また、耐熱アクリル樹脂(b−2)中に含まれるメタクリル酸メチル(残存揮発分)量は、980ppm(重量換算)であり、ダイナミックTG測定での質量減少は0.19質量%であった。
[製造例3](紫外線硬化樹脂塗料の製造)
攪拌羽根と温調ジャケットを備えた混合溶解槽に、トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート(第一工業製薬(株)製、GX8430)60部、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、215D)40部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ビー・エー・エス・エフ ジャパン(株)製、APO)1部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製、I−184)0.3部および2−(ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製、チヌビン−PS)1部を導入し、40℃で1時間攪拌して紫外線硬化塗料(c−3)を調製した。
[製造例4](熱硬化樹脂塗料の製造)
メチルトリメトキシシラン100重量部に、酢酸1部を混合した後、氷浴で冷却し攪拌を行いながら温度を0〜10℃に保持し、次いでスノーテックス30(商品名:日産化学工業(株)製、コロイダルシリカ30wt%、平均粒径10〜20nm)84部を滴下した。滴下後、温度を10℃に保持し4時間攪拌を行った後、更にスノーテックスIBA−ST(商品名:日産化学工業(株)製、コロイダルシリカ25〜26wt%、平均粒子径10〜20nm)84部を滴下し、20℃で50時間攪拌を継続し熟成を行った。次に、酢酸セロソルブ45部、イソブチルアルコール50部及びKP−341(商品名:信越化学工業(株)製、ポリオキシアルキレングリコールジメチルシロキサン共重合体)0.02部を室温下で1時間かけて滴下混合し、更に硬化触媒としてテトラメチルアンモニウムアセテートを0.02部を室温下で1時間かけて滴下混合し塗料を調製した。調製後、紫外線吸収剤として2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンを塗料中の樹脂分100部に対して10部添加し熱硬化樹脂塗料(c−4)を完成させた。
(実施例1)
ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、パンライトL1225Z100)の押出しには、バレル直径65mm、スクリュウのL/D=32の単軸押出機(主押出機)を使用し、シリンダー温度270℃に設定した。また、被覆層を形成する耐熱アクリル樹脂(製造例1、b−1)の押出しには、バレル直径32mm、スクリュウのL/D=32の単軸押出機(副押出機)を使用し、シリンダー温度は270℃に設定した。主押出機と副押出機の吐出量比は主/副=7/1となるように設定した。マルチマニホールドダイを使用し、2種類の樹脂を同時に溶融共押出しすることによってポリカーボネート樹脂層(A−1)の両面に耐熱アクリル樹脂層(B−1)を積層した基材積層体(I−1)を製造した。ダイ内で積層一体化された樹脂は、鏡面仕上げされた横型配置の3本のポリッシングロールで冷却した。ロール温度は、1番ロール温度105℃、2番ロール温度95℃、3番ロール温度120℃に設定した。最初に1番ロールと2番ロールの隙間でバンクを形成した後、2番、3番ロールを通過させ、4m/分の速度で引き取り積層板を成型した。
縦300mm、横200mmに切断した基材積層体(I−1)の片面にバーコーターを用いて製造例3の紫外線硬化樹脂塗料(c−3)を塗布した。高圧水銀灯で250mJ/cm2の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂塗料を硬化させ、ハードコート付き積層板(D−1)を得た。得られた積層板(D−1)の全厚みは0.81mm、両表面の耐熱アクリル樹脂層(B−1)の厚みは52μmおよび49μm、ハードコート層(C−1)の厚みは6μmであった。製造された積層体の評価結果を表1に示した。
(実施例2)
主押出機と副押出機の吐出量比を、主/副=6/2に調節した以外は、実施例1と同様に、ポリカーボネート樹脂層(A−2)の両面に耐熱アクリル樹脂層(B−2)を積層した基材積層体(I−2)を成型した。縦300mm、横200mmに切断した基材積層板(I−2)の片面にバーコーターを用いて製造例4の熱硬化樹脂塗料(c−4)を塗布した。室温下で15分間風乾した後、125℃の熱風乾燥機内で120分間硬化させ、ハードコート付き積層板(D−2)を得た。得られた積層板(D−2)は全厚みが0.79mm、両表面の耐熱アクリル樹脂層(B−1)の厚みは102μmおよび96μm、ハードコート層(C−2)の厚みは5μmであった。製造された積層体の評価結果を表1に示した。
(実施例3)
製造例2で得られた耐熱アクリル樹脂(b−2)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂層(A−3)の両面に耐熱アクリル樹脂層(B−3)を積層した基材積層板(I−3)を成型した。縦300mm、横200mmに切断した基材積層板(I−3)の片面にバーコーターを用いて製造例3の紫外線硬化樹脂塗料(c−3)を塗布した。高圧水銀灯で250mJ/cm2の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂塗料を硬化させ、ハードコート付き積層板(D−3)を得た。得られた積層板(D−3)は全厚みが0.78mm、両表面の耐熱アクリル樹脂層(B−3)の厚みは51μmおよび47μm、ハードコート層(C−3)の厚みは7μmであったであった。製造された積層体の評価結果を表1に示した。
(比較例1)
被覆層を形成する樹脂に一般のアクリル樹脂(住友化学(株)製 スミペックスEX、Tg:108℃)を用い、副押出機のバレル温度を260℃、ポリッシングロールの温度を1番ロール温度105℃、2番ロール温度95℃、3番ロール温度100℃に設定した以外は実施例1と同様に、ポリカーボネート樹脂層(A−4)の両面にアクリル樹脂層(B−4)を積層した基材積層板(I−4)を成型した。縦300mm、横200mmに切断した基材積層板(I−4)の片面にバーコーターを用いて製造例3の紫外線硬化樹脂塗料(c−3)を塗布した。高圧水銀灯で250mJ/cm2の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂塗料を硬化させ、ハードコート付き積層板(D−4)を得た。得られた積層板(D−4)は全厚みが0.82mm、両表面のアクリル樹脂層(B−4)の厚みは54μmおよび50μm、ハードコート層(C−4)の厚みは6μmであった。製造された積層体の評価結果を表1に示した。
2種類の樹脂を同時に溶融押出し、積層するためにフィードブロックを使用した以外は実施例1と同様に、ポリカーボネート樹脂の両面に耐熱アクリル樹脂(製造例1、b−1)を積層した。得られた基材積層板(I−5)は全厚みが0.82mm、両表面の耐熱アクリル樹脂層(B−5)の厚みは50μmおよび44μmであった。反射光により観察すると、外観上好ましくない波模様が観察された。この様な波模様は、マルチマニホールドダイを用いて積層した実施例1で製造した基材積層板(I−1)には観察されなかった。レーザー顕微鏡による最表面の観察では、基材積層板(I−1)と基材積層板(I−5)の違いが確認出来なかった事から、波模様はポリカーボネート層と耐熱アクリル層の間に発生していると考えられた。
(比較例3)
実施例3において、ハードコート層が無い基材積層板(I−3)を評価した。評価結果を表1に示す。
(実施例4)
主押出機と副押出機の吐出量比は主/副=7/1となるように設定し、マルチマニホールドダイの構成を2層用に変更して、2種類の樹脂を同時に溶融共押出しすることによってポリカーボネート樹脂層(A−1)の片面に耐熱アクリル樹脂層(B−1)を積層した基材積層体(I−6)を製造した。ダイ内で積層一体化された樹脂は、鏡面仕上げされた横型配置の3本のポリッシングロールで冷却した。最初に1番ロールと2番ロールの隙間でバンクを形成した後、2番、3番ロールを通過させ、4m/分の速度で引き取り積層板を成型した。
縦300mm、横200mmに切断した基材積層体(I−6)の片面にバーコーターを用いて製造例3の紫外線硬化樹脂塗料(c−3)を塗布した。高圧水銀灯で250mJ/cm2の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂塗料を硬化させ、ハードコート付き積層板(D−1)を得た。得られた積層板(D−6)の全厚みは0.81mm、表面の耐熱アクリル樹脂層(B−1)の厚みは94μm、ハードコート層(C−6)の厚みは7μmであった。製造された積層体の評価結果を表1に示した。
Claims (6)
- ポリカーボネート樹脂層(A)と耐熱アクリル樹脂層(B)からなる基材積層板(I)の該耐熱アクリル樹脂層(B)側の面または両面にハードコート層(C)を有する積層板であって、下記の条件を満足する積層板。
(イ)該積層板の全厚みが0.5〜2mm
(ロ)該耐熱アクリル樹脂層(B)の厚みが20〜200μm
(ハ)該ハードコート層(C)の厚みが2〜10μm
- 耐熱アクリル樹脂層(B)、ポリカーボネート樹脂層(A)、耐熱アクリル樹脂層(B)がこの順序で配置された基材積層板(I)の少なくとも片面にハードコート層(C)を有する積層板であって、下記の条件を満足する積層板。
(イ)該積層板の全厚みが0.5〜2mm
(ロ)該耐熱アクリル樹脂層(B)の厚みが20〜200μm
(ハ)該ハードコート層(C)の厚みが2〜10μm
- 少なくとも片側の表面がJIS−K5400による鉛筆硬度が4H以上および、#0000番のスチールウールを500g荷重で10回擦ったときに傷付きがない耐スチールウール性を有する請求項1または2に記載の積層板。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層板を製造する方法であって、ポリカーボネート樹脂と耐熱アクリル樹脂を共押出して得られる該基材積層板(I)の少なくとも片面に該ハードコート層(C)を形成してなる積層板の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層板からなる表示装置用前面板。
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