本発明の積層フィルムの製造方法は、
脂環式構造含有重合体を含む脂環式構造含有重合体フィルム層、又は(メタ)アクリル系樹脂を含む(メタ)アクリル系樹脂フィルム層(以下において、両者を含めてフィルム層(A)と称することがある。)をその少なくとも一方の最表面に有する基材フィルムの前記フィルム層(A)の表面に、
酸構造含有水系ウレタン樹脂に含まれる酸構造の少なくとも一部を不揮発性塩基により中和してなる水系ウレタン樹脂(以下において、中和処理後水系ウレタン樹脂と称することがある。)を含む水分散体を、塗布する工程を含むことを特徴とする。
基材フィルムは、脂環式構造含有重合体フィルム層又は(メタ)アクリル系樹脂フィルム層のみにより形成されていても良いし、複数のフィルムが積層されて形成されていても良い。基材フィルムが複数のフィルムにより形成されている場合には、少なくとも1つのフィルムが積層されて成るフィルム層(B)における、少なくとも片面にフィルム層(A)が設けられていれば良く、フィルム層(B)の両面にフィルム層(A)が設けられることにより形成されていても良い。ウレタン樹脂層は、フィルム層(A)が形成されている面上に設けられている。
フィルム層(B)は、一種のフィルムであることもあり、また二種以上のフィルムが積層されていることもある。このフィルム層(B)が複数のフィルムを積層して成る場合、各層を形成するフィルムは、本発明の積層フィルムに要求される性能に応じて、各種機能を有するフィルムが適宜選択される。フィルム層(B)の材質としては特に制限されるものではないが、例えばフィルム層(A)と樹脂特性が異なる脂環式構造含有重合体、ポリエチレンやポリプロピレン等の鎖状オレフィン系重合体、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、アクリル系重合体、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
フィルム層(A)は、脂環式構造含有重合体又は(メタ)アクリル系樹脂を含む。
脂環式構造含有重合体は、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を有するものであり、主鎖中に脂環式構造を有する重合体及び側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれをも用いることができる。脂環式構造としては、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性が高度にバランスされ、好適である。本発明に使用される脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると脂環式構造含有重合体フィルム層の透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造含有重合体としては、例えば、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系樹脂は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体又はそれらの水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体又はそれらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に(共)重合することにより得ることができる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンなどが挙げられる。これらの単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。
ノルボルネン系樹脂の中でも、繰り返し単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの繰り返し単位の含有量が、ノルボルネン系樹脂の繰り返し単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの含有割合とYの含有割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような樹脂を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れる光学フィルムを得ることができる。
単環の環状オレフィン系樹脂としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン系重合体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体; シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4 −付加重合体;およびこれらの水素化物を挙げることができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素化してなる水素化物;ビニル脂環式炭化水素系モノマーまたはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体またはブロック共重合体等の共重合体の芳香環の水素化物;等を挙げることができる。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロックまたはそれ以上のマルチブロック、傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
本発明に用いる脂環式構造含有重合体として、水素化物を用いる場合の水素化方法は、特段の制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。水素化物を得るには、重合体の溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、通常−10〜+250℃ 、好ましくは0〜200℃の反応系に水素を、0.01〜10MPa、好ましくは0.05〜8MPaの圧力で導入して、0.1〜50時間反応させる。水素化率は、通常50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。水素化率が大きいほど、重合体の流動性や耐熱性に優れる。
本発明に用いる脂環式構造含有重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを、また重合体樹脂が溶解しない場合にはトルエンを用いるゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000〜100,000、好ましくは15,000〜80,000、より好ましくは20,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、積層フィルムの機械的強度および成型加工性とが高度にバランスされ好適である。
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは130〜150℃、より好ましくは135〜145℃の範囲である。ガラス転移温度が130℃を下回ると高温下における耐久性が悪化し、150℃を上回るものは耐久性は向上するが通常の延伸加工が困難となる。
脂環式構造含有重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は1.2〜3.5、好ましくは1.5〜3.0、さらに好ましくは1.8〜2.7である。この数値が3.5を超えると低分子成分が増すため緩和時間の短い成分が増加し、一見同じ面内レターデーションReを有する脂環式構造含有重合体フィルム層であっても高温暴露時の緩和が短時間で大きくなってしまうことが推定され、脂環式構造含有重合体フィルム層の安定性が低下するおそれがある。一方、1.2を下回るような分子量分布のものは樹脂の生産性の低下とコスト増につながりディスプレイ部材としては現実的でない。
本発明に用いる脂環式構造含有重合体は、光弾性係数の絶対値が10×10−12Pa−1以下であることが好ましく、7×10−12Pa−1以下であることがより好ましく、4×10−12Pa−1以下であることが特に好ましい。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、
C=Δn/σ
で表される値である。脂環式構造含有重合体の光弾性係数が10×10−12Pa−1を超えると、脂環式構造含有重合体フィルム層の面内レターデーショReのバラツキが大きくなるおそれがある。
本発明に用いる脂環式構造含有重合体には、実質的に粒子を含まないことが好ましい。ここで、実質的に粒子を含まないとは、脂環式構造含有重合体フィルム層へ粒子を添加しても、未添加状態からのヘイズの上昇巾が0.05%以下の範囲である量までは許容できることを意味する。特に、脂環式構造含有重合体は、多くの有機粒子や無機粒子との親和性に欠けるため、上記範囲を超えた量の粒子を添加した脂環式構造含有重合体フィルム層を延伸すると、空隙が発生しやすく、その結果として、ヘイズの著しい低下が生じるおそれがある。
本発明の脂環式構造含有重合体の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が上記範囲であると、本発明における脂環式構造含有重合体フィルム層のReやRthの経時変化を小さくすることができ、さらには脂環式構造含有重合体フィルム層を備える偏光板や液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。飽和吸水率は、試験片を一定温度の水中に一定時間、浸漬し、増加した質量の浸漬前の試験片質量に対する百分率で表される値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。本発明の脂環式構造含有重合体における飽和吸水率は、例えば脂環式構造含有重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記値に調節することができるが、好ましくは、極性基を持たない樹脂であることが望まれる。
本発明に用いる脂環式構造含有重合体には、顔料や染料のごとき着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐電防止剤、酸化防止剤、滑剤などの公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で添加してもよい。
脂環式構造含有重合体フィルム層は、その製法によって特に制限されない。脂環式構造含有重合体フィルム層は、前述の樹脂等を公知のフィルム成形法で成形することによって得られる。フィルム成形法としては、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶剤を使用しない溶融押出法の方が、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法等が挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
基材フィルムが脂環式構造含有重合体フィルム層とフィルム層(B)との複数のフィルムにより形成されている場合には、基材フィルムは、製造された脂環式構造含有重合体フィルム層と製造されたフィルム層(B)とを接着剤を用いて貼り合わせて製造しても良いし、接着剤を用いずに共押出法などにより製造しても良い。
接着剤を用いて貼り合わせる場合には、接着剤は、脂環式構造含有重合体フィルム層及びフィルム層(B)を形成する樹脂の種類により適宜選択すればよく、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、変性ポリオレフィン系接着剤、ポリビニルアルキルエーテル系接着剤、ゴム系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、塩化ビニル−酢酸ビニル系接着剤、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)系接着剤、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)系接着剤、エチレン−スチレン共重合体などのエチレン系接着剤、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル系接着剤などが挙げられる。
前記接着剤で形成される接着層の平均厚みは、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmであるのがより好ましい。
接着剤を使用せずに基材フィルムを製造する場合は、好ましくは、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形法;ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形法、及びフィルム層(B)の表面に脂環式構造含有重合体フィルム層を構成する樹脂溶液をコーティングするようなコーティング成形法などの公知の方法が適宜利用され得る。これらの中でも、製造効率や、基材フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出成形法が好ましい。
共押出成形法の中でも、共押出Tダイ法が好ましい。さらに共押出Tダイ法にはフィードブロック方式、マルチマニホールド方式が挙げられるが、各フィルム層の厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式がさらに好ましい。
本発明に用いる脂環式構造含有重合体フィルム層は、延伸されていない未延伸フィルムを延伸処理することにより延伸フィルム(以下において、延伸フィルム層(A)と称することもある。)としてもよい。
本発明に用いる延伸フィルム層(A)を得るための脂環式構造含有重合体フィルム層の延伸方法は、特に制限されず、一軸延伸法、二軸延伸法のいずれで延伸したものであってもよい。延伸処理する方法としては、ロール側の周速の差を利用して縦方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて横方向に一軸延伸する方法等の一軸延伸法;固定するクリップの間隔を開いての縦方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により横方向に延伸する同時二軸延伸法や、ロール間の周速の差を利用して縦方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;横又は縦方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いてフィルムの幅方向に対して任意の角度θの方向に連続的に斜め延伸する方法;などが挙げられる。
延伸に用いる装置として、例えば、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。
延伸時の温度は、未延伸の脂環式構造含有重合体フィルム層を構成する材料のガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくは(Tg−30℃)と(Tg+60℃)の間、より好ましくは(Tg−10℃)と(Tg+50℃)の間の温度から選択される。
延伸倍率は、使用する延伸フィルム層(A)の光学特性に応じて、適宜選択すればよく、1.05〜10.0、好ましくは、1.1〜2.0である。
(メタ)アクリル系樹脂としては、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂などが挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂が、熱可塑性樹脂の場合には、熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体樹脂が好ましく用いられる。この重合体樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルのみからなる単独重合体でも共重合体でもよく、また、(メタ)アクリル酸エステルとこれと共重合可能な単量体との共重合体であっても良い。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、又はメタクリル酸を意味する。同様に、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステルを意味する。
(メタ)アクリル系樹脂の主成分を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜15のアルカノール及びシクロアルカノールから誘導される構造のものが好ましい。より好ましくは、炭素数1〜8のアルカノールから誘導される構造のものである。炭素数が多すぎる場合は、得られる脆質フィルムの破断時の伸びが大きくなりすぎる。
この(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ドデシルなどを挙げることができる。
また、これらの(メタ)アクリル酸エステルは、水酸基、ハロゲン原子等の任意の置換基を有していてもよい。そのような置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明に使用する(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が、好ましくは50重量%以上、より好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上のものである。
(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体には、特に限定はないが、上述した(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、さらに、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体、シアン化ビニル単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、オレフィン単量体などを挙げることができる。
上述した(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどを挙げることができる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、モノカルボン酸、多価カルボン酸、多価カルボン酸の部分エステル及び多価カルボン酸無水物のいずれでもよく、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などを挙げることができる。
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどを挙げることができる。非共役ジエン単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどを挙げることができる。
シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどを挙げることができる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体の具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどを挙げることができる。カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどを挙げることができる。オレフィン単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどを挙げることができる。
(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体としては、アルケニル芳香族単量体が好ましく、なかでもスチレンが好ましい。
本発明において使用する(メタ)アクリル系樹脂において、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体の単量体単位の含有量は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
本発明において使用する(メタ)アクリル系樹脂の好ましい具体例としては、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン/アクリル酸ブチル共重合体などを挙げることができる。(メタ)アクリル系樹脂は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。本発明では、これらのうち、ポリメタクリレート樹脂が好ましく、中でもポリメチルメタクリレート樹脂がより好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂の分子量は、特に限定されないが、通常、重量平均分子量で50,000〜500,000である。分子量がこの範囲内にあると、均質な(メタ)アクリル系樹脂フィルム層を溶融流延法により容易に作ることができる。
本発明において使用する(メタ)アクリル系樹脂は、引張試験における破断時伸びが10〜180%の範囲内にあるのが好ましく、50〜170%の範囲内にあるのがより好ましい。破断時伸びが上記範囲内にあるときに、脆質フィルムのカス上げ性が良好となる。(メタ)アクリル系樹脂として2種類以上を併用するときは、混合物の破断時伸びが前記範囲内にあることが好ましい。破断時伸びは、JIS K 7127の規定により、試験片タイプ1B(W10,L100,t0.1mm)、速度5mm/分の条件で求められた値である。
熱可塑性の(メタ)アクリル系樹脂フィルム層は、その製法によって特に制限されない。熱可塑性のアクリル系樹脂フィルム層は、前述の脂環式構造含有重合体フィルム層と同様のフィルム成形法で成形することによって得られる。また、基材フィルムが(メタ)アクリル系樹脂フィルム層とフィルム層(B)との複数のフィルムにより形成されている場合には、基材フィルムは、製造された(メタ)アクリル系樹脂フィルム層と製造されたフィルム層(B)とを接着剤を用いて貼り合わせて製造しても良いし、接着剤を用いずに共押出法などにより製造しても良い。基材フィルムが複数のフィルムにより形成されている場合は、脂環式構造含有重合体フィルム層の場合と同様に、前述したフィルム成形法で成形することによって基材フィルムが得られる。
(メタ)アクリル系樹脂が紫外線硬化型樹脂である場合には、紫外線硬化型樹脂成分としては、後述するウレタン樹脂層との親和性のある、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系などの紫外線硬化型樹脂成分が好ましい。
また、本発明で用いる好適な紫外線硬化型樹脂成分としては、分子中に重合性不飽和結合またはエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー及び/又はモノマーを含み、紫外線の照射により硬化する樹脂が挙げられる。分子中に重合性不飽和結合またはエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマーの例としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類、もしくはカチオン重合型エポキシ化合物が挙げられる。
分子中に重合性不飽和結合またはエポキシ基を有するモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸-2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸-2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸-2-(N,N-ジベンジルアミノ)メチル、アクリル酸-2-(N,N-ジエチルアミノ)プロピル等の不飽和置換の置換アミノアルコールエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド類;エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2-ヒドロキシアクリレート、2-ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクレリート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の多官能性アクリレート類;トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等の、分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール類;グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、グリシジルフェニルエーテル、グリシジルエチルエーテル、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物が挙げられる。
本発明においては、これらのプレポリマー、オリゴマー及び/またはモノマーを一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いる紫外線硬化型樹脂成分中の前記プレポリマー、オリゴマー及び/又はモノマーの含有量は、優れた塗工適性が得られる観点から、5重量%〜95重量%が好ましい。本発明で用いる好適な紫外線硬化型樹脂成分には、光重合開始剤や光重合促進剤が含有されている。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾインエーテル類、オキシムエステル類等のラジカル重合性開始剤;芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等のカチオン重合性開始剤;等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化型樹脂成分中に、通常、0.1重量%〜10重量%である。
紫外線硬化型樹脂成分は、必要に応じて、溶液にして塗布することもできる。ここで、溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジアセトングリコール、プロプレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メチルエチルケトオキシム等のオキシム類;及びこれらの2種以上からなる組み合わせ;等が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂フィルム層に補助的に各種の機能を付加するために、紫外線硬化型樹脂成分に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤、滑剤、界面活性剤等を混合してもよい。
紫外線硬化型樹脂成分をフィルム層(B)上に塗布する方法は特に限定されず、公知の塗布法を採用することができる。具体的な塗布法としては、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法等が挙げられる。紫外線硬化型樹脂成分の塗布量は特に限定されないが、硬化後の厚みとして、通常0.05〜50μm、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmとなる量が好ましい。
本発明に用いるフィルム層(B)は、片面又は両面に表面改質処理を施したものを使用することが好ましい。表面改質処理を行うことにより、(メタ)アクリル系樹脂フィルム層との密着性を向上させることができる。表面改質処理としては、エネルギー線照射処理や薬品処理等が挙げられる。エネルギー線照射処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等が挙げられる。処理効率の点等から、コロナ処理、プラズマ処理が好ましく、コロナ処理が特に好ましい。薬品処理としては、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸等の酸化剤水溶液中に浸漬し、その後、水で洗浄する方法が挙げられる。
紫外線照射装置により照射する紫外線は、通常100〜400nmの波長を持つものであれば良い。該ランプの出力値は、通常120〜240wであり、好ましくは、160〜200wである。紫外線の照射量は、紫外線照射対象物に対して、紫外線の積算光量の総量で表記すると、好ましくは100〜2,000mJ/cm2、より好ましくは、200〜1,500mJ/cm2、最も好ましくは、300〜1,000mJ/cm2である。積算光量の総量は、紫外線照射ランプの照度とライン速度(フィルムの移動速度)によって決まる値であり、例えば、紫外線積算照度計(アイグラフィック(株)製:EYEUV METER UVPF-A1)で測定する。
紫外線照射は、不活性ガス雰囲気中、例えば酸素濃度が500ppm以下、好ましくは100ppm以下に抑えた窒素ガス雰囲気中で行うことが望ましい。不活性ガス雰囲気中で紫外線照射を行う場合、大気中での紫外線硬化型樹脂成分の硬化に比べて光重合開始剤を大幅に減量でき、耐候性に優れた(メタ)アクリル系樹脂フィルム層を設計することが可能である。また、光重合開始剤は一般に高価なためこの使用量を減らすことはコストダウンにも有効である。
また、本発明においては、フィルム層(B)にプライマー層を形成してから紫外線硬化型樹脂成分を塗布してもよい。これにより、さらに(メタ)アクリル系樹脂フィルム層の密着性を向上できる場合がある。プライマー層を構成する材料としては、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、主鎖に炭化水素骨格および/またはポリブタジエン骨格を有する樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ゴム、環化ゴム又はこれらの重合体に極性基を導入した変性物が挙げられる。プライマー層の厚みは、特に制限されず、通常0.3〜5μm、好ましくは0.5〜2μmである。
本発明に用いるフィルム層(A)は、1mm厚換算での全光線透過率が80%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、全光線透過率が90%以上である。また、本発明に用いるフィルム層(A)は、1mm厚でのヘイズが0.3%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、ヘイズが0.2%以下である。ヘイズが0.3%を超えると、フィルム層(A)の透明性が低下することがある。
本発明に用いるフィルム層(A)の平均厚さは、フィルム層(B)の厚さとの関係により適宜選択することができ、通常5μm〜500μm、好ましくは20〜300μmである。また、厚み変動は、この長手方向及び幅方向にわたって前記平均厚さの±3%以内であることが好ましい。厚み変動を上記範囲にすることにより、本発明のフィルム層(A)、フィルム層(B)のRe等の光学特性のバラツキを小さくすることができる。
本発明に用いるフィルム層(A)は、面内レターデーションReのバラツキが10nm以内、好ましくは5nm以内、さらに好ましくは2nm以内である。面内レターデーションReのバラツキを、上記範囲にすることにより、液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に表示品質を良好なものにすることが可能になる。ここで、面内レターデーションReのバラツキは、光入射角0°(入射光線と本発明のフィルム層(A)の表面が直交する状態)の時の面内レターデーションReをフィルムの幅方向に測定したときの、その面内レターデーションReの最大値と最小値との差である。
また、本発明に用いるフィルム層(A)が延伸されたフィルム(延伸フィルム層(A))である場合は、面内レターデーションRe及び厚さ方向レターデーションRthの値はディスプレイの設計によって異なるが、面内レターデーションReで10〜500nm、厚さ方向レターデーションRthで−500〜500nm程度の範囲から適宜選択される。なお、本発明における面内レターデーションReは、延伸フィルム層(A)の遅相軸方向の屈折率nx、遅相軸に面内で直交する方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nz、フィルムの平均厚みDとしたときに、(nx−ny)×Dで定義される値であり、本発明における厚さ方向レターデーションRthは、((nx+ny)/2−nz)×Dで定義される値である。
本発明に用いるフィルム層(A)の残留揮発性成分の含有量は特に制約されないが、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。残留揮発性成分の含有量が0.1重量%を超えると、経時的に本発明におけるフィルム層(A)の光学特性が変化するおそれがある。揮発性成分の含有量を上記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、フィルム層(A)の面内レターデーションReやRthの経時変化を小さくすることができ、さらにはフィルム層(A)を備える偏光板や液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。揮発性成分は、本発明におけるフィルム層(A)に微量含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体や溶媒などが挙げられる。揮発性成分の含有量は、分子量200以下の物質の合計として、本発明におけるフィルム層(A)をガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
本発明に用いるフィルム層(A)は長尺状であることが好ましい。長尺状とは、フィルムの幅方向に対し少なくとも5倍程度以上の長さを有するものを言い、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管または運搬される程度の長さを有するものを言う。
本発明に用いるフィルム層(A)(フィルム層(A)としては、延伸されたフィルム層(A)も含む。)は、ウレタン樹脂層を設ける前に表面改質処理を施し、フィルム層(A)の表面の平均水接触角を、20〜50度の範囲内に、水接触角の標準偏差を0.01〜5度にするのが好ましい。なお、本発明における標準偏差は、標本標準偏差である。水接触角は、接触角計を用いてθ/2法により求める。平均水接触角は、表面改質処理を施した、フィルム層(A)において、100cm2範囲内で無作為に選んだ20点の水接触角を測定し、この測定値の加算平均により算出される。水接触角の標準偏差は、この測定値から算出される。表面改質処理を行うことにより、フィルム層(A)の表面に、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、スルホン基等の官能基を導入することができる。したがって、水系ウレタン樹脂の水分散体をフィルム層(A)の表面に塗工する際に、水系ウレタン樹脂の水分散体がフィルム層(A)の表面になじみ、均一に塗工することができるので、均一な厚さのウレタン樹脂層をフィルム層(A)の表面に形成させることができる。表面改質処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、ケン化処理等が挙げられる。処理効率の点等から、コロナ処理、プラズマ処理が好ましく、コロナ処理が特に好ましい。フィルム層(A)がアクリル系樹脂により形成されている場合には、フィルム層(A)の表面にケン化処理を施すのが好ましい。
本発明で用いるコロナ処理は、電極の構造として、ワイヤー電極、平面電極、ロール電極のものが好適であるが、放電を均一にするために、基材フィルムと電極との間に誘電体を挟んで処理を実施することが好ましい。
前記電極の材質としては、鉄、銅、アルミ、ステンレス等の金属を用いることができ、電極形状としては薄板状、ナイフエッジ状、ブラシ状等の電極を用いることができる。
前記誘電体は、比誘電率が10以上のものを使用し、両極の電極の上下にそれぞれ誘電体を挟んだ構造が好ましい。誘電体の材質としては、セラミック、シリコンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック、ガラス、石英、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の化合物が挙げられる。特に、比誘電率10以上(25℃環境下)の固体誘電体を介在させておくことが低電圧で高速にコロナ処理を行えるという点で有利である。上記比誘電率10以上の固体誘電体としては、例えば、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の酸化物、シリコンゴム等が挙げられる。なお、誘電体の厚さは0.3〜1.5mmの範囲が好ましい。前記誘電体の厚さが薄すぎると絶縁破壊を起こし易く、厚すぎると印加電圧を高くする必要があるため、効率が悪くなってしまう。
基材フィルムと電極との間隔は、0.5〜10mmであることが好ましい。0.5mm未満では基材フィルムの厚みが薄い物しか通せなくなり、継ぎ目がある場合通過する際に電極に当たり、基材フィルムが傷つく場合がある。また、10mmを超えると印加電圧が高くなるので、電源が大きくなり放電がストリーマ状になる。
本発明で用いるコロナ処理の出力は、フィルム層(A)の表面のダメージをできるだけ少なく処理する条件が好ましく、具体的には、0.02〜5kWであることが好ましく、0.04〜2kWであることがより好ましい。また、前記範囲内で、可能な限り低出力で、数回コロナ処理を施すことが最良のコロナ処理方法である。
本発明で用いるコロナ処理の密度は、フィルム層(A)の平均水接触角が20〜50度、また水接触角の標準偏差を0.01〜5度の範囲内にすることができればよい。具体的には、1〜1000W・min/m2であることが好ましく、5〜500W・min/m2であることがより好ましく、10〜300W・min/m2であることがさらに好ましい。処理密度が低い場合は、水系ウレタン樹脂の水分散体の塗布性が低下する。また、高い場合は、フィルム層(A)の表面が破壊されてしまい、密着性が低下してしまう。
本発明で用いるコロナ処理の周波数は、5〜100kHzであることが好ましく、10〜50kHzであることがより好ましい。周波数が低下するとコロナ放電処理の均一性が劣化し、コロナ放電処理のムラが発生する。また、周波数が大きくなると、高出力のコロナ放電処理を行う場合には、特に問題ないが、低出力のコロナ放電処理を実施する場合には、安定した処理を行うことが難しくなり、その結果処理ムラが発生する。
本発明で用いるコロナ処理は電極周辺をケーシングで囲い、ケーシングの内部に不活性ガスを入れ、電極部にガスをかけるようにすると、放電をより細かい状態で発生させることができる。不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素を用いることができる。
本発明で用いるプラズマ処理としては、グロー放電処理、フレームプラズマ処理等が挙げられる。グロー放電としては、真空下で行う真空グロー放電処理、大気圧下で行う大気圧グロー放電処理のいずれも用いることができるが、生産性の観点から大気圧下で行う大気圧グロー放電処理が好ましい。なお、本発明における大気圧とは、700〜780Torrの範囲である。グロー放電処理は、相対する電極の間にフィルム層(A)を置き、装置中にプラズマ励起性気体を導入し、電極間に高周波電圧を印加することにより、該気体をプラズマ励起させ、電極間においてグロー放電を行うものである。これにより、フィルム層(A)の表面が処理されて、フィルム層(A)の表面の親水性が高められる。
前記プラズマ励起性気体とは、上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいう。プラズマ励起性気体としては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物や、アルゴン、ネオン等の不活性ガスに、カルボキシル基や水酸基、カルボニル基等の極性官能基を付与し得る反応性ガスを加えたものなどが挙げられる。
前記高周波電圧の周波数は、1kHz〜100kHzの範囲が好ましく、電圧の大きさは、電極に印加した時の電界強度が1〜100kV/cmとなる範囲になるようにすることが好ましい。
本発明に用いるケン化処理は、アルカリケン化処理である。処理方法として浸漬法、アルカリ液塗布法が挙げられるが、生産性の観点から、浸漬法が好ましい。
前記浸漬法は、アルカリ液の中に基材フィルムを適切な条件で浸漬し、基材フィルム全表面のアルカリと反応性を有する全ての面をケン化処理する手法であり、特別な設備を必要としないため、コストの観点で好ましい。アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。濃度は0.5〜3mol/lが好ましく、1〜2mol/lがより好ましい。アルカリ液の液温は25〜70℃が好ましく、30〜60℃がより好ましい。処理時間は、フィルム層(A)の平均水接触角が20〜50度、また水接触角の標準偏差を0.01〜5度の範囲内にできれば良く、適宜調整することができる。
アルカリ液に浸漬した後は、基材フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
基材フィルムの厚みとしては特に制限はないが、材料コストや薄型・軽量化の観点から、その厚さは通常1〜1000μmであり、5〜300μmが好ましく、30〜150μmであるがより好ましい。
本発明におけるウレタン樹脂層は、表面改質処理されたフィルム層(A)(フィルム層(A)としては、表面改質処理された延伸フィルム層(A)も含む。)の表面に、中和処理後水系ウレタン樹脂の水分散体を直接に塗工することにより得られる。中和処理後水系ウレタン樹脂の水分散体は、中和処理後水系ウレタン樹脂が水に分散されて成り、エマルション、コロイド分散系、水溶液などの形態をとることができる。
中和処理後水系ウレタン樹脂は、酸構造含有水系ウレタン樹脂に含有されている酸構造の少なくとも一部を不揮発性塩基で中和することにより、得ることができる。中和処理後水系ウレタン樹脂を含む水分散体を使用して製造された本発明の積層フィルムは、高温下に曝された熱履歴を有しても、光学材料としての特性を維持しつつ、他の光学フィルム、特に偏光子に積層して使用されるときに、積層フィルムと他の光学フィルムとの密着性を良好に保つことができる。水系ウレタン樹脂としては、例えば(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とを反応させて得られる水系ウレタン樹脂、または、上記(i)成分及び(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で、反応に不活性で水との親和性の大きい有機溶媒中でウレタン化反応させイソシアネート基含有プレポリマーとし、次いで、該プレポリマーを中和、鎖延長剤を用いて鎖延長し、水を加えて分散体とすることによって製造される水系ウレタン樹脂等が挙げられる。
なお、イソシアネート基含有プレポリマーの鎖伸長方法は公知の方法によればよく、例えば、鎖伸長剤として、水、水溶性ポリアミン、グリコール類などを使用し、イソシアネート基含有プレポリマーと鎖伸長剤成分とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させればよい。
前記(i)成分の1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分としては、特に限定されるものではないが、水酸基性の活性水素を有するものが好ましい。このような化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
(1)ジオール化合物:
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等。
(2)ポリエーテルジオール:
前記のジオール化合物のアルキレンオキシド付加物、アルキレンオキシドや環状エーテル例えばテトラヒドロフランなどの開環(共)重合体、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコール等。
(3)ポリエステルジオール:
アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸又はその無水物と上記(1)で挙げられたようなエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール化合物とを水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものが挙げられる。具体的には、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、或いはグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオール等が例示できる。
(4)ポリエーテルエステルジオール:
エーテル基含有ジオール(前記(2)のポリエーテルジオールやジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を上記(3)で例示したようなジカルボン酸又はその無水物に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるもの、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物等。
(5)ポリカーボネートジオール:
一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)x−OH(ただし、式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ジオール残基、xは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物等。これらは、飽和脂肪族ジオールと置換カーボネート(炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法、前記飽和脂肪族ジオールとホスゲンを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ジオールを反応させる方法などにより得ることができる。
上記の(1)から(5)に例示したような化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記(i)成分と反応させる(ii)多価イソシアネート成分としては、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環族または芳香族の化合物が使用できる。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数4〜18の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、本発明の製造方法においては、酸構造含有水系ウレタン樹脂の少なくとも一部の酸構造を、不揮発性塩基により中和した中和処理後水系ウレタン樹脂を使用する。酸構造含有水系ウレタン樹脂の酸構造を、塩基により中和した樹脂は、界面活性剤(以下において、乳化剤と称されるものも含む。)を使用せずにもしくはその量が少なくても水中に分散させることが可能となるので、塗膜の耐水性が向上し、接着性に優れ、かつ高い透明性を維持できるため好ましい。酸構造の含有量としては、水系ウレタン樹脂中の酸価として、25〜250mgKOH/g、好ましくは、30〜150mgKOH/gの範囲であるのが好適である。酸価が25未満では水分散性が不十分となりやすく、界面活性剤の併用が必要となることが多い、一方、酸価が250mgKOH/gより大きいと塗膜の耐水性が劣る傾向となる。
本発明に使用される酸構造含有水系ウレタン樹脂中の酸構造としては、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)を初めとする酸基などを挙げることができる。酸構造は、酸構造含有水系ウレタン樹脂における側鎖又は末端に存在していてもよい。
水系ウレタン樹脂中に酸構造を導入する方法は、従来から用いられている方法が特に制限なく使用できるが、例えばジメチロールアルカン酸を前記(2)から(4)に記載したグリコール成分の一部もしくは全部と置き換えることによって予めポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルエステルジオールなどにカルボキシル基を導入しておくことにより、酸構造を導入する方法が好ましい。ここで用いられるジメチロールアルカン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などを挙げることができる。
また、本発明に使用される中和処理後水系ウレタン樹脂は、酸構造含有水系ウレタン樹脂の少なくとも一部の酸構造が、不揮発性塩基により中和されている。酸構造含有水系ウレタン樹脂の酸構造のうちの20%以上が不揮発性塩基により中和されているのが好ましく、50%以上が不揮発性塩基により中和されているのが特に好ましい。酸構造のうちの20%以上が不揮発性塩基により中和されることにより、本発明の積層フィルムが高温下に曝された熱履歴を有しても、光学材料としての特性を維持しつつ、他の光学フィルム、特に偏光子に積層して使用されるときに、積層されたフィルムとの密着性をより一層維持することができる。なお、本発明に使用される中和処理後水系ウレタン樹脂は、酸構造含有水系ウレタン樹脂の少なくとも一部の酸構造が、不揮発性塩基により中和されていれば良く、残りの酸構造は中和されていなくても良く、又は揮発性塩基により中和されていても良い。
前記不揮発性塩基としては、本発明に使用される中和処理後水系ウレタン樹脂の水分散体を基材フィルムの表面に塗布した後に乾燥させる際の処理条件下、例えば80℃で1時間放置した場合において実質的に不揮発性である無機塩基及び有機塩基を挙げることができる。実質的に不揮発性である無機塩基及び有機塩基としては、前記処理後に不揮発性塩基の減少分が80%以下である場合を挙げることができる。このような不揮発性塩基としては、有機塩基が好ましく、沸点100℃以上の有機塩基が好ましく、沸点100℃以上のアミノ化合物がより好ましく、沸点200℃以上のアミン化合物が特に好ましい。また、有機塩基は低分子化合物でも重合体でも良い。
前記不揮発性塩基としては、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのような無機塩基、あるいは2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリ[(2−ヒドロキシ)−1−プロピル]アミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)及び2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパン水酸化カリウム、亜鉛アンモニウム錯体、銅アンモニウム錯体、銀アンモニウム錯体、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、3−ウレイドプロピルトリメトシキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシカルボン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタール酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、キノリン、ピコリン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、シクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イロプロパノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N−N−ジエタノールアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルエタノールアミン、アミノヘキシルエタノールアミン、アミノエチルプロパノールアミン、アミノプロピルプロパノールアミン、アミノヘキシルプロパノールアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−エチルイミダゾール、2−アミノイミダゾールサルフェート、2−(2−アミノエチル)−ベンゾイミダゾール、ピラゾール、5−アミノピラゾール、1−メチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−5−アミノピラゾール、1,3−ジメチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−アシノ−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、3−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1,3−ジメチル−4−クロロ−メラミン樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂等のアミノ樹脂を挙げることができる。
本発明に用いる中和処理後水系ウレタン樹脂としては、数平均分子量が1,000以上が好ましく、より好ましくは20,000以上である。但し1,000,000以下が好ましく、より好ましくは200,000以下である。前記範囲の数平均分子量を有する酸構造含有水系ウレタン樹脂を前記中和処理して得られる中和処理後水系ウレタン樹脂の数平均分子量も、前記範囲内にある。
本発明における水分散体中に分散する中和処理後水系ウレタン樹脂粒子の粒径は、フィルム光学特性の観点から、0.01μm〜0.4μmであることが好ましい。中和処理後水系ウレタン樹脂粒子の粒径は、動的光散乱法により測定することができ、例えば、大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−8000シリーズにより測定することができる。本発明における中和処理後水系ウレタン樹脂の水分散体には、水溶性の溶剤が含まれていてもよい。水溶性の溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
本発明における中和処理後水系ウレタン樹脂の水分散体の粘度は、15mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であるのが特に好ましい。水分散体の粘度が前記範囲内にあると、フィルム層(A)の表面に前記水分散体を薄くかつ均一に塗工することができる。前記水分散体の粘度は、音叉型振動式粘度計により25℃の条件下で測定した値であり、前記水分散体中の中和処理後水系ウレタン樹脂の割合及び中和処理後水系ウレタン樹脂の粒径などを変化させることにより、前記水分散体の粘度を調整することができる。
上記酸構造含有水系ウレタン樹脂としては、市販されている水系ウレタン樹脂に、上述した不揮発性塩基を添加し、水系ウレタン樹脂の酸構造の中和に使用されている塩基を交換してもよい。塩基交換の確認は、交換処理を施した樹脂を単離した後、1H−NMR、13C−NMR等の分析法を用いることにより、容易に確認することができる。前記市販されている水系ウレタン樹脂としては、例えば、旭電化工業(株)製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井東圧化学(株)製の「オレスター」シリーズ、大日本インキ化学工業(株)製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン」シリーズ、バイエル製の「インプラニール」シリーズ、日本ソフラン(株)製の「ソフラネート」シリーズ、花王(株)製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業(株)製の「サンプレン」シリーズ、保土谷化学工業(株)製の「アイゼラックス」シリーズ、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス」シリーズ、ゼネカ(株)製の「ネオレッツ」シリーズ等を用いることができる。
フィルム層(A)上に形成するウレタン樹脂層の厚みが1μm以下の場合、該ウレタン樹脂層の機械強度を向上させる目的で、架橋剤を前記ウレタン樹脂層に含めることが好ましい。本発明に使用できる架橋剤としては、中和処理後水系ウレタン樹脂が有する反応性基と反応する官能基を有する化合物であれば、特に制限なく使用することができるが、水系エポキシ化合物、水系アミノ化合物、水系イソシアネート化合物、水系カルボジイミド化合物を使用することが、材料の汎用性の観点から好ましく、特に水系エポキシ化合物、水系アミノ化合物を使用することが、接着性の観点から好ましい。
前記水系エポキシ化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のエポキシ基を有する化合物であればよい。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール;1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類1モルとエピクロルヒドリン2モルとのエーテル化によって得られるジエポキシ化合物、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類1モルとエピクロルヒドリン2モル以上とのエーテル化によって得られるポリエポキシ化合物、フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸1モルとエピクロルヒドリン2モルとのエステル化によって得られるジエポキシ化合物等のエポキシ化合物が挙げられる。
前記水系アミノ化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のアミノ基を有する化合物であればよい。例えば、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタール酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、グリコリック酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、メラミン樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂等が挙げられる。
前記水系イソシアネート化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上の非ブロック型のイソシアネート基、ブロック型のイソシアネート基を有する化合物であればよい。非ブロック型のイソシアネート化合物としては、多官能イソシアネート化合物と一価又は多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールと反応させて得られる化合物が挙げられる。ブロック型イソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TDI)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、2,4,−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネートおよびこれらのイソシアヌレート変性体、アダクト変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、これらの重合体で1個以上のイソシアネート基を有するものをポリオキシアルキレン基、カルボキシル基等で変性し、水溶性およびまたは水分散性にし、イソシアネート基をブロック剤(フェノール、ε−カプロラクタム等)でマスクすることにより得られる化合物が挙げられる。
前記水系カルボジイミド化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のカルボジイミド結合(−N=C=N−)を有する化合物であればよい。2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物は、2分子以上のポリイソシアネートとカルボジイミド化触媒とを用いて、2個のイソシアネート基を脱炭酸反応させて−N=C=N−を形成させる方法によって得ることができる。2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物を作製する際に使用されるポリイソシアネートおよびカルボジイミド化触媒は特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。
前記中和処理後水系ウレタン樹脂と架橋剤の割合は、中和処理後水系ウレタン樹脂100重量部(固形分)に対して、前記架橋剤を1〜30重量部、好ましくは5〜15重量部(固形分)配合することが好ましい。前記配合にすることにより、水分散体で形成された塗膜の強度と塗工液の安定性を両立できることが可能となる。
本発明におけるウレタン樹脂層は、厚み20μmにおける鉛筆硬度がH以上であることが好ましい。前記範囲にすることにより、積層フィルムに耐擦傷性を付与することができる。
本発明におけるウレタン樹脂層は、表面の静摩擦係数、及び動摩擦係数が0.6以下、好ましくは0.4であることが好ましい。前記範囲にすることにより、積層フィルムに耐擦傷性を付与することができる。
本発明におけるウレタン樹脂層には、必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、架橋剤等のその他の配合剤を適量添加してもよい。
ウレタン樹脂層は、表面改質処理が施されているフィルム層(A)の片面又は両面に、前記水分散体を塗工することにより形成することができる。
中和処理後水系ウレタン樹脂を含有する水分散体をフィルム層(A)上に塗布する方法は特に限定されず、公知の塗布法を採用することができる。具体的な塗布法としては、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法等が挙げられる。中和処理後水系ウレタン樹脂の水分散体の塗布量は特に限定されないが、乾燥後の厚みとして、0.01〜5μmが好ましく、0.02〜4μmがより好ましく、0.03〜3μmが特に好ましい。前記範囲内にあると、フィルム層(A)とウレタン樹脂層との十分な接着強度が得られ、かつ、フィルムのそり等の欠陥のない積層フィルムを提供することができる。
本発明におけるフィルム層(A)とウレタン樹脂層とは、界面屈折率差が0.05以下であるのが好ましい。界面屈折率の差が前記範囲内にあると、本発明の積層フィルムを光が透過する際の光の損失を抑えることができる。
前記ウレタン樹脂層は、基材フィルムにおける片面にフィルム層(A)が設けられている場合には、このフィルム層(A)の面上に設けられ、基材フィルムにおける両面にフィルム層(A)が設けられている場合には、基材フィルムの両面に設けることができる。基材フィルムの両面に設けることによって、長尺フィルムとした場合にウェブハンドリングをよくすることができる。
本発明に係る積層フィルムは、この積層フィルムにおけるウレタン樹脂層の表面に偏光子を更に積層することにより、偏光板に製造され、又、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤を介して本発明の積層フィルムを積層することにより製造することができる。本発明に係る積層フィルムは、高温下に曝された熱履歴を有しても、光学材料としての特性を維持しつつ、偏光子との密着性が良好であるので、耐久性に優れる偏光板を提供することができる。偏光子の片面のみに本発明の積層フィルムが積層される場合には、偏光子における他方の面には、透明性の高いフィルムを積層してもよい。なお、偏光板は偏光フィルム又は偏光シートとも称される。
前記偏光子は、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素若しくは二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得ることができ、又、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させ延伸し、さらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得ることができる。また、偏光子として、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの、偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子を、用いることもできる。この中でも、ポリビニルアルコールを含んでなる偏光子が好ましい。偏光子の偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光子の厚さ(平均厚さ)は、好ましくは5μm〜80μmである。
偏光子と本発明の積層フィルムとを接着するための接着剤としては、光学的に透明であれば特に限定されず、水性接着剤、溶剤型接着剤、二液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、感圧性接着剤などが挙げられる。この中でも、水性接着剤が好ましく、特にポリビニルアルコール系の水性接着剤が好ましい。
この接着層の平均厚みは、0.05〜5μmが好ましく、0.1〜1μmであるのがより好ましい。
偏光子に本発明の積層フィルムを積層する方法しては、通常の方法を使用することができ、偏光子の一方の面に接着剤を塗布した後、ロールラミネーターを用いて偏光子と本発明の積層フィルムにおけるウレタン樹脂層が設けられている面とを貼り合せ、乾燥させる方法が好ましい。乾燥時間と乾燥温度とは、接着剤の種類に応じて適宜選択される。
本発明の積層フィルムは、例えば、UV硬化樹脂、若しくはプリズム形状などが形成されてなる光学フィルム、シート又は基板との密着性が良好であるので、種々の光学材料と組み合わせることにより、前記偏光板以外にも耐久性に優れた、反射防止膜付フィルム、保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム及び輝度向上フィルム等を形成することができる。
本発明の積層フィルムは、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ等の各種画像表示装置に好適に使用される。
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例中の試験及び評価は以下の方法で行った。
(評価方法)
<積層フィルムの光学特性>
作製した積層フィルムを、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業(株)製「濁度計NDH−300A」を用いて、積層フィルムの全光線透過率、ヘイズを測定した。
<偏光板のピール強度測定>
作製した偏光板を幅15mmに切断し、偏光子とフィルムとを180°方向に引っ張りその強度を測定し(180°ピール強度の測定)た。測定は50mmの長さで測定し、その際の平均ピール強度、ピール強度のR(最大値−最小値)を測定した。なお、測定機には、万能引張圧縮試験機(TCM−500CR:新興通信工業(株)製)を用い、引張速度50mm/秒で試験を実施した。
<耐熱試験後の偏光板のピール強度測定>
作製した積層フィルムを80℃の乾燥機中で1週間放置した後、偏光子と積層フィルムとをロールラミネーターで貼り合わせることにより偏光板を得た。得られた偏光板を幅15mmに切断し、上記ピール強度測定と同様にして試験を実施した。
(製造例1)
<基材フィルム(I)の製造>
脂環式構造含有重合体樹脂(ZEONOR1430、日本ゼオン(株)製;ガラス転移温度135℃)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥した後、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用し、溶融樹脂温度270℃、Tダイの幅500mmの成形条件で、厚さ100μm、長さ1000mの基材フィルム(I)を作製した。基材フィルム(I)は、本発明に用いる基材フィルムの一例である。
(製造例2)
<基材フィルム(II)の製造>
フィルム層(B)としてポリスチレン樹脂であるDaylarkD332(ノヴァ・ケミカル製)を、フィルム層(A)としてZEONOR1430(日本ゼオン(株)製)のペレットを100℃で5時間乾燥した後、それぞれ別々の押出し機に供給した。樹脂は押出し機内で溶融された後、ポリマーパイプ及びポリマーフィルターを経てフィードブロック内で合流し、幅500mmのTダイからキャスティングドラム上にシート状に押出し、冷却ドラム上で冷却することにより、厚さ140μm、長さ1000mのA層―B層―A層からなる多層フィルムを得た。
次いで、作製した幅500mmの多層フィルムを、テンター式横延伸機を用いて、延伸温度140℃、延伸倍率2.0倍で連続的に横一軸延伸し、さらに左右両端の部分を裁断して除去することにより、配向軸が幅方向に一致した基材フィルム(II)を得た。なお、基材フィルム(II)は最表面に延伸された脂環式構造含有重合体フィルム層を有する基材フィルムの一例である。
(製造例3)
<基材フィルム(III)の製造>
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(NKエステル AD−TMP、新中村化学製)90.0部、光開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー製)10.0部、酢酸ブチル900.0部からなる混合物を均一に撹拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、紫外線硬化性樹脂溶液を調製した。
次いで、製造例1で作製したフィルム(I)の両面を、コロナ処理装置(春日電機(株)製)を用いて、出力300W、直径1.2mmのワイヤー電極、電極長240mm、ワーク電極間3.0mm、搬送速度4m/minの条件で1回放電処理を実施し、次いで、先に作製したUV硬化樹脂溶液をグラビアコーターを用いて、乾燥膜厚が2μmになるように塗布し、80℃で5分間乾燥させた後、超高圧水銀ランプを用いて紫外線照射(積算光量400mJ/cm2)を行い、樹脂を硬化させることにより基材フィルム(III)を得た。なお、基材フィルム(III)は最表面に(メタ)アクリル系樹脂フィルム層を有する基材フィルムの一例である。
(製造例4)
<偏光子の製造>
厚さ80μmのポリビニルアルコールフイルムを0.3%のヨウ素水溶液中で染色した後、4%のホウ酸水溶液、2%のヨウ化カリウム水溶液中で5倍まで延伸した後、50℃で4分間乾燥させて偏光子を得た。
(製造例5)
<接着液の調整>
ゴーセファイマーZ410(日本合成化学工業(株)製、アセトアセチル基を含有PVA)を、水を加えて固形分3%に希釈し、接着液を作製した。
(実施例1)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管の備えた2000mlの四つ口フラスコに、ポリエステルポリオールであるマキシモールFSK−2000(川崎化成工業(株)製、水酸基価56mgKOH/g)840g、トリレンジイソシアネート119g、メチルエチルケトンを200g入れ、窒素を導入しながら75℃で1時間反応させた。反応終了後、60℃まで冷却し、ジメチロールプロピオン酸35.6gを加え、75℃で反応させて、NCOが0.5%の酸構造含有水系ウレタン樹脂溶液を得た。次いで、この酸構造含有水系ウレタン樹脂溶液を40℃にまで冷却し、水1500g、水酸化ナトリウム10.6gとを加え、ホモミキサーで高速撹拌することにより乳化を行った。この乳化液から加熱減圧下によりメチルエチルケトンを留去し、固形分40%の中和処理後水系ウレタン樹脂1の水分散体を得た。
次いで、コロナ処理装置(春日電機(株)製)を用いて、出力300W、電極長240mm、ワーク電極間3.0mm、搬送速度4m/minの条件で放電処理を実施した基材フィルム(I)の表面に、中和処理後水系ウレタン樹脂1の水分散体1 5.0gに水35gを加えて成る塗工液を、乾燥膜厚が2μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥することにより、積層フィルム1を得た。積層フィルム1の評価結果を表1に示す。
次に、製造例4で作製した偏光子と、積層フィルム1、及び積層フィルム1を80℃の乾燥機中で1週間放置した積層フィルムを、製造例5で作製した接着剤を用い、ロールラミネーターで貼り合わせることにより、偏光板1を得た。偏光板1のピール強度の測定結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1で作製した中和処理後水系ウレタン樹脂1を含有する水分散体の中和剤である水酸化ナトリウムを、モノエタノールアミン(沸点:171℃、配合量:16.1g)に変えた以外は、実施例1と同様の操作により、固形分40%の中和処理後水系ウレタン樹脂2の水分散体を得た。
次いで、コロナ処理装置(春日電機(株)製)を用いて、出力300W、電極長240mm、ワーク電極間3.0mm、搬送速度4m/minの条件で放電処理を実施した基材フィルム(I)の表面に、中和処理後水系ウレタン樹脂2の水分散体2 5.0gに、エポキシ化合物であるデナコールEX−810(ナガセケムテックス(株)製)0.3g、及び水75gを加えて成る塗工液を、乾燥膜厚が0.1μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥することにより、積層フィルム2を得た。積層フィルム2の評価結果を表1に示す。
次に、製造例4で作製した偏光子と、積層フィルム2、及び積層フィルム2を80℃の乾燥機中で1週間放置した積層フィルムを、製造例5で作製した接着剤を用い、ロールラミネーターで貼り合わせることにより、偏光板2を得た。偏光板2のピール強度の測定結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1で作製した中和処理後水系ウレタン樹脂1を含有する水分散体の中和剤である水酸化ナトリウムを、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(沸点:217℃、配合量:58.4g)に変えた以外は、実施例1と同様の操作により、固形分41%の中和処理後水系ウレタン樹脂3の水分散体を得た。
次いで、コロナ処理装置(春日電機(株)製)を用いて、出力300W、電極長240mm、ワーク電極間3.0mm、搬送速度4m/minの条件で放電処理を実施した基材フィルム(I)の表面に、中和処理後水系ウレタン樹脂3の水分散体3 5.0gに、水系イソシアネート化合物であるデュラネートWB40−100(旭化成ケミカルズ(株)製)0.2g、シリカ粒子であるスノーテックスZL(日産化学工業(株)製)0.5g及び水75gを加えて成る塗工液を、乾燥膜厚が0.2μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥することにより、積層フィルム3を得た。積層フィルム3の評価結果を表1に示す。
次に、製造例4で作製した偏光子と、積層フィルム3、及び積層フィルム3を80℃の乾燥機中で1週間放置した積層フィルムを、製造例5で作製した接着剤を用い、ロールラミネーターで貼り合わせることにより、偏光板3を得た。偏光板3のピール強度の測定結果を表1に示す。
(実施例4)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管の備えた2000mlの四つ口フラスコに、5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール200g、1,6−ヘキサンジオール613gとアゼライン酸376g、ジフェニルカーボネート642g(エステル基とカーボネート基のモル比:57/43)およびヒドロキノンモノメチルエーテル0.6gよりなる混合物を加熱し、160℃で反応系よりフェノール、水を留去した。酸価が0.3mgKOH/g以下になったところで真空にしてさらに縮合を進めることにより、水酸基価56mgKOH/gのポリエステルポリカーボネートジオールを得た。次いで、温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管の備えた2000mlの四つ口フラスコに、先に作製したポリエステルカーボネートジオール840g、トリレンジイソシアネート119g、メチルエチルケトンを200g入れ、窒素を導入しながら75℃で1時間反応させた。反応終了後、60℃まで冷却し、ジメチロールプロピオン酸を35.6gを加え、75℃で反応させて、NCOが0.5%の酸構造含有水系ウレタン樹脂溶液を得た。次いで、この酸構造含有水系ウレタン樹脂を40℃まで冷却し、水1500g、エチレンジアミン(沸点:117℃)15.9gとを加え、ホモミキサーで高速撹拌することにより乳化を行った。この乳化液から加熱減圧下によりメチルエチルケトンを留去し、固形分40%の中和処理後水系ウレタン樹脂4の水分散体を得た。
次いで、リモート式大気圧プラズマ処理装置((株)イー・スクエア製)を用いて、出力1.2kW、窒素流量200L/min、搬送速度1m/minの条件で表面処理を実施した基材フィルム(II)の表面に、中和処理後水系ウレタン樹脂4の水分散体4 5.0g、水系アミノ化合物であるメチル化メラミン樹脂MW−30((株)三和ケミカル製)0.1gに水75gを加えて成る塗工液を、乾燥膜厚が0.1μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥することにより、積層フィルム4を得た。積層フィルム4の評価結果を表1に示す。
次に、製造例4で作製した偏光子と、積層フィルム4、及び積層フィルム4を80℃の乾燥機中で1週間放置した積層フィルムを、製造例5で作製した接着剤を用い、ロールラミネーターで貼り合わせることにより、偏光板4を得た。偏光板4のピール強度の測定結果を表1に示す。
(実施例5)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管の備えた2000mlの四つ口フラスコに、ポリエーテルポリオールであるエクセノール2020(旭硝子(株)製、水酸基価56mgKOH/g)840g、トリレンジイソシアネート119g、メチルエチルケトンを200g入れ、窒素を導入しながら75℃で1時間反応させた。反応終了後、60℃まで冷却し、ジメチロールプロピオン酸35.6gを加え、75℃で反応させて、NCOが0.5%の末端イソシアネート基を有する酸構造含有水系ウレタン樹脂の溶液を得た。次いで、この酸構造含有水系ウレタン樹脂を40℃まで冷却し、水1500g、モノエタノールアミン(沸点:171℃)3.3g、及びトリエチルアミン(沸点:89℃)21.3gを加え、ホモミキサーで高速撹拌することにより乳化を行った。この乳化液から加熱減圧下によりメチルエチルケトンを留去し、固形分40%の中和処理後水系ウレタン樹脂5の水分散体を得た。なお、水系ウレタン樹脂5は、樹脂中の酸構造の20.4%がモノエタノールアミンで中和されている樹脂である。
次いで、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬することにより表面を改質した基材フィルム(III)の表面に、中和処理後水系ウレタン樹脂5の水分散体5 5.0g、カルボジイミド化合物であるカルボジライトV−02(日清紡績(株)製)0.1gに水75gを加えた水系ウレタン樹脂の塗工液を、乾燥膜厚が0.2μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥することにより、積層フィルム5を得た。積層フィルム5の評価結果を表1に示す。
次に、製造例4で作製した偏光子と、積層フィルム5、及び積層フィルム5を80℃の乾燥機中で1週間放置した積層フィルムを、製造例5で作製した接着剤を用い、ロールラミネーターで貼り合わせることにより、偏光板5を得た。偏光板5のピール強度の測定結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1で作製した酸含有水系ウレタン樹脂を中和する中和剤である水酸化ナトリウムを、トリエチルアミン(沸点:89℃、配合量:26.7g)に変えた以外は、実施例1と同様の操作により、固形分40%の比較例用水系ウレタン樹脂1の水分散体を得た。
次いで、コロナ処理装置(春日電機(株)製)を用いて、出力300W、電極長240mm、ワーク電極間3.0mm、搬送速度4m/minの条件で放電処理を実施した基材フィルム(I)の表面に、比較例用水系ウレタン樹脂1の水分散体1 5.0gに、エポキシ化合物であるデナコールEX−810(ナガセケムテックス(株)製)0.3g、及び水75gを加えて成る塗工液を、乾燥膜厚が0.1μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥することにより、比較例用積層フィルム1を得た。比較例積用層フィルム1の評価結果を表1に示す。
次に、製造例4で作製した偏光子と、比較例用積層フィルム1、及び比較例用積層フィルム1を80℃の乾燥機中で1週間放置した積層フィルムを、製造例5で作製した接着剤を用い、ロールラミネーターで貼り合わせることにより、比較例用偏光板1を得た。比較例用偏光板1のピール強度の測定結果を表1に示す。