JP5845895B2 - 複層フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基材フィルム上にポリウレタンを含む層を形成してなる複層フィルムの製造方法に関する。
例えば液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ等の各種画像表示装置に使用されるフィルムとして、熱可塑性樹脂からなるフィルムが知られている。これらのフィルムは光学特性に優れているため、例えば、液晶表示装置を構成する液晶セルの電極基板、偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用透明電極付きフィルム、導光板、光ディスクなどの光学用途への展開が図られている。
前記のような光学用途へ用いられるフィルムは、例えば、偏光子、ハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防眩層、防汚層などの他の様々な機能を有する部材に貼り合せられて使用されることが多い。したがって、前記のフィルムは、貼り合せられる部材との接着力が高いことが望まれる。
ところが、熱可塑性樹脂からなる層を有するフィルムのなかには、他の部材との接着性に劣るものがある。そこで、当該フィルムの表面に、易接着層を設けることが従来からなされてきた。易接着層とは、必要に応じて接着剤を介してフィルムを何らかの部材と貼り合わせる際に、フィルムの接着力を補強して、より強固に接着させる層である。易接着層については、ウレタン樹脂により形成したものが従来から提案されてきた(特許文献1〜3参照)。
特開2009−274390号公報 特開2006−201736号公報 特開2009−80177号公報
しかしながら、易接着層を設けたフィルムには、異物や塗布むらが生じる場合があった。これら異物や塗布むらを有するフィルムを画像表示装置に使用すると、その表示品質が低下する場合がある。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、基材フィルム上にポリウレタンを含有する水分散体を塗布し、硬化してウレタン樹脂層を形成することを含む複層フィルムの製造方法であって、異物や塗布むらの生成が抑制された複層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、基材フィルム上に、ポリウレタンを含有する水分散体を塗布し、硬化してウレタン樹脂層を形成することを含む複層フィルムの製造方法において、ポリウレタンとして特定の粒径分布を有するポリウレタンの水分散体を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔4〕を要旨とする。
〔1〕基材フィルム上に、ポリウレタンを含有する水分散体を塗布し、硬化してウレタン樹脂層を形成することを含む複層フィルムの製造方法であって、
前記ポリウレタンは、粒径が0.2μm以上の粒子の割合V1(体積%)と粒径が0.2μm未満の粒子の割合V2(体積%)の比V1/V2が0.11以下である、複層フィルムの製造方法。
〔2〕粒径が0.2μm以上の粒子の割合V1(体積%)と粒径が0.2μm未満の粒子の割合V2(体積%)の比V1/V2が0.11以下であるポリウレタンの水分散体を、
標準ダスト分散水を10L/minで濾過したときに99%以上を捕捉する最大の粒子径で表される粒子捕捉性能が5μm以上20μm以下であるフィルターでろ過し、次いで粒子捕捉性能が0.8μm以上5μm以下であるフィルターでろ過した後に、
基材フィルム上に塗布することを特徴とする〔1〕記載の製造方法。
〔3〕前記ポリウレタンを含有する水分散体がさらに架橋剤を含む、〔1〕または〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕前記ポリウレタンを含有する水分散体がさらに微粒子を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、異物や塗布むらの生成が抑制され、高い光学特性を実現しうる複層フィルムの製造方法を提供できる。
以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
本発明の製造方法は、基材フィルム上に、ポリウレタンを含有する水分散体(以下、「ポリウレタン水分散体」ということがある。)を塗布し、硬化してウレタン樹脂層を形成することを含む複層フィルムの製造方法であって、前記ポリウレタンが、粒径が0.2μm以上の粒子の割合V1(体積%)と粒径が0.2μm未満の粒子の割合V2(体積%)の比V1/V2が0.11以下であることを特徴とする。
ここで上記ポリウレタンの粒径は、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置を用いて測定される粒径分布に基づき測定される値である。測定装置としては、測定可能な粒径範囲の下限が0.05μm以下のものを用いることが好ましい。例えば、コールター社製のレーザー回折散乱法粒度分布測定装置LS−230により測定してもよい。
V1/V2が0.11以下であることで、複層フィルムの製造において異物や塗布むらの生成を抑制できる。これは、粒径の大きいポリウレタン粒子の割合が少ないことで、粒子が凝集して異物となることを抑制でき、これにより、塗布面の連続性が異物によって失われることから生じる円形の塗布むらを抑制できるためであるためと考えられる。
[基材フィルム]
基材フィルムとしては、通常、樹脂フィルムを用いる。基材フィルムを形成する樹脂は、少なくとも一種類の重合体を含む。かかる樹脂に含まれる重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;セルロースエステル;ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリルサルホン;ポリ塩化ビニル;脂環式構造含有重合体;アクリル重合体;ポリスチレンなどのスチレン系重合体;などが挙げられる。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
用いられる樹脂としては、脂環式構造含有重合体を含む樹脂(以下、適宜「脂環式構造含有重合体樹脂」という。)、アクリル重合体を含む樹脂、およびポリカーボネートを含む樹脂が好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性および軽量性などに優れ、光学フィルムに適していることから、脂環式構造含有重合体樹脂が特に好ましい。また、一般に脂環式構造含有重合体樹脂は水との親和性が低く、ポリウレタン水分散体を均一に塗布することが困難な場合があるが、本発明の製造方法によればポリウレタン水分散体を均一に塗布することができ、異物や塗布むらの少ない複層フィルムを製造することが可能である。
また、基材フィルムは、一層のみを備える単層構造のフィルムであってもよく、二層以上の層を備える複層構造のフィルムであってもよい。基材フィルムが二層以上の層を備える場合、脂環式構造含有重合体樹脂、アクリル重合体を含む樹脂又はポリカーボネート樹脂で形成された層が、基材フィルムの最表面を形成することが好ましい。
[脂環式構造含有重合体樹脂]
脂環式構造含有重合体樹脂は、脂環式構造含有重合体を含有する樹脂である。脂環式構造含有重合体は、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれを用いてもよい。脂環式構造含有重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度および耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4個以上、好ましくは5個以上であり、通常30個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは15個以下であるときに、機械強度、耐熱性、及び基材の成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式構造を有する重合体における、脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、通常100重量%以下である。脂環式構造を有する重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が前記範囲にあると、透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造を有する重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン構造を有する単量体(以下、ノルボルネン系単量体という)の単独重合体またはノルボルネン系単量体と他の単量体との共重合体である。具体的には、ノルボルネン系単量体の開環重合体若しくはノルボルネン系単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン系単量体の付加重合体若しくはノルボルネン系単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;等を挙げることができる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。なお、「(共)重合」とは、重合及び共重合のことを意味する。
ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。なお、ノルボルネン系単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ここで、ノルボルネン構造を有する単量体が有する置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。さらに、一つの単量体に置換する置換基の数も、1個でもよく、2個以上でもよい。極性基の種類としては、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基などが挙げられる。透湿度が小さい複層フィルムを得るためには、極性基の量が少ない方が好ましく、極性基を持たないことがより好ましい。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。なお、これらの他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン系単量体の開環重合体、および、ノルボルネン系単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に(共)重合することにより得ることができる。
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンなどが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。なお、これらの他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン系単量体の付加重合体、および、ノルボルネン系単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。
上述したノルボルネン系重合体の中でも、繰り返し単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの繰り返し単位X及びYの含有量が、ノルボルネン系重合体の繰り返し単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの含有割合とYの含有割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れる複層フィルムを得ることができる。
脂環式構造を有する重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
脂環式構造を有する重合体の分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(但し、重合体樹脂がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量Mwがこのような範囲にあるときに、本発明で得られる複層フィルムの機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ、好適である。
さらに、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂は、必要に応じて、脂環式構造を有する重合体以外に、その他の成分を含んでいてもよい。例えば、脂環式構造を有する重合体は、脂環式構造を有さない重合体を含んでいてもよい。ただし、脂環式構造を有さない重合体の量は本発明の効果を著しく損なわない範囲にすることが好ましく、具体的には、脂環式構造を有する重合体100重量部に対して、通常50重量部以下、好ましくは30重量部以下である。
脂環式構造含有重合体樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、脂環式構造含有重合体以外にもその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;耐電防止剤;酸化防止剤;滑剤;界面活性剤などの添加剤が挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ただし、脂環式構造含有重合体樹脂には、実質的に粒子を含まないことが好ましい。ここで実質的に粒子を含まないとは、脂環式構造含有重合体樹脂に粒子を含ませても、粒子を全く含まない状態からの基材フィルムのヘイズの上昇幅が0.05%以下の範囲である量までは許容できることを意味する。脂環式構造含有重合体は、多くの有機粒子や無機粒子との親和性に欠けるため、上記範囲を超えた量の粒子を含む脂環式構造含有重合体樹脂を延伸すると、空隙が発生しやすく、その結果として、ヘイズの著しい低下が生じるおそれがある。
脂環式構造含有重合体樹脂からなる層は、その製法によって特に制限されない。脂環式構造含有重合体樹脂からなる層は、脂環式構造含有重合体樹脂を公知のフィルム成形法で成形することによって得られる。フィルム成形法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶剤を使用しない溶融押出法が、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法などが挙げられ、中でも生産性や厚み精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
[アクリル重合体を含む樹脂]
アクリル重合体を含む樹脂に用いられるアクリル重合体とは、アクリル酸又はアクリル酸誘導体の重合体を意味し、例えばアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルなどの重合体及び共重合体が挙げられる。
アクリル重合体としては、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を含む重合体が好ましい。ここで「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸のことを意味する。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜15のアルカノール又はシクロアルカノールから誘導される構造のものが好ましく、炭素数1〜8のアルカノールから誘導される構造のものがより好ましい。炭素数を前記のように小さくすることにより、位相差フィルムの破断時の伸びを小さくすることができる。
アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシルなどが挙げられる。
また、メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ドデシルなどが挙げられる。
さらに、前記の(メタ)アクリル酸エステルは、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、例えば水酸基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。そのような置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、アクリル重合体は、アクリル酸又はアクリル酸誘導体のみの重合体であってもよいが、アクリル酸又はアクリル酸誘導体とこれに共重合可能な単量体との共重合体でもよい。共重合可能な単量体としては、例えば、上述した(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、並びに、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、およびオレフィン単量体などが挙げられる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、モノカルボン酸、多価カルボン酸、多価カルボン酸の部分エステル及び多価カルボン酸無水物のいずれでもよい。その具体例としては、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。
非共役ジエン単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどが挙げられる。
オレフィン単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどが挙げられる。
アクリル重合体が共重合可能な単量体を含む場合、当該アクリル重合体のおけるアクリル酸又はアクリル酸誘導体に共重合可能な単量体に由来する繰り返し単位の含有量は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
これらのアクリル重合体のうち、ポリメタクリレートが好ましく、中でもポリメチルメタクリレートがより好ましい。
アクリル重合体を含む樹脂は、アクリル重合体以外に、ゴム粒子を含有することが好ましい。ゴム粒子の含有量は、アクリル重合体100重量部に対し5重量部〜50重量部であることが好ましい。
ゴム粒子としては、例えば、アクリル酸エステル重合体ゴム、ブタジエンを主成分とする重合体ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム等で構成されている粒子が挙げられる。アクリル酸エステル重合体ゴムとしては、例えば、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等を単量体単位の主成分とするものがある。これらの内、ブチルアクリレートを主成分としたアクリル酸エステル重合体ゴム及びブタジエンを主成分とする重合体ゴムが好ましい。
ゴム粒子は、二種の重合体が層状になったものであってもよい。その代表例としては、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレートとスチレンとをグラフト化したゴム弾性成分からなるコアと、ポリメチルメタクリレート及び/又はメチルメタクリレートとアルキルアクリレートとの共重合体からなる硬質樹脂層(シェル)とが、コア−シェル構造で層を形成している粒子が挙げられる。
ゴム粒子は、波長380nm〜780nmにおける屈折率np(λ)が、マトリックスとなるアクリル重合体の波長380nm〜780nmにおける屈折率nm(λ)との間に、|np(λ)−nm(λ)|≦0.05の関係を満たすことが好ましい。特に、|np(λ)−nm(λ)|≦0.045であることがより好ましい。なお、np(λ)及びnm(λ)は、波長λにおける主屈折率の平均値である。|np(λ)−nm(λ)|の値が上記値を超える場合には、界面での屈折率差によって生じる界面反射により、透明性を損なうおそれがある。
アクリル重合体を含む樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、アクリル重合体およびゴム粒子以外にもその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例を挙げると、脂環式構造含有重合体樹脂が含んでいてもよいその他の成分と同様の例が挙げられる。なお、その他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
アクリル重合体を含む樹脂からなる層は、その製法によって特に制限されない。アクリル重合体を含む樹脂からなる層は、例えば、前述の脂環式構造含有重合体樹脂からなる層と同様の方法で製造できる。
[ポリカーボネートを含む樹脂]
ポリカーボネートを含む樹脂に用いられるポリカーボネートとしては、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)による繰り返し単位(以下、適宜「カーボネート成分」という。)を有する重合体であれば任意のものを使用できる。また、ポリカーボネートは、1種類の繰り返し単位からなるものを用いてもよく、2種類以上の繰り返し単位を任意の比率で組み合わせてなるものを用いてもよい。さらに、ポリカーボネートは、カーボネート成分以外の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。ポリカーボネートが共重合体である場合、ポリカーボネートはランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体でもよく、グラフト共重合体でもよい。ただし、ポリカーボネートがカーボネート成分以外の繰り返し単位を有する場合でも、ポリカーボネートが含むカーボネート成分の含有率が高いことが好ましく、具体的には、80重量%以上が好ましく、85重量%以上がより好ましい。
ポリカーボネートの例を挙げると、ビスフェノールAポリカーボネート、分岐ビスフェノールAポリカーボネート、o,o,o’,o’−テトラメチルビスフェノールAポリカーボネートなどが挙げられる。
ポリカーボネートを含む樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、ポリカーボネート以外にもその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例を挙げると、脂環式構造含有重合体樹脂が含んでいてもよいその他の成分と同様の例が挙げられる。なお、その他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリカーボネートを含む樹脂からなる層は、その製法によって特に制限されない。ポリカーボネートを含む樹脂からなる層は、例えば、前述の脂環式構造含有重合体樹脂からなる層と同様の方法で製造できる。
[基材フィルムの延伸]
基材フィルムは、延伸されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸された延伸フィルムであってもよい。
基材フィルムの延伸方法は特に制限されず、例えば、一軸延伸法、二軸延伸法のいずれを採用してもよい。延伸方法の例を挙げると、一軸延伸法の例としては、フィルム搬送用のロールの周速の差を利用して縦方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて横方向(幅方向、TD方向ともいう)に一軸延伸する方法等が挙げられる。また、二軸延伸法の例としては、固定するクリップの間隔を開いての縦方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により横方向に延伸する同時二軸延伸法;フィルム搬送用のロール間の周速の差を利用して縦方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法等が挙げられる。さらに、例えば、横又は縦方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いて、フィルムの幅方向に対して任意の角度θをなす方向に連続的に斜め延伸する斜め延伸法を用いてもよい。
延伸に用いる装置として、例えば、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。
延伸時の温度は、未延伸の基材フィルムを形成する材料のガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくは(Tg−30℃)と(Tg+60℃)の間、より好ましくは(Tg−10℃)と(Tg+50℃)の間の温度から選択される。
延伸倍率は、使用する基材フィルムの光学特性に応じて適宜選択すればよく、通常1.05倍以上、好ましくは1.1倍以上であり、通常10.0倍以下、好ましくは2.0倍以下である。
[基材フィルムの表面改質処理]
必要に応じて、基材フィルムの表面には、ウレタン樹脂層を設ける前に表面改質処理を施してもよい。この際、基材フィルムのウレタン樹脂層が設けられる面に、表面改質処理を施すことが好ましい。
表面改質処理を行うことにより、基材フィルムの表面に、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、スルホン基等の官能基を導入することができる。したがって、ポリウレタン水分散体を塗布する場合に、該水分散体が基材フィルムの表面になじむようになるので、均一な塗工が可能になり、均一な厚さのウレタン樹脂層を形成できる。
表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、ケン化処理等が挙げられる。処理効率の点等から、コロナ処理、プラズマ処理が好ましく、コロナ処理が特に好ましい。また、表面改質処理を施される面がアクリル重合体を含む樹脂により形成されている場合には、表面改質処理としてケン化処理を施すことが好ましい。
[基材フィルムの物性等]
基材フィルムは、1mm厚換算での全光線透過率が80%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、全光線透過率が90%以上である。
基材フィルムは、1mm厚でのヘイズが0.3%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、ヘイズが0.2%以下である。ヘイズが0.3%を超えると、基材フィルムの透明性が低下することがある。
基材フィルムの平均厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。
基材フィルムの厚み変動幅は、長尺方向及び幅方向にわたって、前記平均厚みの±3%以内であることが好ましい。厚み変動を上記範囲にすることにより、基材フィルムの位相差(レターデーション)などの光学特性のバラツキを小さくすることができる。
基材フィルムの残留揮発性成分の含有量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。揮発性成分の含有量を上記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、基材フィルムの面内位相差Re及び厚み方向の位相差Rthの経時変化を小さくすることができ、さらには本発明の製造方法で得られる複層フィルムを備える偏光板又は液晶表示装置等の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。揮発性成分は分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の含有量は、分子量200以下の物質の合計として、ガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
基材フィルムとしては、通常、長尺のフィルムを用いる。ここで、長尺とは、フィルムの幅に対して、少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
[ウレタン樹脂層]
本発明の製造方法では、上記の基材フィルム上に、ポリウレタン水分散体を塗布し、硬化してウレタン樹脂層を形成する。この際、ウレタン樹脂層は、接着層等の他の層を介して基材フィルムの表面に形成されていてもよいが、通常は、他の層を介さずに基材フィルムの表面に直接に形成される。また、ウレタン樹脂層は、基材フィルムの一方の表面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。
ウレタン樹脂が接着剤との親和性に優れるので、ウレタン樹脂層は、本発明の積層フィルムを偏光子等の部材と貼り合わせる際に、接着剤による基材フィルムと偏光子等との接着を補強してより強固に接着させる易接着層(プライマー層ともいう)として機能する。
また、ウレタン樹脂は基材フィルムに対しても高い密着性を有するので、本発明の積層フィルムにおいては、基材フィルムとウレタン樹脂層とは強固に密着しており、剥がれ難くなっている。
[ポリウレタン]
ウレタン樹脂層の形成においては、ポリウレタンを含有する水分散体を用いる。かかる水分散体は、ポリウレタンと、必要に応じてその他の成分とが水に分散されてなるものである。ポリウレタンの製造方法としては、例えば、(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とを反応させる方法;または、上記(i)成分及び(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で、反応に不活性で水との親和性の大きい有機溶媒中でウレタン化反応させてイソシアネート基含有プレポリマーとしてポリウレタンを得、次いで、該プレポリマーに水を加えて水分散体とすることによって製造する方法;などが挙げられる。これらのポリウレタン中には、酸成分(酸残基)を含有させてもよい。
なお、イソシアネート基含有プレポリマーの鎖伸長方法は公知の方法によればよく、例えば、鎖伸長剤として、水、水溶性ポリアミン、グリコール類などを使用し、イソシアネート基含有プレポリマーと鎖伸長剤とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させればよい。
前記(i)成分(すなわち、1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分)としては、特に限定されるものではないが、水酸基性の活性水素を有するものが好ましい。このような化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
(1)ポリオール化合物
ポリオール化合物として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
(2)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとして、例えば、前記のポリオール化合物のアルキレンオキシド付加物;アルキレンオキシドと環状エーテル(例えばテトラヒドロフランなど)との開環(共)重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体;グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。
(3)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとして、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸又はその無水物と、上記(1)で挙げられたようなエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコールなどのポリオール化合物とを、水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものなどが挙げられる。より具体的には、例えば、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、グリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオール、などが挙げられる。
(4)ポリエーテルエステルポリオール
ポリエーテルエステルポリオールとして、例えば、エーテル基含有ポリオール(例えば、前記(2)のポリエーテルポリオールやジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を、上記(3)で例示したようなジカルボン酸又はその無水物と混合してアルキレンオキシドを反応させてなるものなどが挙げられる。より具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物などが挙げられる。
(5)ポリカーボネートポリオール
ポリカーカーボネートポリオールとしては、例えば、一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)x−OH(ただし、式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ポリオール残基を示す。また、xは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物などが挙げられる。これらは、飽和脂肪族ポリオールと置換カーボネート(例えば、炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを、水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法;前記飽和脂肪族ポリオールとホスゲンとを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ポリオールを反応させる方法;などにより得ることができる。
上記の(1)から(5)に例示したような化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、(3)ポリエステルポリオールを用いることが特に好ましい。
前記(i)成分と反応させる(ii)成分(即ち、多価イソシアネート成分)としては、例えば、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環族または芳香族の化合物が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数4〜18の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、酸構造を含有するポリウレタン(以下、適宜「酸構造含有ポリウレタン」という。)は、界面活性剤を使用せずに、若しくは界面活性剤の量が少なくても、水中に分散させることが可能となるので、形成されるウレタン樹脂層の耐水性が良くなることが期待される。また、酸構造含有ポリウレタンは、界面活性剤が不要又は少量で済むので、基材フィルムとの接着性に優れ、かつ高い透明性を維持できるため、好ましい。
酸構造としては、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)等の酸基などを挙げることができる。また、酸構造は、ポリウレタンにおいて側鎖に存在していてもよく、末端に存在していてもよい。
酸構造の含有量としては、ポリウレタンの酸価として、好ましくは20mgKOH/g以上、より好ましくは25mgKOH/g以上であり、好ましくは250mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下である。酸価が20mgKOH/g未満では水分散性が不十分となりやすく、酸価が250より大きいと形成されるウレタン樹脂層の耐水性が劣る傾向がある。
ポリウレタンに酸構造を導入する方法は、従来から用いられている方法が特に制限なく使用できる。好ましい例を挙げると、ジメチロールアルカン酸を、前記(2)から(4)に記載したグリコール成分の一部もしくは全部と置き換えることによって、予めポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等にカルボキシル基を導入する方法が挙げられる。ここで用いられるジメチロールアルカン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。なお、ジメチロールアルカン酸は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、ポリウレタンが含む酸構造の少なくとも一部は、中和することが好ましい。酸構造を中和することにより得られるポリウレタン(以下、適宜「中和処理後ポリウレタン」という。)により形成されたウレタン樹脂層を備えることにより、本発明で得られる複層フィルムは、高温下に曝された熱履歴を有しても、光学材料としての特性を維持したり、他の光学フィルム(特に偏光子)に積層して使用されるときに複層フィルムと他の光学フィルムとの密着性を良好に保ったりすることが可能である。また、酸構造を中和しても、界面活性剤を使用せずに、若しくは界面活性剤の量が少なくても、ポリウレタンを水中に分散させることは可能である。
ポリウレタンが含む酸構造のうち、中和される酸構造の割合は、20%以上が好ましく、50%以上が特に好ましい。酸構造のうちの20%以上が中和されることにより、本発明で得られる複層フィルムが高温下に曝された熱履歴を有しても、光学材料としての特性を維持しつつ、他の光学フィルムに積層して使用されるときに光学フィルムとの密着性をより一層維持することができる。
なお、中和処理後ポリウレタンは、酸構造含有水系ウレタンが含む酸構造のうちの全部が中和されていてもよい。
[不揮発性塩基]
酸構造を中和する中和剤としては、通常、不揮発性塩基を用いる。不揮発性塩基としては、例えば、ポリウレタン水分散体を基材フィルムの表面に塗布した後に乾燥させる際の処理条件下(例えば80℃で1時間放置した場合)において、実質的に不揮発性である塩基が挙げられる。ここで実質的に不揮発性であるとは、通常、不揮発性塩基の減少分が80%以下であることをいう。
不揮発性塩基としては、水に溶解性があるか、または水に分散してエマルジョン化しうるものが好ましい。これにより、未硬化状態のポリウレタン樹脂を水分散体として用いる場合に、その塗布性を良好にして、ウレタン樹脂層の形成を容易に行うことが可能となる。
前記不揮発性塩基としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機塩基;
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパン水酸化カリウム、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトシキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ−エトキシ)シラン、シクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンペンタミン、アミノエチルエタノールアミン、1,2−プロパンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルエタノールアミン、アミノヘキシルエタノールアミン、アミノエチルプロパノールアミン、アミノプロピルプロパノールアミン、アミノヘキシルプロパノールアミン、5−アミノピラゾール、1−メチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−5−アミノピラゾール、1,3−ジメチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−アシノ−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、3−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−4−クロロ−5−アミノピラゾールなどの一級アミン;
ジエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの二級アミン;
N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシカルボン酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、グリコリック酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物;
トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリ[(2−ヒドロキシ)−1−プロピル]アミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレアなどの三級アミン;
イミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−エチルイミダゾール、2−アミノイミダゾールサルフェート、2−(2−アミノエチル)−ベンゾイミダゾール等イミダゾール化合物;
イミダゾリン、2−メチル−2−イミダゾリン等のイミダゾリン化合物;などが挙げられる。
なかでも、ヒドラジド化合物のようにヒドラジノ基(−NHNH基)を有する化合物は、反応性が高いのでウレタン樹脂層の機械的強度を適切に向上させることができ、また比較的沸点が高くウレタン樹脂層の耐熱性を高くできるので、特に好ましい。また、不揮発性塩基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[水分散体の製造]
本発明では、上記のポリウレタンを水分散体として用いる。ポリウレタンを水分散体とする方法は限定されないが、前記ポリウレタンの製造方法において、(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とをイソシアネート基過剰の条件下で、反応に不活性で水との親和性の大きい有機溶媒中でウレタン化反応させてイソシアネート基含有プレポリマーとしてポリウレタンを得、次いで、該プレポリマーに水を加えて水分散体とする方法によることが好ましい。この方法によれば、所望の粒径分布を有し、V1/V2が0.11以下であるポリウレタンを容易に水分散体として得ることができる。
本発明に用いられるポリウレタンの数平均分子量は、1,000以上が好ましく、より好ましくは20,000以上であり、1,000,000以下が好ましく、より好ましくは200,000以下である。ポリウレタンの数平均分子量が小さいほど水分散体としたときの粒径を小さくできるので、ポリウレタンの数平均分子量を調節することによりV1/V2の値を調節することができる。
有機溶媒中でプレポリマーとしてポリウレタンを得、該プレポリマーに水を加えて水分散体とする場合は、該プレポリマーが有機溶媒中に溶解または分散した溶液または分散液を水に添加して分散させることが好ましい。有機溶媒中のプレポリマーの濃度は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%である。有機溶媒中のプレポリマーの濃度が低いほど水分散体としたときの粒径を小さくできるので、有機溶媒中のプレポリマーの濃度を調節することによりV1/V2の値を調節することができる。
前記溶液または分散液を水に添加するときの水の量は、ポリウレタンを水分散体としたときの固形分濃度が、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは10〜30重量%となる量である。該固形分濃度が低いほど水分散体としたときの粒径を小さくできるので、分散に用いる水の量を調節することによりV1/V2の値を調節することができる。
前記溶液または分散液を水に添加して分散させるときは、水を高速で攪拌して水と前記溶液または分散液とを混合して分散させることが好ましい。撹拌方法は特に限定されない。撹拌の回転数は2,000rpm以上10,000rpm以下が好ましく、4,000rpm以上8,000rpm以下がより好ましい。
以上により、V1/V2が0.11以下である、ポリウレタン水分散体を得ることができる。
V1/V2が0.11以下である、ポリウレタン水分散体を得る他の方法として、V1/V2が0.11より大きい、ポリウレタン水分散体を製造し、これをろ過することにより粒径の大きい粒子を除去して、V1/V2が0.11以下である、ポリウレタン水分散体を得る方法も挙げられる。しかしこの方法では、粒径の大きい粒子を十分に除去できない場合がある。これは、ポリウレタンの粒子は水中でその形状が一定ではなく、ろ過の際に除去したい粒子の粒径より目の細かいフィルターを用いても、粒子がフィルターを透過してろ液に残るためと推測される。一方、過度に目の細かいフィルターを用いてろ過を行うと、粒径の小さい粒子も除去されてろ液に含まれる粒子の量が少なくなり、またフィルターに目詰まりが生じて生産性が低下する場合がある。したがって、上記の方法によりポリウレタンを水に分散させる工程においてV1/V2が0.11以下である水分散体とする方法が好ましい。
ポリウレタン水分散体には、水溶性の溶剤が含まれていてもよい。水溶性の溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリウレタン水分散体は、水分散体中のポリウレタンの固形分濃度を10重量%としたときに、直径25mmかつ平均孔径1μmのフィルターに0.2MPaの圧力をかけてろ過したときの120秒間のろ過量が、7g以上であることが好ましく、平均孔径0.5μmのフィルターを用いる以外は同様にろ過したときの120秒間のろ過量が、7g以上であることがより好ましい。
[その他の成分]
ポリウレタン水分散体は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述したもの以外の成分を含んでいてもよい。
[架橋剤]
得られるウレタン樹脂層の機械強度を向上させる目的で、ポリウレタン水分散体は架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、ポリウレタンが有する反応性基と反応する官能基を有する化合物であれば、特に制限なく使用することができる。好ましい架橋剤の例を挙げると、材料の汎用性の観点から、水系エポキシ化合物、水系アミノ化合物、水系イソシアネート化合物、水系カルボジイミド化合物等が挙げられる。なかでも、水系エポキシ化合物又は水系アミノ化合物を使用することが、接着性の観点から好ましい。
水系エポキシ化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のエポキシ基を有する化合物であればよい。水系エポキシ化合物の例を挙げると、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエーテル化によって得られるジエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モル以上とのエーテル化によって得られるポリエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエステル化によって得られるジエポキシ化合物等のエポキシ化合物;などが挙げられる。
水系アミノ化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のアミノ基を有する化合物であればよい。水系アミノ化合物の例を挙げると、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタール酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、グリコリック酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、メラミン樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂等が挙げられる。
水系イソシアネート化合物としては、水に溶解性があるか、又は、エマルジョン化した2個以上の非ブロック型のイソシアネート基若しくはブロック型のイソシアネート基を有する化合物であればよい。非ブロック型のイソシアネート化合物としては、例えば、多官能イソシアネート化合物と一価又は多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールとを反応させて得られる化合物が挙げられる。ブロック型イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、2,4,−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、およびこれらのイソシアヌレート変性体、アダクト変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、並びに、これらの重合体で1個以上のイソシアネート基を有するものをポリオキシアルキレン基、カルボキシル基等で変性し、水溶性およびまたは水分散性にし、イソシアネート基をブロック剤(フェノール、ε−カプロラクタム等)でマスクすることにより得られる化合物などが挙げられる。
水系カルボジイミド化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のカルボジイミド結合(−N=C=N−)を有する化合物であればよい。2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物は、例えば、2分子以上のポリイソシアネートとカルボジイミド化触媒とを用いて、2個のイソシアネート基を脱炭酸反応させてカルボジイミド結合を形成させる方法によって得ることができる。2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物を作製する際に使用されるポリイソシアネートおよびカルボジイミド化触媒は特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。
架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
架橋剤の量は、ポリウレタン100重量部(固形分)に対して、固形分で、通常1重量部以上、好ましくは5重量部以上であり、通常30重量部以下、好ましくは15重量部以下である。これにより、ウレタン樹脂層の強度と水分散体の安定性とを両立できる。
[微粒子]
ポリウレタン水分散体は、さらに微粒子を含むことが好ましい。微粒子を含む水分散体を用いると、得られるウレタン樹脂層が微粒子を含むことになり、ウレタン樹脂層の表面に凹凸を形成できる。これにより、巻回の際にウレタン樹脂層が他の層と接触する面積が小さくなり、その分だけウレタン樹脂層の表面の滑り性を向上させて、本発明の複層フィルムを巻回する際のシワの発生を抑制できる。
微粒子の平均粒子径は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、通常500nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることによりウレタン樹脂層の滑り性を効果的に高めることができ、前記範囲の上限値以下にすることによりヘイズを低く抑えることができる。なお、微粒子の平均粒子径としては、レーザー回折法によって粒径分布を測定し、測定された粒径分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(50%体積累積径D50)を採用する。
微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子のいずれを用いてもよいが、水分散性の微粒子を用いることが好ましい。無機微粒子の材料を挙げると、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物;炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。また、有機微粒子の材料を挙げると、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましい。シリカの微粒子は、シワの発生を抑制する能力及び透明性に優れ、ヘイズを生じ難く、着色が無いため、本発明の複層フィルムの光学特性に与える影響がより小さいからである。また、シリカはウレタン樹脂への分散性および分散安定性が良好だからである。シリカの微粒子の中でも、非晶質コロイダルシリカ粒子が特に好ましい。
なお、微粒子は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
用いる微粒子の量は、ポリウレタン100重量部に対し、通常0.5重量部以上、好ましくは5重量部以上、より好ましくは8重量部以上であり、通常20重量部以下、好ましくは18重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。微粒子の量を前記の範囲の下限値以上とすることにより、本発明で得られる複層フィルムを巻回した場合にシワの発生を抑制できる。また、微粒子の量を前記範囲の上限値以下とすることにより、本発明で得られる複層フィルムの白濁の無い外観を維持できる。
微粒子は、溶媒に微粒子が分散した組成物(例えば、ゾル等)の形態で用いてもよい。この場合、必ずしもゾルから微粒子を取り出す必要は無く、ゾルのままポリウレタン水分散体に混合してもよい。
さらに、ポリウレタン水分散体には、本発明の効果を著しく損なわない限り、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、架橋剤などを含ませてもよい。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[ウレタン樹脂層の形成]
本発明の製造方法では、基材フィルム上に、ポリウレタンを含有する水分散体を塗布し、硬化してウレタン樹脂層を形成する。ポリウレタン水分散体は、該ポリウレタンが、粒径が0.2μm以上の粒子の割合V1(体積%)と粒径が0.2μm未満の粒子の割合V2(体積%)の比V1/V2が0.11以下であれば特に限定されず、例えば、エマルションやコロイド分散系などの形態であってもよい。
ポリウレタン水分散体中のポリウレタンの固形分濃度は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。ポリウレタン水分散体の取り扱い性に優れ、塗布が容易となるからである。
[水分散体のろ過]
V1/V2が0.11以下のポリウレタン水分散体は、ろ過して用いることが好ましい。ろ過を行うことにより、異物が少ないウレタン樹脂層を形成することができる。これは、上述のようにろ過によっても粒径の大きい粒子を必ずしも除去できるものではないが、水分散体がフィルターを通過する際に個々の粒子が均一に分散し、粒子の二次凝集を抑制できるためと考えられる。
具体的には、粒子捕捉性能が5μm以上20μm以下であるフィルターでろ過し、次いで粒子捕捉性能が0.8μm以上5μm以下であるフィルターでろ過を行うことが好ましい。ここで粒子捕捉性能とは、標準ダスト分散水を10L/minで濾過したときに99%以上を捕捉する最大の粒子径で表される値である。
ろ過時の流量は、好ましくは8×10−7L/min/mm以上2×10−3L/min/mm以下、より好ましくは3×10−6L/min/mm以上7×10−4L/min/mm以下、さらに好ましくは5×10−6L/min/mm以上3×10−4L/min/mmである。流量が少なすぎると水分散体中の粒子の分散が不十分となり、粒子が凝集して得られるウレタン樹脂層中の異物が増加する場合がある。一方、流量が多すぎるとフィルターにかかる圧力が高くなり、フィルターが破れたり耐用期間が短くなったりするおそれがある。
ポリウレタン水分散体をろ過して用いる場合、ポリウレタンおよび水以外の前期各成分は、ろ過前に水分散体に添加してもよく、ろ過後に水分散体に添加してもよい。
[ポリウレタン水分散体の塗布]
ポリウレタン水分散体を基材フィルム上に塗布するときの粘度は、15mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であることが特に好ましい。ポリウレタン水分散体の粘度が前記範囲内にあると、基材フィルムの表面にポリウレタン水分散体を薄くかつ均一に塗布することができる。なお、前記の粘度は、音叉型振動式粘度計により25℃の条件下で測定した値であり、例えば、ポリウレタン水分散体に含まれるポリウレタンの量、及び、ポリウレタンの粒径などを調整することにより、制御できる。
ポリウレタン水分散体を基材フィルム上に塗布する方法は特に限定されず、公知の塗布法を採用すればよい。具体的な塗布法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法等が挙げられる。
ポリウレタン水分散体を塗布する量は、硬化後に形成されるウレタン樹脂層の厚さで、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、特に好ましくは0.03μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、特に好ましくは3μm以下となる量である。硬化後のウレタン樹脂層の厚さが前記範囲内となるように、ポリウレタン水分散体の固形分濃度および塗布量を調整すればよい。ウレタン樹脂層の厚さが前記範囲内にあると、基材フィルムとウレタン樹脂層との十分な接着強度が得られ、かつ、本発明で得られる複層フィルムの反りなどの欠陥を無くすことができる。
[硬化]
ポリウレタン水分散体を基材フィルムに塗布した後で、ポリウレタンを硬化してウレタン樹脂層を形成し、複層フィルムを得る。
ウレタン樹脂は水を含むので、硬化させる際には水を乾燥させて除去する。乾燥方法は任意であり、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥など任意の方法で行ってもよい。中でも、架橋反応等の反応を速やかに進行させる観点から、加熱乾燥によってポリウレタンを硬化させることが好ましい。
加熱によりポリウレタンを硬化させる場合、加熱温度は、溶剤を乾燥させて未硬化状態のポリウレタンを硬化させることができる範囲で適切に設定する。ただし、基材フィルムとして延伸フィルムを用い、且つ、当該基材フィルムに発現した位相差を変化させたくない場合には、加熱温度は、基材フィルムにおいて配向緩和が生じない温度に設定することが好ましい。具体的には、基材フィルムを形成する材料のガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくは(Tg−30)℃以上、より好ましくは(Tg−10)℃以上であり、好ましくは(Tg+60)℃以下、より好ましくは(Tg+50)℃以下である。
[その他の層]
上記本発明の製造方法で得られる複層フィルムは、本発明の要旨を逸脱しない限り、基材フィルムのウレタン樹脂層を形成しない側の表面に、他の層を備えていてもよい。その例を挙げると、反射防止層、ハードコート層、帯電防止層、防眩層、防汚層、セパレーターフィルム等が挙げられる。これらの層は、ウレタン樹脂層を形成する前の基材フィルムに形成してもよく、ウレタン樹脂層を形成後の複層フィルムに形成してもよい。
[複層フィルムの用途]
上記本発明の製造方法で得られる複層フィルムは、通常、光学フィルムとして使用される。複層フィルムの用途となる光学フィルムの例を挙げると、保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムなどが挙げられる。複層フィルムは、延伸フィルムとして用いてもよい。すなわち、基材フィルムとして延伸フィルムを用いてその上にウレタン樹脂層を形成してもよいし、基材フィルム(延伸フィルムでも未延伸のフィルムでもよい)の上にウレタン樹脂層を形成して積層フィルムを製造した後にさらに延伸して用いてもよい。中でも、本発明の製造方法で得られる複層フィルムは耐久性に優れるので、保護フィルムとして用いることが好ましい。具体例を挙げると、偏光子、反射防止膜付フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム及び輝度向上フィルム等の光学フィルムと本発明で得られる複層フィルムとを組み合わせて用いることにより、該複層フィルムを組み合わせた光学フィルムの耐久性を向上させることができる。また、本発明で得られるフィルムは、例えばUV硬化樹脂との密着性に優れていたり、プリズム形状等の凹凸が形成されたフィルム、シート又は基板との密着性に優れていたりするので、前記のような光学フィルムと容易に貼り合わせることができる。
上述した用途の中でも、本発明の製造方法で得られる複層フィルムは、偏光板保護フィルムに適している。複層フィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、その偏光板保護フィルムは本発明で得られる複層フィルムを備えていればよく、例えば、該複層フィルム単独で偏光板保護フィルムとして用いてもよく、該複層フィルムと他のフィルムとを組み合わせて偏光板保護フィルムとして用いてもよい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である
〔粒径が0.2μm以上の粒子の割合V1(体積%)と粒径が0.2μm未満の粒子の割合V2(体積%)の比V1/V2〕
水系ウレタン樹脂の水分散体2gにドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの0.5重量%水溶液50gを加えて希釈し、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置(コールター社製 LS−230)で粒度分布を測定した結果より算出した。
〔ろ過量〕
水系ウレタン樹脂水分散体に純水を加えて希釈し、固形分濃度10%の試験液を作製した。5mLのシリンジで試験液を吸い上げ、三方コックと圧力計、孔径1.0μmのメンブランフィルターを取り付けて、0.2MPaの圧力で120秒間保持し、ろ過された試験液の重量を測定した。
〔フィルターの粒子捕捉性能〕
標準ダスト分散水を10L/minで濾過したとき、99%以上が捕捉される最小の粒子径を粒子捕捉性能とした。
〔異物〕
実施例および比較例で得られた複層フィルムから400mm×2,500mmの試験片を切り出し、これを目視と顕微鏡で観察して異物数を測定した。100μm以上の異物数が2個未満の場合をA、2個以上5個未満の場合をB、5個以上の場合をCと評価した。
〔塗布むら〕
実施例および比較例で得られた複層フィルムから400mm×2,500mmの試験片を切り出し、これをクロスニコルに配置した偏光板の間に45°に配置して目視観察し、むらの数が5個未満をA、5個以上10個未満をB、10個以上をCとした。
〔製造例1:塗工液Aの製造〕
温度計、攪拌機、窒素導入管および冷却管を備えた反応器に、3−メチル−1,5−ペンタンジオール317.2部、テレフタル酸174部およびアジピン酸146部を入れ、常圧下、窒素ガスを通じつつ、反応温度200℃で、生成する水を反応系外に留去しながらエステル化反応を行った。ポリエステルの酸価が1.0mgKOH/gになった時点で真空ポンプを用いて、徐々に反応器内の真空度を上げて反応を完結させた。得られたポリエステルポリオールの水酸基価は56.1mgKOH/g、酸価は0.2mgKOH/g、水酸基価より算出した数平均分子量は2,000であった。
温度計、攪拌機、窒素導入管および冷却管を備えた反応器にに、上記で得られたポリエステルポリオール840部、トリレンジイソシアネート119部、メチルエチルケトンを900部を入れ、窒素を導入しながら75℃で1時間反応させた。反応終了後、60℃まで冷却し、ジメチロールプロピオン酸を41部と、トリエチルアミン25部とを加え、75℃で反応させて、NCOが0.5%の末端イソシアネート基を有するプレポリマー溶液を得た。次いで、このプレポリマー溶液を40℃まで冷却し、水4,000部を加え、ホモミキサーで高速撹拌することにより乳化を行った。この乳化液から加熱減圧下にメチルエチルケトンを留去し、固形分20%の水系ウレタン樹脂の水分散体を得た。この水分散体についてV1/V2およびウレタン樹脂水分散体試験液のろ過重量を測定した結果を、表1に示す。
上記で得られた水系ウレタン樹脂の水分散体10部に、シリカ粒子の水分散体であるスノーテックス20L(日産化学工業社製)1部および水33部を加えて固形分5%に希釈し、ポリウレタンを含有する水分散体である塗工液Aを得た。
〔製造例2:塗工液Bの製造〕
製造例1と同様にしてプレポリマー溶液を得た。次いで、このプレポリマー溶液を40℃まで冷却し、水3,000部を加え、ホモミキサーで高速撹拌することにより乳化を行った。この乳化液から加熱減圧下にメチルエチルケトンを留去し、固形分25%の水系ウレタン樹脂の水分散体を得た。この水分散体についてV1/V2およびウレタン樹脂水分散体試験液のろ過重量を測定した結果を、表1に示す。
上記で得られた水系ウレタン樹脂の水分散体16部に、水系カルボジイミド化合物であるカルボジライトV−02(日清紡績社製)0.2部、スノーテックス20L(日産化学工業社製)1部および水123部を加え攪拌することにより、固形分が3%のポリウレタンを含有する水分散体である塗工液Bを得た。
〔製造例3:塗工液Cの製造〕
製造例1と同様にしてプレポリマー溶液を得た。次いで、このプレポリマー溶液を40℃まで冷却し、水1,500部を加え、ホモミキサーで高速撹拌することにより乳化を行った。この乳化液から加熱減圧下にメチルエチルケトンを留去し、固形分40%の水系ウレタン樹脂の水分散体を得た。この水分散体についてV1/V2およびウレタン樹脂水分散体試験液のろ過重量を測定した結果を、表1に示す。
上記で得られた水系ウレタン樹脂の水分散体10部に、スノーテックス20L(日産化学工業社製)1部および水73部を加えて固形分5%に希釈し、ポリウレタンを含有する水分散体である塗工液Cを得た。
〔製造例4:基材フィルムの製造〕
脂環式構造含有重合体樹脂(ZEONOR1430、日本ゼオン社製;ガラス転移温度135℃)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥した。その後、65mm径のスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式のフィルム溶融押出し成形機を使用し、溶融樹脂温度270℃、Tダイの幅500mmの成形条件で、厚み100μm、長さ1000mの未延伸フィルムを製造した。この未延伸フィルムを、ロール式縦延伸機を用いて、延伸温度140℃、延伸倍率1.1倍で連続的に縦一軸延伸することにより、配向軸が長さ方向に一致した延伸フィルムとして基材フィルムを得た。この基材フィルムは、脂環式構造含有重合体樹脂からなる基材フィルムである。
[実施例1]
コロナ処理装置(春日電機社製)を用いて、出力200W、電極長240mm、ワーク電極間1.0mm、搬送速度15m/minの条件で、製造例4で得た基材フィルムの表面に放電処理を施した。電極としては、ステンレス製で直径1.2mmのワイヤー電極を用いた。コロナ処理後の基材フィルムの平均水接触角は55°であった。
製造例1で得た塗工液Aを、ろ過流量4×10−5L/min/mmで、粒子捕捉性能が10μmの第1フィルター(アドバンテック社製デプスカートリッジフィルター;TCPD−3−S1FE)を用いてろ過した。次いで、ろ過流量4×10−5L/min/mmで、粒子捕捉性能が1μmの第2フィルター(アドバンテック社製デプスカートリッジフィルター;TCPD−01−S1FE)を用いてろ過した。上記基材フィルムのコロナ処理を施した表面に、上記ろ過後の塗工液Aを、乾燥膜厚が200nmになるようにロールコーターを用いて塗布し、130℃で1分乾燥してウレタン樹脂を硬化させ、複層フィルム1を得た。この複層フィルム1についてフィルム欠陥と塗布むらを測定した結果を表1に示す。
[実施例2]
ポリウレタンを含有する水分散体として塗工液Aに替えて塗工液Bを用い、第2フィルターとして粒子捕捉性能が5μmのもの(アドバンテック社製デプスカートリッジフィルター;TCPD−1−S1FE)を用いた他は実施例1と同様にして、複層フィルム2を得た。この複層フィルム2についてフィルム欠陥と塗布むらを測定した結果を表1に示す。
[実施例3]
第1フィルターとして粒子捕捉性能が20μmのもの(アドバンテック社製デプスカートリッジフィルター;TCPD−7−S1FE)を用いた他は実施例1と同様にして、複層フィルム3を得た。この複層フィルム3についてフィルム欠陥と塗布むらを測定した結果を表1に示す。
[実施例4]
第1フィルターとして粒子捕捉性能が40μmのもの(アドバンテック社製デプスカートリッジフィルター;TCPD−10−S1FE)を用いた他は実施例1と同様にして、複層フィルム4を得た。この複層フィルム4についてフィルム欠陥と塗布むらを測定した結果を表1に示す。
[実施例5]
第1フィルターとして粒子捕捉性能が5μmのもの(アドバンテック社製デプスカートリッジフィルター;TCPD−1−S1FE)を用い、第2フィルターとして粒子捕捉性能が10μmのもの(アドバンテック社製デプスカートリッジフィルター;TCPD−3−S1FE)を用いた他は実施例1と同様にして、複層フィルム5を得た。この複層フィルム5についてフィルム欠陥と塗布むらを測定した結果を表1に示す。
[比較例1]
ポリウレタンを含有する水分散体として塗工液Aに替えて塗工液Cを用いた他は実施例1と同様にして、複層フィルム6を得た。この複層フィルム6についてフィルム欠陥と塗布むらを測定した結果を表1に示す。
[比較例2]
第1フィルターとして粒子捕捉性能が5μmのもの(アドバンテック社製デプスカートリッジフィルター;TCPD−1−S1FE)を用いた他は比較例1と同様にして、複層フィルム7を得た。この複層フィルム7についてフィルム欠陥と塗布むらを測定した結果を表1に示す。
[比較例3]
第1フィルターおよび第2フィルターによるろ過を行わなかった他は比較例1と同様にして、複層フィルム8を得た。この複層フィルム8についてフィルム欠陥と塗布むらを測定した結果を表1に示す。
Figure 0005845895
以上より、本発明の複層フィルムの製造方法によれば、異物および塗布むらが少なく、均一なウレタン樹脂層を有する複層フィルムが得られることが分かる。

Claims (3)

  1. 基材フィルム上に、ポリウレタンを含有する水分散体を塗布し、硬化してウレタン樹脂層を形成することを含む複層フィルムの製造方法であって、
    前記ポリウレタンは、粒径が0.2μm以上の粒子の割合V1(体積%)と粒径が0.2μm未満の粒子の割合V2(体積%)の比V1/V2が0.11以下であり、
    前記塗布は、前記ポリウレタンを含有する水分散体を、標準ダスト分散水を10L/minで濾過したときに99%以上を捕捉する最大の粒子径で表される粒子捕捉性能が5μm以上20μm以下であるフィルターでろ過し、次いで粒子捕捉性能が0.8μm以上5μm以下であるフィルターでろ過した後に行うことを特徴とする複層フィルムの製造方法。
  2. 前記ポリウレタンを含有する水分散体がさらに架橋剤を含む、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記ポリウレタンを含有する水分散体がさらに微粒子を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
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