JP3900191B2 - 積層熱可塑性樹脂フィルムおよび積層熱可塑性樹脂フィルムロール - Google Patents

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本発明は、ディスプレイ関連に主として用いられる、反射防止フィルム、光拡散シート、プリズムシート、赤外線吸収フィルム、透明導電性フィルム、防眩フィルム、などの各種機能層(ハードコート層、光拡散層、プリズム層、赤外線吸収層、透明導電層、防眩層など)との密着性に優れ、かつ耐ブロッキング性、透明性に優れる、光学機能性フィルムまたは光学機能性シートの基材となる、特異な相分離構造を有する被覆層が形成されてなる積層熱可塑性樹脂フィルム、及び前記の積層熱可塑性樹脂フィルムをロール状に巻き取ってなる積層熱可塑性樹脂フィルムロールに関するものである。
一般に、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のディスプレイの部材に用いられる光学機能性フィルムの基材には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリオレフィン等からなる透明フィルムが用いられている。これらの基材フィルムを各種光学機能フィルムに用いる場合には、基材フィルムに各種用途に応じた機能層が積層される。例えば、液晶ディスプレイ(LCD)では、表面の傷つきを防止する保護膜(ハードコート層)、外光の映り込みを防止する反射防止層(AR層)、光の集光や拡散に用いられるプリズム層、輝度を向上する光拡散層等の機能層が挙げられる。これらの基材の中でも、特に、二軸配向ポリエステルフィルムは、優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性の点から、各種光学機能性フィルムの基材として広く使用されている。
一般に、二軸配向ポリエステルフィルムや二軸配向ポリアミドフィルムのような二軸配向熱可塑性フィルムの場合、フィルム表面は高度に結晶配向しているため、各種塗料、接着剤、インキなどとの密着性に乏しいという欠点がある。このため、従来から二軸配向熱可塑性樹脂フィルム表面に種々の方法で易接着性を付与する方法が提案されてきた。
また、ポリオレフィンフィルムのような極性基を有しないフィルムでは、各種塗料、接着剤、インキなどとの密着性が非常に乏しいため、事前にコロナ放電処理、火焔処理などの物理的処理や化学処理を行った後、フィルム表面に種々の方法で易接着性を付与する方法が提案されてきた。
例えば、基材の熱可塑性樹脂フィルムの表面に、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルグラフトポリエステルなどの各種樹脂を被覆層の主たる構成成分とし、塗布法によって基材フィルムに前記被覆層を設けることにより、基材フィルムに易接着性を付与する方法が一般的に知られている。この塗布法の中でも、結晶配向が完了する前の熱可塑性樹脂フィルムに、直接又は必要に応じてコロナ放電処理を施してから、前記樹脂の溶液または樹脂を分散媒で分散させた分散体を含有する水性塗布液を基材フィルムに塗工し、乾燥後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を施して、熱可塑性樹脂フィルムの結晶配向を完了させる方法(いわゆる、インラインコート法)や、熱可塑性樹脂フィルムの製造後、該フィルムに水系または溶剤系の塗布液を塗布後、乾燥する方法(いわゆる、オフラインコート法)が工業的に広く実施されている。
LCD、PDP等のディスプレイは、年々大型化と低コスト化が進み、その部材として用いられる光学機能性フィルムまたは光学機能性シートの製造工程において、生産速度の高速化が実施されている。このような製造工程の高速化にともない、ハードコート層、拡散層、プリズム層のような機能層と基材フィルムとの界面に、硬化収縮にともなう応力がより生じやすくなっている。そのため、ディスプレイを製造するために、光学機能性フィルムまたは光学機能性シートを特定のサイズにカッティングする際に、前記の界面における密着性が不十分であると、端部が特に剥がれやすくなるという問題がおこってきた。この傾向は、ロール状に巻き取ったフィルムの大型化や、製造工程における生産速度の高速化が進むほど、カッティング時の衝撃による界面の剥離の影響はより顕著になり、従来の密着性のレベルでは不十分となってきている。
さらに、前記のプリズム層や拡散層等の機能層を形成させるために使用する加工剤は、環境負荷の低減の点から、有機溶剤で希釈せずに直接、基材フィルムに加工剤を塗布する場合が多い。そのため、有機溶剤による被覆層の濡れ性向上効果が十分に得られない場合があるため、より高い密着性が要求される。一方、ハードコートのように平滑性を重視する用途では、加工剤の粘度を下げて良好なレベリング効果を得るために、加工剤を有機溶剤で希釈する場合が多い。この場合には、積層熱可塑性樹脂フィルムの被覆層には、適度な耐溶剤性が要求される。
機能層と基材フィルム間の密着性を向上させるためには、被覆層を構成する樹脂に、ガラス転移温度が低い樹脂を用いる方法が一般的である。しかしながら、ガラス転移温度の低い樹脂を用いた場合、フィルムをロール状に連続的に巻き取り、ロール状フィルムからフィルムを巻きだす際に、耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
また、近年、低コスト化のために、ハードコート層や拡散層などの機能層を基材フィルムに積層するための加工機の大型化が進み、基材フィルムとして使用される易接着フィルムのロール径も大型化してきている。これにともなって、ロールの巻きズレ防止のために、高張力で巻き取る場合、特に、ロールの巻き芯部では高い圧力で圧着されるために、ブロッキングがより発生しやすくなる。
耐ブロッキング性を向上させるためには、フィルム表面に凹凸を付与し、接触面積を小さくする方法が一般的に採用される。フィルム表面に凹凸を付与するためには、被覆層又は基材フィルム中に含有させる、無機粒子あるいは有機粒子の含有量を増やす方法、あるいは粒径の大きな粒子を用いる方法が一般的である。しかしながら、一般的に市販で入手できる粒子の屈折率は被覆層に用いる樹脂の屈折率と相違しており、またフィルムの延伸処理にともない粒子の周囲にボイドが形成されるため、これらの方法では、フィルムの光線透過率の低下、ヘーズの上昇などが生じる。特に、光学機能性フィルムまたは光学機能性シートの基材フィルムに要求される、透明性が低下する。すなわち、従来の方法では、工程の高速化やフィルムのロール径の大型化にともなう新たな問題により、透明性を維持しながら、機能層との密着性や耐ブロッキング性を向上させることは極めて困難であった。
一方、携帯電話、PDA、モバイル型コンピュータのように、情報端末を屋外で使用する機会が増えている。さらに、カーナビゲーションなどに用いられるタッチパネルのように、夏場に高温になる車内で使用される材料も増えている。したがって、このような高温、高湿の過酷な環境下でも品質変化が少ないフィルム、すなわち、耐湿熱密着性に優れたフィルムが、このような用途では要望されている。
特に、二軸配向ポリエステルフィルムは、プリズムレンズやハードコート等に使用されるアクリル系樹脂を主成分とするコート剤との密着性が悪いことが知られている。このため、ポリエステルフィルムの表面に、ポリウレタン系樹脂等よりなる被覆層を形成したものが、各種提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、ポリウレタン系樹脂よりなる被覆層を形成したものでは、ハードコート層などの機能層との密着力は向上するものの、基材であるポリエステルフィルムとの密着力が十分でなく、結果的に被覆層と機能層との界面で密着性が不十分であるという問題があった。また、被覆層を構成する樹脂の架橋度も低く、耐湿熱密着性に劣るため、耐湿熱密着性が強く要望される用途では、前記の市場要求を十分満足できない場合もあった。
特開平6−340049号公報
また、インラインコート法によって、二軸配向ポリエチレンテレフタレートからなる基体フィルム上に、ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂を主たる構成成分とする樹脂組成物層を設け、基材ポリエステルフィルムとインキ等の機能層との密着性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。具体的には、縦方向に一軸延伸されたポリエステルフィルムに、共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂(=20/80;質量%)を含む水分散性塗布液を塗布後、テンターに導き、乾燥、横延伸後、220℃で熱固定し易接着性二軸配向ポリエステルフィルムを得ている。
特公昭64−6025号公報
しかしながら、特許文献2記載の方法では、密着性は改善されるものの、近年、光学機能性フィルムまたは光学機能性シートに使用する基材フィルムとして要求される、基材フィルムとハードコート層や拡散層などの機能層との密着性、耐ブロッキング性、透明性を同時に満足できるものではなかった。また、被覆層を構成する樹脂の架橋度も低く、耐湿熱密着性に劣るため、耐湿熱密着性が強く要望される用途では、前記の市場要求を十分満足できない場合もあった。
本出願人は、二軸配向ポリエチレンテレフタレートからなる基材フィルム上に、ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂、および適度な粒径の無機粒子を添加した樹脂組成物層を設け、さらに、光学用基材フィルムとして極めて重要な特性である透明性を維持しつつ、市場からの要求レベルの密着性を十分満足することができ、且つ、光学的欠点の少ない積層ポリエステルフィルムを提案した(例えば、特許文献3、4を参照)。具体的には、縦方向に一軸延伸されたポリエステルフィルムに、共重合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(=20/80;質量%)及び2種類の平均粒径の異なるシリカ粒子、アニオン性界面活性剤を含む水分散性塗布液を塗布後、テンターに導き、乾燥、横延伸後、240℃で熱固定して得た、易接着性二軸配向ポリエステルフィルムを開示した。
特許文献3及び4で得られた易接着性二軸配向ポリエステルフィルムは、優れた密着性及び耐ブロッキング性、透明性を有し、且つ異物、スクラッチキズ等の光学的欠点は大幅に改善され、従来要求された特性を満足するものであった。しかしながら、前述のように、近年の低コスト化、ディスプレイの大画面化にともない、光学機能性フィルムまたは光学機能性シート用の基材フィルムとして要求される、基材フィルムと、ハードコート層、拡散層、プリズム層などの機能層との密着性、及び耐ブロッキング性への要求レベルは年々厳しくなる傾向にあり、現在の市場の要求品質に十分に満足できるものではなくなっている。また、被覆層を構成する樹脂の架橋度も低く、耐湿熱密着性に劣るため、耐湿熱密着性が強く要望される用途では、前記の市場要求を十分満足できない場合もあった。
特開2000−323271号公報 特開2000−246855号公報
また、本出願人は、密着性の均一性を改善するために、塗布量の変動を低減した易接着フィルムロールに関する発明を提案した(例えば、特許文献5を参照)。特許文献5の実施例には、縦方向に一軸延伸されたポリエステルフィルムに、ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂(=50/50;質量%)、平均粒径1.4μmのシリカ粒子、及びフッ素系界面活性剤を含む水分散性塗布液を塗布後、乾燥炉で120℃にて乾燥後、横延伸し、次いで220℃で熱固定処理して得た、易接着性二軸配向ポリエステルフィルムが記載されている。得られたフィルムロールは、優れた密着性をフィルムロール全体で均一に有するものであり、市場からの要求レベルを満足するものであった。しかしながら、前述のように、近年要求される耐ブロッキング性に対しては十分に満足できるものではなくなっている。また、被覆層を構成する樹脂の架橋度も低く、耐湿熱密着性に劣るため、耐湿熱密着性が強く要望される用途では、前記の市場要求を十分満足できない場合もあった。
特開2004−10669号公報
また、酸成分がテレフタル酸 /イソフタル酸 /トリメリット酸 /セバシン酸 、グリコール成分がエチレングリコール /ネオペンチルグリコール/1,4−ブタンジオールから構成されているポリエステルを100質量部、メチロール型メラミン系架橋剤を15質量部、粒子を0.7質量部、含む塗布液を、縦方向に一軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、さらに横延伸、熱固定、弛緩処理を行い、二軸延伸フィルムが開示されている(例えば、特許文献6を参照)。しかしながら、この方法では耐湿熱密着性は改善されているものの、ハードコート層などの機能層との初期密着力に劣り、近年の光学用フィルムに要求される品質を十分に満足できるものではなかった。
特開2004−299101号公報
すなわち、従来技術では、高透明性を維持しつつ、近年要求される高速カッティングに耐えうる密着性、フィルムロール径の大型化に対応できる耐ブロッキング性に対しては十分満足できなくなってきているのである。また、高温、高湿の過酷な環境下でも、密着性の低下が少ない、耐湿熱密着性に関しても十分ではなかった。
本発明の第1の目的は、前記従来の問題を解決するためになされたものであり、密着性と耐ブロッキング性が高度に優れる積層熱可塑性樹脂フィルムを提供することにある。また、本発明の第2の目的は、密着性と耐ブロッキング性に加え、耐湿熱密着性が高度に優れる積層熱可塑性樹脂フィルムを提供することにある。また、本発明の第3の目的は、密着性と耐ブロッキング性に加え、透明性が高度に優れる積層熱可塑性樹脂フィルムを提供することにある。さらに、本発明の第4の目的は、密着性、耐ブロッキング性、耐湿熱密着性が高度に優れ、かつそれらの品質の変動が少ない積層熱可塑性樹脂フィルムロールを提供することにある。
前記の課題は、以下の解決手段により達成することができる。
すなわち、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムにおける第1の発明は、熱可塑性樹脂フィルムの片面または両面に、共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂を含む被覆層を有する積層熱可塑性樹脂フィルムであって、
前記被覆層は、共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル相Aとポリウレタン系樹脂を主成分とするポリウレタン相Bにミクロ相分離又はナノ相分離した構造を有し、かつ、走査型プローブ顕微鏡を位相測定モードで観察した際に、下記(1)式で定義される、前記被覆層表面のポリエステル相A(位相像で暗色相を示す)の面積比率(PEs表面分率)が5μm×5μmの測定面積で35%以上90%未満であることを特徴とする積層熱可塑性樹脂フィルムである。
PEs表面分率(%)=(ポリエステル相Aの面積/測定面積)×100
・・・(1)
第2の発明は、共重合ポリエステル系樹脂が、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤から選ばれる少なくとも一種の架橋剤で架橋されていることを特徴とする第1の発明に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムである。
第3の発明は、前記熱可塑性樹脂フィルム、または熱可塑性樹脂フィルムと被覆層の両方に、粒子が含有されていることを特徴とする第1の発明に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムである。
また、第4の発明は、前記熱可塑性樹脂フィルム中には実質的に粒子を含有せず、被覆層にのみ粒子を含有することを特徴とする第1の発明に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムである。
第5の発明は、前記粒子がシリカ粒子であることを特徴とする第3または4に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムである。
第6の発明は、被覆層中の粒子が、ポリエステル相Aまたはポリウレタン相Bに偏在することを特徴とする第3または4の発明に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムである。
第7の発明は、前記の熱可塑性樹脂フィルムが、二軸配向ポリエステルフィルムまたは二軸配向ポリアミドフィルムであることを特徴とする第1の発明に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムである。
第8の発明は、前記の被覆層の表面を走査型プローブ顕微鏡の位相測定モードで観察し、明色相と暗色相の界面の輪郭を強調した位相像において、ボックスカウンティング法を用いて、明色相と暗色相の境界線(界面の輪郭)から求められるフラクタル次元が、5μm×5μmの測定面積で1.60〜1.95であることを特徴とする請求項1に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムである。
第9の発明は、下記に定義する被覆層の堅さ指数が、3.0〜15.0nmであることを特徴とする第1の発明に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムである。
なお、被覆層堅さ指数とは、先端に半径75μmのサファイヤが付いている針で、加重5gfをかけて被覆層の表面にキズを付け、三次元非接触表面形状計測装置でキズの凹凸形状を測定した時の隣り合う凸部と凹部との高低差を50箇所測定した際の各測定値の平均値を意味する。
である。
第10の発明は、前記の積層熱可塑性樹脂フィルムのヘーズが1.5%以下であることを特徴とする第3または4の発明に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムである。
第11の発明は、光学機能性フィルムまたは光学機能性シートの基材フィルムとして使用することを特徴とする第10の発明に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムである。
第12の発明は、光学機能性フィルムまたは光学機能性シートが、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、光拡散シート、プリズムシート、透明導電性フィルム、近赤外線吸収フィルム、電磁波吸収フィルムのいずれかであることを特徴とする第11の発明に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムである。
第13の発明は、前記の被覆層の少なくとも片面に、アクリル系樹脂を主たる構成成分とする機能層を積層してなることを特徴とする第1の発明に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムである。
第14の発明は、熱可塑性樹脂フィルムの片面または両面に、共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂を含む被覆層を有する、第1から13の発明のいずれかに記載の積層熱可塑性樹脂フィルムを、長さ1000m以上、幅50mm以上のサイズでロール状に連続して巻き取ってなる積層熱可塑性樹脂フィルムロールであって、前記被覆層表面のポリエステル相A(位相像で暗色相を示す)の面積比率(PEs表面分率)をフィルムの長手方向に100m間隔で測定した際に、長手方向の被覆層の表面におけるPEs表面分率の最大値と最小値の差が15%以下であることを特徴とする積層熱可塑性樹脂フィルムロールである。
なお、上記被覆層の表面におけるPEs表面分率の測定は、前記の積層熱可塑性樹脂フィルムロールを巻きだし、該フィルムの長手方向(MD)について、フィルム物性が安定している定常領域の一端を第1端部、他端を第2端部としたとき、第1端部の内側2m以下で1番目の測定を、また、第2端部の内側2m以下で最終の測定を行うと共に、1番目の測定箇所から100m毎に行う。
第15の発明は、前記の積層熱可塑性樹脂フィルムロールを巻きだし、フィルムを幅方向に4等分し、それぞれの中央部において、被覆層表面のポリエステル相A(位相像で暗色相を示す)の面積比率(PEs表面分率)を測定した際に、幅方向の被覆層表面におけるPEs表面分率の最大値と最小値の差が10%以下であることを特徴とする第14の発明に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムロールである。
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムは、被覆層を構成する2種類の樹脂、すなわち共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂が、共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル相Aとポリウレタン系樹脂を主成分とするポリウレタン相Bに、特異的なミクロ相分離構造またはナノ相分離構造を有しており、被覆層表面のポリエステル相Aの面積率(PEs表面分率)が特定の範囲にあるため、ハードコート層、拡散層、プリズム層などの機能層との密着性と耐ブロッキング性に優れている。
また、被覆層において、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤から選ばれる少なくとも一種の架橋剤で、少なくとも前記の共重合ポリエステル樹脂を架橋させることにより、耐湿熱密着性を向上させることができる。
さらに、被覆層にのみ特定の粒径の粒子を特定量含有させたり、あるいは被覆層表面のポリエステル相Aまたはポリウレタン相Bのいずれかの相に粒子を偏在化させたりすることで、透明性を高度に維持しながら、耐ブロッキング性、ハンドリング性、耐スクラッチ性を改善することができるので、透明性が高度に要求される、光学機能性フィルムまたは光学機能性シートの基材フィルムとして有用である。特に、被覆層にシリカ粒子を含有させた場合、ポリウレタン相にシリカ粒子を偏在化させることができるので、耐ブロッキング性に劣るポリウレタンの欠点を補うことができる。
本発明において、課題に記載された、密着性、耐ブロッキング性、透明性、耐湿熱密着性の定義について、まず説明する。
本発明でいう密着性とは、溶剤希釈型の光硬化型アクリル系樹脂を紫外線により硬化させたハードコート層を、フィルムの被覆層面に形成させ、それぞれについて粘着テープによる碁盤目剥離試験(100個の升目)を10回繰り返した後の、前記のアクリル系ハードコート層とフィルムの被覆層との界面の密着性を意味する。本発明においては、下記式で定義される密着性が80%以上のものを合格とする。好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。
密着性(%)=(1−升目の剥がれた個数/100個)×100
また、本発明でいう耐ブロッキング性とは、2枚のフィルム試料の被覆層面同士を重ね合わせ、これに1kgf/cm2 の圧力を50℃、60%RHの雰囲気下で24時間密着させた後、剥離し、その剥離状態が「被覆層の転移がなく軽く剥離できるもの」を合格とする。
さらに、本発明で透明性が高度に優れるフィルムとは、ヘーズが1.5%以下のフィルムを意味する。好ましくは、ヘーズが1.0%以下である。
また、本発明でいう耐湿熱密着性とは、積層熱可塑性樹脂フィルムを温度60℃、相対湿度90%の環境下で1000時間保管した後のフィルム試料を用いて、無溶剤型の光硬化性アクリル系樹脂を紫外線により硬化させたハードコート層を、フィルムの被覆層面に形成させ、粘着テープによる碁盤目剥離試験(100個の升目)を行った後の、前記のアクリル系ハードコート層とフィルムの被覆層との界面の密着性を意味する。本発明においては、下記式で定義される密着性が71%以上のものを合格とする。
密着性(%)=(1−升目の剥がれた個数/100個)×100
本発明において、このような優れた密着性と耐ブロッキング性を有する積層熱可塑性樹脂フィルムを得るためには、被覆層の表面に特異的なミクロ相分離構造またはナノ相分離構造を発現させることが重要である。このような特異的な相分離構造は、被覆層形成のために用いる塗布液の樹脂組成、界面活性剤の種類と濃度、塗布量、被覆層の乾燥条件、及び熱固定条件などを、選択的に採用し、それらを制御することにより、形成させることができる。
また、耐湿熱密着性を有する積層熱可塑性樹脂フィルムを得るためには、被覆層を構成する樹脂に架橋構造を形成させることが重要である。また、被覆層を構成する樹脂に架橋構造を形成させるためには、架橋剤の種類、量及び熱処理条件(硬化条件)を適宜選択する。
まず、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)を代表例にして概要を説明するが、当然この代表例に限定されるものではない。
易滑性付与を目的とした粒子を実質的に含有していないPETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、280℃でシート状に溶融押出しし、冷却固化せしめて未配向PETシートを製膜する。この際、溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行う。得られた未配向シートを、80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得る。
その後、一軸配向PETフィルムの片面、若しくは両面に、前記の共重合ポリエステル及びポリウレタン系樹脂の水溶液を塗布する。前記水性塗布液を塗布するには例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法およびカーテン・コート法などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
次いで、フィルムの端部をクリップで把持して、80〜180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き220〜240℃の熱処理ゾーンに導き、1〜20秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で、必要に応じて、幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
以下、本発明で得られた被覆層の相分離構造について説明する。次に、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムに用いる原料及び製造条件について、前記の相分離構造を制御するための条件因子も含め、詳しく説明する。
(1)被覆層の相分離構造
本発明において、被覆層は、共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル相A(以下、PEs相と略記することもある。)と、ポリウレタン系樹脂を主成分とするポリウレタン相B(以下、PU相と略記することもある。)にミクロ相分離又はナノ相分離した構造を有する。そして、走査型プローブ顕微鏡を位相測定モードで観察した際に、下記(1)式で定義される、前記被覆層表面のポリエステル相A(位相像で暗色相を示す)の面積比率(PEs表面分率)が5μm×5μmの測定面積で35%以上90%未満であることに特徴を有する。
PEs表面分率(%)=(PEs相Aの面積/測定面積)×100 ・・・(1)
この被覆層表面におけるPEs表面分率は、下記のような技術的意義がある。
PEs表面分率が35%未満では、被覆層の表面におけるポリウレタン系樹脂を主成分とする相の表面分率が相対的に大きくなり、耐ブロッキング性が低下する頻度が増える。一方、PEs表面分率が90%以上では密着性が低下する頻度が増え、特に、無溶剤型のハードコート剤に対する密着性の低下が著しくなる。
被覆層表面のPEs表面分率の下限は、耐ブロッキング性の点から、PEs表面分率が40%であることが好ましく、さらに好ましくは45%、特に好ましくは50%である。一方、PEs表面分率の上限は、アクリル系樹脂からなる機能層との密着性の点から、85%であることが好ましく、さらに好ましくは80%、特に好ましくは75%である。
なお、本発明において、被覆層表面の相分離構造の評価は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)による位相測定モード(フェーズモード)を使用した。フェーズモードは、通常ダイナミックフォースモード(DFMモード;エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPMを用いた場合)による表面形態観察と同時に行う位相遅れ測定モードのことである。
走査型プローブ顕微鏡(SPM)の位相測定モード(フェーズモード)による被覆層の相分離構造の評価に関する測定原理を、簡単に説明する。
フェーズモードでは、DFM動作をさせたときのカンチレバー振動の位相遅れを検出する。DFM動作では、共振させたカンチレバーの振動振幅が一定となるように探針・試料間の距離を制御して形状を測定する。ここで、カンチレバーを振動させるためのバイモルフ(圧電素子)を振動させる信号を,「入力信号」と呼んだ場合、位相測定モードでは、この「入力信号」 に対する実効的なカンチレバーの振動信号の位相遅れを振動振幅と同時に検出する。位相遅れは、表面物性の影響に敏感に応答し、軟らかい試料表面ほど遅れが大きくなる。この位相遅れの大きさを画像化することにより、表面物性の分布(位相像又はフェーズ像等と呼ばれる)を観察することが可能となる。よって、複数の物性の異なる樹脂相が表面に存在した場合、本測定法により、相分離構造の評価が可能となる。
ただし、被覆層の相分離構造の評価は、走査型プローブ顕微鏡による表面物性分布評価モードであれば、位相測定モード以外にも、摩擦力測定モードや粘弾性測定モード等の他モードでも良く、最も感度良く相分離構造を評価できる観察モードを選択することが重要である。なお、位相測定モードにおいては、被覆層の粘弾性の差異による位相遅れを検出できるだけでなく、吸着力の大小のような表面物性の差異による位相遅れも検出が可能である。
本発明における被覆層の相分離構造は、大きさの点からは、ミクロ相分離構造またはナノ相分離構造に相当するものである。PEs相を長軸と短軸を有する連続構造とみなした場合、短軸方向の幅が最大でも1μmで、長軸方向の長さが1μmを超える連続構造を主体とするものである。すなわち、PEs相の全体の面積に対し、前記の連続構造を有する部分の面積が80%以上であり、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。また、前記の定義に記載の連続構造に該当しない、島状に分散しているPEs相であっても、被覆層の内部では連続構造を有しているものの末端が表面に現れているものもある。
このPEs相の連続構造の大きさは、短軸方向の幅が最大でも1μmであることが好ましく、より好ましくは0.8μmであり、さらに好ましくは0.6μmであり、特に好ましくは0.4μmである。短軸方向の幅は下限には特に限定はないが、連続構造を維持するためには最も狭い部分で0.01μmであることが好ましく、特に好ましくは0.05μmである。一方、このPEs相の連続構造の大きさは、長軸方向の長さが1μmを超えることが好ましく、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2.0μm以上、特に好ましくは2.5μm以上である。
本発明における被覆層の相分離構造は、図1や図8に示す代表例からも分かるように、自然界では見られない複雑な構造を示しており、相分離の形態を一義的に定義することは難しい。前記の相分離構造は、以下のように多面的に表現することもできる。
例えば、前記の相分離構造の形態を模様として表現すると、文献に記載された中では、「樹枝状構造」(「化学語大辞典」、第226頁、昭和54年6月15日、三共出版(株)発行)、「波紋状構造」(「文様」、第168〜169頁、2002.10.1(株)野ばら社発行)、「迷彩調」に近いものがある。
また、本発明における被覆層の表面の相分離構造は、ポリマーブレンド系におけるモルフォロジーの分野では、共連続構造と表現されているものに類似している。さらに、共重合ポリエステル系樹脂と自己架橋型ポリウレタン系樹脂が相互にからみあうことによって形成された相互網目侵入構造とも表現することもできる。
また、形態的には、PEs相の自己相似性を、フラクタル次元を用いて定量的に表現することもできる。例えば、図3や図10に示すように、被覆層の表面を走査型プローブ顕微鏡の位相測定モードで観察し、明色相(ポリエステル相A)と暗色相(ポリウレタン相B)の界面の輪郭を強調した位相像において、明色相と暗色相の境界線(界面の輪郭)の複雑さを示す指数として、ボックスカウンティング法を用いて、前記の界面の輪郭から求められるフラクタル次元を用いて定量的に表現することができる。
単位面積におけるフラクタル次元が1の場合は直線(一次元)を意味し、2はベタ面(二次元)を意味する。すなわち、フラクタル次元が2に近いほど、構造が緻密であることを意味する。一方、フラクタル次元が1に近いほど疎な構造であることを意味する。
具体的には、前記の明色相(ポリエステル相A)と暗色相(ポリウレタン相B)の界面の輪郭を強調した位相像において、明色相と暗色相の境界線(界面の輪郭)のフラクタル次元は、5μm×5μmの測定面積で1.60〜1.95であることが好ましい。前記のフラクタル次元の上限は、1.93であることがさらに好ましく、特に好ましくは1.90である。一方、前記のフラクタル次元の下限は、1.65であることがさらに好ましく、特に好ましくは1.70である。
例えば、図4と図11に示す被覆層の表面における、明色相(ポリエステル相A)と暗色相(ポリウレタン相B)の境界線(界面の輪郭)のフラクタル次元は、それぞれ1.89と1.90である。なお、図4と図11は、本発明における被覆層の表面の代表的な相分離構造を示す図1と図8の位相像に、明色相と暗色相の界面の輪郭を強調し、明色相と暗色相の境界線を示した図である。
本発明において、被覆層の原料となる共重合ポリエステル系樹脂およびポリウレタン系樹脂が有する機能を最大限に発現するためには、被覆層がミクロ相分離構造またはナノ相分離構造していることが重要である。なぜなら、両樹脂が完全に相溶すると、両樹脂の性質が相殺して、全体的には共重合ポリエステル系樹脂またはポリウレタン系樹脂の優れた特性が期待できないためである。本発明の被覆層において、PEs相およびPU相が採りうる他の相分離構造としては、PEs相内にPU相が分散したもの、およびPU相内にPES相が分散した、いわゆる複合形態として、代表的な海島構造を採ることも考えられる。勿論この海島構造は、樹脂の非相溶状態で、一方の樹脂相を多くすれば、他方が必然的に少なくなり、いわゆる島を形成することになる。本発明においても製造条件を制御すれば、このような海島構造を採る分離相からなる被覆層とすることも可能である。この海島構造により本発明の作用効果を期待する場合には、その構造をさらに吟味する必要がある。
しかし、島構造を形成する樹脂相の大きさの不均一や、分布状態の不均一を考えると、島相の形状、数、および分布状態が影響することを無視することができないから、海構造を構成する樹脂の性質が大きく影響することも懸念される。そうすると、本発明のPEs相とPU相との相分離構造である、お互いに隅々まで絡み合ったような相分離構造を採るほうが材料の均一性を保つためには有利と考えられる。一応PEs相とPU相の海島構造を採る相分離構造も本発明の代表的な態様の一つとして挙げることができる。
また、本発明における被覆層のさらに他の相分離構造として、コア・シェル構造を採ることもできる。例えば、PEs相の周りを、PU相が囲み、さらにそれをPEs相が囲むという構造である。しかしながら、このようなコア・シェル構造を形成させるためには、非常に高度な制御を要する。また、そのコア・シェル構造を採るがゆえに、優れた材料挙動を示すということは期待できないように思える。さらに、相分離構造の態様として、PEs相とPU相が交互に規則的に並ぶ積層構造も採りうる。しかし、各相が平行に略等間隔に配置することは理想であるが、相の幅が大きくなれば、被覆層の界面にPEs相とPU相を均一に分布させることが難しくなり、しいては、積層熱可塑性樹脂フィルムの品質にも影響する恐れが生じる。製造条件の微妙な遠いにより、海島構造、コア・シェル構造および積層構造の形態をとりながら、それらが混在型になることもある。しかし、被覆層には、PEs相とPU相が、一定の大きさを有し、それらが均一に万遍に混在することが、品質を保つためには重要なことである。
共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル相Aとポリウレタン系樹脂を主成分とするポリウレタン相Bが、それぞれ不規則な形態をしたものである。そして、それらの樹脂相が不規則にしかも緻密に万遍に、熱可塑性樹脂フィルムからなる基材上に配置された、複雑な配列構造を形成するものである。また、一つの樹脂相の表面に、他方の樹脂相が非相溶性の状態で食い込んだ構造であってもよい。なお、図3、図10において、黒色部分がポリエステル相Aを、白色部分がポリウレタン相Bを示す。
単位面積(例えば5×5μm)に対して、二種類の樹脂相を分離した状態で均一に配列する場合、一方の樹脂相の寸法が大きくなれば、他方の樹脂相の寸法が制約される。そのため、樹脂相の存在に大きな偏りが生じることになる。その結果、両樹脂相が分離して均一に分散配列した状態を維持することが難しくなり、被覆層の材質にむらが発生するために、品質管理上好ましくない。
両樹脂相を相分離させ、かつ均一に混在した状態で被覆層に存在させるためには、PEs相の形態を短軸方向の幅が最大で1μm、長軸方向の長さが1μm以上とすることが好ましい。勿論、品質に高度な要求が無い場合には、短軸方向の幅が最大で6μm程度の相対的に大きくした構造も可能である。この連続相(PEs相)の相分離構造は、被覆層形成のために用いる塗布液の樹脂組成、界面活性剤の種類と濃度、塗布量、塗布層の乾燥条件、及び熱固定条件などを、選択的に採用し、それらを制御することにより、被覆層に特異的なミクロ相分離構造またはナノ相分離構造として発現させることができる。いずれにせよ、図1や図8に示す、被覆層の表面のポリエステル相Aおよびポリウレタン相Bの相分離構造の態様が、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムの効果を発現するための代表的なモデルである。
さらに、相分離構造の重要性について、詳細に説明する。
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムにおける被覆層は、共重合ポリエステル成分とポリウレタン成分を樹脂成分とし、かつ共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするPEs相とポリウレタン系樹脂を主成分とするPU相に相分離しており、少なくともPEs相が連続構造を有していることが重要である。前記の2種類の樹脂を均一に混じり合わせることなく相分離させることによって、熱可塑性樹脂フィルムからなる基材フィルムに対して優れた密着性を有し、かつ比較的良好な耐溶剤性を有する共重合ポリエステル系樹脂と、耐溶剤性は劣るがハードコート層や拡散層、アクリレート系樹脂等多くの樹脂に対して優れた密着性を有するポリウレタン系樹脂がそれぞれの特性を相殺することなく、各々の樹脂の特長を十分に生かせるのである。
被覆層を構成する、ポリエステル相Aとは、共重合ポリエステル系樹脂が単独で構成されていることが好ましいが、ポリウレタン系樹脂を0.01〜40質量%含んでいてもよい。さらに、ポリエステル相Aの中に粒子を0.001〜20質量%含有させてもよい。また、ポリエステル相Aにおいて、界面活性剤が前記樹脂に付着または含有される場合もある。同様に、ポリウレタン相Bは、ポリウレタン系樹脂が単独で構成されていることが好ましく、粒子、界面活性剤などを前記の共重合ポリエステル系樹脂に記載した程度の量で含有させることができる。特に、ポリウレタン系樹脂と親和性が高い粒子の場合には、被覆層の形成過程で、ポリエステル相Aよりもポリウレタン相Bに選択的に多く偏在させることができる。
一般には、共重合ポリエステル系樹脂およびポリウレタン系樹脂の混合物からなる組成物においては、通常は両者が化学的に均一な材料となり、お互いの有する性質または機能を補足しあうという化学的な補足機能の発現の場合が多い。一方、本発明のポリエステル相およびポリウレタン相からなる被覆層とは、前記のようにポリエステル相およびポリウレタン相とが、物理的にそれぞれ相分離をして樹脂相の存在に大きな偏りが生じることになり、両樹脂相が分離して均一に分散配列した状態の構造を維持する。各樹脂がそれぞれ有する性質を、各樹脂相の表面を介して、例えば、共重合ポリエステル系樹脂は耐ブロッキング性を、ポリウレタン系樹脂は密着性というように、それぞれが相分離した状態で、機能を分担している。いわば、物理的な補足機能の発現であって、まさにこの機能または原理は、先行技術では全く認識されていない新規な技術事項であるといえる。
本発明における被覆層の相分離構造の詳細な発生メカニズムは明確ではない。しかしながら、共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂の組成比、水とアルコールの分散媒の比率、界面活性剤の種類、界面活性剤中の不純物、水性塗布液のpH、塗布量などの塗布液の材料構成や特性に、乾燥および熱固定処理の時間、温度、風速の微妙な条件のバランスにより、被覆層に特異的なミクロ相分離構造またはナノ相分離構造が発現していることが、各実施例と比較例の対比から容易に理解することができる。
さらに、ポリウレタン系樹脂が有するイソシアネート基の反応開始温度も微妙に影響しているものと思われる。ここでいう、相分離構造とは、いわゆるPEs相とPU相の両相が物理的な境界を持って距離的に離れているということではなく、境界が距離をとることなく接しており、PEs相には共重合ポリエステルが多く集まり偏り、PU相に専らポリウレタン系樹脂が多く集まり偏り、両層の境界があたかも明瞭に区別が付くほどに外見上分離しているかのような境界ができていると見るべきである。そして、本発明の場合には、その境界でポリウレタン系樹脂のイソシアネート基が反応しているという可能性もあり、複雑な分離構造を示している。
本発明の積層熱可塑性フィルムが、PEs相およびPU相からなる被覆層を有しているということは、例えば熱可塑性フィルムからなる基材と、ハードコート層や拡散層などの機能層との間に介在するという、いわゆる基材面と機能層面の両面に等しく作用する界面機能の役割を果たしている。そうすると、PEs相およびPU相のいずれも、両者が分離した構造をとり、PEs相は本来有する共重合ポリエステル系樹脂の優れた性質を、被覆層の両面(基材と被覆層の界面、被覆層と機能層との界面)に対して、最大限に発揮する状態にある。すなわち、PU相は、本来有するポリウレタン系樹脂の優れた性質を両面に対して最大限に発揮する状態にあるということである。
これは、被覆層を有する積層熱可塑性樹脂フィルムにおいて、被覆層の表面は、PEs相およびPU相からなるミクロ相分離構造またはナノ相分離構造を有しているため、PEs相の共重合ポリエステル系樹脂が露出して、その共重合ポリエステル系樹脂の性質または機能を最大限に果たし、同様に、PU相のポリウレタン系樹脂が露出して、そのポリウレタン系樹脂が本来有する性質または機能を最大限に果たしているためである。したがって、被覆層の表面におけるPEs相およびPU相のそれぞれが特定の範囲で分布すれば、両者の樹脂の性質または機能が最大限に発揮することができる。これは、積層体という特有の構造であるために、基材と被覆層の界面、被覆層と機能層との界面において、合理的に作用するためである。
さらに、本発明は、PEs相およびPU相を構成する樹脂組成物に粒子を含有させる場合、例えば、シリカ粒子ではPU相に偏在させることができる。これは、表面エネルギーがPEs相よりもPU相の方がシリカ粒子に近いためであると推定している。シリカ粒子をPU相に偏在化させることで、ポリウレタン系樹脂の短所である耐ブロッキング性を向上させることができ、かつ被覆層全体の粒子含有量を減らすことができるので、透明性を維持するという機能を果たすのに有益な構造である。
同様に、表面エネルギーが共重合ポリエステルにより近い粒子を選択すれば、PEs相に粒子を選択的に偏在させることができることを示唆している。PEs相またはPU相からなる相分離構造のいずれかに粒子を偏在化させるという、先行技術からは予期できない手法で、透明性を維持しながら滑り性やブロッキング性を高度に改良することができる。そのため、ミクロ相分離構造またはナノ相分離構造の材料設計の応用範囲を広げることができるという点でも本発明は有意義である。
(2)基材フィルム
本発明において、基材となる熱可塑性樹脂フィルムとは、熱可塑性樹脂を溶融押出し又は溶液押出して得た未配向シートを、必要に応じ、長手方向又は幅方向の一軸方向に延伸し、あるいは二軸方向に逐次二軸延伸または同時二軸延伸し、熱固定処理を施したフィルムである。
また、前記熱可塑性樹脂フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、前記フィルムをコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施してもよい。
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムの基材として用いる熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、30〜300μmの範囲で、使用する用途の規格に応じて任意に決めることができる。前記熱可塑性樹脂フィルムの厚みの上限は、250μmが好ましく、特に好ましくは200μmである。一方、フィルム厚みの下限は、50μmが好ましく、特に好ましくは75μmである。フィルム厚みが50μm未満では、剛性や機械的強度が不十分となりやすい。一方、フィルム厚みが300μmを超えると、フィルム中に存在する異物の絶対量が増加するため、光学欠点となる頻度が高くなる。また、フィルムを所定の幅に切断する際のスリット性も悪化し、製造コストが高くなる。さらに、剛性が強くなるため、長尺のフィルムをロール状に巻き取ることが困難になりやすい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(TPX)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド(PA)樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン(PS)、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマーなどが挙げられる。また、これらのポリマーは単独で使用する以外に、共重合成分を少量含む共重合体でもよいし、他の熱可塑性樹脂を1種以上ブレンドしてもよい。
これらの熱可塑性樹脂のなかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレートなどが好適である。また、ポリエステルやポリアミドのような極性官能基を有する樹脂は、被覆層との密着性の点から好ましい。
中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体がさらに好適であり、とりわけポリエチレンテレフタレートから形成された二軸配向フィルムが特に好適である。
例えば、熱可塑性樹脂フィルムを形成する樹脂として、ポリエチレンテレフタレートを基本骨格とするポリエステル共重合体を用いる場合、共重合成分の比率は20モル%未満とすることが好ましい。20モル%以上ではフィルム強度、透明性、耐熱性が劣る場合がある。共重合成分として用いることができるジカルボン酸成分としては、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、トリメリロット酸及びピロメリロット酸等の多官能カルボン酸等が例示される。また、共重合成分として用いることができるグリコール成分としては、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール及びネオペンチルグリコール等の脂肪酸グリコール;p−キシレングリコール等の芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコール等が例示される。
また、前記熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲で、触媒以外に各種の添加剤を含有させることができる。添加剤として、例えば、無機粒子、耐熱性高分子粒子、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン化合物、帯電防止剤、紫外線吸収剤、耐光剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、ゲル化防止剤、界面活性剤等が挙げられる。
前記の粒子は、熱可塑性樹脂フィルムの製造時、ロール状に巻き取る際、あるいは巻き出す際のハンドリング性(滑り性、走行性、ブロッキング性、巻き取り時の随伴空気の空気抜け性など)の点からは、フィルム表面に適度な表面凹凸を付与するために用いられる。
無機粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカーアルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどが挙げられる。また、耐熱性高分子粒子としては、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などが挙げられる。
基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合、前記の粒子の中でも、シリカ粒子が、ポリエステル樹脂と屈折率が比較的近く高い透明性が得やすいため、透明性が強く要求される用途では最も好適である。一方、隠蔽性が要求される用途では、酸化チタンのような白色顔料が好適である。また、熱可塑性樹脂フィルム中に含有させる粒子は1種類でも複数併用してもよい。
前記の粒子の種類、平均粒径、添加量は、透明性とハンドリング性とのバランスの点から、平均粒径は0.01〜2μm、フィルム中の粒子含有量は0.01〜5.0質量%の範囲でフィルムの用途に応じて決めればよい。また、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムを透明性が高度に要求される用途に使用する場合、基材の熱可塑性樹脂フィルム中には、透明性を低下させる原因となる粒子を実質的に含有させず、被覆層に粒子を含有させる構成とすることが好ましい。
前記の「基材の熱可塑性樹脂フィルム中には、粒子を実質的に含有させず」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
また、本発明で基材として使用する熱可塑性樹脂フィルムの層構成は単層でもよいし、単層では得られない機能を付与した積層構造とすることもできる。積層構造とする場合には、共押出法が好適である。
熱可塑性樹脂フィルムの原料としてポリエステルを用いた場合を代表例として、基材フィルムの製造方法について、以下で詳しく説明する。
フィルム原料として用いるポリエステルペレットの固有粘度は、0.45〜0.70dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.45dl/g未満であると、フィルム製造時に破断が多発しやすくなる。一方、固有粘度が0.70dl/gを超えると、濾圧上昇が大きく、高精度濾過が困難となり、生産性が低下しやすくなる。
また、光学機能性フィルムまたは光学機能性シートに用いる場合には、光学欠点の原因となる、原料のポリエステル中に含まれている異物を除去することが好ましい。ポリエステル中の異物を除去するために、溶融押出しの際に溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で、高精度濾過を行う。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材の場合、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物及び高融点有機物の除去性能に優れ好適である。
溶融樹脂の高精度濾過に用いる濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズが15μmを超えると、20μm以上の異物の除去が不十分となりやすい。濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が15μm以下の濾材を使用して溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより生産性が低下する場合があるが、光学欠点の少ないフィルムを得るには極めて重要である。
溶融樹脂の押出し工程において、濾材を通過する微細な異物であっても、シート状溶融物の冷却工程において異物の周囲で結晶化が進み、これが配向工程において配向の不均一性を引き起こし、微小な厚みの差異を生じせしめレンズ状態となる箇所が生じる。ここでは、レンズがあるかの様に光が屈折又は散乱し、肉眼で観察した時には実際の異物より大きく見えるようになる。この微小な厚みの差は、凸部の高さと凹部の深さの差として観測することができ、凸部の高さが1μm以上で、凸部に隣接する凹部の深さが0.5μm以上であると、レンズ効果により、大きさが20μmの形状の物でも肉眼的には50μm以上の大きさとして認識され、さらには100μm以上の大きさの光学欠点として認識される場合もある。
高透明なフィルムを得るためには、基材フィルム中に粒子を含有させないことが好ましいが、粒子含有量が少なく透明性が高いほど、微小な凹凸による光学欠点はより鮮明となる傾向にある。また、厚手のフィルムの表面は薄手のフィルムより急冷となりにくく、結晶化が進む傾向にあるため、未配向シート製造時にフィルム全体を急冷することが必要となる。未配向シートを冷却する方法としては、溶融樹脂を回転冷却ドラム上にダイスのスリット部からシート状に押し出し、シート状溶融物を回転冷却ドラムに密着させながら、急冷してシートとする方法が好適である。この未配向シートのエア面(冷却ドラムと接触する面との反対面)を冷却する方法としては、高速気流を吹きつけて冷却する方法が有効である。
(3)被覆層
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムは、共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂を含む樹脂、水及びアルコールを含む分散媒、界面活性剤を主たる構成成分とする水性塗布液を、走行する熱可塑性樹脂フィルムの片面または両面に連続的に塗布する塗布工程、塗布層(被覆層)を乾燥する乾燥工程、次いで少なくとも一軸方向に延伸する延伸工程、さらに延伸された塗布フィルムを熱固定処理する熱固定処理工程を経て連続的に形成させて得た、ミクロ相分離構造またはナノ相分離構造を有する被覆層を設けた積層熱可塑性樹脂フィルムを製造する。また、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤から選ばれる少なくとも一種の架橋剤を塗布液に混合し、熱処理することで、共重合ポリエステル系樹脂に架橋構造を形成させてもよい。
このミクロ相分離構造またはナノ相分離構造を有する被覆層を設けた積層熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、前記共重合ポリエステル系樹脂Aとポリウレタン系樹脂Bの質量比(A/B)が、30/70〜70/30であり、下記(i)〜(vi)の条件を満足させることが好ましい。また、塗布液に架橋剤を含む場合も同様である。
(i) 塗布液の塗布直後から乾燥工程の入口までのフィルムの通過時間が2秒未満
(ii) 乾燥工程において温度120〜150℃で0.1〜5秒間
(iii)乾燥工程において乾燥風の風速が30m/秒以上
(iv) 熱固定処理工程が、複数の熱固定ゾーンに連続して区分され、かつ各ゾーンは独立して温度制御が可能なように仕切られており、フィルムが通過する第1の熱固定ゾーンの温度が190〜200℃であり、最高温度に設定された熱固定ゾーンの温度が210〜240℃であり、第1熱固定ゾーンの出口から、最高温度に設定された熱固定ゾーン(なお、複数ある場合は、最も入口側の熱固定ゾーン)までのフィルムの通過時間が10秒以下
(v) ノニオン系界面活性剤またはカチオン系界面活性剤を、塗布液に対し0.01〜0.18質量%配合
(vi) 被覆層の最終塗布量が0.005〜0.20g/m2
また、前記の積層熱可塑性樹脂フィルムの製造において、下記(vii)〜(ix)の条件を満足することがさらに好ましい。
(vii) 塗布液の塗布直後から乾燥工程の入口までのフィルムの通過時間が1.5秒未満
(viii)乾燥工程において、温度130〜150℃で0.5〜3秒間
(ix) 熱固定処理工程において、最高温度に設定された熱固定ゾーンの温度が225〜235℃であり、第1熱固定ゾーンの出口から、最高温度に設定された熱固定ゾーン(なお、複数ある場合は、最も入口側の熱固定ゾーン)までのフィルムの通過時間が5秒以下
また、前記のインラインコート法により積層された被覆層に、適切な粒径の微粒子を含有させて、被覆層表面に適切な凹凸を形成させることで、滑り性、巻き取り性、耐スクラッチ性を付与することができる。このため、熱可塑性樹脂フィルム中に微粒子を含有させる必要がなく、高透明性を保持することができる。
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムを光学機能性フィルムまたは光学機能性シートの基材として使用する場合、被覆層表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa)は、0.002〜0.010μmと平滑であることが好ましい。SRaの上限は、透明性の点から、0.0080μmがより好ましく、特に好ましくは0.0060μmである。一方、SRaの下限は、滑り性や巻き性などのハンドリング性、耐スクラッチ性の点から、0.0025μmがより好ましく、特に好ましくは0.0030μmである。
被覆層のSRaが0.002μm未満の平滑な表面では、耐ブロッキング性、滑り性や巻き性などのハンドリング性、耐スクラッチ性が低下し、好ましくない。一方、被覆層のSRaが0.010μmを超えると、ヘーズが上昇して透明性が悪化するため、光学機能性フィルムまたは光学機能性シートの基材フィルムとして好ましくない。
本発明の好ましい実施形態において、被覆層は次の4つの形態的、構造的特徴を有しており、下記のような手段で得ることができる。
(a)ポリエステル相とポリウレタン相にミクロ相分離またはナノ相分離し、ポリエステル相が特定の面積比(PEs表面分率)を有している
(b)被覆層の樹脂成分の組成比を表面と内部で変えることが可能である
(c)被覆層が架橋構造を有している
(d)被覆層に粒子を含有した場合、粒子がポリエステル相またはポリウレタン相に偏在している
共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル相は、幅が最大で1μmで長さが1μmを超える連続構造を有することが好ましく、さらに好ましくは共重合ポリエステル相とポリウレタン相が共連続構造を有する構造である。本発明で規定するPEs表面分率の範囲内で、共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル相が、幅が最大で1μm、長さが1μmを超える微細な連続構造を有することによって、微視的に均一な密着性が得られるのである。
共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル相において、幅が最大で1μmを越える箇所が点在する相分離構造では、局所的にハードコート層、拡散層、プリズム層のような機能層に対し、密着性に劣る箇所が生じる。被覆層表面に密着性に劣る箇所が存在すると、その部分を起点として巨視的な剥離に繋がる場合がある。前記ポリエステル相の幅を最大で1μmの微細な連続構造にするためには、横延伸ゾーンから熱固定ゾーンでの最高温度に到達するまでに要する時間、熱固定条件を適宜選定することが重要である。特に、横延伸ゾーンから、熱固定ゾーンで最高温度に到達するゾーンまでに要する時間が長すぎる場合、被覆層の相分離が進行し過ぎ、結果として共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル相の幅が最も狭い箇所で1μmを超える箇所が点在するようになるのである。本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムを製造する際の具体的な熱固定条件は後述する。
最終的な被覆層表面の相分離構造制御のためには、後述の乾燥工程における溶媒蒸発速度及び、その後の加熱処理が極めて重要である。乾燥工程における溶媒蒸発速度を制御することで、被覆層の表面におけるポリエステル成分とポリウレタン成分の組成比を変化させることができる。
例えば、水/イソプロピルアルコールの混合溶媒を使用した場合、弱い乾燥条件では、乾燥後期過程で表面に残存する溶媒は、水の比率が多くなる。そのため、比較的親水性が高いポリウレタン系樹脂が被覆層表面に存在する比率が、強い条件で被覆層を乾燥させたときと比べて高くなる。また、塗布量を変化させることも溶媒蒸発速度の制御に等しい効果をもたらす。つまり、塗布量を増やした場合、乾燥に時間がかかり、乾燥直前に塗布面に存在する残溶媒は、水の比率が多くなる。つまり、表面におけるポリウレタン成分比率を、塗布量が少ない時と比べ、高くすることができる。
延伸工程及び熱固定処理工程では、ポリエステル成分とポリウレタン成分の相分離が進行するが、どちらか一方の熱架橋が始まると各相の運動性が大幅に低下し、相分離の進行が抑制される。つまり、延伸工程及び熱固定処理工程における加熱条件を制御することで相分離構造の制御が可能である。
以上のように、乾燥工程における、ポリエステル/ポリウレタンの表面存在比率の制御と延伸工程、熱固定処理工程における相分離の進行の制御により、表面相分離構造及び、各相の存在比率の厳密な制御が可能となる。また、被覆層に含有させる粒子の表面エネルギーの制御により、共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル相又はポリウレタン系樹脂を主成分とするポリウレタン相のどちらか一方に選択的に粒子を分散させることができる。
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムの被覆層は、主な樹脂成分として、共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂を含有している。共重合ポリエステル系樹脂単独では、ポリエステル系基材フィルムとの密着性は十分であるが、プリズムレンズやハードコートに用いられるアクリル系樹脂との密着性に劣る。また、比較的脆い樹脂であるため、カッチィング時の衝撃に対し凝集破壊を発生しやすい。一方、ポリウレタン系樹脂単独では、ハードコート層や拡散層、アクリレート系樹脂との密着性には比較的優れるがポリエステル系基材フィルムとの密着性に劣り、また耐ブロッキング性に劣る。そのため、多量のあるいは粒径の大きな粒子を含有させるか、あるいは粒子の含有量を増加させる必要がある。その結果、フィルムのヘーズが上昇するため、特に透明性の要求が強い光学機能性フィルムまたは光学機能性シートの基材フィルムとして好ましくない。
(3−1)塗布液調合工程
本発明において被覆層は、塗布法を用いて形成される。塗布液に用いる材料は、樹脂及び分散媒あるいは溶媒である。本発明において、被覆層形成のために用いる塗布液は、水性であることが好ましい。また、本発明では、樹脂成分以外に、粒子及び界面活性剤を併用することが好ましい実施形態である。さらに、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機潤滑剤、抗菌剤、光酸化触媒などの添加剤を用いることができる。また、塗布液には、樹脂の熱架橋反応を促進させるため、触媒を添加しても良く、例えば、無機物質、塩類、有機物質、アルカリ性物質、酸性物質および含金属有機化合物等、種々の化学物質が用いることができる。また、水溶液のpHを調節するために、アルカリ性物質あるいは酸性物質を添加してもよい。塗布液は、分散媒あるいは溶媒中に、撹拌下、樹脂を分散化または溶解し、次いで、粒子、界面活性剤のほかに、必要に応じて各種添加剤を併用し、所望する固形分濃度にまで希釈して調整する。
また、本発明の積層フィルムにおいて、塗布液の樹脂成分及び粒子を均一に分散させるため、さらに粗大な粒子凝集物及び工程内埃等の異物を除去するために、塗布液を精密濾過することが好ましい。
塗布液を精密濾過するための濾材のタイプは、前記性能を有していれば特に限定はなく、例えば、フィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。塗布液を精密濾過するための濾材の材質は、前記性能を有しかつ塗布液に悪影響を及ばさない限り特に限定はなく、例えば、ステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
塗布液を精密濾過するための濾材は、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が25μm以下の濾材が好ましく、さらに好ましくは濾過性能5μm以下の濾材、特に好ましくは濾過性能1μm以下の濾材である。最も好ましくは、濾過性能の異なるフィルターを組み合わせて用いる方法である。濾過粒子サイズが25μmを超える濾材を用いた場合、粗大凝集物の除去が不十分となりやすい。そのため、濾過で除去できなかった粗大凝集物は、塗布乾燥後の一軸配向又は二軸配向工程での配向応力により広がって、100μm以上の凝集物として認識され、光学欠点の原因となりやすい。
塗布液に用いる原料について、以下で詳しく説明する。
(a)樹脂
熱可塑性樹脂フィルムからなる基材に形成される被覆層の樹脂成分の構成割合は、共重合ポリエステル系樹脂(A)とポリウレタン系樹脂(B)を含む塗布液を調製する場合、樹脂(A)と樹脂(B)の固形分基準の質量比は、(A)/(B)=70/30〜30/70が好ましく、特に好ましくは60/40〜40/60の範囲である。本発明において、被覆層を構成する樹脂は前記の共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂以外の第3の樹脂を併用することもできる。また、架橋剤を併用してもかまわない。
なお、本発明において、被覆層表面のPEs表面分率と、被覆層の樹脂成分におけるPEs質量比は、図6や図13で示すように、対応していない。図6では、被覆層の樹脂成分におけるPEs質量比が50%であっても、被覆層表面のPEs表面分率は30〜91%まで変化することを明確に示している。また、図13では、被覆層の樹脂成分におけるPEs質量比が45%であっても、被覆層表面のPEs表面分率は26〜86%まで変化することを明確に示している。このことは、被覆層の表面と内部で共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂の構成比が異なっていることを示唆している。すなわち、本発明では、被覆層の厚み方向で、共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂の構成比を任意に制御できることを意味する。
また、被覆層における共重合ポリエステル系樹脂(A)とポリウレタン系樹脂(B)の比率を前記の範囲内とすることにより、被覆層表面の堅さ指数を3.0〜15.0nmとすることができる。被覆層表面の堅さ指数が3.0nm未満の場合、被覆層が脆くなる。そのため、アクリル系樹脂を構成成分とするハードコート層、拡散層、プリズム層、などの機能層を形成後、所定のサイズに高速カッティングする加工工程において、高速カッティング時の剪断力に対し、十分な密着性が得られにくくなる。また。被覆層表面の堅さ指数が15.0nmを超える場合、耐ブロッキング性が低下しやすくなる。さらに、基材フィルムへの塗布性、密着性、耐溶剤性が不十分となる傾向がある。
本発明における水分散型共重合ポリエステル成分と親水性ポリウレタン成分の相分離構造の形成過程は以下のように推定される。共通の溶媒で混合された両樹脂成分は、塗布液内では均一に分散又は溶解した状態である。PETフィルム上に塗布後、乾燥工程を経た塗布面は、明確な相分離構造を有しない均一状態である。その後、延伸工程及び熱固定処理工程における加熱処理により、相分離構造を発現する。つまり、共重合ポリエステルを主成分とする相とポリウレタンを主成分とする相に分離する。また相分離の進行にともない、より低い表面エネルギーを有する共重合ポリエステル成分の表面存在比率が高くなるものと考えられる。
(共重合ポリエステル系樹脂)
本発明の被覆層に用いる共重合ポリエステル系樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分と、グリコール成分としてエチレングリコールと分岐したグリコールを構成成分とすることが好ましい。前記の分岐したグリコール成分とは、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、及び2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
前記の分岐したグリコール成分のモル比は、全グリコール成分に対し、下限が10モル%であることが好ましく、特に好ましくは20モル%である。一方、上限は80モル%であることが好ましく、さらに好ましくは70モル%、特に好ましくは60モル%である。また、必要に応じて、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを併用してもよい。
芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸およびイソフタル酸が最も好ましい。全ジカルボン酸成分に対し、10モル%以下の範囲で、他の芳香族ジカルボン酸、特に、ジフェニルカルボン酸及び2,6−ナルタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を加えて共重合させてもよい。
本発明で被覆層の樹脂成分として使用する共重合ポリエステル系樹脂は、水溶性または水分散が可能な樹脂を使用することが好ましい。そのために、前記ジカルボン酸成分の他に、ポリエステルに水分散性を付与させるため、5−スルホイソフタル酸そのアルカリ金属塩を1〜10モル%の範囲で使用するのが好ましく、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレンイソフタル酸−2,7−ジカルボン酸および5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸またはそのアルカリ金属塩を挙げることができる。
(ポリウレタン系樹脂)
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムの被覆層に用いるポリウレタン系樹脂は、水溶性または水分散が可能な樹脂を使用することが好ましい。例えば、ブロック型イソシアネート基を含有する樹脂であって、末端イソシアネート基を親水性基で封鎖(以下、ブロックと略す)した、熱反応型の水溶性ウレタンなどが挙げられる。
前記イソシアネート基のブロック化剤としては、重亜硫酸塩類及びスルホン酸基を含有したフェノール類、アルコール類、ラクタム類オキシム類、または活性メチレン化合物類等が挙げられる。ブロック化されたイソシアネート基はウレタンプレポリマーを親水化あるいは水溶化する。フィルム製造時の乾燥工程あるいは熱固定処理工程で、前記樹脂に熱エネルギーが与えられると、ブロック化剤がイソシアネート基からはずれるため、前記樹脂は自己架橋した編み目に混合した水分散性共重合ポリエステル系樹脂を固定化するとともに、前記樹脂の末端基等とも反応する。塗布液調整中の樹脂は親水性であるため耐水性が悪いが、塗布、乾燥、熱セットして熱反応が完了すると、ウレタン樹脂の親水基すなわちブロック化剤がはずれるため、耐水性が良好な塗膜が得られる。
前記ブロック化剤の中で、フィルム製造工程における熱処理温度、熱処理時間でブロック化剤がイソシアネート基からはずれる点、及び工業的に入手可能な点から、重亜硫酸塩類が最も好ましい。前記樹脂において使用される、ウレタンプレポリマーの化学組成としては、(1)分子内に2個以上の活性水素原子を有する、有機ポリイソシアネート、あるいは分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する分子量が200〜20,000の化合物、(2)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する、有機ポリイソシアネート、あるいは、(3)分子内に少なくとも2個活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応せしめて得られる、末端イソシアネート基を有する化合物である。
前記(1)の化合物として一般に知られているのは、末端又は分子中に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基あるいはメルカプト基を含むものであり、特に好ましい化合物としては、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。また、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド及び、プロピレンオキシド等アルキレンオキシド類、あるいはスチレンオキシドおよびエピクロルヒドリン等を重合した化合物、あるいはそれらのランダム重合、ブロック重合あるいは多価アルコールへの付加重合を行って得られた化合物が挙げられる。
ポリエステルポリオール及びポリエーテルエステルポリオールとしては、主として直鎖状あるいは分岐状の化合物が挙げられる。コハク酸、アジピン酸、フタル酸及び無水マレイン酸等の多価の飽和あるいは不飽和カルボン酸、あるいは該カルボン酸無水物等と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の多価の飽和及び不飽和のアルコール類、比較的低分子量のポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類、あるいはそれらアルコール類の混合物とを縮合することにより得ることができる。
さらに、ポリエステルポリオールとしては、ラクトン及びヒドロキシ酸から得られるポリエステル類が挙げられる。また、ポリエーテルエステルポリオールとしては、あらかじめ製造されたポリエステル類にエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド等を付加せしめたポリエーテルエステル類を使用することができる。
前記(2)の有機ポリイソシアネートとしては、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。
前記(3)の少なくとも2個の活性水素を有する鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。
ウレタンプレポリマーを合成するには、通常、前記鎖伸長剤を用いた一段式あるいは多段式イソシアネート重付加方法により、150℃以下、好ましくは70〜120℃の温度において、5分ないし数時間反応させる。活性水素原子に対するイソシアネート基の比は、1以上であれば自由に選べるが、得られるウレタンプレポリマー中に遊離のイソシアネート基が残存することが必要である。さらに、遊離のイソシアネート基の含有量は10質量%以下であればよいが、ブロック化された後のウレタンポリマー水溶液の安定性を考慮すると、7質量%以下であるのが好ましい。
得られた前記ウレタンプレポリマーは、好ましくは重亜硫酸塩を用いてブロック化を行う。重亜硫酸塩水溶液と混合し、約5分〜1時間、よく攪拌しながら反応を進行させる。反応温度は60℃以下とするのが好ましい。その後、水で希釈して適当な濃度にして、熱反応型水溶性ウレタン組成物とする。該組成物は使用する際、適当な濃度および粘度に調製するが、通常80〜200℃前後に加熱すると、ブロック剤の重亜硫酸塩が解離し、活性なイソシアネート基が再生するために、プレポリマーの分子内あるいは分子間で起こる重付加反応によってポリウレタン重合体が生成する、あるいは他の官能基への付加を起こす性質を有するようになる。
前記に説明したブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)の1例としては、第一工業製薬(株)製の商品名エラストロンが代表的に例示される。エラストロンは、重亜硫酸ソーダによってイソシアネート基をブロックしたものであり、分子末端に強力な親水性を有する、カルバモイルスルホネート基が存在するため、水溶性となっている。
(b)架橋剤
本発明では、被覆層の耐湿熱性を向上させるために、塗布液に架橋剤を添加し、次いで熱処理を行うことにより、架橋構造を有する樹脂を含む被覆層を形成させる。架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤から選ばれる少なくとも一種を用いる。架橋剤は、塗布液に使用する共重合ポリエステル樹脂との親和性、及び被覆層に要求される耐湿熱密着性を考慮しながら選定することができる。
特に、高度の耐湿熱密着性が要求される場合、前記の架橋剤の中で、エポキシ系架橋剤あるいはメラミン系架橋剤が好ましい。エポキシ系架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、ナガセ化成工業株式会社製の水溶性エポキシ架橋剤(デコナールシリーズ;EX−521、EX−512、EX−421、EX−810、EX−811、EX−851等)が市販品として入手可能である。メラミン系架橋剤としては、例えば、住友化学社製スミテックスレジンシリーズ(M−3、MK、M−6、MC等)や、株式会社三和ケミカル社製メチル化メラミン樹脂(MW−22、MX−706等)が市販品として入手可能である。また、オキサゾリン系架橋剤としては、株式会社日本触媒製エポクロスシリーズ(WS−700)、新中村化学工業社製NX Linker FX等が、市販品として入手可能である。
上記架橋剤は、被覆層中の共重合ポリエステル樹脂と架橋剤の合計量(100質量%)に対して、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%となるように被覆層形成用塗布液中に含有させることが好ましい。架橋剤の含有量が40質量%を越えると、被覆層が脆くなり、アクリレート系樹脂からなるハードコート層や拡散層などの機能層を形成させた後の加工工程において、高速カッティングに耐えうるだけの密着性が十分に得られない場合がある。一方、架橋剤の含有量が5質量%未満では、近年要求される耐久性が得られにくい場合がある。なお、塗布液中には、架橋を促進するために必要に応じて触媒を添加しても良い。
(c)溶媒
本発明においては、溶媒とは、樹脂を溶解する液だけではなく、樹脂を粒子状に分散させるために用いる分散媒も広義的に含むものである。本発明を実施するためには、有機溶媒、水性溶媒等の各種溶媒を用いることができる。
塗布液に用いる溶媒は、水と、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類を、全塗布液に占める割合が30〜50質量%の範囲で混合した混合液が好ましい。さらに、10質量%未満であれば、アルコール類以外の有機溶媒を溶解可能な範囲で混合してもよい。ただし、塗布液中、アルコール類とその他の有機溶媒との合計は、50質量%未満とする。
有機溶媒の添加量が、全溶媒に対し50質量%未満の場合、塗布乾燥時に乾燥性が向上するとともに、水単独の場合と比較して塗布層の外観が向上するという利点がある。有機溶媒の添加量が、全溶媒に対し50質量%以上の場合には、溶媒の蒸発速度が速くなり、塗工中に塗布液の濃度変化が起こりやすくなる。その結果、塗布液の粘度が上昇して、塗工性が低下するために、塗布膜の外観不良を起こす場合がある。さらに、有機溶媒の揮発により、火災などの危険性も高くなる。また、有機溶媒の添加量が全溶媒に対し30質量%未満では、相対的に水の比率が増加し、親水性の高いポリウレタン成分が被覆層表面に偏析し、最終的に得られた積層熱可塑性樹脂フィルムにおいて被覆層表面のPEs表面分率を本発明で規定した範囲内とすることが難しくなる。
(d)塗布液のpH調整
本発明で被覆層形成のために使用する塗布液は、pHが5以上8未満の範囲であることが好ましい。塗布液のpHが5未満では、PEs表面分率が本発明の規定する範囲より大きくなりやすく、密着性に劣る傾向がある。一方、塗布液のpHが8以上では、粒子の種類によっては顕著な凝集が起こり、ヘーズが上昇し透明性が悪化するため好ましくない。pH調整剤としては、密着性、耐ブロッキング性、コート性に悪影響を及ぼさないか、無視できるものであれば特に限定されない。例えば、pHを高くする場合には重曹あるいは炭酸ナトリウムを、pHを低くする場合は酢酸等を用いることができる。
(e)界面活性剤の併用
前記水性塗布液を基材フィルム表面に塗布する際には、該フィルムへの濡れ性を向上させ、塗布液を均一に塗布するために一般に界面活性剤が使用される。本発明では、それ以外に、被覆層表面で特定のPEs表面分率を制御するための手段の1つとして、界面活性剤を使用することができる。
界面活性剤は、良好な塗布性が得られ、且つ、本発明で規定するPEs表面分率が得られるものであれば特に種類は限定されない。界面活性剤の中でも、微量の添加で良好な塗布性を得るにはフッ素系界面活性剤が好適である。さらに、本発明で規定するPEs表面分率を得るためには、カチオン系界面活性剤またはノニオン系界面活性剤を、塗布液に対し0.01〜0.18質量%配合することが好ましい。
アニオン性界面活性剤を使用した場合、前記に示した共重合ポリエステル、及びポリウレタンとの相溶性を高める場合があり、本発明で規定する相分離構造が得られにくい。界面活性剤の添加量は、ハードコート層や拡散層などの機能層との密着性を阻害せず、良好な塗布性を得られる範囲であれば適宜選択することができる。例えば、フッ素系界面活性剤の場合、純水に対する臨界ミセル濃度からその30倍以下が好適である。臨界ミセル濃度の30倍以上では塗布液中に含まれる粒子が凝集しやすくなるため、得られた積層フィルムのヘーズが上昇し、特に光学機能性フィルムまたは光学機能性シートの基材フィルムとして好ましくない。また、界面活性剤成分が被覆層表面にブリードアウトして、密着性に悪影響を及ぼす場合もある。一方、臨界ミセル濃度以下では、良好な塗布性が得られない。また、本発明で規定するPEs表面分率の範囲に制御することが難しくなる。
(界面活性剤の精製)
本発明に用いる界面活性剤は、精製したものを用いることが好ましい。上市されている界面活性剤は、一般に、微量な不純物を含有している場合が多い。特に、不純物であるポリエチレングリコールは、その含有量によっては良好な相分離構造を得るのを阻害する場合がある。これを防止するために、不純物を界面活性剤から除去する前処理を行い、精製した界面活性剤を使用することが好ましい。
不純物を除去する前処理工程としては、界面活性剤を変質させず、不純物を除去できれば方法は特に限定されない。例えば、次のような方法が挙げられる。
少なくとも界面活性剤とポリエチレングリコールを溶解可能な有機溶媒に溶解し、低温で静置し、主成分である界面活性剤を飽和沈降させ、次いで濾過し、純度を向上させた界面活性剤を取り出す方法が挙げられる。パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物系界面活性剤の場合、イソプロピルアルコールに30℃の温浴上で加熱溶解して0℃で24時間程度静置後、沈殿物を濾過し取り出すことによって純度を向上させた界面活性剤を得ることができる。
(f)粒子
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムのヘーズは1.5%以下であることが、透明性が高度に要求される光学機能性フィルムまたは光学機能性シートの基材フィルムとして使用する際に、重要である。前記のヘーズは1.0%以下であることがさらに好ましい。ヘーズが1.5%を超えると、フィルムをLCD用のレンズフィルムや、バックライト用基材フィルム等に用いた場合、画面の鮮明度が低下するので好ましくない。
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムのヘーズを1.5%以下にするためには、基材フィルム中に粒子を含有させないことが好ましい。基材フィルム中に粒子を含有させない場合、被覆層に耐スクラッチ性やロール状に巻取る際や巻出す際のハンドリング性(滑り性、走行性、ブロッキング性、巻取り時の随伴空気の空気抜け性など)を改善するために、被覆層中に適切な大きさの粒子を特定量含有させて、被覆層表面に適度な凹凸を形成させることが好ましい。
粒子としては、共重合ポリエステル系樹脂、またはポリウレタン系樹脂と親和性の高い粒子が好ましく、その両者に対する親和性がどちらかの相に偏在する程度の差があることが好ましい。粒子を相分離した樹脂の一方に粒子を偏在させることによって、粒子が適度に集まり、比較的少ない粒子の添加で、すなわちヘーズを大幅に上昇させることなく優れた耐ブロッキング性を得ることができるのである。
被覆層に含有させる粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカーアルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどの無機粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などの耐熱性高分子粒子が挙げられる。
これらの粒子の中でも、シリカ粒子が次の点から好適である。
第1の利点は、被覆層の樹脂成分と屈折率が比較的近いため、高透明のフィルムを得やすいという点である。第2の利点は、シリカ粒子は相分離したポリウレタン系樹脂相に偏在しやすいという特徴があり、被覆層表面に存在するポリウレタン系樹脂相の耐ブロッキング性に劣るという、ポリウレタン形樹脂固有の性質を補完することができる点である。これは、シリカ粒子とポリウレタン系樹脂との表面エネルギーが共重合ポリエステル系樹脂よりも近く、親和性が高いためと考えられる。
また、粒子の形状は特に限定されないが、易滑性を付与する点からは、球状に近い粒子が好ましい。
被覆層中の粒子の含有量は、被覆層に対して20質量%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下にする。被覆層中の粒子の含有量が20質量%を超えると、透明性が悪化し、フィルムの密着性も不十分となりやすい。一方、粒子の含有量の下限は、被覆層に対して好ましくは0.1質量%、さらに好ましくは1質量%、特に好ましくは3質量%とする。
また、被覆層中には平均粒径の異なる粒子を2種類以上含有させてもよい。また、同種の粒子で平均粒径の異なるものを含有させてもよい。いずれにしても、粒子の平均粒径、および総含有量が前記の範囲とすればよい。前記塗布液を塗布する際には、塗布液中の粒子の粗大凝集物を除去するために、塗布直前に塗布液が精密濾過されるように濾材を配置することが好ましい。
また、粒子の平均粒径は20〜150nmが好ましく、さらに好ましくは40〜60nmである。平均粒径が20nm未満であると、十分な耐ブロッキング性を得ることが困難な他、耐スクラッチ性が悪化する傾向がある。一方、粒子の平均粒径が150nmを超えると、ヘーズが上昇し且つ、粒子が脱落しやすくなるため好ましくない。
本発明では、平均粒径が20〜150nmの粒子Aのみでは、十分な耐ブロッキング性及び耐スクラッチ性が得られない場合がある。そのために、さらに耐ブロッキング性及び耐スクラッチ性を向上させるために、さらに平均粒径の大きな粒子Bを少量併用することが好ましい。平均粒径の大きな粒子Bの平均粒径は160〜1000nmが好ましく、特に好ましくは200〜800nmである。粒子Bの平均粒径が160nm未満の場合、耐スクラッチ性、滑り性、巻き性が悪化する場合ある。一方、粒子Bの平均粒径が1000nmを超える場合、ヘーズが高くなる傾向がある。また、粒子Bは一次粒子が凝集した凝集体粒子であることが好ましく、凝集状態での平均粒径と一次粒子との平均粒径の比を4倍以上の粒子を用いることが、耐スクラッチ性の点から好ましい。
2種類の粒子を用いる場合、例えば被覆層中の粒子A(平均粒径:20〜150nm)と粒子B(平均粒径:160〜1000nm)の含有量比(P1/P2)を5〜30とし、かつ粒子Bの含有量を被覆層の固形分に対し0.1〜1質量%とする。2種類の特定粒径の粒子の含有量を前記範囲に制御することは、被覆層表面の三次元中心面平均表面粗さを適正化し、透明性と、ハンドリング性や耐ブロッキング性を両立させる上で好適である。被覆層に対し、粒子Bの含有量が1質量%を超えると、ヘーズの上昇が著しくなる傾向がある。
前記粒子の平均一次粒径及び平均粒径の測定は下記方法により行う。
粒子を電子顕微鏡で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径を測定し、その平均値を平均一次粒径または平均粒径とする。また、積層フィルムの被覆層中の粒子の平均粒径を求める場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率12万倍で積層フィルムの断面を撮影し、被覆層の断面に存在する粒子の最大径を求めることができる。凝集体からなる粒子Bの平均粒径は、積層フィルムの被覆層の断面を、光学顕微鏡を用いて倍率200倍で300〜500個撮影し、その最大径を測定する。
(3−2)塗布工程
前記水性塗布液を塗布する工程は、該フィルムの製造工程中に塗布するインラインコート法が好ましい。さらに好ましくは、結晶配向が完了する前の基材フィルムに塗布する。水性塗布液中の固形分濃度は、30質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは10質量%以下である。固形分濃度の下限は1質量%が好ましく、さらに好ましくは3質量%、特に好ましくは5質量%である。該水性塗布液の塗布量該水性塗布液が塗布されたフィルムは、配向および熱固定のためにテンターに導かれ、そこで加熱されて、熱架橋反応により安定な被膜を形成し、ポリエステル系積層フィルムとなる。
(塗布量)
未乾燥時の塗布量(以下、ウェット塗布量と略す)は、2g/m2以上10g/m2未満とすることが好ましい。ウェット塗布量が2g/m2未満で、設計のドライ塗布量(最終被覆層の塗布量)を得ようとすると、塗布液の固形分濃度を高くする必要がある。塗布液の固形分濃度を高くすると、塗布液の粘度が高くなるため、スジ状の塗布斑が発生しやすい。一方、ウェット塗布量が10g/m2以上では、乾燥炉内の乾燥風の影響を受けやすく、塗布斑が発生しやすい。なお、埃の付着による欠点を防止するために、クリーン度をクラス5000以下のクリーンな環境下で塗布液を塗布することが好ましい。
また、最終的な被覆層の塗布量(フィルム単位面積当りの固形分質量)は、0.005〜0.20g/m2に管理することが好ましい。従来技術では、塗布量が0.05g/m2未満では十分な密着性が得られにくい。しかしながら、被覆層が特定の相分離構造を有することで、塗布量が0.05g/m2未満であっても、機能層と基材に対し優れた密着性を有する積層フィルムが得られるのである。塗布量が0.005g/m2未満であると、密着性が不十分となる。また、塗布量が0.05g/m2未満の場合、使用する粒子は平均粒径が60nm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒径が60nmを超えると、粒子が被覆層から脱落しやすくなる。粒子がポリウレタン相に偏在している場合は、塗布量が0.005g/m2以上であれば粒子が脱落しにくい。一方、塗布量が0.20g/m2を超えると、被覆層表面に偏析するポリウレタン系樹脂成分が多くなり耐ブロッキング性が低下する。
また、被覆層の厚みは、被覆層の断面をミクロトームで切断し、電子顕微鏡で観察することにより測定できるが、被覆層が柔らかい場合、切断時に変形する場合がある。簡便的には、塗布量が既知であれば、被覆層の密度から厚み換算することができる。例えば、被覆層の密度が1g/cm3の場合、塗布量が1g/m2であれば、厚みは1μmに相当する。被覆層の密度は、被覆層を構成する樹脂、粒子の種類からそれぞれの材料の密度を求め、各材料の密度に材料の質量比を乗じ、その和を求めることで被覆層の厚みを推定することができる。
(3−3)乾燥工程
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、基材フィルムに塗布液を塗布後、薄く塗工された塗膜を乾燥する。一般に、塗布液を塗布後、塗膜を乾燥させる際、テンターの予熱ゾーンを利用して乾燥させる場合が多い。この場合、製膜設備の大きさフィルムの走行速度にも依存するが、一般に塗布から乾燥開始までの時間は少なくとも5秒程度かかる。この間に、塗布液の溶媒である水とアルコールのバランスがくずれ、親水性の高いポリウレタン成分が被覆層表面に偏析しやすくなる。そのため、最終的に得られる積層熱可塑性樹脂フィルムにおいて、被覆層表面のPEs表面分率を特定の範囲に制御することが困難となる。本発明では、塗膜の乾燥を専用とする乾燥炉(プレドライヤー)を塗布装置のフィルム進行方向出口の極力近くに配置し、塗布液をポリエステルフィルムに塗布後、直ちに乾燥させることが重要なポイントである。
乾燥炉内において、塗布面にあたる乾燥風の温度は120℃以上150℃未満が好ましい。また、風速は30m/秒以上が好ましい。さらに好ましい乾燥温度は、130℃以上150℃未満である。該乾燥温度が120℃未満または風速30m/秒未満である場合、乾燥速度が遅くなり、塗布液の溶媒である水とアルコールのバランスがくずれ、相対的に水の比率が増加しやすくなる。そのため、親水性の高いポリウレタン成分が被覆層表面に偏析し、最終的に得られる積層熱可塑性樹脂フィルムにおいて、本発明で規定するPEs表面分率を得ることが困難になる。一方、乾燥温度が150℃以上では、基材フィルムの結晶化が起こりやすくなり、横延伸時に破断が発生する頻度が増加する。
また、前記の乾燥炉では、温度を120℃以上150℃未満に維持しながら、0.1〜5秒間乾燥させることが好ましい。乾燥時間は、さらに好ましくは0.5〜3秒である。乾燥時間が0.1秒間未満では、塗膜の乾燥が不十分となり、乾燥工程から横延伸工程までの間に配置されたロールを通過する際に、該ロールを乾燥不十分な塗布面で汚染しやすくなる。一方、乾燥時間が5秒間を超えると、基材フィルムの結晶化が起こりやすくなり、横延伸時に破断が発生する頻度が増える。
前記の乾燥炉で、120℃以上150℃未満の温度で塗膜を乾燥した後、被覆層を有する積層フィルムを直ちに室温近くまで冷却することが好ましい。前記積層フィルムの表面温度が100℃以上の高温のまま乾燥炉を出て室温近くのロールに積層フィルムが接触した場合、フィルムの収縮によってキズが発生しやすくなる。
乾燥炉内の風速を通常30m/秒以上にすると、乾燥炉内で未乾燥状態の塗布面に強い乾燥風があたるため、乾燥ムラが生じやすくなる。しかしながら、本発明では、吹き付ける風量と同量若しくはそれ以上の風量を乾燥炉外に排気することによって、30m/秒以上の風速で行うことが可能となる。また、該排気風はコーターと反対側へ流れるようにし、コーターでの排気風による塗布面へのムラ発生を防止することも重要である。
塗布直後から乾燥炉に入るまでのフィルムの通過時間を、2秒未満、好ましくは1.5秒未満とすることが重要である。塗布から乾燥炉に入るまでの時間が2秒以上であると、この間に塗布液の溶媒である水とアルコールのバランスがくずれ、これによって親水性の高いポリウレタン成分が被覆層表面に偏析しやすくなる。そのため、最終的に得られた積層熱可塑性樹脂フィルムは、被覆層の表面のPEs表面分率を特定範囲とすることが困難となる。
塗布直後から乾燥炉に入るまでのフィルムの通過時間を2秒未満に維持するためには、適宜フィルムの走行速度を選択する必要があるが、コーターと乾燥炉入口を可能な限り近づけることが好ましい。なお、乾燥炉において、乾燥風からの埃の混入を防止するために、HEPAフィルターで清浄化した空気を用いることが好ましい。この際に用いるHEPAフィルターは、公称濾過精度0.5μm以上の埃を95%以上カットする性能を有するフィルターを用いることが好ましい。
乾燥工程は、乾燥温度および乾燥時間の条件を順次変えた、いわゆる2〜8のゾーンに分割された乾燥ゾーンから構成されることが好ましい。特に好ましくは、3〜6のゾーンに分割された多段乾燥装置を採用する。例えば、塗布液を、一軸配向熱可塑性樹脂フィルムの片面または両面に塗布液を塗布し、コーター真上に配置した多段の乾燥炉で乾燥する場合、下記の方法が好適である。
例えば、4段階で乾燥する場合には、4つの乾燥ゾーンに分かれた乾燥炉にて乾燥を行う。第1乾燥ゾーンでは、温度125〜140℃で0.1〜4秒間、第2乾燥ゾーンでは、温度55〜100℃で0.1〜4秒間、第3乾燥ゾーンでは、温度35〜55℃で0.1〜4秒間、第4乾燥ゾーンでは、温度25〜35℃で0.1〜4秒間、乾燥させる方法が挙げられる。
前記の乾燥条件の数値範囲は、塗布液の固形分濃度により多少の変動があり、上記の代表的な条件に限定されるものではない。さらに、熱風乾燥を行う場合、風量も各段階で変化をもたせることが重要である。
例えば、以下のような方法が好適である。
第1乾燥ゾーンでは、乾燥風の風速を20〜50m/秒、乾燥風の給気風量を100〜150m3/秒、排気風量を150〜200m3/秒に設定する。第2乾燥ゾーンから第4乾燥ゾーンまでは、給気風量を60〜140m3/秒、排気風量を100〜180m3/秒に設定する。いずれの乾燥ゾーンにおいても、コーター側に乾燥風が流れないように設定し、引き続いてフィルムの端部をクリップで把持して、温度100〜140℃で、風速10〜20m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に2〜6倍に延伸する。
また、温度を120℃から150℃に維持しながら、0.1〜5秒間、好ましくは0.5秒から3秒未満の時間で、乾燥温度および総乾燥時間を適宜調整すればよい。この乾燥工程における各段(ゾーン)の決定は、分散液の濃度、塗布量、塗布された走行フィルムの走行速度、熱風の温度、風速、風量などの諸条件を考慮して、製造現場で適宜、適正値を決めることができる。
(3−4)熱固定処理工程
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、横延伸工程、熱固定処理工程、冷却工程は、10〜30ゾーンに連続して区分され、かつ各ゾーンは独立して温度制御が可能なように仕切られ、かつ各ゾーン間で急激な温度変化が起きないように設計している。特に、横延伸ゾーン後半から熱固定最高温度設定ゾーンにおいて、段階的に昇温させることで、隣接するゾーン間の急激な温度変化を抑えることができる。本発明において、被覆層表面に特異な相分離構造を有する積層熱可塑性樹脂フィルムを製造する際、特に、乾燥工程や熱固定処理工程では温度制御が非常に重要である。また、被覆層を構成する樹脂に架橋構造を形成させるためには、熱固定処理工程における温度が非常に重要であり、この温度は架橋反応速度に大きく影響する。以下、その実施態様を詳細に説明する。
前述のように、本発明の熱固定処理工程において、熱処理条件が被覆層の相分離状態を左右する。すなわち、熱固定処理工程における最高温度、前記の最高温度に達するのに要する時間、及び被覆層の相分離が顕著に進行し始める温度から熱固定処理工程における最高温度に達するのに要する時間、を適宜設定することが重要である。
熱固定処理工程における各熱固定ゾーンにおける温度は、基材の熱可塑性樹脂フィルムの構成樹脂の種類により若干の違いはあるが、100〜260℃の温度範囲内で適宜設定すればよい。以下、代表的な熱可塑性樹脂である、ポリエチレンテレフタレートを基材フィルムとした場合を例に挙げて説明する。
熱固定処理工程における最高温度は、210〜240℃に制御することが好ましく、さらに好ましくは下限が225℃、上限が235℃である。一般には、熱固定処理の初期の段階では210〜240℃と比較的高い温度で熱固定をして、後段になるにつれて、100〜200℃と、順次温度を下げていく場合が多い。
熱固定処理工程における最高温度が210℃未満では、被覆層においてミクロ相分離構造またはナノ相分離構造を形成させることが困難にある。したがって、近年要求されている、高速カッティング時の衝撃による界面の剥離に耐えられる、基材と機能層との密着性が十分に得られにくくなる。さらに、得られた積層フィルムの熱収縮率が大きくなり、好ましくない。
また、熱固定処理工程における最高温度が240℃を超える場合には、被覆層表面のPEs表面分率が大きくなり、ハードコート層、拡散層、プリズム層、紫外線硬化型インクで印刷された印刷層などの機能層に対する密着性が低下しやすくなる。さらに、被覆層の相分離が顕著に進行し始める温度から熱固定処理の最高温度に達するのに要する時間が長くなるため、共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル相の最も細い箇所の幅が1μmを超える箇所が点在する状態となる。その結果、局所的にハードコート層、拡散層、プリズム層、紫外線硬化型インクで印刷された印刷層などの機能層に対し、密着性が劣る箇所が生じ、その部分を起点として巨視的な剥離に繋がる場合がある。
被覆層の相分離が顕著に進行し始める温度から熱固定処理の最高温度に達するのに要する時間は、具体的には以下のように設定することが好ましい。
本発明では、被覆層の相分離が顕著に進行を開始する温度設定ゾーンから熱固定処理工程の最高温度設定ゾーン入口に達するまでのフィルムの通過時間は、3秒以上20秒未満が好ましく、特に好ましくは4秒以上15秒未満である。
前記の通過時間が3秒未満では、本発明で規定する相分離構造を発現させるための時間が不足する場合がある。一方、前記の通過時間が20秒間以上では相分離が過剰に進行し、共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする相の最も細い箇所の幅が1μmを越える箇所が点在する状態となりやすい。その結果、局所的にハードコート層、拡散層、プリズム層、UVインクで印刷された印刷層などの機能層に対する密着性が劣る箇所が生じ、その部分を起点として巨視的な剥離に繋がる場合がある。
本発明で、被覆層の相分離が顕著に進行を開始する温度とは、本発明の実施例に示す塗布液組成の範囲においては、約200℃と推定している。しかしながら、該温度は当然のことながら、被覆層の樹脂成分によって異なるため、この温度に限定されるものではない。
熱固定処理工程についてさらに具体的に説明する。
一般に、横延伸工程、熱固定処理工程、冷却工程は、隣接する各ゾーンの急激な温度変化を抑制するために、テンター内で10〜30ゾーンに分割され、各ゾーンで独立して温度制御がなされている。特に、横延伸ゾーンの後半から熱固定処理工程の最高温度に設定されたゾーンにおいては、各ゾーンの温度をフィルム進行方向に対して段階的に昇温させて、各熱固定ゾーン間での急激な温度変化がおきないようにすることが好ましい。
本発明においては、相分離が顕著に進行を開始する温度設定ゾーンから熱固定処理工程の最高温度設定ゾーン入口までのフィルムの通過時間を、速やかに、且つ均一に昇温させることが重要である。速やかに温度を上昇させるためには、各熱固定ゾーンにおいて熱伝達効率を上げる方法、例えば、フィルムへ吹き付ける熱風の風速を高くする方法が有効である。しかしながら、この方法では、一般的に温度斑が発生しやすいため、被覆層の相分離状態に斑が発生する場合や、熱固定ゾーン内で装置内に僅かに付着するオリゴマー等の異物が舞い上がり、舞い上がった異物がフィルムに付着して光学的欠点に繋がる場合がある。
一方、風速が低すぎると、十分な昇温速度が得られない。よって、本発明では風速を10m/秒以上20m/秒未満とするのが好ましい。速やかに且つ均一に積層フィルムを昇温させるためには、熱風を吹き付けるためのノズルの間隔を500mm以下の比較的短い間隔で配置する手段が有効である。熱風を吹き付けるためのノズルの間隔を500mm以下に配置する場合、例えばノズル間隔は、300mm、350mm、400mmと配置する場合、設備メンテナンス上は不利となるが、本発明を完成させるには重要である。一段に相当する1ゾーン当たりのノズル本数は6〜12本程度と、その本数はノズル間隔、通風量、通風時間の状態を考慮して決める。なお、本発明で記載する風速とは、熱風吹き出しノズル出口に面したフィルム表面における風速を意味し、熱式風速計(日本カノマックス製、アネモマスター モデル6161)を用いて測定したものである。
本発明の熱固定処理工程の好ましい一実施態様を示す。
前記熱固定処理工程は、複数の熱固定ゾーンに連続して区分され、かつ各ゾーンは独立して温度制御が可能なように仕切られている。熱固定ゾーンは、2〜10段の熱固定ゾーンが連続して配列された工程、好ましくは4〜8段の工程に分割し、この多段に分割された熱固定ゾーンで積層フィルムの温度制御管理をすることが好ましい。
例えば、被覆層を有するポリエステルフィルムの場合、下記のように6段に分割された熱固定ゾーンを順次連続して通過させ、各段階に微妙な温度差を持たせて熱固定処理を行い、フィルム両端部のコートされていない部分をトリミングする方法が挙げられる。前記の熱固定処理温度は、第1熱固定ゾーンで200℃、第2熱固定ゾーンで225℃、第3熱固定ゾーンで230℃、第4熱固定ゾーンで230℃、第5熱固定ゾーンで210℃、第6熱固定ゾーンで170℃、第7熱固定ゾーンで120℃とする。また、第6熱固定ゾーンにて幅方向に3%の緩和処理を行う。
前記の段とは、1つの熱固定ゾーンに相当するものである。このように各段の熱固定ゾーンの温度には、微妙な温度差を持たせること、即ち5〜40℃程度の温度差を持たせることが好適である。この温度差の設定は、被覆層を有する熱可塑性樹脂フィルムの走行速度、風量、および被覆層の厚さなどの諸要因を考慮して任意に決める。
レンズフィルムや拡散板等の光学機能性フィルムまたは光学機能性シートの基材フィルムとして用いる場合、フィルム厚さが100μm以上の比較的厚手のフィルムであっても、通常、フィルム長さは少なくとも1000m以上、時には2000m以上のロール状に巻き取った形態で、プリズム層や拡散層を積層する加工工程に供される。
本発明においては、被覆層表面のポリエステル相A(位相像で暗色相を示す)の面積比率(PEs表面分率)をフィルムの長手方向に100m間隔で測定した際に、長手方向の被覆層表面のPEs表面分率の最大値と最小値の差が15%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは10%以下である。この長手方向の被覆層表面のPEs表面分率の最大値と最小値の差を15%以下とすることで、安定した密着性と耐ブロッキング性を有する積層熱可塑性樹脂フィルムロールが得られるのである。
長手方向の被覆層表面のPEs表面分率の最大値と最小値の差を15%以下に制御するためには、塗布液の組成、塗布条件、乾燥条件等、及び熱固定条件等の製膜条件を、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムロールを製造する際において一定に保つことが重要である。しかしながら、特に、塗布液に用いる混合溶媒の比率は変動しやすく、この混合溶媒の比率を一定に保つ工夫がフィルムロールの長手方向のPEs表面分率の変動を小さくする上で重要である。本発明では、例えば、以下に示す手段によってPEs表面分率の変動幅を15%以下に制御することができる。なお、混合溶媒の比率を一定に保つ手段は、下記の方法に限定されるものではない。
塗布液の受け皿(図7の11)の容量に対して、循環用タンク(図7の13)の容量を大きくすることが、混合溶媒の濃度比を安定化させる上で効果的である。具体的には、図7に示すように、塗布液の受け皿の容量を1とした時、循環用タンクの容量の比を好ましくは10以上、特に好ましくは50以上にする。容量比(循環用タンクの容量/塗布液の受け皿の容量)が10未満、すなわち循環用タンクの容量が小さすぎる場合、混合溶媒の濃度比の変動が大きくなりやすく。
さらに、循環用タンクの容量を1とした時、調合用タンク(図7の14)の容量の比を10以上にすることが好ましく、特に好ましくは20以上にする。これにより、調合用タンクから循環用タンクに塗布液を供給する際に、循環用タンクの容量が稼働時に常に一定にすることができる。
また、塗布装置におけるアプリケーターロールの精度(真円度と円筒度)を高くすることも、フィルムロールの長手方向におけるPEs表面分率の変動を小さくする上で有効である。
前記のアプリケーターロールの真円度とは、JIS B 0621で示されているように、記録式真円度測定器を用いて決定された最小領域法による二つの同心円の各半径の差で表される指標である。なお、ロールの真円度の単位はmmである。また、アプリケーターロールの円筒度は、該ロールを定盤上に置いた測微器付きスタンドを軸線方向に移動して、円筒上面に測定子を当てた状態で、全長にわたって種々の測定平面中で測定を実施し、そのときの読みの最大差の1/2で表される指標である。なお、円筒度の単位はmmである。
本発明においては、でロール精度(真円度と円筒度)を向上させることにより、長さ方向の塗布層の厚みのバラツキを低減することができる。具体的には、ロール精度(真円度と円筒度)を5/1000mm未満にすることが好ましい。
また、塗布液の塗工に際し、リバースコーターの各ロールの表面仕上げを0.3S以下にし、かつ、アプリケーターロールおよびメタリングロールの精度(真円度と円筒度)を5/1000mm未満、2/1000mm以上にすることにより、ウェット塗工量の変動を押さえ、かつ、塗膜のバラツキも押さえることができる。好ましくは、アプリケーターロールおよびメタリングロールの精度(真円度と円筒度)が3/1000mmである塗工ロールを用いるのがよい。
また、フィルムのテンションを4000〜10000N/原反幅(原反幅は1〜2m)にすることにより、工業的規模でフィルムの平面性が保持され、塗布液の転写量が均一となる。なお、フィルムのテンションは、フィルムの厚さにより異なり、比較的薄いフィルムはより低いテンションを掛けることで平面性が保持される。
フィルムのテンションが10000N/原反幅を超えると、フィルム原反が変形する場合、あるいは破断する場合がある。一方、フィルムのテンションが4000N/原反幅未満では、塗工時のフィルムの平面性が不十分となる場合や、フィルムの蛇行が発生する場合がある。その結果、塗布液の転写量がフィルムの長さ方向で不均一となり、フィルムのウェット塗工量が大きく変動することにより、塗布層の厚さのバラツキもより大きくなる。
また、フィルムロールの幅方向のPEs表面分率の最大値と最小値の差を10%以下に制御するためには、フィルムロールの幅方向に対する塗布層の厚みのバラツキを小さくすることが重要である。そのためには、塗工時の幅方向の平面性を向上させることが効果的である。具体的には、リバースロールで塗工直後、フィルムの両端面のみをピンチロール(図7の16)を用いて把持する。ピンチロールにフィルムの両端部を把持させることにより、工業的規模で、フィルムの幅方向の平面性を向上させて、フィルムの幅方向のウェット塗工量を安定化させる。それにより、フィルムロールの幅方向の塗布層のバラツキを低減することができる。フィルムの両端部をピンチロールで把持させない場合は、フィルムの幅方向および長さ方向のウェット塗工量が大きく変動し、塗布層の厚さのバラツキもより大きくなる。
次に、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムの構成と作用効果、製造方法について、実施例と比較例を用いて説明するが、本発明は当然これらの実施例に限定されるものではない。また、実施例における、各フィルムの物性や評価は下記の方法を用いた。
(1)PEs表面分率
(1−1) 相分離構造の評価
被覆層の相分離構造の評価は、走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー製、SPI3800Nシステム/SPA300)を使用し、位相測定モード(フェーズモード)にて行った。位相像では、位相遅れが大きいほど明るく、逆に位相遅れが小さいほど暗く表現される。位相遅れが小さいということは、他の相に比べ硬いあるいは比較的吸着力が小さいことを意味する。本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムの被覆層において、暗色相がポリエステル相Aであり、明色層がポリウレタン層である。
走査型プローブ顕微鏡における位相測定モードの測定原理は、エスアイエス・ナノテクノロジー株式会社のウェブサイト(エイチティティピー://ダブリューダブリューダブリュー.エスアイアイエヌティ.シーオーエム/ティイーシーエイチエヌオーエルオージーワイ/ピーアールオービーイー_エーピーピーエルアイシーエーティアイオーエヌエス.エイチティエムエル)の「1−2.アップリケーション(モード別)」におけるPhase欄の「1.SPMによる位相測定」のPDFファイルに記載されている。
測定に使用したカンチレバーは、主にDF3(バネ定数:約1.6N/m)を用い、探針汚染による感度及び分解能の低下を防ぐため、常に新品を使用した。スキャナーはFS−20Aを使用した。また、観察は分解能512×512ピクセル以上とし、観察視野は5μm×5μmとした。測定時のカンチレバーの振幅減衰率や走査速度、走査周波数等の測定パラメータはラインスキャンを実施し、最も感度・分解能良く観察できる条件に設定した。
前記によって得られたフェーズモード画像(ビットマップ形式、512×512ピクセル)を画像処理ソフトウェア(Adobe製、Photoshop ver7.0)に読み込ませ、画像の大きさが205mm×205mmになるようにディスプレイ上に表示させた(図1、図8を参照)。次いで、同ソフトウェアの鉛筆ツール(マスター直径:3px)により、明色相と暗色相の境界に、黒色の線を描き両相の境界を明確にした(図2、図9を参照)。さらに、同ソフトウェアの塗りつぶしツールを用い、暗色相を黒色に明色相を白色に塗り分け2値化した(図3、図10を参照)。この時、画面上の大きさで明色相内にある径2mm以下の暗色部は、明色相に偏在する粒子であると判断し、白色に塗りつぶした。例えば、シリカ粒子を用いた場合には、このように明色層に偏在することが確認できている。
(1−2) PEs表面分率の測定
(1−2−1) 画像解析法
この2値化した画像を同ソフトウェアにて、輝度(黒、白)を横軸とし、度数を縦軸としたヒストグラムを表示させ、黒色部の面積比率を求め、PEs表面分率とした。
(1−2−2) ペーパーウェイト法
前記のPEs表面分率の測定は、画像解析法以外に、ペーパーウェイト法を用いて行うこともできる。測手順は下記の通りである。
前記によって得られたフェーズモード画像をビットマップ形式のデジタル画像として保存した。次いで、この画像をプリンター(Xerox製、DocuPrintC830)にて、A4版上質紙に印刷出力した。出力した画像(200mm×200mm)について、500ルクスの照明下の明るい室内で、目視確認にて画像内の明色相と暗色相の境界を、4B鉛筆で明確にした。この際、明色相内に存在する径0.1μm以下の暗色相は、明色相に偏在する被覆層中に含有させた粒子であることが確認されているため、境界線を引くことは行わず、明色相に含むものとした。その後、明色相と暗色相を明確にした境界線上をカッターナイフで切り分けることで分割し、明色相(ポリウレタン層(B))と暗色相(ポリエステル相A)の紙の質量を測定し、明色層と暗色層の紙の総質量に対する暗色相(ポリエステル相A)の質量の比率を%の単位で求め、それをPEs表面分率とした。
(1−2−3) PEs表面分率の変動幅(最大値と最小値の差)
(a)フィルムロールの長手方向
長さ1000m以上、幅50mm以上の積層熱可塑性樹脂フィルムロールを巻きだし、該フィルムの長手方向(MD)について、前記被覆層表面のポリエステル相A(位相像で暗色相を示す)の面積比率(PEs表面分率)を下記の箇所で測定し、得られたPEs表面分率の最大値と最小値の差を求めた。
被覆層表面のPEs表面分率の測定は、フィルム物性が安定している定常領域の一端を第1端部、他端を第2端部としたとき、第1端部の内側2m以下で1番目の測定を、また、第2端部の内側2m以下で最終の測定を行うと共に、1番目の測定箇所から100m毎に行う。
(b)フィルムロールの幅方向
長さ1000m以上、幅50mm以上の積層熱可塑性樹脂フィルムロールを巻きだし、該フィルムの幅方向(TD)について、前記の積層熱可塑性樹脂フィルムロールを巻きだし、フィルムを幅方向に4等分し、それぞれの中央部において、被覆層表面のポリエステル相A(位相像で暗色相を示す)の面積比率(PEs表面分率)を測定し、幅方向の被覆層表面のPEs表面分率の最大値と最小値の差を求めた。この測定は、フィルムの幅方向を小幅サイズにスリットする前のジャンボロールで行ってもよい。
(2)ポリエステル相Aの幅が最小で1μmを超える箇所の有無
前記のフェーズモード画像において、異なる測定箇所10箇所について、共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル相Aの短軸方向の幅が最も細い箇所で1μmを越えるものの有無を調べた。
(3)フラクタル次元
前記の走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー製、SPI3800Nシステム/SPA300)を使用し、位相測定モード(フェーズモード)によって得られたフェーズモード画像(ビットマップ形式、512×512ピクセル)を画像処理ソフトウェア(Adobe製、Photoshop ver7.0)に読み込ませ、画像の大きさが205mm×205mmになるようにディスプレイ上に表示させた(図1、図8を参照)。次いで、同ソフトウェアの鉛筆ツール(マスター直径:3px)により、明色相と暗色相の境界に、黒色の線を描き両相の境界を明確にした(図2、図9を参照)。この時、画面上の大きさで明色相内にある径2mm以下の暗色部は、明色相に偏在する粒子であると判断し、境界線を引く操作はこの部分に対しては行わなかった。例えば、シリカ粒子を用いた場合には、このように明色層に偏在することが確認できている。
境界線を明確にした画像をビットマップ形式画像として保存した上で、ボックスカウンティング法によりフラクタル次元解析を行い、得られたフラクタル次元数値を相分離の境界線の複雑さを示す指数とした。ボックスカウンティング法による解析には、ソフトウェアAT−Image ver3.2を用いた。具体的には、保存したビットマップ画像を画像解析ソフトウェア(AT−Image ver3.2)上で開き、メニュー上の画像抽出から輝度ヒストグラムによる二値化処理を行った(図6参照)。なお、二値化の際の閾値は8とした。二値化処理された画像に対し、メニュー上の画像計測からフラクタル次元を選択し、フラクタル次元を求めた。この際、最小二乗法によるフラクタル次元の計算には一辺の長さ6ピクセルから63ピクセルのボックスの計数結果を用いた。
なお、ボックスカウンティング法によるフラクタル次元の解析は公知の方法であり、次元解析に他の画像解析ソフトウェアあるいはプログラムを用いることは、解析結果の再現性が十分に得られる限り、他の同機能を有するソフトウェアを用いても良い。他のソフトウェアとは、例えば、「独立行政法人農業技術研究機構 畜産草地研究所製 フラクタル解析システム バージョン 3.33」、「デジタル・ビーイング・キッズ社製 PopImaging Ver.3.40」、等の画像解析ソフトウェアが挙げられる。
(4)ヘーズの測定
JIS K7136に準拠し、ヘーズメーター(日本電色製、NDH2000)を用いて、フィルム試料の異なる箇所3ヶ所についてヘーズを測定し、その平均値を用いた。
(5)光硬化型アクリル系ハードコート層との密着性
(5−1) 溶剤希釈型の光硬化型アクリル系ハードコート層との密着性
フィルム試料の被覆層面に、ハードコート剤(大日精化製、セイカビームEXF01(B))50質量部、トルエン25質量部、メチルエチルケトン25質量部を混合し、良く攪拌した塗布剤をワイヤバーにて塗布し、70℃で1分間乾燥し溶剤を除去した後、高圧水銀灯で200mJ/cm2、照射距離15cm、走行速度5m/分の条件下で、厚み3μmのハードコート層を有するハードコートフィルムを得た。
両面テープを貼り付けた厚さ5mmのガラス板に、得られたハードコートフィルムのハードコート層とは反対面を貼り付けた。次いで、ハードコート層と被覆層を貫通して基材フィルムに達する100個の升目状の切り傷を、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)を升目状の切り傷面に貼り付けた。貼り付け時に界面に残った空気を消しゴムで押して、完全に密着させた後、粘着テープを勢いよく垂直に引き剥がした。さらに新しい粘着テープを同様にして貼りかえ、同様に勢いよく垂直に引き剥がした。この粘着テープの引き剥がし操作を合計10回繰り返して、下記の式から密着性を目視により求めた。なお、1個の升目内で部分的に剥がれているものも、剥がれた個数に含める。
密着性(%)=(1−升目の剥がれた個数/100個)×100
(5−2) 無溶剤型の光硬化型アクリル系ハードコート層との密着性
清浄に保った厚さ5mmのガラス板上に、ハードコート剤(大日精化製、セイカビームEXF01(B))約5gをのせ、フィルム試料の被覆層面とハードコート剤が接するように重ね合わせ、フィルム試料の上から幅10cm、直径4cmの手動式荷重ゴムローラーでハードコート剤を引き延ばすように圧着した。次いで、フィルム面側から、高圧水銀灯で500mJ/cm2、照射距離15cm、走行速度5m/分の条件下で、紫外線を照射して、ハードコート層を硬化させた。
次いで、ハードコート層を有するフィルム試料をガラス板から剥がし、ハードコートフィルムを得た。両面テープを貼り付けた厚さ5mmのガラス板に、前記のハードコートフィルムのハードコート層とは反対面を貼り付けた。次いで、ハードコート層と被覆層を貫通して基材フィルムに達する100個の升目状の切り傷を、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)を升目状の切り傷面に貼り付けた。貼り付け時に界面に残った空気を消しゴムで押して、完全に密着させた後、粘着テープを勢いよく垂直に引き剥がした。さらに新しい粘着テープを同様にして貼りかえ、同様に勢いよく垂直に引き剥がした。この粘着テープの引き剥がし操作を合計10回繰り返して、下記の式から密着性を目視により求めた。なお、1個の升目でも部分的に剥がれているものは、剥がれた個数とした。
密着性(%)=(1−升目の剥がれた個数/100個)×100
(6)耐ブロッキング性
2枚のフィルム試料の被覆層面同士を重ね合わせ、これに1kgf/cm2 の圧力を50℃、60%RHの雰囲気下で24時間密着させた後、剥離し、その剥離状態を下記の基準で判定した。
○:被覆層の転移がなく軽く剥離できるもの
△:剥離音は発生し、部分的に被覆層が相手面に転移しているもの
×:2枚のフィルムが固着し剥離できないもの、あるいは剥離できても基材ポリエステ ルフィルムが劈開しているもの
(7)被覆層の堅さ指数
フィルム試料の被覆層に、表面性測定器(新東亜化学製、HEIDON14)を用いてキズを付けた。この時キズを付ける針として、先端に半径75μmのサファイヤが付いている純正の針を用いた。針の走行速度は150mm/分、加重は5gfとした。
被覆層につけられたキズの表面形状を、三次元非接触表面形状計測装置(マイクロマップ製、Micromap550)を用いて、下記の条件で測定し、プロファイルモードデータを表示させた。代表例を図5と図12に示す。得られたキズ形状データから、隣り合う凸と凹の高低差30ヶ所の平均値を求め、被覆層の堅さ指数とした。この際、高さが30nm以上の突起は、被覆層または熱可塑性樹脂フィルムに含有させた粒子に起因する突起と判断し、除外した。また、高さが1nm以下の突起は、ノイズの影響があるため除外した。
(測定条件)
・プロファイルモード:ウェーブモード
・対物レンズ:10倍
・解像度:160×160ピクセル
・測定長:207.1nm
(実施例1)
(1)塗布液の調合
本発明に用いる塗布液を以下の方法に従って調製した。ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部および三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6.0質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10〜0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量19,500、軟化点60℃の共重合ポリエステル系樹脂を得た。
得られた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を7.5質量部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液(第一工業製薬製、エラストロンH−3)を11.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を39.8質量部およびイソプロピルアルコールを37.4質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファックF142D)の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液Aを調整した。なお、前記の界面活性剤は下記の方法で前処理したものを用いた。
前記の界面活性剤にイソプロピルアルコール(IPA)を加え、30℃の温浴上で加熱溶解して15質量%の界面活性剤のIPA溶液を作製した。この溶液を定量濾紙(アドバンテック東洋製、No.5C)で濾過し、溶液中の不溶分およびゴミを除去した。前記の溶液を濾過した後、この溶液を密閉したガラス容器に入れ、0℃の冷凍庫内で24時間静置した。24時間経過後、析出した固体を含む溶液を、前記の定量濾紙を使用して吸引濾過した。濾紙上の固体を真空乾燥して固体を得、水で10質量%水溶液に希釈して、前処理した界面活性剤として用いた。
なお、前記の前処理で得た界面活性剤を、メタノールを展開液として、TLC塗布済プラスチックシート(メルク製、シリカゲル60)で分析した。試料スポットはヨウ素蒸気により着色を行った結果、ポリエチレングリコール相当のスポットが検出されないことを確認した。
(2)積層ポリエステルフィルムの製造
原料ポリマーとして、粒子を含有していない、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した。次いで、乾燥後のPET樹脂ペレットを押し出し機に供給し、約285℃でシート状に溶融押し出して、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。この際、溶融樹脂中の異物を除去する濾材として、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が15μmのステンレス製焼結濾材を用いた。
得られたキャストフィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。次いで、前記塗布液Aを濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。なお、この際、コーターのアプリケーションロール及びメタリングロールは、ウルトラハードクロムメッキ仕上げによる表面が0.2S以下に製作され、かつ真円度と円筒度が3/1000mmのロールを用いた。
その後、コーター真上に配置した4ゾーンに分かれた乾燥炉にて、第1ゾーン(135℃で1.0秒間)、第2ゾーン(65℃で2.2秒間)、第3ゾーン(40℃で1.8秒間)、第4ゾーン(30℃で1.8秒間)にて塗布面を乾燥した。また、塗布量は最終的な固形分量として0.08g/m2になるようにした。フィルムへの塗布から乾燥炉入口までのフィルムの通過時間は0.8秒間であった。また、この時、第1ゾーンの乾燥風の風速は30m/秒、乾燥風の給気風量は130m3/秒、排気風量は170m3/秒、第2ゾーンから第4ゾーンまでの給気風量は100m3/秒、排気風量は150m3/秒に設定しコーター側に乾燥風が流れないようにした。なお、フィルムのテンションは7000N/原反とし、塗布から乾燥炉入口までの間はピンチロールにてフィルムの両端部を把持させた。
さらに、この時の塗工において塗布液の受け皿の容量と循環用タンクの容量及び調合用タンクの容量の比が、以下の関係を有する塗工装置を用いた。
(a)塗布液の受け皿の容量と循環用タンクの容量比=1/50
(b)循環用タンクの容量と調合用タンクの容量比=1/40
引き続き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度120℃、風速15m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.3倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、第1熱固定ゾーン(温度:200℃)、第2熱固定ゾーン(温度:225℃)、第3熱固定ゾーン(温度:230℃)、第4熱固定ゾーン(温度:230℃)、第5熱固定ゾーン(温度:210℃)第6熱固定ゾーン(温度:170℃)、第7熱固定ゾーン(温度:120℃)を順次連続して通過させた。なお、第6熱固定ゾーンにて幅方向に3%の緩和処理を行った。次いで、フィルムの両端部のコートされていない部分をトリミングし、巻き取り装置にて巻き取り、さらにこれを幅方向に4等分してスリットし、幅1000mm、フィルム長さ1000m、フィルム厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。なお、熱固定ゾーンにおける熱風の風速はすべて15m/秒、通過時間は各ゾーンとも4.5秒間、熱風を吹き出すノズル間隔は350mm、1ゾーン当たりのノズル本数は8本とした。
フィルム物性及び特性を表4に示す。また、得られた積層ポリエステルフィルムロールの長手方向および幅方向における、PEs表面分率の最大値、最小値、ヘーズの最大値、最小値、ハードコート層に対する密着性の最大値、最小値を表5に示す。なお、耐ブロッキング性については全測定点とも○であった。
(実施例2)
実施例1において、塗布液に用いる界面活性剤として、実施例1と同様の方法で前処理したフッ素系カチオン型界面活性剤(株式会社ネオス製、フタージェント310)の10質量%水溶液を用いた、塗布液Bに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例3)
実施例1の熱固定処理工程において、各熱固定ゾーンの温度を、第1熱固定ゾーンで190℃、第2熱固定ゾーンで205℃、第3熱固定ゾーンで220℃、第4熱固定ゾーンで220℃としたこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例4)
実施例1において、塗布液中の共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との質量比を60/40に変更した下記の塗布液Cに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液Cの調合)
実施例1で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を9.0質量部、実施例1で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を9.0質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を40.6質量部、およびイソプロピルアルコールを37.3質量部、それぞれ混合した。さらに、実施例1で使用した界面活性剤水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpH調整して、濾過性能5μmと1μmのフィルターを順に通過させて塗布液Cとした。
(実施例5)
実施例1において、塗布液中の共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との質量比を40/60に変更した下記の塗布液Dに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液Dの調合)
実施例1で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を6.0質量部、実施例1で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を13.5質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を38.9質量部、およびイソプロピルアルコールを37.5質量部、それぞれ混合した。さらに、実施例1で用いた界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpHを6.2に調整して、濾過性能5μmと1μmのフィルターを順に通過させて塗布液Dとした。
(実施例6)
実施例1において、塗布量を最終的な固形分量として0.12g/m2となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例7)
実施例1において、塗布液中の界面活性剤の配合量を0.03質量%に変更した、下記の塗布液Eを用いること以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液Eの調合)
実施例1の塗布液の調合において、フッ素系ノニオン型界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファックF142D)の10質量%水溶液を0.3質量部、水を38.2質量部、およびイソプロピルアルコールを39.3質量部に変更した。
(実施例8)
実施例1において、塗布液中の界面活性剤の配合量を0.10質量%に変更した、下記の塗布液Fを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液Fの調合)
実施例1の塗布液の調合において、フッ素系ノニオン型界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファックF142D)の10質量%水溶液を1.0質量部、水を37.5質量部、およびイソプロピルアルコールを39.3質量部に変更した。
(実施例9)
実施例1において、塗布から乾燥炉入口までのフィルムの通過時間を0.7秒間、乾燥時間を0.8秒間、さらに熱固定処理工程における各ゾーンの通過時間を3.5秒間、フィルム厚さを100μmに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例10)
実施例1において、塗布から乾燥炉入口までのフィルムの通過時間を1.0秒間、乾燥時間を1.9秒間、さらに熱固定処理工程における各ゾーンの通過時間を6.6秒間、フィルム厚さを188μmに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例11)
実施例1において、塗布液のpHを5質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて7.9に調整した塗布液Gに変更すること以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例12)
実施例1において、一軸配向ポリエステルフィルムの両面に被覆層を塗布したこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。なお、フィルムへの塗布から乾燥炉入口までのフィルムの通過時間は、片面が0.8秒間であり、反対面は1.0秒間であった。
(実施例13)
実施例1において、塗布量を最終的な固形分量として0.02g/m2となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例14)
実施例1において、界面活性剤の前処理を行わなかった塗布液Hを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの被覆層の表面における、走査型プローブ顕微鏡(SPM)による共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との相分離構造は、判別はできるがやや不明確であった。
(実施例15)
実施例1において、塗布液の分散媒(水/IPA)の質量比を50/50に変更した下記の塗布液Iを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液Iの調合)
実施例1の塗布液の調合において、実施例1で用いたポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を7.5質量部、実施例1で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を11.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を30.4質量部、およびイソプロピルアルコールを46.8質量部、それぞれ混合した。さらに、実施例1で用いた界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpHを6.2に調整し、濾過性能5μmと1μmのフィルターを順に通過させて塗布液Iとした。
(実施例16)
実施例1において、塗布液のpHを酢酸で4.6に変更した、塗布液Jを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例17)
実施例1において、ポリウレタン系樹脂(B)を下記のポリウレタン系樹脂に変更した、塗布液Kを用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。ポリウレタン系樹脂は、下記の方法で得た。
(ポリウレタン系樹脂の調製)
アジピン酸//1.6ーヘキサンジオール/ネオペンチルグリコール(モル比:4//3/2)の組成からなるポリエステルジオール(OHV:111.8eq/ton、AV:1.1eq/ton)を93質量部、キシリレンジイソシアネートを22質量部混合し、窒素気流下、95〜100℃で1時間反応させて、ウレタンプレポリマー(NCO/OH比:1.50、遊離イソシアネート基:理論値3.29質量%、実測値3.16質量%)を得た。
次いで、得られたウレタンプレポリマーを60℃まで冷却し、メチルエチルケトオキシム4.5質量部を加えて60℃で50分間反応させて、遊離イソシアネート1.3質量%を含有し、かつ部分的にブロック化されたウレタンプレポリマーを得た。引き続き、前記のウレタンプレポリマーを55℃まで冷却し、イソプロピルアルコール9質量部およびメタノール140質量部からなる混合溶媒を加え、均一混合した。次いで、50質量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液を9.3質量部と、N−メチルタウリンの30質量%水溶液を5.4質量部加えて激しく撹拌を行った。約30分後に水溶性が出始め、2時間後には遊離の重亜硫酸ナトリウムがほぼゼロとなり、反応が終結した。これに水を加え、白濁し、かつ粘ちょうな20質量%の水溶液を得た。
(比較例1)
(1)塗布液Lの調合
ジメチルテレフタレート33.7質量部、ジメチルイソフタレート20.0質量部、5−Naスルホジメチルイソフタレート9.1質量部、エチレングリコール40.0質量部ジエチレングリコール10.0質量部、酢酸カルシウム・1水塩0.049質量部を混合し、200〜230℃で理論量のメタノールが留出するまでエステル交換を行った。次に、正燐酸0.09質量部を加え、減圧下、280℃で重合し、共重合ポリエステル系樹脂を得た。
アリルアルコールから出発したエチレンオキシドのポリエーテルをメタ重亜硫酸ナトリウムでスルホン化したスルホネート基を含むポリエーテル(SO3含有量:8.3質量%、ポリエチレンオキシド含有量:83質量%)192質量部、ポリテトラメチレンアジベート(数平均分子量:2,250)1013質量部、ビスフェノールAで開始されたポリプロピレンオキシドポリエーテル(数平均分子量:550)248質量部を混合し、真空下100℃で脱水した。
この混合物を70℃とし、これにイソホロンジイソシアネート178質量部とヘキサメチレン−1、6−ジイソシアネート244部との混合物を加え、次いで生成混合物をイソシアネート含有量が5.6質量%になるまで80℃から90℃の範囲で攪拌した。このプレポリマーを60℃に冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート3モルと水1モルから得られるビウレットポリイソシアネート56質量部とイソホロジアミンとアセトンから得られるビスケミチン175質量部とを順次加えポリウレタン水分散液を得た。
前記の共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン水分散液を、それぞれ固形分で20質量部、80質量部となるように配合し、固形分濃度10質量%の水分散液を調整し、塗布液Lとした。なお、塗布液中には、粒子および界面活性剤を配合しなかった。
(2)積層ポリエステルフィルムの製造
原料ポリマーとして、粒子を含有していない、固有粘度が0.66dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押し出し機に供給し、約285℃でシート状に溶融押し出して、表面温度60℃に保った金属ロール上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。この際、実施例1と同様に溶融樹脂の異物を除去する濾材として、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が15μmのステンレス製焼結濾材を用いた。
次に、このキャストフィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得た。次いで、前記塗布液Lを濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)10μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して110℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後、幅方向に3.5倍に延伸した。この時のテンター内の風速は15m/秒、乾燥時間は20秒間であった。フィルムへの塗布からテンター入口までの時間は10.0秒間であった。また、塗布量は最終的な固形分量として0.15g/m2になるようにした。
次に、幅方向に延伸されたフィルムの幅を保ったまま、第1熱固定ゾーン(200℃)、第2熱固定ゾーン(205℃)、第3熱固定ゾーン及び第4熱固定ゾーン(210℃)、第5熱固定ゾーン(215℃)、第6熱固定ゾーン(220℃)、第7熱固定ゾーン(170℃)を順次連続して通過させた。さらに、第7熱固定ゾーンにおいて幅方向に3%の緩和処理後、フィルム両端部のコートされていない部分をトリミングし、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、熱固定ゾーンにおける熱風の風速はすべて15m/秒、通過時間は各ゾーンとも4.5秒間、熱風を吹き出すノズル間隔は700mm間隔であり、1ゾーン当たりのノズル本数は4本とした。
得られた積層ポリエステルフィルムの被覆層表面において、共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との相分離構造は不明確であった。
(比較例2)
(1)塗布液Mの調合
実施例1で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を3.0質量部、実施例1で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を18.0質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を70.7質量部、およびイソプロピルアルコールを4.7質量部、それぞれ混合した。さらに、界面活性剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、塗布液Mとした。塗布液MのPHは、pH調整を行わなかったため、4.8であった。
(2)積層ポリエステルフィルムの製造
原料ポリマーとして、実施例1で用いた粒子を含有しない、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押し出し機に供給し、約285℃でシート状に溶融押し出して、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。この際、溶融樹脂の異物を除去する濾材として、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が15μmのステンレス製焼結濾材を用いた。
得られたキャストフィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得た。次いで、前記塗布液Mを濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。
引き続き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、80℃に加熱された熱風ゾーンに導き、塗布面を乾燥後、幅方向に4.0倍に延伸した。この時のテンター内の風速は15m/秒、乾燥時間は20秒間であった。塗布からテンター入口までの時間は10.0秒間であった。また、塗布量は最終的な固形分量として0.10g/m2になるようにした。さらに、各熱固定処理工程における温度を、第1熱固定ゾーンで200℃、第2熱固定ゾーンで210℃、第3熱固定ゾーンで220℃、第4熱固定ゾーンで225℃、第5熱固定ゾーンで230℃、第6熱固定ゾーンで235℃、第7熱固定ゾーンで240℃とし、さらに幅方向の緩和処理は行わなかったこと以外は、比較例1と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの被覆層表面において、共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との相分離構造は観察できなかった。
(比較例3)
(1)塗布液Nの調合
実施例1で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を7.5質量部、実施例1で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を11.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を40.5質量部およびイソプロピルアルコールを39.5質量部、それぞれ混合した。さらに、前処理をしていないフッ素系ノニオン界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファックF142D)の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Bを使用せず、粒子Aとして凝集体シリカ(富士シリシア化学製、サイリシア310;平均粒径1.4μm)の3.5質量%水分散液を0.03質量部添加して、塗布液Nとした。なお、塗布液NのpH調整は行わなかった。塗布液NのPHは4.6であった。
(2)積層ポリエステルフィルムの製造
原料ポリマーとして、実施例1で用いた粒子を含有しない、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを押し出し機に供給し、約285℃でシート状に溶融押し出して、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。この際、溶融樹脂の異物を除去する濾材として、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が15μmのステンレス製焼結濾材を用いた。
得られたキャストフィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得た。次いで、前記の塗布液Lを濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。
塗布後、乾燥炉に導き温度120℃で3.2秒間乾燥した。また、塗布量は最終的な固形分量として0.08g/m2になるようにした。塗布から乾燥炉入口までのフィルムの通過時間は3.2秒間であった。また、乾燥炉の第1ゾーンの風速は15m/秒であり、第2ゾーンから第4ゾーンの風速は、実施例1と同様に、乾燥風の給気風量を第1乾燥ゾーンから第4乾燥ゾーンともに70m3/秒とし、排気風を乾燥炉前後から自然排気とした。
続いて、横延伸倍率を4.0倍とした以外は実施例1と同様の方法で横延伸し、比較例1と同様の方法で熱固定、幅方向の緩和処理を行い、フィルム厚さが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの被覆層表面において、共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との相分離構造は観察できなかった。
(比較例4)
実施例1において、塗布液Aをフィルムに塗布してから乾燥炉入口までのフィルムの通過時間を3.2秒間とした以外は実施例1と同様の方法で、フィルム厚さが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例5)
実施例1で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を3.0質量部、実施例1で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を18.0質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を37.3質量部、およびイソプロピルアルコールを37.8質量部、それぞれ混合した。さらに、実施例1で用いた界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpHを6.2に調整し、塗布液Oとした。塗布液として、前記の塗布液Oを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、フィルム厚さが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例6)
実施例1で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を12.0質量部、実施例1で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を4.5質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を42.3質量部およびイソプロピルアルコールを37.2質量部、それぞれ混合し、さらに実施例1で用いた界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpHを6.2に調整し、塗布液Pとした。塗布液として、前記の塗布液Pを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例7)
実施例1において、各熱固定処理工程における温度を、第1熱固定ゾーンで190℃、第2熱固定ゾーンで195℃、第3熱固定ゾーンから第5熱固定ゾーンで200℃としたこと以外は実施例1と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの被覆層表面において、共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との相分離構造は観察できなかった。
(比較例8)
実施例1において、乾燥炉内の風速を15m/秒とした以外は実施例1と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例9)
実施例1において、塗布量を最終的な固形分量として0.20g/m2となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例10)
実施例1において、塗布液のpHを5質量%の炭酸ナトリウム水溶液で9.0に調整した塗布液Qを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例11)
実施例1において、塗布液中に界面活性剤を配合せずに調整した塗布液Rを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例18)
実施例1で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を7.5質量部、実施例1で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を11.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を40.5質量部およびイソプロピルアルコールを39.5質量部、それぞれ混合した。さらに、さらに、実施例1で用いた界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとして凝集体シリカ(富士シリシア化学製、サイリシア310;平均粒径1.4μm)の3.5質量%水分散液を4.3質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpHを6.2に調整して、濾過性能5μmと1μmのフィルターを順に通過させて塗布液Sとした。なお、粒子Bは塗布液に配合しなかった。前記の塗布液Sを用いた以外は実施例1と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例12)
実施例1において、塗布液中の界面活性剤の量のみを固形分で0.60質量%となるように調合した塗布液Tを用いた以外は実施例1と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例19)
実施例1において、各熱固定処理工程における温度を、第1熱固定ゾーンで200℃、第2熱固定ゾーンで210℃、第3熱固定ゾーンで215℃、第4熱固定ゾーンで220℃、第5熱固定ゾーンで225℃、第6熱固定ゾーンで230℃、第7熱固定ゾーンで170℃とし、第7熱固定ゾーンにて幅方向に3%の緩和処理したこと以外は実施例1と同様の方法で、フィルム両端部のコートされていない部分をトリミングした、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例13)
実施例1において、実施例1で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を7.5質量部、実施例1で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を11.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水51.0質量部およびイソプロピルアルコールを26.2質量部、それぞれ混合した。さらに、実施例1で用いた界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpHを6.2に調整し塗布液Uを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例20)
実施例1において、塗工装置として、塗布液の受け皿の容量、循環用タンクの容量、及び調合用タンクの容量の比が、下記の条件を有する塗工装置を用いた以外は実施例1と同様の方法で、フィルムの長さが2000m、幅が1000mm、厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(a)塗布液の受け皿の容量/循環用タンクの容量=1/5
(b)循環用タンクの容量/調合用タンクの容量=1/50
(c)アプリケーションロール及びメタリングロールの真円度と円筒度:6/1000mm
(d)コーターから乾燥炉の間にピンチロールの設置なし
実施例1〜20、比較例1〜13において、塗布液の組成や特性を表1に、塗布・乾燥条件を表2に、熱固定条件を表3に、フィルム物性及び特性を表4に示す。また、得られた積層ポリエステルフィルムロールの長手方向および幅方向における、PEs表面分率の最大値、最小値、ヘーズの最大値、最小値、ハードコート層に対する密着性の最大値、最小値を表5に示す。なお、耐ブロッキング性については全測定点とも○であった。
以下の実施例は、被覆層エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤から選ばれる少なくとも一種の架橋剤で、架橋されている共重合ポリエステル系樹脂を含む実施形態を示すものである。なお、この実施例で用いた耐湿熱密着性は下記の評価方法を用いた。
(8)耐湿熱密着性
実施例及び比較例で得られたフィルム試料を、温度60℃、相対湿度90%の環境下で1000時間保管した。次いで、清浄に保った厚さ5mmのガラス板上に、無溶剤型の光硬化性アクリル系樹脂であるハードコート剤(大日精化製、セイカビームEXF01(B))約5gをのせ、上記フィルム試料の被覆層面とハードコート剤が接するように重ね合わせ、フィルム試料の上から幅10cm、直径4cmの手動式荷重ゴムローラーでハードコート剤を引き延ばすようにして圧着した。次いで、フィルム面側から、高圧水銀灯で照射量500mJ/cm2、照射距離15cm、走行速度5m/分の条件下で、紫外線を照射して、ハードコート層を硬化させた。
次いで、ハードコート層を有するフィルム試料をガラス板から剥がし、ハードコートフィルムを得た。両面テープを貼り付けた厚さ5mmのガラス板に、前記のハードコートフィルムのハードコート層とは反対側の面を貼り付けた。次いで、ハードコート層及び被覆層を貫通して基材フィルムにまで達する100個の升目状の切り傷を、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付けた。
次いで、粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)を、升目状の切り傷のある面に貼り付けた。貼り付け時に界面に残った空気を消しゴムで押して逃がして除き、完全に密着させた後、粘着テープを勢いよく垂直方向に引き剥がした。目視により剥がれた升目の個数を数え、密着性を下記の式より求めた。これを3カ所について行い、密着性の平均値を求め、下記の判断基準に従って耐湿熱性を判定した。なお、1個の升目でも部分的に剥がれているものは、剥がれた個数とした。
密着性(%)=(1−剥がれた升目の個数/100個)×100
○:71〜100%
△:51〜70%
×:0〜50%
(実施例21)
(1)塗布液の調合
本発明に用いる塗布液を以下の方法に従って調製した。ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部および三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6.0質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10〜0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量19,500、軟化点60℃の共重合ポリエステル系樹脂を得た。
得られた共重合ポリエステル樹脂(A)の30質量%水分散液を12.8質量部、亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン樹脂(B)(第一工業製薬製、エラストロンH−3)の20質量%水溶液を10.1質量部、メチル化メラミン系架橋剤(住友化学社製、スミマールM−100)の固形分20質量%の水分散液を2.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を39.4質量部、およびイソプロピルアルコールを37.5質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファックF142D)の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液AAを調整した。なお、前記の界面活性剤は下記の方法で前処理したものを用いた。
前記の界面活性剤にイソプロピルアルコール(IPA)を加え、30℃の温浴上で加熱溶解して15質量%の界面活性剤のIPA溶液を作製した。この溶液を定量濾紙(アドバンテック東洋製、No.5C)で濾過し、溶液中の不溶分およびゴミを除去した。前記の溶液を濾過した後、この溶液を密閉したガラス容器に入れ、0℃の冷凍庫内で24時間静置した。24時間経過後、析出した固体を含む溶液を、前記の定量濾紙を使用して吸引濾過した。濾紙上の固体を真空乾燥して固体を得、水で10質量%水溶液に希釈して、前処理した界面活性剤として用いた。
なお、前記の前処理で得た界面活性剤を、メタノールを展開液として、TLC塗布済プラスチックシート(メルク製、シリカゲル60)で分析した。試料スポットはヨウ素蒸気により着色を行った結果、ポリエチレングリコール相当のスポットが検出されないことを確認した。
(2)積層ポリエステルフィルムの製造
原料ポリマーとして、粒子を含有していない、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した。次いで、乾燥後のPET樹脂ペレットを押し出し機に供給し、約285℃でシート状に溶融押し出して、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。この際、溶融樹脂中の異物を除去する濾材として、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が15μmのステンレス製焼結濾材を用いた。
得られたキャストフィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。次いで、前記塗布液AAを濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。なお、この際、コーターのアプリケーションロール及びメタリングロールは、ウルトラハードクロムメッキ仕上げによる表面が0.2S以下に製作され、かつ真円度と円筒度が3/1000mmのロールを用いた。
その後、コーター真上に配置した4ゾーンに分かれた乾燥炉にて、第1ゾーン温度135℃、1.0秒間、第2ゾーン温度65℃、2.2秒間、第3ゾーン温度40℃、1.8秒間、第4ゾーン温度30℃、1.8秒間にて塗布面を乾燥した。また、塗布量は最終的な固形分量として0.08g/m2になるようにした。フィルムへの塗布から乾燥炉入口までのフィルムの通過時間は0.8秒間であった。また、この時、第1ゾーンの乾燥風の風速は30m/秒、乾燥風の給気風量は130m3/秒、排気風量は170m3/秒、第2ゾーンから第4ゾーンまでの給気風量は100m3/秒、排気風量は150m3/秒に設定しコーター側に乾燥風が流れないようにした。なお、フィルムのテンションは7000N/原反とし、塗布から乾燥炉入口までの間はピンチロールにてフィルムの両端部を把持させた。
さらに、この時の塗工において塗布液の受け皿の容量と循環用タンクの容量及び調合用タンクの容量の比が、以下の関係を有する塗工装置を用いた。
(a)塗布液の受け皿の容量と循環用タンクの容量比=1/50
(b)循環用タンクの容量と調合用タンクの容量比=1/40
引き続き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度120℃、風速15m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.3倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、第1熱固定ゾーン(温度:200℃)、第2熱固定ゾーン(温度:225℃)、第3熱固定ゾーン(温度:230℃)、第4熱固定ゾーン(温度:230℃)、第5熱固定ゾーン(温度:210℃)第6熱固定ゾーン(温度:170℃)、第7熱固定ゾーン(温度:120℃)を順次連続して通過させた。なお、第6熱固定ゾーンにて幅方向に3%の緩和処理を行った。次いで、フィルムの両端部のコートされていない部分をトリミングし、巻き取り装置にて巻き取り、さらにこれを幅方向に4等分してスリットし、幅1000mm、フィルム長さ1000m、フィルム厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。なお、熱固定ゾーンにおける熱風の風速はすべて15m/秒、通過時間は各ゾーンとも4.5秒間、熱風を吹き出すノズル間隔は350mm、1ゾーン当たりのノズル本数は8本とした。
フィルム物性及び特性を表9に示す。また、得られた積層ポリエステルフィルムロールの長手方向および幅方向における、PEs表面分率の最大値、最小値、ヘーズの最大値、最小値、ハードコート層に対する密着性の最大値、最小値を表10に示す。得られた熱可塑性積層ポリエステルフィルムロールは、長手方向のPEs表面分率の変動幅が10%であり、幅方向の変動幅が10%であった。また、PEs表面分率の平均値は65%であった。なお、耐ブロッキング性については全測定点とも○であった。
(実施例22)
実施例21において、塗布液に用いる界面活性剤として、実施例21と同様の方法で前処理したフッ素系カチオン型界面活性剤(株式会社ネオス製、フタージェント310)の10質量%水溶液を用いた、塗布液BBに変更したこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例23)
実施例21の熱固定処理工程において、各熱固定ゾーンの温度を、第1熱固定ゾーンで190℃、第2熱固定ゾーンで205℃、第3熱固定ゾーンで220℃、第4熱固定ゾーンで220℃としたこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例24)
実施例21において、塗布液中の共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂と架橋剤の質量比を55/35/10に変更した下記の塗布液CCに変更したこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液CCの調合)
実施例21で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を8.3質量部、実施例21で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を7.9質量部、実施例21で用いた架橋剤を2.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を40.2質量部、およびイソプロピルアルコールを37.4質量部、それぞれ混合した。さらに、実施例21で使用した界面活性剤水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpH調整して、濾過性能5μmと1μmのフィルターを順に通過させて塗布液CCとした。
(実施例25)
実施例21において、塗布液中の共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂と架橋剤の質量比を35/55/10に変更した下記の塗布液DDに変更したこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液DDの調合)
実施例21で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を5.3質量部、実施例21で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を12.4質量部、実施例21で用いた架橋剤を2.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を38.5質量部、およびイソプロピルアルコールを37.6質量部、それぞれ混合した。さらに、実施例21で用いた界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpHを6.2に調整して、濾過性能5μmと1μmのフィルターを順に通過させて塗布液DDとした。
(実施例26)
実施例21において、塗布量を最終的な固形分量として0.12g/m2となるようにしたこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例27)
実施例21において、塗布液中の界面活性剤の配合量を0.03質量%に変更した、下記の塗布液EEを用いること以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液EEの調合)
実施例21の塗布液の調合において、フッ素系ノニオン型界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファックF142D)の10質量%水溶液を0.3質量部、水を39.4質量部、およびイソプロピルアルコールを37.5質量部に変更した。
(実施例28)
実施例21において、塗布液中の界面活性剤の配合量を0.10質量%に変更した、下記の塗布液FFを用いたこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液FFの調合)
実施例21の塗布液の調合において、フッ素系ノニオン型界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファックF142D)の10質量%水溶液を1.0質量部、水を39.0質量部、およびイソプロピルアルコールを37.5質量部に変更した。
(実施例29)
実施例21において、塗布から乾燥炉入口までのフィルムの通過時間を0.7秒間、乾燥時間を0.8秒間、さらに熱固定処理工程における各ゾーンの通過時間を3.5秒間、フィルム厚さを100μmに変更したこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例30)
実施例21において、塗布から乾燥炉入口までのフィルムの通過時間を1.0秒間、乾燥時間を1.9秒間、さらに熱固定処理工程における各ゾーンの通過時間を6.6秒間、フィルム厚さを188μmに変更したこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例31)
実施例21において、塗布液のpHを5質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて7.9に調整した塗布液GGに変更すること以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例32)
実施例21において、一軸配向ポリエステルフィルムの両面に被覆層を塗布したこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。なお、フィルムへの塗布から乾燥炉入口までのフィルムの通過時間は、片面が0.8秒間であり、反対面は1.0秒間であった。
(実施例33)
実施例21において、塗布量を最終的な固形分量として0.02g/m2となるようにしたこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例34)
実施例21において、界面活性剤の前処理を行わなかった塗布液HHを用いたこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの被覆層の表面において、共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との相分離構造は、判別はできるがやや不明確であった。
(実施例35)
実施例21において、塗布液の分散媒(水/IPA)の質量比を50/50に変更した下記の塗布液IIを用いたこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液IIの調合)
実施例21の塗布液の調合において、実施例21で用いたポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を6.8質量部、実施例21で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を10.1質量部、実施例21で用いた架橋剤を2.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を30.0質量部、およびイソプロピルアルコールを46.8質量部、それぞれ混合した。さらに、実施例21で用いた界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpHを6.2に調整し、濾過性能5μmと1μmのフィルターを順に通過させて塗布液IIとした。
(実施例36)
実施例21において、塗布液のpHを酢酸で4.6に変更した、塗布液JJを用いたこと以外は実施例21と同様の方法で、厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例37)
実施例21において、ポリウレタン系樹脂(B)を下記のポリウレタン系樹脂に変更した、塗布液KKを用いたこと以外は実施例21と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。ポリウレタン系樹脂は、下記の方法で得た。
(ポリウレタン系樹脂の調製)
アジピン酸//1.6ーヘキサンジオール/ネオペンチルグリコール(モル比:4//3/2)の組成からなるポリエステルジオール(OHV:111.8eq/ton、AV:1.1eq/ton)を93質量部、キシリレンジイソシアネートを22質量部混合し、窒素気流下、95〜100℃で1時間反応させて、ウレタンプレポリマー(NCO/OH比:1.50、遊離イソシアネート基:理論値3.29質量%、実測値3.16質量%)を得た。
次いで、得られたウレタンプレポリマーを60℃まで冷却し、メチルエチルケトオキシム4.5質量部を加えて60℃で50分間反応させて、遊離イソシアネート1.3質量%を含有し、かつ部分的にブロック化されたウレタンプレポリマーを得た。引き続き、前記のウレタンプレポリマーを55℃まで冷却し、イソプロピルアルコール9質量部およびメタノール140質量部からなる混合溶媒を加え、均一混合した。次いで、50質量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液を9.3質量部と、N−メチルタウリンの30質量%水溶液を5.4質量部加えて激しく撹拌を行った。約30分後に水溶性が出始め、2時間後には遊離の重亜硫酸ナトリウムがほぼゼロとなり、反応が終結した。これに水を加え、白濁し、かつ粘ちょうな20質量%の水溶液を得た。
(比較例14)
(1)塗布液LLの調合
ジメチルテレフタレート33.7質量部、ジメチルイソフタレート20.0質量部、5−Naスルホジメチルイソフタレート9.1質量部、エチレングリコール40.0質量部ジエチレングリコール10.0質量部、酢酸カルシウム・1水塩0.049質量部を混合し、200〜230℃で理論量のメタノールが留出するまでエステル交換を行った。次に、正燐酸0.09質量部を加え、減圧下、280℃で重合し、共重合ポリエステル系樹脂を得た。
アリルアルコールから出発したエチレンオキシドのポリエーテルをメタ重亜硫酸ナトリウムでスルホン化したスルホネート基を含むポリエーテル(SO3含有量:8.3質量%、ポリエチレンオキシド含有量:83質量%)192質量部、ポリテトラメチレンアジベート(数平均分子量:2,250)1013質量部、ビスフェノールAで開始されたポリプロピレンオキシドポリエーテル(数平均分子量:550)248質量部を混合し、真空下100℃で脱水した。
この混合物を70℃とし、これにイソホロンジイソシアネート178質量部とヘキサメチレン−1、6−ジイソシアネート244部との混合物を加え、次いで生成混合物をイソシアネート含有量が5.6質量%になるまで80℃から90℃の範囲で攪拌した。このプレポリマーを60℃に冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート3モルと水1モルから得られるビウレットポリイソシアネート56質量部とイソホロジアミンとアセトンから得られるビスケミチン175質量部とを順次加えポリウレタン水分散液を得た。
前記の共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン水分散液を、それぞれ固形分で20質量部、80質量部となるように配合し、固形分濃度10質量%の水分散液を調整し、塗布液LLとした。なお、塗布液中には、粒子および界面活性剤を配合しなかった。
(2)積層ポリエステルフィルムの製造
原料ポリマーとして、粒子を含有していない、固有粘度が0.66dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押し出し機に供給し、約285℃でシート状に溶融押し出して、表面温度60℃に保った金属ロール上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。この際、実施例21と同様に溶融樹脂の異物を除去する濾材として、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が15μmのステンレス製焼結濾材を用いた。
次に、このキャストフィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得た。次いで、前記塗布液LLを濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)10μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して110℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後、幅方向に3.5倍に延伸した。この時のテンター内の風速は15m/秒、乾燥時間は20秒間であった。フィルムへの塗布からテンター入口までの時間は10.0秒間であった。また、塗布量は最終的な固形分量として0.15g/m2になるようにした。
次に、幅方向に延伸されたフィルムの幅を保ったまま、第1熱固定ゾーン(200℃)、第2熱固定ゾーン(205℃)、第3熱固定ゾーン及び第4熱固定ゾーン(210℃)、第5熱固定ゾーン(215℃)、第6熱固定ゾーン(220℃)、第7熱固定ゾーン(170℃)を順次連続して通過させ、第7熱固定ゾーンにおいて幅方向に3%の緩和処理後、フィルム両端部のコートされていない部分をトリミングし、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、熱固定ゾーンにおける熱風の風速はすべて15m/秒、通過時間は各ゾーンとも4.5秒間、熱風を吹き出すノズル間隔は700mm間隔であり、1ゾーン当たりのノズル本数は4本とした。
得られた積層ポリエステルフィルムの被覆層表面において、共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との相分離構造は不明確であった。
(比較例15)
(1)塗布液MMの調合
実施例21で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を3.0質量部、実施例21で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を18.0質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を70.7質量部、およびイソプロピルアルコールを4.7質量部、それぞれ混合した。さらに、界面活性剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、塗布液MMとした。塗布液MMのPHは、pH調整を行わなかったため、4.8であった。
(2)積層ポリエステルフィルムの製造
原料ポリマーとして、実施例21で用いた粒子を含有しない、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押し出し機に供給し、約285℃でシート状に溶融押し出して、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。この際、溶融樹脂の異物を除去する濾材として、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が15μmのステンレス製焼結濾材を用いた。
得られたキャストフィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得た。次いで、前記塗布液MMを濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。
引き続き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、80℃に加熱された熱風ゾーンに導き、塗布面を乾燥後、幅方向に4.0倍に延伸した。この時のテンター内の風速は15m/秒、乾燥時間は20秒間であった。塗布からテンター入口までの時間は10.0秒間であった。また、塗布量は最終的な固形分量として0.10g/m2になるようにした。さらに、各熱固定処理工程における温度を、第1熱固定ゾーンで200℃、第2熱固定ゾーンで210℃、第3熱固定ゾーンで220℃、第4熱固定ゾーンで225℃、第5熱固定ゾーンで230℃、第6熱固定ゾーンで235℃、第7熱固定ゾーンで240℃とし、さらに幅方向の緩和処理は行わなかったこと以外は、比較例14と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの被覆層表面において、共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との相分離構造は観察できなかった。
(比較例16)
(1)塗布液NNの調合
実施例21で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を7.5質量部、実施例21で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を11.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を40.5質量部およびイソプロピルアルコールを39.5質量部、それぞれ混合した。さらに、前処理をしていないフッ素系ノニオン界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファックF142D)の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Bを使用せず、粒子Aとして凝集体シリカ(富士シリシア化学製、サイリシア310;平均粒径1.4μm)の3.5質量%水分散液を0.03質量部添加して、塗布液NNとした。なお、塗布液NNのpH調整は行わなかった。塗布液NNのPHは4.6であった。
(2)積層ポリエステルフィルムの製造
原料ポリマーとして、実施例21で用いた粒子を含有しない、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを押し出し機に供給し、約285℃でシート状に溶融押し出して、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。この際、溶融樹脂の異物を除去する濾材として、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が15μmのステンレス製焼結濾材を用いた。
得られたキャストフィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得た。次いで、前記の塗布液NNを濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。
塗布後、乾燥炉に導き温度120℃で3.2秒間乾燥した。また、塗布量は最終的な固形分量として0.08g/m2になるようにした。塗布から乾燥炉入口までのフィルムの通過時間は3.2秒間であった。また、乾燥炉の第1ゾーンの風速は15m/秒であり、第2ゾーンから第4ゾーンの風速は、実施例21と同様に、乾燥風の給気風量を第1乾燥ゾーンから第4乾燥ゾーンともに70m3/秒とし、排気風を乾燥炉前後から自然排気とした。
続いて、横延伸倍率を4.0倍とした以外は実施例21と同様の方法で横延伸し、比較例15と同様の方法で熱固定、幅方向の緩和処理を行い、フィルム厚さが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの被覆層表面において、共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との相分離構造は、観察できなかった。
(比較例17)
実施例21において、塗布液AAをフィルムに塗布してから乾燥炉入口までのフィルムの通過時間を3.2秒間とした以外は実施例21と同様の方法で、フィルム厚さが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例18)
実施例21で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を2.3質量部、実施例21で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を16.9質量部、実施例21で用いた架橋剤を2.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を36.9質量部、およびイソプロピルアルコールを37.7質量部、それぞれ混合した。さらに、実施例21で用いた界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpHを6.2に調整し、塗布液OOとした。塗布液として、前記の塗布液OOを用いたこと以外は実施例21と同様の方法で、フィルム厚さが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例19)
実施例21で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を11.3質量部、実施例21で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を3.4質量部、実施例21で用いた架橋剤を2.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を41.9質量部およびイソプロピルアルコールを37.2質量部、それぞれ混合し、さらに実施例21で用いた界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpHを6.2に調整し、塗布液PPとした。塗布液として、前記の塗布液PPを用いたこと以外は実施例21と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例20)
実施例21において、各熱固定処理工程における温度を、第1熱固定ゾーンで190℃、第2熱固定ゾーンで195℃、第3熱固定ゾーンから第5熱固定ゾーンで200℃としたこと以外は実施例21と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの被覆層表面において、共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂との相分離構造は観察できなかった。
(比較例21)
実施例21において、乾燥炉内の風速を15m/秒とした以外は実施例21と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例22)
実施例21において、塗布量を最終的な固形分量として0.20g/m2となるようにしたこと以外は実施例21と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例23)
実施例21において、塗布液のpHを5質量%の炭酸ナトリウム水溶液で9.0に調整した塗布液QQを用いたこと以外は実施例21と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例24)
実施例21において、塗布液中に界面活性剤を配合せずに調整した塗布液RRを用いたこと以外は実施例21と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例38)
実施例21で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を7.5質量部、実施例21で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を11.3質量部、実施例21で用いた架橋剤を2.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を40.5質量部およびイソプロピルアルコールを39.5質量部、それぞれ混合した。さらに、さらに、実施例21で用いた界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとして凝集体シリカ(富士シリシア化学製、サイリシア310;平均粒径1.4μm)の3.5質量%水分散液を4.3質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpHを6.2に調整して、濾過性能5μmと1μmのフィルターを順に通過させて塗布液SSとした。なお、粒子Bは塗布液に配合しなかった。前記の塗布液SSを用いた以外は実施例21と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例25)
実施例21において、塗布液中の界面活性剤の量のみを固形分で0.60質量%となるように調合した塗布液TTを用いた以外は実施例21と同様の方法で、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例39)
実施例21において、各熱固定処理工程における温度を、第1熱固定ゾーンで200℃、第2熱固定ゾーンで210℃、第3熱固定ゾーンで215℃、第4熱固定ゾーンで220℃、第5熱固定ゾーンで225℃、第6熱固定ゾーンで230℃、第7熱固定ゾーンで170℃とし、第7熱固定ゾーンにて幅方向に3%の緩和処理したこと以外は実施例21と同様の方法で、フィルム両端部のコートされていない部分をトリミングした、フィルム厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
(比較例26)
実施例21において、実施例21で用いた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を6.8質量部、実施例21で用いたポリウレタン系樹脂(B)の20質量%水溶液を10.1質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水50.6質量部およびイソプロピルアルコールを26.2質量部、それぞれ混合した。さらに、実施例21で用いた界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加し、5質量%重曹水溶液にてpHを6.2に調整し塗布液UUを用いたこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例40)
実施例21において、塗工装置として、塗布液の受け皿の容量、循環用タンクの容量、及び調合用タンクの容量の比が、下記の条件を有する塗工装置を用いた以外は実施例21と同様の方法で、フィルムの長さが2000m、幅が1000mm、厚みが125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(a)塗布液の受け皿の容量/循環用タンクの容量=1/5
(b)循環用タンクの容量/調合用タンクの容量=1/50
(c)アプリケーションロール及びメタリングロールの真円度と円筒度:6/1000mm
(d)コーターから乾燥炉の間にピンチロールの設置なし
(実施例41)
実施例21において、塗布液の調合に用いる架橋剤として、エポキシ系架橋剤(ナガセ化成工業製、デナコールEX−810)の20質量%水分散液を2.3質量部使用したに、塗布液VVを用いたこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例42)
実施例21において、塗布液の調合に用いる架橋剤として、オキサゾリン系架橋剤(日本触媒製、エポクロスシリーズ WS−700)を2.3質量部使用した、塗布液WWを用いたこと以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
(実施例43)
実施例21において、共重合ポリエステル樹脂(A)の30質量%水分散液を7.5質量部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン樹脂(B)の20質量%水溶液(第一工業製薬製:商品名 エラストロン(登録商標)H−3)を11.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製:商品名 Cat64)を0.3質量部、水を39.8質量部およびイソプロピルアルコールを37.4質量部、それぞれ混合し、さらにフッ素系ノニオン界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファックF142D)の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加した塗布液XXを用いた以外は実施例21と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。
実施例21〜43、比較例14〜26において、塗布液の組成や特性を表6に、塗布・乾燥条件を表7に、熱固定条件を表8に、フィルム物性及び特性を表9に示す。また、得られた積層ポリエステルフィルムロールの長手方向および幅方向における、PEs表面分率の最大値、最小値、ヘーズの最大値、最小値、ハードコート層に対する密着性の最大値、最小値を表10に示す。なお、耐ブロッキング性については全測定点とも○であった。
このようにして得られた本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムは、ハードコート層、拡散層、反射防止層、などの機能層との密着性に優れ、かつ耐ブロッキング性や透明性にも優れているため、ハードコートフィルム、反射防止(AR)フィルム、プリズムレンズシート、透明導電性フィルム、赤外線吸収フィルム、電磁波吸収フィルム、などの光学機能性フィルムまたは光学機能性シートの基材フィルムとして好適である。また、アクリル樹脂を樹脂成分とするUVインクを用いて印刷される、印刷用フィルムとしても使用することができる。この場合、基材として用いる熱可塑性樹脂フィルムは、透明フィルム以外に、不透明フィルムも使用することができる。
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムにおける被覆層の表面を、走査型プローブ顕微鏡の位相測定モードで観察した位相像の説明図である。 図1の位相像において、明色相と暗色相の界面の輪郭を画像処理ソフトで強調した位相像の説明図である。 図2の明色相と暗色相の界面の輪郭を強調した位相像において、暗色相を画像処理ソフトで塗りつぶした位相像の説明図である。 図2の明色相と暗色相の界面の輪郭を強調した位相像において、明色相と暗色相の境界線を示す説明図である。 被覆層の表面につけたキズの表面形状を、三次元非接触表面形状計測装置を用いて、ウェ−ブモードで計測した際のキズの高低差を示す説明図である。 実施例1−20と比較例1、4−6、8−13において、被覆層表面のPEs表面分率と、被覆層の樹脂成分におけるPEs質量比が対応しないことを示す説明図である。 塗布液の受け皿、循環用タンクの循環用タンク、調合用タンクの配置、及び塗布液の循環経路を示す説明図である。 本発明の他の実施形態の積層熱可塑性樹脂フィルムにおける被覆層の表面を、走査型プローブ顕微鏡の位相測定モードで観察した位相像の説明図である。 図8の位相像において、明色相と暗色相の界面の輪郭を画像処理ソフトで強調した位相像の説明図である。 図9の明色相と暗色相の界面の輪郭を強調した位相像において、暗色相を画像処理ソフトで塗りつぶした位相像の説明図である。 図9の明色相と暗色相の界面の輪郭を強調した位相像において、明色相と暗色相の境界線を示す説明図である。 被覆層の表面につけた、図4とは別のキズの表面形状を、三次元非接触表面形状計測装置を用いて、ウェ−ブモードで計測した際のキズの高低差を示す説明図である。 実施例21−43と比較例14、17−19、21−26において、被覆層表面のPEs表面分率と、被覆層の樹脂成分におけるPEs質量比が対応しないことを示す説明図である。
符号の説明
1:暗色相(共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル相A)
2:明色相(ポリウレタン系樹脂を主成分とするポリウレタン相B)
3:粒子に起因する突起
4:明色相と暗色相の界面の輪郭を強調した線
5:被覆層表面の凹凸のプロファイル曲線
6:キズの谷部
7:キズの頂部
8:実施例1−20
9:比較例1、4−6、8−13
10:コーター
11:塗布液受け皿
12:ダイ
13:循環用タンク
14:調合タンク
15:基材フィルム
16:ピンチロール
17:実施例21−43
18:比較例14、17−19、21−26

Claims (15)

  1. 熱可塑性樹脂フィルムの片面または両面に、共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂を含む被覆層を有する積層熱可塑性樹脂フィルムであって、
    前記被覆層は、共重合ポリエステル系樹脂を主成分とするポリエステル相Aとポリウレタン系樹脂を主成分とするポリウレタン相Bにミクロ相分離又はナノ相分離した構造を有し、かつ、走査型プローブ顕微鏡を位相測定モードで観察した際に、下記(1)式で定義される、前記被覆層表面のポリエステル相A(位相像で暗色相を示す)の面積比率(PEs表面分率)が5μm×5μmの測定面積で35%以上90%未満であることを特徴とする積層熱可塑性樹脂フィルム。
    PEs表面分率(%)=(ポリエステル相Aの面積/測定面積)×100
    ・・・(1)
  2. 共重合ポリエステル系樹脂が、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤から選ばれる少なくとも一種の架橋剤で架橋されていることを特徴とする請求項1に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
  3. 前記熱可塑性樹脂フィルム、または熱可塑性樹脂フィルムと被覆層の両方に、粒子が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
  4. 前記熱可塑性樹脂フィルム中には実質的に粒子を含有せず、被覆層にのみ粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
  5. 前記粒子がシリカ粒子であることを特徴とする請求項3または4に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
  6. 被覆層中の粒子が、ポリエステル相Aまたはポリウレタン相Bに偏在することを特徴とする請求項3または4に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
  7. 前記の熱可塑性樹脂フィルムが、二軸配向ポリエステルフィルムまたは二軸配向ポリアミドフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
  8. 前記の被覆層の表面を走査型プローブ顕微鏡の位相測定モードで観察し、明色相と暗色相の界面の輪郭を強調した位相像において、ボックスカウンティング法を用いて、明色相と暗色相の境界線(界面の輪郭)から求められるフラクタル次元が、5μm×5μmの測定面積で1.60〜1.95であることを特徴とする請求項1に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
  9. 下記に定義する被覆層の堅さ指数が、3.0〜15.0nmであることを特徴とする請求項1に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
    なお、被覆層堅さ指数とは、先端に半径75μmのサファイヤが付いている針で、加重5gfをかけて被覆層の表面にキズを付け、三次元非接触表面形状計測装置でキズの凹凸形状を測定した時の隣り合う凸部と凹部との高低差を50箇所測定した際の各測定値の平均値を意味する。
  10. 前記の積層熱可塑性樹脂フィルムのヘーズが1.5%以下であることを特徴とする請求項3または4に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
  11. 光学機能性フィルムまたは光学機能性シートの基材フィルムとして使用することを特徴とする請求項10に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
  12. 光学機能性フィルムまたは光学機能性シートが、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、光拡散シート、プリズムシート、透明導電性フィルム、近赤外線吸収フィルム、電磁波吸収フィルムのいずれかであることを特徴とする請求項11に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
  13. 前記の被覆層の少なくとも片面に、アクリル系樹脂を主たる構成成分とする機能層を積層してなることを特徴とする請求項1に記載の積層熱可塑性樹脂フィルム。
  14. 熱可塑性樹脂フィルムの片面または両面に、共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂を含む被覆層を有する、請求項1から13のいずれかに記載の積層熱可塑性樹脂フィルムを、長さ1000m以上、幅50mm以上のサイズでロール状に連続して巻き取ってなる積層熱可塑性樹脂フィルムロールであって、前記被覆層表面のポリエステル相A(位相像で暗色相を示す)の面積比率(PEs表面分率)をフィルムの長手方向に100m間隔で測定した際に、長手方向の被覆層の表面におけるPEs表面分率の最大値と最小値の差が15%以下であることを特徴とする積層熱可塑性樹脂フィルムロール。
    なお、上記被覆層の表面におけるPEs表面分率の測定は、前記の積層熱可塑性樹脂フィルムロールを巻きだし、該フィルムの長手方向(MD)について、フィルム物性が安定している定常領域の一端を第1端部、他端を第2端部としたとき、第1端部の内側2m以下で1番目の測定を、また、第2端部の内側2m以下で最終の測定を行うと共に、1番目の測定箇所から100m毎に行う。
  15. 前記の積層熱可塑性樹脂フィルムロールを巻きだし、フィルムを幅方向に4等分し、それぞれの中央部において、被覆層表面のポリエステル相A(位相像で暗色相を示す)の面積比率(PEs表面分率)を測定した際に、幅方向の被覆層表面におけるPEs表面分率の最大値と最小値の差が10%以下であることを特徴とする請求項14に記載の積層熱可塑性樹脂フィルムロール。
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