JP4174739B2 - ハードコートフィルム、光学機能性フィルム、およびそれを得るための密着性改質基材フィルム - Google Patents
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すなわち、本発明のハードコートフィルムにおける第1の発明は、熱可塑性樹脂を含む基材フィルム、前記基材フィルムの表面上に直接積層されたハードコート層、ならびに、基材フィルムとハードコート層との境界領域に点在する有機−無機複合体を有するハードコートフィルムであって、有機−無機複合体は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種の中に無機粒子が埋め込まれた構造をもち、前記有機−無機複合体は、複数の複合体が全部つながっているのではなく、離散的に存在しており、ハードコート層の屈折率が1.60〜1.65であることを特徴とするハードコートフィルムである。
密着性(%)=(1−升目の剥がれた個数/100個)×100
まず、本発明で用いる基材フィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)を代表例にして概要を説明するが、当然この代表例に限定されるものではない。
本発明で用いる複合体はポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂組成物中に無機粒子が埋め込まれた構造をもつ。
本発明において、塗布法を用いる場合、塗布液に用いる材料は、樹脂及び分散媒あるいは溶媒である。本発明において、塗布液は、水性であることが好ましい。また、本発明では、樹脂成分以外に、粒子及び界面活性剤を併用することが好ましい。さらに、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機潤滑剤、抗菌剤、光酸化触媒などの添加剤を用いることができる。
本発明において、複合体を構成する樹脂として、共重合ポリエステル(PEs)とポリウレタン(PU)を用いるのが密着性の観点から好ましい。この場合、塗布液中の共重合ポリエステル(PEs)とポリウレタン(PU)の固形分基準の質量比は、(PEs)/(PU)=70/30〜30/70が好ましく、特に好ましくは60/40〜40/60である。なお、複合体の樹脂は、前記の共重合ポリエステルとポリウレタン以外の第3の樹脂を併用することもできる。また、架橋剤を併用してもかまわない。
例えば、複合体に共重合ポリエステル用いる場合、芳香族ジカルボン酸成分と、グリコール成分としてエチレングリコールと分岐状グリコールを構成成分とすることが好ましい。前記の分岐状グリコールとは、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、及び2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
複合体が含み得るポリウレタンは、好ましくは水溶性または水分散が可能な樹脂である。例えば、ブロック型イソシアネート基を含有する樹脂であって、末端イソシアネート基を親水性基で封鎖(以下、ブロックと略す)した、熱反応型の水溶性ウレタンなどが挙げられる。
複合体にアクリル樹脂を用いる場合の水分散性または水溶性のアクリル樹脂とは、例えば、アクリレートおよび/またはメタクリレート樹脂、あるいは、これらと、スチレンなどの不飽和二重結合を有する、アクリル樹脂と共重合可能な脂肪族化合物または芳香族化合物との共重合体が挙げられる。ハードコート層に対する密着性の優れた密着性改質層として親水性に優れたアクリル−スチレン共重合樹脂として、乳化重合による水分散性アクリル−スチレンランダム共重合樹脂が最も好ましい。
本発明においては、溶媒とは、樹脂を溶解する液だけではなく、樹脂を粒子状に分散させるために用いる分散媒も広義的に含むものである。本発明を実施するためには、有機溶媒、水性溶媒等の各種溶媒を用いることができる。
前記の水性塗布液を熱可塑性樹脂フィルム(基材フィルム)の表面に塗布する際には、該フィルムへの濡れ性を向上させ、塗布液を均一に塗布するために一般に界面活性剤が使用される。
透明性が高度に要求される光学機能性フィルムとしてハードコートフィルムや該フィルムを使用する際は、基材フィルムのヘーズは1.5%以下であることが好ましい。前記のヘーズは1.0%以下であることがさらに好ましい。ヘーズが1.5%を超えると、フィルムをLCD用のレンズフィルムや、バックライト用基材フィルム等に用いた場合、画面の鮮明度が低下するので好ましくない。
粒子を電子顕微鏡で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径を測定し、その平均値を平均一次粒径または平均粒径とする。また、密着性改質基材フィルムの密着性改質層中の粒子の平均粒径を求める場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率12万倍で密着性改質基材フィルムの断面を撮影し、複合体の粒子の最大径を求めることができる。凝集体からなる粒子Bの平均粒径は、密着性改質基材フィルムの密着性改質層の断面を、光学顕微鏡を用いて倍率200倍で300〜500個撮影し、その最大径を測定する。
携帯電話、PDA、モバイル型コンピュータのように、情報端末を屋外で使用する機会が増えている。さらに、カーナビゲーションなどに用いられるタッチパネルのように、夏場に高温になる車内で使用される材料も増えている。したがって、このような高温、高湿の過酷な環境下でも品質変化が少ないハードコートフィルム、すなわち、耐湿熱密着性に優れたフィルムが、このような用途では要望されている。
前記の水性塗布液を塗布する工程は、該フィルムの製造工程中に塗布するインラインコート法が好ましい。さらに好ましくは、結晶配向が完了する前の基材フィルムに塗布する。水性塗布液中の固形分濃度は、30質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは10質量%以下である。固形分濃度の下限は1質量%が好ましく、さらに好ましくは3質量%、特に好ましくは5質量%である。該水性塗布液が塗布されたフィルムは、配向および熱固定のためにテンターに導かれ、そこで加熱されて、熱架橋反応により安定な被膜を形成し、密着性改質基材フィルムとなる。
未乾燥時の塗布量(以下、ウェット塗布量と略す)は、2g/m2以上10g/m2未満とすることが好ましい。ウェット塗布量が2g/m2未満で、設計のドライ塗布量(最終密着性改質層の塗布量)を得ようとすると、塗布液の固形分濃度を高くする必要がある。塗布液の固形分濃度を高くすると、塗布液の粘度が高くなるため、スジ状の塗布斑が発生しやすい。一方、ウェット塗布量が10g/m2以上では、乾燥炉内の乾燥風の影響を受けやすく、塗布斑が発生しやすい。なお、埃の付着による欠点を防止するために、クリーン度をクラス5000以下のクリーンな環境下で塗布液を塗布することが好ましい。
ハードコート層を構成する硬化型樹脂としては、電離放射線硬化型樹脂が好ましい。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、下記の樹脂が挙げられる。
(a)ハードコート層とは反対面に、ハードコート層、光拡散層、プリズム状レンズ層、電磁波吸収層、近赤外線遮断層、透明導電層から選択される、少なくとも1層の光学機能層を積層した光学機能性フィルム。
(b)ハードコート層の上に、反射防止層または防汚層を積層した光学機能性フィルム。
両面テープを貼り付けた厚さ5mmのガラス板に、実施例及び比較例で得られたハードコートフィルムまたは光学機能性フィルムのハードコート層を表側とし、反対面を貼り付けた。次いで、ハードコート層を貫通して、基材フィルムに達する100個の升目状の切り傷を、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)を升目状の切り傷面に貼り付けた。貼り付け時に界面に残った空気を消しゴムで押して、完全に密着させた後、粘着テープを勢いよく垂直に引き剥がして下記の式から密着性を目視により求めた。なお、1個の升目内で部分的に剥がれているものも、剥がれた個数に含める。
密着性(%)=(1−升目の剥がれた個数/100個)×100
ハードコートフィルムまたは光学機能性フィルムを10cm×15cmの面積に切り出し、試料フィルムを作成した。得られた試料フィルムのハードコート層とは反対面に、黒色光沢テープを貼り合わせた。この試料フィルムのハードコート面を上面にして、3波長形昼白色蛍光灯(ナショナル パルック、F.L 15EX-N 15W)を光源として、斜め上方より反射光を目視で観察した。目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は該評価に精通した5名で行ない、最も多いランクを評価ランクとする。仮に、2つのランクで同数となった場合には、3つに分かれたランクの中心を採用した。例えば、◎と○が各2名で△が1名の場合は○を、◎が1名で○と△が各2名の場合には○を、◎と△が各2名で○が1名の場合には○を、それぞれ採用する。
◎:あらゆる角度からの観察でも虹彩状色彩が見られない
○:ある角度によっては僅かに虹彩状色彩が見られる
△:僅かに虹彩状色彩が観察される
×:はっきりとした虹彩状色彩が観察される
JIS K 7142に基づき、アッベ屈折率計を用いて測定を行った。
ハードコートフィルムの試料を可視光硬化型樹脂(日本電子データム社製、D−800)に包埋し、室温で可視光にさらして硬化させた。得られた包埋ブロックから、ダイアモンドナイフを装着したウルトラミクロトームを用いて70〜100nm程度の厚みの超薄切片を作製し、四酸化ルテニウム蒸気中で30分間染色した。この染色された超薄切片を、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、TEM2010)を用いて、ハードコート層の断面を観察し、写真を撮影した。なお、写真の拡大倍率は、10,000〜100,000倍の範囲で適宜設定する。なお、本発明の実施例1では、拡大倍率を80,000倍(加速電圧200kv)とした。
(1)複合体用塗布液の調合
複合体を得るための塗布液を以下の方法に従って調製した。
ジメチルテレフタレート(95質量部)、ジメチルイソフタレート(95質量部)、エチレングリコール(35質量部)、ネオペンチルグリコール(145質量部)、酢酸亜鉛(0.1質量部)および三酸化アンチモン(0.1質量部)を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(6.0質量部)を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10〜0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量が19,500で、軟化点が60℃である共重合ポリエステルを得た。
原料ポリマーとして、粒子を含有していない、固有粘度が0.62dl/g(フェノール:1,1,2,2−テトラクロルエタン=6:4混合溶媒で溶解し30℃で測定)のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した。次いで、乾燥後のPET樹脂ペレットを押し出し機に供給し、約285℃でシート状に溶融押し出して、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。この際、溶融樹脂中の異物を除去する濾材として、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が15μmのステンレス製焼結濾材を用いた。
次いで、下記の方法で、ハードコートフィルムを得た。
ハードコート層を形成させるための塗布液として、紫外線硬化型アクリレートモノマー、酸化ジルコニウム超微粒子、メチルエチルケトンを主成分とする、有機/無機ハイブリッド系ハードコート剤(JSR株式会社製、デソライト Z7410B;固形分濃度:50質量%)を準備した。このハードコート剤を、ドライ厚みで3μmとなるように前期で製造して得た密着性改質ポリエステルフィルムの塗布液Aの塗布面上に塗布し、80℃で3分間乾燥させた。次いで、高圧水銀灯で1000mJ/cm2の条件下で紫外線を照射し、樹脂を硬化させ、ハードコート層を形成させた。得られたハードコート層の屈折率は1.65であった。
実施例1において、塗布液Aのウェット塗布量を9g/m2に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、ハードコートフィルムを得た。
実施例1において、ハードコート剤を下記に示すハードコート剤に変更すること以外は実施例1と同様の方法で、ハ−ドコートフィルムを得た。
(1)ハードコート剤の調整
二酸化チタン微粒子(石原産業(株)製、TTO−55B)32.0質量部、カルボン酸基含有モノマー(東亞合成(株)製、アロニクスM−5300)4.5質量部およびシクロヘキサノン65.5質量部を、サンドグラインダーミルにより分散し、重量平均粒子径が55nmの二酸化チタン微粒子の分散液を調製した。
前記の二酸化チタン微粒子の分散液に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、DPHA)と、光ラジカル重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア184;モノマーの合計量(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとアニオン性モノマーの合計量)に対し5質量%)とを混合し、ハードコート層の屈折率が1.60になるように調整した。
実施例1において、塗布液Aを塗布しない、つまり複合体を形成させなかったこと以外は実施例1と同様の方法でハ−ドコートフィルムを得た。
複合体を得るための塗布液を下記に示す塗布液Bとし、ウェット塗布量を8g/m2とした以外は実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。しかし、この比較例では、基材フィルムとハードコート層との境界領域に複合体が点在するのではなく、基材フィルムとハードコート層との間に、塗布液Bに由来する独立した層が形成されるに至った。
実施例1で得られた共重合ポリエステル(A)の30質量%の水分散液を7.5質量部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン(B)の20質量%の水溶液(第一工業製薬製、エラストロンH−3)を11.3質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)を0.3質量部、水を37.9質量部およびイソプロピルアルコールを39.6質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファックF444)の10質量%水溶液を0.3質量部、粒子Aとしてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液Bを調整した。
ハードコート剤を下記に示す材料とした以外は実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(ハードコート剤の調合)
ハードコート剤(大日精化製、セイカビームEXF01(B))67質量部、トルエン13質量部、およびメチルエチルケトン20質量部を混合した。得られたハードコート層の屈折率は1.53であった。
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂を含む基材フィルム、前記基材フィルムの表面上に直接積層されたハードコート層、ならびに、基材フィルムとハードコート層との境界領域に点在する有機−無機複合体を有するハードコートフィルムであって、有機−無機複合体は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種の中に無機粒子が埋め込まれた構造をもち、前記有機−無機複合体は、複数の複合体が全部つながっているのではなく、離散的に存在しており、ハードコート層の屈折率が1.60〜1.65であることを特徴とするハードコートフィルム。
- 有機−無機複合体が、共重合ポリエステル及びポリウレタンを含む混合樹脂の中に無機粒子が埋め込まれた構造をもつ、請求項1に記載のハードコートフィルム。
- ハードコート層とは反対側の基材フィルムの表面上に、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂の少なくとも1種を含む塗布層をさらに有する、請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
- ハードコート層が硬化型樹脂に無機微粒子が分散している構造をもち、ハードコート層における無機微粒子の含有量が20〜80質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
- 基材フィルム内には粒子が存在しないか、または基材フィルム内の粒子の含有量が50ppm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
- 有機−無機複合体における無機粒子がシリカ粒子である請求項1〜5のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のハードコートフィルムのハードコート層の上に、反射防止層または防汚層が積層された光学機能性フィルム。
- ハードコート層の屈折率が1.60〜1.65であるハードコートフィルムを製造するための、未硬化の硬化型樹脂が塗布される表面を有する密着性改質基材フィルムであって、当該密着性改質基材フィルムは熱可塑性樹脂を含む基材フィルムと、その表面に積層された密着性改質層とを有し、密着性改質層はポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種、ならびに無機粒子を含有し、かつ、密着性改質層の表面に上記未硬化の硬化型樹脂が塗布されることによって、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種の中に無機粒子が埋め込まれた構造をもつ有機−無機複合体が、基材フィルムとハードコート層との境界領域に点在し、かつ、複数の複合体が全部つながっているのではなく、離散的に存在するまで密着性改質層に含まれていた樹脂および未硬化の硬化型樹脂が混ざり合う、密着性改質基材フィルム。
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