JP5380897B2 - 接着性改質基材フィルムおよびハードコートフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、接着性改質基材フィルム、特にディスプレイ用部材に主として用いられるハードコートフィルムの基材フィルムとして好適な接着性改質基材フィルム、およびそのハードコートフィルムに関する。詳しくは、ハードコートフィルムの基材フィルムとしたときに、虹彩状色彩を抑制することができ、かつハードコート層と基材フィルム間の接着性に優れた接着性改質基材フィルム及びそのハードコートフィルムに関する。
一般に、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のディスプレイの部材に用いられるハードコートフィルムは、熱可塑性樹脂フィルムを基材フィルムとし、さらにハードコート層を有する積層フィルムとして構成される。
ハードコートフィルムの基材となる熱可塑性樹脂フィルムには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、アクリル、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、環状ポリオレフィン等からなる透明フィルムが用いられている。特に、ポリエステルフィルムは、優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性の点から、各種光学機能性フィルムの基材フィルムとして広く使用されている。
一般に、二軸配向ポリエステルフィルムの場合、フィルム表面は高度に結晶配向しているため、各種塗料、接着剤、インキなどとの接着性に乏しいという欠点がある。このため、従来から二軸配向ポリエステルフィルム表面に種々の方法で易接着性を付与する方法が提案されてきた。
例えば、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルグラフトポリエステルなどの樹脂を含む易接着層を、塗布法によってポリエステルフィルムの表面に設けることにより、ポリエステルフィルムに易接着性を付与する方法が一般的に知られている。この塗布法の中でも、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに、直接または必要に応じてコロナ放電処理を施してから、前記の樹脂の溶液または樹脂を分散媒で分散させた分散体を含有する水性塗布液を基材フィルムに塗布し、乾燥後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を施して、基材フィルムの結晶配向を完了させる方法(いわゆる、インラインコート法)や、基材フィルムの製造後、該フィルムに水系または溶剤系の塗布液を塗布後、乾燥する方法(いわゆる、オフラインコート法)が工業的に広く実施されている。
しかしながら、基材フィルムが二軸配向ポリエステルフィルムの場合、屈折率(面方向)は1.62〜1.65であるのに対し、例えばアクリル樹脂等で形成されるハードコート層の屈折率は通常1.53を中心に1.50〜1.56である。また、その中間に位置する易接着層は、一般にアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等、あるいはそれらを組み合わせてなる樹脂を主成分として形成される。なお、この樹脂組成物層の屈折率は通常1.49〜1.54である。
このため、二軸配向ポリエステルフィルムと易接着層との屈折率差により、この界面に光の反射がおこり、ハードコート表面の反射光との干渉で干渉斑(虹彩状色彩)が発生する。そのため、ハードコート上に反射防止層(AR層)や防汚層を形成した後においても、貼合した画像表示装置などの物品の視認性が悪化する場合や高級感が損なう場合がある。
特に、3波長蛍光灯下では、輝線スペクトル成分の比率が高いため干渉斑が強調される。近年、3波長蛍光灯の普及が一般家庭で急激に進んでおり、それだけ干渉斑の問題が重要となってきている。そのため、干渉斑が問題とされる用途では、二軸配向ポリエステルフィルムを基材とした機能性プラスチックフィルムの使用は著しく制限される。さもなければ、干渉斑の問題を抱えたまま機能フィルムが使用されている。実際、基材として二軸配向ポリエステルフィルムが使われている大型平面テレビの分野では現在、搭載されているほとんどの反射防止フィルムで干渉斑が観察される。
一方、ハードコート層表面に、高屈折率層/低屈折率層、あるいは高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層から構成される反射防止層を積層する場合、ハードコート層を高屈折率化することにより、反射防止層から高屈折率層を省略することができる。その結果、反射防止フィルムの製造においてコストを低減することができるのである。この傾向は近年の強い低コスト化要求のためにますます広がりつつある。しかし、ハードコート層が高屈折率化すると、易接着層との屈折率差がより大きなものとなるため、上記干渉斑の問題はさらに顕在化する。
本出願人は、フィルムの局所的な厚みのバラツキが干渉斑に与える影響に着目し、共重合ポリエステルとポリウレタンを主成分とする固形分のコート厚さ0.1g/mの易接着層を有するフィルムを製造した後、該フィルムにカレンダー処理を行ってフィルムの局所的な厚みのバラツキを小さくすることによって基材フィルム厚さバラツキによる干渉縞を低減した積層ポリエステルフィルムを開示した(特許文献1)。しかし、上記のような比較的屈折率の高い(例えば1.60以上)ハードコート層を積層した場合、優れた接着性を有するものの、前記干渉斑は目立つものであった。
特開2001−71439号公報
ハードコート層の屈折率を二軸配向ポリエステルフィルムと同等にした場合、干渉斑低減の観点からは二軸配向ポリエステルフィルムとハードコート層の間に樹脂組成物層を設けずにハードコート層と二軸配向ポリエステルフィルムを光学的に一体化させ、該両層間の反射光を実質的に無くすことが理想的である。特許文献2では干渉斑の低減を目的として易接着被膜を介さず、コロナ処理またはプラズマ処理したポリエステルフィルム表面に直接屈折率が1.55〜2.0のハードコート層を積層したハードコートフィルムが開示されている。しかしながら二軸配向ポリエステルフィルム上に直接ハードコート層を設けた場合、十分な接着力は得られない。
特開2006−235125号公報
そこで、特許文献3、4では、易接着層の塗布厚みを薄くすることで、接着性を保持しながら、干渉斑の抑制を図る試みがなされている。特許文献3ではポリエステル樹脂とオキサゾリン系架橋剤からなる塗布厚5〜30nmの粒子を含有しない塗布層を有する積層ポリエステルフィルムが例示されている。特許文献4において、ポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤と平均粒径65nmの粒子からなる水性塗料を乾燥後の塗布量0.005〜0.05g/mになるように塗布することで高度に硬化した塗布層を有する積層ポリエステルフィルムが記載されている。
特開2008−18543号公報 特開2008−23718号公報
一方、密着性改質基材フィルムの製造、加工においては、加熱処理が施される場合がある。特に、生産性の向上に伴い、より短時間、かつより高温での処理が施される傾向にある。基材フィルムに二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合には、加工時の熱履歴により、加工工程時にオリゴマーが析出し、透明性が低下する。そのため、高い透明性が要求されるディスプレイ部材では要求品位が満たされない場合があった。
また、下記特許文献では、基材フィルムとしてオリゴマー含有量を減少させたポリエチレンテレフタレートを用いたフィルムも開示されている。しかし、これらの開示されているフィルムは低オリゴマー性を有しているものの、ハードコートフィルムの基材フィルムとして用いた場合、十分な干渉斑の低減効果は得られなかった。
特開平9−99530号公報 特開2000−141570号公報 特開2003−191413号公報 特開2003−301057号公報
より広い視野角で使われるディスプレイにおいては、さらなる高精細化に対応する為、あらゆる角度からみても十分な干渉斑低減効果のあるハードコートフィルムが必要であると考えられる。しかしながら、上記特許文献3、4で開示される積層フィルムでは、ハードコート層形成後も易接着層の層構成は残るため、十分な干渉斑低減効果が得られるものではなかった。
そこで、十分な干渉斑低減効果と接着性とを両立させるため、本出願人が行ったのが先願発明1(特願2007−270909号)である。先願発明1では、ハードコートフィルムを形成したときにハードコート剤と一体となるように、極薄く塗布液を塗布することで、基材フィルムとハードコート層との境界領域に点在する有機−無機複合体を有するハードコートフィルム、およびその基材となる接着性改質基材フィルムを提案している。先願発明1では、基材フィルムとハードコート層との境界領域に有機−無機複合体を点在させることで、十分な干渉斑の低減と密着性との両立を図るものである。
先願発明1の接着性改質基材フィルムのような、無機粒子を含む塗布液を極薄く塗布して形成される接着性改質層は、層厚みが薄いため、塗布液樹脂による粒子の保持力が小さくなる傾向がある。ところが、基材フィルムの製造での生産速度や、ハードコートフィルムの加工における加工速度は年々高速化されてきている。そのため、先願発明1の接着性改質基材フィルムを高速での製膜あるいは後加工に供した場合、接着性改質層中の粒子の脱落(粉落ち)が生じ、ガイドロールなどの工程汚染がするという課題を有することが分かった。また、粉落ちにより接着性改質基材フィルムの表面凹凸状態が変化すると、安定した表面摩擦が得られず、加工特性の変動が生じるという問題も見られた。また、より高温での加工を施す場合は、透明性が低下する場合があった。
本発明の課題は、ハードコート層を積層した場合にあらゆる角度から見ても干渉斑が目立たず、優れた接着性を有し、且つ、接着性改質層に含まれる粒子の脱落が少ない接着性改質基材フィルムを提供することにある。
すなわち、本発明では前記干渉斑低減のために特定の樹脂を極限まで薄く塗布し、且つ、塗布厚が小さいことによる粒子の保持力低下を抑制して、将来のさらなる高速加工化に向け、安定した摩擦係数が得られる接着性改質基材フィルムの提供を目指したものである。
さらに、加工により熱履歴を施しても高い透明性が得られる接着性改質基材フィルムの提供を目指したものである。
前記の課題は、以下の解決手段により達成することができる。
(1)粒子が実質的に存在しないポリエステルフィルムからなる基材フィルムの少なくとも片面に接着性改質層が積層される接着性改質基材フィルムであって、前記接着性改質層はポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂、ならびに無機粒子を含有し、前記接着性改質層の塗布量が3〜12mg/mであり、前記接着性改質層表面の高さ100nm以上の表面突起の山スソ部の最大径平均値が10μm以上であり、前記接着性改質基材フィルムを170℃で20分間熱処理したときのフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)が1.5%未満である、接着性改質基材フィルム。
(2)前記接着性改質層面どうしの静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μd)の差(△μ)が0.20以下である、前記接着性改質基材フィルム。
(3)前記基材フィルムが3層以上の積層ポリエステルフィルムからなり、前記基材フィルム中のオリゴマー含有量が0.60質量%以上、0.90質量%以下である、前記接着性改質基材フィルム。
(4)前記接着性改質層が共重合ポリエステルとポリウレタンと無機粒子とを含む、前記接着性改質基材フィルム。
(5)前記接着性改質基材フィルムの前記接着性改質層面に未硬化の硬化型樹脂を塗布することによりハードコート層を積層したときに、前記ハードコート層が前記基材フィルムに直接積層され、前記基材フィルムと前記ハードコート層との境界領域に点在する有機−無機複合体を有するハードコートフィルム。
(6)前記ハードコート層の屈折率が1.60から1.65である請求項5に記載のハードコートフィルム。
(7)基材フィルムの表面上に直接積層されたハードコート層、ならびに、基材フィルムとハードコート層との境界領域に点在する有機−無機複合体を有するハードコートフィルムであって、基材フィルムは、170℃で20分間熱処理した時のフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)が1.5未満であることを特徴とするポリエステルフィルムからなり、有機−無機複合体は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種の中に無機粒子が埋め込まれた構造をもち、ハードコート層の屈折率が1.60〜1.65であることを特徴とするハードコートフィルム。
本発明の接着性改質基材フィルムは、高温の加工条件でも透明性が良く、ハードコートフィルムとした場合に、優れた干渉斑低減がえられ、かつ高い接着性を有し、安定的な表面摩擦がえられる。
よって、好ましい実施態様としては、ハードコート層を形成させるための未硬化の硬化樹脂を積層した場合、未硬化の硬化樹脂と接着性改質層に含まれていた樹脂が混ざり合い、基本的には基材フィルムとハードコート層が直接的に積層されるようになる程度に一体化する。
また、好ましい実施態様としては、後加工における高速加工時においても、工程汚染が少なく、換言すれば該脱落物による欠点が少ないハードコート用接着性改質基材フィルムを得ることができる。
さらに、好ましい実施態様としては、ハードコート処理加工、及びその前後の加工処理において、加温処理が施されても、高い透明性と優れた干渉斑低減がえられ、かつ高い接着性を有するハードコートフィルムを得ることができる。
本発明の接着性改質基材フィルムは、未硬化の硬化樹脂を塗布したときに、膨潤してハードコート層と一体化する程、極薄い接着性改質層を有する。よって、本発明の接着性改質基材フィルムにハードコート層を接着性改質層上に積層した場合、基材フィルムの表面上に直接にハードコート層が形成されていることを特徴とする。すなわち、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率5万倍から20万倍で撮影すると、基材フィルムとハードコート層の界面には連続する樹脂組成物層が観察されない。そして、基材フィルムとハードコート層との境界領域に後述する有機−無機複合体が独立して点在していることが観察される。このような構造を有することで、本願発明のハードコートフィルムは、易接着層に起因する界面反射による干渉斑が低減される。加えて、基材フィルムとハードコート層との境界領域に点在する有機−無機複合体により、高い密着性が得られる。
この有機−無機複合体は、ハードコート層積層前の接着性改質基材フィルムでは、無機粒子による、突起高さが100nm以上の表面突起として観察される。しかし、接着性改質層の塗布量が20mg/m以下(例えば塗布層の比重が1.2として厚さ約17nm程度以下)のような極薄い樹脂塗布層では、無機粒子の保持力が小さいため接着性改質基材フィルムが高速でガイドロールに接するような場合は、粒子の脱落を防止するのは困難であった。
本発明者は、表面突起形状の微細構造と粒子の脱落機構との関係を鋭意検討した結果、単に樹脂層の厚みと表面突起の高さによって粒子の脱落のし易さが決まるのではなく、山状に形成される表面突起の山スソの広がりが、無機粒子の脱落のし易さに影響するという新たな知見を見出し、本発明に至ったものである。無機粒子による表面突起は、所定の山スソを有する山状の形状をとる。ここで、樹脂層の厚みが薄くなると、山状の表面突起土台部が貧弱になり、あたかも鋭角な突起のように山スソの広がりが狭くなる。このような山スソの狭い表面突起では、無機粒子が脱落し易くなることが分かった。そこで、本発明では表面突起周囲に塗布液に含まれる樹脂成分からなる特定の大きさ以上の山スソ部を積極的に形成させることによって、この課題を解決した。なお、本発明でいう無機粒子による高さ100nm以上の突起を中心とした周囲の山スソ部の最大径とは図3に示すように接着性改質層中に含まれる無機粒子又はその凝集体を核とし、一つの核の周囲に樹脂成分が山のすその状に広がっている形態における山スソ部の最大径を意味する。
このような構成によって、粒子の脱落による工程汚染を低減し、ハードコート層(特に高屈折率のハードコート層)積層したときにあらゆる角度から見た干渉斑が低減し、十分な密着性が達成されることが本発明における新知見である。
本発明の接着性改質基材フィルムにおける接着性改質層の粒子の脱落のしやすさは、接着性改質層面の静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μd)の差から求めることができる。塗布層が無機粒子をしっかり固着できるだけの塗布量があり、無機粒子の脱落がほとんど無いか少ない場合、フィルムの静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μd)は、ほぼ同じか動摩擦係数が若干小さい関係にある。しかし、無機粒子が脱落しやすいと、動摩擦測定時に粒子が脱落し、急激に動摩擦の値が大きくなる。このようなフィルムは製造工程や、後加工工程で加工設備を短時間で著しく汚染し、製品の品位と生産性の低下を招く。このような現象は一般的な塗布層(例えば塗布量が50mg/m以上で粒子の平均粒径が20〜150nm)ではほとんど問題にはならなかったが、塗布量を極限まで小さくした場合に顕在化しやすくなる。
本発明の接着性改質基材フィルムの接着性改質層どうしの静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μd)の差(△μ=μd−μs)は、0.20以下が望ましく、好ましくは0.19以下、さらに好ましくは0.18以下である。静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μd)の差(△μ)が、0.20以下であれば、粉落ちが抑制され、工程汚染や少なくなるので望ましい。これにより粉落ちに起因する光学欠点を少なくすることができる。また、安定した摩擦特性が得られるので、加工特性の点からも好ましい。また、動摩擦係数及び静摩擦係数の値は0.8以下が望ましく、好ましくは0.6以下であることが好ましい。0.8を越えると耐スクラッチ性が低下し加工工程中でキズが入りやすくなる場合がある。
(1)基材フィルム
本発明で用いる基材フィルムの厚さは、特に制限しないが、30〜300μmの範囲で、使用する用途の規格に応じて任意に決めることができる。基材フィルムの厚みの上限は、250μmが好ましく、特に好ましくは200μmである。一方、フィルム厚みの下限は、50μmが好ましく、さらに好ましくは75μmであり、特に好ましくは100μmである。フィルム厚みが30μm未満では、剛性や機械的強度が不十分となりやすい。一方、フィルム厚みが300μmを超えると、フィルム中に存在する異物の絶対量が増加するため、光学欠点となる頻度が高くなる。また、フィルムを所定の幅に切断する際のスリット性も悪化し、製造コストが高くなる。さらに、剛性が強くなるため、長尺のフィルムをロール状に巻き取ることが困難になりやすい。
基材フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレートなどが好適である。また、ポリエステルやポリアミドのような極性官能基を有する樹脂は、接着性改質層との接着性の点から好ましい。
中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートまたはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体がさらに好適であり、とりわけポリエチレンテレフタレートから形成された二軸配向フィルムが特に好適である。
本発明の接着性改質基材フィルムは170℃で20分間熱処理したときのフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)が1.5%未満であることが必要であり、好ましくは0.5%、より好ましくは0.3%である。上記△Hzが1.5%未満であれば、加熱加工を施しても、ディスプレイ部材として要求される高い透明性が保持される。
本発明において、基材フィルムのオリゴマー含有量は、0.90質量%以下であることが望ましい。基材フィルムのオリゴマー含有量が0.90質量%以下であれば、高温化の処理でもオリゴマーの析出が少なく、加熱によるヘイズ変化量が上記範囲内になり好ましい。そのために、ポリエステル樹脂の製造においてオリゴマー含有量を少なくする処理を施す必要がある。
しかし、オリゴマー含有量を少なくする為に、後述のような処理を行うと、ポリエステル樹脂の酸化劣化が生じ、ポリエステル樹脂が黄色味を帯びる場合がある。ディスプレイ用部材には高い透明性が求められるため、高品位のベースフィルムでは、フィルムのカラーb値として、4.0以下であることが必要とされる。そのため、本発明の基材フィルムのオリゴマー含有量は、0.60質量%以上、好ましくは0.70質量%以上、より好ましくは0.80質量%以上とすることが望ましい。オリゴマー含有量が0.60質量%以上であれば、フィルムが黄色味を帯びることなく、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの高品位のディプレイ部材として好適に用いることができる。
加熱前後のフィルムヘイズ変化量を上記範囲とし、且つ、フィルムのカラーb値が上記内となるようにするためには、表層にオリゴマー含有量の少ないポリエステル樹脂を用いた3層以上の層構成を有する積層ポリエステルフィルムとすることが望ましい実施態様である。積層ポリエステルフィルムの層構成として、オリゴマー含有量の少ないポリエステル樹脂からなるB層、それら以外のポリエステル樹脂をA層、C層とすると、フィルム厚み方向の層構成は、A/B、B/A/B、B/A/C/B、あるいはB/A/C/A/B等等の構成が考えられる。これらの中でも、バイメタル構成によるカールの発生を抑制すためには、B/A/B構成(2種3層構成)とすることが好ましい。いずれにしても、本発明の基材フィルムとして積層ポリエステルフィルムを用いる場合、最表層を構成するA層にはオリゴマー含有量の少ないポリエステル樹脂を用いることが必要である。
オリゴマーとは、環状三量体を主とする環状オリゴマー、線状二量体および線状三量体を主とする線状オリゴマー、テレフタル酸、テレフタル酸モノグリコールエステル等を包含するが、本発明のオリゴマーは主として環状三量体からなる。このようなオリゴマーの少ないポリエステルフィルム層を形成する方法としては、特に限定しないが、特開昭48−101462号公報、特開昭49−32973号公報等に開示されているように、一旦重合したチップをさらに固相で重合することにより、チップの状態でオリゴマー等の低分子量体を減少させ、これらの原料を用いて製膜する方法や、溶剤を用いてチップ中のオリゴマー等の低分子量体を除去して製膜する方法や、二軸延伸熱固定したフィルムから溶剤を用いてオリゴマー等の低分子量体を抽出除去する方法が好適である。特に前者の固相重合操作を付加する方法では、フィルムへの押出工程での温度が高く時間が長いと、熱的な平衡関係で、折角減少したオリゴマー等の低分子量体が増加してしまうことになるので、できるだけ低温でかつ短時間で押し出すことが好ましい。
基材フィルムを形成する樹脂として、ポリエチレンテレフタレートを基本骨格とするポリエステル共重合体を用いる場合、共重合成分の比率は20モル%未満とすることが好ましい。20モル%以上ではフィルム強度、透明性、耐熱性が劣る場合がある。共重合成分として用いることができるジカルボン酸成分としては、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、トリメリロット酸及びピロメリロット酸等の多官能カルボン酸等が例示される。また、共重合成分として用いることができるグリコール成分としては、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール及びネオペンチルグリコール等の脂肪酸グリコール;p−キシレングリコール等の芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコール等が例示される。
また、前記の熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲で、触媒以外に各種の添加剤を含有させることができる。添加剤として、例えば、無機粒子、耐熱性高分子粒子、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン化合物、帯電防止剤、紫外線吸収剤、耐光剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、ゲル化防止剤、界面活性剤等が挙げられる。
また、本発明で用いる接着性改質基材フィルムは高度な透明性が要求されるため、基材フィルム中には、透明性を低下させる原因となる粒子を実質的に含有させない。
前記の「粒子を実質的に含有させない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
本発明で用いる基材フィルムとしては、熱可塑性樹脂を溶融押出し、または溶液押出して得た未配向シートを、必要に応じ、長手方向または幅方向の一軸方向に延伸し、あるいは二軸方向に逐次二軸延伸または同時二軸延伸し、熱固定処理を施した、二軸配向熱可塑性樹脂フィルムが好適である。
基材フィルムの原料としてポリエステルを用いた場合を代表例として、基材フィルムの製造方法について、以下で詳しく説明する。
フィルム原料として用いるポリエステルペレットの固有粘度は、0.45〜0.70dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.45dl/g未満であると、フィルム製造時に破断が多発しやすくなる。一方、固有粘度が0.70dl/gを超えると、濾圧上昇が大きく、高精度濾過が困難となり、生産性が低下しやすくなる。なお、ポリエステルの固有粘度は、ポリエステルをフェノール(6質量部)と、1,1,2,2−テトラクロルエタン(4質量部)の混合溶媒に溶解し、30℃で測定することができる。
また、本発明では、光学欠点の原因となる、原料のポリエステル中に含まれている異物を除去することが好ましい。ポリエステル中の異物を除去するために、溶融押出しの際に溶融樹脂が270〜295℃に保たれた任意の場所で、高精度濾過を行うことができる。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材の場合、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物及び高融点有機物の除去性能に優れ好適である。
溶融樹脂の高精度濾過に用いる濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズが15μmを超えると、20μm以上の異物の除去が不十分となりやすい。
ポリエステルペレットを十分に真空乾燥した後、A層、B層を構成する樹脂を共押出し機に供給し、270〜295℃でシート状に溶融押出しし、冷却固化せしめて未配向のキャストフィルムを得る。得られたキャストフィルムを、80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して、一軸配向ポリエステルフィルムを得る。
その後、一軸配向ポリエステルフィルムの片面、若しくは両面に、後述のように塗布液を塗布する。次いで、フィルムの両端部をクリップで把持して、80〜180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き220〜240℃の熱処理ゾーンに導き、熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で、必要に応じて、幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
また、基材フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、前記の基材フィルムに、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施してもよい。
(2)接着性改質層
本発明の接着性改質基材フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に接着性改質層を積層してなる。本発明の接着性改質層は、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂、ならびに無機粒子を含有する。本発明の接着性改質層を構成するポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂は、基材フィルムおよびハードコート層の両方に対して接着性を有し、ハードコート剤に含まれる有機溶剤に適度に膨潤する。上述の樹脂は単独で用いてもよいし、異なる2種の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂とウレタン樹脂、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂、あるいはウレタン樹脂とアクリル樹脂を組み合わせて用いてもよい。
中でも、基材となる基材フィルムがポリエステル系基材フィルムの場合、ハードコート層との接着性の点、及び、前記膨潤性の観点から、複合体を構成する主な樹脂成分として、共重合ポリエステル及びポリウレタンを含有していることが好ましい。共重合ポリエステル単独では、ポリエステル系基材フィルムとの接着性は十分であるが、ハードコート層との接着性に劣る場合がある。また、比較的脆い樹脂であるため、カッティング時の衝撃に対し凝集破壊を発生しやすい。
一方、ポリウレタン単独では、ハードコート層との接着性には比較的優れるが、ポリエステル系基材フィルムとの接着性に劣る。さらに、接着性改質基材フィルムをロール状に巻き取る際の耐ブロッキング性に劣る。そのため、ポリウレタン単独からなる接着性改質層を有する接着性改質基材フィルムを用いて製造された、ハードコートフィルムは、品位が劣る場合がある。
このような問題を避けるために、基材フィルムにおいて多量に粒子を含有させる、複合体に粒径の大きな粒子を含有させる、あるいは複合体を構成する粒子の含有量を増加させることなどが必要になる。その結果、フィルムのヘイズが上昇するため、特に透明性の要求が強いハードコートフィルムの基材フィルムとして好ましくない。
本発明の接着性改質層は、水性塗布液を、走行する熱可塑性樹脂フィルムの片面または両面に連続的に塗布する塗布工程、塗布層を乾燥する乾燥工程、次いで少なくとも一軸方向に延伸する延伸工程、さらに延伸されたフィルムを熱固定処理する熱固定処理工程を経て連続的に形成させて、接着性改質層を設けた接着性改質基材フィルムを製造することができる。また、用途によっては、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤から選ばれる少なくとも一種の架橋剤を塗布液に混合し、熱処理することで、適度な架橋構造を形成させてもよい。
(塗布液の調合工程)
本発明において、塗布法を用いる場合、塗布液に用いる材料は、樹脂及び分散媒あるいは溶媒である。本発明において、塗布液は、水性であることが好ましい。また、本発明では、樹脂成分以外に、無機粒子を併用する。さらに、界面活性剤を併用することが好ましく、必要に応じて、及び界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機潤滑剤、抗菌剤、光酸化触媒などの添加剤を用いることができる。
また、塗布液には、樹脂の熱架橋反応を促進させるため、触媒を添加しても良く、例えば、無機物質、塩類、有機物質、アルカリ性物質、酸性物質および含金属有機化合物等、種々の化学物質が用いることができる。また、水溶液のpHを調節するために、アルカリ性物質あるいは酸性物質を添加してもよい。塗布液は、分散媒あるいは溶媒中に、撹拌下、樹脂を分散化または溶解し、次いで、下記のように調整した無機粒子分散液のほかに、界面活性剤、必要に応じて各種添加剤を併用し、所望する固形分濃度にまで希釈して調整する。
また、塗布液の樹脂成分及び粒子を均一に分散させるため、さらに粗大な粒子凝集物及び工程内埃等の異物を除去するために、塗布液を精密濾過することが好ましい。
塗布液を精密濾過するための濾材のタイプは、前記の性能を有していれば特に限定はなく、例えば、フィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。塗布液を精密濾過するための濾材の材質は、前記の性能を有しかつ塗布液に悪影響を及ばさない限り特に限定はなく、例えば、ステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
塗布液を精密濾過するための濾材は、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が25μm以下の濾材が好ましく、さらに好ましくは濾過性能10μm以下の濾材である。最も好ましくは、濾過性能の異なるフィルターを組み合わせて用いる方法である。濾過粒子サイズが25μmを超える濾材を用いた場合、粗大凝集物の除去が不十分となりやすい。そのため、濾過で除去できなかった粗大凝集物は、塗布乾燥後の一軸配向または二軸配向工程での配向応力により広がって、100μm以上の凝集物として認識され、光学欠点の原因となりやすい。
(a)樹脂
本発明において、複合体を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂、特に共重合ポリエステル(PEs)とポリウレタン系樹脂、特にポリウレタン(PU)を用いるのが接着性の観点から好ましい。この場合、塗布液中の共重合ポリエステル(PEs)とポリウレタン(PU)の固形分基準の質量比は、(PEs)/(PU)=70/30〜30/70が好ましく、特に好ましくは60/40〜40/60である。なお、複合体の樹脂は、前記の共重合ポリエステルとポリウレタン以外の第3の樹脂を併用することもできる。また、架橋剤を併用してもかまわない。
(ポリエステル系樹脂)
例えば、複合体にポリエステル系樹脂として共重合ポリエステルを用いる場合、芳香族ジカルボン酸成分と、グリコール成分としてエチレングリコールと分岐状グリコールを構成成分とすることが好ましい。前記の分岐状グリコールとは、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、及び2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
分岐状グリコール成分のモル比は、全グリコール成分に対し、下限が10モル%であることが好ましく、より好ましくは20モル%、さらに好ましくは30モル%である。一方、上限は90モル%であることが好ましく、さらに好ましくは80モル%である。また、必要に応じて、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを併用してもよい。
芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸またはイソフタル酸が最も好ましい。全ジカルボン酸成分に対し、10モル%以下の範囲で、他の芳香族ジカルボン酸、特に、ジフェニルカルボン酸及び2,6−ナルタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を加えて共重合させてもよい。
ポリエステル系樹脂を水系塗液として用いる場合には、水溶性あるいは水分散性のポリエステル系樹脂が用いられるが、このような水溶性化あるいは水分散化のためには、スルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合させることが好ましい。そのために、前記のジカルボン酸成分の他に、ポリエステルに水分散性を付与させるため、5−スルホイソフタル酸そのアルカリ金属塩を1〜10モル%の範囲で使用するのが好ましく、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレンイソフタル酸−2,7−ジカルボン酸および5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸またはそのアルカリ金属塩を挙げることができる。
(ポリウレタン系樹脂)
ポリウレタン系樹脂として複合体が含み得るポリウレタンは、熱反応型ポリウレタン樹脂が好ましく、例えば、末端イソシアネート基を活性水素基で封鎖(以下ブロックと言う)した、水溶性または水分散性ポリウレタンなどが挙げられる。
上記イソシアネート基のブロック化剤としては、重亜硫酸塩類、フェノール類、アルコール類、ラクタム類、オキシム類及びマロン酸ジメチル等のエステル類、アセト酢酸メチル等のジケトン類、メルカプタン類、尿素類、イミダゾール類、コハク酸イミド等の酸イミド類、ジフェニルアミン等のアミン類、イミン類、2−オキサゾリジン等のカルバメート系等が挙げられる。水溶性または水分散性ポリウレタンは、分子中に親水性基を有することが好ましい。そのため、使用する分子内に少なくとも1個以上の活性水素原子を有する化合物に親水性基を有するか、先述のブロック化剤に親水性を有する化合物を使用することが好ましい。使用する分子内に少なくとも1個以上の活性水素原子を有する化合物中に親水性基を有する例として、タウリン、ジメチロールプロピオン酸、カルボン酸基またはスルホン酸基を有するポリエステルポリオール、ポリオキシアルキレンポリオール等が挙げられる。また、ブロック化剤に親水性を有する化合物としては、重亜硫酸塩類、及びスルホン酸基を含有したフェノール類等が挙げられる。フィルム製造時の乾燥あるいは熱セット過程で、上記樹脂に熱エネルギーが与えられると、ブロック化剤がイソシアネート基からはずれるため、上記樹脂は自己架橋した編み目に混合した水分散性共重合ポリエステル樹脂を固定化するとともに、上記樹脂の末端基等とも反応する。特に水溶性または水分散性ポリウレタンとしては、ブロック化剤に親水性を有する化合物を使用したものが好ましい。これらのポリウレタンは、塗布液調整中の樹脂は親水性であるため耐水性が悪いが、塗布、乾燥、熱セットして熱反応が完了すると、ウレタン樹脂の親水基すなわちブロック化剤がはずれるため、耐水性が良好な塗膜が得られる。
上記ポリウレタン樹脂において使用されるウレタンプレポリマーの化学組成としては、(1)分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する分子量が200〜20,000の化合物、(2)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート、及び、必要により、(3)分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応せしめて得られる、末端イソシアネート基を有する化合物である。
上記(1)の分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する分子量が200〜20,000の化合物として一般に知られているのは、末端又は分子中に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基あるいはメルカプト基を含むものであり、特に好ましい化合物としては、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオール等が挙げられる。
ポリエスルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、フタル酸及び無水マレイン酸等の多価の飽和あるいは不飽和カルボン酸、あるいは該カルボン酸無水物等と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の多価の飽和及び不飽和のアルコール類、比較的低分子量のポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類、あるいはそれらアルコール類の混合物を縮合することにより得ることができる。
さらに、ポリエステルポリオールとしては、ラクトン及びヒドロキシ酸から得られるポリエステル類、あらかじめ製造されたポリエステル類にエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド等を付加せしめたポリエステルポリオール類も使用することができる。
前記(2)の有機ポリイソシアネートとしては、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいは1種以上のこれらの化合物をトリメチロールプロパン等に付加させて得られるポリイソシアネート類が挙げられる。
前記(3)の分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。
ウレタンプレポリマーを合成するには、通常、前記(1)と前記(2)と、さらに必要に応じて前記(3)とを用いた一段式あるいは多段式イソシアネート重付加方法により、150℃以下、好ましくは70〜120℃の温度において、5分ないし数時間反応させる。前記(1)および前記(3)の活性水素原子に対する前記(2)のイソシアネート基の比は、1以上であれば自由に選べるが、得られるウレタンプレポリマー中に遊離のイソシアネート基が残存することが必要である。さらに、遊離のイソシアネート基の含有量は、得られるウレタンプレポリマーの全質量に対して10質量%以下であればよいが、ブロック化された後のウレタンポリマーの水溶液の安定性を考慮すると、7質量%以下であるのが好ましい。
得られた前記ウレタンプレポリマーは、好ましくは重亜硫酸塩を用いて末端イソシアネート基のブロック化を行う。ウレタンプレポリマーを重亜硫酸塩水溶液と混合し、約5分〜1時間、よく攪拌しながら反応を進行させる。反応温度は60℃以下とするのが好ましい。その後、反応混合物を水で希釈して適当な濃度にして、熱反応型水溶性ウレタン樹脂組成物とする。該組成物は使用する際、適当な濃度および粘度に調整するが、通常80〜200℃前後に加熱すると、ブロック化剤である重亜硫酸塩が解離して活性な末端イソシアネート基が再生するために、プレポリマーの分子内あるいは分子間で起こる重付加反応によってポリウレタン重合体が生成する、あるいは他の官能基への付加を起こす性質を有するようになる。
(アクリル系樹脂)
複合体にアクリル系樹脂を用いる場合の水分散性または水溶性のアクリル樹脂とは、例えば、アクリレートおよび/またはメタクリレート樹脂、あるいは、これらと、スチレンなどの不飽和二重結合を有する、アクリル樹脂と共重合可能な脂肪族化合物または芳香族化合物との共重合体が挙げられる。ハードコート層に対する接着性の優れた接着性改質層として親水性に優れたアクリル−スチレン共重合樹脂として、乳化重合による水分散性アクリル−スチレンランダム共重合樹脂が最も好ましい。
さらに本発明では、水分散性アクリル−スチレン共重合樹脂を基材フィルムにより強固に接着するため、該共重合樹脂以外に対し、共重合ポリエステル系樹脂を10〜90質量%併用するのが効果的である。好ましくは、水分散性スルホン酸金属塩基含有ポリエステル共重合樹脂を水分散性アクリル−スチレン共重合樹脂塗布液中に混合して、基材フィルムに塗工するのが適している。
水分散性スルホン酸金属塩基含有ポリエステル共重合樹脂を構成するポリエステルの好ましい例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロへキサンジメチレンテレフタレートが挙げられる。かかるポリエステルは、必要に応じて、30モル%以下、好ましくは15モル%以下の上記酸成分またはグリコール成分を共重合したものでもよく、あるいは、このようなモル比で、上記酸成分およびグリコール成分から得られるポリエステルとブレンドしたものでもよい。
さらに、水分散性アクリル−スチレン共重合樹脂に水分散性スルホン酸金属塩基含有ポリエステル共重合樹脂を混合した塗布液に、水分散性または水溶性のウレタン樹脂、好ましくは水分散性で3個以上の官能基を有するブロックイソシアネート樹脂を添加することにより、水分散性アクリル−スチレン共重合樹脂と水分散性スルホン酸金属塩基含有ポリエステル共重合樹脂との架橋反応により、ハードコート層との接着性を低下させることなく、塗膜表面の耐ブロッキング性を向上することができる。
上述の各樹脂の使用にあたっては、上記の成分を含有する塗布液を基材フィルムの少なくとも片面に塗工し、乾燥させることにより行われる。例えば、水分散性アクリル−スチレン共重合樹脂、好ましくはアクリレートおよび/またはメタクリレート樹脂とスチレンとのランダム共重合樹脂、および、水分散性ポリエステル共重合樹脂としての水分散性スルホン酸金属塩基含有ポリエステル共重合樹脂を固形分換算で3:2〜1:1の質量比率で配合した樹脂を含む塗布液の場合、固形分濃度は4〜15質量%、粘度は4〜60cps(B型粘度計により25cpsで測定)である。さらに、本発明では必要に応じてアクリル樹脂を架橋させるためにイソシアネート、エポキシ、オキサゾリン、メラミン等の架橋剤を用いることができる。
(b)溶媒
本発明においては、溶媒とは、樹脂を溶解する液だけではなく、樹脂を粒子状に分散させるために用いる分散媒も広義的に含むものである。本発明を実施するためには、有機溶媒、水性溶媒等の各種溶媒を用いることができる。
塗布液に用いる溶媒は、水と、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類を、全塗布液に占める割合が10〜50質量%の範囲で混合した混合液が好ましく、さらに20〜40質量%であることが好ましい。さらに、10質量%未満であれば、アルコール類以外の有機溶媒を溶解可能な範囲で混合してもよい。ただし、塗布液中、アルコール類とその他の有機溶媒との合計は、50質量%未満とすることが好ましい。
有機溶媒の添加量が、全溶媒に対し50質量%未満の場合、塗布乾燥時に乾燥性が向上するとともに、水単独の場合と比較して接着性改質層の外観が向上するという利点がある。有機溶媒の添加量が、全溶媒に対し50質量%以上の場合には、溶媒の蒸発速度が速くなり、塗布中に塗布液の濃度変化が起こりやすくなる。その結果、塗布液の粘度が上昇して、塗布性が低下するために、塗布膜の外観不良を起こす場合がある。さらに、有機溶媒の揮発により、火災などの危険性も高くなる。
(c)界面活性剤の併用
前記の水性塗布液を熱可塑性樹脂フィルム(基材フィルム)の表面に塗布する際には、該フィルムへの濡れ性を向上させ、塗布液を均一に塗布するために一般に界面活性剤が使用することが好ましい。
界面活性剤は、良好な塗布性が得られるものであれば、特に種類は限定されない。界面活性剤の中でも、微量の添加で良好な塗布性を得るにはフッ素系界面活性剤が好適である。添加量は塗布液に対し0.001〜0.018質量%配合することが好ましい。
(d)無機粒子
透明性が高度に要求される光学機能性フィルムとしてハードコートフィルムや該フィルムを使用する際は、基材フィルムのヘイズは1.5%以下であることが好ましい。ヘイズが1.5%を超えると、フィルムをディスプレイ部材等に用いた場合、画面の鮮明度が低下するので好ましくない。
基材フィルムのヘイズを1.5%以下にするため、本発明では基材フィルム中に実質的に粒子を含有させない。基材フィルム中に粒子を含有させない場合、耐スクラッチ性やロール状に巻取る際や巻出す際のハンドリング性(滑り性、走行性、ブロッキング性、巻取り時の随伴空気の空気抜け性など)を改善するために、接着性改質層に無機粒子を含有させる。これにより、本発明の接着性改質基材フィルムは、高い透明性を保持しながら、滑り性、巻き取り性、耐スクラッチ性を付与することができる。
接着性改質層に含まれる無機粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカーアルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどの無機粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などの耐熱性高分子粒子が挙げられる。
これらの粒子の中でも、樹脂成分と屈折率が比較的近いため、高透明のフィルムを得やすいという点でシリカ粒子が好適である。
また、粒子の形状は特に限定されないが、易滑性を付与する点からは、球状に近い粒子が好ましい。
接着性改質層全量に占める粒子の含有量は、20質量%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下にする。複合体中の粒子の含有量が20質量%を超えると、透明性が悪化し、フィルムの接着性も不十分となりやすい。一方、粒子の含有量の下限は、複合体層に対して好ましくは0.1質量%、さらに好ましくは1質量%、特に好ましくは3質量%とする。
また、複合体には平均粒径の異なる粒子を2種類以上含有させても良いし、同種の粒子で平均粒径の異なるものを含有させてもよい。前記の塗布液を塗布する際には、塗布液中の粒子の粗大凝集物を除去するために、塗布直前に塗布液が精密濾過されるように濾材を配置することが好ましい。
また、粒子が1種の場合、または2種以上の場合の主体とする粒子Aの平均粒径は20〜150nmが好ましく、さらに好ましくは40〜60nmである。平均粒径が20nm未満であると、十分な耐ブロッキング性を得ることが困難な他、耐スクラッチ性が悪化する傾向がある。2種以上の粒子を用いる場合で補助的に平均粒径の大きな粒子Bを添加する場合の粒子Bの平均粒径は160〜1000nmが好ましく、特に好ましくは200〜800nmである。粒子Bの平均粒径が160nm未満の場合、耐スクラッチ性、滑り性、巻き性が悪化する場合ある。一方、粒子Bの平均粒径が1000nmを超える場合、粒子が脱落しやすくなるばかりでなく、ヘイズが高くなる傾向がある。また、粒子B(平均粒径:160〜1000nm)は乾式法シリカによる一次平均粒径40〜60nmの凝集体が脱落しにくいため好ましい。これは製膜工程において、接着性改質層を塗布後、延伸工程、熱固定工程をへることによって平たく、安定した形状にできるためと推察される。さらに凝集状態での平均粒径と一次粒子との平均粒径の比を4倍以上の粒子を用いることが、耐スクラッチ性の点から好ましい。
前記の粒子の平均一次粒径及び平均粒径の測定は下記方法により行う。
粒子を電子顕微鏡で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径を測定し、その平均値を平均一次粒径または平均粒径とする。また、接着性改質基材フィルムの接着性改質層中の粒子の平均粒径を求める場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率12万倍で接着性改質基材フィルムの断面を撮影し、複合体の粒子の最大径を求めることができる。凝集体からなる粒子の平均粒径は、接着性改質基材フィルムの接着性改質層の断面を、光学顕微鏡を用いて倍率200倍で300〜500個撮影し、その最大径を測定する。
本発明の接着性改質層は上記のような適切な粒径の無機粒子を含有し、接着性改質層表面には無機粒子による突起高さを100nm以上の表面突起を有する。接着性改質基材フィルムに適切な易滑性を付与する為には、非接触式表面粗さ計で測定したとき、高さ100nm以上の表面突起の密度は10ヶ/mm以上、1000ヶ/mm以下であることが好ましい。10ヶ/mm未満では摩擦係数が大きくなり、光学欠点の要因となる表面キズの発生が多くなる場合がある。また、1000ヶ/mmを超える場合は、ヘイズが高くなったり、粒子の脱落発生量が多くなるため好ましくない。
本発明では、接着性改質層に無機粒子による高さが100nm以上の表面突起を形成させることで、易滑性を付与するだけでなく、ハードコートフィルムとした時に後述する有機−無機複合体が基材フィルムとハードコート層との境界領域に点在する構造を形成させることができる。このような点在する有機−無機複合体を有することで、基材フィルムとハードコート層との密着性を付与することができる。このような有機−無機複合体により密着性が向上するのは、複合体が一種のアンカー機能を付与すること、境界層面の面積を多くする効果があることなどによるものと考えている。
さらに、本発明のハードコートフィルムは、すぐれた干渉斑低減効果を有するが、上記表面突起に由来する有機−無機複合体はその形状による光散乱効果を奏することにより干渉斑低減効果を有するものと考えている。ここで言う突起による光散乱効果とは、二軸延伸フィルムが有する面内の光学異方性(観察する角度によって屈折率が異なる性質)による干渉斑のバラツキを補う効果を有することによると推察する。そのため、本発明の接着性改質基材フィルムは、ハードコート積層時にあらゆる角度から観察しての実用的な干渉斑低減効果を奏することができる。
本発明では優れた干渉斑低減効果を得るためには、粒子の一部を適度に凝集させた状態で均一に分散させることが好ましい。これによってハードコートと基材フィルムとの屈折率の差が0.02以上の場合など比較的大きい場合でも光散乱効果が得られるためあらゆる角度から見ても実用的な干渉斑低減効果が得られる。適度な凝集体を得る具体的方法は後述する。
本発明では、接着性改質層表面に形成される上記高さが100nm以上の表面突起の山スソ部の最大径平均値が10μm以上であることが必要である。後述のように、本発明の接着性改質基材フィルムは、ハードコート層を積層したときに、基材フィルムとハードコート層とが直接積層するように、極薄く接着性改質層を有する。このように、樹脂層厚みが薄い場合、山状に形成させる表面突起の山スソ部が小さくなり易く、粒子が脱落し易くなる。そこで、本発明では、高さが100nm以上の表面突起の山スソ部の最大径平均値が10μm以上、好ましくは11μm以上、より好ましくは15μm以上とすることで、粒子の保持力を高くする。高さ100nm以上の表面突起の最大径平均値が10μm以上であると、粉落ちが抑制され、工程汚染が減少すると共に、安定した表面摩擦特性が得られる。
ここで、表面突起の山スソ部とは、表面突起の土台部分であり、具体的には、非接触式表面粗さ形で測定した場合に、1視野(測定範囲)内の平均高さ以上に凸状に盛り上がった部分をいう。例えば、三次元形状を測定して得られた結果を、測定範囲内の平均高さ0nmとして所定の色分けをした等高線表示モードで観察した場合、表面突起を中心に同心円上に形成された等高線の平均高さ以上の色区分が、山スソ部にあたる。
山スソ部の最大径とは、一つの表面突起の断面像を観察した場合、1視野(測定範囲)内の平均高さ線と断面プロファイルとが交差する2点間の距離の最大値をいう。例えば、上記等高線表示モードで測定した場合、表面突起の頂点を内封する平均高さの円状色区分における最大径にあたる。具体的には、等高線表示モードから断面プロファイルモードを表示させる場合、断面移動画面でカーソルの両端を表面突起の最大高さの位置を通るように、平均高さの円状色区分の長尺方向に移動させる。得られた表面突起の断面プロファイル曲線と測定視野内の平均高さ線とが交わった2個所の交点間の距離を読み取り山スソ部の最大径とする。山スソ部の最大径の平均値は、望ましくは、任意に選んだ20点以上の高さ100nm以上の表面突起について上記山スソ部の最大径を測定したときの平均値として求める。なお、非接触式表面粗さ計としては、マイクロマップ社製非接触三次元形状測定装置や、レーザーを使用した非接触粗さ測定器などを用いることができる。
本発明において、高さ100nm以上の表面突起の山スソ部の最大径平均を10μm以上とするには、適度な無機粒子の凝集体の形成と、塗布液樹脂により無機粒子を被覆することが望ましい。本発明において、適度な粒子の凝集体を形成させ、さらに、粒子及び該粒子凝集体の脱落を低減するために、塗布液調合段階において、粒子を添加する際、予め粒子と親和性の高い樹脂で被覆するための前処理を行うことが望ましい。粒子と親和性の高い樹脂とは特に限定されないが、接着性改質層中に含まれる樹脂の主成分の一部と同一の樹脂で被覆することが親和性の観点から好ましく、また、被覆する樹脂が有する極性基の極性と被覆される無機粒子の極性が逆である場合、無機粒子との親和性が高く、比較的強固に被覆されやすくなるため好ましい。さらに、柔軟性の高い樹脂ほど無機粒子の保持力が高くなる。具体的には、ガラス転移点が60℃以下の柔軟性のある樹脂が無機粒子を保持する上で好ましい。被覆する樹脂としては柔軟性に富んだポリウレタン系樹脂、粒子としてはシリカ粒子が、好ましい実施形態の一例である。なかでも、被覆する樹脂と無機粒子との関係が電気的に陰陽逆の組み合わせであることが、より好ましい実施形態である。このような前処理によって、塗布液を塗布乾燥した際、前記の無機粒子の周囲に該樹脂成分が多く集まり、本発明が規定する表面突起の山スソ部が形成され、無機粒子の脱落が低減できると考えられる。以下に該粒子の前処理方法について具体的に説明するが、粒子に粒子と親和性の高い樹脂を被覆できる方法であればこれに限定されるものではない。
まず、無機粒子を、予め無機粒子と親和性の高い樹脂を含む水、または有機溶媒またはこれらの混合溶液に0.01質量%以上、5質量%未満の濃度の分散液として添加する。0.01質量%未満では十分な量の被覆された無機粒子が得られない場合がある。5質量%以上では必要以上に粗大な凝集体が多く発生しやすく好ましくない。
親和性の高い樹脂の濃度は0.1質量%以上、25質量%未満が好ましい。0.1質量%未満では十分な被覆効果が得られない場合がある。25質量%以上では必要以上に粗大な凝集体が多く発生しやすく好ましくない。
次いで、得られた分散液を20℃以上、50℃未満の条件下で撹拌し、無機粒子または無機粒子の凝集体に、無機粒子と親和性の高い樹脂を被覆させる。20℃未満では被覆に時間がかかり、50℃を越えると樹脂が劣化(変色)する場合があるため好ましくない。攪拌機としては例えば粉体溶解機(T.K.ホモジェッターM型)が挙げられ、分散条件は分散液10kgに対し回転数5000rpm以上、好ましくは10000rpm以上、攪拌時間1時間以上、好ましくは3時間未満が好ましい。1時間未満では十分な被覆効果が得られない場合があり、また3時間以上では分散させても効果は大きく変わらない場合がある。
(e)架橋剤
携帯電話、PDA、モバイル型コンピュータのように、情報端末を屋外で使用する機会が増えている。さらに、カーナビゲーションなどに用いられるタッチパネルのように、夏場に高温になる車内で使用される材料も増えている。したがって、このような高温、高湿の過酷な環境下でも品質変化が少ないハードコートフィルム、すなわち、耐湿熱接着性に優れたフィルムが、このような用途では要望されている。
このような用途に、本発明のハードコートフィルムを用いる場合、耐湿熱性を向上させるために、塗布液に架橋剤を添加し、次いで熱処理を行うことにより、樹脂に架橋構造をもたせることができる。架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤から選ばれる少なくとも一種を用いても良い。架橋剤は、塗布液に使用する共重合ポリエステル樹脂との親和性、及び耐湿熱接着性を考慮しながら選定することができる。尚、過度な架橋は適度な膨潤性を損なうことがあるため好ましくない。
上記架橋剤を用いる場合は、複合体の共重合ポリエステル樹脂と架橋剤の合計量(100質量%)に対して、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%となるように含有させることが好ましい。架橋剤の含有量が40質量%を越えると、複合体が脆くなり、アクリレート系樹脂からなるハードコート層や拡散層などの機能層を形成させた後の加工工程において、高速カッティングに耐えうるだけの接着性が十分に得られない場合がある。一方、架橋剤の含有量が5質量%未満では、近年要求される耐久性が得られにくい場合がある。なお、塗布液中には、架橋を促進するために必要に応じて触媒を添加しても良い。
(f)塗布工程
前記の水性塗布液を塗布する工程は、該フィルムの製造工程中に塗布するインラインコート法が好ましい。さらに好ましくは、結晶配向が完了する前の基材フィルムに塗布する。水性塗布液中の固形分濃度は、2質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは1質量%以下である。固形分濃度の下限は0.1質量%が好ましく、さらに好ましくは0.3質量%である。該水性塗布液が塗布されたフィルムは、配向および熱固定のためにテンターに導かれ、そこで加熱されて、熱架橋反応により安定な被膜を形成し、接着性改質基材フィルムとなる。
未乾燥時の塗布量(以下、ウェット塗布量と略す)は、2g/m以上10g/m未満とすることが好ましい。ウェット塗布量が2g/m未満で、設計のドライ塗布量(接着性改質層の塗布量)を得ようとすると、塗布液の固形分濃度を高くする必要がある。塗布液の固形分濃度を高くすると、塗布液の粘度が高くなるため、スジ状の塗布斑が発生しやすい。一方、ウェット塗布量が10g/m以上では、乾燥炉内の乾燥風の影響を受けやすく、塗布斑が発生しやすい。なお、埃の付着による欠点を防止するために、クリーン度をクラス5000以下のクリーンな環境下で塗布液を塗布することが好ましい。
本発明の接着性改質層の塗布量(乾燥後の最終塗布量)は、3〜12mg/mであることが必要である。塗布量が多すぎると、ハードコート層を積層したときに、屈折率の高いハ−ドコート層と基材フィルムの間に屈折率の低い独立した接着性改質層が形成されるため干渉斑が目立ちやすくなる。塗布量が少なすぎると無機粒子が脱落しやすばかりでなく、実用的な接着性が得られない場合がある。
本発明では、さらにもう片面に、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂の少なくとも1種を含む塗布層を設けることも好ましい実施形態である。これにより、ハードコート層とは反対側の面にさらに光機能層を設けることが容易になり、複数の機能を複合した光機能性フィルムの基材とすることができる。
(3)ハードコートフィルム
(a)ハードコート層
ハードコート層を構成する硬化型樹脂としては、電離放射線硬化型樹脂が好ましい。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、下記の樹脂が挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂には、好ましくはアクリレート系官能基を有する樹脂であり、特に好ましくは、ポリエステルアクリレート、あるいはウレタンアクリレートである。ポリエステルアクリレートは、ポリエステル系ポリオールのオリゴマーのアクリレートまたはメタクリレート(以下、アクリレート及び/またはメタクリレートを、(メタ)アクリレートと記載する場合がある)、あるいはその混合物から構成される。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物とジイソシアネート化合物からなるオリゴマーを(メタ)アクリレート化したものから構成される。
(メタ)アクリレートを構成する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メ夕)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、さらにハードコート層の硬度を高めることが必要な場合は、多官能モノマーを併用することが好ましい。例えば、多官能モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが例示される。
ポリエステル系ポリオールのオリゴマーとしては、アジピン酸とグリコール(エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール等)やトリオール(グリセリン、トリメチロールプロパン等)、セバシン酸とグリコールやトリオールとの縮合生成物であるポリアジペートポリオールや、ポリセバシエートポリオールが挙げられる。また、上記脂肪族のジカルボン酸の一部または全てを他の有機酸で置換することができる。例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、あるいは無水フタル酸は、ハードコート層の硬度を高める成分として使用することができる。
ハードコート剤を基材フィルムの表面に形成する際に、レベリング性を向上させるために、必要に応じて希釈剤を用いて希釈してもよい。希釈剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン等が挙げられる。希釈剤の配合量は、適切な粘度になるように適宜選択すればよい。
ハードコート層に含有させる無機微粒子としては、例えば、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、シリカ、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、アルミナ、などの無機酸化物、シリカーアルミナ複合酸化物粒子、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカが挙げられる。
本発明のハードコートフィルムでは、屈折率が1.60〜1.65のハードコート層を設けることが望ましい。ハードコート層の表面に、高屈折率層/低屈折率層、あるいは高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層から構成される反射防止層を積層する場合、ハードコート層の屈折率を上記範囲に高屈折率化することにより、反射防止層から高屈折率層を省略することができる。その結果、コストを低減することができる。ハードコート層の屈折率を高くするためには、ハードコート層中に屈折率の高い無機微粒子を含有させることが有効である。屈折率の高い無機微粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタンが挙げられる。
一方、無機微粒子の含有量が80質量%を超えると、透明性が低下する傾向がある。また、無機微粒子の平均粒径は、易滑性、透明性の点から、5〜100nmが好ましい。
かかる無機微粒子を含有する高屈折率ハードコート剤は、市販品が入手できる。例えば、JSR株式会社製の紫外線硬化型樹脂(デソライト;Z7400B、Z7410B)が挙げられる。また、屈折率の高い無機微粒子をアクリレート系樹脂に適量添加し、屈折率を1.60〜1.65の範囲に調整してもよい。
電離放射線硬化型樹脂は、紫外線あるいは電子線を照射することにより硬化する。紫外線を照射する場合、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプを用い、100〜400nm、好ましくは、200〜400nmの波長領域で、100〜3000mJ/mのエネルギーで紫外線を照射する。また、電子線を照射する場合、走査型あるいはカーテン型の電子線加速器を用い、加速電圧1000keV以下、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有し、かつ100nm以下の波長領域の電子線を照射する。
ハードコート層の厚さは、0.1〜30μmの範囲で、用途に応じて決めればよい。より好ましくは1〜15μmである。ハードコート層の厚さが、前記の範囲内の場合には、ハードコート層の表面の硬度が高く、傷が付きにくい。さらに、ハードコート層が脆くなりにくく、ハードコートフィルムを折り曲げたときにハードコート層にクラックが入りにくい。
次に、本発明のハードコートフィルムのハードコート層とは反対面あるいはその上に、他の光学機能層を積層することもできる。例えば、下記の2つの実施形態がある。
(a)ハードコート層とは反対面に、ハードコート層、光拡散層、プリズム状レンズ層、電磁波吸収層、近赤外線遮断層、透明導電層から選択される、少なくとも1層の光学機能層を積層した光学機能性フィルム。
(b)ハードコート層の上に、反射防止層または防汚層を積層した光学機能性フィルム。
(b)有機−無機複合体
本発明の接着性改質基材フィルムの接着性改質層表面上にハードコート層を積層した際、ハードコート層は基材フィルムに直接積層され、基材フィルムとハードコート層との境界領域には有機−無機複合体(以下、単に「複合体」とも表記する。)が点在する。有機−無機複合体は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種の中に無機粒子が埋め込まれた構造をもつ。
前記複合体は、例えば、本発明のハードコートフィルムの超薄切片を作成し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率5万倍から20万倍で観察することにより、基材フィルムとハードコート層との境界領域に独立して存在することが確認できる。前記複合体は、無機粒子がポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂組成物に埋め込まれた構造を有する。TEM観察像では、電子密度に応じてコントラストの濃淡が観察できる。無機粒子は電子密度が高く、濃く見えるのに対して、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれる樹脂組成物は電子密度が低く、淡く見える。そのため、前記複合体は、基材フィルムと同等、もくしは基材フィルムより淡く観察される樹脂組成物が、濃く観察される無機粒子の周囲を囲むような構造物として観察される。本発明では、ひとつの独立した複合体は、ひとつの無機粒子、もしくはひとつの無機粒子凝集体を含んでなることが好ましい形態である。
有機−無機複合体に含まれるポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂組成物を、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察する場合は、ルテニウム染色、オスニウム染色、リンタングステン酸染色などの染色処理を行うことが好ましい。特に、ルテニウム染色は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂を好適に染色することができる。有機−無機複合体の各構成は上記染色による染色像により判別することできる。また、局所元素分析(SEM/EDXなど)によっても、有機−無機複合体の各構成は好適に判別することができる。なお、ハードコートフィルム形成後は、接着性改質層を構成する樹脂組成、すなわち有機−無機複合体を構成する樹脂組成は、例えば、接着性改質基材フィルムの塗布表面や、ハードコート層/基材フィルム界面を赤外分光などより分析することで特定することができる。
前記複合体は、基材フィルムとハードコート層との境界領域に存在する。境界領域とは、基材フィルムとハードコート層との界面近傍をいう。本発明のハードコートフィルムをTEMにより観察した場合、基材フィルムとハードコート層とが接してなる境界に、前記複合体が観察される。個々の前記複合体は、基材フィルムとハードコート層の両方に接して存在することが望ましい。
前記複合体は、基材フィルムとハードコート層との境界領域に点在している。複合体が点在しているというのは、本発明のハードコートフィルムをTEMにより観察した場合、複数の複合体が全部つながっているのではなく、離散的に存在していることを意味する。すなわち、無機粒子が樹脂組成物に囲まれてなる複合体が、個々独立的に存在しており、基材フィルムとハードコート層との間に複数の無機粒子が樹脂組成物により連続的につながった構造をしていない。連続的につながった構造とは、基材フィルムとハードコート層との境界に有機物が樹脂組成物層として認められる状態をいう。本発明では、倍率5万倍から20万倍の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した場合、ハードコートフィルムの基材フィルムとハードコート層との境界には、有機−無機複合体の構成成分であるポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる樹脂の樹脂組成物層が観察されないことが重要である。ここで、樹脂組成物層が観察されないとは、倍率5万倍から20万倍の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した場合、境界領域の樹脂の層の厚みが観察限界以下で、樹脂組成物層を設けない基材フィルムと同等に観察される状態をいい、具体的にはハードコート層と基材層との境界が10nm以下、好ましくは5nm以下であることをいう。これは、染色時のアーティファクトなどによりハードコート層と基材層との境界に染色剤の沈着が観察される場合があるためである。境界領域で隣接する2個の複合体間の距離については、特に限定しないが、100〜1000nmの距離を有することが望ましい。
この複合体の好適な製法として、上述のように、複合体を構成する樹脂と無機粒子とを含む塗布液を基材フィルム上にごく薄く塗布・乾燥し、しかる後に、ハードコート層を形成するための硬化型樹脂からなるハードコート剤を塗布・乾燥する方法が挙げられる。この製法によれば、複合体を構成する樹脂は、少なくとも部分的には、ハードコート層を形成するためのハードコート剤によって膨潤し、そしてハードコート層の樹脂と一体化する。その結果、上述の無機粒子が存在しない領域では塗布層はTEM観察によっても存在が見出せない程度にハードコート層の樹脂と一体化する。すなわち、倍率5万倍から20万倍の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した場合、境界領域の樹脂組成物層の厚みが観察限界以下である。
一方、上述の無機粒子の周囲には複合体を構成する樹脂が残存することになり、結果的に、基材フィルムとハードコート層との間に複合体が埋め込まれるような構造になる。従来技術では基材フィルムとハードコート層とを接着させるための独立した「層」を設けていたのに対して、本発明では発想を全く変えて、複合体を点在させることによって基材フィルムとハードコート層とを接着させた。このことによって、十分な接着性を維持しつつも干渉班を著しく低減することができる。さらに、本発明では基材フィルムとしてオリゴマー含有量の少ないフィルムを用いることにより、ハードコートフィルム加工時、および/もしくは、加工前後において、高温での加工を施した場合であっても色目の変化もなく、高い透明性を有するハードコートフィルムが得られる。
次に、本発明の接着性改質基材フィルムおよびハードコートフィルムについて、実施例と比較例を用いて説明するが、本発明は当然これらの実施例に限定されるものではない。また、実施例に記載した、接着性改質基材フィルム、ハードコートフィルムの物性や特性は下記の方法を用いて評価した。
(1)ハードコート層との接着性
両面テープを貼り付けた厚さ5mmのガラス板に、実施例及び比較例で得られたハードコート剤(A)を塗布したハードコートフィルムのハードコート層を表側とし、反対面を貼り付けた。次いで、ハードコート層を貫通して、基材フィルムに達する100個の升目状の切り傷を、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)を升目状の切り傷面に貼り付けた。貼り付け時に界面に残った空気を消しゴムで押して、完全に接着させた後、粘着テープを勢いよく垂直に引き剥がして下記の式から接着性を目視により求めた。なお、1個の升目内で部分的に剥がれているものも、剥がれた個数に含めた。
接着性(%)=(1−升目の剥がれた個数/100個)×100
接着性(%)が90〜100%を◎
接着性(%)が80〜89%を○
接着性(%)が0〜79%を×、とした。
(2)干渉斑(虹彩状色彩)の評価
実施例及び比較例で得られたハードコート剤(A)または(B)を塗布したハードコートフィルムを10cm×15cmの面積に切り出し、試料フィルムを作成した。得られた試料フィルムのハードコート層とは反対面に、黒色光沢テープを貼り合わせた。この試料フィルムのハードコート面を上面にして、3波長形昼白色蛍光灯(ナショナル パルック、F.L 15EX−N 15W)を光源として、斜め上方より反射光を目視で観察した。目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は該評価に精通した5名で行ない、最も多いランクを評価ランクとする。仮に、2つのランクで同数となった場合には、3つに分かれたランクの中心を採用した。例えば、○と△が各2名で×が1名の場合は△を、○が1名で△と×が各2名の場合には△を、○と×が各2名で△が1名の場合には△を、それぞれ採用する。
○:ハードコート剤(A)と(B)の両方とも、あらゆる角度からの観察でも虹彩状色彩が見られない。
△:ハードコート剤(A)と(B)のいずれか、もしくは両方で、ある角度によっては僅かに虹彩状色彩が見られる。
×:ハードコート剤(A)と(B)のいずれか、もしくは両方で、はっきりとした虹彩状色彩が観察される
(3)接着性改質層の塗布量
実施例及び比較例で得られた接着性改質基材フィルムから10cm×10cmの面積に切り出し、10枚の試料フィルムを作成した。試料フィルムの接着性改質層面をメチルエチルケトン/トルエン=1/1の混合有機溶剤を染み込ませた布で拭き取り、拭き取り前後の重量を精密天秤(島津製作所社製AUW120D)を用い、埃の影響を最小限にするために、クリーン度、クラス1000の環境下で測定した。測定した重量差から平方メートル当たりに換算し、塗布量(mg/m)を算出した。
なお、接着性改質層面をふき取るための有機溶剤は塗布層を除去できるものであればこれに限定されない。
また、塗布量の測定は、予め作成した検量線に基づき、蛍光X線装置を用いて測定してもよい。
(4)静摩擦係数(μs)及び動摩擦係数(μd)の差
実施例及び比較例で得られた接着性改質基材フィルムから8cm×5cmの面積に切り出し、試料フィルムを作成した。これを大きさ6cm×5cmの底面を有する重さ4.4kgの金属製直方体底面に接着性改質層面が外側になるように固定した。この時、試料フィルムの5cm幅方向と金属直方体の5cm幅方向を合わせ、試料フィルムの長手方向の一辺を折り曲げ、金属直方体の側面に粘着テープで固定した。
次いで、同じ接着性改質基材フィルムから20cm×10cmの面積に試料フィルムを切り出し、平らな金属板に接着性改質層面面を上にして長手方向端部を粘着テープで固定した。この上に試料フィルムを貼り付けた金属製直方体の測定面を接するように置き、引っ張りスピード200mm/分、23℃、65%RH条件下で静摩擦係数(μs)及び動摩擦係数(μd)を測定した。測定には東洋BALDWIN社製 RTM−100を用い、静摩擦係数(μs)及び動摩擦係数(μd)はJIS K−7125に準拠して算出し、その差(△μ=μd−μs)を求めた。
(5)突起の山スソの大きさの測定
実施例及び比較例で得られた接着性改質基材フィルムの接着性改質層表面をマイクロマップ社製非接触3次元形状測定装置TYPE550を用い、83.2×83.2μmの視野(測定範囲)の表面形状を以下の測定条件で測定した。
測定条件:waveモード
対物レンズ:50倍
次いで等高線表示モードにて、測定面が高さによって色分けされた画像を表示させた。この時、表面形状のうねりを除去するため面補正(4次関数補正)を行った。等高線表示モードでは、測定範囲内の平均高さを0nmとし、高さ最高値を100nm、高さ最低値を−100nmに設定し、高さ100nm以上の突起部分が赤色に表示されるように表示させ、1平方ミリ当たりの高さ100nm以上の表面突起の数を数えた。
次いで同一測定視野の断面プロファイル表示モードを表示させた。断面移動画面で、カーソルの両端をつまんで高さ100nm以上の表面突起の長尺方向に沿うように、かつ、カーソルが表面突起の最高高さ位置を通るように移動させた。プロット画面では、高さのスケールを表面突起全体が表示されるように調整した。断面プロファイル表示画面を図3のように高さ(+40nm〜−5nm)×幅(0mm〜0.05mm)となるよう表示し、断面プロファイルと測定範囲内の平均高さ線である高さ0nmの線とが交わった2箇所の交点間の距離を読み取り、山スソ部の最大径を測定した。前記測定を突起30点について繰り返し行い、その平均値を求めた。
尚、同等かそれ以上の機能を有する測定機であればレーザーを使用した非接触粗さ測定器であっても良い。
(6)ハードコート層の屈折率測定
JIS K 7142に基づき、アッベ屈折率計を用いて測定を行った。
(7)ハードコート層/基材フィルム界面の評価
実施例及び比較例で得られたハードコート剤(A)を塗布したハードコートフィルムの試料を可視光硬化型樹脂(日本電子データム社製、D−800)に包埋し、室温で可視光にさらして硬化させた。得られた包埋ブロックから、ダイアモンドナイフを装着したウルトラミクロトームを用いて70〜100nm程度の厚みの超薄切片を作製し、四酸化ルテニウム蒸気中で30分間染色した。この染色された超薄切片を、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、TEM2010)を用いて、ハードコート層の断面を観察し、独立した有機−無機複合体の有無を調べた。なお、写真の拡大倍率は、10,000〜100,000倍の範囲で適宜設定する。なお、本発明の実施例1では、拡大倍率を80,000倍(加速電圧200kv)とした。
(8)ガラス転移温度
JIS−K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、−100℃〜300℃の温度範囲にわたって10℃/minで昇温させ、DSC曲線から得られたガラス転移開始温度をガラス転移温度とした。
(9)ヘイズ変化量(△Hz)評価
接着性改質基材フィルムを50mm四方に切り出し、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」ヘーズ(曇価)に準拠して加熱前ヘイズを測定した。測定器には、日本電色工業社製NDH−300A型濁度計を用いた。測定後、フィルムを170℃に加熱したオーブン内にセットし、20分間経過後フィルムを取り出す。その加熱後フィルムを上記と同様の方法でヘイズを測定し、加熱後ヘイズを得る。この加熱前後ヘイズ差を△Hzとする。
△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ
(10)ポリエステル樹脂、接着性改質基材フィルムのオリゴマー含有量
ポリエステル樹脂、または接着性改質基材フィルムを0.1gに秤量し、1,1,1,3,3,3―ヘキサフルオロ―2―プロパノール/クロロホルム(2/3(容量比))の混合溶媒3mlに溶解する。得られた溶液にクロロホルム20mlを加えて均一に混合する。得られた混合液にメタノール10mlを加え、線状ポリエステルを再沈殿させる。次いで、この混合液を濾過し、沈殿物をクロロホルム/メタノール(2/1(容量比))の混合溶媒30mlで洗浄し、さらに濾過する。得られた濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固する。濃縮乾固物にジメチルホルムアミド10mlを加え、環状オリゴマー測定溶液とする。この測定溶液を横河電機(株)社製LC100型の高速液体クロマトグラフィーを使用して定量する。
(11)接着性改質基材フィルムのカラーb*値
接着性改質基材フィルムを50mm四方に切り出し、それぞれ10枚ずつ重ね合わせて、5セットのサンプルを作成した。測定器には、日本電色工業社製Color Meter ZE2000を用い、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」色、色差に準拠して反射モードにてカラーb*値を測定した。測定は5回行い、平均値を接着性改質基材フィルムのカラーb*値とした。
(実施例1)
(1)塗布液Aの調合
接着性改質層を得るための塗布液Aを以下の方法に従って調製した。
(共重合ポリエステル樹脂の合成)
ジメチルテレフタレート(95質量部)、ジメチルイソフタレート(95質量部)、エチレングリコール(35質量部)、ネオペンチルグリコール(145質量部)、酢酸亜鉛(0.1質量部)および三酸化アンチモン(0.1質量部)を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(6.0質量部)を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10〜0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量が19,500で、ガラス転移温度が62℃である共重合ポリエステル樹脂(A)を得た。
得られた共重合ポリエステル系樹脂300質量部とブチルセロソルブ140質量部を160℃で3時間撹拌し粘稠な溶融液を得、この溶融液に水を徐々に添加し1時間後に均一な淡白色の固形分濃度15%の水分散液を得た。
(ポリウレタン系樹脂の合成)
アジピン酸//1.6ーヘキサンジオール/ネオペンチルグリコール(モル比:4//2/3)の組成からなるポリエステルジオール(OHV:2000eq/ton)100質量部と、キシリレンジイソシアネートを41.4質量部混合し、窒素気流下、80〜90℃で1時間反応させた後、60℃まで冷却し、テトラヒドロフラン70質量部を加えて溶解し、ウレタンプレポリマー溶液(NCO/OH比:2.2、遊離イソシアネート基:3.30質量%)を得た。引き続き、前記のウレタンプレポリマー溶液を40℃にし、次いで、20質量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液を45.5質量部加えて激しく撹拌を行いつつ、40〜50℃で30分間反応させた。遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)の消失を確認した後、乳化水で希釈し、固形分20質量%の重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン系樹脂水溶液(B)を得た。ガラス転移温度は45℃であった。
(粒子の前処理)
水16.3質量部、イソプロピルアルコール11.6質量部の混合溶液に粒子Aとして平均粒径40nmの球状シリカの20質量%水分散液を0.16質量部、粒子Bとして平均粒径200nm(平均一次粒径40nm)の乾式法シリカの3.5質量部の水分散液を0.037質量部添加し、さらに固形分20質量%のポリウレタン系樹脂(B)0.8質量部を添加し、次いでこの分散液を30℃、1時間撹拌して粒子分散液を得た。この時、攪拌機としては粉体溶解機(T.K.ホモジェッターM型)を用い、分散条件は分散液10kgに対し回転数10000rpmとした。
(塗布液Aの調製)
得られた粒子分散液28.9質量部、共重合ポリエステル(A)の15質量%の水分散液を1.1質量部、水40質量部、イソプロピルアルコール30質量部、フッ素系ノニオン型界面活性剤の10質量%水溶液を0.02質量部、触媒(ジブチルチンラウレート)0.03質量部をそれぞれ混合した。が次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液Aを調製した。
(2)PET樹脂(M1)の製造
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部及びトリエチルアミンを0.16質量部添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kgf/cm、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水和物0.071質量部、次いでリン酸トリメチル0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部、次いで酢酸ナトリウム0.0036質量部を添加した。15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られたPET樹脂(M1)の固有粘度は0.616dl/gであり、オリゴマー含有量は0.97質量%であり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。
(3)PET樹脂(M2)の製造
PET樹脂(M1)と同様の方法を用い、重縮合反応時間を変更することで、固有粘度0.472dl/gのPET樹脂(M2)を得た。
(4)PET樹脂(M3)の製造
PET樹脂(M2)を予め160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、固有粘度0.632dl/g、オリゴマー含有量は0.26質量%のPET樹脂(M3)を得た。
(5)接着性改質基材フィルムの製造
PET樹脂(M1)、PET樹脂(M3)をそれぞれ135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、PET樹脂(M1)をA層の原料とし、PET樹脂(M3)をB層の原料として、2台の押出機に供給し、各々を285℃で溶融した。B層を最外層、A層を中間層として、2種3層(B/A/B)合流ブロックにて積層し口金よりシート状にして押し出し、キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。また、最外層(B層)の厚さの比率は全厚みに対して20%となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
得られた未延伸フィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。次いで、前記の塗布液Aを濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、ロールコート法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。
その後、乾燥炉にて135℃で5秒間乾燥させた。
引き続き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.3倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、接着性改質層の塗布量7mg/m、フィルム厚さ125μmの接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(6)ハードコートフィルムの作製
得られた接着性改質ポリエステルフィルムの接着性改質層面に下記ハードコート剤(A)または(B)をドライ厚みで3μmとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥させた。次いで、高圧水銀灯で1000mJ/cmの条件下で紫外線を照射し、樹脂を硬化させ、ハードコート層を形成させた。
(ハードコート剤(A))
紫外線硬化型アクリレートモノマー、酸化ジルコニウム超微粒子、メチルエチルケトンを主成分とする、有機/無機ハイブリッド系ハードコート剤(JSR株式会社製、デソライト Z7410B;固形分濃度:50質量%)。これより得られたハードコート層の屈折率は1.65であった。
(ハードコート剤(B))
二酸化チタン微粒子(石原産業(株)製、TTO−55B)、カルボン酸基含有モノマー(東亞合成(株)製、アロニクスM−5300)およびシクロヘキサノンを、サンドグラインダーミルにより分散し、重量平均粒子径が55nmの二酸化チタン微粒子の分散液を調製した。
前記の二酸化チタン微粒子の分散液に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、DPHA)と、光ラジカル重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア184;モノマーの合計量(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとアニオン性モノマーの合計量)に対し5質量%)とを混合し、ハードコート層の屈折率が1.60になるように調整した。
(実施例2)
実施例1で用いた共重合ポリエステル(A)の15質量%の水分散液の代わりに水分散性アクリル−スチレン共重合樹脂(日本触媒化学(株)社製のアクリセット270E)の15質量%の水分散液を用いた塗布液Bを用いた以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質層の塗布量7mg/m、フィルム厚さ125μmの接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(実施例3)
実施例2において、塗布液Bの塗布量を9mg/mに変更したこと以外は実施例2と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(実施例4)
実施例1において、塗布液Aの塗布量を3mg/mに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(実施例5)
実施例1において、塗布液Aの塗布量を12mg/mに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(実施例6)
粒子Aとして平均粒径65nmの球状シリカを用い、粒子Bを添加しなかった塗布液Cを用いた以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(実施例7)
ポリウレタン系樹脂(B)と粒子A,Bの分散液の撹拌時間を3時間とした塗布液Hを用いた以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(実施例8)
ポリウレタン系樹脂(B)0.8質量部の代わりにガラス転移点35℃のポリウレタン系樹脂(タケラックW−511(三井タケダケミカル社製))0.4質量部を用いて調整した塗布液Iを用いた以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(実施例9)
ポリウレタン系樹脂(B)と粒子A,Bの分散液の撹拌時間を0.5時間とした塗布液Jを用いた以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(実施例10)
実施例1において、最外層(B層)の厚さの比率を全厚みに対して40%となるように各押し出し機の吐出量を調整する以外は、実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(比較例1)
実施例1において、塗布液Aを塗布しない、つまり接着性改質層を形成させなかったこと以外は実施例1と同様の方法で接着性改質ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは摩擦抵抗が大きく、摩擦係数は測定できなかった。
(比較例2)
接着性改質層を得るための塗布液を下記に示す塗布液Dとし、塗布量を100mg/mとした以外は実施例1と同様の方法で接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(接着性改質塗布液Dの調合)
実施例1で得られた共重合ポリエステル(A)を固形分濃度30質量%とした以外は実施例1と同様にして得た共重合ポリエステル(A)の水分散液を7.5質量部と固形分濃度20質量%のポリウレタン系樹脂(B)水溶液を11.3質量部、触媒としてジブチルチンラウレートを0.02質量部、水を37.9質量部およびイソプロピルアルコールを39.6質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤の10質量%水溶液を0.3質量部、粒子Aとして平均粒径40nmのコロイダルシリカの20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして平均粒径200nm(平均一次粒径40nm)の乾式法シリカの3.5質量%水分散液を0.5質量部添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液Dを調整した。
(比較例3)
接着性改質層を得るための塗布液を下記に示す塗布液Eとした、すなわち粒子添加時の前処理を行わなかった以外は実施例1と同様の方法で塗布量を7mg/mの接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(接着性改質塗布液Eの調合)
得られた共重合ポリエステル(A)の15質量%の水分散液を1.1質量部、固形分濃度20質量%のポリウレタン系樹脂(B)を0.8質量部、触媒としてジブチルチンラウレートを0.02質量部、水を56.3質量部およびイソプロピルアルコールを41.6質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤の10質量%水溶液を0.02質量部、粒子Aとして平均粒径40nmの球状シリカの20質量%水分散液を0.16質量部、粒子Bとして平均粒径200nm(平均一次粒径40nm)の乾式法シリカの3.5質量部の水分散液を0.037質量部添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液Eを調整した。
(比較例4)
接着性改質層を得るための塗布液を下記に示す塗布液Fとした以外は実施例1と同様の方法で塗布量を7mg/mの接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(接着性改質塗布液Fの調合)
実施例1で得られた共重合ポリエステル樹脂(A)の30質量%水分散液を22.9質量部、メチル化メラミン系架橋剤(住友化学社製、スミマールM−100)の固形分20質量%の水分散液を2.3質量部、水を39.7質量部、およびイソプロピルアルコールを37.5質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとして平均粒径40nmの球状シリカの20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして平均粒径200nm(平均一次粒径40nm)の乾式法シリカの3.5質量部の水分散液を0.5質量部添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液Fを調整した。
(比較例5)
接着性改質層を得るための塗布液を下記に示す塗布液G、すなわち粒子を含有しない塗布液とした以外は実施例1と同様の方法で塗布量を15mg/mの接着性改質ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは摩擦抵抗が大きく、摩擦係数は測定できなかった。
(接着性改質塗布液Gの調合)
実施例1で得られた共重合ポリエステル樹脂(A)の30質量%水分散液を22.9質量部、メチル化メラミン系架橋剤(住友化学社製、スミマールM−100)の固形分20質量%の水分散液を2.3質量部、水を42.0質量部、およびイソプロピルアルコールを38.0質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液Gを調整した。
(比較例6)
実施例1において、B層の原料をPET樹脂(M1)とし、1種3層構成にすること以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
(比較例7)
実施例1において、B層の原料をPET樹脂(M3)とし、1種3層構成にすること以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
本発明の接着性改質基材フィルムは、高温加工においても高い透明性を有し、粉落ちにより工程汚染も少なく、ハードコート層を積層したときに、実用的な密着性を維持しながら、特に三波長蛍光灯下においても干渉斑が少ない為、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ITO、有機ELディスプレイなどのディスプレイ用途の部材として視認性の向上の点から有用である。
非接触三次元形状測定装置によって得られた1視野における接着性改質層表面の高さ100nm以上の表面突起の等高線表示モード。 非接触三次元形状測定装置によって得られた接着性改質層表面の高さ100nm以上の表面突起の断面プロファイル(表面突起全体像)。 接着性改質層表面の高さ100nm以上の表面突起の山スソの最大径を計測する際の断面プロファイルと平均高さとの関係。

Claims (6)

  1. 粒子が実質的に存在しないポリエステルフィルムからなる基材フィルムの少なくとも片面に接着性改質層が積層される接着性改質基材フィルムであって、
    前記基材フィルムは3層以上の積層ポリエステルフィルムからなり、最外層のみ固相重合されたポリエステルを含み、
    前記接着性改質層はポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂、ならびに無機粒子を含有し、
    前記接着性改質層の塗布量が3〜12mg/mであり、
    前記接着性改質層表面の高さ100nm以上の表面突起の山スソ部の最大径平均値が10μm以上であり、
    前記接着性改質基材フィルムを170℃で20分間熱処理したときのフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)が1.5%未満である、
    接着性改質基材フィルム。
  2. 前記接着性改質層の塗布液調合段階において、予め前記樹脂により前記無機粒子を被覆する前処理を行うものであり、前記表面突起が前記樹脂と前記無機粒子により形成されたものである、請求項1に記載の接着性改質基材フィルム。
  3. 記基材フィルム中のオリゴマー含有量が0.60質量%以上、0.90質量%以下である、請求項1または2のいずれかに記載の接着性改質基材フィルム。
  4. 前記接着性改質層が共重合ポリエステルとポリウレタンと無機粒子とを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の接着性改質基材フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の接着性改質基材フィルムの前記接着性改質層面に未硬化の硬化型樹脂を塗布することによりハードコート層を積層したときに、前記ハードコート層が前記基材フィルムに直接積層され、前記基材フィルムと前記ハードコート層との境界領域に点在する有機−無機複合体を有するハードコートフィルム。
  6. 前記ハードコート層の屈折率が1.60から1.65である請求項5に記載のハードコートフィルム。
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