JP5380897B2 - 接着性改質基材フィルムおよびハードコートフィルム - Google Patents
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Description
すなわち、本発明では前記干渉斑低減のために特定の樹脂を極限まで薄く塗布し、且つ、塗布厚が小さいことによる粒子の保持力低下を抑制して、将来のさらなる高速加工化に向け、安定した摩擦係数が得られる接着性改質基材フィルムの提供を目指したものである。
さらに、加工により熱履歴を施しても高い透明性が得られる接着性改質基材フィルムの提供を目指したものである。
(1)粒子が実質的に存在しないポリエステルフィルムからなる基材フィルムの少なくとも片面に接着性改質層が積層される接着性改質基材フィルムであって、前記接着性改質層はポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂、ならびに無機粒子を含有し、前記接着性改質層の塗布量が3〜12mg/m2であり、前記接着性改質層表面の高さ100nm以上の表面突起の山スソ部の最大径平均値が10μm以上であり、前記接着性改質基材フィルムを170℃で20分間熱処理したときのフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)が1.5%未満である、接着性改質基材フィルム。
(2)前記接着性改質層面どうしの静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μd)の差(△μ)が0.20以下である、前記接着性改質基材フィルム。
(3)前記基材フィルムが3層以上の積層ポリエステルフィルムからなり、前記基材フィルム中のオリゴマー含有量が0.60質量%以上、0.90質量%以下である、前記接着性改質基材フィルム。
(4)前記接着性改質層が共重合ポリエステルとポリウレタンと無機粒子とを含む、前記接着性改質基材フィルム。
(5)前記接着性改質基材フィルムの前記接着性改質層面に未硬化の硬化型樹脂を塗布することによりハードコート層を積層したときに、前記ハードコート層が前記基材フィルムに直接積層され、前記基材フィルムと前記ハードコート層との境界領域に点在する有機−無機複合体を有するハードコートフィルム。
(6)前記ハードコート層の屈折率が1.60から1.65である請求項5に記載のハードコートフィルム。
(7)基材フィルムの表面上に直接積層されたハードコート層、ならびに、基材フィルムとハードコート層との境界領域に点在する有機−無機複合体を有するハードコートフィルムであって、基材フィルムは、170℃で20分間熱処理した時のフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)が1.5未満であることを特徴とするポリエステルフィルムからなり、有機−無機複合体は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種の中に無機粒子が埋め込まれた構造をもち、ハードコート層の屈折率が1.60〜1.65であることを特徴とするハードコートフィルム。
よって、好ましい実施態様としては、ハードコート層を形成させるための未硬化の硬化樹脂を積層した場合、未硬化の硬化樹脂と接着性改質層に含まれていた樹脂が混ざり合い、基本的には基材フィルムとハードコート層が直接的に積層されるようになる程度に一体化する。
また、好ましい実施態様としては、後加工における高速加工時においても、工程汚染が少なく、換言すれば該脱落物による欠点が少ないハードコート用接着性改質基材フィルムを得ることができる。
さらに、好ましい実施態様としては、ハードコート処理加工、及びその前後の加工処理において、加温処理が施されても、高い透明性と優れた干渉斑低減がえられ、かつ高い接着性を有するハードコートフィルムを得ることができる。
本発明で用いる基材フィルムの厚さは、特に制限しないが、30〜300μmの範囲で、使用する用途の規格に応じて任意に決めることができる。基材フィルムの厚みの上限は、250μmが好ましく、特に好ましくは200μmである。一方、フィルム厚みの下限は、50μmが好ましく、さらに好ましくは75μmであり、特に好ましくは100μmである。フィルム厚みが30μm未満では、剛性や機械的強度が不十分となりやすい。一方、フィルム厚みが300μmを超えると、フィルム中に存在する異物の絶対量が増加するため、光学欠点となる頻度が高くなる。また、フィルムを所定の幅に切断する際のスリット性も悪化し、製造コストが高くなる。さらに、剛性が強くなるため、長尺のフィルムをロール状に巻き取ることが困難になりやすい。
本発明の接着性改質基材フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に接着性改質層を積層してなる。本発明の接着性改質層は、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂、ならびに無機粒子を含有する。本発明の接着性改質層を構成するポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂は、基材フィルムおよびハードコート層の両方に対して接着性を有し、ハードコート剤に含まれる有機溶剤に適度に膨潤する。上述の樹脂は単独で用いてもよいし、異なる2種の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂とウレタン樹脂、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂、あるいはウレタン樹脂とアクリル樹脂を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、塗布法を用いる場合、塗布液に用いる材料は、樹脂及び分散媒あるいは溶媒である。本発明において、塗布液は、水性であることが好ましい。また、本発明では、樹脂成分以外に、無機粒子を併用する。さらに、界面活性剤を併用することが好ましく、必要に応じて、及び界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機潤滑剤、抗菌剤、光酸化触媒などの添加剤を用いることができる。
本発明において、複合体を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂、特に共重合ポリエステル(PEs)とポリウレタン系樹脂、特にポリウレタン(PU)を用いるのが接着性の観点から好ましい。この場合、塗布液中の共重合ポリエステル(PEs)とポリウレタン(PU)の固形分基準の質量比は、(PEs)/(PU)=70/30〜30/70が好ましく、特に好ましくは60/40〜40/60である。なお、複合体の樹脂は、前記の共重合ポリエステルとポリウレタン以外の第3の樹脂を併用することもできる。また、架橋剤を併用してもかまわない。
例えば、複合体にポリエステル系樹脂として共重合ポリエステルを用いる場合、芳香族ジカルボン酸成分と、グリコール成分としてエチレングリコールと分岐状グリコールを構成成分とすることが好ましい。前記の分岐状グリコールとは、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、及び2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
ポリウレタン系樹脂として複合体が含み得るポリウレタンは、熱反応型ポリウレタン樹脂が好ましく、例えば、末端イソシアネート基を活性水素基で封鎖(以下ブロックと言う)した、水溶性または水分散性ポリウレタンなどが挙げられる。
複合体にアクリル系樹脂を用いる場合の水分散性または水溶性のアクリル樹脂とは、例えば、アクリレートおよび/またはメタクリレート樹脂、あるいは、これらと、スチレンなどの不飽和二重結合を有する、アクリル樹脂と共重合可能な脂肪族化合物または芳香族化合物との共重合体が挙げられる。ハードコート層に対する接着性の優れた接着性改質層として親水性に優れたアクリル−スチレン共重合樹脂として、乳化重合による水分散性アクリル−スチレンランダム共重合樹脂が最も好ましい。
本発明においては、溶媒とは、樹脂を溶解する液だけではなく、樹脂を粒子状に分散させるために用いる分散媒も広義的に含むものである。本発明を実施するためには、有機溶媒、水性溶媒等の各種溶媒を用いることができる。
前記の水性塗布液を熱可塑性樹脂フィルム(基材フィルム)の表面に塗布する際には、該フィルムへの濡れ性を向上させ、塗布液を均一に塗布するために一般に界面活性剤が使用することが好ましい。
透明性が高度に要求される光学機能性フィルムとしてハードコートフィルムや該フィルムを使用する際は、基材フィルムのヘイズは1.5%以下であることが好ましい。ヘイズが1.5%を超えると、フィルムをディスプレイ部材等に用いた場合、画面の鮮明度が低下するので好ましくない。
粒子を電子顕微鏡で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径を測定し、その平均値を平均一次粒径または平均粒径とする。また、接着性改質基材フィルムの接着性改質層中の粒子の平均粒径を求める場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率12万倍で接着性改質基材フィルムの断面を撮影し、複合体の粒子の最大径を求めることができる。凝集体からなる粒子の平均粒径は、接着性改質基材フィルムの接着性改質層の断面を、光学顕微鏡を用いて倍率200倍で300〜500個撮影し、その最大径を測定する。
携帯電話、PDA、モバイル型コンピュータのように、情報端末を屋外で使用する機会が増えている。さらに、カーナビゲーションなどに用いられるタッチパネルのように、夏場に高温になる車内で使用される材料も増えている。したがって、このような高温、高湿の過酷な環境下でも品質変化が少ないハードコートフィルム、すなわち、耐湿熱接着性に優れたフィルムが、このような用途では要望されている。
前記の水性塗布液を塗布する工程は、該フィルムの製造工程中に塗布するインラインコート法が好ましい。さらに好ましくは、結晶配向が完了する前の基材フィルムに塗布する。水性塗布液中の固形分濃度は、2質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは1質量%以下である。固形分濃度の下限は0.1質量%が好ましく、さらに好ましくは0.3質量%である。該水性塗布液が塗布されたフィルムは、配向および熱固定のためにテンターに導かれ、そこで加熱されて、熱架橋反応により安定な被膜を形成し、接着性改質基材フィルムとなる。
(a)ハードコート層
ハードコート層を構成する硬化型樹脂としては、電離放射線硬化型樹脂が好ましい。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、下記の樹脂が挙げられる。
(a)ハードコート層とは反対面に、ハードコート層、光拡散層、プリズム状レンズ層、電磁波吸収層、近赤外線遮断層、透明導電層から選択される、少なくとも1層の光学機能層を積層した光学機能性フィルム。
(b)ハードコート層の上に、反射防止層または防汚層を積層した光学機能性フィルム。
本発明の接着性改質基材フィルムの接着性改質層表面上にハードコート層を積層した際、ハードコート層は基材フィルムに直接積層され、基材フィルムとハードコート層との境界領域には有機−無機複合体(以下、単に「複合体」とも表記する。)が点在する。有機−無機複合体は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種の中に無機粒子が埋め込まれた構造をもつ。
両面テープを貼り付けた厚さ5mmのガラス板に、実施例及び比較例で得られたハードコート剤(A)を塗布したハードコートフィルムのハードコート層を表側とし、反対面を貼り付けた。次いで、ハードコート層を貫通して、基材フィルムに達する100個の升目状の切り傷を、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)を升目状の切り傷面に貼り付けた。貼り付け時に界面に残った空気を消しゴムで押して、完全に接着させた後、粘着テープを勢いよく垂直に引き剥がして下記の式から接着性を目視により求めた。なお、1個の升目内で部分的に剥がれているものも、剥がれた個数に含めた。
接着性(%)=(1−升目の剥がれた個数/100個)×100
接着性(%)が90〜100%を◎
接着性(%)が80〜89%を○
接着性(%)が0〜79%を×、とした。
実施例及び比較例で得られたハードコート剤(A)または(B)を塗布したハードコートフィルムを10cm×15cmの面積に切り出し、試料フィルムを作成した。得られた試料フィルムのハードコート層とは反対面に、黒色光沢テープを貼り合わせた。この試料フィルムのハードコート面を上面にして、3波長形昼白色蛍光灯(ナショナル パルック、F.L 15EX−N 15W)を光源として、斜め上方より反射光を目視で観察した。目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は該評価に精通した5名で行ない、最も多いランクを評価ランクとする。仮に、2つのランクで同数となった場合には、3つに分かれたランクの中心を採用した。例えば、○と△が各2名で×が1名の場合は△を、○が1名で△と×が各2名の場合には△を、○と×が各2名で△が1名の場合には△を、それぞれ採用する。
○:ハードコート剤(A)と(B)の両方とも、あらゆる角度からの観察でも虹彩状色彩が見られない。
△:ハードコート剤(A)と(B)のいずれか、もしくは両方で、ある角度によっては僅かに虹彩状色彩が見られる。
×:ハードコート剤(A)と(B)のいずれか、もしくは両方で、はっきりとした虹彩状色彩が観察される
実施例及び比較例で得られた接着性改質基材フィルムから10cm×10cmの面積に切り出し、10枚の試料フィルムを作成した。試料フィルムの接着性改質層面をメチルエチルケトン/トルエン=1/1の混合有機溶剤を染み込ませた布で拭き取り、拭き取り前後の重量を精密天秤(島津製作所社製AUW120D)を用い、埃の影響を最小限にするために、クリーン度、クラス1000の環境下で測定した。測定した重量差から平方メートル当たりに換算し、塗布量(mg/m2)を算出した。
なお、接着性改質層面をふき取るための有機溶剤は塗布層を除去できるものであればこれに限定されない。
また、塗布量の測定は、予め作成した検量線に基づき、蛍光X線装置を用いて測定してもよい。
実施例及び比較例で得られた接着性改質基材フィルムから8cm×5cmの面積に切り出し、試料フィルムを作成した。これを大きさ6cm×5cmの底面を有する重さ4.4kgの金属製直方体底面に接着性改質層面が外側になるように固定した。この時、試料フィルムの5cm幅方向と金属直方体の5cm幅方向を合わせ、試料フィルムの長手方向の一辺を折り曲げ、金属直方体の側面に粘着テープで固定した。
次いで、同じ接着性改質基材フィルムから20cm×10cmの面積に試料フィルムを切り出し、平らな金属板に接着性改質層面面を上にして長手方向端部を粘着テープで固定した。この上に試料フィルムを貼り付けた金属製直方体の測定面を接するように置き、引っ張りスピード200mm/分、23℃、65%RH条件下で静摩擦係数(μs)及び動摩擦係数(μd)を測定した。測定には東洋BALDWIN社製 RTM−100を用い、静摩擦係数(μs)及び動摩擦係数(μd)はJIS K−7125に準拠して算出し、その差(△μ=μd−μs)を求めた。
実施例及び比較例で得られた接着性改質基材フィルムの接着性改質層表面をマイクロマップ社製非接触3次元形状測定装置TYPE550を用い、83.2×83.2μmの視野(測定範囲)の表面形状を以下の測定条件で測定した。
測定条件:waveモード
対物レンズ:50倍
次いで等高線表示モードにて、測定面が高さによって色分けされた画像を表示させた。この時、表面形状のうねりを除去するため面補正(4次関数補正)を行った。等高線表示モードでは、測定範囲内の平均高さを0nmとし、高さ最高値を100nm、高さ最低値を−100nmに設定し、高さ100nm以上の突起部分が赤色に表示されるように表示させ、1平方ミリ当たりの高さ100nm以上の表面突起の数を数えた。
尚、同等かそれ以上の機能を有する測定機であればレーザーを使用した非接触粗さ測定器であっても良い。
JIS K 7142に基づき、アッベ屈折率計を用いて測定を行った。
実施例及び比較例で得られたハードコート剤(A)を塗布したハードコートフィルムの試料を可視光硬化型樹脂(日本電子データム社製、D−800)に包埋し、室温で可視光にさらして硬化させた。得られた包埋ブロックから、ダイアモンドナイフを装着したウルトラミクロトームを用いて70〜100nm程度の厚みの超薄切片を作製し、四酸化ルテニウム蒸気中で30分間染色した。この染色された超薄切片を、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、TEM2010)を用いて、ハードコート層の断面を観察し、独立した有機−無機複合体の有無を調べた。なお、写真の拡大倍率は、10,000〜100,000倍の範囲で適宜設定する。なお、本発明の実施例1では、拡大倍率を80,000倍(加速電圧200kv)とした。
JIS−K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、−100℃〜300℃の温度範囲にわたって10℃/minで昇温させ、DSC曲線から得られたガラス転移開始温度をガラス転移温度とした。
接着性改質基材フィルムを50mm四方に切り出し、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」ヘーズ(曇価)に準拠して加熱前ヘイズを測定した。測定器には、日本電色工業社製NDH−300A型濁度計を用いた。測定後、フィルムを170℃に加熱したオーブン内にセットし、20分間経過後フィルムを取り出す。その加熱後フィルムを上記と同様の方法でヘイズを測定し、加熱後ヘイズを得る。この加熱前後ヘイズ差を△Hzとする。
△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ
ポリエステル樹脂、または接着性改質基材フィルムを0.1gに秤量し、1,1,1,3,3,3―ヘキサフルオロ―2―プロパノール/クロロホルム(2/3(容量比))の混合溶媒3mlに溶解する。得られた溶液にクロロホルム20mlを加えて均一に混合する。得られた混合液にメタノール10mlを加え、線状ポリエステルを再沈殿させる。次いで、この混合液を濾過し、沈殿物をクロロホルム/メタノール(2/1(容量比))の混合溶媒30mlで洗浄し、さらに濾過する。得られた濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固する。濃縮乾固物にジメチルホルムアミド10mlを加え、環状オリゴマー測定溶液とする。この測定溶液を横河電機(株)社製LC100型の高速液体クロマトグラフィーを使用して定量する。
接着性改質基材フィルムを50mm四方に切り出し、それぞれ10枚ずつ重ね合わせて、5セットのサンプルを作成した。測定器には、日本電色工業社製Color Meter ZE2000を用い、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」色、色差に準拠して反射モードにてカラーb*値を測定した。測定は5回行い、平均値を接着性改質基材フィルムのカラーb*値とした。
(1)塗布液Aの調合
接着性改質層を得るための塗布液Aを以下の方法に従って調製した。
(共重合ポリエステル樹脂の合成)
ジメチルテレフタレート(95質量部)、ジメチルイソフタレート(95質量部)、エチレングリコール(35質量部)、ネオペンチルグリコール(145質量部)、酢酸亜鉛(0.1質量部)および三酸化アンチモン(0.1質量部)を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(6.0質量部)を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10〜0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量が19,500で、ガラス転移温度が62℃である共重合ポリエステル樹脂(A)を得た。
得られた共重合ポリエステル系樹脂300質量部とブチルセロソルブ140質量部を160℃で3時間撹拌し粘稠な溶融液を得、この溶融液に水を徐々に添加し1時間後に均一な淡白色の固形分濃度15%の水分散液を得た。
アジピン酸//1.6ーヘキサンジオール/ネオペンチルグリコール(モル比:4//2/3)の組成からなるポリエステルジオール(OHV:2000eq/ton)100質量部と、キシリレンジイソシアネートを41.4質量部混合し、窒素気流下、80〜90℃で1時間反応させた後、60℃まで冷却し、テトラヒドロフラン70質量部を加えて溶解し、ウレタンプレポリマー溶液(NCO/OH比:2.2、遊離イソシアネート基:3.30質量%)を得た。引き続き、前記のウレタンプレポリマー溶液を40℃にし、次いで、20質量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液を45.5質量部加えて激しく撹拌を行いつつ、40〜50℃で30分間反応させた。遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)の消失を確認した後、乳化水で希釈し、固形分20質量%の重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン系樹脂水溶液(B)を得た。ガラス転移温度は45℃であった。
水16.3質量部、イソプロピルアルコール11.6質量部の混合溶液に粒子Aとして平均粒径40nmの球状シリカの20質量%水分散液を0.16質量部、粒子Bとして平均粒径200nm(平均一次粒径40nm)の乾式法シリカの3.5質量部の水分散液を0.037質量部添加し、さらに固形分20質量%のポリウレタン系樹脂(B)0.8質量部を添加し、次いでこの分散液を30℃、1時間撹拌して粒子分散液を得た。この時、攪拌機としては粉体溶解機(T.K.ホモジェッターM型)を用い、分散条件は分散液10kgに対し回転数10000rpmとした。
得られた粒子分散液28.9質量部、共重合ポリエステル(A)の15質量%の水分散液を1.1質量部、水40質量部、イソプロピルアルコール30質量部、フッ素系ノニオン型界面活性剤の10質量%水溶液を0.02質量部、触媒(ジブチルチンラウレート)0.03質量部をそれぞれ混合した。が次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液Aを調製した。
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部及びトリエチルアミンを0.16質量部添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kgf/cm2、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水和物0.071質量部、次いでリン酸トリメチル0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部、次いで酢酸ナトリウム0.0036質量部を添加した。15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。
PET樹脂(M1)と同様の方法を用い、重縮合反応時間を変更することで、固有粘度0.472dl/gのPET樹脂(M2)を得た。
PET樹脂(M2)を予め160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、固有粘度0.632dl/g、オリゴマー含有量は0.26質量%のPET樹脂(M3)を得た。
PET樹脂(M1)、PET樹脂(M3)をそれぞれ135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、PET樹脂(M1)をA層の原料とし、PET樹脂(M3)をB層の原料として、2台の押出機に供給し、各々を285℃で溶融した。B層を最外層、A層を中間層として、2種3層(B/A/B)合流ブロックにて積層し口金よりシート状にして押し出し、キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。また、最外層(B層)の厚さの比率は全厚みに対して20%となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
得られた接着性改質ポリエステルフィルムの接着性改質層面に下記ハードコート剤(A)または(B)をドライ厚みで3μmとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥させた。次いで、高圧水銀灯で1000mJ/cm2の条件下で紫外線を照射し、樹脂を硬化させ、ハードコート層を形成させた。
紫外線硬化型アクリレートモノマー、酸化ジルコニウム超微粒子、メチルエチルケトンを主成分とする、有機/無機ハイブリッド系ハードコート剤(JSR株式会社製、デソライト Z7410B;固形分濃度:50質量%)。これより得られたハードコート層の屈折率は1.65であった。
二酸化チタン微粒子(石原産業(株)製、TTO−55B)、カルボン酸基含有モノマー(東亞合成(株)製、アロニクスM−5300)およびシクロヘキサノンを、サンドグラインダーミルにより分散し、重量平均粒子径が55nmの二酸化チタン微粒子の分散液を調製した。
前記の二酸化チタン微粒子の分散液に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、DPHA)と、光ラジカル重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア184;モノマーの合計量(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとアニオン性モノマーの合計量)に対し5質量%)とを混合し、ハードコート層の屈折率が1.60になるように調整した。
実施例1で用いた共重合ポリエステル(A)の15質量%の水分散液の代わりに水分散性アクリル−スチレン共重合樹脂(日本触媒化学(株)社製のアクリセット270E)の15質量%の水分散液を用いた塗布液Bを用いた以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質層の塗布量7mg/m2、フィルム厚さ125μmの接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
実施例2において、塗布液Bの塗布量を9mg/m2に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
実施例1において、塗布液Aの塗布量を3mg/m2に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
実施例1において、塗布液Aの塗布量を12mg/m2に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
粒子Aとして平均粒径65nmの球状シリカを用い、粒子Bを添加しなかった塗布液Cを用いた以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
ポリウレタン系樹脂(B)と粒子A,Bの分散液の撹拌時間を3時間とした塗布液Hを用いた以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
ポリウレタン系樹脂(B)0.8質量部の代わりにガラス転移点35℃のポリウレタン系樹脂(タケラックW−511(三井タケダケミカル社製))0.4質量部を用いて調整した塗布液Iを用いた以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
ポリウレタン系樹脂(B)と粒子A,Bの分散液の撹拌時間を0.5時間とした塗布液Jを用いた以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
実施例1において、最外層(B層)の厚さの比率を全厚みに対して40%となるように各押し出し機の吐出量を調整する以外は、実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
実施例1において、塗布液Aを塗布しない、つまり接着性改質層を形成させなかったこと以外は実施例1と同様の方法で接着性改質ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは摩擦抵抗が大きく、摩擦係数は測定できなかった。
接着性改質層を得るための塗布液を下記に示す塗布液Dとし、塗布量を100mg/m2とした以外は実施例1と同様の方法で接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
実施例1で得られた共重合ポリエステル(A)を固形分濃度30質量%とした以外は実施例1と同様にして得た共重合ポリエステル(A)の水分散液を7.5質量部と固形分濃度20質量%のポリウレタン系樹脂(B)水溶液を11.3質量部、触媒としてジブチルチンラウレートを0.02質量部、水を37.9質量部およびイソプロピルアルコールを39.6質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤の10質量%水溶液を0.3質量部、粒子Aとして平均粒径40nmのコロイダルシリカの20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして平均粒径200nm(平均一次粒径40nm)の乾式法シリカの3.5質量%水分散液を0.5質量部添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液Dを調整した。
接着性改質層を得るための塗布液を下記に示す塗布液Eとした、すなわち粒子添加時の前処理を行わなかった以外は実施例1と同様の方法で塗布量を7mg/m2の接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
得られた共重合ポリエステル(A)の15質量%の水分散液を1.1質量部、固形分濃度20質量%のポリウレタン系樹脂(B)を0.8質量部、触媒としてジブチルチンラウレートを0.02質量部、水を56.3質量部およびイソプロピルアルコールを41.6質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤の10質量%水溶液を0.02質量部、粒子Aとして平均粒径40nmの球状シリカの20質量%水分散液を0.16質量部、粒子Bとして平均粒径200nm(平均一次粒径40nm)の乾式法シリカの3.5質量部の水分散液を0.037質量部添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液Eを調整した。
接着性改質層を得るための塗布液を下記に示す塗布液Fとした以外は実施例1と同様の方法で塗布量を7mg/m2の接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
実施例1で得られた共重合ポリエステル樹脂(A)の30質量%水分散液を22.9質量部、メチル化メラミン系架橋剤(住友化学社製、スミマールM−100)の固形分20質量%の水分散液を2.3質量部、水を39.7質量部、およびイソプロピルアルコールを37.5質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子Aとして平均粒径40nmの球状シリカの20質量%水分散液を2.3質量部、粒子Bとして平均粒径200nm(平均一次粒径40nm)の乾式法シリカの3.5質量部の水分散液を0.5質量部添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液Fを調整した。
接着性改質層を得るための塗布液を下記に示す塗布液G、すなわち粒子を含有しない塗布液とした以外は実施例1と同様の方法で塗布量を15mg/m2の接着性改質ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは摩擦抵抗が大きく、摩擦係数は測定できなかった。
実施例1で得られた共重合ポリエステル樹脂(A)の30質量%水分散液を22.9質量部、メチル化メラミン系架橋剤(住友化学社製、スミマールM−100)の固形分20質量%の水分散液を2.3質量部、水を42.0質量部、およびイソプロピルアルコールを38.0質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液Gを調整した。
実施例1において、B層の原料をPET樹脂(M1)とし、1種3層構成にすること以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
実施例1において、B層の原料をPET樹脂(M3)とし、1種3層構成にすること以外は実施例1と同様の方法で、接着性改質ポリエステルフィルムを得た。
Claims (6)
- 粒子が実質的に存在しないポリエステルフィルムからなる基材フィルムの少なくとも片面に接着性改質層が積層される接着性改質基材フィルムであって、
前記基材フィルムは3層以上の積層ポリエステルフィルムからなり、最外層のみ固相重合されたポリエステルを含み、
前記接着性改質層はポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂、ならびに無機粒子を含有し、
前記接着性改質層の塗布量が3〜12mg/m2であり、
前記接着性改質層表面の高さ100nm以上の表面突起の山スソ部の最大径平均値が10μm以上であり、
前記接着性改質基材フィルムを170℃で20分間熱処理したときのフィルムヘイズ変化量△Hz(△Hz=加熱後ヘイズ−加熱前ヘイズ)が1.5%未満である、
接着性改質基材フィルム。 - 前記接着性改質層の塗布液調合段階において、予め前記樹脂により前記無機粒子を被覆する前処理を行うものであり、前記表面突起が前記樹脂と前記無機粒子により形成されたものである、請求項1に記載の接着性改質基材フィルム。
- 前記基材フィルム中のオリゴマー含有量が0.60質量%以上、0.90質量%以下である、請求項1または2のいずれかに記載の接着性改質基材フィルム。
- 前記接着性改質層が共重合ポリエステルとポリウレタンと無機粒子とを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の接着性改質基材フィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の接着性改質基材フィルムの前記接着性改質層面に未硬化の硬化型樹脂を塗布することによりハードコート層を積層したときに、前記ハードコート層が前記基材フィルムに直接積層され、前記基材フィルムと前記ハードコート層との境界領域に点在する有機−無機複合体を有するハードコートフィルム。
- 前記ハードコート層の屈折率が1.60から1.65である請求項5に記載のハードコートフィルム。
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