JP6536116B2 - 複層フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複層フィルムの製造方法に関する。
2層以上の層を備える複層フィルムは、塗布法を用いた製造方法によって製造されることがある。塗布法を用いた製造方法では、通常、基材フィルム上に適切な塗布液を塗布して塗布液の層を形成し、必要に応じて前記塗布液の層を硬化させて、複層フィルムを製造する。塗布法を用いた複層フィルムの製造方法については、特許文献1〜3の記載のように、従来から様々な提案がなされている。
特開2005−279339号公報 特開平08−156091号公報 特開2001−113216号公報
塗布法においては、塗布液を均一に塗布できずに塗布ムラが生じると、複層フィルムの特性が低下することがある。そのため、塗布法においては、一般に、塗布液の塗布量を均一にすることが求められる。中でも、光学フィルムとして用いられる複層フィルムにおいては、塗布液の塗布量を特に均一にすることが求められる。
前記のような事情により、従来から、塗布液の塗布量を均一にして塗布ムラを抑制する技術が検討されてきた。しかし、近年では、要求品質の高まりに伴って、従来よりも高い水準で塗布ムラを抑制することが求められており、中でも光学フィルムとして用いるための複層フィルムにおいては、その要求水準は特に高くなっている。
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、塗布ムラを抑制しながら複層フィルムを製造できる、新たな製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、塗布液を塗布する際の基材フィルムの傾きを特定の範囲に収めることにより、塗布ムラを抑制できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕 水平面に対して0°〜20°の角度で走行する基材フィルムの下面に、塗布液を塗布して、前記塗布液の層を形成する工程を含む、複層フィルムの製造方法。
〔2〕 前記塗布液を塗布される時の前記基材フィルムの張力が、1MPa〜12MPaである、〔1〕記載の複層フィルムの製造方法。
〔3〕 前記基材フィルムの前記下面に前記塗布液を塗布しうる第一ロールによって、前記基材フィルムの前記下面への前記塗布液の塗布が行われ、
前記製造方法が、前記第一ロールの下流に設けられた第二ロールによって、前記基材フィルムの前記下面に塗布された前記塗布液の一部を掻き取る工程を含み、
前記第一ロールと前記第二ロールとの間において、前記基材フィルムが、水平面に対して0°〜20°の角度で走行する、〔1〕又は〔2〕記載の複層フィルムの製造方法。
〔4〕 前記塗布液の層を硬化させる工程を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の複層フィルムの製造方法。
本発明の製造方法によれば、塗布ムラを抑制しながら複層フィルムを製造できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いるための製造装置を模式的に示す正面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いるための製造装置の、塗布装置及び掻取装置の周辺を拡大して模式的に示す正面図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る製造方法で製造された複層フィルムを模式的に示す断面図である。 図4は、複層フィルムの製造方法において塗布液の塗布時に塗布ムラを抑制できたことの確認方法を行う様子を模式的に示す斜視図である。
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、「上流」及び「下流」とは、別に断らない限り、フィルム搬送方向の上流及び下流を示す。
以下の説明において、用語「溶媒」は、別に断らない限り、いわゆる溶媒だけでなく分散媒も含む
以下の説明において、用語「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する。
以下の説明において、粒子の平均粒子径とは、別に断らない限り、レーザー回折法によって粒子径分布を測定し、測定された粒子径分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を採用する。
以下の説明において、フィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。また、フィルムの厚み方向のレターデーションRthは、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、フィルムの前記面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。別に断らない限り、前記のレターデーションの測定波長は550nmである。前記のレターデーションは、市販の位相差測定装置(例えば、王子計測機器社製、「KOBRA−21ADH」)あるいはセナルモン法を用いて測定しうる。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、別に断らない限り、幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有するフィルムをいい、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。
以下の説明において、「偏光板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
[1.実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る複層フィルム10の製造方法に用いるための製造装置20を模式的に示す正面図である。
図1に示すように、この製造装置20は、表面処理装置としてのコロナ処理機100、塗布装置200、掻取装置300、及び、硬化処理装置としてのオーブン400を、上流からこの順に備える。本実施形態においては、製造装置20は、基材フィルム30をコロナ処理機100、塗布装置200、掻取装置300、及びオーブン400にこの順で連続的に走行させながら、複層フィルム10の製造を行いうるように設けられている。基材フィルム30としては、通常、長尺のフィルムを用いる。また、本実施形態においては、塗布液40として、オーブン400内での加熱により溶媒が乾燥して硬化しうる液状組成物を用いた例を示して説明する。ここで「液状組成物」との用語は、2種類状の物質を含む材料だけでなく、1種類の物質のみからなる材料も含む。
コロナ処理機100は、連続走行する基材フィルム30の下面31に、表面処理としてコロナ放電処理を施しうるように設けられている。
図2は、本発明の一実施形態に係る複層フィルム10の製造方法に用いるための製造装置20の、塗布装置200及び掻取装置300の周辺を拡大して模式的に示す正面図である。
塗布装置200は、コロナ処理機100の下流に設けられた装置であって、図2に示すように、基材フィルム30の下面31に塗布液40を塗布しうる第一ロールとしての塗布ロール210、及び、塗布ロール210に塗布液40を供給するための供給器220を備える。塗布ロール210は、矢印A210で示すように、基材フィルム30の走行方向と同じ方向に回転しうるように設けられている。他方、供給器220には塗布液40が貯蔵されていて、この供給器220内の塗布液40に塗布ロール210の一部が漬かっている。そして、本実施形態に係る塗布装置200は、塗布ロール210が、周方向に回転することによって、供給器220に溜められた塗布液40を引き上げ、この塗布液40を基材フィルム30の下面31に塗布しうるように設けられている。
掻取装置300は、塗布装置200の下流に設けられた装置であって、基材フィルム30の下面31に塗布された塗布液40の一部を掻き取りうる第二ロールとしての掻き取りロール310、及び、掻き取りロール310が掻き取った塗布液40を回収しうる回収器320を備える。掻き取りロール310は、矢印A310で示すように、基材フィルム30の走行方向と反対方向に回転しうるように設けられている。そして、本実施形態に係る掻取装置300は、掻き取りロール310が周方向に回転することによって、基材フィルム30の下面31に塗布された余剰の塗布液40を掻き取り、回収器320に回収しうるように設けられている。
オーブン400は、図1に示すように、掻取装置300の下流に設けられた装置であって、当該オーブン400内の温度を適切な温度に調整しうるように設けられる。本実施形態では、オーブン400は、下面31に塗布液の層50(図2参照)を形成された基材フィルム30がこのオーブン400内を通過するときに、塗布液の層50を加熱して硬化させうるように設けられている。
本実施形態では、前記のような製造装置20を用いて下記の製造方法を行い、複層フィルム10を製造する。
図1に示すように、この製造方法では、繰出しロール60から基材フィルム30を引き出し、コロナ処理機100に供給する工程を行う。
基材フィルム30を供給されると、コロナ処理機100は、基材フィルム30の下面31にコロナ放電処理を施す工程を行う。このコロナ放電処理により、基材フィルム30の下面31が改質されて、当該下面31に塗布液40が定着し易くなる。コロナ処理機100においてコロナ放電処理を施された基材フィルム30は、塗布装置200へ送られる。
塗布装置200に基材フィルム30が送られてくると、図2に示すように、塗布ロール210が、周方向に回転することによって、供給器220に溜められた塗布液40を引き上げ、この塗布液40を基材フィルム30の下面31に塗布する。これにより、基材フィルム30の下面31に、塗布液の層50を形成する工程が行われる。
このような塗布液40の塗布は、基材フィルム30を、水平面Pに対して所定範囲の角度θで走行させながら行う。したがって、塗布液40を塗布される区間230を走行するとき、基材フィルム30が水平面Pに対してなす角度θは、所定範囲に収まる。このとき、塗布液40を塗布される区間230において塗布ロール210の前後で基材フィルム30の走行角度が変わる場合は、塗布ロール210より上流側で水平面Pに対して基材フィルム30がなす角度と、塗布ロール210より下流側で水平面Pに対して基材フィルム30がなす角度との平均値を、塗布液40を塗布される区間230を走行するときに基材フィルム30が水平面Pに対してなす角度θとする。角度θがとりうる前記の所定範囲は、具体的には、通常0°以上、好ましくは5°以上であり、通常+20°以下、好ましくは+18°以下、更に好ましくは+15°以下である。前記の角度θにおいて、基材フィルム30が下るように走行する向きが、プラスの角度を表す。このような範囲の角度θで走行する基材フィルム30の下面31に塗布液40を塗布することにより、塗布ムラを効果的に抑制できる。
本発明者は、塗布ムラを抑制できる仕組みを下記のように推察するが、本発明の技術的範囲は下記の仕組みに制限されるものでは無い。
一般に、基材フィルム30の下面31に塗布液40を塗布すると、塗布液40を塗布される区間230において、基材フィルム30の下面31には塗布液40の液溜まりが形成される。この液溜まりに含まれる塗布液40は、基材フィルム30の水平面Pに対する角度θが大きすぎると、重力によって基材フィルム30の下面31を伝って流動し、塗布ムラの原因となりうる。これに対し、基材フィルム30を水平面Pに対して前記所定範囲の角度θで走行させながら塗布液40を塗布した場合、基材フィルム30の下面31を伝った塗布液40の流動を抑制できる。そのため、本実施形態に係る製造方法では、塗布ムラを抑制できる。特に、本実施形態のように、塗布用の部材として塗布ロール210を用いて塗布液40を塗布した場合、液溜まりに含まれる余剰の塗布液40を、塗布ロール210の回転によって基材フィルム30の下面31から安定して回収できる。そのため、基材フィルム30の下面31を伝った塗布液40の流動を特に効果的に抑制できるので、塗布ムラを効果的に抑制できる。
また、塗布液40を塗布される区間230において、基材フィルム30は、平らな形状にすることが好ましい。これにより、塗布ロール210によって塗布液40を塗布される下面31を平面状にできる。そのため、基材フィルム30の下面31における塗布液40の流動を効果的に抑制できるので、塗布ムラを更に効果的に抑制できる。このように基材フィルム30を平らな形状で走行させるために、例えばロール及びベルト等の支持部材(図示せず。)によって基材フィルム30の上面32を支持してもよい。
塗布液40を塗布される時の基材フィルム30の張力は、好ましくは1MPa以上、更に好ましくは1.2MPa以上、より好ましくは1.4MPa以上、特に好ましくは3.0MPaであり、好ましくは12MPa以下、更に好ましくは11MPa以下、特に好ましくは10MPa以下である。張力を前記範囲の下限値以上にすることにより、塗布装置200から基材フィルム30へ与えられる押圧力を均一にできるので、効果的に塗布ムラを抑制できる。また、張力を前記範囲の上限値以下にすることにより、基材フィルム30の破断及びシワ(例えば、波打ち状のシワ)の発生を抑制できるので、効果的に塗布ムラを抑制できる。
塗布装置200によって塗布液40を塗布された基材フィルム30は、下面31に形成された塗布液の層50と共に、掻取装置300へ送られる。この際、塗布装置200の塗布ロール210と掻取装置300の掻き取りロール310との間の区間240において、基材フィルム30は、水平面Pに対して前記の所定範囲の角度θで走行させることが好ましい。したがって、塗布ロール210と掻き取りロール310との間の区間240を走行するとき、基材フィルム30が水平面Pに対してなす角度θは、前記の所定範囲に収まることが好ましい。これにより、基材フィルム30の下面31を伝った塗布液40の流動を更に効果的に抑制できるので、塗布ムラを更に効果的に抑制できる。
掻取装置300に基材フィルム30が送られてくると、掻き取りロール310が、周方向に回転することによって、基材フィルム30の下面31に塗布された塗布液40の一部を掻き取る工程を行う。これにより、基材フィルム30の下面31に形成された塗布液の層50の厚みが所望の厚みに調整される。また、掻き取りロール310が塗布された塗布液40の一部を掻き取ることにより、塗布液の層50の厚みは均一になるので、塗布液の層50が平滑化される。掻取装置300によって塗布液の層50を平滑化された後、基材フィルム30は、その下面31に形成された塗布液の層50と共に、オーブン400へ送られる。また、掻き取られた塗布液40は、回収器320に移され、回収される。
オーブン400に基材フィルム30が送られてくると、オーブン400内において基材フィルム30の下面31に形成された塗布液の層50を加熱し、硬化させる工程が行われる。図3は、本発明の一実施形態に係る製造方法で製造された複層フィルム10を模式的に示す断面図である。この図3に示すように、前記のように塗布液の層50を硬化させることによって、基材フィルム30の下面31に塗布液40を硬化させた塗布層70が形成されて、基材フィルム30及び塗布層70を備える複層フィルム10が得られる。上述した製造方法では塗布液の塗布ムラを抑制できるので、通常、こうして得られた塗布層70の厚みT70は、均一である。
得られた複層フィルム10は、通常、図1に示すように巻き取られて、フィルムロール80として回収される。
以上のように、本実施形態に係る製造方法では、塗布液40の塗布時において塗布ムラを抑制することができる。塗布液40の塗布時において塗布ムラを抑制できたことは、下記の方法によって確認しうる。
図4は、複層フィルム10の製造方法において塗布液40の塗布時に塗布ムラを抑制できたことの確認方法を行う様子を模式的に示す斜視図である。図4に示すように、複層フィルム10から縦1m×横1mに試験片510を切り出し、暗室内でスクリーン520の前に設置する。その後、試験片510から500mmの地点に設置した光源530から、試験片510に光を照射する。そして、試験片510の正面から試験片510を観察する。塗布ムラが生じていなければ全体に均一なコントラストが観察される。他方、塗布ムラがあると、当該塗布ムラが生じた部分に対応して局所的にコントラストが異なる部分540が観察される。通常、塗布ムラは塗布液40が重力によって垂れることで生じるので、前記のコントラストが異なる部分540はスジ状に観察される。したがって、観察されるコントラストにより、塗布ムラを抑制できたことを確認できる。
[2.変形例]
本発明の複層フィルムの製造方法は、上述した実施形態に限定されず、更に変更して実施してもよい。
例えば、基材フィルム30の下面31への表面処理としては、コロナ放電処理以外の表面処理を行ってもよい。このような表面処理としては、例えば、エネルギー線照射処理及び薬品処理等が挙げられる。エネルギー線照射処理としては、例えば、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等が挙げられる。また、薬品処理としては、例えば、ケン化処理;重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸等の酸化剤水溶液中に基材フィルムを浸漬し、その後、水で洗浄する処理;が挙げられる。
また、塗布装置200は、上述した実施形態のような塗布ロール210を用いたロールコート法以外の塗布法によって塗布液40を塗布しうるものを用いてもよい。そのような塗布法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
さらに、掻取装置300は、上述した実施形態のような掻き取りロール310を用いた掻き取り法以外の平滑化法によって塗布液の層50の厚みを調整してもよい。
また、硬化処理装置としては、塗布液40に応じて、上述した実施形態のようなオーブン400以外の装置を用いてもよい。例えば、塗布液40が紫外線等の光によって硬化しうるものである場合、硬化処理装置として、光照射装置を用いてもよい。また、例えば、塗布液40が常温環境における乾燥によって硬化しうるものである場合、硬化処理装置を設置しないで、基材フィルム30の搬送による自然乾燥によって塗布液の層50を硬化させてもよい。
さらに、上述した複層フィルム10の製造方法は、上述した実施形態において説明した以外の工程を含んでいてもよい。例えば、複層フィルム10の製造方法は、オーブン400で塗布液の層50を硬化させて塗布層70を形成した後で、この塗布層70の面に表面処理を施す工程を含んでいてもよい。具体例を挙げると、複層フィルム10の製造方法は、塗布層70の面に表面処理として親水化表面処理を施す工程を含んでいてもよい。親水化表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、ケン化処理、紫外線照射処理などが挙げられる。中でも、処理効率の点などからコロナ放電処理及びプラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が更に好ましい。また、プラズマ処理としては、大気圧プラズマ処理が好ましい。
また、複層フィルム10の製造方法は、オーブン400で塗布液の層50を硬化させて塗布層70を形成した後で、得られた複層フィルム10に延伸処理を施す工程を含んでいてもよい。
さらに、複層フィルム10の製造方法は、オーブン400で塗布液の層50を硬化させて塗布層70を形成した後で、更に任意の層を形成する工程を含んでいてもよい。
[3.基材フィルム]
基材フィルムとしては、通常、樹脂製のフィルムを用いる。基材フィルムに含まれる樹脂としては、任意の重合体を含む樹脂を用いうる。中でも、樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、脂環式オレフィン樹脂が特に好ましい。脂環式オレフィン樹脂は、脂環式オレフィン重合体を含む樹脂であり、透明性、低吸湿性、寸法安定性および軽量性などの特性に優れ、光学フィルムに適している。
基材フィルムは、1層のみを含む単層構造のフィルムであってもよく、2層以上の層を備える複層構造のフィルムであってもよい。基材フィルムが複層構造を有する場合、基材フィルムが備える層のうち1層以上が脂環式オレフィン樹脂からなることが好ましい。
脂環式オレフィン重合体は、重合体の構造単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれを用いてもよい。また、脂環式オレフィン重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、更に好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、更に好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。これにより、基材フィルムの機械強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式オレフィン重合体中の脂環式構造を有する構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択してもよく、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式オレフィン重合体中の脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、基材フィルムの透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式オレフィン重合体としては、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素添加物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適である。
ノルボルネン重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素添加物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素添加物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素添加物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、特に好適である。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。また、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合が可能な任意の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状共役ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合が可能な任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合することにより製造しうる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合が可能な任意の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが更に好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合が可能な任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合することにより製造しうる。
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、これらの開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
単環の環状オレフィン重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィンモノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエンモノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエンモノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素添加物;などを挙げることができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素モノマーの重合体及びその水素添加物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素添加してなる水素添加物;ビニル脂環式炭化水素モノマー、またはビニル芳香族炭化水素モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素モノマーに対して共重合可能な任意のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素添加物;などを挙げることができる。前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることができる。
基材フィルムに含まれる樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、更に好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、更に好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。ここで、前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平気分子量である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、複層フィルムの機械的強度および成型加工性が高度にバランスされる。
基材フィルムに含まれる樹脂に含まれる重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、コストを抑制することができる。また、上限値以下にすることにより、低分子量成分を減らすことができるので、緩和時間を長くできる。そのため、高温曝露時の緩和を抑制でき、基材フィルムの安定性を高めることができる。
基材フィルムに含まれる樹脂に含まれる重合体の光弾性係数Cの絶対値は、好ましくは10×10−12Pa−1以下、更に好ましくは7×10−12Pa−1以下、特に好ましくは4×10−12Pa−1以下である。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、「C=Δn/σ」で表される値である。重合体の光弾性係数を前記範囲に納めることにより、基材フィルムの面内レターデーションReのバラツキを小さくできる。
基材フィルムに含まれる樹脂に含まれる重合体の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が前記範囲であると、基材フィルムの面内レターデーション及び厚み方向のレターデーションの経時変化を小さくすることができる。また、複層フィルムを備える偏光板及び画像表示装置の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。
飽和吸水率は、試験片を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した質量を、浸漬前の試験片の質量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。重合体の飽和吸水率は、例えば、重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。したがって、飽和吸水率をより低くする観点から、基材フィルムに含まれる樹脂に含まれる重合体は、極性基を有さないことが好ましい。
基材フィルムに含まれる樹脂における重合体の割合は、一般的には50%〜100%、または70%〜100%である。特に、基材フィルムに含まれる樹脂として脂環式オレフィン樹脂を用いる場合、脂環式オレフィン樹脂に含まれる重合体の割合は、通常80%〜100%、好ましくは90%〜100%である。
基材フィルムに含まれる樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、重合体以外に任意の成分を含んでいてもよい。その任意の成分の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;耐電防止剤;酸化防止剤;滑剤;界面活性剤などの添加剤が挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
基材フィルムに含まれる樹脂として脂環式オレフィン樹脂を用いる場合、その脂環式オレフィン樹脂は、実質的に粒子を含まないことが好ましい。ここで、実質的に粒子を含まない樹脂とは、粒子を全く含まない樹脂からの基材フィルムのヘイズの上昇幅が0.05%以下の範囲である量までは粒子を含みうる樹脂を意味する。脂環式オレフィン重合体は、多くの有機粒子及び無機粒子との親和性に欠ける傾向がある。そのため、粒子を含む脂環式オレフィン樹脂を延伸すると、空隙が発生しやすい。しかし、粒子の量を前記のように少なくすることで、延伸した場合の空隙の発生を抑制して、ヘイズが大きくなることを抑制できる。
基材フィルムに含まれる樹脂が含む添加剤の量は、本発明の複層フィルムが所望の特性を発現できる範囲で任意に設定しうる。
前述の通り、基材フィルムは、一層のみを備える単層構造のフィルムであってもよく、2層以上の層を備える複層構造のフィルムであってもよい。基材フィルムを複層構造のフィルムとすることにより、本発明の複層フィルムを、様々な特性を有する光学フィルムとして用いることができる。
基材フィルムが2層以上の層を備える場合、一種類の層を2つ以上備えていてもよく、異なる二種類以上の層を備えていてもよい。また、基材フィルムには、上述した脂環式オレフィン樹脂以外の樹脂からなる層を設けてもよい。脂環式オレフィン樹脂以外からなる層としては、例えば、傷付抑制、反射抑制、帯電抑制、防眩、防汚などの機能を有する層が挙げられる。
基材フィルムの厚みは、好ましくは20μm以上、更に好ましくは23μm以上、特に好ましくは27μm以上であり、好ましくは150μm以下、更に好ましくは125μm以下、特に好ましくは100μm以下である。基材フィルムの厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、塗布時の基材フィルムの破断を抑制することができる。また、基材フィルムの厚みを前記範囲の上限値以下にすることにより、乾燥後の複層フィルムの搬送を容易にすることができる。
基材フィルムの厚み変動は、長手方向及び幅方向にわたって、前記平均厚みの±3%以内であることが好ましい。厚み変動を前記範囲にすることにより、基材フィルムのレターデーションなどの光学特性のバラツキを小さくできる。
基材フィルムが含む揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.02重量%以下である。揮発性成分の量を前記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、基材フィルムの面内レターデーション及び厚み方向のレターデーションの経時変化を小さくできる。さらには、複層フィルムを備える偏光板又は画像表示装置等の劣化を抑制できるので、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。ここで、揮発性成分とは、分子量200以下の物質である。揮発性成分としては、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の量は、分子量200以下の物質の合計として、ガスクロマトグラフィーによる分析によって定量しうる。
基材フィルムの製造方法に制限はない。基材フィルムは、例えば、当該基材フィルムを形成するための樹脂を任意のフィルム成形法で成形することによって得られる。フィルム成形法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶媒を使用しない溶融押出法が、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法などが挙げられ、中でも生産性や厚み精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
基材フィルムが2層以上の層を備える場合、基材フィルムの製造方法に制限は無い。例えば、別々に製造したフィルム層を必要に応じて接着剤を用いて貼り合せて、基材フィルムを製造してもよい。接着剤は、貼り合わせるフィルム層を形成する樹脂の種類により適切なものを選択しうる。接着剤の例としては、アクリル接着剤;ウレタン接着剤;ポリエステル接着剤;ポリビニルアルコール接着剤;ポリオレフィン接着剤;変性ポリオレフィン接着剤;ポリビニルアルキルエーテル接着剤;ゴム接着剤;エチレン−酢酸ビニル接着剤;塩化ビニル−酢酸ビニル接着剤;SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)接着剤;SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)接着剤;エチレン−スチレン共重合体等のエチレン接着剤;エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル接着剤;などが挙げられる。接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。接着剤により形成される接着剤層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下である。
接着剤を使用せずに2層以上の層を備える基材フィルムを製造する場合、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法などの共押出成形法;ドライラミネーションなどのフィルムラミネーション成形法;などを用いうる。また、例えば、あるフィルム層の表面に、別のフィルム層を構成する樹脂を含む溶液をコーティングするコーティング成形法を用いて、2層以上の層を備える基材フィルムを製造してもよい。
これらの中でも、製造効率の観点、及び、基材フィルム中に溶媒などの揮発性成分を残留させないという観点からは、共押出成形法が好ましい。共押出成形法の中でも、共押出Tダイ法が特に好ましい。さらに、共押出Tダイ法にはフィードブロック方式とマルチマニホールド方式が挙げられるが、各層の厚みのばらつきを少なくできる点からは、マルチマニホールド方式がさらに好ましい。
基材フィルムは、延伸処理を施されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸処理を施された延伸フィルムであってもよい。また、基材フィルムが2層以上の層を備える場合、予め延伸処理を施されたフィルム層を貼り合せて延伸フィルムを得てもよく、共押出等により得られた複層構造の延伸前フィルムに延伸処理を施して延伸フィルムを得てもよい。
延伸方法は特に制限されず、例えば、一軸延伸法、二軸延伸法のいずれを採用してもよい。延伸方法の例を挙げると、一軸延伸法の例としては、フィルム搬送用のロールの周速の差を利用して長手方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて幅方向に一軸延伸する方法等が挙げられる。また、二軸延伸法の例としては、固定するクリップの間隔を開いての長手方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により幅方向に延伸する同時二軸延伸法;フィルム搬送用のロール間の周速の差を利用して長手方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて幅方向に延伸する逐次二軸延伸法、などが挙げられる。さらに、例えば、幅方向又は長手方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いて、フィルムの幅方向に対して平行でもなく垂直でもない斜め方向に連続的に延伸する斜め延伸法を用いてもよい。
延伸に用いる装置として、例えば、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。延伸温度は、延伸されるフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度をTgとして、好ましくは(Tg−30℃)以上、更に好ましくは(Tg−10℃)以上であり、好ましくは(Tg+60℃)以下、更に好ましくは(Tg+50℃)以下である。延伸倍率は、使用する基材フィルムの光学特性に応じて適宜選択しうる。具体的な延伸倍率は、好ましくは1.05倍以上、更に好ましくは1.1倍以上であり、好ましくは10.0倍以下、更に好ましくは2.0倍以下である。
[4.塗布液]
塗布液としては、製造される複層フィルムの用途に応じた塗布層を形成しうる液状組成物を任意に用いうる。通常、塗布層は、重合体を含む樹脂の層として形成される。したがって、塗布液としては、塗布層に含まれる重合体及び溶媒を含む溶液又は分散液を用いることが好ましい。
〔4.1.重合体〕
塗布液が含みうる重合体としては、例えば、ポリウレタンを用いうる。重合体としてポリウレタンを用いることにより、当該ポリウレタンを含む塗布層が得られる。ポリウレタンを含む塗布層を備える複層フィルムは、他の部材との接着性に優れる。
ポリウレタンとしては、例えば、(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と、(ii)ポリイソシアネート成分とを反応させて得られるポリウレタンを用いうる。また、ポリウレタンとしては、例えば、前記(i)成分及び前記(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で、反応に不活性で水との親和性の大きい有機溶媒中でウレタン化反応させてイソシアネート基含有プレポリマーとし、次いで、該プレポリマーを中和し、鎖延長剤を用いて鎖延長し、水を加えて分散体とすることによって製造されるポリウレタンを用いうる。イソシアネート基含有プレポリマーの鎖延長方法としては、イソシアネート基含有プレポリマーと鎖延長剤とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させる方法が挙げられる。この際、鎖延長剤としては、水、水溶性ポリアミン、グリコール類などを用いうる。
前記(i)成分としては、水酸基性の活性水素を有するものが好ましく、例えば1分子中に平均2個以上の水酸基を有する化合物が好ましい。(i)成分の具体例としては、下記の(1)ポリオール化合物、(2)ポリエーテルポリオール、(3)ポリエステルポリオール、(4)ポリエーテルエステルポリオール、及び(5)ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
(1)ポリオール化合物:
ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
(2)ポリエーテルポリオール:
ポリエーテルポリオールとしては、前記の(1)ポリオール化合物のアルキレンオキシド付加物;アルキレンオキシドと環状エーテル(例えばテトラヒドロフランなど)との開環共重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、1,4−ブタンジオール共重合体;グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。ポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール等が挙げられる。
(3)ポリエステルポリオール:
ポリエステルポリオールとして、例えば、多価カルボン酸又はその無水物と前記(1)ポリオール化合物とを、水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものなどが挙げられる。ここで、多価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸;トリメリット酸等のトリカルボン酸が挙げられる。ポリエステルポリオールの具体例としては、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、或いは、グリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオール、などが挙げられる。
(4)ポリエーテルエステルポリオール:
ポリエーテルエステルポリオールとして、例えば、エーテル基含有ポリオール(例えば、前記(2)ポリエーテルポリオール及びジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を、上記(3)で例示したような多価カルボン酸又はその無水物と混合してアルキレンオキシドを反応させてなるものなどが挙げられる。ポリエーテルエステルポリオールの具体例としては、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物などが挙げられる。
(5)ポリカーボネートポリオール:
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)−OH(ただし、式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ポリオール残基を示す。また、Xは分子の構造単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物などが挙げられる。これらは、飽和脂肪族ポリオールと置換カーボネート(例えば、炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを、水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法;前記飽和脂肪族ポリオールとホスゲンとを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ポリオールを反応させる方法;などにより得ることができる。
これらの(i)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記(i)成分と反応させる(ii)成分(即ち、ポリイソシアネート成分)としては、例えば、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する化合物が挙げられる。この化合物は、脂肪族化合物でもよく、脂環式化合物でもよく、芳香族化合物でもよい。
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、炭素原子数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。
脂環式ポリイソシアネート化合物としては、炭素原子数4〜18の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)などが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
これらの(ii)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記の(i)成分及び(ii)成分は、複層フィルムの用途に応じて適切なものを任意に選択して用いうる。中でも、(i)成分としては、加水分解し難い結合を有するものを用いることが好ましく、具体的には(2)ポリエーテルポリオール及び(5)ポリカーボネートポリオールが好ましく、中でも(2)ポリエーテルポリオールが特に好ましい。
また、これらのポリウレタンは、その分子構造に酸構造を含んでいてもよい。酸構造を含むポリウレタンは、界面活性剤を使用せずに、若しくは界面活性剤の量が少なくても、水中に分散させることが可能であるので、塗布層の耐水性の改善が期待される。これを自己乳化型といい、界面活性剤が無くても分子イオン性のみで水中にポリウレタンが粒子状に分散安定化しうることを意味する。また、酸構造を含むポリウレタンは、界面活性剤が不要又は少量で済むので、基材フィルムとの接着性に優れ、かつ高い透明性を維持できる。
酸構造としては、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)等の酸基などを挙げることができる。また、酸構造は、ポリウレタンにおいて側鎖に存在していてもよく、末端に存在していてもよい。酸構造は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
酸構造の量としては、塗布液における酸価として、好ましくは20mgKOH/g以上、更に好ましくは25mgKOH/g以上であり、好ましくは250mgKOH/g以下、更に好ましくは150mgKOH/g以下である。酸価を前記範囲の下限値以上にすることによりポリウレタンの水分散性を良好にできる。また、上限値以下にすることにより、塗布層の耐水性を良好にできる。
ポリウレタンに酸構造を導入する方法としては、例えば、ジメチロールアルカン酸を、前記(2)から(4)に記載した(i)成分の一部もしくは全部と置き換えることによって、予めポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等にカルボキシル基を導入する方法が挙げられる。ここで用いられるジメチロールアルカン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。ジメチロールアルカン酸は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリウレタンが含む酸構造の一部又は全部は、不揮発性塩基によって中和されていてもよい。酸構造が中和されていることにより、複層フィルムは、高温下に曝された熱履歴を有しても、光学材料としての特性を維持したり、他の部材と強い接着力で接着したりすることが可能である。また、酸構造を中和しても、界面活性剤を使用せずに、若しくは界面活性剤の量が少なくても、ポリウレタンを粒子状に水中で分散させることは可能である。
ポリウレタンが含む酸構造のうち、中和される酸構造の割合は、20%以上が好ましく、50%以上が特に好ましい。酸構造のうちの20%以上が中和されることにより、複層フィルムが高温下に曝された熱履歴を有しても、光学材料としての特性を維持したり、他の部材と強い接着力で接着したりすることが可能である。
ポリウレタンは、架橋剤との反応を可能にするため、極性基を含むことが好ましい。極性基としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホ基などが挙げられる。中でも、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基が好ましく、水酸基及びカルボキシル基が更に好ましく、カルボキシル基が特に好ましい。ポリウレタン中の極性基の量は、好ましくは0.0001当量/1kg以上、更に好ましくは0.001当量/1kg以上であり、好ましくは1当量/1kg以下である。
ポリウレタンとしては、水系ウレタン樹脂として市販されているものを用いてもよい。水系ウレタン樹脂は、ポリウレタン及び水を含む組成物であり、通常、ポリウレタン及び必要に応じて含まれる任意の成分が水の中に分散している組成物である。水系ウレタン樹脂としては、例えば、ADEKA社製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井化学社製の「オレスター」シリーズ、DIC社製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン(WLS201,WLS202など)」シリーズ、バイエル社製の「インプラニール」シリーズ、花王社製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業社製の「サンプレン」シリーズ、第一工業製薬社製の「スーパーフレックス」シリーズ、楠本化成社製の「NEOREZ(ネオレッズ)」シリーズ、ルーブリゾール社製の「Sancure」シリーズなどを用いることができる。また、ポリウレタンは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
塗布液が含みうる重合体のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上、特に好ましくは60℃以上であり、好ましくは150℃以下、更に好ましくは125℃以下、特に好ましくは100℃以下である。重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、製造工程においてオーブンから出た後にオーブン下流側の搬送ロールを汚染すること抑制できる。また、重合体のガラス転移温度を前記範囲の上限値以下にすることにより、複層フィルムのカールを抑制できる。
塗布液中における重合体の状態は任意であり、粒子状になって分散していてもよく、溶媒等に溶解していてもよい。例えば、重合体としてポリウレタンを用いる場合には、ポリウレタンは、粒子状となって分散していることが多い。この場合、ポリウレタンの粒子の平均粒子径は、複層フィルムの光学特性の観点から、0.01μm〜0.4μmであることが好ましい。
〔4.2.溶媒〕
塗布液が含みうる溶媒としては、例えば、水又は水溶性の溶媒を用いる。水溶性の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。中でも、溶媒としては、水を用いることが好ましい。溶媒として水を用いた場合、塗布液は通常は重合体を含む樹脂の水分散体となる。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
溶媒の量は、通常は、塗布液の固形分の濃度を所望の範囲に収められるように設定する。ここで、塗布液の固形分とは、塗布液の乾燥を経て残留する成分のことをいう。前記の所望の範囲は、好ましくは1重量%以上、更に好ましくは2重量%以上、特に好ましくは3重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは7重量%以下、特に好ましくは6重量%以下である。これにより、塗布液の粘度を好適な範囲に調整できるので、塗布液の取り扱い性及び塗布性を良好にできる。
〔4.3.架橋剤〕
塗布液は、更に架橋剤を含みうる。架橋剤は、重合体が有する反応性の基と反応して結合を形成することにより、重合体を架橋させうる。したがって、例えば、塗布液を基材フィルムに塗布した後で重合体を架橋させることにより、塗布層と基材フィルムとの接着性、並びに、塗布層の機械的強度及び耐湿熱性を向上させることができる。例えば重合体としてポリウレタンを用いた場合、通常は、架橋剤は、前記酸構造として含まれるカルボキシル基及びその無水物基、並びに、(i)成分と(ii)成分との反応後に未反応で残った水酸基などのような、極性基と反応して架橋構造を形成しうる。
架橋剤としては、例えば、塗布液が含む重合体が有する反応性の基と反応して結合を形成しうる官能基を、1分子内に2個以上有する化合物を用いうる。中でも、架橋剤としては、カルボキシル基又はその無水物基と反応しうる官能基を有する化合物が好ましい。
架橋剤の具体例を挙げると、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。また、架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
エポキシ化合物としては、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する多官能のエポキシ化合物を用いうる。中でも、エポキシ化合物としては、水に溶解性があるか、または水に分散してエマルジョン化しうるものが好ましい。エポキシ基が水に溶解性を有するか又はエマルジョン化しうるものであれば、塗布液が水系樹脂である場合に、その水系樹脂の塗布性を良好にできるので、塗布層の製造を容易に行うことが可能となる。ここで、水系樹脂とは、重合体等の固形分を、水等の水系の溶媒に溶解又は分散した状態で含有する流体状の樹脂のことをいう。
エポキシ化合物の例を挙げると、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエーテル化によって得られるジエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モル以上とのエーテル化によって得られるポリエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエステル化によって得られるジエポキシ化合物;などが挙げられる。
より具体的にエポキシ化合物の例を挙げると、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピルオキシ)ブタン、1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジクリシジル−5−(γ−アセトキシ−β−オキシプロピル)イソシヌレート、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、ジグリセロ−ルポリグルシジルエーテル、1,3,5−トリグリシジル(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリセロールエーテル類およびトリメチロ−ルプロパンポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
また、エポキシ化合物の例を市販品で挙げると、ナガセケムテックス社製の「デナコール(デナコールEX−521,EX−614Bなど)」シリーズ等を挙げることができる。
エポキシ化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
エポキシ化合物の量は、塗布液が含む重合体100重量部に対し、好ましくは5重量部以上、更に好ましくは7重量部以上、特に好ましくは10重量部以上であり、好ましくは50重量部以下、更に好ましくは40重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。エポキシ化合物の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、エポキシ化合物と重合体との反応が十分に進行するので、塗布層の機械的強度を適切に向上させることができる。また、エポキシ化合物の量を前記範囲の上限値以下にすることにより、未反応のエポキシ化合物の残留を少なくでき、塗布層の機械的強度を適切に向上させることができる。
また、塗布液が含む重合体の極性基と当量になるエポキシ化合物の量に対し、塗布液が含むエポキシ化合物の量は、重量基準で、好ましくは0.2倍以上、更に好ましくは0.4倍以上、特に好ましくは0.6倍以上であり、好ましくは1.4倍以下、更に好ましくは1.2倍以下、特に好ましくは1.0倍以下である。ここで、重合体の極性基と当量になるエポキシ化合物の量とは、重合体の極性基の全量と過不足無く反応できるエポキシ化合物の理論量をいう。塗布液が含む重合体の極性基は、エポキシ化合物のエポキシ基と反応しうる。よって、塗布液が含むエポキシ化合物の量を前記範囲に収めることにより、極性基とエポキシ化合物との反応を適切な程度に進行させて、塗布層の機械的強度を効果的に向上させることができる。
カルボジイミド化合物としては、1分子内にカルボジイミド基を2以上有する化合物を用いうる。このカルボジイミド化合物は、原料として有機モノイソシアネート、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等の有機イソシアネートを用いて製造されうる。これらの有機イソシアネートの例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び、それらの混合物が挙げられる。したがって、有機イソシアネートが有する有機基としては、芳香族及び脂肪族のいずれを用いてもよく、また、芳香族の有機基及び脂肪族の有機基を組み合わせて用いてもよい。中でも、反応性の観点から、脂肪族の有機基を有する有機イソシアネートが特に好ましい。通常、カルボジイミド化合物は、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成される。
有機イソシアネートの具体例を挙げると、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等の有機ジイソシアネート;イソホロンイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等の有機モノイソシアネートが挙げられる。
カルボジイミド化合物の例を市販品で挙げると、日清紡ケミカル社製の「カルボジライト(カルボジライトV−02、V−02−L2、SV−02、V−04、E−02など)」シリーズを市販品として入手可能である。
カルボジイミド化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
カルボジイミド化合物の量は、塗布液が含む重合体100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上であり、好ましくは40重量部以下、更に好ましくは30重量部以下である。カルボジイミド化合物の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、カルボジイミド化合物と重合体との反応が十分に進行するので、塗布層の機械的強度を適切に向上させることができる。また、カルボジイミド化合物の量を前記範囲の上限値以下にすることにより、未反応のカルボジイミド化合物の残留を少なくでき、塗布層の機械的強度を適切に向上できる。
オキサゾリン化合物としては、下記式(I)で示されるオキサゾリン基を有する重合体を用いうる。下記式(I)において、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群より選ばれるいずれかを表す。
Figure 0006536116
このオキサゾリン化合物は、例えば、付加重合性オキサゾリンと、必要に応じて任意の不飽和単量体とを含む単量体成分を、公知の重合法により水性媒体中で溶液重合することにより製造しうる。付加重合性オキサゾリンとしては、例えば、下記式(II)で示される化合物が挙げられる。下記式(II)において、R、R、R及びRは、式(I)における定義と同様である。また、Rは、付加重合性の不飽和結合を有する、非環状の有機基を表す。
Figure 0006536116
付加重合性オキサゾリンの具体例を挙げると、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが、工業的にも入手し易く好適である。
前記付加重合性オキサゾリンの量は、オキサゾリン化合物の製造に用いる全単量体成分100重量部に対して、好ましくは3重量部以上である。これにより、オキサゾリン化合物を含む塗布液を硬化させた場合に硬化を十分に進めることができ、耐久性及び耐水性に優れた塗布層を得ることができる。
オキサゾリン化合物の製造に用いうる任意の不飽和単量体としては、付加重合性オキサゾリンと共重合可能であり、かつ、オキサゾリン基と反応しない任意の単量体を用いうる。このような任意の不飽和単量体は、上述した単量体から任意に選択して用いうる。
オキサゾリン化合物の例を市販品で挙げると、水溶性タイプでは、日本触媒社製のエポクロスWS−500及びWS−700が挙げられる。また、例えばエマルションタイプでは、日本触媒社製のエポクロスK−2010、K−2020及びK−2030が挙げられる。これらの中でも、塗布液が含む重合体との反応性の高い水溶性タイプが好ましい。
また、オキサゾリン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
オキサゾリン化合物の量は、塗布液が含む重合体が有する極性基とオキサゾリン化合物が有するオキサゾリン基とのモル比(極性基のモル数/オキサゾリン基のモル数)が、所定の範囲に収まるように設定しうる。具体的には、前記のモル比が、100/20〜100/100となるように設定しうる。前記のモル比を前記範囲の下限値以上にすることにより、未反応の極性基が残ることを抑制できる。また、前記のモル比を前記範囲の上限値以下にすることにより、余剰のオキサゾリン基の発生を抑制して、親水基が過剰となることを抑制できる。
さらに、塗布液が含む重合体がカルボキシル基を有し、且つ、そのカルボキシル基が中和されている場合には、重合体とオキサゾリン化合物との反応において、オキサゾリン基とカルボン酸塩とが反応しにくい。そこで、中和に用いる不揮発性塩基の種類及び不揮発性の程度を調整することで、その反応性をコントロールすることができる。
イソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物を用いうる。これらのイソシアネート化合物は、脂肪族化合物でもよく、脂環式化合物でもよく、芳香族化合物でもよい。イソシアネート化合物の具体例としては、ポリウレタンの原料として説明した(ii)成分と同様の例が挙げられる。
前記の架橋剤の中でも、エポキシ化合物及びカルボジイミド化合物が好ましく、エポキシ化合物が特に好ましい。エポキシ化合物を架橋剤として用いると、塗布層と基材フィルムとの接着性を特に大きく向上させることができる。また、カルボジイミド化合物を架橋剤として用いると、塗布液のポットライフを改善することができる。
〔4.4.硬化促進剤〕
塗布液は、上述した架橋剤に組み合わせて、硬化促進剤を含みうる。例えば、架橋剤としてエポキシ化合物を用いる場合、硬化促進剤としては、第3級アミン系化合物(4−位に3級アミンを有する2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する化合物を除く)、三弗化ホウ素錯化合物などが好適である。また、硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
硬化促進剤の量は、塗布液が含む重合体100重量部に対して、好ましくは0.001重量部以上、更に好ましくは0.01重量部以上、特に好ましくは0.03重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、更に好ましくは10重量部以下、特に好ましくは5重量部以下である。
〔4.5.硬化助剤〕
塗布液は、上述した架橋剤に組み合わせて、硬化助剤を含みうる。硬化助剤の具体例を挙げると、キノンジオキシム、ベンゾキノンジオキシム、p−ニトロソフェノール等のオキシム・ニトロソ系硬化助剤;N,N−m−フェニレンビスマレイミド等のマレイミド系硬化助剤;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系硬化助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート系硬化助剤;ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン等のビニル系硬化助剤;等が挙げられる。また、硬化助剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
硬化助剤の量は、架橋剤100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、更に好ましくは10重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。
〔4.6.不揮発性塩基〕
塗布液は、更に不揮発性塩基を含みうる。不揮発性塩基としては、塗布液を基材フィルムに塗布した後に乾燥させる際の処理条件下(例えば80℃で1時間放置した場合)において、実質的に不揮発性である塩基が挙げられる。ここで実質的に不揮発性であるとは、通常、不揮発性塩基の減少分が80%以下であることをいう。このような不揮発性塩基は、ポリウレタン等の重合体が含む酸構造を中和する中和剤として機能しうる。
不揮発性塩基としては、無機塩基を用いてもよく、有機塩基を用いてよい。中でも、沸点100℃以上の有機塩基が好ましく、沸点100℃以上のアミン化合物が更に好ましく、沸点200℃以上のアミン化合物が特に好ましい。また、有機塩基は低分子化合物でもよく、重合体でもよい。
不揮発性塩基の例を挙げると、無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。また、有機塩基としては、例えば、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリ[(2−ヒドロキシ)−1−プロピル]アミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパン水酸化カリウム、亜鉛アンモニウム錯体、銅アンモニウム錯体、銀アンモニウム錯体、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、3−ウレイドプロピルトリメトシキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシカルボン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタール酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、キノリン、ピコリン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、シクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イロプロパノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N−N−ジエタノールアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルエタノールアミン、アミノヘキシルエタノールアミン、アミノエチルプロパノールアミン、アミノプロピルプロパノールアミン、アミノヘキシルプロパノールアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−エチルイミダゾール、2−アミノイミダゾールサルフェート、2−(2−アミノエチル)−ベンゾイミダゾール、ピラゾール、5−アミノピラゾール、1−メチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−5−アミノピラゾール、1,3−ジメチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−アシノ−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、3−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、アミノ樹脂(例えば、1,3−ジメチル−4−クロロ−メラミン樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂等)などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
不揮発性塩基の量は、塗布液が含む重合体100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは1重量部以上、特に好ましくは2重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。不揮発性塩基の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、十分な接着力を得ることができる。また、不揮発性塩基の量を前記範囲の上限値以下にすることにより、ポリビニルアルコール製の偏光子の色抜けの防止ができる。
〔4.7.粒子〕
塗布液は、更に粒子を含みうる。粒子としては、無機材料からなる無機粒子、有機材料からなる有機粒子、並びに、無機材料と有機材料とを組み合わせて含む複合粒子のいずれを用いてもよい。ただし、塗布層の形成を容易に行う観点から、水分散性の粒子を用いることが好ましい。無機粒子の材料を挙げると、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物;炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。また、有機粒子の材料を挙げると、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの例示した粒子の材料の中でも、シリカが好ましい。シリカの粒子は、シワの発生を抑制する能力及び透明性に優れ、内部ヘイズを生じ難く、着色が無いため、複層フィルムの光学特性に与える影響が小さい。また、シリカは、塗布液中での分散性および分散安定性が良好である。シリカの粒子の中でも、非晶質コロイダルシリカ粒子が特に好ましい。
前記のようなシリカ粒子としては、市販品を用いてもよい。市販品の例を挙げると、日本触媒社製の、エポスターMX−050W(平均粒子径80nm)、シーホスターKE−W10(平均粒子径110nm)、エポスターMX−100W(平均粒子径150nm〜200nm);日産化学社製のスノーテックスMP−2040(平均粒子径150nm〜200nm)などが挙げられる。
塗布液が粒子を含む場合には、粒子の径を調整することにより、当該塗布液を用いて形成される塗布層の表面(図3の面71)に突起を形成することができる。このような突起を形成することにより、塗布層の表面の滑り性を良好にできる。この際、粒子の径と突起の高さとの間には通常は相関があるので、粒子の径は、塗布液の層の表面に求められる滑り性に応じて設定しうる。
中でも、150nm未満の平均粒子径を有する粒子(S)と、150nm以上の平均粒子径を有する粒子(L)とを組み合わせて用いることが好ましい。
粒子(S)の平均粒子径は、好ましくは20nm以上、更に好ましくは30nm以上、特に好ましくは40nm以上であり、好ましくは150nm未満、更に好ましくは140nm以下、特に好ましくは130nm以下である。粒子(S)の平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、塗布層の表面に突起を安定して形成できるので、塗布層の表面の滑り性を効果的に高めることができる。また、粒子(S)の平均粒子径を前記範囲の上限値以下にすることにより、粒子による塗布層の内部ヘイズの増大を抑制できる。
粒子(S)の平均粒子径は、塗布層の厚みに対して、好ましくは3倍以上、更に好ましくは4倍以上、特に好ましくは5倍以上であり、好ましくは10倍以下、更に好ましくは8倍以下、特に好ましくは7倍以下である。粒子(S)の平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、塗布層の表面に突起を安定して形成できるので、塗布層の表面の滑り性を効果的に高めることができる。また、粒子(S)の平均粒子径を前記範囲の上限値以下にすることにより、粒子による塗布層の内部ヘイズの増大を抑制できる。
粒子(S)の量は、塗布液が含む重合体100重量部に対し、好ましくは2重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、特に好ましくは5重量部以上であり、好ましくは24重量部以下、更に好ましくは20重量部以下、特に好ましくは18重量部以下である。粒子(S)の量を前記の範囲に収めることにより、塗布層の内部ヘイズの増大を抑制しながら、塗布層の表面の滑り性を高めることができる。
粒子(L)の平均粒子径は、好ましくは150nm以上、更に好ましくは160nm以上、特に好ましくは170nm以上であり、且つ、好ましくは250nm以下、更に好ましくは230nm以下、特に好ましくは200nm以下である。粒子(L)の平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、塗布層の表面の滑り性を効果的に高めることができる。また、粒子(L)の平均粒子径を前記範囲の上限値以下にすることにより、塗布層の内部ヘイズを小さくできる。
粒子(L)の平均粒子径は、塗布層の厚みに対して、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上、特に好ましくは4倍以上であり、好ましくは10倍以下、より好ましくは8倍以下、特に好ましくは7倍以下である。粒子(L)の平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、塗布層の表面の滑り性を効果的に高めることができる。また、粒子(L)の平均粒子径を前記範囲の上限値以下にすることにより、塗布層の内部ヘイズを小さくできる。
粒子(S)の平均粒子径と粒子(L)の平均粒子径との差は、好ましくは70nm以上、より好ましくは100nm以上、特に好ましくは120nm以上であり、好ましくは200nm以下、より好ましくは180nm以下、特に好ましくは160nm以下である。粒子(S)の平均粒子径と粒子(L)の平均粒子径との差を前記範囲に収めることにより、塗布層の内部ヘイズの増大を抑制しながら、塗布層の表面の滑り性を高めることができる。
粒子(L)の量は、塗布液が含む重合体100重量部に対し、好ましくは5重量部以上、更に好ましくは6重量部以上、特に好ましくは7重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、更に好ましくは18重量部以下、特に好ましくは15重量部以下である。粒子(L)の量を前記の範囲に収めることにより、塗布層の内部ヘイズの増大を抑制しながら、塗布層の表面の滑り性を高めることができる。
粒子(L)の量と粒子(S)の量との差は、塗布液が含む重合体100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは1重量部以上、特に好ましくは2重量部以上であり、好ましくは25重量部以下、更に好ましくは20重量部以下、特に好ましくは15重量部以下である。粒子(L)の量と粒子(S)の量との差を前記の範囲に収めることにより、塗布層の内部ヘイズの増大を抑制しながら、塗布層の表面の滑り性を高めることができる。
〔4.8.濡れ剤〕
塗布液は、更に濡れ剤を含みうる。濡れ剤を用いることにより、塗布液を基材フィルムに塗布する際の塗布性を良好にできる。
濡れ剤としては、例えば、アセチレン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。アセチレン系界面活性剤としては、例えば、エアープロダクツアンドケミカルズ社製サーフィノールシリーズ、ダイノールシリーズ等を用いることができる。また、フッ素系界面活性剤としては、例えば、DIC社製メガファックシリーズ、ネオス社製フタージェントシリーズ、AGC社製サーフロンシリーズ等を用いることができる。濡れ剤としては、重ね塗り性の観点から、アセチレン系界面活性剤を用いることが好ましい。
また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
濡れ剤の量は、塗布液に含まれる固形分に対して、好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上であり、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは4重量部以下、特に好ましくは3重量%以下である。濡れ剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、十分な塗布性を得ることができる。また、濡れ剤の量を前記範囲の上限値以下にすることにより、濡れ剤のブリードアウトを抑制でき、更には重ね塗り性を良好にできる。
〔4.9.任意の成分〕
塗布液は、本発明の効果を著しく損なわない限り、更に任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤、レベリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックスなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
〔4.10.塗布液の粘度〕
塗布液は、塗布に適した範囲の粘度を有することが好ましい。塗布液の具体的な粘度は、15mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以下が特に好ましい。ここで、前記の粘度は、音叉型振動式粘度計により25℃の条件下で測定した値である。この粘度は、例えば、溶媒の割合及び粒子の粒径などによって調整しうる。
〔4.11.塗布液の製造方法〕
塗布液は、例えば、重合体及び溶媒、並びに、必要に応じてその他の成分を任意の順番で混合することにより、製造しうる。
[5.塗布液の層の乾燥及び硬化方法]
上述した実施形態のように、基材フィルムの下面に塗布液の層を形成した後で、通常は、当該塗布液の層を硬化させる工程を行う。塗布液の層の硬化は、例えば、乾燥によって塗布液に含まれる溶媒を除去したり、塗布液に含まれる重合体を架橋させたりすることにより、行いうる。乾燥方法は任意であり、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥など任意の方法で行いうる。また、架橋方法は任意であり、紫外線等の光の照射、加熱など任意の方法で行いうる。中でも、乾燥及び架橋を同時に進行させて工程数を減らす観点、及び、架橋反応等の反応を速やかに進行させる観点から、塗布液の層の硬化は加熱により行うことが好ましい。このような加熱を行う場合、通常は、溶媒の乾燥と重合体の架橋とが同時に進行する。
加熱により塗布液の層を硬化させる場合、加熱温度は、好ましくは(Tg−30℃)以上、より好ましくは(Tg−10℃)以上であり、好ましくは(Tg+60℃)以下、より好ましくは(Tg+50℃)以下である。ここでTgとは、基材フィルムに含まれる樹脂のガラス転移温度を表す。加熱温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、乾燥及び架橋を速やかに進めることができるので、塗布液の層の硬化を効率的に進行させられる。また、加熱温度を前記範囲の上限値以下にすることにより、基材フィルムの配向緩和を抑制できるので、加熱による基材フィルムの光学特性の変化を抑制できる。
[6.複層フィルム]
上述した製造方法で製造される複層フィルムは、基材フィルム及び塗布層を備える。この複層フィルムにおいて、塗布層は、上述したように、塗布ムラの発生を抑制しながら塗布液を塗布して形成されたものである。そのため、この複層フィルムの塗布層は、通常、厚みが均一であるので、塗布層の厚みムラを小さくできる。ここで、塗布層の厚みムラとは、塗布層の厚みの最大値と最小値との差を表す。具体的には、塗布層の厚みムラは、好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下、特に好ましくは5nm以下であり、理想的には0nmである。
塗布層の厚みは、好ましくは25nm以上、更に好ましくは30nm以上、特に好ましくは35nm以上であり、好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下、特に好ましくは100nm以下である。塗布層の厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、塗布層の機械的強度を高めることができる。また、塗布層の厚みを前記範囲の上限値以下にすることにより、基材フィルムが有する光学特性に塗布層が影響を与え難くできる。そのため、複層フィルムの光学特性を調整するために塗布層の構成を変更する必要が無いので、複層フィルムの光学特性の調整を容易に行うことができる。
光学フィルムとしての機能を安定して発揮させる観点から、複層フィルムの全光線透過率は高いことが好ましい。具体的には、複層フィルムの1mm厚換算での全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、全光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定しうる。
複層フィルムの内部ヘイズは、小さいことが好ましい。具体的には、複層フィルムの内部ヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。ここで、複層フィルムの内部ヘイズは、下記の方法により測定しうる。
高さ55mm、幅36mm、光路長10mmの石英セルを用意する。この石英セル内に、シリコーンオイルを充填する。このシリコーンオイル中に複層フィルムを入れて、測定試料を得る。このように用意した測定試料を用いて、ヘイズメーターによって、複層フィルムの内部ヘイズを測定しうる。
複層フィルムは、面内方向又は厚み方向にレターデーションを有する位相差フィルムであってもよい。具体的なレターデーションの範囲は、複層フィルムの用途に応じて設定しうる。具体的な範囲を挙げると、通常は、面内レターデーションReで10nm〜500nm、厚み方向のレターデーションRthで−500nm〜500nmの範囲から適宜選択される。
複層フィルムは、面内レターデーションReのバラツキが、好ましくは10nm以内、更に好ましくは5nm以内、特に好ましくは2nm以内である。面内レターデーションReのバラツキを前記範囲にすることにより、複層フィルムを液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に、表示品質を良好なものにすることが可能になる。ここで、面内レターデーションReのバラツキは、光入射角0°(入射光線とフィルムの表面とが直交する状態)の時の面内レターデーションReを、フィルムの幅方向に測定したときの、その面内レターデーションReの最大値と最小値との差である。
基材フィルムと塗布層との界面の屈折率差は、0.05以下であることが好ましい。この屈折率差が前記範囲内にあると、複層フィルムを光が透過する際の光の損失を抑えることができる。
複層フィルムの残留揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。揮発性成分の量を前記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、複層フィルムの面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthの経時変化を小さくすることができる。
図3に示すように、複層フィルム10の基材フィルム30側の表面(即ち、基材フィルム30の上面32)と、塗布層70側の表面(即ち、基材フィルム30とは反対側の塗布層70の面71)との静摩擦係数は、小さいことが好ましい。前記の静摩擦係数は、好ましくは0.3〜0.5である。これにより、複層フィルム10を巻き取ってフィルムロール80としたときに、巻き重ねられた複層フィルム10同士の固着によるシワの発生を抑制できるので、フィルムロール80の保存による欠陥の発生を抑制できる。前記のように小さい静摩擦係数は、塗布液が上述した粒子を含むことにより、実現できる。
複層フィルムの幅は、例えば1000mm〜3000mmとしうる。
また、複層フィルムは、基材フィルム及び塗布層に組み合わせて、任意の層を備えていてもよい。複層フィルムが任意の層を備える場合、塗布層の形成後に、任意の層を設ける工程を行ってもよい。
複層フィルムは、光学フィルムとして使用しうる。複層フィルムの用途となる光学フィルムの例を挙げると、保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムなどが挙げられる。中でも、複層フィルムは、位相差フィルム又は偏光板保護フィルムとして用いることが好ましく、偏光板保護フィルムとして用いることが特に好ましい。
偏光板は、通常、偏光子と偏光板保護フィルムとを備える。したがって、複層フィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合には、通常、偏光子に複層フィルムを貼り合わせる。この際、通常は、複層フィルムの塗布層側の面で、複層フィルムと偏光子とを貼り合わせる。
複層フィルムと偏光子とを貼り合わせる際、接着剤層を介することなく直接に複層フィルムと偏光子とを貼り合せてもよく、接着剤層を介して貼り合せてもよい。さらに、偏光子の一方の面だけに複層フィルムを貼り合せてもよく、両方の面に貼り合せてもよい。偏光子の一方の面だけに複層フィルムを貼り合わせる場合、偏光子の他方の面には、透明性の高い別のフィルムを貼り合せてもよい。
偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素若しくは二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって製造しうる。また、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させ延伸し、さらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって製造しうる。さらに、偏光子として、例えば、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの、偏光を反射光と透過光とに分離する機能を有する偏光子を用いてもよい。これらの中でも、ポリビニルアルコールを含む偏光子が好ましい。偏光子の偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光子の平均厚みは、好ましくは5μm〜80μmである。
偏光子と複層フィルムとを接着するための接着剤としては、光学的に透明なものを用いうる。この接着剤としては、例えば、水性接着剤、溶剤型接着剤、二液硬化型接着剤、光硬化型接着剤、感圧性接着剤などが挙げられる。この中でも、水性接着剤が好ましく、特にポリビニルアルコール系の水性接着剤が好ましい。また、接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
複層フィルムと偏光子とを貼り合わせる方法に制限は無い。例えば、偏光子の一方の面に必要に応じて接着剤を塗布した後、ロールラミネーターを用いて偏光子と複層フィルムとを貼り合せ、必要に応じて乾燥又は紫外線等の光の照射を行う方法が好ましい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
以下の説明において、量を表す「%」、「ppm」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
[評価方法]
〔塗布ムラの評価方法〕
図4に示すように、長尺の複層フィルム10から縦1m×横1mに試験片510を切り出し、暗室内でスクリーン520の前に設置した。その後、試験片510から500mmの地点に設置した光源(浜松ホトニクス社製「L8425−01」)530から、試験片510に光を照射した。そして、試験片510の正面から試験片510を観察した。
全体に均一なコントラストが観察された場合、塗布ムラが無いとものとして「良」と判定した。
局所的にコントラストが異なるスジ状の部分540が観察された場合、塗布ムラがあるものとして「不良」と判定した。
〔塗布層の厚みムラの評価方法〕
長尺の複層フィルムから縦1m×横1mにフィルム片を切り出した。複層フィルムの幅方向及び長手方向のそれぞれにおいて100mmピッチで、前記のフィルム片から縦50mm×横50mmの測定用サンプルを複数枚切り出した。これらの測定用サンプルそれぞれの塗布層の厚みを膜厚計(大塚電子株式会社製「FE−300」)で測定した。測定された厚みの測定値の最大値と最小値との差として塗布層の厚みムラを算出した。厚みムラが20nm未満であれば「良」と判定し、厚みムラが20nm以上であれば「不良」と判定した。
[実施例1]
(塗布液の製造)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び冷却管を備えた反応器に、ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製「マキシモールFSK−2000」;水酸基価56mgKOH/g)840部、トリレンジイソシアネート119部、及びメチルエチルケトン200部を入れ、窒素を導入しながら75℃で1時間反応させた。
反応終了後、60℃まで冷却し、ジメチロールプロピオン酸35.6部を加え、75℃で反応させた。これにより、酸構造を含有するポリウレタン溶液を得た。この溶液に含まれるポリウレタンのイソシアネート基(−NCO基)の含有量は、0.5%であった。
次いで、このポリウレタン溶液を40℃にまで冷却した。冷却したポリウレタン溶液に、水1,500部、及び、不揮発性塩基としてイソフタル酸ジヒドラジド(沸点224℃以上)120部(ポリウレタン100部に対し7部)を加え、ホモミキサーで高速撹拌することにより乳化を行った。この乳化した液から加熱減圧下でメチルエチルケトンを留去し、中和されたポリウレタンの水分散体を得た。この水分散体の固形分濃度は、40%であった。
さらに、このポリウレタンの水分散体を、含まれるポリウレタンの量が100部となる量だけ取り分けた。取り分けたポリウレタンの水分散体に、エポキシ化合物であるグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製「デナコールEX−313」;エポキシ当量141g/eq)40部と、平均粒子径40nmのシリカ粒子(電気化学工業社製「UFP−80」)24部と、平均粒子径200nmのシリカ粒子(日産化学工業製「スノーテックスMP−2040」)20部と、非イオン系界面活性剤として4,7−ジヒドロキシ−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシンのエチレンオキサイド付加物(日信化学工業社製「サーフィノール465」)と、水とを配合して、未硬化状態のウレタン樹脂として固形分濃度5%の液状の水系樹脂を、塗布液として得た。ここで、非イオン系界面活性剤の添加量は、得られる塗布液に対して100ppmとなる量とした。
(基材フィルムの製造)
脂環式オレフィン樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR1430」;ガラス転移温度135℃)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥した。その後、65mm径のスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式のフィルム溶融押出し成形機を使用し、溶融樹脂温度270℃、Tダイの幅500mmの成形条件で、厚み100μm、長さ1000mの基材フィルムを製造した。この基材フィルムは、脂環式オレフィン樹脂からなる長尺の基材フィルムである。
(複層フィルムの製造)
図1に示すような、上述した実施形態において説明した製造装置20を用意した。この製造装置20を用いて、基材フィルム30を搬送しながら、下記の手順により複層フィルム10を製造した。
基材フィルム30の下面31に、コロナ処理機100を用いてコロナ放電処理を施した。その後、基材フィルム30を長手方向に走行させながら、その下面31に、塗布ロール210を備えた塗布装置200を用いて、塗布液40を塗布した。塗布ロール210によって塗布液40を塗布される際の、水平面Pに対する基材フィルム30の角度θ、及び、基材フィルム30の張力は、下記表1の通りにした。これにより、基材フィルム30の下面31に、塗布液の層50が形成された。
塗布液の層50を下面31に形成された基材フィルム30を、水平面Pに対する基材フィルム30の角度θを表1に示す通りに維持したまま、掻取装置300へと送った。そして、基材フィルム30の下面31に塗布された塗布液40の一部を掻取装置300の掻き取りロール310により掻き取って、乾燥後の塗布層70の厚みT70が50nmとなるように、塗布液の層50の厚みを調整した。
その後、オーブン400によって塗布液の層50を、温度100℃で60秒間加熱した。この加熱により、塗布液の層50に含まれる溶媒の乾燥及びポリウレタンの架橋が進行して、塗布液の層50が硬化し、基材フィルム30の下面31に塗布層70が形成された。これにより、図3に示すような、基材フィルム30及び塗布層70を備える複層フィルム10を得た。得られた複層フィルム10の塗布層70の厚みを膜厚計(大塚電子株式会社製「FE−300」)で測定したところ、50nmであった。得られた複層フィルムについて、上述した方法で評価を行った。
[実施例2〜4、及び、比較例1〜3]
塗布ロール210によって塗布液40を塗布される際の、水平面Pに対する基材フィルム30の角度θ、及び、基材フィルム30の張力を、下記表1の通りに変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、複層フィルム10の製造及び評価を行った。
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表1に示す。下記の表1において、略称の意味は、以下の通りである。
θ:塗布ロールによって塗布液を塗布される際の、水平面に対する基材フィルムの角度。
張力:塗布ロールによって塗布液を塗布される際の、基材フィルムの張力。
Figure 0006536116
[検討]
前記の実施例及び比較例の結果から分かるように、塗布時の基材フィルムの傾きを、推命面に対して基材フィルムがなす角度θが所定の範囲に収まるように調整することで、塗布液の塗布ムラを抑制できる。
10 複層フィルム
20 複層フィルムの製造装置
30 基材フィルム
31 基材フィルムの下面
32 基材フィルムの上面
40 塗布液
50 塗布液の層
60 繰出しロール
70 塗布層
71 基材フィルムとは反対側の塗布層の面
80 フィルムロール
100 コロナ処理機
200 塗布装置
210 塗布ロール
220 供給器
230 塗布液を塗布される区間
240 塗布ロールと掻き取りロールとの間の区間
300 掻取装置
310 掻き取りロール
320 回収器
400 オーブン
510 試験片
520 スクリーン
530 光源
540 コントラストが異なる部分

Claims (3)

  1. 基材フィルムと、塗布液を硬化させた厚み200nm以下の塗布層と、を備える複層フィルムの製造方法であって、
    水平面に対して0°〜+20°の角度(ただし、基材フィルムが下がるように走行する向きが、プラスの角度を表す。)で走行する前記基材フィルムの下面に、第一ロールによって前記塗布液を塗布して、前記塗布液の層を形成する工程と、
    前記第一ロールの下流に設けられた第二ロールによって、前記基材フィルムの前記下面に塗布された前記塗布液の一部を掻き取る工程と、を含み、
    前記塗布液を塗布される時の前記基材フィルムの張力が、1MPa〜12MPaである、複層フィルムの製造方法。
  2. 前記第一ロールと前記第二ロールとの間において、前記基材フィルムが、水平面に対して0°〜+20°の角度(ただし、前記基材フィルムが下がるように走行する向きが、プラスの角度を表す。)で走行する、請求項1記載の複層フィルムの製造方法。
  3. 前記塗布液の層を硬化させる工程を含む、請求項1又は2に記載の複層フィルムの製造方法。
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