JP2005296699A - バー塗布方法及び装置 - Google Patents

Abstract

【課題】塗布幅の規制ができ、塗布液が支持体裏面へ回り込む裏回りの防止ができるバー塗布方法及び装置を提供する。
【解決手段】走行する帯状の支持体１６に、支持体の幅方向に平行なスロット先端から押し出した塗布液を塗工用バーを介して転移塗布するバー塗布方法。塗布液は、溶媒と溶質とよりなる液体である。塗工用バーに対し、支持体の走行方向上流側においてプレ塗布装置７０を設け、プレ塗布装置により、支持体の幅方向端部近傍に溶媒と同一組成の液体を塗布してダミー塗布層を形成し、しかる後に、支持体のダミー塗布層以外の部分に塗布液を塗工用バーを介して転移塗布する。
【選択図】 図１

Description

本発明はバー塗布方法及び装置に係り、特に、走行する帯状の支持体に塗工用バーを用いて塗布液を塗布するのに好適なバー塗布方法及び装置に関する。

写真感光材料や磁気記録媒体は、連続走行する帯状の支持体（以下、「ウェブ」という）上に磁性液等の所定の塗布液を塗布して塗布膜を形成する塗布工程を経て製造される。特に、磁気記録テープ等の磁気記録媒体は、近年、放送用やコンピュータ用として急速に容量、記録密度が向上しており、膜厚が極薄く、膜厚分布が均一であり、かつ表面が平滑な磁性層を得ることのできる塗布技術が求められている。

その他、光学補償フィルム、反射防止フィルム、防眩性フィルム等の光学フィルム等の製造にもこのような塗布技術が求められている。

このような市場の要求に対応できる塗布装置の一種として、従来よりバー塗布装置が使用されている。このバー塗布装置は、丸棒状のロッドである塗工用バーを備え、走行するウェブに、このウェブの幅方向に平行なスロット先端から押し出した塗布液を塗工用バーを介して転移塗布するもので、簡単な装置構成でしかも薄層塗布が可能なことから広く用いられている。

このようなバー塗布装置において、ウェブ幅全体に塗布液を全幅塗布しようとすると、ウェブ裏面への塗布液の回りこみ（以下「裏回り」という）が発生し、塗布後にウェブを搬送する搬送ローラ等の工程汚染を発生させてしまうという問題点が従来より指摘されている。

この対策として、従来より各種の提案がなされている（特許文献１等。）。この提案は、バー塗布装置の上流側に注射器を設け、ウェブの非塗布部に塗布液の溶媒と同種の溶媒を塗布し、その後、ウェブの略全幅に塗布液を塗布する構成のものである。これにより、バー塗布装置において、ウェブの非塗布部に塗布液は付着せず、裏回りが防げる効果が得られるとされている。
特開平７−１５５６８０号

しかしながら、特許文献１で提案されているような構成のものでは、昨今の要求には充分には対応しきれていないのが現状である。

近年、バー塗布装置を使用して、膜厚が極薄く、膜厚分布が均一であり、かつ表面が平滑な磁性層を得るために、塗工用バーの先端部分における塗布液の圧力を高くする傾向にある。この場合、塗布幅の規制が困難となる。すなわち、塗布液の圧力が高い状態では、ウェブの非塗布部に塗布液の溶媒と同種の溶媒を塗布するのみでは、この溶媒が高い圧力の塗布液に押しのけられ、塗布幅の規制ができなくなる。

本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、塗布幅の規制ができ、塗布液が支持体裏面へ回り込む裏回りの防止ができるバー塗布方法及び装置を提供することを目的とする。

本発明は、前記目的を達成するために、走行する帯状の支持体に、該支持体の幅方向に平行なスロット先端から押し出した塗布液を塗工用バーを介して転移塗布するバー塗布方法において、前記塗布液は、溶媒と溶質とよりなる液体であり、前記塗工用バーに対し、前記支持体の走行方向上流側においてプレ塗布装置を設け、該プレ塗布装置により、前記支持体の幅方向端部又は端部近傍に前記溶媒と同一組成の液体を塗布してダミー塗布層を形成し、ダミー塗布層形成後に、前記支持体のダミー塗布層以外の部分に前記塗布液を塗工用バーを介して転移塗布することを特徴とするバー塗布方法、及びそのためのバー塗布装置を提供する。

本発明によれば、支持体の幅方向端部又は端部近傍に溶媒よりなるダミー塗布層が形成され、これ以外の部分に塗布液よりなる塗布層が形成されるので、塗布幅の規制が良好に行え、また、塗布液が支持体裏面へ回り込む裏回りの防止もできる。

すなわち、ダミー塗布層の上に塗布液が塗布される訳ではないので、ダミー塗布層の溶媒が、高い圧力の塗布液に押しのけられ、塗布幅の規制ができなくなるという不具合は生じない。

なお、プレ塗布装置としては、特に制限がないが、バーコータ、グラビアコータ（ダイレクトグラビアコータ、グラビアキスコータ等）、ロールコータ（トランスファロールコータ、リバースロールコータ等）、ダイコータ、エクストルージョンコータ、ファウンテンコータ、注射器、又はスライドホッパ等が採用できる。

本発明において、前記塗工用バーの直径が６ｍｍ以下であることが好ましい。塗布点の圧力が高い場合には、このような直径が小さい塗工用バーを使用すると、良好な塗布が行える。その点で、塗工用バーの直径が４ｍｍ以下であることが、より好ましい。

また、本発明において、前記塗工用バーへの前記支持体の巻き掛け角度を１０度以上に設定することが好ましい。塗布点の圧力が高い場合には、塗工用バーへの支持体の巻き掛け角度をこのような範囲にすると、良好な塗布が行える。その点で、巻き掛け角度を２０度以上に設定することが、より好ましい。

また、本発明において、前記支持体の張力を９８Ｎ／ｍ以上に設定することが好ましい。塗布点の圧力が高い場合には、支持体の張力をこのような範囲にすると、良好な塗布が行える。その点で、支持体の張力を１９６Ｎ／ｍ以上に設定することが、より好ましい。

また、本発明において、前記支持体の走行速度を１００ｍ／分以上に設定することが好ましい。塗布点の圧力が高い場合には、支持体の走行速度をこのような範囲にすると、良好な塗布が行える。その点で、支持体の走行速度を２００ｍ／分以上に設定することが、より好ましい。

以上説明したように、本発明によれば、支持体の幅方向端部又は端部近傍に溶媒よりなるダミー塗布層が形成され、これ以外の部分に塗布液よりなる塗布層が形成されるので、塗布幅の規制が良好に行え、また、塗布液が支持体裏面へ回り込む裏回りの防止もできる。

以下、添付図面により、本発明に係るバー塗布方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。図１は、本発明に係るバー塗布方法及び装置が適用される磁気記録媒体の塗布ラインの構成図である。

磁気記録媒体の塗布ラインは、図１に示されるように、送り出し機６６から帯状の可撓性支持体であるウェブ１６が送り出されるようになっている。ウェブ１６はガイドローラ６８によってガイドされてプレ塗布装置７０に送りこまれるようになっている。プレ塗布装置７０は、ウェブ１６の幅方向端部又は端部近傍に溶媒を塗布してダミー塗布層を形成するために設けられるもので、２個の注射器（図示では１個）よりなる。

プレ塗布装置７０の下流にはバー塗布装置１０が設けられており、磁気記録媒体を含む塗布液がウェブ１６に塗布できるようになっている。この下流には、乾燥ゾーン７６、加熱ゾーン７８が順次設けられており、ウェブ１６が乾燥処理されるようになっている。そして、この下流に設けられた巻取り機８２により、塗布膜が形成されたウェブ１６が巻き取られるようになっている。

図２は本発明に係るバー塗布装置１０の一例を示す断面図であり、図３はバー塗布装置の一部を切り欠いて内部が見えるようにした斜視図である。図２及び図３に示されるように、バー塗布装置１０は、主として、塗布ヘッド１４と、バー１２に近接走行するようにウェブ１６をガイドする一対のガイドローラ１８、１８とで構成される。

塗布ヘッド１４は、主として、バー１２と、バー１２を回転自在に支持するバックアップ部材２０と、コーターブロック２２、２４と、サイドブロック２１、２３（図３参照）から構成される。バックアップ部材２０と各コーターブロック２２、２４との間には、マニホールド２６、２８及びスロット３０、３２が形成され、各マニホールド２６、２８に塗布液が供給される。

各マニホールド２６、２８に供給された塗布液は、ウェブの幅方向に平行でウェブ走行方向に狭隘なスロット３０、３２を介してウェブの幅方向に均一に押し出される。これにより、バー１２に対してウェブ１６の送り方向の上流側（以下、「１次側」という）には１次側塗布ビード３４が形成され、下流側（以下「２次側」という）に２次側塗布ビード３６が形成される。したがって、バー１２はこれらの塗布ビード３４、３６を介して走行するウェブ１６に塗布液を転移塗布する。

バー１２は回転駆動される構成でもよく、殆ど回転しない状態で支持されていてもよい。バー１２が回転駆動される場合、ウェブ１６の送り方向に対し、順転とすることもでき、逆転とすることもできる。

マニホールド２６、２８から過剰に供給された塗布液は、各コーターブロック２２、２４とウェブ１６との間からオーバーフローし、側溝２５、２７（図３参照）を介して回収される。なお、マニホールド２６、２８への塗布液の供給はマニホールド２６、２８の中央部から行なっても、又は端部から行なってもよい。

また、塗布ヘッド１４には、塗布液の給液幅規制及びオーバーフローした塗布液の排出（場合によってはリターン系を組み再利用）のためのサイドブロック２１、２３が設けられている。このサイドブロック２１、２３によって上記したスロット３０、３２のスロット幅が設定され、給液幅が規制されることによって、目標塗布幅が決まる。この場合、ウェブ１６に全幅塗布すると、塗布液のウェブ１６の裏面への裏回りが発生するので、目標塗布幅はウェブ１６の幅よりも狭く設定され、ウェブ１６の両端に未塗布部分が形成されるように塗布される。

なお、給液幅の規制は、サイドブロック２１、２３によらない構成も可能である。この場合、スロット３０、３２の内部に幅規制板を配し、同様に作用を果たさせる。この構成であれば、異なる塗布幅の生産に柔軟に対応が可能である。

しかし、目標塗布幅をウェブ１６の幅よりも狭くすると、塗布幅の変動が大きく、有効な塗布幅が得られにくいという問題が生じる。この塗布幅変動は、塗布液の圧力が高い程顕著になる。この塗布幅変動分を見込んで、目標塗布幅を狭くすると、有効塗布幅が狭くなり、生産性が低下（製品歩留りの低下）することとなる。一方、目標塗布幅をウェブ１６の幅に近付けると、塗布液のウェブ１６の裏面への裏回りが発生する。

また、塗布幅変動分を見込んで、目標塗布幅を狭くすると、別な問題を生じることもある。すなわち、スロット３０、３２の端部付近から押し出された塗布液の濡れ広がりによって、塗布膜端部が厚塗りになり易く、これにより、ライントラブルが発生したり、ウェブ１６の両端を裁断して製品にしなくてはならず、製品歩留りが低下する。

次に、塗布液の濡れ広がりによる塗布膜端部の厚塗りの問題点と、その対策について説明する。

図４〜図６は、バー塗布装置１０を上方からみたもので、ウェブ１６に全幅塗布しないことを前提とした場合の、スロット端部３０Ａ、３２Ａとウェブ端部１６Ａとの関係を模式的に示した模式図である。

図４は従来のワイヤバー塗布装置の場合である。スロット３０、３２から押出された塗布液は、ワイヤバー１１２のワイヤ列４２により掻き上げられ、ウェブ１６に転移塗布される。これにより、ウェブ１６面に塗布膜が形成される。図４では、ワイヤ列４２の面長（Ｌ２）とスロット幅（Ｌ１）とが同じで、スロット端部３０Ａ、３２Ａとワイヤ列端部４２Ａとがウェブ１６の幅方向で同じ位置にある。

しかし、図４のように、ワイヤ列４２とロッド１３８の径が異なると、ワイヤ列端部４２Ａでの段差により、塗布膜端部に厚塗り部分４４（Ｌ３の部分）が発生する。また、スロット端部３０Ａ、３２Ａ付近から押し出された塗布液の表面張力による塗れ広がりも、厚塗り部分４４の発生に寄与する。

従来のバー塗布装置の場合、塗布膜端部の厚塗り部分４４の塗布厚さ倍率は、定常な塗布膜（Ｌ４の部分）の塗布厚さに比べて４〜２０倍程度の厚塗りになり、厚塗り部分の幅（Ｌ３）は５〜３０ｍｍ程度になる。因みに、Ｌ５は未塗布部分の幅であり、Ｌ６はウェブ幅である。

図５は、塗布膜端部の厚塗り減少対策を行った本発明のバー塗布装置１０の一態様である。図４に示される従来のバー塗布装置と相違する点は、ワイヤバー１１２を使用せず、ワイヤを巻いていないバー１２（いわゆる、フラットバー又はプレーンバー）を使用しているのみである。

図５のバー塗布装置１０によれば、スロット端部３０Ａ、３２Ａ付近から押し出された塗布液はその表面張力により塗れ広がり、目標塗布幅に比べて塗布幅が広くなろうとするが、ウェブ１６の幅方向端部又は端部近傍の溶媒よりなるダミー塗布層Ｄ、Ｄが、先ずバー１２によって濡れ広がり、この濡れ広がったダミー塗布層Ｄ、Ｄにより、塗布液の濡れ広がりが抑え込まれるので、塗布幅がＬ４に止まり、塗れ広がることはない。

また、塗布液の濡れ広がりがスロット端部３０Ａ、３２Ａの外側に位置するダミー塗布層Ｄ、Ｄにより抑え込まれるので、濡れ広がる塗布液の量も図４の従来のバー塗布装置に比べて顕著に少なくなる。これにより、塗布膜端部の厚塗り部分４４（図４のＬ３の部分）は生じなくなる。したがって、塗布液がウェブ１６の裏面へ回り込む裏回りの防止と、塗布膜端部の厚塗りの減少との両方を、簡単な構成（プレ塗布装置７０としての注射器等）で実現することができる。

図６は、塗布膜端部の厚塗り減少対策を行った本発明のバー塗布装置１０の他の態様であり、ワイヤバー２１２を使用し、このワイヤバー２１２のワイヤ列４２の面長（Ｌ２）をスロット幅（Ｌ１）よりも長くするとともにウェブ幅（Ｌ６）よりも短くして、ワイヤ列端部４２Ａがウェブ端部１６Ａとスロット端部３０Ａ、３２Ａとの間に位置されるようになっている。なお、図５の構成のように、ワイヤ列端部４２Ａがウェブ端部１６Ａよりも外側にあってもよい。

すなわち、ワイヤ列４２の面長（Ｌ２）をスロット幅（Ｌ１）よりも長くしたワイヤバー２１２を用意するか、又はワイヤ列４２の面長（Ｌ２）よりもスロット幅（Ｌ１）を短くしたコーターブロック２２、２４を用意する。

図６のバー塗布装置１０によれば、このバー塗布装置１０の構成と、ダミー塗布層Ｄ、Ｄの存在とで相俟って、良好な効果が得られる。すなわち、スロット端部３０Ａ、３２Ａ付近から押し出された塗布液はその表面張力によりワイヤ列端部４２Ａの方向に塗れ広がり、目標塗布幅に比べて塗布幅は広くなろうとするが、スロット端部３０Ａ、３２Ａの外側に位置するダミー塗布層Ｄ、Ｄがワイヤ列４２部分で塗れ広がり、塗布液の濡れ広がりを抑制する。したがって、塗布幅がＬ４に止まり、濡れ広がる塗布液の量も図４の従来のバー塗布装置に比べて顕著に少なくなる。

これにより、塗布膜端部の厚塗り部分４４（図４のＬ３の部分）は生じなくなる。したがって、塗布液がウェブ１６の裏面へ回り込む裏回りの防止と、塗布膜端部の厚塗りの減少との両方を、簡単な構成（プレ塗布装置７０としての注射器等）で実現することができる。

本発明で使用されるウェブ１６としては、一般に幅０．３〜５ｍ、長さ４５〜１００００ｍ、厚さ５〜２００μｍのポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−２，６ナフタレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等のプラスチックフィルム、紙、紙にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンブテン共重合体等の炭素数が２〜１０のα−ポリオレフイン類を塗布又はラミネートした紙、アルミニウム、銅、錫等の金属箔等、又は帯状基材の表面に予備的な加工層を形成させたものが含まれる。

塗布液の濡れ広がり方は、塗布液の物性（主に粘度、表面張力）、ウェブ１６の搬送速度、バー１２の外径、ワイヤバー２１２のワイヤ径等の塗布条件によって若干の差があるが、本発明に用いられる塗布液は、ウェブ１６上に塗布膜を形成するためのものであればよく、公知のいずれの塗布液でもよい。

たとえば、液晶を含有している塗布液や、反射防止成分を含む液を塗布液に用いることができる。塗布液の物性は、有機溶剤系の場合には低粘度（通常０．５〜２０ｍＰａ・ｓ程度）であるが、１００ｍＰａ・ｓ程度までの高粘度塗布液に対しても、本発明は対応可能である。また、塗布液の表面張力範囲も特に限定されないが、１８０〜３５０μＮ／ｃｍ程度が好ましい適用範囲である。

以上、本発明に係るバー塗布方法及び装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。

たとえば、本実施形態では、プレ塗布装置として注射器を使用したが、これ以外の公知の各種塗布手段、たとえば、バーコータ、グラビアコータ、ロールコータ、ダイコータ、エクストルージョンコータ、ファウンテンコータ、又はスライドホッパ等が採用できる。要は、ウェブ１６の幅方向端部又は端部近傍に溶媒を塗布してダミー塗布層を形成できればよい。

次に、本発明の実施例を説明する。本発明の実施例として、図１に示される磁気記録媒体の塗布ラインを使用して塗布を行った。バー塗布装置１０としては、図２、図３及び図５に示される構成のものを使用した。

ウェブ１６には、幅が５２０ｍｍで厚さが９μｍＰＥＴを使用した。

プレ塗布装置７０としての注射器より供給する第１の塗布液として、シクロヘキサノン４００重量部とメチルエチルケトン１００重量部の混合溶媒を使用した。注射器より供給する第１の塗布液の量は、１個の注射器当り５〜２５ｍＬ／分とし、ダミー塗布層Ｄの塗布幅を２ｍｍとした。

バー塗布装置１０より供給する第２の塗布液として、シクロヘキサノン４００重量部とメチルエチルケトン１００重量部の混合溶媒に、５重量部のポリエステルウレタン樹脂を溶解させたものを使用した。なお、第２の塗布液には、更に着色剤を添加し、未塗布部分（耳幅）の判別が容易なようにした。

バー塗布装置１０のスロット幅（図５のＬ１）は、６００ｍｍであり、スロット３０、３２内部に板を配し吐出幅を調整した。バー１２として、直径が３、４、６、及び１２ｍｍのもの、計４種類を準備した。バー塗布装置１０より供給する第２の塗布液の量は２．０Ｌ／分とした。

バー塗布装置１０におけるバー１２へのウェブ１６の巻き掛け角度（ラップ角度）、バー１２の直径、ウェブ１６の走行速度、及びウェブ１６の張力（テンション）は、各実施例（実施例１〜実施例４）毎に統一した。

各種の条件を変えて実施例１〜実施例４まで４種類の実験を行った。以下、順に説明する。

（実施例１）
使用したバー１２は、直径が４ｍｍのものであり、バー１２へのウェブ１６の巻き掛け角度（ラップ角度）を１５度とした。ウェブ１６の張力（テンション）は１４７Ｎ／ｍ（１５ｋｇ／ｍ）に設定した。

そして、ウェブ１６を速度を２００ｍ／分で走行させながら、バー１２も同速で順回転させ、上記のように調製した第２の塗布液を、塗布ヘッド１４からウェブ１６上に塗布した。

このうち、例１１〜例１３は、プレ塗布装置７０を使用しなかったものであり、例１４〜例１７は、プレ塗布装置７０を使用したものである。

そして、バー塗布装置１０でウェブ１６に塗布された塗布膜端部の耳幅の有無、及び裏回りの状況を観察するとともに、総合判定（×、△、○の３段階評価）を行った。結果を図７の表に示す。

図７の表における例１１は、吐出幅の規制がない（すなわち、吐出幅は、スロット幅（図５のＬ１）と同じの６００ｍｍ）ものであり、プレ塗布装置７０を使用しなかったものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅はなく、総合判定は×であった。

例１２は、吐出幅を５２０ｍｍに規制した（すなわち、ウェブ１６の幅と同じ）ものであり、プレ塗布装置７０を使用しなかったものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅はなく、総合判定は×であった。

例１３は、吐出幅を５００ｍｍに規制したものであり、プレ塗布装置７０を使用しなかったものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅の変動が大きく、部分的に耳幅がなく、総合判定は×であった。

例１４は、吐出幅の規制がない（すなわち、吐出幅は、スロット幅（図５のＬ１）と同じの６００ｍｍ）ものであり、プレ塗布装置７０を使用したものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅の変動が大きく、定常的に裏回りが認められ、総合判定は×であった。

例１５は、吐出幅を５２０ｍｍに規制した（すなわち、ウェブ１６の幅と同じ）ものであり、プレ塗布装置７０を使用したものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅の変動が大きく、部分的に裏回りが認められ、総合判定は×であった。

例１６は、吐出幅を５１０ｍｍに規制したものであり、プレ塗布装置７０を使用したものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅は３〜４ｍｍで一定しており、総合判定は○であった。

例１７は、吐出幅を５００ｍｍに規制したものであり、プレ塗布装置７０を使用したものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅は３〜４ｍｍで一定しており、総合判定は○であった。

以上の結果より、プレ塗布装置７０を使用し、かつ、ウェブ１６の幅に対し吐出幅を所定量以上に小さくすることにより、未塗布部分を均一に作れることが解った。

（実施例２）
使用したバー１２として、直径が４〜１２ｍｍのものまで３種類を使い分けた。バー１２へのウェブ１６の巻き掛け角度（ラップ角度）を２０度とした。ウェブ１６の張力（テンション）は１４７Ｎ／ｍ（１５ｋｇ／ｍ）に設定した。

そして、ウェブ１６を速度を２００ｍ／分で走行させながら、バー１２も同速で順回転させ、上記のように調製した第２の塗布液を、塗布ヘッド１４からウェブ１６上に塗布した。

全ての例（例２１〜例２６）においてプレ塗布装置７０を使用した。

そして、バー塗布装置１０でウェブ１６に塗布された塗布膜端部の耳幅の有無、及び裏回りの状況を観察するとともに、総合判定（×、△、○の３段階評価、例外的に××もあり）を行った。結果を図８の表に示す。

図８の表における例２１は、吐出幅の規制がない（すなわち、吐出幅は、スロット幅（図５のＬ１）と同じの６００ｍｍ）ものであり、バー１２として、直径が１２ｍｍのものを使用したものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅は３〜４ｍｍで一定しており、総合判定は○であった。

例２２は、吐出幅の規制がない（すなわち、吐出幅は、スロット幅（図５のＬ１）と同じの６００ｍｍ）ものであり、バー１２として、直径が６ｍｍのものを使用したものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅はなく、総合判定は×であった。

例２３は、吐出幅の規制がない（すなわち、吐出幅は、スロット幅（図５のＬ１）と同じの６００ｍｍ）ものであり、バー１２として、直径が４ｍｍのものを使用したものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅はなく、裏回りも頻発しており、総合判定は××であった。

例２４は、吐出幅を５１０ｍｍに規制したものであり、バー１２として、直径が１２ｍｍのものを使用したものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅は３〜４ｍｍで一定しており、総合判定は○であった。

例２５は、吐出幅を５１０ｍｍに規制したものであり、バー１２として、直径が６ｍｍのものを使用したものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅は３〜４ｍｍで一定しており、総合判定は○であった。

例２６は、吐出幅を５１０ｍｍに規制したものであり、バー１２として、直径が４ｍｍのものを使用したものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅は３〜４ｍｍで一定しており、総合判定は○であった。

以上の結果より、プレ塗布装置７０を使用し、かつ、ウェブ１６の幅に対し吐出幅を所定量以上に小さくしたものは、バー１２の直径が小さくなっても（すなわち、圧力が高くなっても）、未塗布部分を均一に作れることが解った。

（実施例３）
使用したバー１２は、直径が６ｍｍのものである。ウェブ１６の張力（テンション）は９８Ｎ／ｍ（１０ｋｇ／ｍ）に設定した。バー１２へのウェブ１６の巻き掛け角度（ラップ角度）を５〜１５度まで３段階で変化させた。

そして、ウェブ１６を速度を１００ｍ／分で走行させながら、バー１２も同速で順回転させ、上記のように調製した第２の塗布液を、塗布ヘッド１４からウェブ１６上に塗布した。

全ての例（例３１〜例３６）においてプレ塗布装置７０を使用した。

そして、バー塗布装置１０でウェブ１６に塗布された塗布膜端部の耳幅の有無、及び裏回りの状況を観察するとともに、総合判定（×、△、○の３段階評価）を行った。結果を図９の表に示す。

図９の表における例３１は、吐出幅の規制がない（すなわち、吐出幅は、スロット幅（図５のＬ１）と同じの６００ｍｍ）ものであり、巻き掛け角度（ラップ角度）を５度にしたものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅は３〜４ｍｍで一定しており、総合判定は○であった。

例３２は、吐出幅の規制がない（すなわち、吐出幅は、スロット幅（図５のＬ１）と同じの６００ｍｍ）ものであり、巻き掛け角度（ラップ角度）を１０度にしたものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅はなく、総合判定は×であった。

例３３は、吐出幅の規制がない（すなわち、吐出幅は、スロット幅（図５のＬ１）と同じの６００ｍｍ）ものであり、巻き掛け角度（ラップ角度）を１５度にしたものである。塗布膜を観察したところ、塗布膜端部の耳幅はなく、総合判定は×であった。

例３４は、吐出幅を５１２ｍｍに規制したものであり、巻き掛け角度（ラップ角度）を５度にしたものである。塗布膜端部の耳幅は２〜３ｍｍで一定しており、総合判定は○であった。

例３５は、吐出幅を５１２ｍｍに規制したものであり、巻き掛け角度（ラップ角度）を１０度にしたものである。塗布膜端部の耳幅は２〜３ｍｍで一定しており、総合判定は○であった。

例３６は、吐出幅を５１２ｍｍに規制したものであり、巻き掛け角度（ラップ角度）を１５度にしたものである。塗布膜端部の耳幅は２〜３ｍｍで一定しており、総合判定は○であった。

以上の結果より、プレ塗布装置７０を使用し、かつ、ウェブ１６の幅に対し吐出幅を所定量以上に小さくすることにより、バー１２へのウェブ１６の巻き掛け角度（ラップ角度）が大きくなっても、未塗布部分を均一に作れることが解った。

（実施例４）
使用したバー１２は、直径が３ｍｍのものであり、バー１２へのウェブ１６の巻き掛け角度（ラップ角度）を１５度とした。ウェブ１６の張力（テンション）は１９６Ｎ／ｍ（２０ｋｇ／ｍ）に設定した。

そして、ウェブ１６を速度を３００ｍ／分で走行させながら、バー１２も同速で順回転させ、上記のように調製した第２の塗布液を、塗布ヘッド１４からウェブ１６上に塗布した。

本実施例の、例４１〜例４４は、プレ塗布装置７０の注射器の針の位置と、吐出幅との組み合わせを変化させたものである。

そして、注射器で塗布した第１の塗布液と、バー塗布装置１０でウェブ１６に塗布された塗布膜端部との隙間を実測し（第２の塗布液が塗布される部分で測定）、バー塗布装置１０でウェブ１６に塗布された塗布膜端部の耳幅の有無、及び裏回りの状況を観察するとともに、総合判定（×、△、○の３段階評価）を行った。結果を図１０の表に示す。

図１０の表における例４１は、吐出幅を５１６ｍｍに規制したものであり、プレ塗布装置７０の注射器の針の位置をウェブ１６の端部より０〜２ｍｍの位置にセットしたものである。塗布膜を観察したところ、隙間は０ｍｍであり、塗布膜端部の耳幅はなく、裏回りが散発的に認められ、総合判定は×であった。

例４２は、吐出幅を５１４ｍｍに規制したものであり、プレ塗布装置７０の注射器の針の位置をウェブ１６の端部より０〜２ｍｍの位置にセットしたものである。塗布膜を観察したところ、隙間は０〜１ｍｍであり、塗布膜端部の耳幅が突発的になくなり、総合判定は△であった。

例４３は、吐出幅を５１２ｍｍに規制したものであり、プレ塗布装置７０の注射器の針の位置をウェブ１６の端部より０〜２ｍｍの位置にセットしたものである。塗布膜を観察したところ、隙間は２ｍｍであり、塗布膜端部の耳幅は２〜３ｍｍで一定しており、総合判定は○であった。

例４４は、吐出幅を５１０ｍｍに規制したものであり、プレ塗布装置７０の注射器の針の位置をウェブ１６の端部より０〜２ｍｍの位置にセットしたものである。塗布膜を観察したところ、隙間は３ｍｍであり、塗布膜端部の耳幅は２〜３ｍｍで一定しており、総合判定は○であった。

以上の結果より、プレ塗布装置７０の注射器の針の位置と、吐出端部との関係が解る。すなわち、注射器によりプレ塗布された溶媒（第１の塗布液）の層よりも吐出端部が、幅方向の内側に位置している必要があることが解った。

本発明に係るバー塗布方法及び装置が適用される磁気記録媒体の塗布ラインの構成図 図１のバー塗布装置の構成を示す断面図 図１のバー塗布装置の一部を切り欠いて内部が見えるようにした斜視図 従来のバー塗布装置における塗布膜端部の厚塗りを説明する模式図 塗布膜端部の厚塗り減少を行う本発明のバー塗布装置の模式図 塗布膜端部の厚塗り減少を行う本発明のバー塗布装置の他の模試図 実施例１の結果を示す表 実施例２の結果を示す表 実施例３の結果を示す表 実施例４の結果を示す表

符号の説明

１０…バー塗布装置、１２…バー、１４…塗布ヘッド、１６…ウェブ、１８…ガイドローラ、２０…バックアップ部材、２１、２３…サイドブロック、２２、２４…コーターブロック、２６、２８…マニホールド、３０、３２…スロット、３０Ａ，３２Ａ…スロット端部、３４…１次側塗布ビード、３６…２次側塗布ビード、６６…送り出し機、６８…ガイドローラ、７０…プレ塗布装置、７６…乾燥ゾーン、７８…加熱ゾーン、８２…巻取り機

Claims (6)

1. 走行する帯状の支持体に、該支持体の幅方向に平行なスロット先端から押し出した塗布液を塗工用バーを介して転移塗布するバー塗布方法において、
   前記塗布液は、溶媒と溶質とよりなる液体であり、
   前記塗工用バーに対し、前記支持体の走行方向上流側においてプレ塗布装置を設け、該プレ塗布装置により、前記支持体の幅方向端部又は端部近傍に前記溶媒と同一組成の液体を塗布してダミー塗布層を形成し、
   ダミー塗布層形成後に、前記支持体のダミー塗布層以外の部分に前記塗布液を塗工用バーを介して転移塗布することを特徴とするバー塗布方法。
2. 前記塗工用バーの直径が６ｍｍ以下である請求項１に記載のバー塗布方法。
3. 前記塗工用バーへの前記支持体の巻き掛け角度を１０度以上に設定する請求項１又は２に記載のバー塗布方法。
4. 前記支持体の張力を９８Ｎ／ｍ以上に設定する請求項１〜３のいずれか１項に記載のバー塗布方法。
5. 前記支持体の走行速度を１００ｍ／分以上に設定する請求項１〜４のいずれか１項に記載のバー塗布方法。
6. 走行する帯状の支持体に、該支持体の幅方向に平行なスロット先端から押し出した塗布液を塗工用バーを介して転移塗布するバー塗布部と、
   前記バー塗布部に対し、前記支持体の走行方向上流側に設けられるプレ塗布部と、を備えるバー塗布装置であって、
   前記プレ塗布部により、前記支持体の幅方向端部又は端部近傍に第１の塗布液が塗布され第１の塗布層が形成されるようになっており、
   前記支持体の第１の塗布層以外の部分に第２の塗布液が塗工用バーを介して転移塗布され第２の塗布層が形成されるようになっていることを特徴とするバー塗布装置。

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