JP5845891B2 - 複層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、基材フィルムとウレタン樹脂層とを備え、該ウレタン樹脂層の形成時にはじきムラの発生が抑制され、かつ偏光板等との接着性に優れる複層フィルムおよびその製造方法に関する。
例えば液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ等の各種画像表示装置に使用されるフィルムとして、熱可塑性樹脂からなるフィルムが知られている。これらのフィルムは光学特性に優れているため、例えば、液晶表示装置を構成する液晶セルの電極基板、偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用透明電極付きフィルム、導光板、光ディスクなどの光学用途への展開が図られている。
前記のような光学用途へ用いられるフィルムは、例えば、偏光子、ハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防眩層、防汚層などの他の様々な機能を有する部材に貼り合せられて使用されることが多い。したがって、前記のフィルムは、貼り合せられる部材との接着力が高いことが望まれる。
ところが、熱可塑性樹脂からなる層を有するフィルムのなかには、他の部材との接着性に劣るものがある。そこで、当該フィルムの表面に、易接着層を設けることが従来からなされてきた。易接着層とは、必要に応じて接着剤を介してフィルムを何らかの部材と貼り合わせる際に、フィルムの接着力を補強して、より強固に接着させる層である。易接着層については、ウレタン樹脂により形成したものが従来から提案されてきた(特許文献1〜3参照)。
特開2009−274390号公報 特開2006−201736号公報 特開2009−80177号公報
ウレタン樹脂からなる易接着層は、通常、基材フィルム上にウレタン樹脂の水分散体を塗布し、硬化して形成される。しかしウレタン樹脂の水分散体の濡れ性が不足し、塗工時にはじきムラを生じる場合があった。はじきムラが生じるとその箇所が不良となり、例えば偏光板と貼り合せた際に光の漏れが生じるなどの外観不良となる場合があった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる層を表面に有する基材フィルムと、ウレタン樹脂層とを備える複層フィルムであって、はじきムラがなく偏光板等との接着力に優れる複層フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、前記ウレタン樹脂層として、特定の界面活性剤を含有する樹脂を硬化させた層を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔8〕を要旨とする。
〔1〕脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる層を表面に有する基材フィルムと、ウレタン樹脂層とを備え、
前記ウレタン樹脂層は、
(a)ポリウレタン、
(b)エポキシ化合物、
(c)不揮発性塩基、並びに、
(d)三重結合の二つの隣接炭素原子にいずれも水酸基及びメチル基が置換されたアセチレングリコール及び/又はそのエチレンオキサイド付加物である非イオン系界面活性剤
を含む樹脂(A)を硬化させた層である、複層フィルム。
〔2〕前記樹脂(A)が(e)微粒子をさらに含有する、〔1〕記載の複層フィルム。
〔3〕前記ウレタン樹脂層の厚さが30〜250nmである、〔1〕または〔2〕に記載の複層フィルム。
〔4〕脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる層を表面に有する基材フィルムの前記表面に、
(a)ポリウレタン、
(b)エポキシ化合物、
(c)不揮発性塩基、並びに、
(d)三重結合の二つの隣接炭素原子にいずれも水酸基及びメチル基が置換されたアセチレングリコール及び/又はそのエチレンオキサイド付加物である非イオン系界面活性剤
を含む樹脂(A)の水分散体を塗布し、硬化させることを含む、複層フィルムの製造方法。
〔5〕前記樹脂(A)が(e)微粒子をさらに含有する、〔4〕記載の製造方法。
〔6〕前記樹脂(A)の水分散体中の、(d)三重結合の二つの隣接炭素原子にいずれも水酸基及びメチル基が置換されたアセチレングリコール及び/又はそのエチレンオキサイド付加物である非イオン系界面活性剤の濃度が、0.01〜1重量%である、〔4〕または〔5〕に記載の製造方法。
〔7〕〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の複層フィルムを備える、偏光板保護フィルム。
〔8〕偏光子と、〔7〕記載の偏光板保護フィルムとを備える、偏光板。
本発明によれば、はじきムラの生成が抑制され、光学特性に優れるとともに偏光板等との接着性に優れる複層フィルムを提供できる。
以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
本発明の複層フィルムは、脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる層を表面に有する基材フィルムと、ウレタン樹脂層とを備える。
[基材フィルム]
基材フィルムは、基材フィルムの表面に脂環式構造含有重合体を含む樹脂(以下、脂環式構造含有重合体を含む樹脂を「脂環式構造含有重合体樹脂」と呼ぶことがある。)からなる層を表面に有する。したがって、基材フィルムが1層のみを有する単層構造のフィルムである場合、脂環式構造含有重合体樹脂からなる層のみによって基材フィルムが形成される。また、基材フィルムが2層以上の層を有する複層構造のフィルムである場合、基材フィルムの少なくとも一方の最外層が脂環式構造含有重合体樹脂からなる層であれば、その基材フィルムは他に任意の層を有していてもよい。
〔脂環式構造含有重合体樹脂〕
脂環式構造含有重合体は、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれを用いてもよい。脂環式構造含有重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及び基材フィルムの成形性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択してもよく、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、基材フィルムの透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造含有重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適である。
ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。ここで「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体のことをいう。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。また、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造してもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造してもよい。
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素化物;などを挙げることができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素化してなる水素化物;ビニル脂環式炭化水素系モノマー、またはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素化物;等を挙げることができる。前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
脂環式構造含有重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、本発明の複層フィルムの機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ好適である。
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は通常1.2以上、好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.8以上であり、通常3.5以下、好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.7以下である。分子量分布が3.5を超えると低分子成分が増すため緩和時間の短い成分が増加し、一見同じ面内位相差Reを有する基材フィルムであっても高温曝露時の緩和が短時間で大きくなることが推定され、基材フィルムの安定性が低下するおそれがある。一方、分子量分布が1.2を下回るようなものは重合体の生産性の低下とコスト増につながり、実用性という観点からはあまり現実的でない。
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上であり、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。ガラス転移温度が低すぎると高温下における耐久性が悪化する可能性があり、高すぎるものは、耐久性は向上するが通常の延伸加工が困難となる可能性がある。
脂環式構造含有重合体は、光弾性係数の絶対値が10×10−12Pa−1以下であることが好ましく、7×10−12Pa−1以下であることがより好ましく、4×10−12Pa−1以下であることが特に好ましい。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、「C=Δn/σ」で表される値である。脂環式構造含有重合体の光弾性係数が10×10−12Pa−1を超えると、基材フィルムの面内レターデーショReのバラツキが大きくなるおそれがある。
脂環式構造含有重合体の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が上記範囲であると、基材フィルムの面内位相差Re及び厚み方向の位相差Rthの経時変化を小さくすることができる。また、本発明の複層フィルムを備える偏光板及び液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。
飽和吸水率は、試験片を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した質量を、浸漬前の試験片の質量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。脂環式構造含有重合体における飽和吸水率は、例えば、脂環式構造含有重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。飽和吸水率をより低くする観点から、脂環式構造含有重合体は、極性基を有さないことが好ましい。
脂環式構造含有重合体樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、脂環式構造含有重合体以外にもその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;耐電防止剤;酸化防止剤;滑剤;界面活性剤などの添加剤が挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
脂環式構造含有重合体樹脂に含まれる重合体の量は、一般的には50%〜100%、または70%〜100%である。特に、本発明に係る基材フィルムは、高い疎水性を有する脂環式構造含有重合体樹脂からなる層を有する場合であっても、ウレタン樹脂層を備えることにより親水性が高い他の部材と強固に接着できるという利点を有する。この利点を効果的に活用する観点からは、脂環式構造含有重合体樹脂に含まれる重合体の量が、例えば80%〜100%、より詳しくは90%〜100%となるように、その他の成分の量を調整することが好ましい。
脂環式構造含有重合体樹脂には、実質的に粒子を含まないことが好ましい。ここで、実質的に粒子を含まないとは、脂環式構造含有重合体樹脂に粒子を含ませても、粒子を全く含まない状態からの基材フィルムのヘイズの上昇幅が0.05%以下の範囲である量までは許容できることを意味する。脂環式構造含有重合体は、多くの有機粒子や無機粒子との親和性に欠けるため、上記範囲を超えた量の粒子を含む脂環式構造含有重合体樹脂を延伸すると、空隙が発生しやすく、その結果として、ヘイズの著しい低下が生じるおそれがある。
脂環式構造含有重合体樹脂からなる層は、その製法によって特に制限されない。脂環式構造含有重合体樹脂からなる層は、脂環式構造含有重合体樹脂を公知のフィルム成形法で成形することによって得られる。フィルム成形法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶剤を使用しない溶融押出法が、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法などが挙げられ、中でも生産性や厚み精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
〔基材フィルムの構造及び物性等〕
基材フィルムは、一層のみを備える単層構造のフィルム層であってもよく、二層以上の層を備える複層構造のフィルム層であってもよい。基材フィルムを複層構造のフィルム層とすることにより、様々な特性を有する偏光板を製造することができる。ただし、基材フィルムが二層以上の層を備える場合、脂環式構造含有重合体樹脂からなる層が、基材フィルムの最表面に位置するようにする。この際、基材フィルムの2面の最表面(おもて面及び裏面)のうち、一方の最表面にのみ脂環式構造含有重合体樹脂からなる層が位置していてもよく、両方の最表面に脂環式構造含有重合体樹脂からなる層が位置していてもよい。
基材フィルムが二層以上の層を備える場合、脂環式構造含有重合体樹脂からなる層と組み合わせる層の種類に制限は無く、例えば、アクリル樹脂からなる層、スチレン系樹脂からなる層、ポリカーボネート樹脂からなる層、及びセルロースエステル樹脂からなる層などが挙げられる。
基材フィルムが二層以上の層を備える場合、基材フィルムの製造方法に制限は無い。例えば、別々に製造したフィルム層を接着剤を用いて貼り合せて基材フィルムを製造してもよい。また、例えば、接着剤を用いずに共押出法などにより基材フィルムを製造してもよい。
接着剤は、貼り合わせるフィルム層を形成する樹脂の種類により適宜選択してよい。接着剤の例としては、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、変性ポリオレフィン系接着剤、ポリビニルアルキルエーテル系接着剤、ゴム系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、塩化ビニル−酢酸ビニル系接着剤、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)系接着剤、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)系接着剤、エチレン−スチレン共重合体などのエチレン系接着剤、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル系接着剤などが挙げられる。接着剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
接着剤で形成される接着層の平均厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
接着剤を使用せずに基材フィルムを製造する場合、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法などの共押出成形法;ドライラミネーションなどのフィルムラミネーション成形法などを用いてもよい。また、例えば、あるフィルム層の表面に、別のフィルム層を構成する樹脂を含む溶液をコーティングするコーティング成形法などを用いてもよい。これらの中でも、製造効率や、基材フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点からは共押出成形法が好ましく、共押出成形法の中でも共押出Tダイ法が好ましい。さらに、共押出Tダイ法にはフィードブロック方式とマルチマニホールド方式が挙げられるが、フィルム層の厚みのばらつきを少なくできる点からは、マルチマニホールド方式がさらに好ましい。
基材フィルムは、延伸されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸された延伸フィルムであってもよい。また、基材フィルムが2層以上の層を備える場合、予め延伸されたフィルム層を積層して延伸フィルムを得てもよく、共押出等により得られた複層フィルム層を延伸して延伸フィルムを得てもよい。
延伸方法は特に制限されず、例えば、一軸延伸法、二軸延伸法のいずれを採用してもよい。延伸方法の例を挙げると、一軸延伸法の例としては、フィルム搬送用のロールの周速の差を利用して長尺方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて幅方向に一軸延伸する方法等が挙げられる。また、二軸延伸法の例としては、固定するクリップの間隔を開いての長尺方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により幅方向に延伸する同時二軸延伸法;フィルム搬送用のロール間の周速の差を利用して長尺方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて幅方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法等が挙げられる。さらに、例えば、幅方向又は長尺方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いて、フィルムの幅方向に対して任意の角度θをなす方向に連続的に斜め延伸する斜め延伸法を用いてもよい。
延伸に用いる装置として、例えば、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。
延伸温度は、未延伸の基材フィルムを形成する材料のガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくは(Tg−30℃)以上、より好ましくは(Tg−10℃)以上であり、好ましくは(Tg+60℃)以下、より好ましくは(Tg+50℃)以下である。
延伸倍率は、使用する基材フィルムの光学特性に応じて適宜選択してもよく、通常1.05倍以上、好ましくは1.1倍以上であり、通常10.0倍以下、好ましくは2.0倍以下である。
基材フィルムは、1mm厚換算での全光線透過率が80%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、全光線透過率が90%以上である。
基材フィルムは、1mm厚でのヘイズが0.3%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、ヘイズが0.2%以下である。ヘイズが0.3%を超えると、基材フィルムの透明性が低下することがある。
基材フィルムの平均厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。
基材フィルムの厚み変動幅は、長尺方向及び幅方向にわたって、前記平均厚みの±3%以内であることが好ましい。厚み変動を上記範囲にすることにより、基材フィルムの位相差(レターデーション)などの光学特性のバラツキを小さくすることができる。
基材フィルムの残留揮発性成分の含有量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。揮発性成分の含有量を上記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、基材フィルムの面内位相差Re及び厚み方向の位相差Rthの経時変化を小さくすることができ、さらには本発明の複層フィルムを備える偏光板又は液晶表示装置等の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。揮発性成分は分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の含有量は、分子量200以下の物質の合計として、ガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
[ウレタン樹脂層]
ウレタン樹脂層は、(a)ポリウレタン、(b)エポキシ化合物、(c)不揮発性塩基、並びに、(d)三重結合の二つの隣接炭素原子にいずれも水酸基及びメチル基が置換されたアセチレングリコール及び/又はそのエチレンオキサイド付加物である非イオン系界面活性剤、を含む未硬化状態のウレタン樹脂(A)を硬化させた層である。以下、(d)三重結合の二つの隣接炭素原子にいずれも水酸基及びメチル基が置換されたアセチレングリコール及び/又はそのエチレンオキサイド付加物である非イオン系界面活性剤を、「(d)成分」と呼ぶことがある。
ウレタン樹脂層は易接着層として機能し、接着剤を介して基材フィルムを他の部材(例えば、偏光子等)と貼り合わせる際に、接着剤による基材フィルムと他の部材との接着を補強して、より強固に接着させようになっている。すなわち、ウレタン樹脂層は、接着剤の機能を補強する層であり、別称としてプライマー層などと呼ばれる。
通常、ウレタン樹脂層は、基材フィルムの脂環式構造含有重合体樹脂からなる層の表面に、接着剤の層等の他の層を介することなく、直接に設けられる。
ウレタン樹脂層は、基材フィルムの一方の表面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。基材フィルムの両面にウレタン樹脂層を設けることにより、基材フィルムの取り扱い性を効果的に改善できる。
〔(a)ポリウレタン〕
ポリウレタンとしては、例えば、(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とを反応させて得られるポリウレタン;または、上記(i)成分及び(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で、反応に不活性で水との親和性の大きい有機溶媒中でウレタン化反応させてイソシアネート基含有プレポリマーとし、次いで、該プレポリマーを中和し、鎖延長剤を用いて鎖延長し、水を加えて分散体とすることによって製造されるポリウレタン;などが挙げられる。これらのポリウレタンには酸構造(酸残基)を含有させてもよい。
イソシアネート基含有プレポリマーの鎖伸長方法は公知の方法としてもよく、例えば、鎖伸長剤として、水、水溶性ポリアミン、グリコール類などを使用し、イソシアネート基含有プレポリマーと鎖伸長剤とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させてもよい。
前記(i)成分(すなわち、1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分)としては、特に限定されるものではないが、水酸基性の活性水素を有するものが好ましい。このような化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
(1)ポリオール化合物
ポリオール化合物として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。
(2)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとして、例えば、前記のポリオール化合物のアルキレンオキシド付加物;アルキレンオキシドと環状エーテル(例えばテトラヒドロフランなど)との開環(共)重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体;グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。
(3)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとして、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸又はその無水物と、上記(1)で挙げられたようなエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコールなどのポリオール化合物とを、水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものなどが挙げられる。より具体的には、例えば、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、或いはグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオールなどが挙げられる。
(4)ポリエーテルエステルポリオール
ポリエーテルエステルポリオールとして、例えば、エーテル基含有ポリオール(例えば、前記(2)のポリエーテルポリオールやジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を上記(3)で例示したようなジカルボン酸又はその無水物に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるものなどが挙げられる。より具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物などが挙げられる。
(5)ポリカーボネートポリオール
ポリカーカーボネートポリオールとしては、例えば、一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)x−OH(ただし、式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ポリオール残基を示す。また、xは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物などが挙げられる。これらは、飽和脂肪族ポリオールと置換カーボネート(例えば、炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを、水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法;前記飽和脂肪族ポリオールとホスゲンとを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ポリオールを反応させる方法;などにより得ることができる。
上記の(1)から(5)に例示したような化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記(i)成分と反応させる(ii)成分(即ち、多価イソシアネート成分)としては、例えば、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環族または芳香族の化合物を使用してもよい。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数4〜18の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)などが挙げられる。芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
ポリウレタンは、酸構造を有することが好ましい。酸構造を有するポリウレタンは、界面活性剤を使用せずに、若しくは界面活性剤の量が少なくても、水中に分散させることが可能となるので、ウレタン樹脂層の耐水性が良くなることが期待される。これを自己乳化型といい、界面活性剤を使用すること無く分子イオン性のみで、水中にポリウレタンが分散安定化しうることを意味する。このようなポリウレタンを用いたウレタン樹脂層は、基材フィルムとの接着性に優れ、かつ高い透明性を維持できるため、好ましい。
酸構造としては、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(−SOH)等の酸基などを挙げることができる。また、酸構造は、ポリウレタンにおいて側鎖に存在していてもよく、末端に存在していてもよい。なお、酸構造は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
酸構造の含有量としては、ポリウレタン中の酸価として、好ましくは20mgKOH/g以上、より好ましくは25mgKOH/g以上であり、好ましくは250mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下である。酸価が20mgKOH/g未満では水分散性が不十分となりやすく、一方、酸価が250mgKOH/gより大きいとウレタン樹脂層の耐水性が劣る傾向となる。
ポリウレタンに酸構造を導入する方法は、従来から用いられている方法が特に制限なく使用できる。好ましい例を挙げると、ジメチロールアルカン酸を、前記(2)から(4)に記載したグリコール成分の一部もしくは全部と置き換えることによって、予めポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等にカルボキシル基を導入する方法が挙げられる。ここで用いられるジメチロールアルカン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。なお、ジメチロールアルカン酸は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリウレタンの数平均分子量は、1,000以上が好ましく、より好ましくは20,000以上であり、1,000,000以下が好ましく、より好ましくは200,000以下である。
ポリウレタンとしては、水系ウレタン樹脂として市販されているものを用いてもよい。水系ウレタン樹脂とは、ポリウレタンと水とを含む組成物であり、通常、ポリウレタン及び必要に応じて含まれる他の成分が水の中に分散しているものである。水系ウレタン樹脂としては、例えば、旭電化工業社製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井東圧化学社製の「オレスター」シリーズ、大日本インキ化学工業社製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン」シリーズ、バイエル社製の「インプラニール」シリーズ、日本ソフラン社製の「ソフラネート」シリーズ、花王社製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業社製の「サンプレン」シリーズ、保土谷化学工業社製の「アイゼラックス」シリーズ、第一工業製薬社製の「スーパーフレックス」シリーズ、ゼネカ社製の「ネオレッツ」シリーズ、ルブリゾール社性の「Sancure」シリーズなどを用いることができる。
なお、ポリウレタンは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
〔(b)エポキシ化合物〕
エポキシ化合物は架橋剤として機能する成分であり、エポキシ化合物を用いることによってウレタン樹脂層の機械的強度を高めることができる。また、エポキシ化合物が有する極性構造により、接着力を向上させる作用も見込まれる。
エポキシ化合物としては、エポキシ基を有する化合物を用いる。通常は、1分子当たり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を用いる。これにより、架橋反応を進行させてウレタン樹脂層の機械的強度を効果的に向上させることができる。
また、エポキシ化合物としては、水に溶解性があるか、または水に分散してエマルジョン化しうるものが好ましい。ウレタン樹脂層の形成に用いられる未硬化状態のウレタン樹脂は、通常、水を含む流体状の水系樹脂として用いられる。ここで水系樹脂とは、固形分を、水等の水系の溶剤に溶解又は分散した状態で含有する組成物のことをいう。エポキシ基が水に溶解性を有するか又はエマルジョン化しうるものであれば、前記の水系樹脂の塗布性を良好にして、ウレタン樹脂層の製造を容易に行うことが可能となる。
エポキシ化合物の例を挙げると、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエーテル化によって得られるジエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モル以上とのエーテル化によって得られるポリエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエステル化によって得られるジエポキシ化合物等のエポキシ化合物;などが挙げられる。エポキシ化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
エポキシ化合物の量は、ポリウレタン100重量部に対し、通常2重量部以上、好ましくは5重量部以上、より好ましくは8重量部以上であり、通常40重量部以下、好ましくは35重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。エポキシ化合物の量を前記範囲の下限値以上とすることによりエポキシ化合物とポリウレタンとの反応が十分に進行するのでウレタン樹脂層の機械的強度を適切に向上させることができ、上限値以下とすることにより未反応のエポキシ化合物の残留を少なくでき、やはりウレタン樹脂層の機械的強度を適切に向上させることができる。
また、ポリウレタンが酸構造を有する場合、ポリウレタンの酸構造と当量になるエポキシ化合物の量に対し、エポキシ化合物の量は、重量基準で、好ましくは0.2倍以上、より好ましくは0.4倍以上、特に好ましくは0.6倍以上であり、好ましくは3.0倍以下、より好ましくは2.5倍以下、特に好ましくは2.0倍以下である。ここで、ポリウレタンの酸構造と当量になるエポキシ化合物の量とは、ポリウレタンの酸構造の全量と過不足無く反応できるエポキシ化合物の理論量をいう。ポリウレタンが酸構造を有すると、その酸構造はエポキシ化合物のエポキシ基と反応しうる。この際、エポキシ化合物の量を前記の範囲に収めることにより、酸構造とエポキシ化合物との反応を適切な程度に進行させて、ウレタン樹脂層の機械的強度を効果的に向上させることができる。
〔(c)不揮発性塩基〕
本発明に用いる樹脂(A)は、不揮発性塩基を含有する。ポリウレタンが酸構造を含む場合、酸構造の一部又は全部は、不揮発性塩基により中和されていることが好ましい。酸構造含有水系ウレタン樹脂の酸構造のうちの20%以上が不揮発性塩基により中和されていることがより好ましく、50%以上が不揮発性塩基により中和されているのが特に好ましい。酸構造のうちの20%以上が不揮発性塩基により中和されることにより、本発明の複層フィルムが高温下に曝された熱履歴を有しても、光学材料としての特性を維持しつつ、他の光学フィルム、特に偏光子に積層して使用されるときに、積層されたフィルムとの密着性をより一層維持することができる。なお、酸構造含有水系ウレタン樹脂の残りの酸構造は中和されていなくてもよく、又は揮発性塩基により中和されていてもよい。
前記不揮発性塩基としては、本発明に使用される中和処理後の水系ウレタン樹脂の水分散体を基材フィルムの表面に塗布した後に乾燥させる際の処理条件下、例えば80℃で1時間放置した場合において実質的に不揮発性である無機塩基及び有機塩基を挙げることができる。実質的に不揮発性である無機塩基及び有機塩基としては、前記処理後に不揮発性塩基の減少分が80%以下である場合を挙げることができる。
不揮発性塩基としては、水に溶解性があるか、または水に分散してエマルジョン化しうるものが好ましい。これにより、未硬化状態のウレタン樹脂が水系樹脂として用意される場合に、その水系樹脂の塗布性を良好にして、ウレタン樹脂層の製造を容易に行うことが可能となる。
前記不揮発性塩基としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機塩基;
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパン水酸化カリウム、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトシキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ−エトキシ)シラン、シクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンペンタミン、アミノエチルエタノールアミン、1,2−プロパンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルエタノールアミン、アミノヘキシルエタノールアミン、アミノエチルプロパノールアミン、アミノプロピルプロパノールアミン、アミノヘキシルプロパノールアミン、5−アミノピラゾール、1−メチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−5−アミノピラゾール、1,3−ジメチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−アシノ−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、3−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−4−クロロ−5−アミノピラゾールなどの一級アミン;
ジエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの二級アミン;
N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシカルボン酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、グリコリック酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物;
トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリ[(2−ヒドロキシ)−1−プロピル]アミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレアなどの三級アミン;
イミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−エチルイミダゾール、2−アミノイミダゾールサルフェート、2−(2−アミノエチル)−ベンゾイミダゾール等イミダゾール化合物;
イミダゾリン、2−メチル−2−イミダゾリン等のイミダゾリン化合物;などが挙げられる。
なかでも、ヒドラジド化合物のようにヒドラジノ基(−NHNH基)を有する化合物は、反応性が高いのでウレタン樹脂層の機械的強度を適切に向上させることができ、また比較的沸点が高くウレタン樹脂層の耐熱性を高くできるので、特に好ましい。また、不揮発性塩基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
不揮発性塩基の量は、ポリウレタン100重量部に対し、通常0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上であり、通常40重量部以下、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。不揮発性塩基の量を前記範囲の下限値以上とすることによりウレタン樹脂層の機械的強度を適切に向上させることができ、上限値以下とすることにより未反応のエポキシ化合物の残留を少なくでき、やはりウレタン樹脂層の機械的強度を適切に向上させることができる。
〔(d)成分〕
(d)成分は、三重結合の二つの隣接炭素原子にいずれも水酸基及びメチル基が置換されたアセチレングリコール及び/又はそのエチレンオキサイド付加物である非イオン系界面活性剤である。(d)成分の添加により未硬化状態の樹脂(A)の発泡を抑制しつつ濡れ性を改善できるので、基材フィルムに塗布した際のはじきムラの発生を防止できる。
(d)成分は具体的には、式:R−C(CH)(OR)−C≡C−C(CH)(OR)−Rで表される構造を有する。式中、RおよびRはそれぞれ独立して、−(CH−Hを表す。nは0以上の整数を表し、0〜400が好ましく、0または20〜100であることがより好ましく、40〜70であることが特に好ましい。RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、イソプロピル基が好ましい。かかる(d)成分としては、例えば、日信化学工業社製のサーフィノール104シリーズ、サーフィノール400シリーズなどを用いることができる。
(d)成分の添加量は、未硬化状態のウレタン樹脂(A)の総量に対し、重量基準で、好ましくは10ppm以上、より好ましくは100ppm以上であり、好ましくは10,000ppm以下、より好ましくは1,000ppm以下である。(d)成分の添加量を下限値以上とすることではじきムラの発生を抑制でき、上限値以下とすることで発泡を抑制し泡起因による不良を防止できる。
〔溶剤〕
未硬化状態のウレタン樹脂(A)は、通常、溶剤を含む流体状の樹脂である。具体的には、(a)ポリウレタン、(b)エポキシ化合物、(c)不揮発性塩基、(d)成分、並びに必要に応じて用いられるその他の成分が、溶剤に溶解又は分散した液状の組成物となっている。この際、溶剤としては、水又は水溶性の溶剤を用いる。
水溶性の溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。中でも、溶剤としては、水を用いることが好ましい。なお、溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
溶剤の量は、未硬化状態のウレタン樹脂の粘度が、塗布に適した範囲になるように設定することが好ましい。
〔その他の成分〕
未硬化状態のウレタン樹脂(A)は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述したもの以外の成分を含んでいてもよい。
例えば、未硬化状態のウレタン樹脂は、さらに(e)微粒子を含むことが好ましい。これにより、ウレタン樹脂層も微粒子を含むことになり、ウレタン樹脂層の表面に凹凸を形成できる。これにより、巻回の際にウレタン樹脂層が他の層と接触する面積が小さくなり、その分だけウレタン樹脂層の表面の滑り性を向上させて、本発明の複層フィルムを巻回する際のシワの発生を抑制できる。
微粒子の平均粒子径は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、通常500nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることによりウレタン樹脂層の滑り性を効果的に高めることができ、前記範囲の上限値以下にすることにより、得られる複層フィルムをロール状に巻回する際の巻きズレの発生を防止できる。なお、微粒子の平均粒子径としては、レーザー回折法によって粒径分布を測定し、測定された粒径分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(50%体積累積径D50)を採用する。
微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子のいずれを用いてもよいが、水分散性の微粒子を用いることが好ましい。無機微粒子の材料を挙げると、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物;炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。また、有機微粒子の材料を挙げると、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましい。シリカの微粒子は、シワの発生を抑制する能力及び透明性に優れ、ヘイズを生じ難く、着色が無いため、本発明の複層フィルムの光学特性に与える影響がより小さいからである。また、シリカはウレタン樹脂への分散性および分散安定性が良好だからである。シリカの微粒子の中でも、非晶質コロイダルシリカ粒子が特に好ましい。
なお、微粒子は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ウレタン樹脂層に含まれる微粒子の量は、ウレタン樹脂層に含まれるポリウレタン100重量部に対し、通常0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上であり、通常30重量部以下、好ましくは25重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。微粒子の量を前記の範囲の下限値以上とすることにより、本発明の複層フィルムを巻回した場合にシワの発生を抑制できる。また、微粒子の量を前記範囲の上限値以下とすることにより、本発明の複層フィルムの白濁の無い外観を維持できる。
さらに、未硬化状態のウレタン樹脂は、架橋剤を含んでいてもよい。特に、ウレタン樹脂層の厚みを1μm以下にする場合に架橋剤を含ませることが、ウレタン樹脂層の機械強度を向上させる観点から好ましい。架橋剤としては、樹脂中に存在する重合体が有する反応性基と反応する官能基を有する化合物であれば、特に制限なく使用することができる。中でも、水に溶解性があるか、又は水に分散してエマルジョン化しうるものが好ましい。架橋剤の例を挙げると、水系イソシアネート化合物、水系カルボジイミド化合物、水系オキサゾリン化合物等が挙げられる。
水系イソシアネート化合物としては、通常、2個以上の非ブロック型のイソシアネート基若しくはブロック型のイソシアネート基を有する化合物を用いる。
非ブロック型のイソシアネート化合物としては、例えば、多官能イソシアネート化合物と一価又は多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールとを反応させて得られる化合物が挙げられる。
ブロック型イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、2,4,−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、およびこれらのイソシアヌレート変性体、アダクト変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、並びに、これらの重合体で1個以上のイソシアネート基を有するものをポリオキシアルキレン基、カルボキシル基等で変性し、水溶性およびまたは水分散性にし、イソシアネート基をブロック剤(フェノール、ε−カプロラクタムなど)でマスクすることにより得られる化合物などが挙げられる。
水系カルボジイミド化合物としては、通常、2個以上のカルボジイミド結合(−N=C=N−)を有する化合物を用いる。2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物は、例えば、2分子以上のポリイソシアネートとカルボジイミド化触媒とを用いて、2個のイソシアネート基を脱炭酸反応させてカルボジイミド結合を形成させる方法によって得ることができる。2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物を作製する際に使用されるポリイソシアネートおよびカルボジイミド化触媒は特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。
架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
架橋剤の量は、ポリウレタン100重量部に対して、固形分で、通常1重量部以上、好ましくは5重量部以上であり、通常70重量部以下、好ましくは65重量部以下である。このような配合にすることにより、ウレタン樹脂層の機械的強度と、未硬化状態のウレタン樹脂の安定性を両立させることが可能となる。
さらに、未硬化状態のウレタン樹脂(A)には、本発明の効果を著しく損なわない限り、例えば、前記(d)成分以外の界面活性剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックスなどを含ませてもよい。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
〔ウレタン樹脂層の製造方法〕
ウレタン樹脂層は、通常、基材フィルムの表面に上記未硬化状態のウレタン樹脂(A)の層を形成し、その後、当該ウレタン樹脂を硬化させることにより製造する。未硬化状態のウレタン樹脂は、上記各成分が溶解又は分散した組成物であり、例えば、エマルション、コロイド分散系、水溶液などの形態としてもよい。
未硬化状態のウレタン樹脂においては、通常、ポリウレタン等の成分が粒子となって分散している。この粒子の粒径は、本発明の複層フィルムの光学特性の観点から、0.01μm〜0.4μmであることが好ましい。前記の粒径は、動的光散乱法により測定してもよく、例えば、大塚電子社製の光散乱光度計DLS−8000シリーズにより測定してもよい。
未硬化状態のウレタン樹脂の粘度は、15mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であるのが特に好ましい。未硬化状態のウレタン樹脂の粘度が前記範囲内にあると、基材フィルムの表面に未硬化状態のウレタン樹脂を均一に塗布することができる。前記の粘度は、音叉型振動式粘度計により25℃の条件下で測定した値である。未硬化状態のウレタン樹脂の粘度は、例えば、未硬化状態のウレタン樹脂が含む溶剤の割合及び樹脂中に含まれる粒子の粒径などによって調整することができる。
通常、基材フィルムの表面に未硬化状態のウレタン樹脂の層を形成する場合には、塗布法によって樹脂を塗布し、塗膜を形成する。塗布方法は特に限定されず、公知の塗布法を採用してもよい。具体的な塗布法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
未硬化状態のウレタン樹脂の層を基材フィルムに形成した後で、当該層を形成する樹脂を硬化させて、本発明に係るウレタン樹脂層を得る。
通常、未硬化状態のウレタン樹脂は溶剤を含むので、硬化させる際には溶剤を乾燥させて除去する。乾燥方法は任意であり、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥など任意の方法で行ってもよい。中でも、樹脂中において架橋反応等の反応を速やかに進行させる観点から、加熱乾燥によって樹脂を硬化させることが好ましい。
加熱により樹脂を硬化させる場合、加熱温度は、溶剤を乾燥させて未硬化状態のウレタン樹脂を硬化させることができる範囲で適切に設定する。ただし、基材フィルムとして延伸フィルムを用い、且つ、当該基材フィルムに発現した位相差を変化させたくない場合には、加熱温度は、基材フィルムにおいて配向緩和が生じない温度に設定することが好ましい。具体的には、基材フィルムを形成する材料のガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくは(Tg−30)℃以上、より好ましくは(Tg−10)℃以上であり、好ましくは(Tg+60)℃以下、より好ましくは(Tg+50)℃以下である。
さらに、未硬化状態のウレタン樹脂の層を基材フィルムの表面に形成した後で、延伸処理を行ってもよい。延伸処理は、未硬化状態のウレタン樹脂を硬化させた後で行ってもよいが、ウレタン樹脂層からの微粒子などの脱落を防ぐ観点からは、未硬化状態のウレタン樹脂を硬化させる前、または硬化させるのと同時に延伸処理を行うことが好ましい。さらに、均一なウレタン樹脂層を形成する観点からは、未硬化状態のウレタン樹脂を硬化させるのと同時に延伸処理を行うことがより好ましい。
さらに、未硬化状態のウレタン樹脂の層を基材フィルムの表面に形成した後で、延伸処理を行ってもよい。延伸処理は、未硬化状態のウレタン樹脂を硬化させた後で行ってもよいが、ウレタン樹脂層からの微粒子などの脱落を防ぐ観点からは、未硬化状態のウレタン樹脂を硬化させる前、または硬化させるのと同時に延伸処理を行うことが好ましい。さらに、均一なウレタン樹脂層を形成する観点からは、未硬化状態のウレタン樹脂を硬化させるのと同時に延伸処理を行うことがより好ましい。
基材フィルムを延伸すると、基材表面に形成されたウレタン樹脂層も延伸されることになる。しかし、通常はウレタン樹脂層の厚みは基材フィルムの厚みに比べ十分に小さいので、延伸されたウレタン樹脂層には大きな位相差は発現しない。
また、ウレタン樹脂層を設ける前に、基材フィルムの表面に改質処理を施し、基材フィルムとウレタン樹脂層との密着性を向上させてもよい。基材フィルムに対する表面改質処理としては、例えば、エネルギー線照射処理及び薬品処理等が挙げられる。エネルギー線照射処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等が挙げられ、処理効率の点等から、コロナ放電処理、プラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。また、薬品処理としては、例えば、ケン化処理、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸等の酸化剤水溶液中に浸漬し、その後、水で洗浄する方法が挙げられる。
さらに、ウレタン樹脂層の表面には、親水化表面処理を施すことが好ましい。ウレタン樹脂層の表面は、通常、本発明の複層フィルムを他の部材と貼り合わせる際の貼り合せ面となるので、この面の親水性を更に向上させることにより、本発明の複層フィルムと他の部材との接着性を顕著に向上させることができる。
ウレタン樹脂層に対する親水化表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、ケン化処理、紫外線照射処理などが挙げられる。中でも、処理効率の点などからコロナ放電処理及び大気圧プラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。プラズマ処理としては、大気圧プラズマ処理が好ましい。
親水化表面処理では、ウレタン樹脂層の表面の平均水接触角を、好ましくは80°以下、より好ましくは70°以下、特に好ましくは60°以下であり、通常20°以上にすることが望ましい。また、水接触角の標準偏差は、好ましくは0.01°〜5°である。ウレタン樹脂層の表面をこのような水接触角となるように表面改質処理することにより、本発明の複層フィルムを偏光子等の他の部材と強固に接着できる。
前記の水接触角は、接触角計を用いてθ/2法により求める。平均水接触角は、例えば、親水化表面処理を施したウレタン樹脂層の表面において、100cmの範囲内で無作為に選んだ20点の水接触角を測定し、この測定値の加算平均により算出される。水接触角の標準偏差は、この測定値から算出される。親水化処理を行うことにより、ウレタン樹脂層の表面に、例えばヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、スルホン酸基などの官能基を導入することができる。
〔ウレタン樹脂層の構造及び物性等〕
ウレタン樹脂層の厚みは、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、30nm以上が特に好ましく、また、1,000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、250nm以下が特に好ましい。前記範囲内にあると、基材フィルムとウレタン樹脂層との十分な接着強度が得られ、かつ、本発明の複層フィルムの反りなどの欠陥を無くすことができる。
基材フィルムの厚みtとウレタン樹脂層の厚みtとの比t/tは、0.0003以上が好ましく、0.0010以上がより好ましく、0.0025以上が特に好ましく、また、0.0100以下が好ましく、0.0080以下がより好ましく、0.0050以下が特に好ましい。これにより、本発明の複層フィルムの透明性を向上させることができる。なお、本発明の複層フィルムが基材フィルムを一層だけ備える場合には当該基材フィルムの厚みが厚みtとなり、本発明の複層フィルムが基材フィルムを二層以上備える場合にはそれらの基材フィルムの厚みの合計が厚みtとなる。また、本発明の複層フィルムがウレタン樹脂層を一層だけ備える場合には当該ウレタン樹脂層の厚みが厚みtとなり、本発明の複層フィルムがウレタン樹脂層を二層以上備える場合にはそれらのウレタン樹脂層の厚みの合計が厚みtとなる。
[その他の層]
本発明の複層フィルムは、本発明の要旨を逸脱しない限り、基材フィルムのウレタン樹脂層を形成しない側の表面に、他の層を備えていてもよい。その例を挙げると、反射防止層、ハードコート層、帯電防止層、防眩層、防汚層、セパレーターフィルム等が挙げられる。
[複層フィルムの物性等]
本発明の複層フィルムは、光学部材としての機能を安定して発揮させる観点から、1mm厚換算での全光線透過率が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定できる。
本発明の複層フィルムは、1mm厚換算でのヘイズが、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。ヘイズを低い値とすることにより、本発明に係る複層フィルムを組み込んだ表示装置の表示画像の鮮明性を高めることができる。ここで、ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製濁度計「NDH−300A」を用いて、5箇所測定し、それから求められる平均値である。
本発明の複層フィルムは、面内又は厚み方向に位相差を有する位相差フィルムであってもよい。具体的な位相差の範囲は、本発明の複層フィルムの用途に応じて設定される。具体的な範囲を挙げると、通常は、面内位相差Reで10nm〜500nm、厚み方向の位相差Rthで−500nm〜500nmの範囲から適宜選択される。
なお、面内位相差Reは、フィルムの遅相軸方向の屈折率nx、遅相軸に面内で直交する方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nz、フィルムの平均厚みDとしたときに、(nx−ny)×Dで定義される値である。また、厚み方向の位相差Rthは、((nx+ny)/2−nz)×Dで定義される値である。
また、本発明の複層フィルムは、面内位相差Reのバラツキが、通常10nm以内、好ましくは5nm以内、さらに好ましくは2nm以内である。面内位相差Reのバラツキを上記範囲にすることにより、本発明の複層フィルムを液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に、表示品質を良好なものにすることが可能になる。ここで、面内位相差Reのバラツキは、光入射角0°(入射光線と基材フィルムの表面とが直交する状態)の時の面内位相差Reを、フィルムの幅方向に測定したときの、その面内位相差Reの最大値と最小値との差である。
本発明の複層フィルムの残留揮発性成分の含有量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。揮発性成分の含有量を上記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、本発明の複層フィルムの面内位相差Re及び厚み方向の位相差Rthの経時変化を小さくすることができる。
本発明の複層フィルムは、そのTD方向(横方向ともいう。通常は、幅方向に一致する。)の寸法を、例えば1000mm〜2000mmとしてもよい。また、本発明の複層フィルムは、そのMD方向(縦方向ともいう。通常は、長手方向に一致する。)の寸法に制限は無いが、長尺のフィルムであることが好ましい。ここで「長尺」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
[偏光板]
本発明の複層フィルムは、光学フィルムとして任意の用途に用いることができる。本発明の複層フィルムは他の部材と接着性に優れ、且つ、その接着性が高温高湿度下においても低下し難いという利点を有するので、この利点を有効に活用する観点からは、他の部材と貼り合せて用いる用途に適用することが好ましい。具体的な用途の例を挙げると、本発明の複層フィルムは、偏光板保護フィルムとして用いることが好ましい。
偏光板は、通常、偏光子と偏光板保護フィルムとを備える。したがって、本発明の複層フィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合には、通常、偏光子に本発明の複層フィルムを貼り合わせるようにする。
偏光板は、例えば、本発明の複層フィルムのウレタン樹脂層と偏光子とを貼り合わせることにより製造できる。接着の際、ウレタン樹脂層に接着層を介することなく直接に偏光子を貼り合せてもよく、接着層を介して貼り合せてもよい。さらに、偏光子の一方の面だけに本発明の複層フィルムを貼り合せてもよく、両方の面に貼り合せてもよい。偏光子の一方の面だけに本発明の複層フィルムを貼り合わせる場合、偏光子の他方の面には、透明性の高い別のフィルムを貼り合せてもよい。
偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素若しくは二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって製造してもよい。また、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させ延伸し、さらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって製造してもよい。さらに、偏光子として、例えば、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの、偏光を反射光と透過光とに分離する機能を有する偏光子を用いてもよい。これらの中でも、ポリビニルアルコールを含んでなる偏光子が好ましい。偏光子の偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光子の厚み(平均厚み)は、好ましくは5μm〜80μmである。
偏光子と本発明の複層フィルムとを接着するための接着剤としては、光学的に透明であれば特に限定されず、例えば、水性接着剤、溶剤型接着剤、二液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、感圧性接着剤などが挙げられる。この中でも、水性接着剤が好ましく、特にポリビニルアルコール系の水性接着剤が好ましい。なお、接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
接着層の平均厚みは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。
本発明の複層フィルムと偏光子とを貼り合わせる方法に制限は無いが、例えば、偏光子の一方の面に必要に応じて接着剤を塗布した後、ロールラミネーターを用いて偏光子と本発明の複層フィルムとを貼り合せ、必要に応じて乾燥を行う方法が好ましい。乾燥時間及び乾燥温度は、接着剤の種類に応じて適宜選択される。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である
[製造例1:基材フィルムの製造]
脂環式構造含有重合体樹脂(ZEONOR1430、日本ゼオン社製;ガラス転移温度135℃)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥した。その後、65mm径のスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式のフィルム溶融押出し成形機を使用し、溶融樹脂温度270℃、Tダイの幅500mmの成形条件で、厚さ100μm、長さ1000mの基材フィルムを製造した。この基材フィルムは、脂環式構造含有重合体樹脂からなる基材フィルムである。
[製造例2:偏光子の製造]
厚み80μmのポリビニルアルコールフイルムを0.3%のヨウ素水溶液中で染色した。その後、4%のホウ酸水溶液及び2%のヨウ化カリウム水溶液中で5倍まで延伸した後、50℃で4分間乾燥させて偏光子を製造した。
[製造例3:接着液の調製]
ゴーセファイマーZ410(日本合成化学工業製、アセトアセチル基を含むポリビニルアルコール)に水を加えて固形分3%に希釈し、接着液を製造した。
[泡体積]
500mlのメスシリンダーに50mlの水分散液を量り取る。G3のガラスフィルターを先端に取り付けた直径5mmのチューブを通じ、前記分散液に流量0.1L/minで1分間空気を送り、次いで30秒静置した後の泡の体積を読み取る。体積が少ないほど泡の発生を抑制できるといえる。
[はじきムラ]
製造した複層フィルムを、LPL社製ビデオライトVLG−301にて照射した。このフィルムの反射光を斜めから目視で観察し、直径0.5mm以上で略円状に透明に光ぬけしている箇所をはじきムラとして個数を数え、1mあたりの数に換算した。
[接着力]
実施例又は比較例で製造した複層フィルムのウレタン樹脂層の表面と、製造例2で製造した偏光子の片面とを、製造例3で製造した接着剤を用いてロールラミネーターで貼り合わせることにより、偏光板を製造した。得られた偏光板を幅10mmに切断し、偏光子とフィルムとを90°方向に引っ張り、剥がれる際の引っ張り力(90°ピール強度)を測定した。測定は20mmの長さで行い、その際の平均値(平均ピール強度)を求めた。なお、測定機としては万能引張圧縮試験機(TCM−500CR:新興通信工業社製)を用い、引張速度20mm/分で試験を実施した。
[ウレタン樹脂層の厚さ]
ウレタン樹脂の水分散体の、塗布量と塗布面積から未硬化状態での膜厚を算出し、固形分濃度から換算して求めた。
[実施例1]
〔ウレタン樹脂の水分散体の製造〕
温度計、攪拌機、窒素導入管および冷却管を備えた反応器に、ポリエステルポリオールであるマキシモールFSK−2000(川崎化成工業社製、水酸基価56mgKOH/g)840部、トリレンジイソシアネート119部、およびメチルエチルケトンを200部入れ、窒素を導入しながら75℃で1時間反応させた。反応終了後、60℃まで冷却し、ジメチロールプロピオン酸35.6部を加え、75℃で反応させて、酸構造を含有するポリウレタンの溶液を得た。前記のポリウレタンのイソシアネート基(−NCO基)の含有量は0.5%であった。
次いで、このポリウレタンの溶液を40℃にまで冷却し、水1,500部、イソフタル酸ジヒドラジド(沸点224℃以上)120部(ポリウレタン100部に対し7部)を加え、ホモミキサーで高速撹拌することにより乳化を行った。この乳化液から加熱減圧下にメチルエチルケトンを留去し、中和されたポリウレタンの水分散体を得た。この水分散体の固形分濃度は40%であった。
さらに、この水分散体を、含まれるポリウレタンが100部となる量取り、ここにエポキシ化合物であるデナコールEX−313(ナガセケムテックス社製、グリセロール ポリグリシジル エーテル、エポキシ当量141g/eq)15部と、平均粒子径60nmのシリカ微粒子(スノーテックスYL;日産化学工業社製)10部と、(d)成分として非イオン系界面活性剤(d)(4,7−ジヒドロキシ−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシンのエチレンオキサイド(65)付加物;日信化学工業社製「サーフィノール465」)と、水とを配合して、未硬化状態のウレタン樹脂として固形分5%の液状の水系樹脂を得た。なお、(d)成分の添加量は、得られる水系樹脂に対し100ppmとなる量とした。
〔複層フィルムの製造〕
コロナ処理装置(春日電機社製)を用いて、出力300W、電極長240mm、ワーク電極間3.0mm、搬送速度4m/minの条件で、製造例1で得た基材フィルムの表面に放電処理を施した。
基材フィルムの放電処理を施した表面に、前記の液状の水系樹脂を、乾燥後のウレタン樹脂層の厚さが150nmになるようにロールコーターを用いて塗布し、120℃で3分乾燥してウレタン樹脂を硬化させ、複層フィルム1を得た。この複層フィルム1についてはじきムラおよび接着力を評価した結果を、表1に示す。
[実施例2]
(d)成分(サーフィノール465)の添加量を、得られる水系樹脂に対し1,000ppmとなる量とした他は、実施例1と同様にして複層フィルム2を得た。この複層フィルム2についてはじきムラおよび接着力を評価した結果を、表1に示す。
[実施例3]
(d)成分(サーフィノール465)の添加量を、得られる水系樹脂に対し10,000ppmとなる量とした他は、実施例1と同様にして複層フィルム3を得た。この複層フィルム3についてはじきムラおよび接着力を評価した結果を、表1に示す。
[実施例4]
水系樹脂の塗布量を、乾燥後のウレタン樹脂層の厚さが30nmになるようにした他は、実施例1と同様にして複層フィルム4を得た。この複層フィルム4についてはじきムラおよび接着力を評価した結果を、表1に示す。
[実施例5]
水系樹脂の塗布量を、乾燥後のウレタン樹脂層の厚さが250nmになるようにした他は、実施例1と同様にして複層フィルム5を得た。この複層フィルム5についてはじきムラおよび接着力を評価した結果を、表1に示す。
[実施例6]
(d)成分として、サーフィノール465に替えて、4,7−ジヒドロキシ−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシンのエチレンオキサイド(40)付加物(日信化学工業社製「サーフィノール440」)を、得られる水系樹脂に対し100ppmとなる量用いた他は、実施例1と同様にして複層フィルム6を得た。この複層フィルム6についてはじきムラおよび接着力を評価した結果を、表1に示す。
[実施例7]
(d)成分(サーフィノール440)の添加量を、得られる水系樹脂に対し500ppmとなる量とした他は、実施例6と同様にして複層フィルム7を得た。この複層フィルム7についてはじきムラおよび接着力を評価した結果を、表1に示す。
[比較例1]
(d)成分(サーフィノール465)を使用しなかった他は、実施例1と同様にして複層フィルム8を得た。この複層フィルム8についてはじきムラおよび接着力を評価した結果を、表2に示す。
[比較例2]
イソフタル酸ジヒドラジドを使用しなかった他は、実施例1と同様にして複層フィルム9を得た。この複層フィルム9についてはじきムラおよび接着力を評価した結果を、表2に示す。
[比較例3]
(d)成分(サーフィノール465)に替えて、シリコン系界面活性剤(信越シリコーン社製「KM−7750」)を、得られる水系樹脂に対し100ppmとなる量用いた他は、実施例1と同様にして複層フィルム10を得た。この複層フィルム10についてはじきムラおよび接着力を評価した結果を、表2に示す。
Figure 0005845891
Figure 0005845891
以上の実施例および比較例より、本発明によれば、はじきムラの生成が抑制され、光学特性に優れるとともに偏光板等との接着性に優れる複層フィルムが得られることが分かる。

Claims (8)

  1. 脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる層を表面に有する基材フィルムと、ウレタン樹脂層とを備え、
    前記ウレタン樹脂層は、
    (a)ポリウレタン、
    (b)エポキシ化合物、
    (c)不揮発性塩基、並びに、
    (d)三重結合の二つの隣接炭素原子にいずれも水酸基及びメチル基が置換されたアセチレングリコール及び/又はそのエチレンオキサイド付加物である非イオン系界面活性剤
    を含む樹脂(A)を硬化させた層であって
    前記(d)成分の添加量が、未硬化状態の前記樹脂(A)の総量に対し、重量基準で、10ppm以上10,000ppm以下である、複層フィルム。
  2. 前記樹脂(A)が(e)微粒子をさらに含有する、請求項1記載の複層フィルム。
  3. 前記ウレタン樹脂層の厚さが30〜250nmである、請求項1または2に記載の複層フィルム。
  4. 脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる層を表面に有する基材フィルムの前記表面に、
    (a)ポリウレタン、
    (b)エポキシ化合物、
    (c)不揮発性塩基、並びに、
    (d)三重結合の二つの隣接炭素原子にいずれも水酸基及びメチル基が置換されたアセチレングリコール及び/又はそのエチレンオキサイド付加物である非イオン系界面活性剤
    を含む樹脂(A)の水分散体を塗布し、硬化させることを含む、複層フィルムの製造方法であって、
    前記(d)成分の添加量は、未硬化状態の前記樹脂(A)の総量に対し、重量基準で、10ppm以上10,000ppm以下である、複層フィルムの製造方法
  5. 前記樹脂(A)が(e)微粒子をさらに含有する、請求項4記載の製造方法。
  6. 前記樹脂(A)の水分散体中の、(d)三重結合の二つの隣接炭素原子にいずれも水酸基及びメチル基が置換されたアセチレングリコール及び/又はそのエチレンオキサイド付加物である非イオン系界面活性剤の濃度が、0.01〜1重量%である、請求項4または5に記載の製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の複層フィルムを備える、偏光板保護フィルム。
  8. 偏光子と、請求項7記載の偏光板保護フィルムとを備える、偏光板。
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