JP6828236B2 - フィルム及び偏光板 - Google Patents

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Description

本発明は、フィルムに関するものであり、特に、液晶ディスプレイに使用される偏光膜を保護する保護フィルムとして好適に用いることのできるフィルムに関するものである。本発明はまた、このフィルムを用いた偏光板とこの偏光板を有する液晶表示装置に関する。
近年、液晶ディスプレイが、テレビ、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の表示装置として広く用いられている。液晶ディスプレイは、表示側を前面側、その反対側(バックライト側)を後面側とするとき、前面側偏光板/液晶/後面側偏光板の構成を有する。偏光板は通常、染色一軸延伸されたポリビニルアルコール膜よりなる偏光膜に、保護フィルム等を貼り合わせて構成され、例えば保護フィルム/偏光膜/保護フィルムの積層フィルムとなっている。前面側偏光板を構成する偏光膜の前面側及び後面側に配置する保護フィルムをそれぞれ保護フィルムA、保護フィルムBとし、後面側偏光板を構成する偏光膜の前面側及び後面側に配置する保護フィルムをそれぞれ保護フィルムC、保護フィルムDとすると、全体的な構成は、前面側から、保護フィルムA/前面側偏光膜/保護フィルムB/液晶/保護フィルムC/後面側偏光膜/保護フィルムDとなる。
従来、保護フィルムとしては、高い透明性や光学等方性を有することから、トリアセチルセルロースフィルム(以下、TACフィルムと略記することがある)が多く使用されている。
しかし、TACフィルムは寸法安定性、耐湿熱性に劣るために、収縮に伴う応力の発生、偏光子の機能劣化を及ぼし、この偏光板を用いた液晶表示装置の画質に影響を与えることが問題となっていた。また、TACフィルムは、偏光膜と接着させるために、あらかじめアルカリ液で表面をケン化処理しなければいけないという欠点を持っている。
近年の液晶ディスプレイの大型化、高品質化が進むにしたがって、機械的強度や高温高湿環境下での安定性の向上が求められ、また、アルカリ処理による低分子材料のブリードアウトやヘイズ上昇による品質低下を避ける必要性が出てきた。さらに、上記アルカリ処理は高濃度のアルカリ液を使用するため、作業安全性、環境保全の上でも好ましいものではない。
これらの課題を解決するために、寸法安定性、耐湿熱性に優れるポリカーボネート樹脂を用いて以下に記載するような検討が行われている。
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂のような熱可塑性高分子のフィルムの少なくとも片面に、親水性高分子化合物と架橋性樹脂化合物とを含む混合物を塗工し、ついで熱処理することを特徴とする偏光子保護フィルムの製造方法が開示されている。しかし、この方法では、熱処理による硬化に通常数分の時間を要し、工程時間が長くなる、熱処理によるフィルムの変形収縮が発生するなどの問題があった。また、親水性高分子化合物を用いるために有機系のフィルムである基材フィルムとの密着性が不足しやすく、親水性高分子化合物中のOH基や架橋性樹脂化合物中の反応点などは吸水性能も高く、フィルム基材の保存状態ではアルミ袋等で水分遮断などが必要となる。さらに、親水性高分子化合物と架橋性樹脂化合物との混合時の安定性(ポットライフ)なども短いという問題があった。
一方、特許文献2には、ポリカーボネート樹脂を代表例とする特定の透明可塑性合成高分子フィルムの片側に架橋樹脂硬化層を形成した後、その最表面に親水性高分子化合物からなる薄層を湿式コーティング法により形成しその溶媒分を乾燥することにより偏光板用保護フィルムを製造する方法が開示されている。しかし、この方法では、接着性が十分ではない、濡れ性が悪い親水性高分子化合物を用いるためハジキ易い、溶媒分の乾燥のための時間によって工程時間が長くなるなどといった問題があった。さらに、架橋樹脂硬化層の形成における溶剤はポリカーボネート樹脂を溶解するものが多く、ポリカーボネート樹脂からなるフィルムを薄膜化した際にライン中で破断する可能性が増大する問題があった。
特許文献3には、脂環式構造含有重合体またはアクリル重合体を含む樹脂からなる表面層を有する基材フィルムの表面層上に、極性基を有する樹脂Aと、樹脂A中の極性基と反応する官能基を分子内に2以上有する架橋剤とを備える水系樹脂組成物を用いて易接着層を形成した複層フィルムが記載され、樹脂Aとしてポリウレタン樹脂が、架橋剤としてエポキシ基、カルボジイミド基又はオキサゾリン基を有する架橋剤が挙げられている。しかし、この複層フィルムでは、架橋剤の添加により接着性が低下するという欠点があった。
特開2005−266463号公報 特開2007−263988号公報 特開2015−24511号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、TACフィルムの各種課題を解決することができ、かつ、短時間で偏光膜との良好な接着を可能とするコート層を形成することができ、さらに全光線透過率が高く、特に偏光膜の保護フィルムとして好適に利用することができるフィルムと、このフィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置を提供することにある。
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなるフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、脂環式構造含有重合体又はアクリル重合体を含む樹脂層の少なくとも片面に、ウレタン系樹脂と架橋剤を含有する水系ウレタン系樹脂組成物よりなるコート層を形成してなるフィルムにおいて、該架橋剤がメラミン樹脂系架橋剤であることを特徴とするフィルムが提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第2の発明において、前記メラミン樹脂系架橋剤が、イミノ基型及び/またはメチロール基型のメラミン系樹脂を含有することを特徴とするフィルムが提供される。
また、本発明の第3発明によれば、第1又は2の発明において、前記水系ウレタン系樹脂組成物中の前記メラミン樹脂系架橋剤の含有量が、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して0.1重量部以上、30重量部未満であるフィルムが提供される。
また、本発明の第4発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記ウレタン系樹脂が、脂肪族ポリカーボネート骨格を有するフィルムが提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記ポリカーボネート樹脂が、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有するポリカーボネート樹脂であるフィルムが提供される。
Figure 0006828236
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、前記ポリカーボネート樹脂がさらに、下記式(2)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位を含有するフィルムが提供される。
Figure 0006828236
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明に係るフィルムの前記コート層に接着剤層を介して偏光膜を接着してなる偏光板が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、前記接着剤が水系接着剤である偏光板が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第7又は8の発明に係る偏光板を有する液晶表示装置が提供される。
本発明のフィルムによれば、偏光膜を接着させるための接着剤との接着力が良好なコート層を短時間で形成することができ、かつ、それ自体透明性が高く、偏光板とした後の全光線透過率に優れたフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
本発明のフィルムは、脂環式構造含有重合体又はアクリル重合体を含む樹脂層の少なくとも片面に、ウレタン系樹脂と架橋剤を含有する水系ウレタン系樹脂組成物よりなるコート層を形成してなるフィルムにおいて、該架橋剤がメラミン樹脂系架橋剤であることを特徴とするものである。
前述の特許文献3では、易接着層の形成に用いる組成物に含まれる架橋剤が、エポキシ基、カルボジイミド基又はオキサゾリン基を有する架橋剤であったが、本発明では、メラミン樹脂系架橋剤を用いることにより、一般的な架橋剤の添加により生じる接着性の低減が抑制される。また、メラミン樹脂系架橋剤は、その反応性を、メチルエーテル化型、イミノ基型、メチロール基型、メチロール/イミノ基型など官能基によって制御することが容易であることより、ポットライフと反応性を制御しやすいという利点もある。
1.基材層
本発明のフィルムで使用される脂環式構造含有重合体又はアクリル重合体を含む樹脂層(以下、「本発明の基材層」又は「基材フィルム」と称す場合がある。)は、脂環式構造含有重合体又はアクリル重合体を主成分として、基材層中に好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含む。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を含む意味である。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」についても同様である。
また、以下において、脂環式構造含有重合体を「脂環式構造含有樹脂」と称し、脂環式構造含有樹脂を含む樹脂層を「脂環式構造含有樹脂層」と称す場合がある。また、アクリル重合体を「アクリル樹脂」と称し、アクリル樹脂を含む樹脂層を「アクリル樹脂層」と称す場合がある。
本発明の基材層は、単層構成であっても多層構成であってもよく、多層の構成の場合、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を超えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。多層構成の場合、脂環式構造含有樹脂層とアクリル樹脂層との多層構成であってもよく、例えば、アクリル樹脂層/脂環式構造含有樹脂層/アクリル樹脂層の3層積層構成であってもよい。また、最外層がアクリル樹脂層又は脂環式構造含有樹脂層であればよく、アクリル樹脂層及び脂環式構造含有樹脂層以外の他の層を有していてもよい。
本発明の基材層には、後述のウレタンコート層との密着性を高めるための表面処理を施してもよい。この場合の表面処理としては、例えば、エネルギー線照射処理及び薬品処理等が挙げられる。エネルギー線照射処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等が挙げられ、処理効率等の観点から、コロナ放電処理、プラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。また、薬品処理としては、例えば、ケン化処理、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸等の酸化剤水溶液中に浸漬し、その後、水で洗浄する処理が挙げられる。
1−1.脂環式構造含有重合体樹脂
脂環式構造含有樹脂は、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれを用いてもよい。脂環式構造含有樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、特にシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。炭素数がこの範囲であれば、機械強度、耐熱性、及び基材層の成形性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式構造含有樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択してもよく、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が上記下限以上であると、本発明の基材層の透明性及び耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造含有樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適である。
ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。ここで「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体のことをいう。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、及びこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。また、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、及びノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造してもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィン及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、及びノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造してもよい。
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;及びこれらの水素化物;などを挙げることができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素化してなる水素化物;ビニル脂環式炭化水素系モノマー、またはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素化物;等を挙げることができる。前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
脂環式構造含有重合体としては、前記脂環式構造に特に高透明性、高強度、高耐熱性、高耐候性等を付与する目的として他の構造体を含有する重合体であることが好ましい。中でも、脂肪族ポリカーボネート骨格を有するものが好ましく、特に、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂が好ましい。
Figure 0006828236
より具体的には、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド及びイソイデットが挙げられる。
前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は、生物起源物質を原料として糖質から製造可能なエーテルジオールである。とりわけ、イソソルビドは、澱粉から得られるD−グルコースを水添してから脱水することにより安価に製造可能であって、資源として豊富に入手することが可能である。これらの事情により、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、イソソルビドが最も好ましい。
脂環式構造含有重合体としてのポリカーボネート樹脂は、前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位と前記脂環式構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む重合体である。
より具体的に例えば、国際公開第2007/148604号に記載の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を挙げることができる。
前記脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、5員環構造又は6員環構造を含むものであることが好ましい。6員環構造は共有結合によって椅子形又は舟形に固定されていてもよい。
5員環構造又は6員環構造である脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことにより、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高くすることができる。
脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素数は通常70以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。
前記5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、上述の国際公開第2007/148604号に記載のものを挙げることができる。
中でも、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールを好適に例示することができる。これらの中でも、シクロヘキサンジメタノール又はトリシクロデカンジメタノールが経済性及び耐熱性などからより好ましい。特に、下記式(2)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位を含有することが、経済性や耐熱性及び、光学特性とのバランスの点で、最も好ましい。
なお、これらの他の構造単位は、ポリカーボネート樹脂中に1種のみが含まれていてもよく2種以上が含まれていてもよい。
Figure 0006828236
前記ポリカーボネート樹脂の、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合は、ポリカーボネート樹脂中の全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上であって、また、好ましくは90モル%下、より好ましくは80モル%以下である。
前記ポリカーボネート樹脂の、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が上記下限以上であれば、ガラス転移温度の維持による耐熱性の向上が可能となるため好ましい。一方、上記上限以下であることにより、カーボネート構造に由来する着色、生物起源物質を原料に用いる故に微量に含有する不純物に由来する着色等を抑制することができ、通常基材層に要求される透明性を損なわない可能性がある。また、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のみで構成されるポリカーボネート樹脂等では達成が困難な、適当な成形加工性、機械強度及び耐熱性等のバランスを取ることができる。
前記ポリカーボネート樹脂は、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、さらに脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び脂肪族ヒドロキシ化合物に由来する構造単位とからなることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、さらにそれら以外のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が含まれていてもよい。
前記ポリカーボネート樹脂は、一般に用いられる重合方法で製造することができる。前記ポリカーボネート樹脂の製造方法は、ホスゲン法または炭酸ジエステルと反応させるエステル交換法のいずれでもよい。なかでも、重合触媒の存在下に、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物と、脂環式及び脂肪族ジヒドロキシ化合物と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを反応させるエステル交換法が好ましい。
エステル交換法は、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物の1種又は2種以上と、脂環式及び脂肪族ジヒドロキシ化合物の1種又は2種以上と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物の1種又は2種以上と、炭酸ジエステルとに、塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加してエステル交換反応を行う製造方法である。
炭酸ジエステルの代表例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度の下限は、0.20dl/g以上が好ましく、0.30dL/g以上がより好ましく、0.35dL/g以上がさらに好ましく、還元粘度の上限は、2.00dL/g以下が好ましい。
ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
なお、ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、中央理化社製DT−504型自動粘度計にてウベローデ型粘度計を用い、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂濃度が0.60g/dlになるように精密に調整した後に、温度20.0℃±0.1℃で、下記に基づき測定値から算出される。
溶媒の通過時間t、溶液の通過時間tから、下記式:
ηrel=t/t
より相対粘度ηrelを求め、相対粘度ηrelから、下記式:
ηsp=(η−η)/η=ηrel−1
より比粘度ηspを求める。
比粘度ηspを濃度c(g/dl)で割って、下記式:
ηred=ηsp/c
より還元粘度(換算粘度)ηredを求める。
上記のポリカーボネート樹脂等の脂環式構造含有樹脂を含む基材層には、紫外線吸収剤を添加してもよい。この場合、添加する紫外線吸収剤としては、公知のもの、例えば各種市販のものを特に制限なく使用できる。中でも、公知の芳香族ポリカーボネート樹脂への添加に通常用いられるものを好適に用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール及び2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等のベンゾオキサジン系紫外線吸収剤;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール等のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤;などを挙げることができる。
紫外線吸収剤の融点としては、特に120℃〜250℃の範囲にあるものが好ましい。融点が120℃以上の紫外線吸収剤を使用することにより、紫外線吸収剤が時間経過とともにフィルム表面に凝集するブリードアウト現象によりフィルム表面が汚れたり、口金や金属ロールを用いてフィルム成形する場合に、ブリードアウトによりそれらが汚れたりすることを防止し、フィルム表面の曇りを減少させ、また改善することが容易になる。
これらの観点から、紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)]フェノール及び2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、並びに2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール等のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を好ましく使用できる。
これらの中でも、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)]フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールが特に好ましい。
これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記紫外線吸収剤は、ポリカーボネート樹脂等の脂環式構造含有樹脂100重量部に対して、0.0001重量部以上、20重量部以下の割合で添加することが好ましく、0.0005重量部以上、15重量部以下の割合で添加することがより好ましく、0.001重量部以上、10重量部以下の割合で添加することがさらに好ましい。
かかる範囲で紫外線吸収剤を添加することにより、基材層表面への紫外線吸収剤のブリードや基材層の機械特性低下を生じることなく、本発明のフィルムの耐候性を向上させることができる。
本発明の目的を損なわない範囲で、基材層にはまた、紫外線吸収剤以外の添加成分として、シランカップリング剤、酸化防止剤、耐候安定剤などのその他の各種添加剤を適宜な量添加してもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリカーボネート樹脂等の脂環式構造含有樹脂以外の樹脂を添加してもよい。
本発明の基材層となる脂環式構造含有樹脂フィルムの製膜方法としては、公知の方法、例えば単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどの溶融混合設備を有し、Tダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法などを採用することができ、特に限定されるものではないが、本発明においては、ハンドリング性や生産性などの面からTダイを用いる押出キャスト法が好適に用いられる。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、用いる脂環式構造含有樹脂の流動特性や製膜性などによって適宜調整されるが、例えば、脂環式構造含有樹脂がポリカーボネート樹脂の場合、概ね80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上であり、かつ、概ね320℃以下、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは260℃以下であり、シランカップリング剤などを添加する場合は反応に伴う樹脂圧の増加やフィッシュアイの増加を抑制するために成形温度を低下させることが好ましい。シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの各種添加剤は、予めポリカーボネート樹脂等の脂環式構造含有樹脂とともにドライブレンドしてからホッパーに供給してもよいし、予めポリカーボネート樹脂等の脂環式構造含有樹脂等の全ての材料を溶融混合してペレットを作製してから供給してもよいし、添加剤のみを予めポリカーボネート樹脂等の脂環式構造含有樹脂の樹脂に濃縮したマスターバッチを作製して供給してもよい。
1−2.アクリル樹脂
アクリル樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの誘導体を単量体成分として含む重合体をいう。
本発明に用いるアクリル樹脂としては、熱可塑性樹脂としてのアクリル樹脂が使用される。
アクリル樹脂に使用されるアクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸−2−(メタ)アクロイルオキシエチル、マレイン酸−2−(メタ)アクロイルオキシエチル、フタル酸−2−(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸−2−(メタ)アクリオイルオキシエチル、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が例示される。これらは、単独で重合して使用してもよく、2種類以上を共重合して使用してもよい。また、これらのアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体、例えばポリオレフィン系単量体、ビニル系単量体等の1種又は2種以上との共重合体であってもよい。
前記アクリル樹脂の分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量で3万以上、30万以下の範囲であれば、成形する際に流れムラ等の外観不良を生じることがなく、機械特性、耐熱性に優れたフィルムを提供することができる。
本発明で使用されるアクリル樹脂の、JIS K7122に準じて加熱速度10℃/分で測定したガラス転移温度は、特に限定はされないが、得られるフィルムの耐熱性の観点から、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。なお、ガラス転移温度の上限は特に規定されないが、通常140℃である。また、ガラス転移温度が120℃未満であれば、汎用の樹脂が使用できるため原料の選択範囲が広がるという観点から好ましい。一方で、より高い耐熱性が必要な場合は、ガラス転移温度が120℃以上であることが好ましい。
また、本発明で使用されるアクリル樹脂の、溶融粘度の指標であるMFRは、JIS−K7210に準拠し、温度230℃、荷重37.27Nで測定された値で、通常1.0g/10min以上50g/10min以下で、好ましくは5g/10min以上30g/10min以下、さらに好ましくは8g/10min以上20g/10min以下である。
アクリル樹脂層には、柔軟性や靱性を改良するための柔軟性改質剤が含有されていてもよい。柔軟性改質剤としては、特に規定はされないが、ゴム弾性微粒子や、軟質樹脂などが挙げられる。透明性や光学特性の観点から、軟質樹脂を柔軟性改質剤として選択することが好ましい。
上記のような軟質樹脂としては、たとえば株式会社クラレ製の商品名クラリティやアルケマ株式会社製の商品名NANOSTRENGTHなどが挙げられる。
柔軟性改質剤は、柔軟性の観点から、アクリル樹脂層中のアクリル樹脂に対して、1重量%以上含有されることが好ましく、5重量%以上含有されることがより好ましく、10重量%以上含有されることがさらに好ましい。また、柔軟性改質剤の含有量の上限は特に規定されないが、通常50重量%以下である。
1−3.膜厚
基材層の膜厚は、本発明のフィルム及びこれを用いた本発明の偏光板の薄膜化の観点から、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。また、機械強度の観点から、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。
2.ウレタンコート層
次に本発明におけるウレタン系樹脂とメラミン樹脂系架橋剤を含有する水系ウレタン系樹脂組成物(以下、「ウレタン系コーティング組成物」と称す場合がある。)よりなるコート層(以下、「ウレタンコート層」と称す場合がある。)について説明する。
本発明においては、前述の基材フィルムの少なくとも片面に、ウレタン系樹脂とメラミン樹脂系架橋剤を含有する水系のウレタン系コーティング組成物を用いてウレタンコート層を形成することを必須の要件とする。
ウレタンコート層は易接着層として機能し、接着剤を介して基材フィルムを他の部材(例えば、偏光子等)と貼り合わせる際に、接着剤による基材フィルムと他の部材との接着を補強して、より強固に接着させる。すなわち、ウレタンコート層は、接着剤の機能を補強するためのプライマー層として機能する。
通常、ウレタンコート層は、基材フィルムの表面に、接着剤の層等の他の層を介することなく、直接に設けられる。
ウレタンコート層は、基材フィルムの一方の表面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。基材フィルムの両面にウレタンコート層を設けることにより、基材フィルムの取り扱い性を効果的に改善できる。
2−1.ウレタン系樹脂
本発明で用いるウレタン系樹脂としては、例えば、(1)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分(以下「成分(1)」と称す場合がある。)と(2)多価イソシアネート成分(以下「成分(2)」と称す場合がある。)とを反応させて得られるウレタン系樹脂;又は、上記成分(1)及び成分(2)をイソシアネート基過剰の条件下で、反応に不活性で水との親和性の大きい有機溶媒中でウレタン化反応させてイソシアネート基含有プレポリマーとし、次いで、該プレポリマーを中和し、鎖延長剤を用いて鎖延長し、水を加えて分散体とすることによって製造されるウレタン系樹脂;などが挙げられる。これらのウレタン系樹脂には酸構造(酸残基)を含有させてもよい。
イソシアネート基含有プレポリマーの鎖伸長方法は公知の方法を採用することができ、例えば、鎖伸長剤として、水、水溶性ポリアミン、グリコール類などを使用し、イソシアネート基含有プレポリマーと鎖伸長剤とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させてもよい。
前記成分(1)としては、特に限定されるものではないが、水酸基性の活性水素を有するものが好ましい。このような化合物の具体例としては、次の(1−1)〜(1−5)に例示するものが挙げられる。
(1−1)ポリオール化合物
ポリオール化合物として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチルプロパンジオールなどが挙げられる。
(1−2)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとして、例えば、上記(1−1)のポリオール化合物のアルキレンオキシド付加物;アルキレンオキシドと環状エーテル(例えばテトラヒドロフランなど)との開環(共)重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体;グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。
(1−3)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとして、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸又はその無水物と、上記(1−1)で挙げたエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのポリオール化合物とを、水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものなどが挙げられる。より具体的には、例えば、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、或いはグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオールなどが挙げられる。
(1−4)ポリエーテルエステルポリオール
ポリエーテルエステルポリオールとして、例えば、エーテル基含有ポリオール(例えば、前記(1−2)のポリエーテルポリオールやジエチレングリコール等)又は、これと他のグリコールとの混合物を上記(1−3)で例示したようなジカルボン酸又はその無水物に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるものなどが挙げられる。より具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物などが挙げられる。
(1−5)ポリカーボネートポリオール
ポリカーカーボネートポリオールとしては、例えば、一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)−OH(ただし、式中、Rは炭素数1〜12の飽和脂肪酸ポリオール残基を示す。また、nは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物などが挙げられる。これらは、飽和脂肪族ポリオールと置換カーボネート(例えば、炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを、水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法;前記飽和脂肪族ポリオールとホスゲンとを反応させるか、又は必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ポリオールを反応させる方法;などにより得ることができる。
上記の(1−1)から(1−5)に例示したような化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記成分(1)と反応させる成分(2)としては、例えば、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環族又は芳香族の化合物が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、炭素数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、炭素数4〜18の脂環式ジイソシアネート化合物が好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)などが挙げられる。芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明において、ウレタン系樹脂としては、耐熱性や耐水性に優れたウレタンコート層を形成することができることから、脂肪族ポリカーボネート骨格を有するもの、具体的には、前記(1−5)のポリカーボネートポリオールと、脂肪族ジイソシアネート化合物との反応で得られるウレタン系樹脂が好ましい。
また、ウレタン系樹脂は、酸構造を有することが好ましい。酸構造を有するウレタン系樹脂は、界面活性剤を使用せずに、若しくは界面活性剤の量が少なくても、水中に分散させることが可能となるので、ウレタンコート層の耐水性が良くなることが期待される。これを自己乳化型といい、界面活性剤を使用することなく分子イオン性のみで、水中にウレタン系樹脂が分散安定化しうることを意味する。このようなウレタン系樹脂を用いたウレタンコート層は、基材フィルムとの接着性に優れ、かつ高い透明性を維持できるため、好ましい。また、この酸構造を起点として架橋することにより、疎水性、耐熱性、湿熱性をさらに向上させることが出来るため、好ましい。
酸構造としては、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(−SOH)等の酸基などを挙げることができる。また、酸構造は、ウレタン系樹脂の側鎖に存在していてもよく、末端に存在していてもよい。なお、酸構造は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
酸構造の含有量としては、ウレタン系樹脂の酸価として、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、好ましくは250mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下である。酸価が5mgKOH/g未満では水分散性が不十分となりやすく、一方、酸価が250mgKOH/gより大きいとウレタンコート層の耐水性が劣る傾向となる。
ウレタン系樹脂に酸構造を導入する方法は、従来から用いられている方法が特に制限なく使用できる。好ましい例を挙げると、ジメチロールアルカン酸を、前記(1−2)から(1−4)に記載したグリコール成分の一部もしくは全部と置き換えることによって、予めポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等にカルボキシル基を導入する方法が挙げられる。ここで用いられるジメチロールアルカン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。なお、ジメチロールアルカン酸は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ウレタン系樹脂の数平均分子量は、1,000以上が好ましく、より好ましくは20,000以上であり、1,000,000以下が好ましく、より好ましくは200,000以下である。
本発明で用いるウレタン系コーティング組成物は、好ましくは水系ウレタン系樹脂を用いて調製される。水系ウレタン系樹脂は、ウレタン系樹脂の水分散体であり、通常、ウレタン系樹脂と水と、必要に応じて含まれる他の成分が水に溶解ないし水散しているものであり、その固形分(ウレタン系樹脂)濃度は通常10〜50重量%程度である。
水系ウレタン系樹脂は市販されているものを用いてもよい。水系ウレタン系樹脂の市販品としては、例えば、旭電化工業社製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井東圧化学社製の「オレスター」シリーズ、大日本インキ化学工業社製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン」シリーズ、バイエル社製の「インプラニール」シリーズ、日本ソフラン社製の「ソフラネート」シリーズ、花王社製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業社製の「サンプレン」、「ユーコート」、「ユーポリン」シリーズ、大日精化工業社製の「レザミン」シリーズ、保土谷化学工業社製の「アイゼラックス」シリーズ、第一工業製薬社製の「スーパーフレックス」シリーズ、ゼネカ社製の「ネオレッツ」シリーズ、ルブリゾール社性の「Sancure」シリーズ、スタールジャパン社製の「RU」シリーズ、などを用いることができる。特に、三洋化成工業社製の「ユーコート UA−368」、スタールジャパン(株)製の「RU−40−350」や「EX−RU−92−605」、大日精化工業社製の「レザミンD−6031」などは、脂肪族ポリカーボネート骨格を有し、後述の揮発性塩基により水分散化されているため、本発明に好適である。
なお、ウレタン系コーティング組成物は、ウレタン系樹脂の1種類のみを含むものであってもよく、2種類以上を任意の比率で含むものであってもよい。
2−2.メラミン樹脂系架橋剤
メラミン樹脂系架橋剤としては、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロールメラミン;メチロールメラミンとアルコールとのアルキルエーテル化物;メチロールメラミンの縮合物とのアルコールのエーテル化物等を挙げることができる。ここで、アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等が挙げられる。
メラミン樹脂系架橋剤としては、市販品を使用することができる。市販品の商品名としては、例えば、オルネクスジャパン社製の「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル380」、「サイメル385」、「サイメル701」、「サイメル212」、「サイメル253」、「サイメル254」、モンサント社製の「レジミン735」、「レジミン740」、「レジミン741」、「レジミン745」、「レジミン746」、「レジミン747」、住友化学社製の「スミマールM55」、「スミマールM30W」、「スミマールM50W」、三井化学社製の「ユーバン20SE」、「ユーバン28SE」(三井化学社製)などを挙げることができる。
メラミン樹脂系架橋剤としては、メラミン樹脂やベンゾグアナミン樹脂などのメラミン系骨格を有する樹脂が使用可能であり、部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及び/又はブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂を使用することができる。
これらのうち、耐湿性や可撓性、水中の安定性やポットライフの観点から、メチルエーテル化メラミン樹脂を、縮合性や反応性、硬度反応性やの観点から、イミノ基型(部分メチロール化)や、メチロール基型(部分エーテル化)含有メラミン樹脂を好適に使用することができる。本発明においては、特にフィルムの乾燥工程において、短時間で架橋させることができ、硬度の増加に伴い室温でのタック性も良好となるイミノ基型及び/又はメチロール基型含有メラミン樹脂を用いることが好ましい。
これらのメラミン樹脂系架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ウレタン系コーティング組成物中のメラミン樹脂系架橋剤の含有量は、ウレタン系樹脂(ここで、ウレタン系樹脂とは、ウレタン系コーティング組成物の調製に水系ウレタン系樹脂を用いる場合は、水系ウレタン系樹脂中の水を含まない固形分としてのウレタン系樹脂の純分の割合である。)100重量部に対して0.1重量部以上であることが、ウレタン系樹脂を十分に架橋させて形成されるウレタンコート層の機械的強度を十分に高める観点から好ましい。一方、未反応のメラミン樹脂系架橋剤の残留を少なくして、ウレタンコート層の機械的強度を高める観点から、メラミン樹脂系架橋剤はウレタン系樹脂100重量部に対して40重量部未満であることが好ましい。ウレタン系コーティング組成物中のメラミン樹脂系架橋剤は、ウレタン系樹脂100重量部に対して特に1〜30重量部であることが好ましい。
また、ウレタン系樹脂が酸構造を有する場合、ウレタン系樹脂の酸構造と当量になるメラミン樹脂系架橋剤の量に対し、メラミン樹脂系架橋剤の量は、重量基準で、好ましくは0.2倍以上、より好ましくは0.4倍以上、特に好ましくは0.6倍以上であり、好ましくは3.0倍以下、より好ましくは2.5倍以下、特に好ましくは2.0倍以下である。ここで、ウレタン系樹脂の酸構造と当量になるメラミン樹脂系架橋剤の量とは、ウレタン系樹脂の酸構造の全量と過不足無く反応できるメラミン樹脂系架橋剤の理論量をいう。ウレタン系樹脂が酸構造を有すると、その酸構造はメラミン樹脂系架橋剤のアルキルエーテル基、メチロール基、イミノ基を含有するメラミン構造と反応しうる。この際、メラミン樹脂系架橋剤の量を前記の範囲に収めることにより、酸構造とメラミン樹脂系架橋剤との反応を適切な程度に進行させて、形成されるウレタンコート層の機械的強度を効果的に向上させることができる。
2−3.その他の成分
ウレタンコート層を形成するウレタンコーティング組成物は、上記の水系ウレタン系樹脂及びメラミン樹脂系架橋剤以外に、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分を含有していてもよい。
2−3−1.硬化触媒
ウレタン系コーティング組成物は、硬化触媒を含有していてもよく、硬化触媒を含むことにより、得られるウレタンコート層の硬化性を高めることができる。
また、硬化触媒としては、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸;該スルホン酸とアミンとの中和塩;リン酸エステル化合物とアミンとの中和塩等の1種又は2種以上を使用することができる。
ウレタン系コーティング組成物が硬化触媒を含有する場合、硬化触媒は、メラミン樹脂系架橋剤に対して0.01〜10重量%、特に0.1〜5重量%含有されることが好ましい。
2−3−2.塩基性物質
ウレタン系コーティング組成物は、塩基性物質を含有していてもよい。ウレタン系コーティング組成物中のウレタン系樹脂が酸構造を含む場合、酸構造の一部又は全部は、塩基性物質により中和されていることが好ましい。特に酸構造含有ウレタン系樹脂の酸構造のうちの20%以上が塩基性物質により中和されていることがより好ましく、50%以上が塩基性物質により中和されているのが特に好ましい。酸構造のうちの20%以上が塩基性物質により中和されることにより、基材フィルムにウレタンコート層を形成して得られる本発明のフィルムが高温下に曝された熱履歴を有しても、光学材料としての特性を維持しつつ、他の光学フィルム、特に偏光子に積層して使用されるときに、積層されたフィルムとの密着性をより一層確実に維持することができる。なお、酸構造含有ウレタン系樹脂の残りの酸構造は中和されていなくてもよく、又は塩基性物質により中和されていてもよい。また、塩基性物質として不揮発性塩基と揮発性塩基のどちらを使用してもかまわない。
2−3−2−1.不揮発性塩基
不揮発性塩基としては、ウレタン系コーティング組成物を基材フィルムの表面に塗布した後に乾燥させる際の処理条件下、例えば80℃で1時間放置した場合において実質的に不揮発性である無機塩基及び有機塩基を挙げることができる。実質的に不揮発性である無機塩基及び有機塩基としては、前記処理後に不揮発性塩基の減少分が80%以下であるものを挙げることができる。
不揮発性塩基としては、水に溶解性があるか、又は水に分散してエマルジョン化しうるものが好ましい。これにより、水系ウレタン系樹脂の塗布性を良好にして、ウレタンコート層の形成を容易に行うことが可能となる。
前記不揮発性塩基としては、次のようなものが挙げられる。
水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機塩基;
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパン水酸化カリウム、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトシキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ−エトキシ)シラン、シクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンペンタミン、アミノエチルエタノールアミン、1,2−プロパンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルエタノールアミン、アミノヘキシルエタノールアミン、アミノエチルプロパノールアミン、アミノプロピルプロパノールアミン、アミノヘキシルプロパノールアミン、5−アミノピラゾール、1−メチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−5−アミノピラゾール、1,3−ジメチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−アシノ−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、3−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−4−クロロ−5−アミノピラゾールなどの一級アミン;
ジエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの二級アミン;
N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシカルボン酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、グリコリック酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物;
トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリ[(2−ヒドロキシ)−1−プロピル]アミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレアなどの三級アミン;
イミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−エチルイミダゾール、2−アミノイミダゾールサルフェート、2−(2−アミノエチル)−ベンゾイミダゾール等イミダゾール化合物;
イミダゾリン、2−メチル−2−イミダゾリン等のイミダゾリン化合物;
なかでも、ヒドラジド化合物のようにヒドラジノ基(−NHNH基)を有する化合物は、反応性が高いのでウレタンコート層の機械的強度を適切に向上させることができ、また比較的沸点が高くウレタンコート層の耐熱性を高くできるので、特に好ましい。
これらの不揮発性塩基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ウレタン系コーティング組成物が不揮発性塩基を含有する場合、その含有量は、ウレタン系樹脂(ここで、ウレタン系樹脂とは、ウレタン系コーティング組成物の調製に水系ウレタン系樹脂を用いる場合は、水系ウレタン系樹脂中の水を含まない固形分としてのウレタン系樹脂の純分の割合である。)100重量部に対し、通常0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上であり、通常40重量部以下、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。不揮発性塩基の量を上記範囲の下限値以上とすることによりウレタンコート層の機械的強度を適切に向上させることができ、上限値以下とすることにより未反応の不揮発性塩基の残留を少なくでき、やはりウレタンコート層の機械的強度を適切に向上させることができる。
2−3−2−2.揮発性塩基
揮発性塩基としては、例えば、アンモニア、揮発性第一級〜第三級アミン等を挙げることができる。
揮発性塩基としては、揮発性第三級アルキルアミンが好ましく、揮発性第三級トリアルキルアミンがより好ましい。
揮発性第三級アルキルアミンとしては、トリメチルアミンまたはトリエチルアミンが好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。
ウレタン系コーティング組成物が、揮発性塩基を含有すると安定性が向上する。これは、ウレタン系樹脂の酸構造と揮発性塩基とが、ウレタン系コーティング組成物中で分散安定性の向上に寄与するためであると考えられる。
また、揮発性塩基は、水系ウレタン系樹脂のエマルジョン中では、少なくともその一部が共役酸の形で存在していると考えられる。
揮発性塩基は、ウレタン系コーティング組成物中に、特に制限されず含有することができるが、ウレタン系樹脂(ここで、ウレタン系樹脂とは、ウレタン系コーティング組成物の調製に水系ウレタン系樹脂を用いる場合は、水系ウレタン系樹脂中の水を含まない固形分としてのウレタン系樹脂の純分の割合である。)の酸構造1モルに対して、第三級アルキルアミン等の揮発性塩基が0.1〜6モルとなるように含有することが好ましく、0.5〜4.0モルとなるように含有することがより好ましい。この範囲であると、ウレタン系コーティング組成物の安定性がより向上する。
揮発性塩基は、ウレタン系コーティング組成物を硬化させたときに、ウレタンコート層中に痕跡量しか残留せず、本発明に係るウレタンコート層と接着剤層との接着性を損なうことはなく、不揮発性塩基などにおいて懸念される高温高湿条件など水分の影響が大きい条件下においてもブリードアウトせず、偏光板などへの影響をほとんど生じないため好ましい。
2−3−3.ポリビニルアルコール
ウレタン系コーティング組成物は、ポリビニルアルコールを含有していてもよく、ポリビニルアルコールを含むことで室温におけるウレタンコート層表面のタック性改良や、水系接着剤との密着性増加などの機能が期待できる。
ウレタン系コーティング組成物がポリビニルアルコールを含有する場合、ポリビニルアルコールの含有量は、固形分量に対し、0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。ポリビニルアルコールの含有量を上記下限値以上とすることでウレタンコート層表面のタック性と水系接着剤との接着性を向上することができ、上記上限値以下とすることで基材フィルムとウレタンコート層との密着性を維持することができる。
なお、ここでウレタン系コーティング組成物中の全固形分とは、ウレタン系コーティング組成物中の溶剤以外の成分の合計に該当する。
2−3−4.非イオン系界面活性剤
ウレタン系コーティング組成物は、三重結合の二つの隣接炭素原子にいずれも水酸基及びメチル基が置換されたアセチレングリコール及び/又はそのエチレンオキサイド付加物である非イオン系界面活性剤を含有していてもよい。このような非イオン系界面活性剤を含むことにより、未硬化状態のウレタン系コーティング組成物の発泡を抑制しつつ濡れ性を改善できるので、基材フィルムに塗布した際のはじきムラの発生を防止できる。
この非イオン系界面活性剤としては、下記式(i)で表されるものが挙げられる。
−C(CH)(OR)−C≡C−C(CH)(OR)−R …(i)
(式中、R及びRはそれぞれ独立して、−(CH−Hを表す。mは0以上の整数を表し、0〜400が好ましく、0又は20〜100であることがより好ましく、40〜70であることが特に好ましい。R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、イソプロピル基が好ましい。)
かかる非イオン系界面活性剤としては、例えば、日信化学工業社製のサーフィノール104シリーズ、サーフィノール400シリーズなどを用いることができる。
ウレタン系コーティング組成物が非イオン系界面活性剤を含有する場合、非イオン系界面活性剤の含有量は、ウレタン系コーティング組成物中の全固形分の総量に対し、重量基準で、好ましくは10ppm以上、より好ましくは100ppm以上であり、好ましくは10,000ppm以下、より好ましくは1,000ppm以下である。非イオン系界面活性剤の含有量を上記下限値以上とすることではじきムラの発生を抑制でき、上記上限値以下とすることで発泡を抑制し泡起因による不良を防止できる。
2−3−5.微粒子
ウレタン系コーティング組成物は、微粒子を含んでいてもよく、微粒子を含むことにより、形成されるウレタンコート層の表面に凹凸を形成し、これにより、巻回の際にウレタンコート層が他の層と接触する面積が小さくなり、その分だけウレタンコート層の表面の滑り性を向上させて、本発明のフィルムを巻回する際のシワの発生を抑制できる。
微粒子の平均粒子径は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、通常500nm以下、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下である。平均粒子径を上記範囲の下限値以上にすることにより、形成されるウレタンコート層の滑り性を効果的に高めることができ、上記範囲の上限値以下にすることにより、得られるフィルムをロール状に巻回する際の巻きズレの発生を防止できる。なお、微粒子の平均粒子径としては、レーザー回折法によって粒径分布を測定し、測定された粒径分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(50%体積累積径D50)を採用する。
微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子のいずれを用いてもよいが、水分散性の微粒子を用いることが好ましい。無機微粒子の材料を挙げると、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物;炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。また、有機微粒子の材料を挙げると、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、シワの発生を抑制する能力及び透明性に優れ、ヘイズを生じ難く、着色が無いため、本発明のフィルムの光学特性に与える影響がより小さいこと、また、水系ウレタン系樹脂への分散性及び分散安定性が良好であることから、シリカ微粒子が好ましく、シリカ微粒子の中でも、非晶質コロイダルシリカ粒子が特に好ましい。
なお、微粒子は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ウレタン系コーティング組成物が上記のような微粒子を含有する場合、微粒子の含有量は、ウレタン系樹脂(ここで、ウレタン系樹脂とは、ウレタン系コーティング組成物の調製に水系ウレタン系樹脂を用いる場合は、水系ウレタン系樹脂中の水を含まない固形分としてのウレタン系樹脂の純分の割合である。)100重量部に対し、通常0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上であり、通常30重量部以下、好ましくは25重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。微粒子の含有量を上記範囲の下限値以上とすることにより、本発明のフィルムを巻回した場合にシワの発生を抑制できる。また、微粒子の含有量を上記範囲の上限値以下とすることにより、本発明のフィルムの白濁の無い外観を維持できる。
2−3−6.その他の成分
ウレタン系コーティング組成物は、本発明の効果を著しく損なわない限り、例えば、上記の非イオン系界面活性剤以外の界面活性剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックスなどを含有していてもよい。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
2−3−7.溶剤
ウレタン系コーティング組成物は、通常、ウレタン系樹脂とメラミン樹脂系架橋剤を必須成分とし、必要に応じて用いられる上記の任意成分を含む分散液として調製される。
ウレタン系コーティング組成物の調製に用いる溶剤(分散媒)としては、水及び/又は水溶性の溶剤、好ましくは水、特に好ましくはイオン交換水が挙げられる。
水溶性の溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
溶剤は、ウレタン系コーティング組成物の粘度が、塗布に適した範囲になるように設定することが好ましく、ウレタンコーティング組成物は、塗工性、成膜性の観点から、その固形分濃度が好ましく5〜40重量%、特に好ましくは10〜30重量%程度となるように調製される。
2−4.ウレタンコーティング組成物の調製
ウレタンコーティング組成物は、水、好ましくはイオン交換水を用いて前述のウレタン系樹脂、好ましくは水系ウレタン系樹脂、及びメラミン樹脂系架橋剤、必要に応じて用いられるその他の成分を溶解ないし分散させることにより調製される。
ウレタン系コーティング組成物においては、通常、ウレタン系樹脂等の成分が粒子となって分散している。この粒子の粒径は、本発明のフィルムの光学特性の観点から、0.01〜0.4μmであることが好ましい。前記の粒径は、動的光散乱法により測定してもよく、例えば、大塚電子社製の光散乱光度計DLS−8000シリーズにより測定してもよい。
ウレタン系コーティング組成物の粘度は、100mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以下であるのが特に好ましい。ウレタン系コーティング組成物の粘度が上記範囲内にあると、基材フィルムの表面にウレタン系コーティング組成物を均一に塗布することができる。ここで、ウレタン系コーティング組成物の粘度は、回転粘度計により25℃の条件下で60rpmの回転数において測定した値である。ウレタン系コーティング組成物の粘度は、例えば、ウレタン系コーティング組成物が含む溶剤の割合及びウレタン系コーティング組成物中に含まれる粒子の粒径などによって調整することができる。
2−5.ウレタンコート層の形成方法
ウレタンコート層は、基材フィルムの少なくとも片面に、上述のウレタン系コーティング組成物を塗布し、形成された塗膜を乾燥固化(硬化)させることにより形成される。
ウレタン系コーティング組成物の塗布方法は特に限定されず、公知の塗布法を採用することができる。具体的な塗布法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
形成された塗膜を硬化させる際には、ウレタン系コーティング組成物中の溶剤を乾燥させて除去する。乾燥方法は任意であり、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥など任意の方法で行ってもよい。中でも、ウレタン系コーティング組成物中において架橋反応等の反応を速やかに進行させる観点から、加熱乾燥によって硬化させることが好ましい。
加熱により塗膜を硬化させる場合、加熱温度は、ウレタン系コーティング組成物の溶剤を乾燥させて塗膜を硬化させることができる範囲で適切に設定する。ただし、基材フィルムとして延伸フィルムを用い、且つ、当該基材フィルムに発現した位相差を変化させたくない場合には、加熱温度は、基材フィルムにおいて配向緩和が生じない温度に設定することが好ましい。具体的には、上限温度としては基材フィルムを形成する材料のガラス転移温度をTgとしたときに、(Tg−10)℃以下であり、好ましくは(Tg−20)℃以下であり、より好ましくは(Tg−30)℃以下である。下限温度としては溶剤の沸点をBpとしたときに、(Bp−50)℃以上であり、好ましくは(Bp−40)℃以上であり、より好ましくは(Bp−30)℃以上である。
具体的な加熱乾燥条件に関しては特に限定されるわけではないが、通常、50〜150℃で5〜200秒間、好ましくは60〜130℃で10〜100秒間を目安として乾燥を行うのが良い。
さらに、ウレタン系コーティング組成物を基材フィルムの表面に形成した後で、延伸処理を行ってもよい。延伸処理は、塗膜を硬化させた後で行ってもよいが、ウレタンコート層からの微粒子などの脱落を防ぐ観点からは、塗膜を硬化させる前、又は硬化させるのと同時に延伸処理を行うことが好ましい。さらに、均一なウレタンコート層を形成する観点からは、塗膜を硬化させるのと同時に延伸処理を行うことがより好ましい。
基材フィルムを延伸すると、表面に形成されたウレタンコート層も延伸されることになる。しかし、通常はウレタンコート層の厚みは基材フィルムの厚みに比べ十分に小さいので、延伸されたウレタンコート層には大きな位相差は発現しない。
このようにして形成されたウレタンコート層の表面には、親水化表面処理を施してもよい。ウレタンコート層の表面は、通常、本発明のフィルムを他の部材と貼り合わせる際の貼り合せ面となるので、この面の親水性を更に向上させることにより、本発明のフィルムと他の部材との接着性を顕著に向上させることができる。
ウレタンコート層に対する親水化表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、ケン化処理、紫外線照射処理などが挙げられる。中でも、処理効率の点などからコロナ放電処理及びプラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。プラズマ処理としては、大気圧プラズマ処理が好ましい。
親水化表面処理により、ウレタンコート層の表面の濡れ指数を、好ましくは40mN/m以上であり、より好ましくは50mN/m以上であり、特に好ましくは60mN/m以上であり、通常40mN/m以上にすることが望ましい。ウレタンコート層の表面をこのような濡れ指数となるように表面改質処理することにより、本発明のフィルムを偏光子等の他の部材と強固に接着できるようになる。
2−6.膜厚
ウレタンコート層の膜厚は、本発明のフィルム及びこれを用いた本発明の偏光板の薄膜化と基材フィルムの歪み(硬化収縮)防止や位相差への影響の観点から、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましい。また、接着強度の観点から、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。上記範囲であれば、基材層と後述の水系接着剤の双方に対して良好な接着性を得ることができる。
また、基材フィルムの膜厚(t1)とウレタンコート層の膜厚(t2)の膜厚の比(t1/t2)は、好ましくは1〜1000であり、より好ましくは3〜500、さらに好ましくは5〜200である。t1/t2が上記の範囲であればウレタン系コーティング組成物の加熱乾燥時においても基材フィルムの強度低下や皺の発生、位相差の増加が生じにくいため好ましい。
なお、本発明において、ウレタンコート層は基材フィルムの少なくとも片面に形成されるものであり、ウレタンコート層は、基材フィルムの両面に形成されていてもよい。上記のウレタンコート層の膜厚は、基材フィルムの片面あたりのウレタンコート層の膜厚の値である。基材フィルムの両面にウレタンコート層が形成されている場合、片面あたりのウレタンコート層の膜厚は上記の下限以上であることが好ましく、両面のウレタンコート層の合計の膜厚は上記の上限以下であることが好ましい。また、フィルムの反り等の防止の面から、両面のウレタンコート層の膜厚は等しいことが好ましい。
3.偏光板
本発明のフィルムの用途には特に制限はないが、透明性、寸法安定性、耐湿熱性に優れることから、特に、偏光板の偏光膜の保護フィルムとして好適に用いることができる。
本発明のフィルムを例えば、偏光板における偏光膜の保護フィルムとして使用する場合、一般的には、ウレタンコート層側に偏光膜を接着させるための接着剤を介して偏光膜を貼り合わせる。
接着剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリビニルアルコール系やウレタン化合物等の水系接着剤、アクリル系化合物やエポキシ系化合物、オキサゾリン化合物等の活性エネルギー線硬化系接着剤が挙げられる。中でも、偏光膜であるポリビニルアルコール(PVA)との接着性や、廃棄物等における環境安全性等の観点より、ポリビニルアルコール系等の水系接着剤が好ましい。
本発明のフィルムのウレタンコート層上に水系接着剤等の接着剤を塗布して接着剤層を形成した後、この上に、例えば一軸延伸され、ヨウ素等で染色されたポリビニルアルコール膜などの偏光膜を貼り合わせる。この偏光膜の反対側にも保護フィルムや位相差フィルム等を貼り合わせて偏光板とすることができる。
すなわち、本発明のフィルムを用いた本発明の偏光板は、第1の保護フィルム/接着剤層/偏光膜/接着剤層/第2の保護フィルムの層構成となり、本発明のフィルムは、これらのうち少なくとも一方の保護フィルムとして用いられる。
4.液晶表示装置
本発明のフィルムは、透明性、寸法安定性、耐湿熱性に優れ、偏光膜に対して密着性よく接着させることができることから、このような本発明のフィルムを用いた本発明の偏光板は、偏光膜の保護効果、機能維持性に優れ、テレビ、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の液晶表示装置の偏光板として高品質な表示画面を実現することができる。
前述の通り、液晶ディスプレイは、前面側偏光板/液晶/後面側偏光板の構成を有し、偏光板は保護フィルム/偏光膜/保護フィルムの構成を有することから、前面側偏光板を構成する偏光膜の前面側及び後面側に配置する保護フィルムをそれぞれ保護フィルムA、保護フィルムBとし、後面側偏光板を構成する偏光膜の前面側及び後面側に配置する保護フィルムをそれぞれ保護フィルムC、保護フィルムDとすると、全体的な構成は、前面側から、保護フィルムA/前面側偏光膜/保護フィルムB/液晶/保護フィルムC/後面側偏光膜/保護フィルムDとなる。
本発明のフィルムが、本発明の基材層の両面にウレタンコート層を有する両面接着タイプの場合、一方のウレタンコート層側には前述の接着剤層を介して偏光膜を接着し、他方のウレタンコート層側には前述の接着剤層を介して他の機能性フィルムや透明基材を接着することができる。他の機能性フィルムとしては、特に制限はないが、例えば、高屈折率フィルム、低屈折率フィルム、これらを積層した反射防止フィルム、色補正フィルムなどの光学フィルム、ハードコートフィルム、防汚フィルム、電磁波シールドフィルム、赤外線吸収フィルム、紫外線吸収フィルムなどが挙げられる。また、透明基材としては、支持基板としてのガラスや各種透明フィルムが挙げられる。
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例及び比較例により本発明は何ら制限を受けるものではない。
[評価方法]
以下において、種々の物性等の測定及び評価は次のようにして行った。
<PVAフィルムとの初期接着性の評価>
PVA樹脂(日本合成(株)製、ゴーセネックスZ−200)10重量%の水溶液100gに対し、架橋剤(日本合成(株)製、SPM−02)0.3重量部を混合して水系接着剤を作製した。作製したコーティングフィルムのウレタンコート層を接着面側として、ウレタンコート層に水系接着剤を#24のバーコーターにより塗布し、二軸延伸PVAフィルム(日本合成(株)製、商品名:ボブロン、厚み:40μm)を貼り合わせて100℃、300秒で加熱、乾燥することにより評価用サンプルを作製した。このサンプルを幅20mmで切断した後、万能引張試験器(インテスコ社製、型式:200X)を用いて、テストスピード50mm/分によりT型剥離を実施した。その時の最大剥離強度(N/20mm幅)を測定した。また、最大剥離強度(N/20mm幅)をコート層の塗布厚み(μm)で除算することにより求めた塗布厚み換算の最大剥離強度を下記基準に基づき評価した。
○:塗布厚み換算の最大剥離強度が2N/20mm幅以上
×:塗布厚み換算の最大剥離強度が2N/20mm幅未満
<タック性の評価>
作製したコーティングフィルムのコート面を指触し、下記基準で評価した。
○:タックが無い
×:タックがある
<架橋性の評価>
作製したコーティング組成物をテフロン(登録商標)シートに塗布し、100℃で60秒乾燥させることにより評価サンプルを作製した。このサンプルを動的粘弾性測定装置「DVE−V4」(レオロジー社製)を用いることにより動的粘弾性測定を実施し、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で引張法により測定した150℃での弾性率から、下記基準により判定した。
○:150℃における弾性率が1.0MPa以上
×:150℃における弾性率が1.0MPa未満
[基材フィルムに用いた重合体]
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂としては、住友化学株式会社製のPMMA樹脂「スミペックスMGSS」を用いた。
<脂環式構造含有樹脂>
特開2008−024919号公報に準じた方法で製造した、ジヒドロキシ化合物であるイソソルビドに由来する構造単位とトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位のモル比率がイソソルビド/トリシクロデカンジメタノール=6/4で、ガラス転移温度が126℃である脂環式構造含有樹脂(ポリカーボネート樹脂)を用いた。
[基材フィルムの作製]
上記のアクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂をφ65mm単軸押出機に投入し、220〜240℃のバレル設定温度にて溶融混練し、幅1350mmでリップギャップ0.7mmの口金(設定温度240℃)から押出した後、65℃に温調されたキャストロールにて巻き取ることにより、厚み60μmのフィルムを作製した。このフィルムを、コロナ処理装置を用いて積算照射量1000W/mでコロナ処理した後にMD方向を長手として100mm×200mmに切断することにより、それぞれ、アクリル樹脂フィルム(以下、基材Aと略記)及びポリカーボネート樹脂フィルム(以下、基材Bと略記)を作製した。
[実施例1]
水系ポリウレタン系樹脂「ユーコート UA−368」(三洋化成(株)製、固形分(ウレタン系樹脂)50重量%)100重量部に、架橋剤としてメチロール/イミノ基型メラミンホルムアルデヒド樹脂「サイメル701」(オルネクスジャパン(株)製)を10重量部配合し、更に添加剤としてポリビニルアルコール水溶液「マルタイト150」(大成化薬工業(株)製、固形分(ポリビニルアルコール)15重量%)を固形分換算で3重量%となるように配合し、希釈溶媒としてイオン交換水を用いて固形分量20重量%となるように配合した後に混合することによりウレタンコーティング組成物を作製した。このコーティング組成物をバーコーター#8を用いて前記基材Aにコーティングした後、100℃で1分乾燥させることにより基材A上に、表1に示す膜厚のウレタンコート層を形成してなる本発明のコーティングフィルムを作製した。このコーティングフィルムについて各種評価を実施した。
[実施例2]
前記実施例1において、メラミン樹脂架橋剤をイミノ基型メラミンホルムアルデヒド樹脂「サイメル325」(オルネクスジャパン(株)製)10重量部に変更した以外は同様の手法によりコーティングフィルムを作製した。このコーティングフィルムについて各種評価を実施した。
[実施例3]
前記実施例1において、水系ウレタン系樹脂を水系ポリウレタン系樹脂「スーパーフレックス470」(第一工業製薬(株)製、固形分(ウレタン系樹脂)40重量%)に変更した以外は同様の手法によりコーティングフィルムを作製した。このコーティングフィルムについて各種評価を実施した。
[実施例4]
前記実施例1において、水系ウレタン系樹脂を水系ポリウレタン系樹脂「レザミンD−6031」(大日精化工業(株)製、固形分(ウレタン系樹脂)30重量%)に変更した以外は同様の手法によりコーティングフィルムを作製した。このコーティングフィルムについて各種評価を実施した。
[実施例5]
前記実施例2において、基材Aの代りに基材Bを用いた以外は同様の手法によりコーティングフィルムを作製した。このコーティングフィルムについて各種評価を実施した。
[実施例6]
前記実施例4において、メラミン樹脂系架橋剤をイミノ基型メラミンホルムアルデヒド樹脂「サイメル325」(オルネクスジャパン(株)製)に変更した以外は同様の手法によりコーティングフィルムを作製した。このコーティングフィルムについて各種評価を実施した。
[実施例7]
前記実施例1において、メラミン樹脂系架橋剤の配合量を5重量部に変更した以外は同様の手法によりコーティングフィルムを作製した。このコーティングフィルムについて各種評価を実施した。
[実施例8]
前記実施例1において、メラミン樹脂系架橋剤の配合量を20重量部に変更した以外は同様の手法によりコーティングフィルムを作製した。このコーティングフィルムについて各種評価を実施した。
[比較例1]
前記実施例1において、架橋剤をカルボジイミド系架橋剤「XR−5580」(スタールジャパン(株)製)15重量部に変更した以外は同様の手法によりコーティングフィルムを作製した。このコーティングフィルムについて各種評価を実施した。
[比較例2]
前記実施例1において、架橋剤をオキサゾリン系架橋剤「エポクロスWS−500」(日本触媒(株)製)20重量部に変更した以外は同様の手法によりコーティングフィルムを作製した。このコーティングフィルムについて各種評価を実施した。
[比較例3]
前記実施例1において、架橋剤をオキサゾリン系架橋剤「エポクロスWS−500」(日本触媒(株)製)40重量部に変更した以外は同様の手法によりコーティングフィルムを作製した。このコーティングフィルムについて各種評価を実施した。
前記実施例1〜8及び比較例1〜3におけるコーティングフィルムの評価結果と形成したコート層の膜厚を表1に示した。
Figure 0006828236
表1より明らかなように、実施例1〜8の本発明のコーティングフィルムは、いずれも水系接着剤との接着性に非常に優れた特性を示した。一方で、比較例のフィルムはいずれも水系接着剤との接着性が劣る結果となった。

Claims (10)

  1. 脂環式構造含有重合体を含む樹脂層の少なくとも片面に、ウレタン系樹脂と架橋剤を含有する水系ウレタン系樹脂組成物よりなるコート層を形成してなるフィルムにおいて、該架橋剤がメラミン樹脂系架橋剤であり、前記脂環式構造含有重合体が、ポリカーボネート骨格を有することを特徴とするフィルム。
  2. 前記脂環式構造含有重合体が、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有するポリカーボネート樹脂である請求項1に記載のフィルム。
    Figure 0006828236
  3. 前記ポリカーボネート樹脂がさらに、下記式(2)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位を含有する請求項1又は2に記載のフィルム。
    Figure 0006828236
  4. 熱可塑性樹脂としてのアクリル重合体を含む樹脂層の少なくとも片面に、ウレタン系樹脂と架橋剤を含有する水系ウレタン系樹脂組成物よりなるコート層を形成してなるフィルムにおいて、該架橋剤がメラミン樹脂系架橋剤であり、前記アクリル重合体がPMMA樹脂であることを特徴とするフィルム。
  5. 前記メラミン樹脂系架橋剤が、イミノ基型及び/またはメチロール基型のメラミン系樹脂を含有する請求項1〜のいずれかに記載のフィルム。
  6. 前記水系ウレタン系樹脂組成物中の前記メラミン樹脂系架橋剤の含有量が、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して0.1重量部以上、30重量部未満である請求項1〜のいずれかに記載のフィルム。
  7. 前記ウレタン系樹脂が、脂肪族ポリカーボネート骨格を有する請求項1〜のいずれかに記載のフィルム。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載のフィルムの前記コート層に接着剤層を介して偏光膜を接着してなる偏光板。
  9. 前記接着剤が水系接着剤である請求項に記載の偏光板。
  10. 請求項又はに記載の偏光板を有する液晶表示装置。
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