JP6848387B2 - 偏光子保護フィルム - Google Patents
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Description
偏光板は、偏光子の両側に、ポリビニルアルコールなどの水溶性接着剤を用いて保護フィルムを貼合したものが一般的である。
偏光子としては、従来から、ポリビニルアルコールを溶液流延法により製膜したフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ、ホウ酸溶液中で延伸させたフィルムが一般的に使用されてきた。
しかし、セルロース系フィルムは、耐久性、耐熱性、機械的強度などが十分ではなく、これを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を高湿熱環境で使用したり、画像表示装置全体が薄型化して光源等の熱源との距離が近くなる構成になったりすると、膨張変形したり、偏光度や色差等の偏光板特性を損なうことがあった。そこで近年、耐熱性、耐久性、光学的透明性に優れた材料として、アクリル系樹脂からなるフィルム(「アクリル系フィルム」と称する)、脂環式構造含有重合体を含むフィルムが偏光子保護フィルムとして注目されている。
本発明の実施形態の一例に係る偏光子保護フィルム(「本フィルム」と称する。)は、樹脂フィルム(A)と、樹脂フィルム(A)の一面側に積層されてなる易接着層(B)と、樹脂フィルム(A)の他面側すなわち前記一面側の反対側に積層されてなる離型フィルム(C)と、を備えた積層フィルムである。
離型フィルム(C)の熱膨張係数が−300ppm/K以上300ppm/K以下であれば、樹脂フィルム(A)の熱膨張係数との差が小さくなるため、70℃以上に加熱されたとしても、当該積層フィルムがカールしないようにすることができる。
かかる観点から、昇温速度10℃/分により測定した80℃以上100℃以下における離型フィルム(C)の熱膨張係数は−300ppm/K以上300ppm/K以下であるのが好ましく、中でも−200ppm/K以上或いは250ppm/K以下、その中でも−150ppm/K以上或いは225ppm/K以下、さらにその中でも−100ppm/K以上或いは200ppm/K以下であるのが特に好ましい。
上記範囲内の熱膨張係数を有する離型フィルム(C)とするためには、後述するように、離型フィルム(C)は、DSC測定において140℃以上に吸熱ピークを有するフィルムであるのが好ましい。但し、これに限定される訳ではない。
樹脂フィルム(A)の熱膨張係数が−200ppm/K以上200ppm/K以下であれば、高温時における膨張が抑制され、結果として偏光板において貼合されるPVAや粘着剤などの他の部材との熱膨張差や熱応力による剥離や変形を生じず、密着性と信頼性を確保できる。
かかる観点から、昇温速度10℃/分により測定した80℃以上100℃以下における樹脂フィルム(A)の熱膨張係数は−200ppm/K以上200ppm/K以下であるのが好ましく、−150ppm/K以上或いは150ppm/K以下であるのが好ましく、その中でも−100ppm/K以上或いは125ppm/K以下、さらにその中でも−50ppm/K以上或いは100ppm/K以下であるのが特に好ましい。
さらに本フィルムにおいては、100℃で2分加熱した後における樹脂フィルム(A)と離型フィルム(C)との層間剥離強度F2(N/20mm幅)が0.1以下であるのが好ましく、中でも0.01以上或いは0.09以下であるのがさらに好ましく、その中でも特に0.02以上或いは0.08以下であるのがさらに好ましい。
100℃で2分加熱した後における樹脂フィルム(A)と離型フィルム(C)との層間剥離強度F2(N/20mm幅)が0.1以下ということは、加熱前の層間剥離強度F1から層間剥離強度F2がそれほど上がっていないことを示しており、偏光板からの剥離時において偏光板側への粘着層の糊残りや、フィルムの破損が生じにくいため、好ましい。
本フィルムの厚みは、特に制限されるのではないが、光学フィルム全般の薄膜化の要請の観点から、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、80μm以下が特に好ましい。一方、ハンドリング性や強度の観点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
本フィルムにおいて、積層フィルムの総厚みに対する離型フィルム(C)の厚みの割合(積層比)は30%以上であり、40%以上がより好ましく、55%以上がさらに好ましい。
ここで、離型フィルム(C)の厚み割合が30%以上であれば、本積層フィルムの力学強度が良好なものとなり、ハンドリング性に優れるため好ましい。また、離型フィルム(C)の厚みの上限については特に定めないが、使用する離型フィルムの軽量化の観点より、95%以下であり、90%以下がより好ましく、85%以下がさらに好ましい。
樹脂フィルム(A)は、偏光子保護フィルム用途として求められる透明性、低複屈折率性、低吸水性、及び、耐熱性に優れるという点より、アクリル重合体又は脂環式構造含有重合体又はこれら重合体の混合物を主成分樹脂として含有する層を少なくとも1層含む。例えば、偏光板を構成する偏光子保護フィルム、すなわち偏光子の両側に貼合する偏光子保護フィルムとして使用可能な樹脂フィルムを好ましく使用することができる。但し、これに限定するものではない。
かかる観点から、樹脂フィルム(A)の厚みは3μm以上80μm以下であるのが好ましく、中でも5μm以上或いは40μm以下であるのがより好ましく、その中でも特に10μm以上或いは30μm以下であるのがより好ましい。
100℃で2分加熱した後における樹脂フィルム(A)と離型フィルム(C)との層間剥離強度F2(N/20mm幅)が0.1以下という関係を満たす限り特段の制限はないが、アクリル重合体を主成分樹脂として含有する層(「アクリル樹脂層」とも称する)、又は、脂環式構造含有重合体を主成分樹脂として含有する層(「脂環式構造樹脂層」とも称する)、又はこれら重合体の混合物を主成分樹脂として含有する層(「アクリル・脂環式構造樹脂層」とも称する)からなる単層フィルムであってもよいし、これらアクリル樹脂層、脂環式構造樹脂層及びアクリル・脂環式構造樹脂層のうちの一層或いは複数の層を含む複層フィルムであってもよい。
複層フィルムとしては、2層、3層、4層或いはそれ以上の多層であってもよい。
樹脂フィルム(A)が複層フィルムである場合、アクリル樹脂層、脂環式構造樹脂層及びアクリル・脂環式構造樹脂層以外の他の層を備えていてもよく、その他の層としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート、等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン,ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレートなどのアクリルやポリアリレートを主成分樹脂として含有するフィルム等を挙げることができる。
特に、アクリル樹脂層/脂環式構造樹脂層/アクリル樹脂層からなる3層フィルムが好ましい。
前記アクリル樹脂層は、次に説明するアクリル重合体を主成分樹脂として含有する層であればよい。よって、アクリル樹脂層は、アクリル重合体以外の樹脂成分を含んでいてもよいし、樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
但し、アクリル樹脂層の主成分樹脂はアクリル重合体であるから、アクリル樹脂層に含まれる樹脂のうち50質量%以上をアクリル重合体が占めるのが好ましく、中でも80質量%以上、その中でも90質量%以上(100質量%を含む)をアクリル重合体が占めるのが特に好ましい。
上記軟質樹脂としては、例えば株式会社クラレ製商品名「クラリティ」やアルケマ株式会社製商品名「NANOSTRENGTH」などを挙げることができる。
前記アクリル樹脂層の主成分樹脂をなすアクリル重合体としては、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの誘導体を単量体成分として含む重合体であればよい。中でも、熱可塑性樹脂としてのアクリル重合体が好ましい。
なお、アクリル重合体のガラス転移温度の上限は特に規定されない。但し、通常は140℃程度である。また、アクリル重合体のガラス転移温度が120℃未満であれば、汎用の樹脂が使用できるため原料の選択範囲が広がるという観点から好ましい。一方で、より高い耐熱性が必要な場合は、ガラス転移温度が120℃以上であることが好ましい。
樹脂フィルム(A)に少なくとも1層含有される層としては前記アクリル樹脂層の代わりに、アクリル樹脂と同等の透明性を有し、低複屈折率性、及び、低吸水性を有し、かつ、アクリル樹脂よりも耐熱性が強いという点より、脂環式構造含有重合体を主成分として含有する脂環式構造層を採用することができる。脂環式構造樹脂層は、脂環式構造含有重合体以外の樹脂成分を含んでいてもよいし、樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
但し、脂環式構造樹脂層の主成分樹脂は脂環式構造含有重合体であるから、脂環式構造樹脂層に含まれる樹脂のうち50質量%以上を脂環式構造含有重合体が占めるのが好ましく、中でも80質量%以上、その中でも90質量%以上(100質量%を含む)を脂環式構造含有重合体が占めるのが特に好ましい。
これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
かかる範囲で紫外線吸収剤を添加することにより、脂環式構造樹脂層表面への紫外線吸収剤のブリードや機械特性低下を生じることなく、フィルムの耐候性を向上させることができる。
前記脂環式構造層の主成分樹脂をなす脂環式構造含有重合体は、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であればよく、例えば主鎖に脂環式構造を有する重合体、又は、側鎖に脂環式構造を有する重合体の何れでもよい。
脂環式構造含有重合体としては、前記脂環式構造に特に高透明性、高強度、高耐熱性、高耐候性等を付与する目的として他の構造体を含有する重合体であることが好ましい。中でも、脂肪族ポリカーボネート骨格を有するものが好ましく、特に、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂が好ましい。
かかる観点から、ポリカーボネート樹脂の還元粘度の下限は、0.20dl/g以上が好ましく、0.30dL/g以上がより好ましく、0.35dL/g以上がさらに好ましく、還元粘度の上限は、2.00dL/g以下が好ましい。
溶媒の通過時間t0、溶液の通過時間tから、下記式:
ηrel=t/t0
より相対粘度ηrelを求め、相対粘度ηrelから、下記式:
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1
より比粘度ηspを求める。
比粘度ηspを濃度c(g/dl)で割って、下記式:
ηred=ηsp/c
より還元粘度(換算粘度)ηredを求める。
ノルボルネン重合体としては、例えばノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
なお、本明細書において「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体のことをいう。
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;及びこれらの水素化物;などを挙げることができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素化してなる水素化物;ビニル脂環式炭化水素系モノマー、またはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素化物;等を挙げることができる。前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、用いる脂環式構造含有重合体の流動特性や製膜性などによって適宜調整されるが、例えば、脂環式構造含有重合体がポリカーボネート樹脂の場合、概ね80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上であり、かつ、概ね320℃以下、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは260℃以下であり、シランカップリング剤などを添加する場合は反応に伴う樹脂圧の増加やフィッシュアイの増加を抑制するために成形温度を低下させることが好ましい。シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの各種添加剤は、予めポリカーボネート樹脂等の脂環式構造含有重合体とともにドライブレンドしてからホッパーに供給してもよいし、予めポリカーボネート樹脂等の脂環式構造含有重合体等の全ての材料を溶融混合してペレットを作製してから供給してもよいし、添加剤のみを予めポリカーボネート樹脂等の脂環式構造含有重合体の樹脂に濃縮したマスターバッチを作製して供給してもよい。
易接着層(B)は、樹脂フィルム(A)を他の部材に接着し易くする役割を有している。
よって、例えば、樹脂フィルム(A)が、上述のようにアクリル樹脂層又は脂環式構造樹脂層からなる単層フィルムである場合や、アクリル樹脂層又は脂環式構造樹脂層を最表面層として備えた複層フィルムである場合であって、且つ、当該樹脂フィルム(A)を水溶性接着剤を用いて偏光子に貼合することを想定すると、易接着層(B)は、アクリル樹脂層や脂環式構造樹脂層ばかりか、水溶性接着剤ともなじみが良く、高い密着性を発揮することができるものが好ましい。
ポリオール化合物として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチルプロパンジオールなどを挙げることができる。
ポリエーテルポリオールとして、例えば、上記(1−1)のポリオール化合物のアルキレンオキシド付加物;アルキレンオキシドと環状エーテル(例えばテトラヒドロフランなど)との開環(共)重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体;グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコールなどのグリコール類;などを挙げることができる。
ポリエステルポリオールとして、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸又はその無水物と、上記(1−1)で挙げたエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのポリオール化合物とを、水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものなどを挙げることができる。より具体的には、例えば、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、或いはグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオールなどを挙げることができる。
ポリエーテルエステルポリオールとして、例えば、エーテル基含有ポリオール(例えば、前記(1−2)のポリエーテルポリオールやジエチレングリコール等)又は、これと他のグリコールとの混合物を上記(1−3)で例示したようなジカルボン酸又はその無水物に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるものなどを挙げることができる。より具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物などを挙げることができる。
ポリカーカーボネートポリオールとしては、例えば、一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)n−OH(ただし、式中、Rは炭素数1以上12以下の飽和脂肪酸ポリオール残基を示す。また、nは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5以上50以下の整数である。)で示される化合物などを挙げることができる。これらは、飽和脂肪族ポリオールと置換カーボネート(例えば、炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを、水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法;前記飽和脂肪族ポリオールとホスゲンとを反応させるか、又は必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ポリオールを反応させる方法;などにより得ることができる。
易接着層としてコーティングなどで使用可能なウレタン系樹脂の市販品としては、例えば、旭電化工業社製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井東圧化学社製の「オレスター」シリーズ、大日本インキ化学工業社製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン」シリーズ、バイエル社製の「インプラニール」シリーズ、日本ソフラン社製の「ソフラネート」シリーズ、花王社製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業社製の「サンプレン」、「ユーコート」、「ユーポリン」シリーズ、大日精化工業社製の「レザミン」シリーズ、保土谷化学工業社製の「アイゼラックス」シリーズ、第一工業製薬社製の「スーパーフレックス」シリーズ、ゼネカ社製の「ネオレッツ」シリーズ、ルブリゾール社性の「Sancure」シリーズ、スタールジャパン社製の「RU」シリーズ、などを用いることができる。特に、三洋化成工業社製の「ユーコート UA−368」、スタールジャパン(株)製の「RU−40−350」や「EX−RU−92−605」、大日精化工業社製の「レザミンD−6031」などは、脂肪族ポリカーボネート骨格を有し、揮発性塩基により水分散化されているため、残存物質が少なく好適である。
架橋剤としては、一般的にはカルボジイミド樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂などが好適用いることができる。
架橋剤の含有量は、ウレタン系樹脂100重量部に対して0.1重量部以上であることが、ウレタン系樹脂を十分に架橋させて形成されるウレタンコート層の耐湿性や耐熱性、機械的強度を十分に高める観点から好ましい。一方、未反応の架橋剤の残留を少なくして、易接着層(B)の耐湿性や耐熱性、機械的強度を高める観点から、架橋剤はウレタン系樹脂100重量部に対して40重量部未満であることが好ましい。ウレタン系樹脂100重量部に対して特に1重量部以上30重量部以下であることが好ましい。
かかる観点から、易接着層(B)の厚みは0.3μm以上2.5μm以下であるのが好ましく、中でも0.5μm以上或いは2.0μm以下であるのがより好ましく、その中でも特に0.7μm以上或いは1.5μm以下であるのがより好ましい。
これらの易接着層(B)厚みの調整方法としては、前述したコーティング法を用いた場合は、易接着層(B)を形成する樹脂組成物の固形分量を調整したり、塗布量を調整したりすることにより行う事が可能である。ただし、これらの方法に限定されるものではない。
よって、易接着層(B)の上記貯蔵弾性率G’は0.1MPa以上100MPa以下であるのが好ましく、中でも0.5MPa以上或いは90MPa以下であるのがさらに好ましく、その中でも1MPa以上或いは80MPa以下であるのがさらに好ましい。
離型フィルム(C)は、樹脂フィルム(A)に積層することでハンドリング性を高める一方、樹脂フィルム(A)から容易に剥がすことができるものであるのが好ましい。中でも、例えば、偏光子保護フィルムの保護フィルム(所謂マスキングフィルム)として使用することができるものが好ましい。
例えば基材層(C1)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、PET、PEN等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド等を例示することができる。中でも、粘着層(C2)との化学的な親和性や、離型フィルムの生産性の観点から、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を用いたフィルムが好ましい。但し、これらに限定するものではない。
かかる観点から、基材層(C1)の厚みは、3μm以上100μm以下であるのが好ましく、中でも5μm以上或いは80μm以下であるのがより好ましく、その中でも特に10μm以上或いは60μm以下であるのがより好ましい。
かかる観点から、粘着層(C2)の厚みは、0.1μm以上20μm以下であるのが好ましく、中でも0.3μm以上或いは15μm以下であるのがより好ましく、その中でも特に0.5μm以上或いは10μm以下であるのがより好ましい。
粘着層(C2)がポリオレフィン系樹脂層である自己粘着型離型フィルムの場合、アウトガス成分による製品汚染や、本発明のフィルム積層体から該離型フィルムを剥離する際の糊残りや100℃以上の高温時における成分移行などにより生じる剥離力変動に伴う離型フィルムや保護フィルムの破損等の問題が生じたりする懸念が少なく好適である。
かかる観点から、離型フィルム(C)の厚みは5μm以上100μm以下であるのが好ましく、中でも10μm以上或いは80μm以下であるのがより好ましく、その中でも特に15μm以上或いは60μm以下であるのがより好ましい。
離型フィルム(C)が上記2つの温度領域にそれぞれ吸熱ピークが存在するようにするには、80℃以上140℃未満の領域に吸熱ピークを有する材料を用いた粘着層(C2)と、140℃以上170℃未満の領域に吸熱ピークを有する材料を用いた基材層(C1)とを積層して離型フィルム(C)を作製するか、あるいは、80℃以上140℃未満の領域に吸熱ピークを有する材料と、140℃以上170℃未満の領域に吸熱ピークを有する材料との混合物を用いて離型フィルム(C)を作製するようにすればよい。
140℃以上170℃未満の領域に吸熱ピークを有する材料としては、例えばポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂などの樹脂及び共重合体の中で、DSC測定において140℃以上170℃未満の領域に吸熱ピークを有する材料を選択若しくは調製すればよい。
以下、易接着層(B)/樹脂フィルム(A)/離型フィルム(C)の層構成からなる本積層フィルムの製造方法について説明する。但し、下記説明する実施形態に限定されるものではない。
本フィルムは、易接着層(B)を介して偏光子に貼り合わせ、その後、離型フィルム(C)を剥がすようにすれば、樹脂フィルム(A)を保護フィルムとして偏光子に貼り合わせることができる。
上述のように、偏光子の表裏両側にそれぞれ、易接着層(B)を介して樹脂フィルム(A)を貼合することにより、液晶表示装置などに用いることができる偏光板として使用することができる。
よって、本フィルムの易接着層(B)の外側に、ポリビニルアルコールなどの水溶性接着剤を主成分とする接着剤層を積層して構成を備えた積層体を形成しておき、当該積層体を偏光子に貼り合わせるようにしてもよい。
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。例えば厚さに関して言えば、狭義では100μm以上のものをシートと称し、100μm未満のものをフィルムと称すことがある。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとし、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとする。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
以下において、種々の物性等の測定及び評価は次のようにして行った。
実施例および比較例で作製した積層フィルムを幅20mmに切断した後、ULVAC社製DL1500によりJIS K7197に準拠して、昇温速度10℃/分により測定した80℃以上100℃以下における幅方向(TD)の熱膨張係数を測定し、表1に「膨張係数(TD)」として示した。
80℃以上140℃未満の領域に吸熱ピーク温度1と吸熱ピークにおける熱量ΔHm1(mJ/mg)、140℃以上170℃未満の領域に吸熱ピーク温度2と吸熱ピークにおける熱量ΔHm2(mJ/mg)は、(株)パーキンエルマー製の示差走査熱量計、商品名「Pyris1 DSC」を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから求めた。
実施例および比較例で作製した積層フィルムを幅20mmに切断した後、樹脂フィルムと離型フィルムの層間において、万能引張試験器(インテスコ社製、型式:200X)を用いて、テストスピード50mm/分によりT型剥離を実施し、その時の層間剥離強度(F1)(N/20mm幅)を測定し、表1に記載した。
また、実施例および比較例で作製した積層フィルムを幅20mmに切断した後、恒温槽を用いて100℃で2分間の加熱処理を施した後、上記同様に加熱後の層間剥離強度(F2)(N/20mm幅)を測定し、表1に記載した。
実施例および比較例に記載した積層フィルムの外観評価としては、下記の条件により実施および判定を行った。
MDを20cm、TDを10cmの長方形にサンプルを切出し、MD端部においてTDの中央部(5cm)の箇所をクリップにより固定し、恒温槽を用いて80℃で加熱した状態での外観状態について下記基準により判定した。
○:恒温槽内においてフィルムがカールにより筒状となっていない。
×:恒温槽内においてフィルムが1周以上カールすることにより筒状となっている。
恒温槽を用いて100℃で2分間の加熱処理を施したサンプルにおいて、樹脂フィルム(A)から離型フィルム(C)を剥離した際の、樹脂フィルム(A)または離型フィルム(C)の外観状態について下記基準により判定した。
○:樹脂フィルム(A)または離型フィルム(C)に破れ、皺、剥離痕を生じない。
×:樹脂フィルム(A)または離型フィルム(C)に破れ、皺、剥離痕のいずれかを生
じる。
樹脂フィルムに用いた樹脂組成物は以下のようにして製造した。
アクリル重合体として、住友化学株式会社製のPMMA樹脂、「スミペックスMGSS」79重量部と、株式会社クラレ製のアクリル樹脂「クラリティLA4285」21重量部の混合マスターバッチを用いた。アクリル重合体のガラス転移温度(JIS K7122、加熱速度10℃/分)は110℃、MFR(230℃、3.8kg荷重)は16.0g/10minであった。
ジヒドロキシ化合物であるイソソルビドに由来する構造単位と、トリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位とを有し、且つ、これら構造単位のモル比率がイソソルビド/トリシクロデカンジメタノール=6/4であり、ガラス転移温度が126℃である脂環式構造含有重合体(ポリカーボネート樹脂)を用意した。
次のようにして、積層フィルム及び巻層体を作製した。
易接着層(B)に用いるコート液は、ウレタン樹脂として水系ウレタンエマルジョン(酸構造:カルボン酸、塩基:トリエチルアミン)「レザミンD−6031」(大日精化工業株式会社製、以下ウレタンエマルジョン(A)と略記することがある)を10000g、架橋剤としてメチロール/イミノ基型メラミンホルムアルデヒド樹脂「サイメル701」(オルネクスジャパン株式会社製)を5000g混合し、さらにイソプロパノール500gとメタノール5000gの混合溶液で希釈することによりコート液を作製した。
上記作製した積層フィルムの樹脂フィルム(A)側、すなわち離型フィルム(C)とは表裏反対側の面を、コロナ処理装置を用いて積算照射量1000W/m2でコロナ処理した後、当該コロナ処理面に、グラビアロールを用いて乾燥後の易接着層(B)の厚みが1.2μmになるように前記コート液のコーティングを行い、4mのフローティングゾーンを有する乾燥炉において60℃の温度条件によりラインスピード4m/分の条件で乾燥することにより、厚さ1.2μmの易接着層(B)を有する積層フィルムを作製した。
実施例1において、離型フィルムとして、ポリプロピレン層とポリエチレン層の積層フィルム(合計厚さ50μm)であるPP/PE積層系フィルム(トレテック7H52、東レフィルム加工製)を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを作製した。
実施例1において、樹脂フィルム(A)として、脂環式構造含有重合体(ポリカーボネート樹脂)単体を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを作製した。
実施例1において、樹脂フィルム(A)として、アクリル重合体単体を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを作製した。
実施例1において、離型フィルム(C)として、厚さ30μmのLDPE系自己粘着フィルム(PAC−3J−30H サンエー化研製)を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを作製した。
実施例1において、離型フィルム(C)として、厚さ50μmのHDPE系自己粘着フィルム(PAC−4−50H サンエー化研製)を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを作製した。
実施例1において、離型フィルム(C)として、厚さ30μmの延伸PP系自己粘着フィルム(太閤010M フタムラ化学製)を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを作製した。
実施例1において、離型フィルム(C)として、厚さ30μmの延伸PP系自己粘着フィルム(太閤020M フタムラ化学製)を用いた以外は、実施例1と同様に積層フィルムを作製した。
一方で、比較例1〜4の積層フィルムはいずれも、上記特性の何れかが劣る結果となった。
Claims (13)
- アクリル重合体又は脂環式構造含有重合体又はこれら重合体の混合物を主成分樹脂として含有する層を少なくとも1層含む樹脂フィルム(A)と、樹脂フィルム(A)の一面側に積層されてなる易接着層(B)と、樹脂フィルム(A)の他面側に、剥離可能に積層されてなる離型フィルム(C)とを備えた積層フィルムからなる偏光子保護フィルムであって、
昇温速度10℃/分により測定した80℃以上100℃以下における離型フィルム(C)の熱膨張係数が−300ppm/K以上300ppm/K以下であり、
離型フィルム(C)は、基材層(C1)と、ポリオレフィン系樹脂からなる粘着層(C2)を有し、DSC測定における吸熱ピークが、80℃以上140℃未満の領域及び140℃以上170℃未満の領域にそれぞれ一つ以上存在し、
樹脂フィルム(A)と離型フィルム(C)との層間剥離強度F1(N/20mm幅)が0.01以上0.1以下であり、
100℃で2分加熱した後における樹脂フィルム(A)と離型フィルム(C)との層間剥離強度F2(N/20mm幅)が0.01以上0.1以下であることを特徴とする偏光子保護フィルム。 - 基材層(C1)がポリオレフィン樹脂からなる、請求項1に記載の偏光子保護フィルム。
- 前記基材層(C1)がポリプロピレンからなり、前記粘着層(C2)がポリエチレンからなる請求項1又は2に記載の偏光子保護フィルム。
- 前記粘着層(C2)が、80℃以上140℃未満の領域に吸熱ピークを有する材料からなり、前記基材層(C1)が、140℃以上170℃未満の領域に吸熱ピークを有する材料からなる、請求項1〜3の何れか一項に記載の偏光子保護フィルム。
- 前記粘着層(C2)と前記基材層(C1)との厚さの比率が1:50〜1:1である請求項1〜4の何れか一項に記載の偏光子保護フィルム。
- 前記易接着層(B)は、ウレタン系樹脂を主成分樹脂とすることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の偏光子保護フィルム。
- 樹脂フィルム(A)が、一面の最表面層として、アクリル重合体を主成分樹脂として含有する層を備えたフィルムであることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の偏光子保護フィルム。
- 樹脂フィルム(A)が、脂環式構造含有重合体を主成分樹脂として含有する層を中間層として備え、その表裏両側に、アクリル重合体を主成分樹脂として含有する層を備えた3層フィルムであることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の偏光子保護フィルム。
- 前記樹脂フィルム(A)の厚みが3μm以上80μm以下であることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の偏光子保護フィルム。
- 前記易接着層(B)の厚みが0.5μm以上2.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の偏光子保護フィルム。
- 請求項1〜10の何れか一項に記載の偏光子保護フィルムの易接着層(B)の外側に接着剤層が積層されてなる構成を備えた偏光子保護フィルム。
- 前記接着剤層は、水溶性接着剤を主成分とすることを特徴とする請求項11に記載の偏光子保護フィルム。
- 請求項11又は12に記載の偏光子保護フィルムを備えた液晶表示装置。
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