JP2015042388A - フィルム製造装置及びフィルム製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高品質なフィルムの均質な製造を達成することができ、且つ、フィルムの製造を容易とすることができる、フィルムの製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】長尺の基材を搬送する搬送装置と、搬送される前記基材の一方の表面に、水系の溶媒を含む水系材料を連続的に塗布する塗布装置と、前記塗布装置より下流に配置され、前記基材の搬送経路の一部を囲繞する囲繞体を備える乾燥装置と、前記塗布装置より下流側であって前記乾燥装置より上流側の位置に配置された開口を有し、前記乾燥装置から前記搬送経路の上流側へ漏出する漏出気体を前記開口から吸引する吸引装置と、前記塗布装置より下流側であって前記吸引装置より上流側の位置に配置された開口を有し、搬送される前記基材の一方又は両方の表面に向けて前記開口から気体を供給する給気装置とを備えるフィルム製造装置。
【選択図】 図1

Description

本発明は、フィルム製造装置及びフィルム製造方法に関する。
光学フィルムの製造においては、基材の上に、特定の機能を有する層(偏光膜、ハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防眩層、防汚層等)を設けることが広く行われる。このような層の形成は、基材の上に、当該層の原料及び溶媒を含む液体を塗布して液体の層を形成し、さらに当該液体の層中の溶媒を乾燥させることに行う場合が多い(例えば特許文献1)。このような層の形成を行うため、光学フィルムの製造においては、塗工装置及び乾燥装置を含む製造装置を用いることが行われる。
また、光学フィルムの製造は、その品質の向上のため、コンタミネーションコントロールが行われているクリーンルーム内において行われることが多い。通常、クリーンルームの運用においては、室内の空気中に浮遊するパーティクルの量の基準が設けられ、その量が一定以下に保たれる。
特開2013−071099号公報
塗工装置及び乾燥装置を用いた光学フィルムの製造を行うと、装置の操作に伴いパーティクルが多く発生することがある。製造工程を実施する空間内のパーティクルの量が多くなると、製造されるフィルムにハジキ・クレーターと呼ばれる微小な円盤状の形状の不均質な部分などの不具合が発生し、フィルムの品質を損ないうる。また、製造工程を実施する空間内のパーティクルの量が非常に多くなると、クリーンルームの運用基準を満たすことが困難となる、クリーンルーム内の空気の浄化に必要なコストが上昇する、パーティクルが設備にダメージを与える、等の不所望な現象が生じ、フィルムの製造を困難としうる。
したがって、本発明の目的は、高品質なフィルムの均質な製造を達成することができ、且つ、フィルムの製造を容易とすることができる、フィルムの製造装置及び製造方法を提供することにある。
本発明者は前記課題を解決するために検討し、まず、パーティクルの発生する原因を調べた。その結果、塗布装置にて液体の層を設けたフィルムを乾燥装置に搬入した際、乾燥装置内において気化した液体中の溶媒が、乾燥装置外に漏出して結露することが、パーティクル発生の大きな原因であることが分かった。特に、従来技術において知られていなかった新たな知見として、乾燥装置内の温度の均一性が従来基準より高くなる条件で乾燥工程を行うと、乾燥装置外への揮発した気化溶媒の漏出量が特に多く、この機構により発生するパーティクルの量が、クリーンルームの運用上問題となるレベルに達しうる、という知見が得られた。さらに、乾燥装置に連続的にフィルムを搬送する場合、フィルム搬入口及び搬出口のうち、搬入口から漏出する気化溶媒が特に多いことが分かった。そして、乾燥装置の上流に、所定の吸引装置及び給気装置を設けることにより、そのようなパーティクルの量を低減しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき完成されたものである。
すなわち、本発明によれば、下記〔1〕〜〔15〕が提供される。
〔1〕 長尺の基材と、前記基材の表面に形成された塗工層とを備えるフィルムを製造する、フィルム製造装置であって、
前記長尺の基材を搬送する搬送装置と、
搬送される前記基材の一方の表面に、水系の溶媒を含む水系材料を連続的に塗布する塗布装置と、
前記塗布装置より下流に配置され、前記基材の搬送経路の一部を囲繞する囲繞体を備え、前記基材上に塗布された前記水系材料中の前記溶媒を乾燥させて前記塗工層を形成する乾燥装置と、
前記塗布装置より下流側であって前記乾燥装置より上流側の位置に配置された開口を有し、前記乾燥装置から前記搬送経路の上流側へ漏出する漏出気体を前記開口から吸引する吸引装置と、
前記塗布装置より下流側であって前記吸引装置より上流側の位置に配置された開口を有し、搬送される前記基材の一方又は両方の表面に向けて前記開口から気体を供給する給気装置と、
を備えるフィルム製造装置。
〔2〕 〔1〕に記載のフィルム製造装置であって、
前記搬送装置、前記塗布装置、前記乾燥装置、前記吸引装置及び前記給気装置を囲繞するクリーンルームをさらに備える、フィルム製造装置。
〔3〕 〔1〕又は〔2〕に記載のフィルム製造装置であって、
前記囲繞体が、前記囲繞体内へ前記基材を搬入するための搬入口を有し、
前記吸引装置の前記開口が、前記搬入口から離隔して設けられる、フィルム製造装置。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のフィルム製造装置であって、
前記給気装置が、前記基材の表面に対して略垂直な方向に気体を供給する、フィルム製造装置。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のフィルム製造装置であって、
前記給気装置が、前記基材の、前記水系材料が塗布された面と反対側の表面に向けて気体を供給する、フィルム製造装置。
〔6〕 〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のフィルム製造装置であって、
前記基材が、前記乾燥装置に、略水平に搬入され、
前記給気装置の前記開口及び前記吸引装置の前記開口が、前記基材の搬送経路の下側に位置する、フィルム製造装置。
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のフィルム製造装置であって、
前記給気装置が、前記気体の供給により、前記漏出気体が前記給気装置より上流側へ流れることを抑制する、フィルム製造装置。
〔8〕 長尺の基材と、前記基材の表面に形成された塗工層とを備えるフィルムを製造する、フィルム製造方法であって、
搬送される前記基材の一方の表面に、水系の溶媒を含む水系材料を連続的に塗布する塗布工程と、
前記基材の搬送経路の一部を囲繞する囲繞体を備える乾燥装置により、前記基材上に塗布された前記水系材料中の前記溶媒を乾燥させて前記塗工層を形成する乾燥工程とを含み、
前記フィルム製造方法はさらに、
前記塗布工程の後であって前記乾燥工程の前に、前記乾燥装置から前記搬送経路の上流側へ漏出する漏出気体を吸引する吸引工程と、
前記塗布工程の後であって前記吸引工程の前に、搬送される前記基材の一方又は両方の表面に向けて気体を供給する給気工程と、
をさらに含む、フィルム製造方法。
〔9〕 〔8〕に記載のフィルム製造方法であって、
前記塗布工程、前記乾燥工程、前記吸引工程及び前記給気工程が、クリーンルーム内において行われる、フィルム製造方法。
〔10〕 〔8〕又は〔9〕に記載のフィルム製造方法であって、
前記乾燥工程において、前記囲繞体内の気圧Pinと、前記囲繞体外の気圧Poutとの差Pin−Poutが、0〜50Paに制御される、フィルム製造方法。
〔11〕 〔8〕〜〔10〕のいずれか1項に記載のフィルム製造方法であって、
前記囲繞体が、前記囲繞体内へ前記基材を搬入するための搬入口を有し、
前記吸引工程が、前記搬入口から離隔した位置で行われる、フィルム製造方法。
〔12〕 〔8〕〜〔11〕のいずれか1項に記載のフィルム製造方法であって、
前記給気工程において、前記気体を、前記基材の表面に対して略垂直な方向に供給する、フィルム製造方法。
〔13〕 〔8〕〜〔12〕のいずれか1項に記載のフィルム製造方法であって、
前記給気工程において、前記基材の、前記水系材料が塗布された面と反対側の表面に気体を供給する、フィルム製造方法。
〔14〕 〔8〕〜〔13〕のいずれか1項に記載のフィルム製造方法であって、
前記基材が、前記乾燥装置に、略水平に搬入され、
前記給気工程及び前記吸引工程が、前記基材の搬送経路の下側において行われる、フィルム製造方法。
〔15〕 〔8〕〜〔14〕のいずれか1項に記載のフィルム製造方法であって、
前記給気工程により、前記漏出気体が前記給気工程が行われる位置より上流側へ流れることを抑制する、フィルム製造方法。
本発明のフィルム製造装置及び本発明のフィルム製造方法によれば、フィルムの製造において発生するパーティクルの量を低減しうる。特に、乾燥装置内の温度の均一性が従来基準より高くなる条件で乾燥工程を行なっても、パーティクルの発生を抑制しうる。したがって、本発明のフィルム製造装置及び本発明のフィルム製造方法によれば、高品質なフィルムの均質な製造を達成することができ、且つ、フィルムの製造を容易とすることができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係るフィルム製造装置、及びそれを用いた本発明のフィルム製造方法を概略的に示す側面図である。 図2は、図1の例における吸引装置150、給気装置140及び乾燥装置160の囲繞体165の関係、並びに囲繞体165の開口163の形状を拡大して示す断面図である。 図3は、塗工層が含みうる微粒子を電子顕微鏡によって観察した場合に観察される像の例を概略的に示す模式図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
以下の説明において、(メタ)アクリルという表現は、アクリル、メタクリル又はこれらの組み合わせを意味する。例えば、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの組み合わせを意味する。また、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル又はこれらの組み合わせを意味する。
[1.第1実施形態:概要]
本発明の実施形態に係るフィルム製造装置及びそれを用いたフィルム製造方法について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るフィルム製造装置、及びそれを用いた本発明のフィルム製造方法を概略的に示す側面図である。
第1実施形態において、フィルム製造装置10は、ロール112、サクションロール131及びその他のロールを含む搬送装置を備え、これにより、長尺の基材101を矢印A11の方向に搬送する搬送経路が規定される。フィルム製造装置10は、基材101の搬送経路に沿って、経路上流から順に、コロナ処理装置111、塗布装置120、給気装置140、吸引装置150及び乾燥装置160を備える。
フィルム製造装置10は、好ましくは、搬送装置、コロナ処理装置111、塗布装置120、給気装置140、吸引装置150及び乾燥装置160を囲繞するクリーンルームをさらに備え、室内の空気中に浮遊するパーティクルの量が一定以下に保たれた状態でフィルムの製造が行われる。
フィルム処理装置10を用いたフィルム製造方法においては、サクションロール131及びその他の駆動ロールにより、基材101を矢印A11方向に移動させ、基材の搬送を行う。さらに、搬送される基材101に対して、コロナ処理装置111によるコロナ処理工程、塗布装置120による塗布工程、及び乾燥装置160による乾燥工程をこの順に行う。
[2.前処理手段]
本発明のフィルム製造装置では、塗布装置の上流に、任意の前処理手段を設けうる。例えば、基材と表面との親和性を高めるための表面改質処理を行う手段を設けうる。より具体的には例えば、図1に示す第1実施形態おいて例示する通り、コロナ処理装置を設けうる。
第1実施形態において、コロナ処理装置111は、塗布装置120より上流側の位置に配置され、ロール112に導かれて搬送される基材101の一方の表面101aに近接して設けられる。コロナ処理装置111を駆動し、搬送される基材101の表面101aにコロナ処理を行いうる。
ただし、表面改質処理及びそれを行う装置は、これには限定されず、例えば公知の任意の表面改質処理およびそれを行う装置を採用しうる。公知の表面改質処理の例としては、コロナ処理に加え、プラズマ処理、紫外線照射処理、ケン化処理等が挙げられる。処理効率の点等から、コロナ処理、プラズマ処理が好ましく、コロナ処理が特に好ましい。また、表面改質処理を施される面がアクリル系樹脂により形成されている場合には、表面改質処理としてケン化処理を施すことが好ましい。表面改質処理を行うことにより、基材の表面に、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、スルホン基等の官能基を導入することができる。かかる官能基を導入することにより、水系材料が基材の表面になじむようになるので、均一な塗布が可能になり、均一な厚さの塗工層を形成することが可能となる。
[3.塗布装置]
本発明のフィルム製造装置は、搬送される基材の一方の表面に水系材料を連続的に塗布する塗布装置を備える。塗布装置は、例えば、図1に示す第1実施形態において例示するとおり、コートロールを有する塗布装置としうる。
第1実施形態において、塗布装置120は、コートロール121及び容器122を備える。容器122中に水系材料を貯留させ、コートロール121を、基材101の一方の表面101aに接して回転させることにより、水系材料を表面101aに連続的に塗布し、水系材料の層102を形成することができる。
ただし、塗布装置及びそれを用いた塗布方法は、これには限定されず、例えば公知の任意の塗布装置及び塗布方法を採用しうる。公知の塗布方法の例としては、ロールコート法に加え、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法等が挙げられる。
[4.乾燥装置]
本発明のフィルム製造装置は、塗布装置よりも下流に配置される乾燥装置を備える。乾燥装置は、基材上に塗布された水系材料中の溶媒を乾燥させ、これにより、基材上に塗工層を形成しうる。乾燥装置は、基材の搬送経路の一部を囲繞する囲繞体を備える。
図1に示す第1実施形態において、乾燥装置160は、囲繞体165を有し、囲繞体165は、搬入口163及び搬出口164を有する。囲繞体165は、搬入口163から搬出口164までの基材の搬送経路を囲繞する構造を有する。乾燥装置160はさらに、囲繞体165の外部から内部に矢印A14の方向に空気を導入する導入管、及び囲繞体165の内部から外部に矢印A15の方向に空気を導出する導出管を備える(図1において不図示)。
導入管は、クリーンルームの外の気体を導入するものであってもよく、クリーンルーム内の気体を導入するものであってもよい。乾燥装置160はさらに、気体を導入管から囲繞体165内に導入する前に、必要に応じて気体に濾過、加温などの処理を行なう装置を備えうる。特に、クリーンルームの外の気体を導入する場合は、気体を濾過し異物を除去するフィルターを備えることが好ましい。また同様に、導出管は、クリーンルーム外へ気体を導出するものであってもよく、クリーンルーム内に気体を導出するものであってもよい。乾燥装置160はさらに、気体を導出管から囲繞体165外に導出する前に、必要に応じて気体に濾過などの処理を行う装置を備えうる。特に、クリーンルーム内へ気体を導出する場合は、気体を濾過し気化溶媒を除去するフィルターを備えることが好ましい。
乾燥装置160は、必要に応じて、さらに任意の構成要素を有しうる。かかる任意の構成要素の例としては、導出管及び導入管に気体を通すためのポンプ又はファン、囲繞体165内に設けられ囲繞体165内の空気を加温する加温装置、囲繞体165内の温度をモニターする温度計、及び囲繞体165内に設けられ空気を流動させるファン等が挙げられる。
乾燥装置160の操作においては、囲繞体165内に温度を調節した空気を導入するなどの方法により、囲繞体165内の温度を、乾燥に適した高い温度としうる。さらに、導入管から導入する空気の量及び導出管から導出する空気の量を調節することにより、囲繞体165内の気圧を、囲繞体外の気圧と同じ気圧か又は囲繞体外の気圧に対して陽圧に制御しうる。かかる気圧の制御を行うことにより、意図しない空気の流入(導入管から導入される空気以外の空気の流入)を低減し、囲繞体165内の温度を精密に制御しうる。この場合、前記囲繞体内の気圧Pinと、前記囲繞体外の気圧Poutとの差Pin−Poutは、好ましくは0〜50Pa、より好ましくは0〜20Pa、さらにより好ましくは0〜10Paとしうる。
乾燥装置160の操作においては、このように、囲繞体165内の温度を制御した状態で、表面101aに水系材料の層102を有する基材101を囲繞体165の搬入口163から搬入し、搬出口164から搬出する。このような操作により、水系材料の層102中の溶媒を乾燥させて塗工層103を形成する乾燥工程が達成され、基材層101及び塗工層103を備えるフィルム100が製造される。フィルム100は、乾燥装置160の搬出口163から搬出された後、必要に応じてさらに任意の処理を経て、製品としうる。
[5.吸引装置及び給気装置]
本発明のフィルム製造装置は、塗布装置より下流側であって乾燥装置より上流側の位置に配置された開口を有する吸引装置と、塗布装置より下流側であって吸引装置より上流側の位置に配置された開口を有する給気装置とを備える。吸引装置は、乾燥装置から搬送経路の上流側へ漏出する漏出気体を開口から吸引する装置であり、給気装置は、搬送される基材の一方又は両方の表面に向けて開口から気体を供給する装置である。吸引装置及び給気装置の開口は、好ましくは、乾燥装置の搬入口の近傍であって、且つ基材の搬送経路の近傍に、搬入口から離隔して設けられる。
図1に示す第1実施形態においては、吸引装置150は、乾燥装置の囲繞体165の搬入口163の近傍に設けられ、給気装置140は、吸引装置150に隣接して設けられる。
図2は、図1の例における吸引装置150、給気装置140及び乾燥装置160の囲繞体165の関係、並びに囲繞体165の開口163の形状を拡大して示す断面図である。図2は、吸引装置150、給気装置140及び囲繞体165を、基材101搬送方向に平行で且つ搬送される基材101の面に垂直な面で切断した断面で図示している。図2に示す通り、乾燥装置160の囲繞体165は、その搬入口163の周辺に、導出管161を有する。乾燥装置160はまた、搬入口163より内部の搬送経路に沿った位置に、導入管162を有する。
導入管162の開口から、矢印A22の方向に気体を導入し、導出管161の開口から、矢印A21の方向に気体を吸引することにより、搬入口163から漏出する気化溶媒の量を低減することができる。しかしながら、導出管161及び導入管162から導出及び導入される気体の量を多くすると、囲繞体165内の温度の不均一が生じ、均質な乾燥が妨げられる。さらに、前述の通り、囲繞体165内の温度を均一にするためには、囲繞体165内の気圧を陽圧に制御することが好ましい。そのため、囲繞体165内の温度制御の均質さを高めようとすると、搬入口163から矢印A23の方向に漏出する気体の量が多くなり、したがって、均質な乾燥と、気化溶媒の漏出の低減とを両立することが難しくなる。この問題を解決すべく、本発明では、搬入口163の上流に吸引装置150及び給気装置140を設け、吸引及び給気を行う。これにより、搬入口163からの漏出気体を吸引し、且つ漏出気体が給気装置より上流側へ流れることを抑制することができる。これにより、均質な乾燥と、気化溶媒の漏出の低減とを両立することができる。
乾燥装置の搬入口から吸引装置の開口までの距離(図2において矢印A25で示される距離)は、200mm以上であることが好ましく、250mm以上であることがより好ましく、且つ、400mm以下であることが好ましく、300mm以下であることがより好ましい。乾燥装置の搬入口から吸引装置の開口までの距離が前記下限以上であることにより、吸引装置の吸引により発生する気流が乾燥装置の囲繞体内の温度に不所望な変動をもたらすことを低減することができる。乾燥装置の搬入口から吸引装置の開口までの距離が前記上限以下であることにより、効率的なパーティクルの低減を達成することができる。
吸引装置の開口から給気装置の開口までの距離(図2において矢印A26で示される距離)は、気化溶媒の上流への流出を良好に抑制するため、100mm以下であることが好ましい。
吸引装置150は、基材101の搬送経路に向けて開いた開口151を有する。吸引装置150は、さらに、ポンプなどの任意の機構を備えることにより、開口151から、矢印A13の方向に気体を吸引し、吸引した気体を吸引装置外に導出しうるよう構成される。吸引装置150は、吸引した気体をクリーンルーム外へ導出するものであってもよく、吸引した気体をクリーンルーム内に導出するものであってもよい。吸引装置150はさらに、吸引した気体を吸引装置外に導出する前に、必要に応じて気体に濾過などの処理を行う装置を備えうる。特に、クリーンルーム内へ気体を導出する場合は、気体を濾過し気化溶媒を除去するフィルターを備えることが好ましい。
給気装置140は、基材101の搬送経路に向けて開いた開口141を有する。給気装置140は、さらに、ポンプなどの任意の機構を備えることにより、給気装置外から気体を導入し、開口141から矢印A12の方向に噴出するよう構成され、これにより、基材の表面に向けて気体を供給しうる。給気装置140は、クリーンルームの外からの気体を導入するものであってもよく、クリーンルーム内の気体を導入するものであってもよい。給気装置140はさらに、気体を開口141から供給する前に、必要に応じて気体に濾過、加温などの処理を行なう装置を備えうる。特に、クリーンルームの外からの気体を導入する場合は、気体を濾過し異物を除去するフィルターを備えることが好ましい。給気装置が基材の表面に向けて供給する気体の温度は、特に限定されないが、製造を実施する環境の温度と同程度の温度とすることが好ましい。具体的には、例えばクリールーム内の空気を供給する場合では、供給する気体の温度は、クリールーム内の空気の温度から、±5℃以内の温度としうる。クリーンルーム内の気体を導入してそれを特に加熱などすることなく開口から供給することにより、かかる温度の気体の供給を達成しうる。
吸引装置150を作動させ、開口151から矢印A13の方向に気体を吸引することにより、乾燥装置160の搬入口163から矢印A23の方向に漏出した気化溶媒を含む気体を吸引し、系内の気化溶媒の濃度を低減し、パーティクルの発生を抑制することができる。さらに、給気装置140を併せて作動させ、開口141から矢印A12の方向に気体を供給することにより、漏出した気体がより上流へ移動することを防ぎ、これにより、吸引装置150が、より多くの割合の気化溶媒を吸引することができ、ひいてはパーティクルの発生をさらに抑制することができる。
吸引装置150から吸引する気体の体積Vsと、給気装置140から供給する気体の体積Vbと、乾燥装置の搬入口163から漏出する気体の体積Vlとの割合を好ましい範囲内に調整することにより、パーティクルの発生をより良好に抑制しうる。具体的には、給気装置140から供給する気体の体積Vbと吸引装置150から吸引する気体の体積Vsとの比Vb/Vsは0.1〜0.5であることが好ましい。また、給気装置140から供給する気体の体積Vbと乾燥装置の搬入口163から漏出する気体の体積Vlとの比Vb/Vlは1〜3であることが好ましい。さらに、Vb及びVlの合計と、Vsとの比(Vb+Vl)/Vsは0.1〜3であることが好ましい。
給気装置140から気体を供給する方向は、搬送される基材の表面に対して略垂直な方向としうる。ここで、略垂直とは、垂直方向からの傾きが10°以内の方向としうる。このような方向に気体を供給することにより、乾燥装置の搬入口163から漏出した気体がより上流へ移動することを、より効果的に防ぐことができる。気体の供給方向を調整する手段の例としては、給気装置の開口に設けられたルーバーが挙げられる。
本発明のフィルム製造装置において、給気装置は、基材の、水系材料が塗布された側の表面に向けて気体を供給するものであってもよく、基材の、水系材料が塗布された面と反対側の表面に向けて気体を供給するものであってもよい。給気装置は、基材の、水系材料が塗布された面と反対側の表面に向けて気体を供給するものであることが、水系材料の層の均質性を維持する観点から好ましい。
好ましい態様において、本発明のフィルム製造装置は、基材が、乾燥装置に略水平に搬入され、給気装置の開口及び吸引装置の開口が、基材の搬送経路の下側に位置する。ここで、略水平な方向とは、水平方向からの傾きが10°以内の方向としうる。具体的には、図1及び図2に示す第1実施形態において例示する通り、基材101は、水系材料の層102を有する面101aを上側にして略水平な方向に搬送されて乾燥装置160に搬入され、一方給気装置140及び吸引装置150は基材101の下側に位置する。このような配置において、給気装置140は基材の搬送経路の下側に位置する開口141から、基材の下側の面に向けて、上向きに気体を供給する。また、吸引装置150は基材の搬送経路の下側に位置する開口151から、気体を吸引する。
このように水平に略基材を搬送した場合、図2の矢印A23で示す通り、基材の搬送経路の上側及び下側の両方に乾燥装置からの気体が漏出するが、本発明者が見出したところによれば、クリーンルームにおいては、基材の搬送経路の上側よりも、下側のほうが、気化溶媒の結露が発生しやすい。その理由は定かではないが、搬送経路の下側のほうが、様々な装置が設置されているため換気が不十分となり易いためであるものと思われる。したがって、基材の搬送経路及び各装置がこのような位置関係を有することにより、パーティクルの発生を、特に良好に抑制しうる。
[6.フィルム製造方法:基材]
本発明のフィルム製造方法では、長尺の基材と、前記基材の表面に形成された塗工層とを備えるフィルムを製造する。以下の基材、水系材料及び塗工層の説明において、便宜上、基材及び塗工層を備える製品たるフィルムを「フィルム複合体」と呼び、基材の具体例としてのフィルムと区別することがある。
基材としては、通常、樹脂のフィルムを用いる。基材を形成する樹脂のうち、好ましい例としては、脂環式構造含有重合体を含む樹脂(以下、適宜「脂環式構造含有重合体樹脂」という。)、(メタ)アクリル系重合体を含む樹脂(以下、適宜「(メタ)アクリル系樹脂」という。)などが挙げられる。中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性および軽量性などに優れ、光学フィルムに適していることから、脂環式構造含有重合体樹脂が特に好ましい。また、一般に脂環式構造含有重合体樹脂は(メタ)アクリル系樹脂よりも巻回時にシワが発生し易い傾向及び偏光板との接着性が低い傾向があるが、塗工層を形成することにより、シワの抑制及び接着性の改善が可能である。したがって、脂環式構造含有重合体樹脂を用いた基材は、(メタ)アクリル系樹脂を用いた基材に比べて本発明の効果を相対的に大きく発揮できる。さらに、脂環式構造含有重合体樹脂は(メタ)アクリル系樹脂に比べて濡れ性が高いので、水系材料を均一に塗布することが容易である。
また、基材は、一層のみを備える単層構造のフィルムであってもよく、二層以上の層を備える複層構造のフィルムであってもよい。基材が二層以上の層を備える場合、脂環式構造含有重合体樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂で形成された層が、基材の最表面を形成することが好ましい。そのような基材と、特定の塗工層とを組み合わせて採用することにより、巻回した場合に安定してシワの発生を防止しうるフィルム複合体を得ることが可能となる。
以下、脂環式構造含有重合体樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂で形成され、基材の最表面を形成する層をフィルム層(A)という場合がある。基材が単層構造のフィルムである場合、フィルム層(A)自体が基材となる。また、基材が複層構造のフィルムである場合、基材の最表面に設けられる脂環式構造含有重合体樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂を含む層をフィルム層(A)といい、基材に含まれるフィルム層(A)以外の層をフィルム層(B)という。また、基材として、複数の層を備える複層構造のフィルムを用いる場合、フィルム層(B)の一方の主面にフィルム層(A)が備えられるように形成されていても、フィルム層(B)の両面にフィルム層(A)を備えていてもよい。基材を複層構造のフィルムとすることにより、様々な特性を有する光学フィルムとして用いうるフィルム複合体を製造することができる。
フィルム層(B)は、単層で構成されていてもよく、二層以上の層を備える複層として構成されていてもよい。フィルム層(B)が二層以上の層を備える場合、各層は、製品たるフィルムに要求される性能に応じて、各種機能を有する層が適宜選択される。例えば、フィルム層(B)を構成する層としては、フィルム層(A)と異なる光学特性の付与、耐熱、耐光、傷付防止、反射防止、帯電防止、防眩、防汚などの機能を有する層などが挙げられる。フィルム層(B)の材料としては、例えば、フィルム層(A)と樹脂特性が異なる脂環式構造含有重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等の鎖状オレフィン系重合体;ポリスチレンなどの芳香族ビニル重合体;トリアセチルセルロース;ポリビニルアルコール;ポリイミド;ポリアリレート;ポリエステル;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;アモルファスポリオレフィン;アクリル系重合体;エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、フィルム層(B)の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[6.1.脂環式構造含有重合体樹脂を含む基材]
脂環式構造含有重合体は、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれを用いてもよい。中でも、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、基材の透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造含有重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。なお、「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体のことをいう。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。なお、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。なお、ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンなどが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。なお、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。
ノルボルネン系重合体の中でも、以下の3要件を全て満たすものが好ましい。すなわち、第一に、繰り返し単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有する。第二に、これらの繰り返し単位の含有量が、ノルボルネン系重合体の繰り返し単位全体に対して90重量%以上である。第三に、Xの含有割合とYの含有割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60である。このようなノルボルネン系重合体を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れるフィルム複合体を得ることができる。
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素化物を挙げることができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素化してなる水素化物;ビニル脂環式炭化水素系モノマー、またはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素化物;等を挙げることができる。なお、前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
脂環式構造含有重合体の分子量は、重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。ここで、前記の重量平均分子量(Mw)は、溶媒としてシクロヘキサン(試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエン)を用いるゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルム複合体の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ好適である。
脂環式構造含有重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、通常1.2以上、好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.8以上であり、通常3.5以下、好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.7以下である。脂環式構造含有重合体の分子量分布が3.5を超えると、低分子成分が増すため緩和時間の短い成分が増加し、一見同じ面内レターデーションReを有する基材であっても高温暴露時の緩和が短時間で大きくなってしまうことが推定され、基材の安定性が低下するおそれがある。一方、脂環式構造含有重合体の分子量分布が1.2を下回るような分子量分布のものは、重合体の生産性の低下とコスト増につながり、ディスプレイ部材等の用途にフィルム複合体を用いる上で現実的でない。
脂環式構造含有重合体は、光弾性係数Cの絶対値が10×10−12Pa−1以下であることが好ましく、7×10−12Pa−1以下であることがより好ましく、4×10−12Pa−1以下であることが特に好ましい。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、「C=Δn/σ」で表される値である。脂環式構造含有重合体の光弾性係数Cが10×10−12Pa−1を超えると、基材の面内レターデーショReのバラツキが大きくなるおそれがある。
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下の範囲である。ガラス転移温度が110℃を下回ると高温下における耐久性が悪化する可能性があり、150℃を上回るものは耐久性は向上するが加工が困難となる可能性がある。
脂環式構造含有重合体の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が上記範囲であると、基材の面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthの経時変化を小さくすることができる。また、フィルム複合体を液晶表示装置用の光学部材に適用した場合、当該光学部材の湿気による劣化を抑制でき、長期的に表示装置の表示を安定して良好に保つことができる。
飽和吸水率は、試験片を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した質量を、浸漬前の試験片の質量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。脂環式構造含有重合体における飽和吸水率は、例えば、脂環式構造含有重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。飽和吸水率をより低くする観点から、脂環式構造含有重合体は、極性基を有さないことが好ましい。
脂環式構造含有重合体樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、脂環式構造含有重合体以外にもその他の任意成分を含んでいてもよい。任意成分の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;耐電防止剤;酸化防止剤;滑剤;などの添加剤が挙げられる。なお、任意成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ただし、脂環式構造含有重合体樹脂は、実質的に粒子を含まないことが好ましい。ここで、実質的に粒子を含まないとは、脂環式構造含有重合体樹脂に粒子を含ませても、基材の未添加状態からのヘイズの上昇幅が0.05%以下の範囲である量までは許容できることを意味する。特に、脂環式構造含有重合体は、多くの有機粒子及び無機粒子との親和性に欠けるため、上記範囲を超えた量の粒子を含む脂環式構造含有重合体樹脂を加工すると、空隙が発生しやすく、その結果として、基材のヘイズの著しい悪化が生じるおそれがある。
脂環式構造含有重合体樹脂で形成されたフィルム層は、その製法によって特に制限されない。脂環式構造含有重合体樹脂で形成されたフィルム層は、脂環式構造含有重合体樹脂を公知のフィルム成形法で成形することによって得られる。フィルム成形法としては、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶媒を使用しない溶融押出法の方が、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法などが挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
基材が脂環式構造含有重合体樹脂で形成されたフィルム層(A)と、フィルム層(B)とを備える場合には、基材は、例えば、製造されたフィルム層(A)と製造されたフィルム層(B)とを接着剤を用いて貼り合わせて製造してもよいし、接着剤を用いずに共押出法などにより製造してもよい。
接着剤を用いて貼り合わせる場合には、接着剤は、フィルム層(A)及びフィルム層(B)を形成する樹脂の種類により適宜選択すればよく、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、変性ポリオレフィン系接着剤、ポリビニルアルキルエーテル系接着剤、ゴム系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、塩化ビニル−酢酸ビニル系接着剤、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)系接着剤、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)系接着剤、エチレン−スチレン共重合体などのエチレン系接着剤、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル系接着剤などが挙げられる。なお、接着剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
接着層の平均厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
接着剤を使用せずにフィルム層(A)及びフィルム層(B)を備える基材を製造する場合、好ましくは、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形法;ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形法などを用いればよい。また、例えば、フィルム層(B)の表面に、フィルム層(A)を構成する樹脂の溶液をコーティングするコーティング成形法を用いてもよい。これらの中でも、製造効率や、基材中に溶媒などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出成形法が好ましい。共押出成形法の中でも、共押出Tダイ法が好ましい。さらに共押出Tダイ法にはフィードブロック方式、マルチマニホールド方式が挙げられるが、各フィルム層(A)及び(B)の厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式がさらに好ましい。
[6.2.基材の延伸]
基材は、延伸されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸された延伸フィルムであってもよい。
基材としての延伸フィルムを得るための延伸方法は特に制限されず、例えば、一軸延伸法、二軸延伸法のいずれを採用してもよい。延伸方法の例を挙げると、一軸延伸法の例としては、フィルム搬送用のロールの周速の差を利用して縦方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて横方向(幅方向、TD方向ともいう)に一軸延伸する方法等が挙げられる。また、二軸延伸法の例としては、固定するクリップの間隔を開いての縦方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により横方向に延伸する同時二軸延伸法;フィルム搬送用のロール間の周速の差を利用して縦方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法等が挙げられる。さらに、例えば、横又は縦方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いて、フィルムの幅方向に対して任意の角度θをなす方向に連続的に斜め延伸する斜め延伸法を用いてもよい。
延伸に用いる装置として、例えば、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。
延伸時の温度は、未延伸のフィルムを形成する材料のガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくは(Tg−30℃)と(Tg+60℃)の間、より好ましくは(Tg−10℃)と(Tg+50℃)の間の温度から選択される。
延伸倍率は、基材の所望の光学特性に応じて適宜選択すればよく、通常1.05倍以上、好ましくは1.1倍以上であり、通常10.0倍以下、好ましくは2.0倍以下である。
[6.3.基材の物性等]
基材は、1mm厚換算での全光線透過率が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、全光線透過率は、JIS K7361−1997に準拠して測定すればよい。
基材は、1mm厚換算でのヘイズが、0.3%以下であることが好ましく、0.2%以下であることが特に好ましい。ここで、ヘイズは、JIS K7136−1997に準拠して測定すればよい。
基材の面内レターデーションRe及び厚さ方向レターデーションRthの値はフィルム複合体の用途に応じて異なるが、基材として延伸フィルムを用いる場合、面内レターデーションReは通常10nm以上500nm以下、厚さ方向レターデーションRthは−500nm以上500nm以下である。なお、面内レターデーションReは、(nx−ny)×Dで定義される値であり、厚さ方向レターデーションRthは、((nx+ny)/2−nz)×Dで定義される値である。ここで、nxは基材の遅相軸方向の屈折率を表し、nyは遅相軸に面内で直交する方向の屈折率を表し、nzは厚み方向の屈折率を表し、Dは基材の平均厚みを表す。
基材は、面内レターデーションReのバラツキが通常10nm以内、好ましくは5nm以内、さらに好ましくは2nm以内である。面内レターデーションReのバラツキを上記範囲にすることにより、フィルム複合体を液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に、液晶表示装置の表示品質を良好なものにすることが可能になる。ここで、面内レターデーションReのバラツキは、光入射角0°(入射光線の入射方向と基材の表面とが直交する状態)の時の面内レターデーションReを、フィルムの幅方向に測定したときの、測定された面内レターデーションReの最大値と最小値との差である。
基材の残留揮発性成分の含有量は特に制約されないが、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。残留揮発性成分の含有量が0.1重量%を超えると、経時的に基材の光学特性が変化するおそれがある。揮発性成分の含有量を上記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、基材の面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthの経時変化を小さくすることができる。さらに、フィルム複合体を備える偏光板及び液晶表示装置等の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定して良好に保つことができる。
前記の揮発性成分とは、基材に微量含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体や溶媒などが挙げられる。揮発性成分の含有量は、分子量200以下の物質の合計として、基材をガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量できる。
基材の厚みは特に制限はないが、材料コストの観点、並びに薄型及び軽量化の観点から、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上であり、通常1000μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは150μm以下である。
また、基材がフィルム層(A)とフィルム層(B)とを備える場合、フィルム層(A)の平均厚さは、通常5μm以上、好ましくは20μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは300μm以下である。また、フィルム層(A)の厚みの変動は、基材の長尺方向及び幅方向の両方において、前記平均厚さの±3%以内であることが好ましい。厚み変動を上記範囲にすることにより、フィルム層(A)、フィルム層(B)及び基材の面内レターデーションRe等の光学特性のバラツキを小さくすることができる。
本願において用いる基材は、長尺のフィルムである。ここで、長尺とは、フィルムの幅に対して、5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
[7.塗工層及び水系材料]
本発明のフィルム製造方法では、塗工層の材料として、水系の溶媒を含む水系材料を用いる。水系材料としては、水系の溶媒に加えて、水系材料を乾燥させることにより所望の塗工層となる材料(以下の説明において、単に「固形分」ということがある。)を含むものを適宜選択しうる。塗工層の好ましい例としては、以下に述べるウレタン樹脂層を挙げることができ、かかる塗工層を形成する水系材料としては、水系の溶媒と、固形分として以下に述べるウレタン樹脂とを含むものを挙げることができる。
[7.1.ウレタン樹脂]
ウレタン樹脂が接着剤との親和性に優れるので、ウレタン樹脂層は、フィルム複合体を偏光子等の部材と貼り合わせる際に、接着剤による基材と偏光子等との接着を補強してより強固に接着させる易接着層(プライマー層ともいう)として機能する。
また、ウレタン樹脂は基材に対しても高い密着性を有するので、フィルム複合体においては、基材とウレタン樹脂層とは強固に密着しており、剥がれ難くなっている。
好ましい例において、ウレタン樹脂層を形成するウレタン樹脂は、ポリウレタンと、微粒子(P1)と、必要に応じてその他の任意成分とを含む。また、ウレタン樹脂は、水系ウレタン樹脂であることが好ましい。水系ウレタン樹脂に含まれるポリウレタンとしては、例えば、(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とを反応させて得られるポリウレタン;または、上記(i)成分及び(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で、反応に不活性で水との親和性の大きい有機溶媒中でウレタン化反応させてイソシアネート基含有プレポリマーとし、次いで、該プレポリマーを中和し、鎖延長剤を用いて鎖延長し、水を加えて分散体とすることによって製造されるポリウレタン;などが挙げられる。これらのポリウレタン中には、酸成分(酸残基)を含有させてもよい。
なお、イソシアネート基含有プレポリマーの鎖伸長方法は公知の方法により行いうる。例えば、鎖伸長剤として、水、水溶性ポリアミン、グリコール類などを使用し、イソシアネート基含有プレポリマーと鎖伸長剤とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させて、鎖伸長を行いうる。
前記(i)成分(すなわち、1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分)としては、特に限定されるものではないが、水酸基性の活性水素を有するものが好ましい。このような化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
(1)ポリオール化合物
ポリオール化合物として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
(2)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとして、例えば、前記のポリオール化合物のアルキレンオキシド付加物;アルキレンオキシドと環状エーテル(例えばテトラヒドロフランなど)との開環(共)重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体;グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。
(3)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとして、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸又はその無水物と、上記(1)で挙げられたようなエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコールなどのポリオール化合物とを、水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものなどが挙げられる。より具体的には、例えば、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、グリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオール、などが挙げられる。
(4)ポリエーテルエステルポリオール
ポリエーテルエステルポリオールとして、例えば、エーテル基含有ポリオール(例えば、前記(2)のポリエーテルポリオールやジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を、上記(3)で例示したようなジカルボン酸又はその無水物と混合してアルキレンオキシドを反応させてなるものなどが挙げられる。より具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物などが挙げられる。
(5)ポリカーボネートポリオール
ポリカーカーボネートポリオールとしては、例えば、一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)x−OH(ただし、式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ポリオール残基を示す。また、xは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物などが挙げられる。これらは、飽和脂肪族ポリオールと置換カーボネート(例えば、炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを、水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法;前記飽和脂肪族ポリオールとホスゲンとを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ポリオールを反応させる方法;などにより得ることができる。
上記の(1)から(5)に例示したような化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、(3)ポリエステルポリオールを用いることが特に好ましい。
前記(i)成分と反応させる(ii)成分(即ち、多価イソシアネート成分)としては、例えば、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環族または芳香族の化合物が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数4〜18の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、水系ウレタン樹脂のうちでポリウレタンが酸構造を含有するもの(以下、適宜「酸構造含有水系ウレタン樹脂」という。)は、界面活性剤を使用せずに、若しくは界面活性剤の量が少なくても、水中に分散させることが可能となるので、ウレタン樹脂層の耐水性が良くなることが期待される。また、酸構造含有水系ウレタン樹脂は、界面活性剤が不要又は少量で済むので、脂環式構造含有重合体樹脂との接着性に優れ、かつ高い透明性を維持できるため、好ましい。
酸構造としては、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)等の酸基などを挙げることができる。また、酸構造は、ポリウレタンにおいて側鎖に存在していてもよく、末端に存在していてもよい。
酸構造の含有量としては、水系ウレタン樹脂中の酸価として、好ましくは20mgKOH/g以上、より好ましくは25mgKOH/g以上であり、好ましくは250mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下である。酸価が20mgKOH/g未満では水分散性が不十分となりやすく、酸価が250より大きいとウレタン樹脂層の耐水性が劣る傾向がある。
ポリウレタンに酸構造を導入する方法は、従来から用いられている方法が特に制限なく使用できる。好ましい例を挙げると、ジメチロールアルカン酸を、前記(2)から(4)に記載したグリコール成分の一部もしくは全部と置き換えることによって、予めポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等にカルボキシル基を導入する方法が挙げられる。ここで用いられるジメチロールアルカン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。なお、ジメチロールアルカン酸は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、ポリウレタンが含む酸構造の少なくとも一部は、中和することが好ましい。酸構造を中和することにより得られる水系ウレタン樹脂(以下、適宜「中和処理後水系ウレタン樹脂」という。)により形成されたウレタン樹脂層を備えることにより、フィルム複合体は、高温下に曝された熱履歴を有しても、光学材料としての特性を維持したり、他の光学フィルム(特に偏光子)に積層して使用されるときにフィルム複合体と他の光学フィルムとの密着性を良好に保ったりすることが可能である。また、酸構造を中和しても、界面活性剤を使用せずに、若しくは界面活性剤の量が少なくても、水系ウレタン樹脂を水中に分散させることは可能である。
ポリウレタンが含む酸構造のうち、中和される酸構造の割合は、20%以上が好ましく、50%以上が特に好ましい。酸構造のうちの20%以上が中和されることにより、フィルム複合体が高温下に曝された熱履歴を有しても、光学材料としての特性を維持しつつ、他の光学フィルムに積層して使用されるときに光学フィルムとの密着性をより一層維持することができる。
なお、中和処理後水系ウレタン樹脂は、酸構造含有水系ウレタン樹脂が含む酸構造のうちの全部が中和されていてもよい。
酸構造を中和する中和剤としては、通常、不揮発性塩基を用いる。不揮発性塩基としては、例えば、水系ウレタン樹脂の水分散体を基材の表面に塗布した後に乾燥させる際の処理条件下(例えば80℃で1時間放置した場合)において、実質的に不揮発性である塩基が挙げられる。ここで実質的に不揮発性であるとは、通常、不揮発性塩基の減少分が80%以下であることをいう。
不揮発性塩基としては、無機塩基を用いてもよいが、有機塩基が好ましい。中でも、沸点100℃以上の有機塩基が好ましく、沸点100℃以上のアミン化合物(アミノ化合物)がより好ましく、沸点200℃以上のアミン化合物が特に好ましい。また、有機塩基は低分子化合物でもよく、重合体でもよい。
不揮発性塩基の例を挙げると、無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。また、有機塩基としては、例えば、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリ[(2−ヒドロキシ)−1−プロピル]アミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパン水酸化カリウム、亜鉛アンモニウム錯体、銅アンモニウム錯体、銀アンモニウム錯体、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、3−ウレイドプロピルトリメトシキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシカルボン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタール酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、キノリン、ピコリン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、シクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イロプロパノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N−N−ジエタノールアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルエタノールアミン、アミノヘキシルエタノールアミン、アミノエチルプロパノールアミン、アミノプロピルプロパノールアミン、アミノヘキシルプロパノールアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−エチルイミダゾール、2−アミノイミダゾールサルフェート、2−(2−アミノエチル)−ベンゾイミダゾール、ピラゾール、5−アミノピラゾール、1−メチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−5−アミノピラゾール、1,3−ジメチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−アシノ−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、3−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、アミノ樹脂(例えば、1,3−ジメチル−4−クロロ−メラミン樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂等)などが挙げられる。なお、中和剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、中和処理後水系ウレタン樹脂は、市販されている水系ウレタン樹脂に上述した不揮発性塩基を配合し、水系ウレタン樹脂の酸構造の中和に使用されている塩基を交換することにより、製造してもよい。塩基交換の確認は、交換処理を施した樹脂を単離した後、例えばH−NMR、13C−NMR等の分析法を用いることにより、容易に確認することができる。前記の市販されている水系ウレタン樹脂としては、例えば、旭電化工業社製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井東圧化学社製の「オレスター」シリーズ、大日本インキ化学工業社製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン」シリーズ、バイエル社製の「インプラニール」シリーズ、日本ソフラン社製の「ソフラネート」シリーズ、花王社製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業社製の「サンプレン」シリーズ、保土谷化学工業社製の「アイゼラックス」シリーズ、第一工業製薬社製の「スーパーフレックス」シリーズ、ゼネカ社製の「ネオレッツ」シリーズ等が挙げられる。
ウレタン樹脂に含まれるポリウレタンの数平均分子量は、1,000以上が好ましく、より好ましくは20,000以上であり、1,000,000以下が好ましく、より好ましくは200,000以下である。
[7.2.微粒子(P1)及び微粒子(P2)]
好ましい例において、ウレタン樹脂層は、以下の要件I及び要件IIを満たす微粒子である、微粒子(P1)を含む。
要件I:動的光散乱法により測定される微粒子(P1)の平均粒子径(D1)が、通常40nm以上、好ましくは50nm以上であり、通常300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。
要件II:動的光散乱法により測定される微粒子(P1)の平均粒子径(D1)と、窒素ガス吸着法により測定される微粒子(P1)の平均粒子径(D2)との比D1/D2が、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。
前記の動的光散乱法による平均粒子径(D1)は、例えば、市販の米国Maicrotrac社製のNanotrac UPA−EX150と呼ばれる装置により測定できる。
前記の窒素ガス吸着法による平均粒子径(D2)は、吸着ガスとして窒素ガスを用いてBET法によって測定できる。具体的には、BET法によって測定された比表面積S(m/g)と微粒子の密度ρ(g/cm)から、D2=(6000/ρS)の式によって平均粒子径D2(nm)を求めることができる。測定される平均粒子径D2は、測定された比表面積Sと同じ比表面積を有する仮想の球状微粒子の直径を意味し、通常は、微粒子が有する細長い形状の伸長度を意味する。
一般に、測定対象である微粒子が凝集している場合には、動的光散乱法では、当該微粒子が凝集した塊(二次粒子)の大きさが測定される傾向がある。他方、窒素ガス吸着法では、測定対象である微粒子が凝集している場合でも、凝集していない状態の微粒子(一次粒子)の大きさが測定される傾向がある。したがって、前記の要件IIのようにD1/D2の値が大きいことから、ウレタン樹脂層に含まれる微粒子(P1)は二個以上が凝集した状態で存在することが分かる。また、前記の要件Iから、微粒子(P1)が凝集した二次粒子の大きさが要件Iで規定される範囲になっていることが分かる。
ウレタン樹脂層が前記のように凝集した微粒子(P1)を含むことにより、フィルム複合体を巻回する際のシワの発生を抑制できる。シワの発生を抑制できる理由は定かではないが、本発明者の検討によれば、ウレタン樹脂層が凝集した微粒子(P1)を含むことによってウレタン樹脂層の表面に凹凸が形成され、それによって巻回の際にウレタン樹脂層が他の層と接触する面積が小さくなり、その分だけウレタン樹脂層の表面の滑り性が向上したためと推察される。
また、ウレタン樹脂層が前記の微粒子(P1)を含むことにより、フィルム複合体の外観において白濁の発現を防止できる。白濁の発現を防止できる理由は定かではないが、本発明者の検討によれば、前記の微粒子(P1)が凝集していることにより、少ない量の微粒子でもウレタン樹脂層の表面の滑り性を効果的に改善できるので、微粒子の量を従来よりも少なくすることができ、このため、微粒子の偏在による白濁の発現を防止できるものと推察される。
易接着層に微粒子を含ませる技術は従来から存在していたが、従来の技術では、易接着層に含ませる微粒子は均一に分散させることが求められており、凝集した微粒子を使用することは性能を損なうものと考えられていた。したがって、フィルム複合体のように凝集した微粒子を積極的に使用することによりシワの抑制及び白濁の防止を可能にすることは、従来の技術常識からは予測できない顕著な意義を有するものである。
図3は、微粒子(P1)を電子顕微鏡によって観察した場合に観察される像の例を概略的に示す模式図である。なお、図3においては黒い部分が微粒子(P1)の像を表す。図3に示すように、微粒子(P1)を電子顕微鏡によって観察した場合、通常は、複数個の微粒子(P1)が数珠状に連なるように凝集した様子が観察される。観察される微粒子(P1)の具体的な形状は限定されないが、通常は細長い形状を有する。ここで細長い形状とは、長さが太さの2倍以上である形状をいうが、大部分の微粒子(P1)は、太さの数倍〜数十倍の長さを有する。
二次粒子の形状の多くは、ほぼ真直なもの、屈曲しているもの、分枝を有するもの、環を有するものの4種類に大別される。それらの分率を正確な数字で表わすことは困難であるが、屈曲しているものと分枝を有するものの分率が高い傾向がある。
1個の微粒子(P1)に着目すると、通常、微粒子(P1)の一端から他端まで太さは一様である。ここで一様であるとは、電子顕微鏡により観察した場合に測定される微粒子(P1)の太さの変動が、最も細い部分に対し最も太い部分の太さが通常2.0倍以内、好ましくは1.8倍以内に収まることを言う。微粒子(P1)の太さは微粒子(P1)の製造条件により変わる傾向があり、一定の方法で製造された微粒子(P1)の太さは一様になる傾向がある。電子顕微鏡によって観察した場合、微粒子(P1)の太さは、通常5nm以上、好ましくは7nm以上であり、通常20nm以下、好ましくは18nm以下である。なお、例え一定の方法で製造されたとしても、微粒子(P1)の長さは一定にならないことが多い。
微粒子(P1)が細長い形状を有する場合、微粒子(P1)を電子顕微鏡で観察すると、通常は、微粒子(P1)の形状は、同一平面内のみに伸長を有する形状となっている。例えば、微粒子(P1)の形状が屈曲していても、分枝状であっても、同一平面内の伸長を有する。したがって、全ての微粒子(P1)は、通常は、例え形状が異なっていても、微粒子(P1)が重ならない限り、同一平面内に、これら粒子の太さに相当する高さで横たえることができる。
実際の電子顕微鏡による観察では、通常、細長い形状の微粒子(P1)は重なるため、1個の微粒子(P1)の一端と他端とを見定め難く、このため微粒子(P1)の長さを測定し難い。また、電子顕微鏡による観察では、平面から垂直な方向(すなわち、三次元方向)の微粒子(P1)の伸長が存するか否かも見定め難い。しかしながら、仮に三次元方向の伸長が存在するとすれば、微粒子(P1)は三次元網目構造又はそれに近い構造を有することになり、その三次元網目構造又はそれに近い構造に特有の性質(例えば、著しく高い粘度乃至非流動性)を示し、不安定になると考えられる。ところが、微粒子(P1)は、通常、ウレタン樹脂に含有させる前には安定な中粘度の液状ゾルとして存在するので、微粒子(P1)は三次元方向には伸長を有しないものと考えられる。
なお、微粒子(P1)が同一平面内のみに伸長を有するとは、純粋に数学的に厳密な同一平面内のみの伸長を有する意味ではなく、むしろ、三次元網目構造又はそれに近い構造に特有の性質を示さないということによって意味付けられるものである。
したがって、通常は、微粒子(P1)を電子顕微鏡によって観察した場合、微粒子(P1)は5nm以上20nm以下の範囲内の一様な太さを有し、微粒子(P1)の形状は一平面内のみの伸長を有する細長い形状となっている。これにより、より白濁を生じにくくすることができる。
微粒子(P1)としては、無機微粒子、有機微粒子のいずれを用いてもよいが、水分散性の微粒子を用いることが好ましい。無機微粒子の材料を挙げると、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物;炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。また、有機微粒子の材料を挙げると、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましい。シリカの微粒子は、シワの発生を抑制する能力及び透明性に優れ、ヘイズを生じ難く、着色が無いため、偏光板の光学特性に与える影響がより小さいからである。また、シリカはウレタン樹脂への分散性および分散安定性が良好だからである。
特に、シリカの微粒子の中でも、非晶質コロイダルシリカ粒子が好ましい。非晶質コロイダルシリカ粒子は、以下の(a)、(b)及び(c)の工程を含む製造方法により、SiO(シリカ)を40重量%以下の濃度で含む安定なシリカゾルとして、効率よく得られる。なお、この製造方法については、日本国特許第2803134号公報を参照してもよい。
(a) SiOを1重量%〜6重量%含有し且つpHが2〜5である活性珪酸のコロイド水溶液と、水溶性のカルシウム塩、マグネシウム塩又はこれらの混合物を含有する水溶液とを、上記活性珪酸のSiOに対してCaO、MgO又はこの両者として重量比1500ppm〜8500ppmとなる量で混合する工程。
(b) 前記(a)工程により得られた水溶液と、アルカリ金属水酸化物、水溶性有機塩基又はそれらの水溶性珪酸塩とを、SiO/MO(但し、SiOは上記活性珪酸に由来するシリカ分及び上記珪酸塩のシリカ分の量を表し、Mは上記アルカリ金属原子又は有機塩基の分子を表わす。)で表されるモル比が20〜200となるように加えて混合する工程。
(c) 前記(b)工程によって得られた混合物を60℃〜250℃で0.5時間〜40時間加熱する工程。
前記の非晶質コロイダルシリカ粒子は、SiO以外の成分を含んでいてもよい。上述した製造方法で製造した場合、非晶質コロイダルシリカ粒子は、製造方法に由来して、通常、SiOに対して重量比1500ppm〜10000ppm程度のカルシウム及びマグネシウムの一方又は両方の酸化物を含む。また、カルシウム及びマグネシウムの酸化物以外にも、多価金属の酸化物を含有していてもよい。カルシウム及びマグネシウム以外の多価金属としては、Sr、Ba、Zn、Sn、Pb、Cu、Fe、Ni、Co、Mn等のII価の金属、Al、Fe、Cr、Y、Ti等のIII価の金属、Ti、Zr、Sn等のIV価の金属等が例示される。ただし、前記の酸化物の合計量は、SiOに対する重量比で、通常は1500ppm〜15000ppm程度である。
微粒子(P1)の例を製品名で挙げると、日産化学工業社製のスノーテックスUP、スノーテックスPS−M、スノーテックスPS−S;扶桑化学工業社製のクォートロンPL−1;などが挙げられる。
なお、微粒子(P1)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、2種類以上の微粒子を組み合わせて用いる場合、それらのうち少なくとも1種類の微粒子が上述した要件I及び要件IIを満たす微粒子(P1)であれば、本願発明の要件を満たしうる。したがって、要件I又は要件IIを満たさない球状粒子等の粒子を併用してもよい。
かかる球状粒子として、動的光散乱法により測定される平均粒子径(D1)が1nm以上500nm以下であり、動的光散乱法により測定される前記平均粒子径(D1)と、窒素ガス吸着法により測定される平均粒子径(D2)との比D1/D2が、1.4以下、より好ましくは1.2以下である微粒子(P2)を用いることが好ましい。ここで、微粒子(P2)のD1/D2の下限値は、通常は1以上である。かかる微粒子(P2)を、微粒子(P1)と併用することにより、フィルム複合体を良好な外観を保ちつつ、かつすべり性の向上により巻回した場合にシワの発生をさらに抑制できる。微粒子(P2)の動的光散乱法により測定される平均粒子径(D1)は、好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上であり、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。
上記微粒子(P2)を併用する場合の使用量は、微粒子(P1)100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは50重量部以下である。
上記微粒子(P2)としては、無機微粒子、有機微粒子のいずれを用いてもよい。微粒子(P2)の材質の例としては、微粒子(P1)と同様のものが挙げられる。
ウレタン樹脂層中の微粒子の含有量(微粒子(P1)のみが含まれ微粒子(P2)が含まれない場合は微粒子(P1)のみの量、微粒子(P1)及び微粒子(P2)が含まれる場合はこれらの合計)は、ウレタン樹脂に含まれるポリウレタン100重量部に対し、通常0.5重量部以上、好ましくは5重量部以上、より好ましくは8重量部以上であり、通常20重量部以下、好ましくは18重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。微粒子の量を前記の範囲の下限値以上とすることにより、フィルム複合体を巻回した場合にシワの発生を抑制できる。また、微粒子の量を前記範囲の上限値以下とすることにより、白濁の無い外観を確実に維持できる。
[7.3.架橋剤]
ウレタン樹脂層の厚みが1μm以下である場合、ウレタン樹脂層の機械強度を向上させる目的で、ウレタン樹脂は架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、ポリウレタンが有する反応性基と反応する官能基を有する化合物であれば、特に制限なく使用することができる。好ましい架橋剤の例を挙げると、材料の汎用性の観点から、水系エポキシ化合物、水系アミン化合物、水系イソシアネート化合物、水系カルボジイミド化合物等が挙げられる。なかでも、水系エポキシ化合物又は水系アミン化合物を使用することが、接着性の観点から好ましい。
水系エポキシ化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のエポキシ基を有する化合物であればよい。水系エポキシ化合物の例を挙げると、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエーテル化によって得られるジエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モル以上とのエーテル化によって得られるポリエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエステル化によって得られるジエポキシ化合物等のエポキシ化合物;などが挙げられる。
水系アミン化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のアミノ基を有する化合物であればよい。水系アミン化合物の例を挙げると、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタール酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、グリコリック酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、メラミン樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂等が挙げられる。
水系イソシアネート化合物としては、水に溶解性があるか、又は、エマルジョン化した2個以上の非ブロック型のイソシアネート基若しくはブロック型のイソシアネート基を有する化合物であればよい。非ブロック型のイソシアネート化合物としては、例えば、多官能イソシアネート化合物と一価又は多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールとを反応させて得られる化合物が挙げられる。ブロック型イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、2,4,−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、およびこれらのイソシアヌレート変性体、アダクト変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、並びに、これらの重合体で1個以上のイソシアネート基を有するものをポリオキシアルキレン基、カルボキシル基等で変性し、水溶性およびまたは水分散性にし、イソシアネート基をブロック剤(フェノール、ε−カプロラクタム等)でマスクすることにより得られる化合物などが挙げられる。
水系カルボジイミド化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のカルボジイミド結合(−N=C=N−)を有する化合物であればよい。2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物は、例えば、2分子以上のポリイソシアネートとカルボジイミド化触媒とを用いて、2個のイソシアネート基を脱炭酸反応させてカルボジイミド結合を形成させる方法によって得ることができる。2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物を作製する際に使用されるポリイソシアネートおよびカルボジイミド化触媒は特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。
架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
架橋剤の量は、ウレタン樹脂に含まれるポリウレタン100重量部(固形分)に対して、固形分で、通常1重量部以上、好ましくは5重量部以上であり、通常30重量部以下、好ましくは15重量部以下である。これにより、ウレタン樹脂層の強度と水分散体の安定性とを両立できる。
[7.4.その他の成分]
ウレタン樹脂は、ポリウレタン、微粒子及び架橋剤以外の任意成分を含んでいてもよい。任意成分の例を挙げると、耐熱安定剤、耐候安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等が挙げられる。任意成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[7.5.溶媒]
水系材料が含みうる水系の溶媒としては、水を挙げることができる。水系の溶媒は、水に加えて、水溶性の溶媒を含みうる。水溶性の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
水系材料は、固形分及び水系の溶媒を混合することにより調製しうる。例えば、固形分としてウレタン樹脂を用い、塗工層としてウレタン樹脂層を形成する場合、水系材料は、ポリウレタン、微粒子(P1)、微粒子(P2)及び任意成分、並びに水系の溶媒を混合することにより調製しうる。
固形分として水系ウレタン樹脂を用いる場合、通常は、水系材料として、水系ウレタン樹脂の水分散体を用意する。水系ウレタン樹脂の水分散体は、ポリウレタン、微粒子及び必要に応じて任意成分を含む水系ウレタン樹脂が水に分散された組成物であり、例えば、エマルション、コロイド分散系、水溶液などの形態としうる。
水系ウレタン樹脂の水分散体は、例えば、ウレタン樹脂に含まれる各成分と水とを、任意の順番で混合することにより得られる。また微粒子が、溶媒に微粒子が分散した組成物(例えば、ゾル等)として用意される場合、必ずしもゾルから微粒子を取り出す必要は無く、ゾルのまま混合してもよい。
ウレタン樹脂を溶媒に溶解又は分散させた水系材料の固形分濃度は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。水系材料の濃度を当該範囲内とすることにより、水系材料の取り扱い性を良好なものとし、塗布工程を容易にすることができる。
ウレタン樹脂を溶媒に溶解又は分散させた水系材料に含まれるウレタン樹脂が粒子となって分散している場合、ウレタン樹脂の粒子の平均粒子径は、フィルム複合体の光学特性の観点から、0.01μm〜0.4μmであることが好ましい。ウレタン樹脂の粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができ、例えば、大塚電子社製の光散乱光度計DLS−8000シリーズにより測定することができる。
ウレタン樹脂を溶媒に溶解又は分散させた水系材料の粘度は、15mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であることが特に好ましい。水系材料の粘度が前記範囲内にあると、基材の表面に水系材料を薄くかつ均一に塗布することができる。なお、水系材料の粘度は、音叉型振動式粘度計により25℃の条件下で測定した値であり、例えば、水系材料に含まれるウレタン樹脂の割合、及び、ウレタン樹脂の粒径などを調整することにより、制御できる。
[7.6.ウレタン樹脂層の物性等]
塗工層としてウレタン樹脂層を形成した場合、かかるウレタン樹脂層は、厚み20μmにおける鉛筆硬度がH以上であることが好ましい。これにより、フィルム複合体に耐擦傷性を付与することができる。
ウレタン樹脂層は、表面の静摩擦係数及び動摩擦係数が、1.0以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。これにより、フィルム複合体に耐擦傷性を付与することができる。
塗工層としてウレタン樹脂層を形成した場合、基材とウレタン樹脂層とは、界面屈折率差が0.05以下であることが好ましい。これにより、フィルム複合体を光が透過する際の光の損失を抑えることができる。
ウレタン樹脂層の乾燥膜厚は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、特に好ましくは0.03μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、特に好ましくは3μm以下である。これにより、基材とウレタン樹脂層との十分な接着強度が得られ、かつ、そり等の欠陥のないフィルム複合体を実現できる。なお、フィルム複合体が2層以上のウレタン樹脂層を備える場合、各ウレタン樹脂層の乾燥膜厚が前記の範囲に収まることが好ましい。
また、ウレタン樹脂層の乾燥膜厚は、動的光散乱法により測定される微粒子(P1)の平均粒子径(D1)に対し、通常0.1倍以上、好ましくは0.2倍以上、より好ましくは0.3倍以上であり、通常1倍以下、好ましくは0.9倍以下、より好ましくは0.8倍以下である。これにより、ウレタン樹脂層の表面の凹凸を適切に制御して、巻回時のシワの発生を安定して抑制できる。
[8.フィルム製造方法:製造工程]
本発明のフィルム製造方法は、搬送される基材の一方の表面に、水系の溶媒を含む水系材料を連続的に塗布する塗布工程と、基材の搬送経路の一部を囲繞する囲繞体を備える乾燥装置により、基材上に塗布された水系材料中の溶媒を乾燥させて塗工層を形成する乾燥工程とを含む。本発明のフィルム製造方法はさらに、塗布工程の後であって乾燥工程の前に、乾燥装置から搬送経路の上流側へ漏出する漏出気体を吸引する吸引工程と、塗布工程の後であって吸引工程の前に、搬送される基材の一方又は両方の表面に向けて気体を供給する給気工程とをさらに含む。本発明のフィルムの製造方法はさらに、塗布装置の前の処理工程等の任意の工程を行いうる。これらの工程は、それぞれの装置の操作方法の説明において説明した通りに行いうる。
[9.その他の実施形態]
本発明のフィルム製造装置及び本発明のフィルム製造方法は、上に述べた実施形態に限定されず、これに任意の変更を施したものとしうる。
例えば、前記第1実施形態では、吸引装置及び給気装置の開口が、基材の搬送経路の下側に位置するものを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、吸引装置及び給気装置の開口が、略水平に搬送される基材の搬送経路の上側に位置するものであってもよく、吸引装置及び給気装置の開口が、基材の搬送経路の上側と下側の両方に位置するものであってもよい。さらに、吸引装置と給気装置とが、基材を挟んで対向する位置となるように配置されてもよく(たとえば、吸引装置が基材の上側に配置され、かつ給気装置が基材の下側に配置される等)、この場合、吸引装置の開口と給気装置の開口とが正対する位置となってもよいし、正対する位置からずれていてもよい。
さらに、本発明のフィルム製造装置において、少なくとも吸引装置および給気装置を囲繞する囲繞体をさらに備えていてもよい。このような構成によれば、乾燥装置から排出されるパーティクルの拡散をより一層抑えることができる。
また例えば、前記第1実施形態では、吸引装置及び給気装置の開口が、基材の搬送経路の上流から順に一つずつ設けられたものを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、基材の搬送経路の上流から順に、第1の給気装置の開口、第1の吸引装置の開口、第2の給気装置の開口、及び第2の吸引装置の開口が順に設けられたものであってもよい。
また例えば、前記第1実施形態では、吸引装置及び給気装置が、その開口が塗布装置より下流側であって乾燥装置より上流側の位置のみに配置されたものを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、乾燥装置より下流側に追加の吸引装置及び給気装置を有するものであってもよい。より具体的には、本発明のフィルム製造装置は、乾燥装置より下流側の位置に配置された開口を有する追加の吸引装置と、かかる追加の吸引装置より下流側の位置に配置された開口を有する追加の給気装置を備えうる。本発明者の見出したところでは、乾燥装置のフィルム搬入口及び搬出口のうち、搬入口から漏出する気化溶媒が特に多いため、搬入口の近傍のみに吸引装置及び給気装置を設けるだけでも良好な効果を得ることができるが、搬出口の近傍にさらに吸引装置及び給気装置を設けることにより、より高度な気化溶媒の捕捉を行いうる。
また例えば、好ましい態様において、本発明のフィルム製造装置は、塗布装置及び乾燥装置などの構成要素を囲繞するクリーンルームを備えるが、かかるクリーンルームが他の構成要素を囲繞するとは、それぞれの構成要素の全てをクリーンルーム内に囲繞している場合のみならず、一部の構成要素が外に出ている場合をも含む。例えば、乾燥装置、吸引装置及び給気装置のうちの一以上が、クリーンルーム外へ開口する給排気装置を備えていてもよい。
また例えば、本発明のフィルム製造装置は、搬送される基材の一方の表面に水系材料を連続的に塗布する塗布装置を備えることを必須の要件とするが、これに加えて、他方の表面に水系材料を塗布する塗布装置をさらに備え、基材のおもて面及び裏面の両方に塗工層を設ける態様としてもよい。または、本発明のフィルム製造方法を2回実施することにより、おもて面塗布→乾燥→裏面塗布→乾燥という操作を行い、基材のおもて面及び裏面の両方に塗工層を設けてもよい。
[10.フィルム複合体の用途]
本発明の製造方法により得られたフィルム複合体は、通常、光学フィルムとして使用される。光学フィルムの例としては、保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムなどが挙げられる。中でも、フィルム複合体は耐久性に優れるので、保護フィルムとして用いることが特に好ましい。より具体的には、偏光子、反射防止膜付フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム及び輝度向上フィルム等としての機能を有するフィルムとフィルム複合体とを組み合わせて用いることにより、耐久性が向上した光学フィルムとしうる。また、フィルム複合体は、例えばUV硬化樹脂との密着性に優れていたり、プリズム形状等の凹凸が形成されたフィルム、シート又は基板との密着性に優れていたりするので、前記の様々な機能を有するフィルムと容易に貼り合わせることができる。
フィルム複合体は、延伸して延伸フィルムとし、これを光学フィルムとして用いてもよい。具体的には、基材として延伸フィルムを調製し、その上に塗工層を形成してもよいし、基材(延伸フィルムでも未延伸のフィルムでもよい)の上にウレタン樹脂層を形成してフィルム複合体を製造した後に、当該フィルム複合体をさらに延伸し、これを光学フィルムとして用いてもよい。
10:フィルム製造装置 100:フィルム 101:基材 101a:基材の表面 102:水系材料の層 103:塗工層 111:コロナ処理装置 112:ロール 120:塗布装置 121:コートロール 122:容器 131:サクションロール 140:給気装置 141:開口 150:吸引装置 151:開口 160:乾燥装置 161:導出管 162:導入管 163:搬入口 164:搬出口 165:囲繞体

Claims (15)

  1. 長尺の基材と、前記基材の表面に形成された塗工層とを備えるフィルムを製造する、フィルム製造装置であって、
    前記長尺の基材を搬送する搬送装置と、
    搬送される前記基材の一方の表面に、水系の溶媒を含む水系材料を連続的に塗布する塗布装置と、
    前記塗布装置より下流に配置され、前記基材の搬送経路の一部を囲繞する囲繞体を備え、前記基材上に塗布された前記水系材料中の前記溶媒を乾燥させて前記塗工層を形成する乾燥装置と、
    前記塗布装置より下流側であって前記乾燥装置より上流側の位置に配置された開口を有し、前記乾燥装置から前記搬送経路の上流側へ漏出する漏出気体を前記開口から吸引する吸引装置と、
    前記塗布装置より下流側であって前記吸引装置より上流側の位置に配置された開口を有し、搬送される前記基材の一方又は両方の表面に向けて前記開口から気体を供給する給気装置と、
    を備えるフィルム製造装置。
  2. 請求項1に記載のフィルム製造装置であって、
    前記搬送装置、前記塗布装置、前記乾燥装置、前記吸引装置及び前記給気装置を囲繞するクリーンルームをさらに備える、フィルム製造装置。
  3. 請求項1又は2に記載のフィルム製造装置であって、
    前記囲繞体が、前記囲繞体内へ前記基材を搬入するための搬入口を有し、
    前記吸引装置の前記開口が、前記搬入口から離隔して設けられる、フィルム製造装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム製造装置であって、
    前記給気装置が、前記基材の表面に対して略垂直な方向に気体を供給する、フィルム製造装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム製造装置であって、
    前記給気装置が、前記基材の、前記水系材料が塗布された面と反対側の表面に向けて気体を供給する、フィルム製造装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム製造装置であって、
    前記基材が、前記乾燥装置に、略水平に搬入され、
    前記給気装置の前記開口及び前記吸引装置の前記開口が、前記基材の搬送経路の下側に位置する、フィルム製造装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルム製造装置であって、
    前記給気装置が、前記気体の供給により、前記漏出気体が前記給気装置より上流側へ流れることを抑制する、フィルム製造装置。
  8. 長尺の基材と、前記基材の表面に形成された塗工層とを備えるフィルムを製造する、フィルム製造方法であって、
    搬送される前記基材の一方の表面に、水系の溶媒を含む水系材料を連続的に塗布する塗布工程と、
    前記基材の搬送経路の一部を囲繞する囲繞体を備える乾燥装置により、前記基材上に塗布された前記水系材料中の前記溶媒を乾燥させて前記塗工層を形成する乾燥工程とを含み、
    前記フィルム製造方法はさらに、
    前記塗布工程の後であって前記乾燥工程の前に、前記乾燥装置から前記搬送経路の上流側へ漏出する漏出気体を吸引する吸引工程と、
    前記塗布工程の後であって前記吸引工程の前に、搬送される前記基材の一方又は両方の表面に向けて気体を供給する給気工程と、
    をさらに含む、フィルム製造方法。
  9. 請求項8に記載のフィルム製造方法であって、
    前記塗布工程、前記乾燥工程、前記吸引工程及び前記給気工程が、クリーンルーム内において行われる、フィルム製造方法。
  10. 請求項8又は9に記載のフィルム製造方法であって、
    前記乾燥工程において、前記囲繞体内の気圧Pinと、前記囲繞体外の気圧Poutとの差Pin−Poutが、0〜50Paに制御される、フィルム製造方法。
  11. 請求項8〜10のいずれか1項に記載のフィルム製造方法であって、
    前記囲繞体が、前記囲繞体内へ前記基材を搬入するための搬入口を有し、
    前記吸引工程が、前記搬入口から離隔した位置で行われる、フィルム製造方法。
  12. 請求項8〜11のいずれか1項に記載のフィルム製造方法であって、
    前記給気工程において、前記気体を、前記基材の表面に対して略垂直な方向に供給する、フィルム製造方法。
  13. 請求項8〜12のいずれか1項に記載のフィルム製造方法であって、
    前記給気工程において、前記基材の、前記水系材料が塗布された面と反対側の表面に気体を供給する、フィルム製造方法。
  14. 請求項8〜13のいずれか1項に記載のフィルム製造方法であって、
    前記基材が、前記乾燥装置に、略水平に搬入され、
    前記給気工程及び前記吸引工程が、前記基材の搬送経路の下側において行われる、フィルム製造方法。
  15. 請求項8〜14のいずれか1項に記載のフィルム製造方法であって、
    前記給気工程により、前記漏出気体が前記給気工程が行われる位置より上流側へ流れることを抑制する、フィルム製造方法。
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