以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。なお、以下の説明において構成要素の方向が「平行」または「直交」とは、本発明の効果を著しく損なわない範囲内(例えば±5°)での誤差を含んでいてもよい。また、ある方向に「沿って」とは、ある方向に「平行に」という意味である。さらに、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を意味する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光学フィルムを当該光学フィルムの厚み方向から見た様子を模式的に示す平面図である。図1に示すように、光学フィルム100は長尺のフィルムであって、光学フィルム100の幅方向(TD方向、横方向ともいう。)TDの両端部110,120には複数のエンボス構造130が設けられている。これにより、光学フィルム100の幅方向TDの両端部110,120に、エンボス構造130を有する領域(以下、適宜「エンボス領域」という。)が帯状に形成されている。
なお、本実施形態では、エンボス領域は光学フィルム100の両端部110,120に一致するので、エンボス領域には光学フィルム100の両端部110,120と同様の符号を付して説明する。また、ここで「長尺」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。さらに、以下の説明において「厚み方向」という場合、特に断らない限り、光学フィルム100の厚み方向のことをいう。
図2は、本発明の一実施形態に係る光学フィルム100の幅方向TDの端部110を厚み方向から見た様子を模式的に示す図であって、図1の光学フィルム100の端部110を拡大して示す図である。図2に示すように、厚み方向から見たエンボス構造130の形状は楕円形となっている。すなわち、エンボス構造130を厚み方向から見た場合に、当該エンボス構造130の外縁131が楕円形となっている。このように楕円形のエンボス構造130を有することにより、光学フィルム100は巻回して光学フィルムロールを製造した場合でも、ゲージバンド及びスクラッチの発生を抑制できる。
楕円形のエンボス構造130がゲージバンド及びスクラッチの発生を抑制できる理由は定かではないが、本発明者の検討によれば、以下の理由によるものと推察される。すなわち、光学フィルム100を幅方向に引っ張る応力が生じやすくなるため、巻いた際に光学フィルム100が重なりにくくなり、ゲージバンド及びスクラッチの発生を抑制できると推察される。
なお、前記の「楕円形」とは、数学的な意味での楕円(すなわち、xy直交座標を用いてx2/a2+y2/b2=1(a及びbは正の数)で表される楕円)の形状だけでなく、本発明の効果を著しく損なわない限り前記数学的な楕円の形状からずれた形状も含む。例えば、エンボス構造130は後述するようにレーザー光の照射により形成されることがあるが、その場合、レーザー光の照射時の光学フィルム100の振動;レーザー光照射装置の駆動部の振動;温度及び湿気等の条件変動;などの影響により、形成されるエンボス構造を厚み方向から見た形状が数学的な楕円の形状とならず、その外縁131の一部がx2/a2+y2/b2=1で表される座標から外れることはありえる。このように歪んだ楕円形であっても、厚み方向から見た当該エンボス構造130の形状が真円でない限り、厚み方向から見たエンボス構造130の形状は実質的に楕円形となり、ゲージバンド及びスクラッチの抑制作用は奏される。
図3は、本発明の一実施形態に係るエンボス構造130を、エンボス構造130の楕円の中心を通り厚み方向に平行な平面で切った断面を模式的に示す図である。図3に示すように、エンボス構造130は、エンボス構造130の周囲の光学フィルム表面101よりも突出して形成された周部132を有する。周部132は厚み方向から見て楕円形を有しており、この周部132の外縁がエンボス構造130の外縁131に一致する。周部132がエンボス構造130の周囲の光学フィルム表面101よりも突出していることにより、光学フィルム100の実質的な厚みが厚くなるので、ロール状に巻いた際に、重なった光学フィルム100の面の間に空気層を積極的に取り入れることが出来る。その結果、光学フィルム100同士が接触しないので、ゲージバンド及びスクラッチを抑制することが可能となる。
図4は、本発明の一実施形態に係るエンボス構造130を厚み方向から見た様子を模式的に示す図である。一個のエンボス構造130に注目した場合、当該エンボス構造130の周部132の高さは、均一であってもよいが、不均一であることが好ましい。具体的には、図4に示すように、エンボス構造130の楕円形の長軸AL、短軸AS、並びに、エンボス構造130の楕円形の中心P0を通り長軸AL及び短軸ASと45°の角度をなす2本の直線AA,ABが、周部132と交差する8個の領域P1〜P8での周部132の高さN(図3参照。)のうち、最高の領域における高さをN1とし、最低の領域における高さをN2とする。この場合、比N1/N2は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.5以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは7.0以下、特に好ましくは5.0以下である。
従来、ナーリング処理を施した光学フィルムでは、ナーリング処理により形成される凹凸の高さが高いと、当該光学フィルムを巻回した場合に凹凸の周辺でロールが拡径することにより光学フィルムに大きな応力がかかり、光学フィルムが割れる現象(以下、適宜「クラック」という。)が生じることがあった。ところが、エンボス構造130の周部132の高さを前記のように不均一にすることによって、前記のクラックを防止することが可能になる。このようにエンボス構造130の周部132の高さを不均一とすることによりクラックを防止できる理由は定かではないが、本発明者の検討によれば、以下の理由によるものと推察される。すなわち、光学フィルム100を巻回して光学フィルムロールとしたときに、エンボス構造130を形成した箇所において同一箇所での微小領域への応力集中を避けることができるためと推察される。ただし、周部132の高さを過度に不均一にすることは、そのような周部132の形成が困難である割には効果に大きな差が無いことから、前記の比N1/N2の範囲には上限がある。
エンボス構造130の周部132の平均高さは、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、2.0μm以上が特に好ましく、また、5.0μm以下が好ましく、4.5μm以下がより好ましく、4.0μm以下が特に好ましい。周部132の平均高さを前記範囲の下限値以上とすることによって光学フィルム100の巻きずれ、巻きこみ、厚みムラに起因する外観不良などを効果的に抑制でき、前記範囲の上限値以下とすることによってクラックを安定して防止できる。なお、周部132の平均高さは、前記の8個の領域P1〜P8での周部132の高さNの平均値として測定できる。
図3に示すように、エンボス構造130は、周部132の内側に形成された央部133を有する。央部133は、エンボス構造130の周部132よりも窪んで形成された部分であり、この央部133は周りを周部132によって囲まれている。通常、央部133も厚み方向から見て楕円形を有する。央部133がエンボス構造130の周部132よりも窪んでいることにより、エンボス構造130の周部132において、応力の集中を抑制し、エンボス構造130でのクラックやエンボス形状の破壊による巻外観(光学フィルムロールの外観)の悪化が防止できる。
央部133の深さDは、0.7μm以上が好ましく、1.2μm以上がより好ましく、2.5μm以上が特に好ましく、また、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下が特に好ましい。央部133の深さを前記範囲の下限値以上とすることによってエンボス構造130の周部132の形状を安定的に形成することができ、前記範囲の上限値以下とすることによってエンボス構造130が形成された面の反対側に変形又は穴あきが生じることを抑制し、エンボス構造130の効果を安定して発揮させることにより、巻外観の改善を行うことができる。なお、央部133の深さDは、央部133の最も深い地点PDと、エンボス構造130の周部132の高さNの平均値との、厚み方向における距離として測定できる。
図5は、本発明の一実施形態に係るエンボス構造130を厚み方向から見た様子を模式的に示す図である。図5に示すように、エンボス構造130の楕円形の長軸径r1は、好ましくは300μm以上、より好ましくは350μm以上、特に好ましくは400μm以上であり、好ましくは600μm以下、より好ましくは550μm以下、特に好ましくは500μm以下である。長軸径r1を前記範囲の下限値以上とすることによってエンボス構造130の効果を安定して発揮することができ、前記範囲の上限値以下とすることによって形状を安定して作製し、エンボス構造130への局所的な応力集中を回避することができる。
エンボス構造130の楕円形の短軸径r2は、好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上、特に好ましくは250μm以上であり、好ましくは550μm以下、より好ましくは500μm以下、特に好ましくは450μm以下である。短軸径r2を前記範囲の下限値以上とすることによってエンボス構造130の効果を安定して発揮することができ、前記範囲の上限値以下とすることによってエンボス構造130への局所的な応力集中を回避することができる。
前記の長軸径r1と短軸径r2との比r1/r2は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.3以上であり、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.8以下、特に好ましくは1.6以下である。比r1/r2を前記範囲の下限値以上とすることにより、エンボス構造130の形状を楕円形としたことによる効果を安定して発揮できる。また、比r1/r2を前記範囲の上限値以下とすることにより、エンボス構造130間の高さNのばらつきの小さいエンボス形状を付与することできる。
図2に示すように、エンボス構造130の楕円形の向きは、通常、前記楕円形の長軸ALが光学フィルム100の長尺方向(MD方向、縦方向ともいう。)MDと平行となるようにすることが好ましい。このようなエンボス構造130は製造が容易だからである。
光学フィルム100の端部110,120におけるエンボス構造130の配置は、ランダムであってもよいが、光学フィルム100の長尺方向MD及び幅方向TDに沿って並ぶことが好ましい。また、この際、長尺方向MD及び幅方向TDそれぞれにおけるエンボス構造130同士の間隔は、不均一であってもよいが、均一であることが好ましい。このようなエンボス構造130は製造が容易だからである。
光学フィルム100の長尺方向MDにおけるエンボス構造130同士の間隔IMDは、3.0mm以上が好ましく、3.5mm以上がより好ましく、4.0mm以上が特に好ましく、また、7.0mm以下が好ましく、6.5mm以下がより好ましく、6.0mm以下が特に好ましい。長尺方向MDにおけるエンボス構造130同士の間隔IMDを前記範囲の下限値以上とすることによって巻回時に重なった光学フィルム100間に空間をつくることが容易になり、前記範囲の上限値以下とすることによってエンボス構造130への応力集中によるクラックを抑制することができる。
光学フィルム100の幅方向TDにおけるエンボス構造130同士の間隔ITDは、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、1.5mm以上が特に好ましく、また、6.0mm以下が好ましく、5.5mm以下がより好ましく、5.0mm以下が特に好ましい。幅方向TDにおけるエンボス構造130同士の間隔ITDを前記範囲の下限値以上とすることによって巻回時に重なった光学フィルム100間に空間をつくることが容易になり、前記範囲の上限値以下とすることによってエンボス構造130への応力集中によるクラックを抑制することができる。
図1に示すように、エンボス領域110,120の幅W110,W120は、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が特に好ましく、また、12mm以下が好ましく、11mm以下がより好ましく、10mm以下が特に好ましい。エンボス領域110,120の幅W110,W120を前記範囲の下限値以上とすることによって巻きずれを安定して防止でき、前記範囲の上限値以下とすることによって有効領域の大きさを広く確保して製造コストを安価にできる。なお、光学フィルム100の有効領域とは、光学フィルム100のエンボス構造130が形成されていない領域のことを指し、通常は図1に示すように両端部110,120を除く領域140のことを指す。
光学フィルム100の幅に制限は無いが、通常700mm以上、好ましくは1000mm以上、より好ましくは1200mm以上であり、通常2500mm以下、好ましくは2200mm以下、より好ましくは2000mm以下である。
光学フィルム100の厚みに制限は無いが、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上であり、通常1000μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは150μm以下である。
光学フィルム100は、光学部材としての機能を発揮する観点から、通常は高い透明性を有する。具体的には、光学フィルム100の有効領域140の全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましい。ここで、全光線透過率は、JIS K7105に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−2000」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値である。
また、光学フィルム100の有効領域140は、通常、ヘイズが小さいことが好ましい。具体的には、光学フィルム100のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下である。ヘイズを低い値とすることにより、光学フィルム100を表示装置に組み込んだ場合に、その表示装置の表示画像の鮮明性を高めることができる。ここで、ヘイズは、日本電色工業社製の濁度計「NDH2000」を用いて測定できる。
光学フィルム100は、通常、樹脂フィルムである。また、光学フィルム100は、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。
光学フィルム100は、一層のみを備える単層構造の層であってもよいが、二層以上の層を備える複層構造の層であってもよい。中でも、光学フィルム100は、基材フィルム層と易接着層とを備えることが好ましい。
(基材フィルム層)
基材フィルム層は、熱可塑性樹脂フィルム層を備えることが好ましい。中でも、光学フィルム100を偏光板の部材(例えば、偏光板の保護フィルム等)として用いる場合には、熱可塑性樹脂フィルム層として疎水性が強いものを用いることが好ましい場合がある。なお、ここでいう疎水性とは、易接着層又は偏光子と比較して相対的により疎水性が高いことを意味する。熱可塑性樹脂フィルム層を形成する熱可塑性樹脂として好ましい例としては、脂環式構造含有重合体を含む樹脂(以下、適宜「脂環式構造含有重合体樹脂」という。)、(メタ)アクリル系重合体を含む樹脂(以下、適宜「(メタ)アクリル系樹脂」という。)およびポリエステル系樹脂等が挙げられる。
脂環式構造含有重合体は、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれを用いてもよい。中でも、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及び基材フィルム層の成形性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、基材フィルム層の透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造含有重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。なお、「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体のことをいう。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。なお、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。なお、ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。なお、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素化物;などを挙げることができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素化してなる水素化物;ビニル脂環式炭化水素系モノマー、またはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素化物;等を挙げることができる。なお、前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
脂環式構造含有重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、光学フィルム100の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ好適である。
脂環式構造含有重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は通常1.2以上、好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.8以上であり、通常3.5以下、好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.7以下である。分子量分布が3.5を超えると低分子成分が増すため緩和時間の短い成分が増加し、一見同じ面内レターデーションReを有する基材フィルム層であっても高温暴露時の緩和が短時間で大きくなることが推定され、基材フィルム層の安定性が低下するおそれがある。一方、分子量分布が1.2を下回るようなものは重合体の生産性の低下とコスト増につながり、ディスプレイ部材としての実用性という観点からはあまり現実的でない。
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下である。ガラス転移温度が130℃を下回ると高温下における耐久性が悪化する可能性があり、150℃を上回るものは耐久性は向上するが通常の延伸加工が困難となる可能性がある。
脂環式構造含有重合体は、光弾性係数の絶対値が10×10−12Pa−1以下であることが好ましく、7×10−12Pa−1以下であることがより好ましく、4×10−12Pa−1以下であることが特に好ましい。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、「C=Δn/σ」で表される値である。脂環式構造含有重合体の光弾性係数が10×10−12Pa−1を超えると、基材フィルム層の面内レターデーショReのバラツキが大きくなるおそれがある。
脂環式構造含有重合体の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が上記範囲であると、基材フィルム層の面内レターデーションRe及び厚さ方向レターデーションRthの経時変化を小さくすることができる。また、光学フィルム100を備える偏光板及び液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。
飽和吸水率は、試験片を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した質量を、浸漬前の試験片の質量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。脂環式構造含有重合体における飽和吸水率は、例えば、脂環式構造含有重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。飽和吸水率をより低くする観点から、脂環式構造含有重合体は、極性基を有さないことが好ましい。
脂環式構造含有重合体樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、脂環式構造含有重合体以外にもその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;耐電防止剤;酸化防止剤;滑剤;などの添加剤が挙げられる。なお、その他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ただし、熱可塑性樹脂フィルム層に含まれる重合体の量は、一般的には約50%〜100%、または約70%〜100%である。特に、ここで例示する光学フィルム100は、高い疎水性を有する熱可塑性樹脂フィルム層を用いた基材フィルム層を備えている場合であっても、易接着層を備えることにより親水性が高い他のフィルムと強固に接着できるという利点を有する。この利点を効果的に活用する観点からは、熱可塑性樹脂フィルム層に含まれる重合体の量が、例えば80%〜100%、より詳しくは90%〜100%となるように、その他の成分の量を調整することが好ましい。
ただし、脂環式構造含有重合体には、実質的に粒子を含まないことが好ましい。ここで、実質的に粒子を含まないとは、脂環式構造含有重合体樹脂に粒子を含ませても、粒子を全く含まない状態からの基材フィルム層のヘイズの上昇幅が0.05%以下の範囲である量までは許容できることを意味する。脂環式構造含有重合体は、多くの有機粒子や無機粒子との親和性に欠けるため、上記範囲を超えた量の粒子を含む脂環式構造含有重合体樹脂を延伸すると、空隙が発生しやすく、その結果として、ヘイズの著しい低下が生じるおそれがある。
脂環式構造含有重合体樹脂で形成されたフィルム層は、その製法によって特に制限されない。脂環式構造含有重合体樹脂で形成されたフィルム層は、脂環式構造含有重合体樹脂を公知のフィルム成形法で成形することによって得られる。フィルム成形法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶剤を使用しない溶融押出法の方が、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法などが挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
熱可塑性樹脂フィルム層を(メタ)アクリル系樹脂で形成する場合、その(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂などが挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする(メタ)アクリル系重合体を含む樹脂が好ましく用いられる。この(メタ)アクリル系重合体は、((メタ)アクリル酸エステルのみからなる単独重合体若しくは共重合体でもよく、また、(メタ)アクリル酸エステルとこれと共重合可能な単量体との共重合体でもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとして、好ましくは(メタ)アクリル酸と炭素数1〜15のアルカノール及びシクロアルカノールから誘導される構造のものが挙げられ、より好ましくは、炭素数1〜8のアルカノールから誘導される構造のものが挙げられる。炭素数が多すぎる場合は、得られる基材フィルム層の破断時の伸びが大きくなる傾向がある。
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ドデシルなどのメタクリル酸エステル類;などを挙げることができる。
これらの(メタ)アクリル酸エステルは、水酸基、ハロゲン原子などの任意の置換基を有していてもよい。そのような置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジルなどを挙げることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステルは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位の含有量が、好ましくは50重量%以上、より好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上のものである。
(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体には、特に限定はないが、例えば、上述した(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、さらに、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体、シアン化ビニル単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、オレフィン単量体などが挙げられる。
上述した(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、モノカルボン酸、多価カルボン酸、多価カルボン酸の部分エステル及び多価カルボン酸無水物のいずれでもよく、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどを挙げることができる。
非共役ジエン単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体の具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられる。
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
オレフィン単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどを挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体としては、アルケニル芳香族単量体が好ましく、なかでもスチレンが好ましい。
(メタ)アクリル系重合体において、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体に由来する繰り返し単位の含有量は、50重量%未満、好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満である。
(メタ)アクリル系重合体の好ましい具体例としては、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン/アクリル酸ブチル共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル系重合体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらのうち、ポリメタクリレートが好ましく、中でもポリメチルメタクリレートがより好ましい。
(メタ)アクリル系重合体の分子量は、特に限定されないが、通常、重量平均分子量で50,000〜500,000である。分子量がこの範囲内にあると、均質なフィルム層を溶融流延法により容易に作製することができる。
(メタ)アクリル系樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、(メタ)アクリル系重合体以外にもその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例を挙げると、脂環式構造含有重合体樹脂が含んでいてもよいその他の成分と同様の例が挙げられる。なお、その他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル系樹脂の引張試験における破断時伸びは、好ましくは10%以上、より好ましくは50%以上であり、好ましくは180%以下、より好ましくは170%以下である。破断時伸びが上記範囲内にあるときに、基材フィルム層の不要部分のカス上げ加工性が良好となる。なお、前記のカス上げ加工性とは、基材フィルム層の不要部分を切除した場合に、切除された不要部分(カス)を除去する際の操作性のことを意味する。破断時伸びは、JIS K 7127の規定により、試験片タイプ1B(W10,L100,t0.1mm)、速度5mm/分の条件で求められた値である。
熱可塑性の(メタ)アクリル系樹脂で形成されたフィルム層は、その製法によって特に制限されない。熱可塑性の(メタ)アクリル系樹脂で形成されたフィルム層は、例えば、前述の脂環式構造含有重合体樹脂で形成されたフィルム層と同様のフィルム成形法で成形することによって製造できる。
(メタ)アクリル系樹脂が紫外線硬化型樹脂である場合には、紫外線硬化型樹脂としては、易接着層と親和性のある材料を用いることが好ましい。例えば、易接着層としてウレタン樹脂層を採用する場合、紫外線硬化型樹脂としては、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系などが好ましい。
また、未硬化状態の紫外線硬化型樹脂として好ましくは、例えば、分子中に重合性不飽和結合またはエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーのうち一種類又は二種類以上を含み、紫外線の照射により硬化する樹脂などが挙げられる。分子中に重合性不飽和結合またはエポキシ基を有するプレポリマー又はオリゴマーとしては、例えば、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物などの不飽和ポリエステル類;ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレートなどのメタクリレート類;ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレートなどのアクリレート類;カチオン重合型エポキシ化合物;などが挙げられる。
分子中に重合性不飽和結合またはエポキシ基を有するモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル等の不飽和置換の置換アミノアルコールエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド類;エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクレリート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の多官能性アクリレート類;トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等の、分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール類;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルフェニルエーテル、グリシジルエチルエーテル、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物などが挙げられる。
本発明においては、これらのプレポリマー、オリゴマー及びモノマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
未硬化状態の紫外線硬化型樹脂における前記プレポリマー、オリゴマー及びモノマーの含有量は、優れた塗布適性が得られる観点から、5重量%〜95重量%が好ましい。
紫外線硬化型樹脂は、好ましくは光重合開始剤及び光重合促進剤を含む。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾインエーテル類、オキシムエステル類などのラジカル重合性開始剤;芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステルなどのカチオン重合性開始剤;などが挙げられる。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化型樹脂成分中に、通常、0.1重量%〜10重量%である。
紫外線硬化樹脂に補助的に各種の機能を付加するために、紫外線硬化型樹脂に、例えば、酸化防止剤;紫外線吸収剤;光安定剤;染料、顔料などの着色剤;可塑剤;滑剤;界面活性剤などを含ませてもよい。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル系樹脂として紫外線硬化樹脂を用いる場合、紫外線硬化樹脂で形成されたフィルム層は、その製法によって特に制限されない。例えば、紫外線硬化型樹脂を溶剤に溶解させた液状組成物を用意し、その液状組成物を下地となるフィルムの表面に塗布し、その後、紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させることにより、紫外線硬化樹脂で形成されたフィルム層を形成することができる。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジアセトングリコール、プロプレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;メチルエチルケトオキシムなどのオキシム類;などが挙げられる。なお、溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
紫外線硬化型樹脂を下地となるフィルムの表面に塗布する方法は特に限定されず、公知の塗布法を採用することができる。具体的な塗布法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
紫外線硬化型樹脂の塗布量は特に限定されないが、硬化後の厚みとして、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、通常50μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下となる量が好ましい。
熱可塑性樹脂フィルム層に適用し得る材料としては、ポリエステル樹脂も挙げられる。ポリエステルとは、高分子主鎖中にエステル結合を有する高分子化合物であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート(POB)、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)などが挙げられる。また、ポリエステルの共重合成分としては、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分;アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分;等が挙げられる。なお、ポリエステルは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)及びポリエチレンテレフタレート(PET)の単独重合体並びにそれらの共重合体が好ましい。
ポリエステル樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、ポリエステル以外にもその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例を挙げると、脂環式構造含有重合体樹脂が含んでいてもよいその他の成分と同様の例が挙げられる。なお、その他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、基材フィルム層は、一層のみを備える単層構造のフィルム層であってもよく、二層以上の層を備える複層構造のフィルム層であってもよい。基材フィルム層を複層構造のフィルム層とすることにより、様々な特性を有する偏光板を製造することができる。ただし、基材フィルム層が二層以上の層を備える場合、熱可塑性樹脂フィルム層が、基材フィルム層の最表面に位置することが好ましい。この際、基材フィルム層の2面の最表面(おもて面及び裏面)のうち、一方の最表面にのみ熱可塑性樹脂フィルム層が位置していてもよく、両方の最表面に熱可塑性樹脂フィルム層が位置していてもよい。
基材フィルム層が二層以上の層を備える場合、一種類のフィルム層を二層以上備えていてもよく、異なる二種類以上のフィルム層を備えていてもよい。また、基材フィルム層には、上述した熱可塑性樹脂以外の樹脂からなる層を設けてもよい。基材フィルム層が備える具体的な層の種類に制限は無く、例えば、傷付防止、反射防止、帯電防止、防眩、防汚などの機能を有するフィルム層が挙げられる。基材フィルム層の層構成の具体例を挙げると、例えば、(メタ)アクリル系樹脂からなる層、スチレン系樹脂からなる層、及び(メタ)アクリル系樹脂からなる層をこの順に積層させた三層構造の基材フィルム層などが挙げられる。
基材フィルム層が二層以上の層を備える場合、基材フィルム層の製造方法に制限は無い。例えば、別々に製造したフィルム層を接着剤を用いて貼り合せて基材フィルム層を製造してもよい。また、例えば、接着剤を用いずに共押出法などにより基材フィルム層を製造してもよい。
接着剤は、貼り合わせるフィルム層を形成する樹脂の種類により適宜選択してよい。接着剤の例としては、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、変性ポリオレフィン系接着剤、ポリビニルアルキルエーテル系接着剤、ゴム系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、塩化ビニル−酢酸ビニル系接着剤、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)系接着剤、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)系接着剤、エチレン−スチレン共重合体などのエチレン系接着剤、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル系接着剤などが挙げられる。なお、接着剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
接着剤で形成される接着層の平均厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
接着剤を使用せずに基材フィルム層を製造する場合、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法などの共押出成形法;ドライラミネーションなどのフィルムラミネーション成形法などを用いればよい。また、例えば、あるフィルム層の表面に、別のフィルム層を構成する樹脂を含む溶液をコーティングするコーティング成形法などを用いてもよい。これらの中でも、製造効率や、基材フィルム層中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点からは共押出成形法が好ましく、共押出成形法の中でも共押出Tダイ法が好ましい。さらに、共押出Tダイ法にはフィードブロック方式とマルチマニホールド方式が挙げられるが、フィルム層の厚さのばらつきを少なくできる点からは、マルチマニホールド方式がさらに好ましい。
基材フィルム層は、延伸されていない未延伸フィルム層であってもよく、延伸された延伸フィルム層であってもよい。また、基材フィルム層が2層以上の層を備える場合、予め延伸されたフィルム層を積層して延伸フィルム層を得てもよく、共押出等により得られた複層フィルム層を延伸して延伸フィルム層を得てもよい。
延伸方法は特に制限されず、例えば、一軸延伸法、二軸延伸法のいずれを採用してもよい。延伸方法の例を挙げると、一軸延伸法の例としては、フィルム搬送用のロールの周速の差を利用して長尺方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて幅方向に一軸延伸する方法等が挙げられる。また、二軸延伸法の例としては、固定するクリップの間隔を開いての長尺方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により幅方向に延伸する同時二軸延伸法;フィルム搬送用のロール間の周速の差を利用して長尺方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて幅方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法等が挙げられる。さらに、例えば、幅方向又は長尺方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いて、フィルムの幅方向に対して任意の角度θをなす方向に連続的に斜め延伸する斜め延伸法を用いてもよい。
延伸に用いる装置として、例えば、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。
延伸時の温度は、未延伸の基材フィルム層を形成する材料のガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくは(Tg−30℃)と(Tg+60℃)の間、より好ましくは(Tg−10℃)と(Tg+50℃)の間の温度から選択される。
延伸倍率は、使用する基材フィルム層の光学特性に応じて適宜選択すればよく、通常1.05倍以上、好ましくは1.1倍以上であり、通常10.0倍以下、好ましくは2.0倍以下である。
基材フィルム層は、1mm厚換算での全光線透過率が80%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、全光線透過率が90%以上である。
基材フィルム層は、1mm厚でのヘイズが0.3%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、ヘイズが0.2%以下である。ヘイズが0.3%を超えると、基材フィルム層の透明性が低下することがある。
基材フィルム層の面内レターデーションRe及び厚さ方向レターデーションRthの値は、光学フィルム100の用途によって異なり、例えば、面内レターデーションReで10nm〜500nm、厚さ方向レターデーションRthで−500nm〜500nmの範囲から適宜選択される。なお、面内レターデーションReは、フィルム層の遅相軸方向の屈折率nx、遅相軸に面内で直交する方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nz、フィルム層の平均厚みDとしたときに、(nx−ny)×Dで定義される値である。また、厚さ方向レターデーションRthは、((nx+ny)/2−nz)×Dで定義される値である。
基材フィルム層の平均厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。
基材フィルム層の厚み変動幅は、長尺方向及び幅方向にわたって、前記平均厚さの±3%以内であることが好ましい。厚み変動を上記範囲にすることにより、基材フィルム層の面内レターデーションReなどの光学特性のバラツキを小さくすることができる。
基材フィルム層は、面内レターデーションReのバラツキが、通常10nm以内、好ましくは5nm以内、さらに好ましくは2nm以内である。面内レターデーションReのバラツキを上記範囲にすることにより、光学フィルム100を液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に、表示品質を良好なものにすることが可能になる。ここで、面内レターデーションReのバラツキは、光入射角0°(入射光線と基材フィルム層の表面とが直交する状態)の時の面内レターデーションReを、基材フィルム層の幅方向に測定したときの、その面内レターデーションReの最大値と最小値との差である。
基材フィルム層の残留揮発性成分の含有量は特に制約されないが、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。残留揮発性成分の含有量が0.1重量%を超えると、経時的に基材フィルム層の光学特性が変化するおそれがある。揮発性成分の含有量を上記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、基材フィルム層の面内レターデーションRe及び厚さ方向レターデーションRthの経時変化を小さくすることができ、さらには光学フィルム100を備える偏光板又は液晶表示装置等の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。揮発性成分は、基材フィルム層に含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の含有量は、分子量200以下の物質の合計として、基材フィルム層をガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
(易接着層)
易接着層は、接着剤を介して光学フィルム100を他の部材(例えば、偏光子等)と貼り付ける際に、接着剤による基材フィルム層と他の部材との接着を補強して、より強固に接着させる層である。すなわち、易接着層は、接着剤の機能を補強する層であり、別称としてプライマー層などと呼ばれる。易接着層は、基材フィルム層の一方の表面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。基材フィルム層の両面に易接着層を設けることにより、光学フィルム100の取り扱い性を効果的に改善できる。
易接着層は、例えば、水系樹脂を含む層とすることが好ましい。水系樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、およびそれぞれの樹脂のエマルジョンなどが挙げられ、好ましくは水系ウレタン樹脂が挙げられる。
水系ウレタン樹脂はポリウレタンと、必要に応じてその他の成分とを含む。水系ウレタン樹脂に含まれるポリウレタンとしては、例えば、(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とを反応させて得られるポリウレタン;または、上記(i)成分及び(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で、反応に不活性で水との親和性の大きい有機溶媒中でウレタン化反応させてイソシアネート基含有プレポリマーとし、次いで、該プレポリマーを中和し、鎖延長剤を用いて鎖延長し、水を加えて分散体とすることによって製造されるポリウレタン;などが挙げられる。これらのポリウレタン中には酸構造(酸残基)を含有させてもよい。
なお、イソシアネート基含有プレポリマーの鎖伸長方法は公知の方法によればよく、例えば、鎖伸長剤として、水、水溶性ポリアミン、グリコール類などを使用し、イソシアネート基含有プレポリマーと鎖伸長剤とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させればよい。
前記(i)成分(すなわち、1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分)としては、特に限定されるものではないが、水酸基性の活性水素を有するものが好ましい。このような化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
(1)ポリオール化合物
ポリオール化合物として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。
(2)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとして、例えば、前記のポリオール化合物のアルキレンオキシド付加物;アルキレンオキシドと環状エーテル(例えばテトラヒドロフランなど)との開環(共)重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体;グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。
(3)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとして、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸又はその無水物と、上記(1)で挙げられたようなエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコールなどのポリオール化合物とを、水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものなどが挙げられる。より具体的には、例えば、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、或いはグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオールなどが挙げられる。
(4)ポリエーテルエステルポリオール
ポリエーテルエステルポリオールとして、例えば、エーテル基含有ポリオール(例えば、前記(2)のポリエーテルポリオールやジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を上記(3)で例示したようなジカルボン酸又はその無水物に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるものなどが挙げられる。より具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物などが挙げられる。
(5)ポリカーボネートポリオール
ポリカーカーボネートポリオールとしては、例えば、一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)x−OH(ただし、式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ポリオール残基を示す。また、xは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物などが挙げられる。これらは、飽和脂肪族ポリオールと置換カーボネート(例えば、炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを、水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法;前記飽和脂肪族ポリオールとホスゲンとを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ポリオールを反応させる方法;などにより得ることができる。
上記の(1)から(5)に例示したような化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記(i)成分と反応させる(ii)成分(即ち、多価イソシアネート成分)としては、例えば、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環族または芳香族の化合物を使用してもよい。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数4〜18の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)などが挙げられる。芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、水系ウレタン樹脂のうちでポリウレタンが酸構造を含有するもの(以下、適宜「酸構造含有水系ウレタン樹脂」という。)は、界面活性剤を使用せずに、若しくは界面活性剤の量が少なくても、水中に分散させることが可能となるので、易接着層の耐水性が良くなることが期待される。これを自己乳化型といい、界面活性剤を使用すること無く分子イオン性のみで、水中にポリウレタン樹脂が分散安定化しうることを意味する。このような水系ウレタン樹脂を用いた易活性層は、界面活性剤が不要であるために、脂環式構造含有重合体樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、およびポリエステル樹脂との接着性に優れ、かつ高い透明性を維持できるため、好ましい。
酸構造としては、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(−SO3H)等の酸基などを挙げることができる。また、酸構造は、ポリウレタンにおいて側鎖に存在していてもよく、末端に存在していてもよい。なお、酸構造は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
酸構造の含有量としては、水系ウレタン樹脂中の酸価として、好ましくは20mgKOH/g以上、より好ましくは25mgKOH/g以上であり、好ましくは250mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下である。酸価が20mgKOH/g未満では水分散性が不十分となりやすく、一方、酸価が250mgKOH/gより大きいと易接着層の耐水性が劣る傾向となる。
ポリウレタンに酸構造を導入する方法は、従来から用いられている方法が特に制限なく使用できる。好ましい例を挙げると、ジメチロールアルカン酸を、前記(2)から(4)に記載したグリコール成分の一部もしくは全部と置き換えることによって、予めポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等にカルボキシル基を導入する方法が挙げられる。ここで用いられるジメチロールアルカン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。なお、ジメチロールアルカン酸は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、ポリウレタンが含む酸構造の一部又は全部は、中和することが好ましい。酸構造を中和することにより、水系ウレタン樹脂の水分散性を向上させることができる。酸成分を中和する中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基;などを挙げられる。なお、中和剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリウレタンの数平均分子量は、1,000以上が好ましく、より好ましくは20,000以上であり、1,000,000以下が好ましく、より好ましくは200,000以下である。
水系ウレタン樹脂として、市販されている水系ウレタン樹脂をそのまま使用することも可能である。水系ウレタン樹脂としては、例えば、旭電化工業(株)製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井東圧化学(株)製の「オレスター」シリーズ、大日本インキ化学工業(株)製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン」シリーズ、バイエル社製の「インプラニール」シリーズ、日本ソフラン(株)製の「ソフラネート」シリーズ、花王(株)製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業(株)製の「サンプレン」シリーズ、保土谷化学工業(株)製の「アイゼラックス」シリーズ、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス」シリーズ、ゼネカ(株)製の「ネオレッツ」シリーズなどを用いることができる。なお、水系ウレタン樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、易接着層は、微粒子を含むことが好ましい。したがって、易接着層が水系樹脂により形成される場合、当該水系樹脂は微粒子を含むことが好ましい。易接着層に微粒子を含ませることにより、易接着層の表面に凹凸が形成され、それによって巻回の際に易接着層が他の層と接触する面積が小さくなり、その分だけ易接着層の表面の滑り性を向上させて、光学フィルム100を巻回する際のシワの発生を抑制できる。
微粒子の平均粒子径は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、通常500nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより易接着層の滑り性を効果的に高めることができ、前記範囲の上限値以下にすることによりヘイズを低く抑えることができる。なお、微粒子の平均粒子径としては、レーザー回折法によって粒径分布を測定し、測定された粒径分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(50%体積累積径D50)を採用する。
微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子のいずれを用いてもよいが、水分散性の微粒子を用いることが好ましい。無機微粒子の材料を挙げると、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物;炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。また、有機微粒子の材料を挙げると、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましい。シリカの微粒子は、シワの発生を抑制する能力及び透明性に優れ、ヘイズを生じ難く、着色が無いため、光学フィルム100の光学特性に与える影響がより小さいからである。また、シリカはウレタン樹脂への分散性および分散安定性が良好だからである。また、シリカの微粒子の中でも、非晶質コロイダルシリカ粒子が特に好ましい。
なお、微粒子は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
易接着層に含まれる微粒子の量は、易接着層に含まれる重合体100重量部に対し、通常0.5重量部以上、好ましくは5重量部以上、より好ましくは8重量部以上であり、通常20重量部以下、好ましくは18重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。微粒子の量を前記の範囲の下限値以上とすることにより、光学フィルム100を巻回した場合にシワの発生を抑制できる。また、微粒子の量を前記範囲の上限値以下とすることにより、光学フィルム100の白濁の無い外観を維持できる。
易接着層の厚みが1μm以下の場合、易接着層の機械強度を向上させる目的で、易接着層の製造に用いる水系樹脂には、更に架橋剤を含ませることが好ましい。架橋剤としては、水系樹脂に含まれる重合体が有する反応性基と反応する官能基を有する化合物であれば、特に制限なく使用することができる。例えば、水系樹脂として水系ウレタン樹脂を用いる場合には、架橋剤として水系エポキシ化合物、水系アミノ化合物、水系イソシアネート化合物、水系カルボジイミド化合物、水系オキサゾリン化合物等を使用することが、材料の汎用性の観点から好ましい。この中でも、特に水系エポキシ化合物、水系アミノ化合物、水系オキサゾリン化合物を使用することが、接着性の観点から好ましい。
水系エポキシ化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のエポキシ基を有する化合物であればよい。水系エポキシ化合物の例を挙げると、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール;1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエーテル化によって得られるジエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モル以上とのエーテル化によって得られるポリエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエステル化によって得られるジエポキシ化合物等のエポキシ化合物;などが挙げられる。
水系アミノ化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のアミノ基を有する化合物であればよい。水系アミノ化合物の例を挙げると、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタール酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、グリコリック酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、メラミン樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂などが挙げられる。
水系イソシアネート化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上の非ブロック型のイソシアネート基若しくはブロック型のイソシアネート基を有する化合物であればよい。非ブロック型のイソシアネート化合物としては、例えば、多官能イソシアネート化合物と一価又は多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールとを反応させて得られる化合物が挙げられる。ブロック型イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TDI)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、2,4,−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、およびこれらのイソシアヌレート変性体、アダクト変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、並びに、これらの重合体で1個以上のイソシアネート基を有するものをポリオキシアルキレン基、カルボキシル基等で変性し、水溶性およびまたは水分散性にし、イソシアネート基をブロック剤(フェノール、ε−カプロラクタムなど)でマスクすることにより得られる化合物などが挙げられる。
水系カルボジイミド化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のカルボジイミド結合(−N=C=N−)を有する化合物であればよい。2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物は、例えば、2分子以上のポリイソシアネートとカルボジイミド化触媒とを用いて、2個のイソシアネート基を脱炭酸反応させてカルボジイミド結合を形成させる方法によって得ることができる。2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物を作製する際に使用されるポリイソシアネートおよびカルボジイミド化触媒は特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。
水系オキサゾリン化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のオキサゾリン基を有する化合物であればよい。
架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
易接着層が水系ウレタン樹脂で形成されている場合、架橋剤の量は、ポリウレタン100重量部に対して、固形分で、通常1重量部以上、好ましくは5重量部以上であり、通常70重量部以下、好ましくは65重量部以下である。このような配合にすることにより、易接着層の強度と、水系ウレタン樹脂の水分散体の安定性を両立できることが可能となる。
さらに、易接着層には、必要に応じて、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、架橋剤などを含ませてもよい。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
易接着層の厚みは、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上が特に好ましく、また、5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下が特に好ましい。前記範囲内にあると、基材フィルム層と易接着層との十分な接着強度が得られ、かつ、光学フィルム100の反りなどの欠陥を無くすことができる。
基材フィルム層の厚みt1と易接着層の厚みt2との比t2/t1は、0.0003以上が好ましく、0.0010以上がより好ましく、0.0025以上が特に好ましく、また、0.0100以下が好ましく、0.0080以下がより好ましく、0.0050以下が特に好ましい。これにより、光学フィルム100の高い透明性と高い滑り性との両立が可能となる。なお、光学フィルム100が基材フィルム層を一層だけ備える場合には当該基材フィルム層の厚みが厚みt1となり、光学フィルム100が基材フィルム層を二層以上備える場合にはそれらの基材フィルム層の厚みの合計が厚みt1となる。また、光学フィルム100が易接着層を一層だけ備える場合には当該易接着層の厚みが厚みt2となり、光学フィルム100が易接着層を二層以上備える場合にはそれらの易接着層の厚みの合計が厚みt2となる。
易接着層は、厚み20μmにおける鉛筆硬度がH以上であることが好ましい。前記範囲にすることにより、光学フィルム100に耐擦傷性を付与することができる。
基材フィルム層と易接着層との界面屈折率差は、0.05以下であることが好ましい。界面屈折率差が前記範囲内にあると、光学フィルム100を光が透過する際の光の損失を抑えることができる。
易接着層の製造方法に制限は無い。水系樹脂により易接着層を形成する場合、通常は、基材フィルム層の他の部材に面する表面に、水系樹脂を含む塗布液を塗布し、塗膜を硬化させることにより、易接着層を得る。例えば、易接着層をウレタン樹脂により形成する場合は、基材フィルム層の表面に、水系ウレタン樹脂の水分散体を直接に塗布することにより、易接着層としてのウレタン樹脂層を形成してもよい。水系ウレタン樹脂の水分散体は、水系ウレタン樹脂が水に分散された液状の組成物であり、例えば、エマルション、コロイド分散系、水溶液などの形態としてもよい。
水系ウレタン樹脂の水分散体には、水溶性の溶剤が含まれていてもよい。水溶性の溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
水系ウレタン樹脂の水分散体に分散する水系ウレタン樹脂の粒子の粒径は、光学フィルム100の光学特性の観点から、0.01μm〜0.4μmであることが好ましい。水系ウレタン樹脂粒子の粒径は、動的光散乱法により測定することができ、例えば、大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−8000シリーズにより測定することができる。
水系ウレタン樹脂の水分散体の粘度は、15mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であるのが特に好ましい。水系ウレタン樹脂の分散体の粘度が前記範囲内にあると、基材フィルム層の表面に水系ウレタン樹脂の水分散体を均一に塗布することができる。水系ウレタン樹脂の水分散体の粘度は、音叉型振動式粘度計により25℃の条件下で測定した値である。水系ウレタン樹脂の水分散体中の水系ウレタン樹脂の割合及び水系ウレタン樹脂の粒径などを変化させることにより、水系ウレタン樹脂の水分散体の粘度を調整することができる。
水系樹脂を含む塗布液の塗布方法は特に限定されず、公知の塗布法を採用することができる。具体的な塗布法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
易接着層を設ける前に、易接着層を設ける基材フィルム層の表面に改質処理を施し、基材フィルム層と易接着層との密着性をより向上させることが好ましい。基材フィルム層に対する表面改質処理としては、例えば、エネルギー線照射処理及び薬品処理等が挙げられる。エネルギー線照射処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等が挙げられ、処理効率の点等から、コロナ放電処理、プラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。また、薬品処理としては、例えば、ケン化処理、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸等の酸化剤水溶液中に浸漬し、その後、水で洗浄する方法が挙げられる。
易接着層の表面には、親水化表面処理を施すことが好ましい。易接着層の表面は、通常は光学フィルム100を他の部材と貼り合わせる際の貼り合せ面となるので、この面の親水性を更に向上させることにより、光学フィルム100と他の部材との接着性を顕著に向上させることができる。
易接着層に対する親水性表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、ケン化処理、紫外線照射処理などが挙げられる。中でも、処理効率の点などからコロナ放電処理及び大気圧プラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。プラズマ処理としては、大気圧プラズマ処理が好ましい。
親水化表面処理より、易接着層の表面の平均水接触角を、好ましくは70°以下、より好ましくは60°以下、特に好ましくは50°以下であり、通常20°以上にすることが望ましい。また、水接触角の標準偏差は、好ましくは0.01°〜5°である。易接着層の表面をこのような水接触角となるように表面改質処理することにより、光学フィルム100を偏光子等の他の部材と強固に接着できる。
前記の水接触角は、接触角計を用いてθ/2法により求める。平均水接触角は、例えば、親水化表面処理を施した易接着層の表面において、100cm2の範囲内で無作為に選んだ20点の水接触角を測定し、この測定値の加算平均により算出される。水接触角の標準偏差は、この測定値から算出される。親水化処理を行うことにより、易接着層の表面に、例えばヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、スルホン酸基などの官能基を導入することができる。
コロナ放電処理は、電極の構造として、ワイヤー電極、平面電極、ロール電極のものが好適である。放電を均一にするために、処理対象のフィルムと電極との間に誘電体を挟んで処理を実施することが好ましい。
電極の材質としては、例えば、鉄、銅、アルミ、ステンレスなどの金属が挙げられる。
電極形状としては、例えば、薄板状、ナイフエッジ状、ブラシ状などが挙げられる。
誘電体としては、比誘電率が10以上のものを使用し、両極の電極をそれぞれ誘電体で挟んだ構造が好ましい。誘電体の材質としては、例えば、セラミック;シリコンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック;ガラス;石英;二酸化珪素;酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンなどの金属酸化物;チタン酸バリウム等の化合物;などが挙げられる。特に、比誘電率10以上(25℃環境下)の固体誘電体を介在させておくことが、低電圧で高速にコロナ放電処理を行えるという点で有利である。上記比誘電率10以上の固体誘電体としては、例えば、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンなどの金属酸化物;チタン酸バリウムなどの酸化物;シリコンゴムなどが挙げられる。なお、誘電体の厚さは0.3mm〜1.5mmの範囲が好ましい。誘電体の厚さが薄すぎると絶縁破壊を起こし易く、厚すぎると印加電圧を高くすることになるため、効率が悪くなる可能性がある。
処理対象のフィルムと電極との間隔は、0.5mm〜10mmであることが好ましい。0.5mm未満では厚みの薄いフィルムしか電極間を通せなくなる。このため、例えば継ぎ目等の厚みが厚い部分がある場合などには、フィルムの厚みが厚い部分が電極間を通過する際に電極に当たり、フィルムが傷つく場合がある。また、10mmを超えると印加電圧が高くなるので、電源が大きくなり放電がストリーマ状になる可能性がある。
コロナ放電処理の出力は、処理対象面のダメージをできるだけ少なく処理する条件が好ましく、具体的には、好ましくは0.02kW以上、より好ましくは0.04kW以上であり、好ましくは5kW以下、より好ましくは2kW以下である。また、この範囲内で、可能な限り低出力で、数回コロナ放電処理を施すことが、好ましいコロナ放電処理方法である。
コロナ放電処理の密度は、基材フィルム層のコロナ放電処理を施された面の平均水接触角が、通常20°〜70°、より好ましくは20°〜50°であり、また、水接触角の標準偏差を0.01°〜5°の範囲内にすることができるように調整することが好適である。具体的には、コロナ放電処理の密度は、好ましくは1W・min/m2以上、より好ましくは5W・min/m2以上、特に好ましくは10W・min/m2以上であり、好ましくは1000W・min/m2以下、より好ましくは500W・min/m2以下、特に好ましくは300W・min/m2以下である。処理密度が低過ぎる場合は、水系樹脂を含む塗布液の塗布性が低下しやすい。また、処理密度が高過ぎる場合は、処理された表面が破壊され、密着性が低下しやすい。
コロナ放電処理の周波数は、好ましくは5kHz以上、より好ましくは10kHz以上であり、好ましくは100kHz以下、より好ましくは50kHz以下である。周波数が低下し過ぎるとコロナ放電処理の均一性が劣化し、コロナ放電処理のムラが生じるおそれがある。また、周波数が大きくなり過ぎると、高出力のコロナ放電処理を行う場合には特に問題ないが、低出力のコロナ放電処理を実施する場合に安定した処理を行うことが難しくなり、その結果、処理ムラが発生するおそれがある。
コロナ放電処理は電極周辺をケーシングで囲い、ケーシングの内部に不活性ガスを入れ、電極部にガスをかけるようにすると、放電をより細かい状態で発生させることができる。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素等が挙げられる。なお、不活性ガスは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
親水化表面処理としてプラズマ処理を行う場合、プラズマ放電処理としては、例えば、グロー放電処理、フレームプラズマ処理などが挙げられる。グロー放電としては、真空下で行う真空グロー放電処理、大気圧下で行う大気圧グロー放電処理のいずれも用いることができる。中でも、生産性の観点から、大気圧下で行う大気圧グロー放電処理が好ましい。なお、大気圧とは、700〜780Torrの範囲である。
グロー放電処理は、相対する電極の間に処理対象のフィルムを置き、装置中にプラズマ励起性気体を導入し、電極間に高周波電圧を印加することにより、該気体をプラズマ励起させ、電極間においてグロー放電を行うものである。これにより、易接着層の表面が処理されて、易接着層の表面の親水性がより高められる。
プラズマ励起性気体とは、上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいう。プラズマ励起性気体としては、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガス;窒素;二酸化炭素;テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物;アルゴン、ネオンなどの不活性ガスに、カルボキシル基、水酸基、カルボニル基などの極性官能基を付与し得る反応性ガスを加えたもの;などが挙げられる。なお、プラズマ励起性気体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
プラズマ処理における高周波電圧の周波数は、1kHz〜100kHzの範囲が好ましく、電圧の大きさは、電極に印加した時の電界強度が1kV/cm〜100kV/cmとなる範囲になるようにすることが好ましい。
易接着層に対する親水化表面処理としてケン化処理を行う場合、ケン化処理としては、アルカリケン化処理が好適である。処理方法としては、例えば浸漬法、アルカリ液塗布法等が挙げられるが、生産性の観点から、浸漬法が好ましい。
ケン化処理における浸漬法は、アルカリ液の中に処理対象のフィルムを適切な条件で浸漬し、そのフィルムの全表面のアルカリと反応性を有する全ての面をケン化処理する手法であり、特別な設備を必要としないため、コストの観点で好ましい。アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。アルカリ液の濃度は、好ましくは0.5mol/l以上、より好ましくは1mol/l以上であり、好ましくは3mol/l以下、より好ましくは2mol/l以下である。アルカリ液の液温は、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上であり、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である。易接着層の表面の平均水接触角及び水接触角の標準偏差を上述した範囲に設定するためには、浸漬時間などを適宜調整すればよい。
アルカリ液に浸漬した後は、光学フィルム100にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
易接着層の表面に対する親水化表面処理として、紫外線照射装置により紫外線照射を行ってもよい。紫外線照射装置により照射する紫外線は、通常100nm〜400nmの波長を持つものであればよい。ランプの出力値は、通常120W以上、好ましくは160W以上であり、通常240W以下、好ましくは200W以下である。紫外線の照射量は、紫外線照射対象物に対して、紫外線の積算光量の総量で表記すると、好ましくは100mJ/cm2以上、更に好ましくは、200mJ/cm2以上、特に好ましくは300mJ/cm2以上であり、好ましくは2,000mJ/cm2以下、更に好ましくは1,500mJ/cm2以下、特に好ましくは1,000mJ/cm2以下である。積算光量の総量は、紫外線照射ランプの照度とライン速度(フィルムの移動速度)によって決まる値であり、例えば、紫外線積算照度計(アイグラフィック社製:EYEUV METER UVPF−A1)で測定する。
光学フィルム100にエンボス構造130を形成する方法に制限は無いが、通常は、レーザー光の照射によりエンボス構造130を形成する。長尺の光学フィルム100の両端部110,120にレーザー光を照射すれば、光学フィルム100の少なくとも一方の面にエンボス構造130を形成して、エンボス構造130を有する光学フィルム100を製造することができる。
レーザー光によりエンボス構造130を形成するようにすれば、厚みの薄い光学フィルム100においても、エンボス構造130の形成時の光学フィルム100の破断を防止することができる。また、光学フィルム100を屈曲させても、エンボス領域110,120で破断が生じ難い。これは、例えば一対のエンボスロール間に挟み込んでエンボス構造130を形成する場合と比べ、レーザー光でエンボス構造130を形成するようにすれば光学フィルム100に対し不要な押圧が加わらず、光学フィルム100に残留応力が残りにくいことに起因すると推察される。
図6は、本発明の一実施形態に係る光学フィルム100の製造方法を説明する模式的な図である。図6に示すように、エンボス構造130を形成する工程においては、矢印X1で示すように光学フィルム100を長尺方向MDに連続的に搬送しながら、レーザー光照射装置200から光学フィルム100にレーザー光300を断続的に照射する。レーザー光300が光学フィルム100の表面101に照射されると、その表面101のレーザー光300が照射された領域において局所的に熱溶融又はアブレーションを生じ、エンボス構造130が形成される。したがって、レーザー光300を照射する領域の位置及び寸法、並びにレーザー光300の強度などを制御することにより、エンボス構造130の位置及び寸法を調整できる。また、エンボスロールではなくレーザー光の照射によりエンボス構造130を形成するようにすれば、光学フィルム100に対し摩耗及び汚染を発生させることなくエンボス構造130を形成できる。
図7〜図10は、本発明の一実施形態に係る光学フィルム100の製造方法を説明する図であって、エンボス構造130を形成する際の光学フィルム100の表面101の一部を厚み方向から見た様子を拡大して模式的に示す図である。図7〜図10に示すように、光学フィルム100にエンボス構造130を形成する際、レーザー光300(図6参照)の照射は、レーザー光300が光学フィルム100に当たる点(以下、適宜「レーザー光照射点」という。)310が直線状の軌跡を描くように行うことが好ましい。なお、図7及び図8において、レーザー光照射点310には斜線を付して示す。
図7に示すように、光学フィルム100の表面101にレーザー光300を照射すると、レーザー光照射点310において光学フィルム100が局所的に熱溶融又はアブレーションを生じる。このため、レーザー光照射点310では窪みが形成され、この窪みはエンボス構造130の央部133となる。また、レーザー光300の照射により熱溶融した光学フィルム100の材料の一部又は全部が流動化することにより、レーザー光照射点310の周囲には突出部が形成され、この突出部はエンボス構造130の周部132となる。
エンボス構造を楕円形とする方法に制限はないが、図8に示すように、レーザー光300を照射する間に、レーザー光照射点310を、図9に示すような直線状の軌跡320を描くように移動させることが好ましい。レーザー光照射点310を直線状の軌跡320を描くように移動させることで、レーザー光照射点310が描く軌跡に沿って光学フィルム100の表面101に窪みが形成され、また、当該窪みの周囲には突出部が形成される。その後、図10に示すように、レーザー光300の照射が止まると、レーザー光照射点310が描いた直線状の軌跡と平行な長軸を有する楕円形のエンボス構造130が、光学フィルム100の表面101に形成される。
このように、レーザー光照射点310が直線状の軌跡を描くようにレーザー光300の照射を行うと、厚み方向から見て楕円形のエンボス構造130を容易に製造することができる。
なお、レーザー光照射点310を移動させる際、光学フィルム100の搬送によりレーザー光照射点310を相対的に移動させるようにしてもよいが、例えばレーザー光照射装置200の移動又は照射角度の揺動等により、レーザー光照射点310を移動させるようにすることが好ましい。後者のようにレーザー光照射点310を移動させる場合、通常はレーザー光照射点310の移動速度は光学フィルム100の搬送速度よりも遥かに速いので、軌跡の形状及び寸法等を調整する場合には、光学フィルム100の搬送速度の影響は実質的に無視できる。
レーザー光300を照射する時間は、好ましくは0.001ms以上、より好ましくは0.005ms以上、さらに好ましくは0.01ms以上であり、好ましくは0.5ms以下、より好ましくは0.3ms以下、さらに好ましくは0.1ms以下である。また、レーザー光照射点310を移動させる速度は、好ましくは5000mm/s以上、より好ましくは8000mm/s以上、さらに好ましくは9000mm/s以上であり、好ましくは15000mm/s以下、より好ましくは14000mm/s以下、さらに好ましくは13000mm/s以下である。レーザー光300の照射時間とレーザー照射点310の移動速度をこの範囲とすることで、楕円形の長軸径r1、短軸径r2およびこれらの比r1/r2が前記範囲にあるエンボス構造130を容易に形成することができる。
レーザー光300としては、例えば、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザー、YAGレーザーの第3高調波若しくは第4高調波、YLF若しくはYVO4の固体レーザーの第3高調波若しくは第4高調波、Ti:Sレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、炭酸ガスレーザー等を使用してもよい。これらのレーザー光の中でも、高出力による生産性向上の観点から、炭酸ガスレーザーが好ましい。
レーザー光の出力は、好ましくは1W以上、より好ましくは5W以上、さらに好ましくは15W以上であり、好ましくは30W以下、より好ましくは25W以下である。レーザー光の出力を前記範囲の下限値以上にすることにより、レーザー光の照射量が不足するのを防止して、光学フィルム100の表面101に対してエンボス構造130を安定して形成することができるとともに、エンボス構造130の周部132の高さを容易に不均一にできる。また、レーザー光の出力を前記範囲の上限値以下にすることにより、光学フィルム100に貫通孔が生じるのを防止でき、また、レーザー光照射点310の周辺の広い領域への熱的影響を抑制し、エンボス構造130が意図せず拡大するなどして、所望のエンボス構造130が得られなくなることを防止できる。
レーザー光照射点310の直径(即ち、レーザー光の集光径)は、エンボス構造130の央部133の寸法に応じて設定すればよい。通常、レーザー光照射点310の直径は、エンボス構造130の短軸径r2よりも小さくなるようにする。具体的には、通常100μm以上、好ましくは200μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは300μm以下である。
光学フィルム100が基材フィルム層及び易接着層を備える場合、レーザー光300の照射は、易接着層側の面から行うことが好ましい。したがって、例えば、光学フィルム100が1層の基材フィルム層と1層の易接着層とからなる場合、易接着層側の表面にレーザー光300を照射することが好ましい。また、例えば、光学フィルム100が第一の易接着層、基材フィルム層及び第二の易接着層をこの順に備える場合、レーザー光300は、第一の易接着層の表面に照射しても好ましく、第二の易接着層の表面に照射しても好ましい。これにより、巻回時に起こる光学フィルム100同士の密着を抑制することができる。
光学フィルム100は、ロール状に巻回することにより、光学フィルムロールにできる。巻回に際しては、必要に応じて適切な巻き芯を用いてもよい。本実施形態に係る光学フィルム100は、上述したようなエンボス構造130を有するため、巻回時の取り扱い性が良好であり、また、光学フィルムロールとした場合でもゲージバンド及びスクラッチを生じ難い。さらに、通常は、巻きずれ及びクラックを生じることも防止できる。
光学フィルムロールの巻回数に制限は無いが、通常40回以上、好ましくは60回以上であり、通常27000回以下、好ましくは13000回以下である。
また、光学フィルムロールの外径に制限はないが、通常160mm以上、好ましくは190mm以上であり、通常2300mm以下、好ましくは1200mm以下である。
光学フィルム100の巻回速度に制限はないが、巻回速度が速すぎると空気の巻き込みを生じやすくなり、また巻回速度が遅すぎると製造効率が低下するため、通常5m/分以上、好ましくは10m/分以上であり、通常150m/分以下、好ましくは100m/分以下、より好ましくは80m/分以下である。
本実施形態の光学フィルム100は、例えば、位相差フィルム、偏光板の保護フィルム、偏光フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、集光フィルム、反射フィルム等に好ましく適用できる。偏光板の保護フィルムとして光学フィルム100を用いる場合、例えば、偏光子の片面又は両面に光学フィルム100を設ければよい。
以上、本発明の一実施形態について詳細に説明したが、上述した実施形態は更に変更してもよい。
例えば、エンボス構造130は、上述した実施形態のように光学フィルム100の片面101のみに設けてもよいが、光学フィルム100の両面に設けてもよい。
また、例えば、エンボス領域110,120は、上述した実施形態のように光学フィルム100の縁の直ぐ内側に設けてもよいが、光学フィルム100の縁から所定の距離だけ離間した位置に形成してもよい。
また、例えば、エンボス構造130は、光学フィルム100の幅方向TDの両端部110,120以外の位置にも形成してもよい。例えば、光学フィルム100の長さ方向端部にエンボス構造130を形成すると、光学フィルムロールから光学フィルム100を引き出す際の取り扱い性が良好になる。
また、上述した実施形態ではエンボス構造130の幅方向TDの位置、寸法、形状などは、光学フィルム100の長尺方向MDにおいて一定にしたが、例えば、エンボス構造130の幅方向TDの位置、寸法、形状などを、光学フィルム100の長尺方向MDにおいて不均一にしてもよい。
また、上述した実施形態ではエンボス領域110,120を光学フィルム100の長尺方向MDにおいて連続的に形成したが、例えば、本発明の効果を著しく損なわない限り、エンボス領域は光学フィルム100の長尺方向MDにおいて断続的(間欠的)に形成してもよい。
さらに、上述した実施形態ではエンボス構造130を厚み方向から見た楕円形の長軸が長尺方向MDに平行になるようにしたが、例えば、前記の楕円形の長軸が長尺方向MDに交差するようにしてもよい。このようなエンボス構造は、例えば、幅方向TD、又は長尺方向MD及び幅方向TDに交差する方向にレーザー光照射点を移動させるようにしながら光学フィルム100にレーザー光300を照射することにより、形成できる。この際、レーザー光の走査方法としては、例えば、ガルバノスキャンまたはX−Yステージスキャンを用いた方法、マスクイメージング方式による方法などを用いてもよい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。また、以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、特に断れない限り重量基準である。さらに、以下の説明において温度及び圧力について特に断らない限り、操作は常温常圧の環境において行った。
[実施例1]
〔基材フィルム層の製造〕
脂環式構造含有重合体樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR1430」;ガラス転移温度135℃)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥した後、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用し、溶融樹脂温度270℃、Tダイの幅1500mmの成形条件で、厚さ20μm、幅1200mm、長さ4000mの基材フィルム層を製造した。
〔易接着層の製造〕
温度計、攪拌機、窒素導入管および冷却管を備えた2000mlの四つ口フラスコに、ポリエステルポリオールであるマキシモールFSK−2000(川崎化成工業社製、水酸基価56mgKOH/g)840gと、多価イソシアネート成分であるトリレンジイソシアネート119gと、溶媒であるメチルエチルケトン200gとを入れ、窒素を導入しながら75℃で1時間反応させた。反応終了後、60℃まで冷却し、酸構造を導入するためにジメチロールプロピオン酸35.6gを加え、75℃で反応させて、イソシアネート基(−NCO基)の含有量が0.5%の酸構造含有水系ウレタン樹脂溶液を得た。次いで、この酸構造含有水系ウレタン樹脂溶液を40℃にまで冷却し、水1500gと、中和剤である水酸化ナトリウム10.6gとを加え、ホモミキサーで高速撹拌することにより乳化を行った。この乳化液から加熱減圧下によりメチルエチルケトンを留去した後、シリカビーズ(日本アエロジル社製「アエロジル130」;平均粒子径16nm)99.5gを加え攪拌し、さらに固形分濃度が10%になるように水を加えて中和処理し、水系ウレタン樹脂の水分散体を得た。
基材フィルム層の片面に、上記ウレタン樹脂の水分散体をリバースロール法で、乾燥後の膜厚が100nmになるように塗布した後、90℃にて乾燥した。これにより、基材フィルム層の片面に易接着層を形成して、基材フィルム層及び易接着層を備える光学フィルムとして複層フィルムを得た。
この複層フィルムを長尺方向に13m/分の速度で搬送しながら、複層フィルムの幅方向の左右両端部にレーザー光を照射した。レーザー光の照射装置としては、CO2レーザー光照射装置(MLZ9510 キーエンス社製、レーザー波長10.6μm)を用いた。また、レーザー光の照射は、照射強度20Wで、複層フィルムの長尺方向に10000m/sの速度でレーザー光照射点を移動させながら、易接着層側の面から行った。一回当たりのレーザー光の照射時間及びレーザー光が光学フィルムに当たる点の大きさを調整することにより、レーザー光が光学フィルムに当たる点の軌跡は、長さ350μm、幅200μmの、長尺方向に沿った直線状となるようにした。さらに、レーザー光の照射は、長尺方向では3.8mm間隔で複層フィルムの長尺方向全長にわたって行い、また、幅方向では1.6mm間隔で3列に行った。これにより、複層フィルムの易接着層の表面のレーザー光が照射された部分に、エンボス構造が形成された。
こうして得られたエンボス構造を有する複層フィルムを、直径6インチの巻き芯(コア)を中心にして、張力100Nにて長尺方向に3600m巻き取り、フィルムロールを得た。
〔動摩擦係数の測定〕
得られたエンボス構造を有する複層フィルムの易接着層側表面の有効領域(エンボス構造が形成されていない領域)の動摩擦係数を測定した。測定は、JIS K7125に則って、親東科学社製の表面性測定器「Type32」を用いて、速度500mm/minの速度で行った。
〔エンボス構造の楕円形状の長軸径と短軸径の測定〕
キーエンス社製の超深度顕微鏡「VK−1500」を用いて、エンボス構造の楕円形状の長軸径と短軸径の測定を実施した。各値は20個のエンボス構造の楕円形状を測定した値の平均値とした。
〔エンボス構造の周部の高さの測定〕
20個のエンボス構造につき、キーエンス社製の超深度顕微鏡「VK−9500」を用いて周部の高さを測定した。測定は1個のエンボス構造につき、当該エンボス構造の楕円形の長軸、短軸並びに前記長軸及び短軸と45°の角度をなす2本の直線が前記周部と交差する8箇所の領域で行い、その8箇所の測定値の平均値を周部の平均高さとした。また、前記の8箇所の測定値の内、最高の領域における高さをN1、最低の領域における高さをN2として、N1/N2を求めた。
〔ヘイズの測定〕
日本電色工業社製の濁度計「NDH2000」を用いて、複層フィルムの有効領域のヘイズを測定した。
〔スクラッチの評価〕
フィルムロールから複層フィルムを1500m繰出した後、長尺方向に1mの長さで複層フィルムを切り出し、長さ0.5mm以上の引っ掻き傷(スクラッチ)の有無を目視にて観察した。スクラッチの数が0個であるものをA、1〜3個であるものをB、4個以上であるものをCと評価した。
〔ゲージバンドの評価〕
フィルムロールの形状を触診し、ゲージバンドに起因する凹凸の有無を評価した。凹凸がないものをA、1〜2本のものをB、3本以上のものをCとして評価した。
〔クラックの評価〕
エンボス部をオリンパス株式会社製光学顕微鏡「BX51」を用いて観察し、エンボス部10個あたりのクラックの個数が0個のものをA、平均1〜2個のものをB、平均3個以上のものをCとして、クラックを評価した。
[実施例2]
シリカビーズとして日本アエロジル社製「アエロジルOX50」(平均粒子径50nm)49.8g用いたこと以外は実施例1と同様にして、基材フィルム層及び易接着層を備える複層フィルムを得た。
この複層フィルムに、レーザー光の照射強度を23Wとしたこと以外は実施例1と同様にして、エンボス構造を有する複層フィルムを製造し、これを巻き取ってフィルムロールを得た。得られたフィルムロールを用いて、実施例1と同様の評価を行った。
[実施例3]
レーザー光を照射する際、レーザー光が光学フィルムに当たる点の軌跡を長さ250μm、幅150μmの直線状となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、エンボス構造を有する複層フィルムを製造し、これを巻き取ってフィルムロールを得た。得られたフィルムロールを用いて、実施例1と同様の評価を行った。
[実施例4]
レーザー光を照射する際、レーザー光が光学フィルムに当たる点の軌跡を長さ400μm、幅150μmの直線状となるようにしたこと、長尺方向でのレーザー光の照射を4.8mm間隔で行うようにしたこと、並びに、幅方向でのレーザー光の照射を2.6mm間隔で3列に行うようにしたこと以外は実施例1と同様にして、エンボス構造を有する複層フィルムを製造し、これを巻き取ってフィルムロールを得た。得られたフィルムロールを用いて、実施例1と同様の評価を行った。
[実施例5]
シリカビーズとしてシリカビーズの水分散体である日産化学社製「スノーテックスMP−2040」(平均粒子径200nm、固形分濃度35%)を248.8g用いたこと以外は実施例1と同様にして、エンボス構造を有する複層フィルムを製造し、これを巻き取ってフィルムロールを得た。得られたフィルムロールを用いて、実施例1と同様の評価を行った。
[実施例6]
レーザー光の照射強度を12Wとしたこと以外は実施例1と同様にして、エンボス構造を有する複層フィルムを製造し、これを巻き取ってフィルムロールを得た。得られたフィルムロールを用いて、実施例1と同様の評価を行った。
[比較例1]
レーザー光を照射させるときにレーザー光が光学フィルムに当たる点の軌跡を長さ300μm、幅300μmの点状となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、エンボス構造を有する複層フィルムを製造し、これを巻き取ってフィルムロールを得た。得られたフィルムロールを用いて、実施例1と同様の評価を行った。
[比較例2]
レーザー光の照射を行わず、したがってエンボス構造を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして複層フィルムを製造し、これを巻き取ってフィルムロールを得た。得られたフィルムロールを用いて、実施例1と同様の評価を行った。
[検討]
実施例1〜6では、厚み方向から見て楕円形のエンボス構造が形成された。また、このエンボス構造の周部は、エンボス構造の周囲の光学フィルム表面よりも突出して形成されていた。さらに、エンボス構造の央部は、エンボス構造の周囲の光学フィルム表面よりも窪んで形成されていた。このようなエンボス構造を有する実施例1〜6では、スクラッチ及びゲージバンドがいずれも生じていなかった。これに対し、厚み方向から見て円形のエンボス構造を有する比較例1の複層フィルムでは、スクラッチ及びゲージバンドが生じていた。したがって、厚み方向から見たエンボス構造の形状を楕円形にすることにより、スクラッチ及びゲージバンドが抑制されたことが確認された。
また、実施例1〜5ではクラックが生じていないのに対し、N1/N2が小さい実施例6ではクラックが生じていることから、クラックを防止する観点からは、エンボス構造の周部の高さを当該エンボス構造内において不均一にすることが好ましいとことが確認された。
さらに、易接着層に含まれる微粒子の粒径が大きい実施例5では、実施例1〜4,6よりもヘイズが高くなっていることから、ヘイズを小さくする観点からは微粒子の粒径を所定値以下に小さくすることが好ましいことが確認された。