JP7221695B2 - フィルム、それを用いた成型転写箔、フィルムロール、及びフィルムの製造方法 - Google Patents

フィルム、それを用いた成型転写箔、フィルムロール、及びフィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フィルム、それを用いた成型転写箔、フィルムロール、及びフィルムの製造方法に関する。
近年、環境意識の高まりにより、建材、自動車部品や携帯電話、電機製品などで、溶剤レス塗装、メッキ代替などの要望が高まり、フィルムを使用した加飾方法の導入が進んでいる。三次元形状基材を加飾する方法として、熱可塑性樹脂フィルムに意匠層を積層し、成型と同時に基材に転写させる方法が知られている。また、そのような加飾方法に対し、ポリオレフィン系樹脂を含むフィルムの提案もなされている。しかしながら、ポリオレフィン系樹脂を含むフィルムを加飾用途に適用しようとすると表面外観の品位に欠けるため、改善し実用化するために各種の試みがなされている。
例えば、特許文献1には、環状オレフィン系樹脂を主成分としたフィルムを適用することにより、表面外観と加工性や深絞成型性を両立する設計が開示されている。さらに、特許文献2には、フィルムにナーリング加工を施すことで、フィルムの製造及び加工工程での巻き取り性と成型転写面の平滑性を両立する設計が開示されている。
特開2013-071419号公報 国際公開2014/103988
しかしながら、前述の特許文献1に記載の技術では、加工工程において、特にフィルムのコーティング、ラミネート、印刷、及び蒸着等を実施する際に、外観品位と加工性に関して十分に考慮されている設計ではなかった。一方、特許文献2に記載の技術では、加工工程において、特にフィルムのコーティング、ラミネート、印刷、及び蒸着等を実施する際に、幅方向両端部における歪みが生じる問題があり、フィルムの搬送性や加工性、外観品位を十分に満足する設計ではなかった。
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、フィルムの製造及び加工工程での搬送性と加工性に優れ、かつ高い外観品位と成型性を備えるフィルム、及び該フィルムを用いた成型転写箔、該フィルムが巻かれたフィルムロール、及び該フィルムの製造方法を提供することをその課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、次によって解決することを見出し、本発明に至ったものである。すなわち、本発明のフィルムは以下である。
(1) 環状オレフィン系樹脂を主成分とするフィルムであって、幅方向両端部における歪みが0.3mm以上2.0mm以下であり、幅方向両側において、幅方向端部からの距離が1mm以上100mm以下の領域内に、長手方向に連続したナーリング部を有し、前記ナーリング部における凸部の高さが、幅方向両側共にフィルム厚みの10%以上20%未満であることを特徴とするフィルム。
(2) 前記ナーリング部における凹部の長径が、幅方向両側共に0.1mm以上2.0mm未満である、(1)に記載のフィルム。
(3) 前記ナーリング部における凹部の面積をXmm、前記凸部の面積をYmmとしたときに、X/Yが0.5以上10以下であることを特徴とする、(1)または(2)に記載のフィルム。
(4) 前記フィルムが、成型用フィルムである、(1)~(3)のいずれかに記載のフィルム。
(5) 前記成型用フィルムが、成型転写箔用フィルムである、(4)に記載のフィルム。
(6) (1)~(5)のいずれかに記載のフィルム、意匠層及び接着層がこの順に位置することを特徴とする成型転写箔。
(7) 前記フィルムと前記意匠層との間に、保護層が位置する、(6)に記載の成型転写箔。
(8) (1)~(5)のいずれかに記載のフィルムがコアに巻かれた構成を有することを特徴とするフィルムロール。
(9) (1)~(5)のいずれかに記載のフィルムの製造方法であって、フィルム厚みの75%以上95%以下の間隔で設置された平滑ロールと刻印ロールとの間を通過させてナーリング部を形成させるナーリング工程を有することを特徴とするフィルムの製造方法。
(10) 前記刻印ロールの温度が190℃以上250℃以下である、(9)に記載のフィルムの製造方法。
本発明により、フィルムの製造及び加工工程での搬送性と加工性に優れ、かつ高い外観品位と成型性を備えるフィルム、及び該フィルムを用いた成型転写箔、該フィルムが巻かれたフィルムロール、及び該フィルムの製造方法を提供することができる。
本発明のフィルム及び成型転写箔を用いることにより、真空成型、圧空成型、及びプレス成型といった各種成型方法において成型加飾後の成型部材(以下、製品部材ということがある。)に高い意匠性を付与することができる。そのため、本発明のフィルム及び成型転写箔は、例えば、建材、自動車部品や携帯電話、電機製品、遊技機部品などの成型部材の加飾に好適に用いることができる。
本発明のフィルムの一実施態様に係る、ナーリング部の概略上面図である。 長手方向に連続したナーリング部の例を表す概略上面図である。 本発明のフィルムの一実施態様に係る、ナーリング部の概略上面図(A)、及び厚み方向と平行な面で切断したときの概略端面図(B)である。
本発明のフィルムは、環状オレフィン系樹脂を主成分とするフィルムであって、幅方向両端部における歪みが0.3mm以上2.0mm以下であり、幅方向両側において、幅方向端部からの距離が1mm以上100mm以下の領域内に、長手方向に連続したナーリング部を有し、前記ナーリング部における凸部の高さが、幅方向両側共にフィルム厚みの10%以上20%未満であることを特徴とする。
本発明のフィルムは、生産性、加工工程の加工性、及び成型性を両立させる観点から、環状オレフィン系樹脂を主成分とすることが重要である。本発明において、環状オレフィン系樹脂とは、ポリマーの主鎖に脂環構造を有する樹脂であって、重合体100質量%中に環状オレフィンモノマー由来成分を合計で50質量%以上100質量%以下含むものをいう。ここで、環状オレフィンモノマーとは、炭素原子で形成される環状構造を有し、かつ当該環構造中に炭素-炭素二重結合を有する炭化水素化合物をいう。
また、環状オレフィン系樹脂を主成分とするとは、フィルムを構成する全成分を100質量%としたときに、フィルム中に環状オレフィン系樹脂が50質量%より多く100質量%未満含まれることをいう。
環状オレフィンモノマーは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、生産性、フィルムを加飾に用いた場合の表面外観の観点から、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト-2-エン(以下、ノルボルネンということがある。)、シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、及びこれらの誘導体が好ましく用いられ、ノルボルネンがより好ましく用いられる。
本発明における環状オレフィン系樹脂は、上記要件を満たす限り、1種類の環状オレフィンモノマーのみを重合させて得られる樹脂、複数種類の環状オレフィンモノマーを共重合させて得られる樹脂、及び1種類又は複数種類の環状オレフィンモノマーと1種類又は複数種類の鎖状オレフィンモノマーとを共重合させて得られる樹脂のいずれであってもよい。
ここで、鎖状オレフィンモノマーとは、炭素-炭素二重結合を有する炭化水素化合物であって、炭素原子で形成される環状構造を有さないものをいう。なお、環状オレフィンモノマーと鎖状オレフィンモノマーの組み合わせについては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。
環状オレフィン系樹脂は1種類のみを用いても、複数種類を混合して用いてもよい。なお、環状オレフィン系樹脂を複数種類混合して用いる場合、環状オレフィン系樹脂の含有量は、全ての環状オレフィン系樹脂を合計して算出するものとする。
本発明においては、生産性、成型性、及びフィルムを加飾に用いた場合の表面外観の観点から、環状オレフィン系樹脂として、ポリノルボルネン、ポリシクロペンタジエン、ポリシクロヘキサジエン、及びノルボルネンとエチレンの共重合体のうち少なくとも1つ以上を用いることが好ましく、ポリノルボルネン及び/又はノルボルネンとエチレンの共重合体を用いることがより好ましい。
環状オレフィンモノマーのみを重合させた樹脂の製造方法としては、環状オレフィンモノマーの付加重合、あるいは開環重合などの公知の方法を用いることができる。例えば、ノルボルネンを開環メタセシス重合させた後に水素化させる方法や、ノルボルネンを付加重合させる方法によりポリノルボルネンを得ることができる。また、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンを1,2-、1,4-付加重合させた後に水素化させる方法により、ポリシクロペンタジエン、ポリシクロヘキサジエンを得ることができる。
環状オレフィンモノマーと鎖状オレフィンモノマーとを共重合させた樹脂の製造方法としては、環状オレフィンモノマーと鎖状オレフィンモノマーの付加重合などの公知の方法を用いることができる。例えば、ノルボルネンとエチレンを付加重合させる方法により、ノルボルネンとエチレンの共重合体を得ることができる。
また、本発明においては、前述の要件を満たし、かつ本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、粘着性付与剤、ポリシロキサンなどの消胞剤、顔料又は染料などの着色剤を適量含有することができる。
本発明のフィルムは、加工工程の加工性と成型性を両立させる観点から、75℃における貯蔵弾性率が1,000MPa以上3,000MPa以下であり、120℃における貯蔵弾性率が100MPa以下であることが好ましい。貯蔵弾性率とは粘弾性特性を物質の応力とひずみ特性の位相遅れに着目して表現した指標をいう。そして、貯蔵弾性率は公知の動的粘弾性測定装置により測定することが可能であり、詳細な測定条件は後述する。また、75℃における貯蔵弾性率が1,000MPa以上3,000MPa以下であるとは、長手方向及び幅方向の75℃における貯蔵弾性率が、いずれも1,000MPa以上3,000MPa以下であることをいい、以下120℃における貯蔵弾性率も含めて同様に解釈することができる。ここで、長手方向とは、フィルムを製造する際にフィルムが進行する方向をいい、幅方向とは、フィルム面に平行であり、長手方向と直交する方向をいう。
なお、フィルムがロールに巻き取られたものである場合は、長手方向や幅方向を容易に特定することができるが、ロールに巻かれていないシート状のフィルムの場合は、長手方向や幅方向を容易に特定することができない。このような場合においては、任意に選択した一方向について後述の方法によりフィルムの75℃における貯蔵弾性率を測定した後に、フィルムを右に5°回転させて同様の測定を行い、これを180°に達するまで繰り返して最も値が大きい方向を長手方向として扱うものとする。
75℃における貯蔵弾性率を1,000MPa以上とすることにより、コーティング、ラミネート、印刷、及び蒸着等の加工工程における寸法変化を軽減することができる。また、75℃における貯蔵弾性率を3,000MPa以下とすることにより、フィルムの靭性を確保し、フィルムの生産性の低下を軽減することができる。なお、加工工程の加工性において重要な寸法安定性の観点より、75℃における貯蔵弾性率は1,100MPa以上であることがより好ましく、1,200MPa以上であることがさらに好ましい。
フィルムの75℃における貯蔵弾性率を1,000MPa以上3,000MPa以下又は上記の好ましい範囲とする方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、フィルムを積層フィルムとし、フィルムを形成する層のうち、少なくとも一つ以上の層のガラス転移温度を80℃以上とする方法が挙げられる。
層のガラス転移温度は、以下の方法により測定することができる。まず、フィルムより削り出した層サンプルを示差走査熱量計により昇温させ、縦軸を温度、横軸を熱挙動とする波形を記録する。得られた波形より、ガラス状態からゴム状態への転移によりベースラインが下にシフトしている箇所を特定し、その変曲点にて波形に対する接線を引く。この接線とベースラインが交わる箇所の温度が層のガラス転移点となる。なお、ガラス状態からゴム状態への転移が複数観察される場合は、ベースラインのシフト幅の最も大きい転移を基に層のガラス転移温度を求めるものとする。
なお、このような態様とするための手段としては、例えば、層中の環状オレフィン系樹脂の共重合成分の比率を調整する手段や、層中の環状オレフィン系樹脂としてガラス転移温度の異なる複数種の樹脂を用いる手段が挙げられる。これらの手段の具体例について、層中の環状オレフィン系樹脂としてノルボルネンとエチレンの共重合体を使用する場合を例に説明する。
層中の環状オレフィン系樹脂としてノルボルネンとエチレンの共重合体を使用する場合、ポリマー鎖におけるノルボルネン由来成分の比率を高くすることにより、層のガラス転移温度を上昇させることができる。また、ポリマー鎖中のノルボルネン由来成分の比率が異なるノルボルネンとエチレンの共重合体を複数種類混合させるのであれば、ポリマー鎖中のノルボルネン由来成分の比率が高い樹脂の配合比を上げることにより、層のガラス転移温度を上昇させることができる。
また、より容易にフィルムの75℃における貯蔵弾性率を1,000MPa以上3,000MPa以下又は上記の好ましい範囲とする観点から、フィルム全体の厚み比100%に対し、ガラス転移温度が80℃以上である層の合計厚み比を50%以上とすることが好ましい。ここで、「ガラス転移温度が80℃以上の層の合計厚み比」とは、フィルム中にガラス転移温度が80℃以上である層が1つ存在する場合はフィルム全体に占めるその層の厚み比をいい、複数存在する場合はフィルム全体に占める該当する全ての層の合計厚み比をいう。
さらに、フィルムの120℃における貯蔵弾性率が100MPa以下であると、優れた成型性を備えるだけでなく、成型温度も150℃以下と比較的低温に設定できる。そのため、フィルムは金属のような比較的融点の高い部材だけでなく、樹脂のような比較的融点の低い部材の成型にも好適に用いることができるものとなる。
さらに高い成型性が必要な場合は、フィルムの120℃における貯蔵弾性率が50MPa以下であることがより好ましく、20MPa以下であることがさらに好ましく、18MPa以下であることが特に好ましい。また、120℃における貯蔵弾性率の下限は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、フィルムの成型性の観点から0.5MPaあれば十分である。
フィルムの120℃における貯蔵弾性率を100MPa以下又は上記の好ましい範囲とする方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、フィルムを形成する層のうち、少なくとも一つ以上の層のガラス転移温度が120℃以下である態様とする方法が挙げられる。
なお、このような態様とするための手段としては、例えば、層中の環状オレフィン系樹脂の共重合成分の比率を調整する手段や、層中の環状オレフィン系樹脂としてガラス転移温度の異なる複数種の樹脂を用いる手段が挙げられる。これらの手段の具体例について、層中の環状オレフィン系樹脂としてノルボルネンとエチレンの共重合体を使用する場合を例に説明する。
層中の環状オレフィン系樹脂としてノルボルネンとエチレンの共重合体を使用する場合、ポリマー鎖におけるノルボルネン由来成分の比率を低くすることにより、層のガラス転移温度を低下させることができる。また、ポリマー鎖中のノルボルネン由来成分の比率が異なるノルボルネンとエチレンの共重合体を複数種類混合させるのであれば、ポリマー鎖中のノルボルネン由来成分の比率が低い樹脂の配合比を上げることにより、層のガラス転移温度を低下させることができる。
また、より容易にフィルムの120℃における貯蔵弾性率を100MPa以下又は上記の好ましい範囲とする観点から、フィルム全体の厚み比100%に対し、ガラス転移温度が120℃以下である層の合計厚み比を50%以上とすることが好ましい。上記観点から、フィルム全体の厚み比100%に対し、ガラス転移温度が110℃以下である層の合計厚み比を50%以上とすることがより好ましく、ガラス転移温度が100℃以下である層の合計厚み比を50%以上とすることがさらに好ましい。
すなわち、75℃における貯蔵弾性率を1,000MPa以上3,000MPa以下とし、かつ120℃における貯蔵弾性率が100MPa以下とする観点からは、ガラス転移温度が80℃以上120℃以下である層の合計厚み比を50%以上とすることが好ましく、ガラス転移温度が80℃以上110℃以下である層の合計厚み比を50%以上とすることがより好ましく、ガラス転移温度が80℃以上100℃以下である層の合計厚み比を50%以上とすることがさらに好ましい。
本発明のフィルムは、フィルムの平滑性、外観品位、フィルムを加飾に用いた場合の表面外観、及び生産性の観点から、幅方向両端部における歪みが0.3mm以上2.0mm以下であることが重要である。幅方向端部における歪みとは、幅方向端部におけるフィルムの平坦性を表現した指標であり、値が小さいほど平坦であることを意味する。そして、「幅方向両端部における歪みが0.3mm以上2.0mm以下である」とは、幅方向端部における歪みが両側共に0.3mm以上2.0mm以下であることをいう。なお、幅方向端部における歪みの測定は、500mm(長手方向)×1,000mm(幅方向)の大きさのフィルムを水平な実験台の上に置き、ノギスを用いて実験台からのフィルムの高さを測定することにより行うものとし、詳細な測定方法は後述する。
少なくとも片側の幅方向端部における歪みが2.0mmを超えると、成型転写用フィルムとして使用した場合にフィルムの搬送性が著しく低下することにより、シワやフィルム破断が発生し、加工工程の加工性が悪化することがある。シワやフィルム破断の発生を軽減することのみに着目すれば、幅方向両端部における歪みは小さければ小さいほど好ましい。但し、後述のとおり、生産性を維持しつつ、フィルムの平滑性、外観品位、及びフィルムを加飾に用いた場合の表面外観を損なわない観点からは、ナーリング部における凸部の高さをフィルム厚みの10%以上20%未満とすることが重要であり、このような態様とした場合はフィルム幅方向端部における歪みは0.3mm以上となる。
上記観点から、本発明のフィルムは幅方向両端部における歪みが、0.3mm以上1.0mm以下であることが好ましい。また、各幅方向端部における歪みは0.3mm以上2.0mm以下であれば、本発明の効果を損なわない限り等しくても異なっていてもよい。
本発明のフィルムは、フィルムの平滑性、外観品位、フィルムを加飾に用いた場合の表面外観、及び生産性の観点から、幅方向両側において、幅方向端部からの距離が1mm以上100mm以下の領域内に、長手方向に連続したナーリング部を有することが重要である。このような態様とすることにより、前述した幅方向両端部における歪みを0.3mm以上2.0mm以下又は前述の好ましい範囲とすることが容易となり、生産性を損なうことなくフィルムの平滑性、外観品位、フィルムを加飾に用いた場合の表面外観を向上させることができる。
ここで、ナーリング部とは、凹部とその周縁に設けられた凸部で構成される領域をいう(図1参照。)。図1は、本発明のフィルムの一実施態様に係る、ナーリング部の概略上面図である。図1における1はフィルムを、2はナーリング部を、3はナーリング部における凹部を、4はナーリング部における凸部をそれぞれ表す。なお、ナーリング部における凹部及びナーリング部における凸部について、以下、単に凹部、凸部ということがある。
「幅方向端部からの距離が1mm以上100mm以下の領域」とは、一方の幅方向端部からの距離が1mmとなるように長手方向と平行に引いた直線と、該幅方向端部からの距離が100mmとなるように長手方向と平行に引いた直線とで挟まれる領域をいう。長手方向に連続したナーリング部とは、複数のナーリング部が長手方向に連なって帯状になったものをいい、具体例としては、図2の(A)~(D)に示す態様が挙げられるが、これらに限定されるものではない。図2において、2はナーリング部を、5は長手方向を、6は長手方向に連続したナーリング部を有する領域を表す。長手方向に連続したナーリング部を有する領域は、上記観点から、幅方向両側において、幅方向端部からの距離が2mm以上50mm以下の領域であることが好ましい。
このようなナーリング部を形成させる方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、後述のとおり加熱した刻印ロールと平滑ロールの間にフィルムを通す方法が挙げられる。
本発明のフィルムは、加工工程におけるフィルムの巻き取り性向上及びフィルム破断軽減とナーリング部における凸部形成を両立し、さらに転写箔への加工性を確保する観点から、ナーリング部における凹部の長径が、幅方向両側共に0.1mm以上2.0mm未満であることが好ましく、0.2mm以上1.5mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上1.0mm以下であることがさらに好ましい。
以下、ナーリング部について図3を参照しながら説明する。図3は本発明のフィルムの一実施態様に係る、ナーリング部の概略上面図(A)、及び厚み方向概略端面図((B):(A)のI-I’線切断部端面図に相当する。)である。通常、ナーリング部2は加熱した刻印ロールをフィルム1に押し当てることにより形成される。このとき、刻印ロールの突起部分が押し当てられた部分においてフィルム1が軟化して凹部3が形成されると同時に、軟化したフィルムが突起部分の外側に押し出されて凹部3の周囲に凸部4が形成される。この凸部4が形成されることにより、フィルムロールとして巻き取ったときにフィルム同士の接触面積が小さくなり、キズの発生やブロッキングを軽減できる他、両面の表面粗さが異なる場合に粗い面の形状が平滑な面に転写されることも軽減できる。
「ナーリング部における凹部の長径(図3の9)」は、ナーリング部における凸部の外周をフィルム面(図3の8)の高さで観察し、その距離が最大となるように外周上の2つの点を取ったときの該2点間の距離で表すことができる。「ナーリング部における凹部の長径」の測定には、測長機能を備える光干渉型顕微鏡を用いることができる。このような光干渉型顕微鏡としては、例えば、菱化システム社製“VertScan”(登録商標)2.0等が挙げられ、当該光干渉型顕微鏡を用いる場合の測定条件は、観察モード=Forcusモード、フィルター=530nm white、ScanRange=105nmとする。なお、測定に使用できる機器及び条件については、後述する「凹部の面積Xmm」、「凸部の面積Ymm」、及び「ナーリング部における凸部の高さ」においても同様である。
本発明のフィルムにおける「ナーリング部における凹部の長径」は、任意の幅方向端部からの距離が1mm以上100mm以下の領域において、長手方向の長さが1周期分の長さとなるように任意に選択した範囲に含まれるナーリング部全ての「ナーリング部における凹部の長径」を測定し、得られた値の平均値を求めることにより決定することができる。1周期分の長さ(図2Cの7)とは、ナーリング部が長手方向に一定単位を繰り返すように周期的に形成されている場合における、1単位分の長さをいう。なお、ナーリング部の形成に周期性がみられない場合は、長手方向の長さが5mmとなるように測定範囲を任意に選択するものとする。
少なくとも片側の幅方向端部におけるナーリング部における凹部の長径が2.0mm以上であると、加工工程においてフィルムを搬送したときにナーリング部を起点としてフィルム破断が発生することがある。一方、少なくとも片側の幅方向端部におけるナーリング部における凹部の長径が0.1mm未満であると、凸部の形成が不十分となり、前述した凸部形成による効果が不十分となることがある。
本発明のフィルムは、転写箔として使用したときの成型物の表面外観を悪化させることなく、フィルムの巻き取り性、及び転写箔への加工性を向上させる観点から、ナーリング部における凹部の面積をXmm、凸部の面積をYmmとしたときに、X/Yが0.5以上10以下であることが好ましく、1.0以上7.5以下であることがより好ましく、2.0以上5.0以下であることがさらに好ましい。
ナーリング部における凹部の面積をXmm、凸部の面積をYmmとしたときに、X/Yが10以下であることにより、ナーリング部の形成に伴うフィルムの変形を抑えることができ、フィルム幅方向端部における歪みが軽減される。その結果、フィルム幅方向端部における歪みに起因する巻き取り中の蛇行や巻きズレ等の発生による生産性の低下が軽減される。加えて、転写箔への加工工程においても、搬送時における皺の発生が軽減されるため、転写箔の生産性や、転写箔を加飾に用いて得られる成型物の表面外観を向上させることができる。一方、X/Yが0.5以上であることにより、フィルムロールとして巻き取ったときにフィルム同士の接触面積が小さくなり、キズの発生やブロッキングを軽減できる他、両面の表面粗さが異なる場合に粗い面の形状が平滑な面に転写されることも軽減できるため、フィルムの平滑性、外観品位、及び転写箔を加飾に用いて得られる成型物の表面外観の悪化を軽減できる。
ナーリング部における凹部の面積Xmm、凸部の面積Ymmは、測長機能を備える光干渉型顕微鏡を用いて測定することができる。本発明のフィルムにおける「凹部の面積Xmm」、及び「凸部の面積Ymm」は、任意の幅方向端部からの距離が1mm以上100mm以下の領域において、長手方向の長さが1周期分の長さとなるように任意に選択した範囲に含まれるナーリング部全ての「凹部の面積Xmm」、及び「凸部の面積Ymm」を測定し、得られた値の平均値を求めることにより決定することができる。なお、ナーリング部の形成に周期性がみられない場合は、長手方向の長さが5mmとなるように測定範囲を任意に選択するものとする。
本発明のフィルムは、ナーリング部における凸部の高さが、幅方向両側共にフィルム厚みの10%以上20%未満であることが重要である。「ナーリング部における凸部の高さ(図3の10)」は、フィルム面と垂直かつナーリング部における凹部の長径を含む面でフィルムを切断したときに得られる凸部の頂部とフィルム面との距離で表すことができる。このとき、凸部が複数存在しその高さが異なる場合は、フィルム面との距離が最も大きい凸部の頂部を用いて測定するものとする。
本発明のフィルムにおける「ナーリング部における凸部の高さ」は、任意の幅方向端部からの距離が1mm以上100mm以下の領域において、長手方向の長さが1周期分の長さとなるように任意に選択した範囲に含まれるナーリング部全ての「ナーリング部における凸部の高さ」を測定し、得られた値の平均値を求めることにより決定することができる。なお、ナーリング部の形成に周期性がみられない場合は、長手方向の長さが5mmとなるように測定範囲を任意に選択するものとする。
少なくとも片側の幅方向端部における凸部の高さがフィルム厚みの10%未満であると、フィルムの平滑性、外観品位、及びフィルムを加飾に用いた場合の表面外観が損なわれることがある。一方、少なくとも片側の幅方向端部における凸部の高さがフィルム厚みの20%以上であると、ナーリング部の形成に伴うフィルムの変形が大きくなり、フィルム幅方向端部における歪みが過度に大きくなる。そのため、巻き取り中に蛇行や巻きズレが発生し、加工工程においても搬送時に皺が発生し、生産性が損なわれることや、フィルムを加飾に用いた場合の表面外観が損なわれることがある。上記観点から、ナーリング部における凸部の高さは、幅方向両側共にフィルム厚みの15%以上19%以下であることが好ましい。
ナーリング部における凸部の高さをフィルム厚みの10%以上20%未満又は上記の好ましい範囲とするための方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、ナーリング部形成のために用いる平滑ロールと刻印ロールの間隔を、フィルム厚みの75%以上95%以下の範囲で調節する方法が挙げられる。具体的には、上記範囲内で平滑ロールと刻印ロールの間隔を狭くすることにより、刻印ロールを圧着させたときに軟化する樹脂が増える(凹部の深さが大きくなる)ため、凸部の高さを大きくすることができる。
本発明のフィルムの厚みは、生産性、成型性、加工工程の加工性、及び製造コストの観点から、25μm以上500μm以下であることが好ましく、50μm以上200μm以下とすることがより好ましく、75μm以上150μm以下とすることがさらに好ましい。フィルムの厚みが25μm未満であると、生産安定性が損なわれ、加工工程において皺が発生する場合がある。また、フィルムの厚みが500μmを超えると加工工程での加工性や成型性が低下し、コストが高くなる場合がある。
本発明のフィルムは、フィルムの製造及び加工工程での搬送性と加工性に優れ、かつ高い外観品位と成型性を備えるため、成型用フィルムであることが好ましく、成型転写箔用フィルムであることがより好ましい。ここで、成型用フィルムとは、後述する意匠層等を成型部材(被着体)に転写するための剥離可能な支持フィルムをいう。
本発明の成型転写箔は、装飾を成型部材に付加するのを容易にする観点から、本発明のフィルム、意匠層、及び接着層がこの順に位置することが重要である。ここで、意匠層とは、着色、柄模様、木目調、金属調、及びパール調などの装飾を成型部材に付加させるための層をいう。また、本発明のフィルム、意匠層、及び接着層がこの順に位置するとは、本発明のフィルムと意匠層、意匠層と接着層の間に別の層があるか否かにかかわらず、本発明のフィルム、意匠層、及び接着層がこの順に位置している態様全般をいう。
本発明の成型転写箔は、製品部材の表面を保護する観点から、本発明のフィルムと意匠層との間に、保護層が位置することが好ましい。ここで保護層とは、製品部材に転写された意匠層を保護する役割を担う層をいう。このような態様とすることにより、成型転写箔を成型部材に接着させてフィルムのみを剥離した後の、製品部材の表面の耐傷性、耐候性、及び意匠性が向上する。
本発明の成型転写箔において保護層に使用される樹脂は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、製品部材の外観を損なわない観点から、透明性の高い樹脂であることが好ましい。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などを単独で又は組み合わせて使用することが好ましい。また、製品部材の耐傷性を向上させる観点からは、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂及び熱線硬化樹脂などを用いることが好ましく、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂などを用いることがより好ましく、紫外線硬化型アクリル系樹脂、電子線硬化型アクリル系樹脂を用いることがさらに好ましい。
本発明のフィルムへの意匠層の形成方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、コート、印刷、及び金属蒸着などを用いることができる。意匠層に使用される樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
意匠層における着色剤は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、意匠層に用いる樹脂に対する分散性などを考慮して、染料、無機顔料、及び有機顔料などから適宜選択することができる。
コート又は印刷により意匠層を形成する場合、その厚みは、成型後の色調保持性、意匠性の観点から、1μm以上100μm以下であることが好ましく、2μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上40μm以であることがさらに好ましい。
また、金属蒸着により意匠層を形成する場合、蒸着膜の作製方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、及びイオンプレーティング法などを用いることができる。
金属蒸着における金属は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、意匠層の成型性の観点から、インジウムやスズであることが好ましく、インジウムであることがより好ましい。
金属蒸着により意匠層を形成する場合、その厚みは、意匠層の成型性と意匠性とを両立させる観点から、0.001μm以上100μm以下であることが好ましく、0.01μm以上50μm以下であることがより好ましく、0.02μm以上30μm以下であることがさらに好ましい。
成型部材への接着性を付与する目的で、意匠層に設ける接着層の素材としては、感熱タイプあるいは感圧タイプを用いることができる。成型部材へ転写させる場合は、成型部材の材質に合わせて、接着層の素材を適宜選択することができる。
例えば、成型部材がアクリル樹脂を主成分とする場合は、アクリル系樹脂、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂などを単独で又は組み合わせて用いることが好ましい。成型部材がポリスチレン系樹脂を主成分とする場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを単独で又は組み合わせて用いることが好ましい。成型部材がポリプロピレン系樹脂を主成分とする場合は、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、環化ゴム、クマロンインデン系樹脂を単独で又は組み合わせて用いることが好ましい。成型部材が金属である場合は、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などを単独で又は組み合わせて用いることが好ましい。
本発明のフィルムへの接着層の形成方法、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えばロールコート法、グラビアコート法、コンマコート法などのコート法、及びグラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることができる。
本発明の成型用フィルムを用いた成型転写箔を使用して加飾させる成型部材は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、アクリル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル・スチレン、ポリアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンなどの樹脂を主成分とする部材や、アルミニウム、マグネシウム、鉄、チタン、銅、亜鉛などの金属を主成分とする部材などが挙げられる。
本発明のフィルムロールは、本発明のフィルムがコアに巻かれた構成を有することを特徴とする。本発明のフィルムロールは、後述する本発明のフィルムをコアに巻き取ることにより、得ることができる。
本発明のフィルムの製造方法は、フィルム厚みの75%以上95%以下の間隔で設置された平滑ロールと刻印ロールとの間を通過させてナーリング部を形成させるナーリング工程を有することを特徴とする。このような態様とすることにより、ナーリング部における凸部の高さを容易に前述の好ましい範囲とすることができるため、得られるフィルムは、平滑性、外観品位、及び加飾に用いた場合の表面外観に優れたものとなる。フィルム厚みの75%以上95%以下の間隔で設置された平滑ロールと刻印ロールとは、刻印ロールの突起の頂部と平滑ロールとの間隙がフィルム厚みの75%以上95%以下となるように設置された平滑ロールと刻印ロールをいう。なお、刻印ロールの突起の高さや大きさが不均一な場合は、最も高い突起の頂部と平滑ロールとの間隙により間隔を定めるものとする。
平滑ロールと刻印ロールとの間隔がフィルム厚みの75%未満であると、フィルムが過度に熱変形して平面性や加工工程での搬送性が低下し、フィルムの幅方向両端部における歪みが大きくなることがある。また、平滑ロールと刻印ロールとの間隔がフィルム厚みの95%を超えると、ナーリング部における凸部が十分に形成されず、前述した凸部の存在により得られる効果が得られないことがある。
刻印ロールとは、ロールの表面(フィルムが接する面)に高さ5μm以上の突起を有するロールをいい、平滑ロールとは、ロールの表面に高さ1μm以上の突起が存在しないロールをいう。刻印ロールの突起の形状は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、刻印の加工性や凹凸領域の加工性の観点から円柱、円錐台、三角柱、三角錐台、四角柱、四角錐台、六角柱、六角錐台、八角柱、及び八角錐台などであることが好ましい。平滑ロールの表面は、ナーリング部の加工性とフィルムの搬送性の観点から、JIS B 0601-2001に準拠して測定した算術平均粗さRaが50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
刻印ロールの表面温度は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、使用する樹脂の特性に応じて適宜選択することができるが、ナーリング部の形成とフィルムの生産性を両立する観点から、190℃以上250℃以下であることが好ましい。刻印ロールの表面温度が190℃未満であると、ナーリング部が十分に形成されず、フィルムの平滑性が低下することがある。一方、刻印ロールの温度が250℃を超えると、ナーリング部形成後に刻印ロールとフィルムとの離型性が悪化し、刻印ロールに低弾性化したフィルムが付着する若しくはフィルム破片が散乱し、生産性が低下することがある。上記観点から、刻印ロールの表面温度は195℃以上240℃以下がより好ましく、さらに好ましくは200℃以上230℃以下である。
以下、本発明のフィルムの製造方法について、さらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
まず、ペレット状の環状オレフィン系樹脂を主成分とする混合物を、押出機に供給して加熱溶融する。次いで、ギアポンプ等で加熱溶融した樹脂組成物の押出量を均一化して、フィルターなどを介して加熱溶融した樹脂組成物より異物や変性した樹脂を取り除く。さらに、異物等を除去した樹脂組成物をダイにてシート状に成形して吐出させ、キャスティングドラム等の回転冷却体上に押し出し、回転冷却体と対を成すニップ圧を調整されたニップロール等の回転体との間で冷却固化してフィルムを得る。次いで、フィルムの両端部に配置されたそれぞれ一対の加熱された刻印ロールと平滑ロールの間にフィルムを通し、フィルムの幅方向両端部に連続したナーリング部を形成させる。このとき、刻印ロールと平滑ロールの間隔は、フィルム厚みの75%以上95%以下となるように設定する。次いで、得られたナーリング部を有するフィルムを、巻き取り工程によりコアに巻き取ってフィルムロールを得る。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
[測定及び評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示すような条件で行った。
(1)フィルム厚み
ダイヤルゲージを用いて、フィルムサンプルのうちナーリング部に該当しない部分より任意に選択した5ヶ所の厚みを測定し、その平均値をフィルム厚みとした。
(2)貯蔵弾性率
ナーリング部を含まないように、フィルムを60mm(長手方向)×5mm(幅方向)の矩形に切り出しサンプルとした。動的粘弾性測定装置(レオロジ製、DVE-V4 FTレオスペクトラ)により下記の測定条件で測定を行い、75℃及び120℃における長手方向の貯蔵弾性率(MPa)を求めた。幅方向の貯蔵弾性率(MPa)についても、サンプルを60mm(幅方向)×5mm(長手方向)の矩形とした以外は長手方向と同様にして求めた。
<測定条件>
周波数:10Hz
試長:20mm
変位振幅:10μm
測定温度範囲:25℃~160℃
昇温速度:5℃/分
(3)平滑ロールの表面粗さRa
JIS B 0601-2001に準拠して、表面粗さ計(ミツトヨ(株)製、“サーフテスト”(登録商標)SJ210)により、平滑ロール表面の2次元中心線平均粗さRaを測定し、その結果を表面粗さRaとした。なお、測定条件は以下のとおりである。
<測定条件>
触針先端半径:2μm
測定力:0.75mN
測定長さ:25mm
カットオフ値:0.08mm
測定方向:平滑ロールの幅方向
(4)刻印ロールと平滑ロールとの間隙/フィルムの厚み
ノギス(ミツトヨ(株)製、“スーパーキャリパ”(登録商標)CD67-S)により、刻印ロールの突起の頂部と平滑ロールとの間隙の長さを測定し、その結果を刻印ロールと平滑ロールとの間隙とし、間隙の長さとフィルムの厚みとの百分率を刻印ロールと平滑ロールとの間隙/フィルムの厚みとした。
(5)ナーリング部の凹部の長径、凸部の高さ、及びX/Y
ナーリング部の凹部の面積(Xmm)及び凸部の面積(Ymm)は、光干渉型顕微鏡(菱化システム社製、“VertScan”(登録商標)2.0)を用いて、観察モード=Forcusモード、フィルター=530nm white、ScanRange=105nmにて表面形態の画像を観察して求めた。さらに測定モードを用いてフィルム面と垂直にスキャンを行い、ナーリング部の厚み方向概略断面を得て、ナーリング部における凹部の長径、及びナーリング部における凸部の高さを求めた。各測定は1サンプルにつき3回行い、その平均値から求めた。
(6)幅方向両端部におけるフィルムの歪み
フィルムロールから大きさが500mm(長手方向)×1,000mm(幅方向)であるサンプルを任意に切り出し、得られたサンプルについて端部における歪みを測定した。サンプルは実験台(ヤマト科学製、LCA型)の上に置き、ノギス(ミツトヨ(株)、スーパーキャリパCD67-S)を用いて実験台からのフィルムの高さを測定し、これを歪みとした。測定は、各幅方向端部につき3回行い、その平均値を各幅方向端部におけるフィルムの歪みとした。
(7)フィルムの巻き取り性
フィルム製造時の巻き取り工程における、フィルムの搬送状態及び巻き取られたフィルムロールの表面状態を観察し、巻き取り性を次の基準で評価した。巻き取り性はAが最も優れており、B以上を合格とした。
A:フィルムの搬送状態が良好であり、巻き取ったフィルムロールに皺、キズ、凹み、凸状変形、フィルム破片の付着が目視で観察されなかった。
B:フィルムの搬送状態は良好であったが、巻き取ったフィルムロールに実用上問題ない程度の皺、キズ、凹み、凸状変形、フィルム破片の付着が目視で観察された。
C:フィルムの搬送状態が悪い(搬送した際に蛇行やうねり等がある。)、若しくは巻き取ったフィルムロールに実用上問題となる皺、キズ、凹み、凸状変形、フィルム破片の付着が目視で観察された。
(8)意匠層形成時の加工性
フィルムロールより巻き出したフィルムサンプルの表面に、コーティング装置(廉井精機製)にアプリケーターを用いて、アクリル樹脂(東洋ケミカル製6500B)にカーボンブラックを分散して得られたブラックインキを塗工し、80℃で5分間乾燥を行い、塗膜厚み30μmの意匠層を形成した。意匠層を形成したフィルムを再度巻き取り、目視で観察して加工性を次の基準で評価した。意匠層形成時の加工性はAが最も優れており、C以上を合格とした。
A:フィルムロールに皺、凹み、凸状変形、塗工抜け、フィルムの亀裂がいずれも観察されなかった。
B:巻き取ったフィルムロールに皺、凹み、凸状変形、点状の塗工抜け、フィルムの亀裂のうち少なくとも一つが観察されたが、いずれも実用上問題ない程度であった。
C:巻き取ったフィルムロールに線状の塗工抜けが観察されたが、実用上問題ない程度であった。
D:フィルムが搬送中に破断し、巻き取ることができなかった。又は、フィルムロールに皺、凹み、凸状変形、塗工抜け、フィルムの亀裂がのうち少なくとも一つが観察され、その少なくとも一つが実用上問題となる程度であった。
なお、塗工抜けについては、長径が5mm以下のものを点状、長径が5mmを超えるものを線状とした。長径とは、距離が最大となるように塗工抜けの外周上の2点を取った場合における、該2点間の距離をいう。
(9)成型転写箔の成型性
フィルムロールサンプルの表面に、アプリケーターを用いて、アクリル/ウレタン系のブラックインキを塗工し意匠層を形成した。さらに上記のフィルムロールサンプルより、ナーリング部を含まないように任意の位置で200mm(長手方向)×300mm(幅方向)の大きさに切り出してサンプルとした。フィルムサンプルの意匠層の表面に、アプリケーターを用いて、変性オレフィン系ホットメルト接着剤(東亞合成製PES-360HV)を塗工し、80℃で10分間乾燥を行い、塗膜厚み20μmの接着層を形成した。接着層が形成されたサンプルを布施真空株式会社製の三次元真空加熱成型機(TOM成形機/NGF-0406-T)を用いて、120℃の温度になるように加熱し、50℃に加熱したポリプロピレン製樹脂型(底面直径150mm)に沿って真空・圧空成型(圧空:0.2MPa)を行い、フィルム/意匠層/接着層/ポリプロピレン製樹脂型の成型体を得た。得られた成型体について、型に沿って成型できた状態(絞り比:成型高さ/底面直径)より、成型転写箔の成型性を以下の基準で評価した。なお、成型転写箔の成型性はAが最も優れており、C以上を合格とした。
A:絞り比1.0以上で成型できた。
B:絞り比0.8以上1.0未満で成型できたが、絞り比1.0以上では成型できなかった。
C:絞り比0.7以上0.8未満で成型できたが、絞り比0.8以上では成型できなかった。
D:絞り比0.7以上で成型できなかった。
(10)製品部材(成型加飾後の成型部材)の表面外観
フィルムロールの表面に、ダイコーターを用いて、アクリル/ウレタン系のブラックインキを塗工し、80℃で10分間乾燥を行い、塗膜厚み30μmの意匠層を形成した。さらに意匠層の上に、アプリケーターを用いて、日本ケミカル製892Lを塗工し、80℃で10分間乾燥を行い、塗膜厚み20μmの接着層を形成し、成型転写箔ロールを作製した。
得られた成型転写箔ロールから任意の位置で200mm(長手方向)×300mm(幅方向)の大きさに成型転写箔を切り出した。次いで、フィルム/意匠層/接着層/成型部材(平面状のポリプロピレン製樹脂型)の順になるように、成型転写箔と成型部材を重ねて真空・圧空成型を行い、得られた成型体に照射強度が2,000mJ/cmとなるように紫外線を照射して塗剤を硬化させた。その後、フィルムのみを剥離して得られた製品部材の表面を走査型白色干渉顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製 VS-1000)を用いて倍率5倍で観察し、次の基準でその表面外観(うねり:製品部材の最大点高さ-最小点高さ)を評価した。なお、製品部材(成型加飾後の成型部材)の表面外観はAが最も優れており、B以上を合格とした。
A:うねりが0.01mm未満であった。
B:うねりが0.01mm以上0.1mm未満であった。
C:うねりが0.1mm以上であった。
(11)意匠層、接着層の厚み
フィルムの意匠層、接着層の層厚みは、ライカマイクロシステムズ(株)製金属顕微鏡LeicaDMLMを用いてフィルムの断面写真を倍率100倍で撮影した後、得られた写真より各層ごとに任意の5ヶ所を選定してその厚みを測定し、その平均値を算出することにより求めた。
[フィルムの製造に用いた樹脂]
(環状オレフィン系樹脂A)
ポリプラスチックス社製“TOPAS”(登録商標)8007F-04
(環状オレフィン系樹脂B)
ポリプラスチックス社製“TOPAS”(登録商標)6013F-04
(ポリエチレン系樹脂)
プライムポリマー社製“エボリュー”(登録商標)SP2540
(実施例1)
表1の組成、構成とし、それぞれ単軸押出機(L/D=30)に供給し、供給部温度230℃、それ以降の温度を240℃で溶融し、濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、Tダイ(リップ間隙:0.4mm)より、40℃に温度制御した金属製鏡面ロール(表面粗さRa:0.01μm)上にシート状に吐出し、キャストフィルムを得た。その際、30℃に温度制御したマット調ゴム製賦形ロールにてニップをした(表面粗さRa:0.7μm、ニップ圧:0.2MPa)。次いで、得られたキャストフィルムを210℃に加熱された上底の直径:0.7mm、下底の直径:1.0mmの円錐台形状の突起が幅方向に等間隔で5つ形成された刻印ロールと平滑ロールとのロール間隙(85μm)にフィルムを通過させて、幅方向両端部に、各幅方向端部からの距離が10mm以上20mm以下の領域内に幅10mmのナーリング部を形成し、ワインダーで巻き取り、フィルム厚み100μm、幅1,000mm、長さ500mのフィルムが巻かれたフィルムロールを得た。フィルム及びそれを用いた成型転写箔、製品部材の評価結果を表1に示した。なお、搬送ロールの駆動側をA側、非駆動側をB側とした。
(実施例2~9、比較例1~7)
刻印ロールの加熱温度、刻印ロールの上底、及び刻印ロールと平滑ロールとの間隙を表1、2に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。フィルム及びそれを用いた成型転写箔、製品部材の評価結果を表1、2に示した。
(比較例8)
ナーリング部の形成を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。フィルム及びそれを用いた成型転写箔、製品部材の評価結果を表2に示した。
Figure 0007221695000001
各成分の含有量は、フィルムにおける全成分を100質量%として算出した。凹部の長径(mm)、凸部の高さ(μm)は幅方向両側で等しい。以上、表2においても同様である。
Figure 0007221695000002
本発明により、フィルムの製造及び加工工程での搬送性と加工性に優れ、かつ高い外観品位と成型性を備えるフィルム、及び該フィルムを用いた成型転写箔、該フィルムが巻かれたフィルムロール、及び該フィルムの製造方法を提供することができる。本発明のフィルム及び成型転写箔を用いることにより、真空成型、圧空成型、及びプレス成型といった各種成型方法において製品部材(成型加飾後の成型部材)に高い意匠性を付与することができる。そのため、本発明のフィルム及び成型転写箔は、例えば、建材、自動車部品や携帯電話、電機製品、遊技機部品などの成型部材の加飾に好適に用いることができる。
1 フィルム
2 ナーリング部
3 ナーリング部における凹部
4 ナーリング部における凸部
5 長手方向
6 長手方向に連続したナーリング部を有する領域
7 1周期分の長さ
8 フィルム面
9 ナーリング部における凹部の長径
10 ナーリング部における凸部の高さ

Claims (8)

  1. 環状オレフィン系樹脂を主成分とするフィルムであって、
    幅方向両端部における歪みが0.3mm以上2.0mm以下であり、
    幅方向両側において、幅方向端部からの距離が1mm以上100mm以下の領域内に、長手方向に連続したナーリング部を有し、
    前記ナーリング部における凸部の高さが、幅方向両側共にフィルム厚みの10%以上20%未満であり、
    前記ナーリング部における凹部の長径が、幅方向両側共に0.1mm以上2.0mm未満であり、
    前記ナーリング部における凹部の面積をXmm 、前記凸部の面積をYmm としたときに、X/Yが0.5以上10以下であることを特徴とするフィルム。
  2. 前記フィルムが、成型用フィルムである、請求項に記載のフィルム。
  3. 前記成型用フィルムが、成型転写箔用フィルムである、請求項に記載のフィルム。
  4. 請求項1~のいずれかに記載のフィルム、意匠層及び接着層がこの順に位置することを特徴とする成型転写箔。
  5. 前記フィルムと前記意匠層との間に、保護層が位置する、請求項に記載の成型転写箔。
  6. 請求項1~のいずれかに記載のフィルムがコアに巻かれた構成を有することを特徴とするフィルムロール。
  7. 請求項1~のいずれかに記載のフィルムの製造方法であって、フィルム厚みの75%以上95%以下の間隔で設置された平滑ロールと刻印ロールとの間を通過させてナーリング部を形成させるナーリング工程を有することを特徴とするフィルムの製造方法。
  8. 前記刻印ロールの温度が190℃以上250℃以下である、請求項に記載のフィルムの製造方法。
JP2018558370A 2017-11-17 2018-10-25 フィルム、それを用いた成型転写箔、フィルムロール、及びフィルムの製造方法 Active JP7221695B2 (ja)

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