JP2008297179A - 誘電体磁器および積層セラミックコンデンサ - Google Patents

誘電体磁器および積層セラミックコンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】 高誘電率かつ比誘電率の温度特性の安定性に優れるとともに、絶縁抵抗の電圧依存性の小さい誘電体磁器と、このような誘電体磁器を誘電体層として備え、高温負荷試験での寿命特性に優れた積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】 チタン酸バリウムを主成分とし、バナジウム、マグネシウム、希土類元素およびマンガンをそれぞれ所定の割合で含ませて、結晶粒子の表面から15nmまでの深さの範囲で希土類元素の濃度勾配が0.1原子%/nm以上である第1結晶粒子と、同深さの範囲において0.05原子%/nm以下である第2結晶粒子とを主体とし、第1結晶粒子および第2結晶粒子のそれぞれの平均結晶粒径を0.3〜0.54μmおよび0.4〜1μmとして、さらに、誘電体磁器の研磨面の単位面積における、第1結晶粒子の面積割合をC1、第2結晶粒子の面積割合をC2としたときに、C2/(C1+C2)比を0.3〜0.7の範囲とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子により構成される誘電体磁器と、それを誘電体層として用いる積層セラミックコンデンサに関する。
近年、携帯電話などモバイル機器の普及や、パソコンなどの主要部品である半導体素子の高速、高周波化に伴い、このような電子機器に搭載される積層セラミックコンデンサは、小型、高容量化の要求がますます高まっており、積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層は薄層化と高積層化が求められている。
ところで、積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層用の誘電体磁器として、従来より、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体材料が用いられている。近年、チタン酸バリウム粉末に、マグネシウムや希土類元素等の酸化物粉末を添加して、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の表面付近にマグネシウムや希土類元素を固溶させた、いわゆるコアシェル構造の結晶粒子から構成された誘電体磁器が開発され、積層セラミックコンデンサとして実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、結晶粒子のコアシェル構造とは、結晶粒子の中心部であるコアと外殻部であるシェルとが物理的、化学的に異なる相を形成している構造をいい、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子については、コアは正方晶系の結晶構造を有するチタン酸バリウムで占められており、シェルは立方晶系の結晶構造を有するチタン酸バリウムにより占められている状態をいう。
特開2001−220224号公報
しかしながら、上述のようなコアシェル構造の結晶粒子から構成された誘電体磁器は、比誘電率の向上および比誘電率の温度特性の安定性に優れているものの、誘電体磁器に直流電圧を印加し、その直流電圧を増加させたときに絶縁抵抗の低下が大きくなるという問題があった。
そして、上述のように、コアシェル構造の結晶粒子から構成された誘電体磁器を誘電体層として備えた積層セラミックコンデンサは、誘電体磁器における上述のような絶縁抵抗の低下に起因して高温負荷試験での寿命特性を向上させることが困難となっていた。
従って本発明は、高誘電率かつ比誘電率の温度特性の安定性に優れるとともに、電圧を増加させた際の絶縁抵抗の低下の小さい誘電体磁器と、このような誘電体磁器を誘電体層として備え、高温負荷試験での寿命特性に優れた積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウムを主成分とし、前記チタン酸バリウムを構成するチタン100モルに対して、バナジウムをV換算で0.1〜0.3モル、マグネシウムをMgO換算で0.5〜1.0モル、希土類元素をRE換算で0.5〜1.0モル、およびマンガンをMnO換算で0.1〜0.5モル含む誘電体磁器であって、誘電体磁器の結晶粒子は、表面から15nmの深さまでにおける前記希土類元素の濃度勾配が0.1原子%/nm以上で、かつ平均結晶粒径が0.3〜0.54μmである第1結晶粒子と、表面から15nmの深さまでにおける前記希土類元素の濃度勾配が0.05原子%/nm以下で、かつ平均結晶粒径が0.4〜1μmである第2結晶粒子とからなり、前記誘電体磁器の表面を研磨した研磨面において、前記第1結晶粒子が占める面積をC1、前記第2結晶粒子が占める面積をC2としたときに、C2/(C1+C2)が0.3〜0.7であることを特徴とする。
また、前記誘電体磁器はさらにカルシウムを含み、前記第1結晶粒子は前記カルシウムの濃度が0.3原子%よりも少なく、かつ平均結晶粒径が0.3〜0.4μmであり、前記第2結晶粒子は前記カルシウムの濃度が0.3原子%以上であり、かつ平均結晶粒径が前記第1結晶粒子の平均結晶粒径よりも大きいことが好ましい。
さらに、本発明の積層セラミックコンデンサは、前記誘電体磁器からなる誘電体層と内部電極層との積層体から構成されていることを特徴とする。
本発明の誘電体磁器によれば、チタン酸バリウムを主成分とし、バナジウム、マグネシウム、希土類元素およびマンガンをそれぞれ所定の割合で含有するとともに、誘電体磁器を構成する結晶粒子を、希土類元素の濃度勾配が異なり、特定の平均結晶粒径を有する第1の結晶群からなる結晶粒子と第2の結晶群からなる結晶粒子とから構成し、かつ第1の結晶群を構成する結晶粒子と第2の結晶群を構成する結晶粒子が占める割合を特定の範囲とすることで、高誘電率かつ比誘電率の変化率が小さく、さらに電圧を印加したときの絶縁抵抗の低下が小さい(絶縁抵抗の電圧依存性の小さい)誘電体磁器を得ることができる。
また、本発明の誘電体磁器によれば、第1の結晶群を構成する結晶粒子にはカルシウムを含ませないようにするとともに、第2の結晶群を構成する結晶粒子にはカルシウムを一様に含ませないようにし、かつ第1の結晶群を構成する結晶粒子の平均結晶粒径と、第2の結晶群を構成する結晶粒子との粒子の大きさの関係を特定することで、さらに高誘電率で、かつ比誘電率の温度変化率が小さく、さらに絶縁抵抗の電圧依存性の小さい誘電体磁器を得ることができる。
また、本発明の積層セラミックコンデンサによれば、誘電体層として、前記誘電体磁器を適用することにより、誘電体層を薄層化しても高い絶縁性を確保できる。このため高温負荷試験においても寿命特性に優れた積層セラミックコンデンサを得ることができる。
本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウムを主成分とし、前記チタン酸バリウムを構成するチタン100モルに対して、バナジウムをV換算で0.1〜0.3モル、マグネシウムをMgO換算で0.5〜1.0モル、希土類元素をRE換算で0.5〜1.0モル、およびマンガンをMnO換算で0.1〜0.5モル含む誘電体磁器であって、誘電体磁器の結晶粒子は、表面から15nmの深さまでにおける前記希土類元素の濃度勾配が0.1原子%/nm以上で、かつ平均結晶粒径が0.3〜0.54μmである第1結晶粒子と、表面から15nmまでの深さにおける前記希土類元素の濃度勾配が0.05原子%/nm以下で、かつ平均結晶粒径が0.4〜1μmである第2結晶粒子とからなり、前記誘電体磁器の表面を研磨した研磨面において、前記第1結晶粒子が占める面積をC1、前記第2結晶粒子が占める面積をC2としたときに、C2/(C1+C2)が0.3〜0.7であることを特徴とする。
本発明によれば、誘電体磁器を上記組成とし、結晶粒子中において、希土類元素の濃度勾配の異なる2種の結晶粒子を形成し、これらを所定の平均結晶粒径とし、さらにこれら2種の結晶粒子の割合を所定の比率にしたことにより、室温(25℃)での比誘電率を2000以上にでき、また、比誘電率の温度特性がX7R(−55〜125℃において、±15%以内)を満足させるものにでき、さらに、単位厚み(1μm)当たりに印加する直流電圧の値を0.1Vおよび2.5Vとして測定したときの絶縁抵抗の低下率を75%以下にできるという利点がある。
図1は、本発明の誘電体磁器の微構造を示すものであり、コア部およびシェル部の体積割合の異なる2種の結晶粒子が共存した状態を示す断面模式図である。
図2(a−1)は、本発明の誘電体磁器を構成する第1結晶粒子の断面模式図であり、図2(a−2)は第1結晶粒子の希土類元素の濃度勾配を示す模式図である。図2(b−1)は第2結晶粒子の断面模式図であり、図2(b−2)は第2結晶粒子の希土類元素の濃度勾配を示す模式図である。
本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子1と、この結晶粒子1間に存在する粒界相2とからなるものであり、結晶粒子1は、少なくともマグネシウム、希土類元素およびマンガンを含み、コアシェル構造を有するもので、特に結晶粒子中におけるコア部とシェル部の割合の異なる2種の結晶粒子からなる結晶群が共存した構造を有する。
ここで、結晶粒子1のコアシェル構造とは、結晶粒子1の中心部であるコア部aと外殻部であるシェル部bとが物理的、化学的に異なる相を形成している構造をいい、本発明におけるコアシェル構造を有する結晶粒子1は、コア部aおよびシェル部bがともにチタン酸バリウムを主成分とし、少なくともマグネシウム、希土類元素およびマンガンを含んだものである。
また、本発明の誘電体磁器は、図2に示すように、シェル部bの最外表面SSからコア部aの中心Cに向けて希土類元素の濃度勾配が大きく異なる2種類の結晶粒子を共存させたことを特徴とする。
即ち、本発明の誘電体磁器を構成する結晶粒子1は、表面から15nmの深さにおける希土類元素の濃度勾配が0.1原子%/nm以上である第1結晶粒子1Aと、表面から15nmの深さまでにおける希土類元素の濃度勾配が0.05原子%/nm以下である第2結晶粒子1Bとから実質的に構成されたものであり、第1結晶粒子1Aは第2結晶粒子1Bに比較してシェル部bにおける希土類元素の濃度勾配が大きくなっている。
なお、本発明において、表面から15nmの深さとは、結晶粒子1の任意の最外表面SSから中心部Cに向けた深さ方向の領域のことをいうが、測定する際には、誘電体磁器の研磨面に見られる結晶粒子を対象としたときに、平均結晶粒径の±30%以内の粒径を有する結晶粒子1を対象とし、このように特定の粒径をもつ結晶粒子について、その任意の粒界から当該結晶粒子1の中心部Cに向けて15nmの深さまでの領域のことである。
この測定はエネルギー分散型分析器(EDS)を付設した透過電子顕微鏡装置を用いて測定することができ、結晶粒子1の最外表面SS側から中心部Cにかけて所定の間隔(例えば、5nm)でEDSを用いて元素分析を行うことにより希土類元素の濃度変化を求めることができる。
そして、本発明の誘電体磁器では、第1結晶粒子1Aの最外表面SSから15nmの深さにおける希土類元素の濃度勾配が0.1〜2原子%/nmであることが望ましい。第1結晶粒子1Aの最外表面から15nmの深さにおける希土類元素の濃度勾配が0.1〜2原子%/nmであると、結晶粒子1が、その表面領域に十分な厚みのシェル部bを有するものとなるため、最外表面から15nmの深さにおける希土類元素の濃度勾配が0.05原子%/nm以下である第2結晶粒子1Bとの共存が可能となる。
このような結晶粒子1の最表面SSから内部における希土類元素の濃度勾配は、最表面SSの測定点から内部への深さが15nmまでの少なくとも3点以上の測定点での差が最小になるように最小自乗法で求められる。また、内部の深さが15nm以上の測定点についても少なくとも3点以上の測定点について最小自乗法により求める。
コア部aとシェル部bとの境界は、EDSで求められる結晶粒子1中の希土類元素の濃度変化のプロットに沿って、結晶粒子1の最表面SSから内部、および、結晶粒子1の中心部Cから最表面SSに向けて、相互に引いた最小自乗法による近似直線の交点から求められる。
この場合、シェル部bにおける希土類元素の濃度勾配が0.1原子%/nmよりも大きく、かつコア部1における希土類元素の濃度勾配とシェル部bにおける希土類元素の濃度勾配との差が0.04原子%/nm以上、特に、0.05原子%/nm以上であれば、コア部aおよびシェル部bとして判定することが可能となる。
つまり、本発明の誘電体磁器を構成する結晶粒子1は、図1に示すように、結晶粒子1中に含まれる成分の濃度勾配の違いにより、結晶粒子1を構成するコア部aとシェル部bとの体積割合の異なる第1結晶粒子1Aおよび第2結晶粒子1Bが形成されるものである。
そして、本発明の誘電体磁器では、第1結晶粒子1Aの平均結晶粒径が0.3〜0.54μm、また、第2結晶粒子1Bの平均結晶粒径が0.4〜1μmであり、さらに、誘電体磁器表面を研磨した研磨面に見られる第1結晶粒子1Aの面積をC1、第2結晶粒子1Bの面積をC2としたときに、C2/(C1+C2)が0.3〜0.7の関係を満足することが重要である。
ここで、第1結晶粒子1Aの面積C1、および第2結晶粒子1Bの面積C2をそれぞれ求める場合、第1結晶粒子1Aは、その平均結晶粒径の±30%以内の粒径を有する結晶粒子1Aから選択し、また第2結晶粒子1Bは、その平均結晶粒径の±30%以内の粒径を有する結晶粒子1Bから選択すれば良く、好ましくは第1結晶粒子1A中および第2結晶粒子1B中にそれぞれ含まれる希土類元素の濃度勾配を求めるときに選択する結晶粒子1A,1Bと同じ結晶粒子を用いることが好ましい。
ここで、本発明の誘電体磁器を構成する希土類元素の濃度勾配の異なる2種の結晶粒子について、さらに詳細に説明する。
チタン酸バリウムを主成分とし、バナジウム、マグネシウム、希土類元素およびマンガンなどの添加成分を含有する結晶粒子1は、図2(a−1)(a−2)に示す第1結晶粒子1Aのように、最外表面SSから中心部Cへ向けた希土類元素の濃度勾配が0.1原子%/nm以上のものは、シェル部bの割合が少なく、コア部aの割合が多いものである。
例えば、誘電体磁器がコア部aの割合の多い結晶粒子でほとんど占められているものは、高誘電率であるコア部aの割合が多いために、比誘電率が高く、比誘電率の温度変化率も小さくできるものの、シェル部bの割合が少ないために絶縁性が低いものとなる。
これは、結晶粒子のシェル部bにおける希土類元素の濃度勾配が0.1原子%/nm以上であり、コア部aの割合の多い結晶粒子により占められている従来の誘電体磁器では、コア部aの割合が多いために結晶粒子中に酸素空孔などの欠陥を多く含んだ状態となり、このため直流電圧を印加した場合に、誘電体磁器を構成する結晶粒子の内部において酸素空孔などが電荷を運ぶキャリアになりやすく、誘電体磁器の絶縁性を低下させる原因となる。
一方、誘電体磁器を構成する結晶粒子の殆どが希土類元素の濃度勾配が0.05原子%/nm以下であり、シェル部bの割合が多く、コア部aの割合の少ない結晶粒子により占められている誘電体磁器は、絶縁性が高いものの、比誘電率が低くなる。
このため、第1結晶粒子1Aおよび第2結晶粒子1Bの面積比は、用いる原料粉末にもよるが、例えば、C2/(C1+C2)が0.3より小さい場合には印加する直流電圧の値を0.1Vおよび2.5Vとして絶縁抵抗を評価したときの絶縁抵抗の低下率が75%を越えてしまい絶縁性が低下し、一方、C2/(C1+C2)が0.7よりも大きい場合には同条件での絶縁抵抗の低下率が75%よりも小さく、優れた絶縁性を示すものの、比誘電率の温度特性がX7R特性を満たさないものとなる。
また、第1結晶粒子1Aの平均結晶粒径が0.3μmよりも小さいか、または第2結晶粒子1Bの平均結晶粒径が0.4μmよりも小さい場合には比誘電率が2000より低くなるか、または、印加する直流電圧の値を0.1Vおよび2.5Vとして絶縁抵抗を評価したときの絶縁抵抗の低下率が75%を越えしまう。
さらに、第1結晶粒子1Aの平均結晶粒径が0.54μmよりも大きい、または第2結晶粒子1Bの平均結晶粒径が1μmよりも大きい場合には、比誘電率の温度変化率が大きくなり、X7R特性を満足できなくなる。
これに対して、本発明の誘電体磁器は、結晶粒子1に含まれる希土類元素の濃度勾配を制御して、結晶粒子1中のコア部aの割合を減少させた高絶縁性の結晶粒子(第2結晶粒子1B)を、結晶粒子1中のコア部aの割合が高く高誘電率の結晶粒子(第1結晶粒子1A)の間に介在させ、かつ第1結晶粒子1Aの平均結晶粒径を0.3〜0.54μm、また、第2結晶粒子1Bの平均結晶粒径を0.4〜1μmとし、これら両結晶粒子の面積をC2/(C1+C2)で0.3〜0.7の範囲としたことにより、誘電体磁器を構成する結晶粒子1の殆どが希土類元素の濃度勾配が0.1原子%/nm以上であり、コア部aの割合の多い結晶粒子により占められている従来の誘電体磁器と同等の比誘電率および比誘電率の温度変化率を有しつつ、殆どが第2結晶粒子1Bにより占められた誘電体磁器と同等の絶縁抵抗を得ることができると考えられる。
ただし、本発明の誘電体磁器に含まれるチタン100モルに対するバナジウムの含有量がV換算で0.1モルよりも少ないか、誘電体磁器に含まれるチタン100モルに対するマグネシウムの含有量がMgO換算で0.5モルよりも少ない、または1.0モルよりも多い場合、誘電体磁器に含まれるチタン100モルに対する希土類元素の含有量がRE換算で0.5モルよりも少ないか、または1.0モルよりも多い場合、あるいは誘電体磁器に含まれるチタン100モルに対するマンガンの含有量がMnO換算で0.1モルよりも少ない場合には、いずれも単位厚み(1μm)当たりに印加する直流電圧の値を0.1Vおよび2.5Vとして測定したときの絶縁抵抗の低下率が75%よりも大きくなるからであり、また、当該誘電体磁器に含まれるチタン100モルに対するマンガンの含有量がMnO換算で0.5モルよりも多い場合には比誘電率が低下するからであり、さらに、バナジウムの含有量がV換算で0.3モルよりも多い場合には比誘電率の温度変化率が大きくなりX7Rを満足しなくなるためである。
そのため、チタン100モルに対して、バナジウムをV換算で0.1〜0.3モル、マグネシウムをMgO換算で0.5〜1.0モル、希土類元素をRE換算で0.5〜1.0モル、およびマンガンをMnO換算で0.1〜0.5モルの範囲で含有することが重要である。
そして、好ましい組成としては、本発明の誘電体磁器に含まれるチタン100モルに対して、バナジウムをV換算で0.1〜0.3モル、マグネシウムをMgO換算で0.5〜1.0モル、希土類元素をY換算で0.5〜1.0モルに、マンガンをMnO換算で0.1〜0.3モル含有するものが良く、この範囲の誘電体磁器は、比誘電率の温度特性がX7Rを満足し、単位厚み当たりに印加する直流電圧の値を0.1Vおよび2.5Vとして絶縁抵抗を評価したときの絶縁抵抗の低下率を75%以下とすることができるとともに、比誘電率を2015以上に高められる。
なお、本発明の誘電体磁器を構成する結晶粒子1に含まれる希土類元素としては、イットリウム、ディスプロシウム、エルビウム、ホルミウムおよびテルビウムのうちの少なくとも1種が好ましく、特に、誘電体磁器の比誘電率を高められるという理由からイットリウムが好ましく、さらに誘電体磁器の絶縁性を高め、高温負荷試験での寿命を向上させるという点で、イットリウムおよびテルビウムを所定の割合で含ませることが好ましい。
また、本発明の誘電体磁器は、さらにカルシウムを含んでいてもよく、この場合、誘電体磁器を構成する第1結晶粒子1A中におけるカルシウムの濃度は0.3原子%よりも少なく、第2結晶粒子1B中におけるカルシウムの濃度は0.3原子%以上とすることが良く、また第1結晶粒子1Aは、その平均結晶粒径を0.3〜0.4μmとし、第2結晶粒子1Bは、その平均結晶粒径を第1結晶粒子1Aの平均結晶粒径よりも大きくすることが望ましい。
このような場合には、比誘電率を2160以上にでき、また、比誘電率の温度変化率がX7Rを満足し、さらに単位厚み当たりに印加する直流電圧の値を0.1Vおよび2.5Vとして絶縁抵抗を評価したときの絶縁抵抗の低下率が50%以下となる。なお、第1の結晶粒子1aはカルシウム濃度がゼロのものを含む。
結晶粒子中のカルシウム(Ca)の濃度については、エネルギー分散型分析器(EDS)を付設した透過電子顕微鏡装置を用いて測定する。この場合、研磨した誘電体磁器の断面に映し出された結晶粒子に対して、EDSを用いて、結晶粒子の中心部近傍の任意の場所を分析し、結晶粒子から検出される主成分と添加剤の各元素の全量を100%として、その中に含まれるCaの含有量を求め、Ca濃度が0.3原子%より低い結晶粒子とCa濃度が0.3原子%以上の結晶粒子とを分類する。Ca濃度が0.3原子%より低い結晶粒子とCa濃度が0.3原子%以上の結晶粒子との割合は透過電子顕微鏡写真に映し出された結晶粒子の断面の面積比から求める。なお、結晶粒子の中心部近傍とは、誘電体磁器を断面研磨した試料の表面に現れた結晶粒子の粒界から深さ方向に向けて進んだ位置であり、おおよそ結晶粒子の重心付近のことである。ここで選択される結晶粒子は、平均結晶粒径の±30%の範囲にある結晶粒子が対象となる。
以上、本発明の誘電体磁器に含まれるバナジウム、マグネシウム、希土類元素およびマンガン等の成分や結晶粒子1の結晶構造について説明したが、本発明では、所望の誘電特性を維持できる範囲であれば、バナジウム、マグネシウム、希土類元素およびマンガン等の成分の他に、焼結性を高めるための助剤としてガラス成分を含有させても良い。
次に、本発明の誘電体磁器を製造する方法について説明する。まず、原料粉末として、純度が99%以上のチタン酸バリウム粉末に対し、V粉末、MgO粉末、希土類元素の酸化物粉末、およびMnCO粉末を用いる。この場合、焼成後に第1結晶粒子1Aとなるチタン酸バリウム粉末の平均粒径は高誘電率が得られるという理由から0.3〜0.5μmが好ましく、焼成後に第2結晶粒子1Bとなるチタン酸バリウム粉末の平均結晶粒径は0.05〜0.1μmが好ましい。
また、誘電体磁器にカルシウムを含有させる場合、純度が99%以上のチタン酸バリウム粉末とチタン酸バリウムにカルシウムが固溶した粉末に対し、V粉末、MgO粉末、希土類元素の酸化物粉末、およびMnCO粉末の添加剤を用いる。この場合、焼成後に第1結晶粒子1Aとなるチタン酸バリウム粉末の平均粒径は高誘電率が得られるという理由から0.3〜0.5μmが好ましく、焼成後に第2結晶粒子1Bとなるチタン酸バリウムにカルシウムが固溶した粉末の平均粒径は0.05〜0.1μmが好ましい。
このように、第2結晶粒子1Bとなるチタン酸バリウム粉末またはチタン酸バリウムにカルシウムが固溶した粉末の平均粒径を0.05μm以上とすることで、結晶粒子中にコアシェル構造を形成し易くなり、第2結晶粒子1B中におけるコアaの割合を増やすことができるために比誘電率の向上を図れるという利点があり、また、第2結晶粒子1Bとなるチタン酸バリウム粉末またはチタン酸バリウムにカルシウムが固溶した粉末の平均粒径を0.1μm以下とすることで、上記添加剤を結晶粒子の内部にまで固溶させることが容易となり、また、後述するように、焼成前後における、チタン酸バリウム粉末またはチタン酸バリウムにカルシウムが固溶した粉末から結晶粒子への粒成長の比率を高められるという利点がある。
また、添加剤であるV粉末、MgO粉末、希土類元素の酸化物粉末およびMnCO粉末についても平均粒径はチタン酸バリウム粉末またはチタン酸バリウムにカルシウムが固溶した粉末と同等、もしくはそれ以下のものを用いることが好ましい。
なお、チタン酸バリウムにカルシウムが固溶した粉末は、Aサイトの一部がCaで置換されたチタン酸バリウムを主成分とする固溶体であり、(Ba1−xCa)TiOで表されるものであり、Aサイト中のCa置換量は、X=0.01〜0.2であることが好ましい。Ca置換量がこの範囲内であれば、第1結晶粒子1aとの共存構造により、粒成長が抑制された結晶組織を形成することができる。なお、第2結晶粒子1B中に含まれるCaは第2結晶粒子1B中に分散した状態で固溶している。
次に、第1結晶粒子1Aとなるチタン酸バリウム粉末、および第2結晶粒子1Bとなるチタン酸バリウム粉末またはチタン酸バリウムにカルシウムが固溶した粉末を質量比で30:70〜70:30の割合になるように配合する。
次いで、これらの原料粉末を、チタン酸バリウム粉末またはチタン酸バリウムにカルシウムが固溶した粉末を構成するチタン100モルに対して、V粉末を0.1〜0.3モル、MgO粉末を0.5〜1.0モル、希土類元素の酸化物粉末を0.5〜1.0モル、およびMnCO粉末をMnOとして0.1〜0.5モルの割合で配合し、これに有機ビヒクルを加えてボールミルを用いて混合し、所定の形状にプレス成形し、この成形体を脱脂したのち還元雰囲気中1150〜1200℃の範囲で焼成する。焼成後に再度、弱還元雰囲気にて900〜1100℃にて熱処理を行うことで本発明の誘電体磁器を得ることができる。
なお、本発明の誘電体磁器を製造するに際しては、所望の誘電特性を維持できる範囲であれば焼結助剤としてガラス粉末を添加しても良い。
また本発明の誘電体磁器を製造する際には、上述のように、チタン酸バリウム粉末またはチタン酸バリウムにカルシウムが固溶した粉末として、平均粒径が0.1μm以下の微粉末を用いることにより、焼成後に粒成長した第2結晶粒子1Bが形成される。この場合、焼成後の第2結晶粒子1Bの平均粒径が焼成前の上記チタン酸バリウム粉末またはチタン酸バリウムにカルシウムが固溶した粉末の3倍以上、特に、4倍以上であることが望ましい。焼成後における第2結晶粒子1Bの平均粒径がバナジウムや他の添加剤を含ませたチタン酸バリウム粉末またはチタン酸バリウムにカルシウムが固溶した粉末の平均粒径の3倍以上になるように焼成することで、第2結晶粒子1Bは添加成分の固溶が高まり、特に、希土類元素の濃度勾配を小さくでき、このためコア部aの割合が減少し、高絶縁性のシェル部bの体積割合が増加する。こうして高絶縁性のシェル部bの体積割合が増加し、希土類元素の濃度勾配の異なる結晶粒子1を有する誘電体磁器を形成することができる。
一方、第1結晶粒子1Aは、原料粉末として平均粒径が0.1μmよりも大きいチタン酸バリウム粉末を用いることにより、焼成前後での粒成長を抑えて、第1結晶粒子1Aの平均粒径が焼成前のチタン酸バリウム粉末の平均粒径の2倍以下になるように制御する。
図3は本発明の積層セラミックコンデンサの例を示す断面模式図である。本発明の積層セラミックコンデンサは、コンデンサ本体10の両端部に外部電極3が設けられたものであり、また、コンデンサ本体10は誘電体層5と内部電極層7とが交互に積層された積層体10Aから構成されている。そして、誘電体層5は上述した本発明の誘電体磁器によって形成されることが重要である。なお、図3では、誘電体層5と内部電極層7との積層の状態を単純化して示しているが、本発明の積層セラミックコンデンサは、誘電体層5と内部電極層7とが数百層にも及ぶ積層体を形成している。
このような本発明の積層セラミックコンデンサによれば、誘電体層5として、上記の誘電体磁器を適用することにより、誘電体層5を薄層化しても高い絶縁性を確保でき、高温負荷試験での寿命特性に優れた積層セラミックコンデンサを得ることができる。
ここで、誘電体層5の厚みは3μm以下、特に、2.5μm以下であることが積層セラミックコンデンサを小型高容量化する上で好ましく、さらに本発明では静電容量のばらつきおよび容量温度特性の安定化のために、誘電体層5の厚みは1μm以上であることがより望ましい。
内部電極層7は高積層化しても製造コストを抑制できるという点で、ニッケル(Ni)や銅(Cu)などの卑金属が望ましく、特に、本発明における誘電体層1との同時焼成が図れるという点でニッケル(Ni)がより望ましい。
外部電極3は、例えば、CuもしくはCuとNiの合金ペーストを焼き付けて形成される。
次に、積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。上記の素原料粉末に専用の有機ビヒクルを加えてセラミックスラリを調製し、次いで、セラミックスラリをドクターブレード法やダイコータ法などのシート成形法を用いてセラミックグリーンシートを形成する。この場合、セラミックグリーンシートの厚みは誘電体層の高容量化のための薄層化、高絶縁性を維持するという点で1〜4μmが好ましい。
次に、得られたセラミックグリーンシートの主面上に矩形状の内部電極パターンを印刷して形成する。内部電極パターンとなる導体ペーストはNi、Cuもしくはこれらの合金粉末が好適である。
次に、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを所望枚数重ねて、その上下に内部電極パターンを形成していないセラミックグリーンシートを複数枚、上下層が同じ枚数になるように重ねてシート積層体を形成する。この場合、シート積層体中における内部電極パターンは、長寸方向に半パターンずつずらしてある。
次に、シート積層体を格子状に切断して、内部電極パターンの端部が露出するようにコンデンサ本体成形体を形成する。このような積層工法により、切断後のコンデンサ本体成形体の端面に内部電極パターンが交互に露出されるように形成できる。
次に、コンデンサ本体成形体を脱脂したのち、上述した誘電体磁器と同様の焼成条件および弱還元雰囲気での熱処理を行うことによりコンデンサ本体を作製する。
次に、このコンデンサ本体の対向する端部に、外部電極ペーストを塗布して焼付けを行い外部電極を形成する。また、この外部電極の表面には実装性を高めるためにメッキ膜を形成しても構わない。
まず、原料粉末として、チタン酸バリウム粉末(第1BT粉末および第2BT粉末として用いる。)と、チタン酸バリウムにカルシウムが固溶した粉末(Ba0.95Ca0.05TiO:第2BT粉末として用いるBCT粉末である。)と、MgO粉末と、MnCO粉末と、V粉末と、希土類元素の酸化物粉末とを準備し、これらの各種粉末を表1に示す割合で混合した。これらの原料粉末は純度が99.9%のものを用いた。なお、第1BT粉末および第2BCT粉末の平均粒径は表1に示した。MgO粉末、Y粉末MnCO粉末およびV粉末は平均粒径が0.1μmのものを用いた。
第1BT粉末のBa/Ti比および第2BT粉末として用いるBCT粉末の(Ba+Ca)/Ti比はいずれも1.005とした。焼結助剤はSiO=55、BaO=20、CaO=15、LiO=10(モル%)組成のガラス粉末を用いた。ガラス粉末の添加量はBT粉末100質量部に対して1質量部とした。
次に、これらの原料粉末を直径5mmのジルコニアボールを用いて、溶媒としてトルエンとアルコールとの混合溶媒を添加し湿式混合した。
次に、湿式混合した粉末にポリビニルブチラール樹脂およびトルエンとアルコールの混合溶媒を添加し、同じく直径5mmのジルコニアボールを用いて湿式混合しセラミックスラリを調製し、ドクターブレード法により厚み2.5μmのセラミックグリーンシートを作製した。
次に、このセラミックグリーンシートの上面にNiを主成分とする矩形状の内部電極パターンを複数形成した。内部電極パターンに用いた導体ペーストは、Ni粉末は平均粒径0.3μmのものを、共材としてグリーンシートに用いたBT粉末をNi粉末100質量部に対して30質量部添加した。
次に、内部電極パターンを印刷したセラミックグリーンシートを360枚積層し、その上下面に内部電極パターンを印刷していないセラミックグリーンシートをそれぞれ20枚積層し、プレス機を用いて温度60℃、圧力10Pa、時間10分の条件で一括積層し、所定の寸法に切断した。
次に、積層成形体を水素−窒素中、1150〜1200℃で2時間焼成してコンデンサ本体を作製し、続いて、窒素雰囲気中1000℃で4時間再酸化処理をし、コンデンサ本体を作製した。このコンデンサ本体の大きさは0.95×0.48×0.48mm、誘電体層の厚みは2μm、内部電極層の1層の面積は0.3mmであった。
次に、焼成したコンデンサ本体をバレル研磨した後、コンデンサ本体の両端部にCu粉末とガラスを含んだ外部電極ペーストを塗布し、850℃で焼き付けを行い外部電極を形成した。その後、電解バレル機を用いて、この外部電極の表面に、順にNiメッキ及びSnメッキを行い、積層セラミックコンデンサを作製した。
次に、これらの積層セラミックコンデンサについて以下の評価を行った。以下の評価はいずれも試料数10個とし、平均値を求めた。比誘電率は静電容量を温度25℃、周波数1.0kHz、測定電圧1Vrmsの測定条件で測定し、誘電体層の厚みと内部電極層の全面積から求めた。また、比誘電率の温度特性は静電容量を温度−55〜125℃の範囲で測定した。絶縁抵抗は0.1V/μmおよび2.5V/μmの条件にて測定し、0.1V/μmの条件での測定値に対する2.5V/μmの条件での測定値の比を評価して絶縁抵抗の変化率を求めた。
高温負荷試験は温度125℃において、印加電圧9.45Vの条件で行い、1000時間まで不良なしを良品(表3、6中で○、(なお、×は不良品))とした。高温負荷試験での試料数は各試料20個とした。
また、誘電体層を構成する結晶粒子の平均結晶粒径は走査型電子顕微鏡(SEM)により求めた。研磨面をエッチングし、電子顕微鏡写真内の結晶粒子を任意に20個選択し、各結晶粒子を画像処理し、粒子の面積から円としての直径を求め平均化して求めた。
また、Ca濃度については、積層セラミックコンデンサの積層方向の断面を研磨した誘電体層の表面を約30000倍にて観察し、その画面に存在する、約100個の結晶粒子に対して、元素分析機器を付設した透過電子顕微鏡を用いて、結晶粒子の中心部近傍の任意の場所を分析した。このとき、平均粒径の±30%の範囲にある結晶粒子を選択し、結晶粒子から検出されるBa、Ti、Ca、V、Mg、希土類元素およびMnの全量を100%として、その含有量を求めた。評価した結晶粒子は各試料について100点とし平均値を求め、撮影した透過電子顕微鏡の写真の面積において第1結晶粒子1Aおよび第2結晶粒子1Bのそれぞれの面積比を求めた。
希土類元素の濃度勾配の測定もエネルギー分散型分析器(EDS)を付設した透過電子顕微鏡を用いて測定した。この場合、積層セラミックコンデンサの積層方向の断面を研磨し、各試料の結晶粒子の最表面側から中心部にかけて5nmの間隔でエネルギー分散型分析器を用いて元素分析を行うことにより希土類元素の濃度を求めプロットした。そして、結晶粒子の最表面から15μmの深さまでにおける希土類元素の濃度勾配は、最表面SSの測定点から内部への深さが15nmまでの測定点での差が最小となるように、最小自乗法によって求めた。一方、内部の深さが15nm以上の測定点についても最小自乗法により求めた。そして、30000倍にて撮影した誘電体磁器の所定の面積内にある測定可能な結晶粒子から約50個を任意に抽出して測定し、これも平均値を求めた。この場合も、平均粒径の±30%の範囲にある結晶粒子を選択した。
また、得られた焼結体である試料の組成分析はICP分析もしくは原子吸光分析により行った。この場合、得られた誘電体磁器を硼酸と炭酸ナトリウムと混合し溶融させたものを塩酸に溶解させて、まず、原子吸光分析により誘電体磁器に含まれる元素の定性分析を行い、次いで、特定した各元素について標準液を希釈したものを標準試料として、ICP発光分光分析にかけて定量化した。また、各元素の価数を周期表に示される価数として酸素量を求めた。
調合組成と焼成温度を表1、4に、焼結体中の各元素の酸化物換算での組成を表2、5に、および特性の結果を表3、6にそれぞれ示した。
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表1〜6の結果から明らかなように、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子に対して、バナジウム、マグネシウム、希土類元素およびマンガンをそれぞれ所定の割合で含有させて、結晶粒子の表面から15nmの深さまでの範囲で希土類元素の濃度勾配が0.1原子%/nm以上である第1結晶粒子と、結晶粒子の表面から15nmの深さまでの範囲において0.05原子%/nm以下である第2結晶粒子とを有するものとし、これらの第1結晶粒子および第2結晶粒子の平均結晶粒径をそれぞれ所定の範囲として、さらに、誘電体磁器の単位面積における、第1結晶粒子の面積割合をC1、第2結晶粒子の面積割合をC2としたときに、C2/(C1+C2)比を0.3〜0.7の範囲とした試料No.2〜4、10〜12、14〜16、18〜20、22〜24、26〜28、30〜32、34、35、38、39、42、43、46、47および52〜56では、室温(25℃)での比誘電率を2000以上であり、また、比誘電率の温度特性がX7Rを満足し、さらに、単位厚み(1μm)当たりに印加する直流電圧の値を0.1Vおよび2.5Vとして測定したときの絶縁抵抗の低下率が75%以下であった。
また、これら本発明の誘電体磁器を誘電体層とする積層セラミックコンデンサについて、温度125℃、印加電圧9.45Vの条件で高温負荷試験を行ったところ、いずれも1000時間経過後も不良ゼロであった。
また、第2結晶粒子がチタン酸バリウムにカルシウムが固溶した固溶体であるとともに、第1結晶粒子の平均結晶粒径が0.3〜0.4μmであり、かつ第2結晶粒子の平均結晶粒径が第1結晶粒子の平均結晶粒径よりも大きい試料No.22〜24、30〜32、34、35、38、39、42、43、46および52〜56では、室温(25℃)での比誘電率を2160以上にでき、また、比誘電率の温度変化率がX7Rを満足し、さらに単位厚み当たりに印加する直流電圧の値を0.1Vおよび2.5Vとして絶縁抵抗を評価したときの絶縁抵抗の低下率が50%以下であった。
これに対して、本発明の範囲外の試料No.1、5、9、13、17、21、25、29、33、36、37、40、41、44、45および48〜51では、室温(25℃)での比誘電率を2000より低いか、または、比誘電率の温度変化率がX7Rを満足しないか、あるいは単位厚み当たりに印加する直流電圧の値を0.1Vおよび2.5Vとして絶縁抵抗を評価したときの絶縁抵抗の低下率が75%を超えるか、または、温度125℃、印加電圧9.45Vの条件での高温負荷試験の寿命が1000時間を満足しなかった。
また、結晶粒子の表面から15nmの深さまでにかけて希土類元素の濃度勾配を0.07原子%/nmの試料No.57においては、絶縁抵抗の低下率が50%であったが、比誘電率が1650と低かった。
本発明の誘電体磁器の微構造を示すものであり、コア部およびシェル部の体積割合の異なる2種の結晶粒子が共存した状態を示す断面模式図である。 (a−1)は、本発明の誘電体磁器を構成する第1結晶粒子の断面模式図であり、(a−2)は第1結晶粒子の希土類元素の濃度勾配を示す模式図である。(b−1)は第2結晶粒子の断面模式図であり、(b−2)は第2結晶粒子の希土類元素の濃度勾配を示す模式図である。 本発明の積層セラミックコンデンサの例を示す縦断面図である。
符号の説明
a コア
b シェル
10A 積層体
5 誘電体層
7 内部電極層

Claims (3)

  1. チタン酸バリウムを主成分とし、前記チタン酸バリウムを構成するチタン100モルに対して、バナジウムをV換算で0.1〜0.3モル、マグネシウムをMgO換算で0.5〜1.0モル、希土類元素をRE換算で0.5〜1.0モル、およびマンガンをMnO換算で0.1〜0.5モル含む誘電体磁器であって、該誘電体磁器の結晶粒子は、表面から15nmの深さまでにおける前記希土類元素の濃度勾配が0.1原子%/nm以上で、かつ平均結晶粒径が0.3〜0.54μmである第1結晶粒子と、表面から15nmの深さまでにおける前記希土類元素の濃度勾配が0.05原子%/nm以下で、かつ平均結晶粒径が0.4〜1μmである第2結晶粒子とからなり、前記誘電体磁器の表面を研磨した研磨面において、前記第1結晶粒子が占める面積をC1、前記第2結晶粒子が占める面積をC2としたときに、C2/(C1+C2)が0.3〜0.7であることを特徴とする誘電体磁器。
  2. 前記誘電体磁器はさらにカルシウムを含み、前記第1結晶粒子は前記カルシウムの濃度が0.3原子%よりも少なく、かつ平均結晶粒径が0.3〜0.4μmであり、前記第2結晶粒子は前記カルシウムの濃度が0.3原子%以上であり、かつ平均結晶粒径が前記第1結晶粒子の平均結晶粒径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器。
  3. 請求項1または2に記載の誘電体磁器からなる誘電体層と内部電極層との積層体から構成されていることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
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