JP4557708B2 - 積層セラミックコンデンサおよびその製法 - Google Patents

積層セラミックコンデンサおよびその製法 Download PDF

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Description

本発明は、積層セラミックコンデンサおよびその製法に関し、特に、小型高容量かつ高信頼性を有する積層セラミックコンデンサおよびその製法に関する。
近年、携帯電話などモバイル機器の普及やパソコンなどの主要部品である半導体素子の高速、高周波化に伴い、このような電子機器に搭載される積層セラミックコンデンサは、小型、高容量化の要求がますます高まっている。
そのため積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層は薄層化と高積層化が図られているが、例えば、特許文献1では、誘電体磁器を構成する誘電体粉末について、Aサイトの一部がCaで置換されたチタン酸バリウム粉末(BCT粉末)と、置換Caを含有していないチタン酸バリウム粉末(BT粉末)とを混合して用い、焼成後の誘電体層において、前記チタン酸バリウム結晶粒子の微粒化と比誘電率の向上とともにDCバイアス特性を向上させている。
ところで、上記特許文献1に記載された誘電体磁器を構成するチタン酸バリウム結晶粒子のうちBCT結晶粒子は、比誘電率の温度特性を制御する上で必要不可欠であるMg、希土類元素等の添加成分と混合し、焼成すると、BCT粉末に含まれるCaの拡散にともなって、粒成長が起こり易く、焼成での厳しい条件制御が必要であり、特に、サブミクロン以下の粒径を有する原料を用いた場合には、著しい粒成長を起こしてしまい微粒子のチタン酸バリウム結晶粒子からなる焼結体を作製する事は容易ではないことが知られている。
そのため、上記特許文献1では、焼成時におけるBCT結晶粒子の粒成長を抑制するために、Mgと希土類元素の酸化物を被覆したBT粉末と、BCT粉末とを混合する際に、さらにMnCO、MgOおよび希土類酸化物を添加することにより、焼成後にBT型結晶粒子の表面にほぼ均一に高絶縁性の複合酸化物からなる被覆層を形成するとともに、BCT結晶粒子に対するMg、希土類元素の過剰な固溶や粒成長を抑制している。
また、近年、積層セラミックコンデンサ用の高誘電率材料として、上記BT粉末やBCT粉末とともに、前記BCT粉末のTiサイトを一部Zrで置き換えた(Ba1−xCa(Ti1−yZr)Oが高誘電率材料として見いだされ、高容量系の積層セラミックコンデンサや薄膜コンデンサの誘電体層に供されている(特許文献2)。
特開2003−40671号公報 特開平11−157928号公報
上記特許文献1に記載された製法によれば、焼成温度を高度に制御できる小型の実験用焼成炉を用いる焼成条件を採用する場合には、上記したMgと希土類元素の酸化物を被覆したBT粉末と、BCT粉末とを混合する際に、さらにMnCO、MgOおよび希土類酸化物を添加するという手法を用いても所望の比誘電率や温度特性ならびに高温負荷試験を満足できる試料を形成できる。
しかしながら、ひとたび積層セラミックコンデンサの量産製造に用いるようなトンネル型の大型焼成炉に対する焼成温度の管理レベルにおいては、焼成炉内における焼成時の最高温度のバラツキが大きく、このためBCT結晶粒子の粒成長のばらつきが発生しやすく、比誘電率や温度特性ならびに高温負荷試験特性を満足しない範囲のものが多く発生し、量産での歩留まりが低下するという問題があった。また、このような量産製造における問題は、特許文献2として紹介した(Ba1−xCa(Ti1−yZr)O系の高誘電率材料を用いた場合にも同様に発生していた。
従って本発明は、主結晶粒子がBCTZ結晶粒子とBT結晶粒子とから構成される誘電体磁器を誘電体層として用いてもBCTZ結晶粒子の粒成長を抑制し、トンネル型の大型焼成炉を用いる量産製造においても比誘電率や温度特性ならびに高温負荷試験特性を向上できる積層セラミックコンデンサおよびその製法を提供することを目的とする。
本発明の積層セラミックコンデンサは、主結晶粒子と粒界相とからなる誘電体層と、内部電極層とを交互に積層してなるコンデンサ本体を具備する積層セラミックコンデンサであって、前記主結晶粒子は、Ca濃度が0.2原子%以下のチタン酸バリウム結晶粒子(BT結晶粒子)と、Zrを含むとともにCa濃度が0.4原子%以上のチタン酸バリウム結晶粒子(BCTZ結晶粒子)とからなり、前記誘電体層は、Mg、希土類元素およびMnを含有するとともに、前記誘電体層のBaとCaとの合計量をAモルとし、TiとZrとの合計量をBモルとしたときに、1.003≦A/B≦1.005の関係を満足することを特徴とする。
上記積層セラミックコンデンサでは、BCTZ結晶粒子中のBaとCaの合量をAモルとし、TiとZrの合量をBモルとしたときに、モル比で、A/B≧1.003の関係を満足することが望ましい。
本発明の積層セラミックコンデンサの製法は、上述した積層セラミックコンデンサの製法であって、CaおよびZrを含有していないペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BT粉末)および(Ba1− (Ti1−yZr)O(x=0.01〜0.2、y=0.15〜0.25)で表されるペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BCTZ粉末)の混合粉末に、Mg、希土類元素、Mnの酸化物粉末、アルミナの含有量が1質量%以下のガラス粉末、および炭酸バリウム粉末を添加した誘電体粉末と有機樹脂とを含有するグリーンシートと内部電極パターンとを交互に積層してコンデンサ本体成形体を作製し、該コンデンサ本体成形体を焼成することを特徴とする。
また、本発明の積層セラミックコンデンサの他の製法は、CaとZrとを含有していないペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BT粉末)および(Ba1− (Ti1−yZr)O(x=0.01〜0.2、y=0.15〜0.25)で表されるペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BCTZ粉末)のそれぞれに、Mg、希土類元素およびMnの酸化物を被覆した混合粉末に、アルミナの含有量が1質量%以下のガラス粉末、および炭酸バリウム粉末を添加した誘電体粉末と有機樹脂とを含有するグリーンシートと内部電極パターンとを交互に積層してコンデンサ本体成形体を作製し、該コンデンサ本体成形体を焼成することを特徴とする。
記積層セラミックコンデンサの製法では、BCTZ粉末として、BaおよびCaの合量をAモル、TiおよびZrの合量をBモルとしたときに、A/Bが1.003以上であるものを用いること、BCTZ粉末として、Mg、希土類元素およびMnの合計の添加量が質量でBT粉末に含まれるMg、希土類元素およびMnの合計の添加量よりもものを用いることが好ましい。
本発明の積層セラミックコンデンサによれば、積層セラミックコンデンサの誘電体層を構成するBT結晶粒子およびBCTZ結晶粒子が、BaとCaの合量をAモルとし、TiとZrの合量をBモルとしたときに、モル比で、1.003≦A/B1.00の関係を満足するものを用いることにより、BCTZ結晶粒子の粒成長のばらつきを小さくでき、比誘電率や温度特性ならびに高温負荷試験特性を向上できる。また、誘電体層をこのような構成とすることにより、焼成炉内における焼成時の最高温度のバラツキが大きいトンネル型の大型焼成炉を用いた積層セラミックコンデンサの量産製造においても、比誘電率や温度特性ならびに高温負荷試験特性などが安定し歩留まりを高めることができる。
また、本発明の積層セラミックコンデンサの製法によれば、CaおよびZrを含有していないペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BT粉末)および(Ba1− (Ti1−yZr)O(x=0.01〜0.2、y=0.15〜0.25)で表されるペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BCTZ粉末)の混合粉末に、Mg、希土類元素、Mnの酸化物粉末、アルミナの含有量が1質量%以下のガラス粉末、および炭酸バリウム粉末を添加した誘電体粉末と有機樹脂とを含有するグリーンシートと内部電極パターンとを交互に積層してコンデンサ本体成形体を作製し、該コンデンサ本体成形体を焼成するか、あるいはCaとZrとを含有していないペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BT粉末)および(Ba1− (Ti1−yZr)O(x=0.01〜0.2、y=0.15〜0.25)で表されるペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BCTZ粉末)のそれぞれに、Mg、希土類元素およびMnの酸化物を被覆した混合粉末に、アルミナの含有量が1質量%以下のガラス粉末、および炭酸バリウム粉末を添加した誘電体粉末と有機樹脂とを含有するグリーンシートと内部電極パターンとを交互に積層してコンデンサ本体成形体を作製し、該コンデンサ本体成形体を焼成することにより、積層セラミックコンデンサの量産製造において、焼成炉内における焼成時の最高温度のバラツキの大きいトンネル型の大型焼成炉を用いても、BCTZ結晶粒子およびBT結晶粒子を主結晶粒子とする誘電体層の比誘電率や温度特性ならびに、その誘電体層を具備する積層セラミックコンデンサ高温負荷試験特性などが安定し、歩留まりを容易に高めることができる。
(構造)
本発明の積層セラミックコンデンサについて、図1の概略断面図をもとに詳細に説明する。図1は、本発明の積層セラミックコンデンサを示す概略断面図である。引出しの拡大図は誘電体層を構成する主結晶粒子と粒界相を示す模式図である。本発明の積層セラミックコンデンサは、コンデンサ本体1の両端部に外部電極3が形成されている。この外部電極3は、例えば、CuもしくはCuとNiの合金ペーストを焼き付けて形成されている。
コンデンサ本体1は誘電体層5と内部電極層7とが交互に積層され構成されている。誘電体層5は、主結晶粒子9と粒界相11により構成されている。その厚みは3μm以下、特に、2.5μm以下であることが積層セラミックコンデンサを小型高容量化する上で好ましく、さらに本発明で、静電容量のばらつきおよび容量温度特性の安定化のために、誘電体層5の厚みばらつきが10%以内であることがより望ましい。
内部電極層7は、高積層化しても製造コストを抑制できるという点で、ニッケル(Ni)や銅(Cu)などの卑金属が望ましく、特に、本発明にかかる誘電体層5との同時焼成が図れるという点でニッケル(Ni)がより望ましい。
本発明にかかる主結晶粒子9の平均粒径は、誘電体層5の薄層化による高容量化と高絶縁性を達成するという点で0.4μm以下、d90で0.7μm以下が好ましい。d90とは、粒度分布における質量での90%積算累積値である。一方、BCTZ結晶粒子9aおよびBT結晶粒子9bの粒径の下限値としては誘電体層5の比誘電率を高め、かつ比誘電率の温度依存性を抑制するという理由から、0.15μm以上が好ましい。
また、本発明にかかる誘電体層5を構成する主結晶粒子9は、BaとTiを主成分とし、CaおよびZr成分濃度が異なる結晶粒子である。即ち、Aサイトの一部がCaで置換され、Bサイトの一部がZrで置換されたペロブスカイト型チタン酸バリウム結晶粒子(BCTZ結晶粒子9a)と、CaおよびZrを含有していないペロブスカイト型チタン酸バリウム結晶粒子(BT結晶粒子9b)とからなる。
つまり本発明にかかる主結晶粒子9は、BCTZ結晶粒子9aとBT結晶粒子9bとを含有するものであり、上述のように、このような2種の結晶粒子が共存していることにより優れた特性を示す。そして、本発明にかかる主結晶粒子9のうちBT結晶粒子9bは理想的にはBaTiOで表される。なお本発明においてCaおよびZrを含有していないBT結晶粒子9bとは、分析値として、Ca、Zr濃度が0.2原子%以下であるものであるが、BCTZ結晶粒子9a中に含まれるCaおよびZr成分がわずかにBT結晶粒子9b中に拡散するものも含まれる。
一方、BCTZ結晶粒子9aはCa成分濃度が0.4原子%以上、特に、このBCTZ結晶粒子9aの高い比誘電率をもつ強誘電体としての機能を維持するという点で、Ca成分濃度は0.5〜2.5原子%であることが望ましい。
ここで主結晶粒子9を構成するひとつの結晶粒子であるBCTZ結晶粒子9aは、上記のようにAサイトの一部がCaで置換され、一方、Bサイトの一部がZrで置換されたペロブスカイト型チタン酸バリウムであり、理想的には、(Ba1−xCa(Ti1−yZr)Oで表される。本発明において、上記BCTZ結晶粒子9aにおけるAサイト中のCa置換量は、x=0.01〜0.2、特にx=0.02〜0.07であること、y=0.15〜0.25、特にX=0.175〜0.225であることが好ましい。Ca置換量がこの範囲内であれば、室温付近の相転移点が十分低温側にシフトし、BT結晶粒子9bとの共存構造により、積層セラミックコンデンサとして使用する温度範囲において優れた温度特性およびDCバイアス特性を確保できるからである。また、Zr置換量がこの範囲内であれば、誘電損失を小さくし比誘電率を高める効果がある。
本発明では、誘電体層5の主結晶粒子9を構成するBCTZ結晶粒子9aとBT結晶粒子9bとは、上記Ca濃度を規定したときの指標に基づく評価において、誘電体層5の断面もしくは表面の結晶組織におけるそれぞれの結晶粒子の面積比で、BCTZ結晶粒子9aの割合をABCTZ、BT結晶粒子9bの割合をABTとしたときに、ABT/ABCTZ=0.1〜3の関係を有する組織的な割合で共存していることが望ましく、特に、比誘電率、温度特性およびDCバイアス特性をさらに向上させるという点でABT/ABCTZ=0.3〜2が好ましい。
また、前記BCTZ結晶粒子9aおよびBT結晶粒子9bは、いずれも、Mg、希土類元素およびMnを含有することを特徴とし、それらの結晶粒子に含まれるMg、希土類元素およびMn含有量は、主結晶粒子100質量部に対して、MgはMgO換算で0.04〜0.14質量部、特に、0.04〜0.1質量部、希土類元素はR 換算で0.2〜0.9質量部、特に、0.22〜0.5質量部、MnはMnCO換算で0.04〜0.15質量部、特に、0.05〜0.1質量部(被覆の場合にはMnOの形態である。)、であれば、さらに静電容量の温度特性を安定化し、かつ高温負荷試験での信頼性を向上できる。
さらには、上記静電容量の温度特性の安定化および高温負荷試験での信頼性の向上という点でBCTZ結晶粒子9aに含まれるMg、希土類元素およびMnの合量濃度がBT結晶粒子9bに含まれるMg、希土類元素およびMnの合量濃度よりも高いことがより好ましい。これらMg、希土類元素およびMnはBCTZ結晶粒子9aおよびBT結晶粒子9b中に固溶するが、一部、粒界相11に存在する。本発明にかかる誘電体層5において、Mg、希土類元素は、BT結晶粒子9bおよびBCTZ結晶粒子9aをコアシェル構造とする成分であり、これにより、特に、BCTZ結晶粒子9aの粒成長を抑制できる。Mnは還元雰囲気における焼成によって生成するBT結晶粒子9b、BCTZ結晶粒子9a中の酸素欠陥を補償し、絶縁性および高温負荷寿命を高めることができる。
また本発明にかかる誘電体層5では、主結晶粒子9に含まれる希土類元素は粒子表面である粒界相11を最高濃度として結晶粒子表面から粒子内部にかけて濃度勾配を有するとともに、0.05原子%/nm以上であることが望ましい。つまり、希土類元素の濃度勾配がこのような条件であれば、比誘電率および高温負荷寿命の向上とともに容量温度特性としてもX7R規格を満足できる。ここで本発明における希土類元素としては、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Er、Tm、Yb、Lu、Scのうち少なくとも1種が好ましい。
上記のように本発明の誘電体磁器においては、BCTZ結晶粒子9aとBT結晶粒子9bとが共存していることを特徴とするものである。このような共存系において、BCTZ結晶粒子9a及びBT結晶粒子9bは、粒子中心よりも粒子表面側に焼結助剤に由来するMg及び希土類元素が偏在したコアシェル型構造を形成し、その結果、高誘電率となり、比誘電率の温度依存性やDCバイアス依存性が極めて小さいという特性を有している。
また、本発明にかかる誘電体層5では、誘電体層5の比誘電率を高く維持でき、かつ加速試験における耐性を高めるという理由から、磁器中に含まれるアルミナの不純物量が1質量%以下であることが望ましい。
次に、本発明に係るチタン酸バリウムを主成分とする主結晶粒子9の特性発現機構について説明する。一般に、BT結晶粒子9bは、逐次相転移に伴う原子の揺らぎに起因して4000を越す大きな比誘電率を示すが、逐次相転移の前駆現象である原子の揺らぎに起因した高比誘電率の為、DCバイアスの印加による比誘電率の減少が大きい。このBT結晶粒子9bに見られる3つの逐次相転移点の内、最も高温(125℃程度)にある相転移温度は、Aサイトの一部がCaで置換されても殆ど変わることがないが、室温近傍とそれよりさらに低温の構造相転移点は、置換Ca量の増大に比例して低温にシフトする。即ち、BT結晶粒子が高誘電率を示す大きな要因は、室温近傍とさらに低温の構造相転移の前駆現象である原子の揺らぎの増大によるものである。
一方、BCTZ結晶粒子9aでは、Caにより比誘電率の温度特性を平坦化するデプレッサとして作用するとともに、絶縁抵抗値を高める元素として作用するものであり、また、Zrは主にキュリー点を低温側に移動させるシフターとして作用するものであるために、室温近傍及びさらに低温での転移点が低温側にシフトしており、室温近傍における比誘電率を極めて向上させることができるものである。
即ち、本発明の誘電体磁器では、高い比誘電率を示し、温度特性に優れたBT結晶粒子9bと、室温近傍における比誘電率が極めて高いBCTZ結晶粒子9aとの共存構造を実現する事により、BT結晶粒子9bに比べ比誘電率が高く、また、BCTZ結晶粒子9aに比べ誘電特性の温度依存性が小さいという特性を示すものとなる。
加えて本発明では、主結晶粒子9は、BaとTiを主成分とし、CaおよびZr成分濃度が異なる結晶粒子であり、かつMg、希土類元素およびMnを含有するとともに、BaとCaの合量をAモルとし、TiとZrの合量をBモルとしたときに、モル比で、1.003≦A/B1.00の関係を満足することが重要であり、さらには、主結晶粒子9を構成する結晶粒子の主要なひとつであるBCTZ結晶粒子9a中のAサイト(Ba、Ca)とBサイト(Ti、Zr)とのモル比A/Bが1.003以上であることが望ましい。従来のBCTZ結晶粒子9aでは、Mgおよび希土類元素と混合すると、Caの拡散に伴って粒成長が起こりやすいとされていたのを、本発明ではBCTZ結晶粒子9aのA/B比を上記のように規定することにより、特に、BCTZ結晶粒子9aの粒成長を抑制できる。
これに対して、BCTZ結晶粒子9aがMg、希土類元素およびMnを含まない場合、またはA/B比が1.002以下の場合にはBCTZ結晶粒子9aの粒成長が起こりやすく、絶縁性が低下し、高温負荷試験での不良が発生しやすくなる。
(製法)
次に、本発明に係る積層セラミックコンデンサの製法について詳細に説明する。図2は、本発明の積層セラミックコンデンサの製法を示す工程図である。
本発明の積層セラミックコンデンサの製法は、誘電体粉末と有機樹脂とを含有するグリーンシートと内部電極パターンとを交互に積層して構成されたコンデンサ本体成形体を焼成する積層セラミックコンデンサの製法において、前記誘電体粉末が、Aサイトの一部がCaで置換され、Bサイトの一部がZrで置換されたペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BCTZ粉末)と、CaおよびZrを含有していないペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BT粉末)との混合粉末に対して、Mg、希土類元素、およびMnの酸化物と、アルミナの含有量が1質量%以下のガラスと、炭酸バリウム粉末とを添加したものであることを特徴とする。
ここで、前記誘電体粉末が、Aサイトの一部がCaで置換され、Bサイトの一部がZrで置換されたペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BCTZ粉末)と、CaおよびZrを含有していないペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BT粉末)との混合粉末100質量部に対して、Mg、希土類元素、およびMnを酸化物換算で、合量で0.05〜1.5質量部、アルミナの含有量が1質量%以下のガラスを1〜1.4質量部、炭酸バリウム粉末を0.01〜1質量部を添加したものであることが望ましい。
(a)工程:本発明の製法では、まず、以下に示す原料粉末をポリビニルブチラール樹脂などの有機樹脂や、トルエンおよびアルコールなどの溶媒とともにボールミルなどを用いて混合してセラミックスラリを調製し、次いで、上記セラミックスラリをドクターブレード法やダイコータ法などのシート成形法を用いてセラミックグリーンシート21を形成する。セラミックグリーンシート21の厚みは、誘電体層5の高容量化のための薄層化、高絶縁性を維持するという点で1〜4μmが好ましい。
本発明の製法に用いられるBCTZ粉末およびBT粉末である誘電体粉末は、それぞれ(Ba1−xCa(Ti1−yZr)OおよびBaTiOで表される原料粉末である。ここで上記BCTZ粉末におけるAサイト中のCa置換量は、x=0.01〜0.2、特にx=0.02〜0.07であること、y=0.15〜0.25、特にX=0.175〜0.225であることが好ましい。
また、BCTZ粉末は、その構成成分であるAサイト(Ba、Ca)とBサイト(Ti、Zr)との原子比A/Bが1.003以上であることが望ましい。これらBT粉末およびBCTZ粉末は、Ba成分、Ca成分、Ti成分、Zr成分を含む化合物を所定の組成になるように混合して合成される。これらの誘電体粉末は、固相法、液相法(蓚酸塩を介して生成する方法を含む)、水熱合成法などから選ばれる合成法により得られたものである。このうち得られる誘電体粉末の粒度分布が狭く、結晶性が高いという理由から水熱合成法により得られた誘電体粉末が望ましい。
本発明にかかる誘電体粉末であるBT粉末およびBCTZ粉末の粒径は、誘電体層5の薄層化を容易にし、かつ誘電体粉末の比誘電率を高めるという点で0.15〜0.4μmであることが望ましい。
また、このように比誘電率の高い誘電体粉末として、その結晶性は、X線回折を用いて評価したときに、例えば、正方晶を示す指数(001)PAAのピークと、立方晶を示す指数(100)PBBのピークとの比がPAA/PBBが1.1以上であることが望ましい。
さらに、本発明の誘電体層5を構成する場合の上記BCTZ粉末とBT粉末との混合比は、焼成後に得られる磁器において、特に、比誘電率、温度特性およびDCバイアス特性をさらに向上させるという点で、BCTZ粉末量をWBCTZ、BT粉末量をWBT、としたときに、WBCTZ/WBT比が、質量比で0.95〜1.05の範囲であることが望ましい。
この場合、上記誘電体粉末に添加するMg、希土類元素およびMnは、BCTZ粉末とBT粉末の混合粉末100質量部に対して、それぞれ酸化物換算で、0.04〜0.14質量部、0.2〜0.9質量部、および0.04〜0.15質量部であることが好ましい。
また、上記誘電体粉末に添加するガラス粉末は、構成成分として、LiO、SiO、BaOおよびCaOにより構成される。ガラス粉末の添加量はBCTZ粉末とBT粉末の混合物である誘電体粉末100質量部に対して、1〜1.3質量部であることが磁器の焼結性を高めるという点でより好ましい。その組成は、LiO=5〜15モル%、SiO=40〜60モル%、BaO=10〜30モル%、およびCaO=10〜30モル%望ましく、また、本発明にかかるガラス粉末では、特に、アルミナの含有量が1質量%以下であることが重要であり、特に、0.1質量%以下が好ましい。平均粒径はガラス粉末の分散性を高め、粒界相11の領域を狭くできるという理由から0.5μm以下が好ましい。
炭酸バリウム粉末は、BCTZ粉末とBT粉末の混合物である誘電体粉末100質量部に対して、0.01〜1質量部であることが粒成長を抑制するという理由から好ましい。
(b)工程:次に、上記得られたセラミックグリーンシート21の主面上に矩形状の内部電極パターン23を印刷して形成する。内部電極パターン23となる導体ペーストは、Ni、Cuもしくはこれらの合金粉末を主成分金属とし、これに共材としてのセラミック粉末を混合し、有機バインダ、溶剤および分散剤を添加して調製する。金属粉末としては、上記誘電体粉末との同時焼成を可能にし、低コストという点でNiが好ましい。セラミック粉末としては焼成時の柱状のセラミックスの異常粒成長を抑制できるという理由から、Ca、Zr濃度の低いBT粉末が好ましいが、こうして本発明にかかる内部電極層7は、導体ペーストにセラミックス粉末を含有させることで、電極層を貫通して上下の誘電体層5を接続するように柱状のセラミックスが形成され、これにより誘電体層5と内部電極層7間の剥離を防止でき、機械的強度を高くできる。また、内部電極層に形成される柱状のセラミックスの異常粒成長を抑制することによっても積層セラミックコンデンサの容量温度依存性を小さくできる。内部電極パターン23の厚みは積層セラミックコンデンサの小型化および内部電極パターン23による段差を低減するという理由から1μm以下が好ましい。
なお、本発明によれば、セラミックグリーンシート21上の内部電極パターン23による段差解消のために、内部電極パターンの周囲にセラミックパターン25を内部電極パターン23と実質的に同一厚みで形成することが好ましい。セラミックパターン25を構成するセラミック成分は、同時焼成での焼成収縮を同じにするという点で前記誘電体粉末を用いることが好ましい。
(c)工程:次に、内部電極パターン23が形成されたセラミックグリーンシート21を所望枚数重ねて、その上下に内部電極パターン23を形成していないセラミックグリーンシート21を複数枚、上下層が同じ枚数になるように重ねて仮積層体を形成する。仮積層体中における内部電極パターン23は、長寸方向に半パターンずつずらしてある。このような積層工法により、切断後の積層体の端面に内部電極パターン23が交互に露出されるように形成できる。
本発明においては、上記したように、セラミックグリーンシート21の主面に内部電極パターン23を予め形成しておいて積層する工法のほかに、セラミックグリーンシート21を一旦下層側の機材に密着させたあとに、内部電極パターン23を印刷し、乾燥させた後に、その印刷乾燥された内部電極パターン23上に、内部電極パターン23を印刷していないセラミックグリーンシート21を重ねて、仮密着させ、このようなセラミックグリーンシート21の密着と内部電極パターン23の印刷を逐次行う工法によっても形成できる。
次に、仮積層体を上記仮積層時の温度圧力よりも高温、高圧の条件にてプレスを行い、セラミックグリーンシート21と内部電極パターン23とが強固に密着された積層体29を形成できる。
次に、積層体29を切断線hに沿って、即ち、積層体中に形成されたセラミックパターン29の略中央を、内部電極パターン25の長寸方向に対して垂直方向(図4の(c1)、および図4の(c2))に、内部電極パターン23の長寸方向に平行に切断して、内部電極パターン23の端部が露出するようにコンデンサ本体成形体が形成される。一方、内部電極パターン23の最も幅の広い部分においては、サイドマージン部側にはこの内部電極パターン23は露出されていない状態で形成される。
次に、このコンデンサ本体成形体を、所定の雰囲気下、温度条件で焼成してコンデンサ本体が形成され、場合によっては、このコンデンサ本体の稜線部分の面取りを行うとともに、コンデンサ本体の対向する端面から露出する内部電極層を露出させるためにバレル研磨を施しても良い。本発明の製法において、脱脂は500℃までの温度範囲で、昇温速度が5〜20℃/h、焼成温度は最高温度が1130〜1250℃の範囲、脱脂から最高温度までの昇温速度が200〜500℃/h、最高温度での保持時間が0.5〜4時間、最高温度から1000℃までの降温速度が200〜500℃/h、雰囲気(酸素分圧PO)が10−7〜10−5Pa、焼成後の熱処理(再酸化処理)最高温度が900〜1100℃、雰囲気が窒素中であることが好ましい。
次に、このコンデンサ本体3の対向する端部に外部電極ペーストを塗布して焼付けを行い外部電極5が形成される。また、この外部電極5の表面には実装性を高めるためにメッキ膜が形成される。
次に、本発明に係る他の誘電体粉末を用いた場合について説明する。本発明の積層セラミックコンデンサの製法では、上記したようなBCTZ粉末およびBT粉末に対してMg、希土類元素、Mnの酸化物粉末を添加する方法とは別に、BCTZ粉末およびBT粉末などの誘電体粉末に、予め、Mg、希土類元素、Mnの酸化物粉末を被覆した誘電体粉末を用いることもできる。この場合、誘電体粉末が異なる以外は、図4(a)工程〜(c)工程は同じである。
即ち、本発明の積層セラミックコンデンサの製法は、誘電体粉末と有機樹脂とを含有するセラミックグリーンシートと内部電極パターンとを交互に積層して構成されたコンデンサ本体成形体を焼成する積層セラミックコンデンサの製法において、前記誘電体粉末が、それぞれ、Mg、希土類元素およびMnの酸化物を被覆してなり、Aサイトの一部がCaで置換され、Bサイトの一部がZrで置換されたペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BCTZ粉末)、置換Caを含有していないペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BT粉末)との混合粉末100質量部に対して、アルミナの含有量が1質量%以下のガラスを1〜1.4質量部、炭酸バリウムを0.01〜1質量部、を添加したものである。
この場合、前記Mg、希土類元素およびMnの酸化物を添加する場合に比較して、Mg、希土類元素およびMnの酸化物は少なく、特に、Mgおよび希土類元素量を減らすことができる。このためBT粉末およびBCTZ粉末の比誘電率の低下を抑制でき、このことから用いるBT粉末およびBCTZ粉末についてより微粒なものを用いることができる。
BTおよびBCTZ粉末へのMg、希土類元素およびMnの酸化物に被覆は、BTおよびBCTZ粉末に所定量のMg、希土類元素およびMnの酸化物を混合し、メカノケミカル的な方法により被覆できる。
そして、本発明では、BCTZおよびBT粉末に個々にMg、希土類元素およびMnを被覆できることからその含有量を変化させることができる。本発明では、BCTZ粉末に含まれるMg、希土類元素およびMnの合量濃度が、BT粉末に含まれる前記Mg、希土類元素およびMnの合量濃度よりも高いことが望ましい。BCTZ粉末に含まれるMg、希土類元素およびMnの合量濃度をBT粉末に含まれる前記Mg、希土類元素およびMnの合量濃度よりも高くすることにより、焼成時により粒成長しやすいBCTZ粉末の粒成長を効果的に抑制できる。それとともにBCTZ粉末からのCaの拡散を抑制できる。
上記述べた本発明にかかるBCTZ結晶粒子9aおよびBT結晶粒子9bは、一般に、いずれも焼結時に原子拡散による粒成長を起こしやすく、微小粒径の緻密な焼結体を得にくいものである。特に、用いる原料粒子サイズがサブミクロンより小さい場合、粒子体積に対し、表面積が大きな割合を占め、表面エネルギーが大きいことによって、エネルギー的に不安定な状態になってしまう。このため、焼成に際して、原子拡散による粒成長を生じ、表面積が小さくなって表面エネルギーの低下による安定化が生じる。従って、粒成長が起こりやすく、微小サイズの粒子からなる緻密焼結体は得にくいものとなっている。
具体的には、0.2μmより小さい微小粒子サイズのBT結晶粒子9bおよびBCTZ結晶粒子9aの焼結体は、容易に固溶・粒成長を生じ、粒子間の原子の移動を抑制するものを粒子間に導入しなければ1μmを越える大きな粒子サイズからなる焼結体が形成されてしまい、サブミクロン以下の微小粒子サイズからなる緻密な焼結体を得るのは困難である。しかるに、本発明では、微小結晶原料とともに、BCTZ結晶粒子中のAサイト(Ba、Ca)とBサイト(Ti、Zr)とのモル比A/Bを1.003以上とし、かつMgとYの様な希土類元素を添加剤として導入し、さらに焼成条件を調整する事により、原料結晶粒子のサイズを反映した微小粒子焼結体を得ることができる。BT結晶粒子9bあるいはBCTZ結晶粒子9aにおいてAサイト側の元素比を高くすると、バリウムまたはバリウム、Caが粒子表面に多く存在することにより、これらバリウムおよびその他の添加物は粒子表面に拡散し液相を形成しやすくなり焼結を促進するとともに、粒界近傍及び粒界に存在して母相であるBT結晶粒子9b、BCTZ結晶粒子9a間におけるBa、Ca、Ti、Zr原子の移動を抑制し粒成長が抑制される。即ち、Mg及び希土類元素が粒子表面に偏在したコアシェル構造が形成される。尚、このようなコアシェル構造の形成は、これらの結晶粒子を透過型電子顕微鏡で観察することにより確認することができる。
積層セラミックコンデンサを以下のようにして作製した。用いる原料粉末の種類、平均粒径、添加量、焼成温度を表1に示した。ここで用いるBT粉末およびBCTZ粉末は当モルとし、A/Bサイト比は1.001および1.003のものを用いた。BTおよびBCTZ粉末の粒径は主体が0.2〜0.4μmのものを用いた。BCTZ粉末は組成が(Ba0.95Ca0.05(Ti0.8Zr0.2)Oのものを用いた。ガラス粉末は表1に示す量だけアルミナを含有すし、組成はSiO=50、BaO=20、CaO=20、LiO=10(モル%)のガラス粉末を用いた。被覆ありとは、BT粉末、BCTZ粉末にそれぞれMg、Y、Mnを酸化物で被覆したものである。
上記粉末を直径5mmのジルコニアボールを用いて、溶媒としてトルエンとアルコールとの混合溶媒を添加し湿式混合した。次に、湿式混合した粉末にポリビニルブチラール樹脂およびトルエンとアルコールの混合溶媒を添加し、同じく直径5mmのジルコニアボールを用いて湿式混合しセラミックスラリを調製し、ドクターブレード法により厚み3μmのセラミックグリーンシートを作製した。
次に、このセラミックグリーンシートの上面にNiを主成分とする矩形状の内部電極パターンを複数形成し、その周囲に実質的に同一高さでセラミックグリーンシートと同じセラミック成分のセラミックパターンを形成した。内部電極パターンに用いた導体ペーストは、Ni粉末として平均粒径0.3μmのもの、共材としてグリーンシートに用いたBT粉末をNi粉末100質量部に対して30質量部添加した。
次に、内部電極パターンを印刷したセラミックグリーンシートを360枚積層し、その上下面に内部電極パターンを印刷していないセラミックグリーンシートをそれぞれ20枚積層し、プレス機を用いて温度60℃、圧力10Pa、時間10分の条件で一括積層し、所定の寸法に切断した。
次に、積層成形体を10℃/hの昇温速度で大気中で300℃/hにて脱バインダ処理を行い、500℃からの昇温速度が300℃/hの昇温速度で、1155〜1245℃(酸素分圧10−6Paで2時間焼成し、続いて300℃/hの降温速度で1000℃まで冷却し、窒素雰囲気中1000℃で4時間再酸化処理をし、300℃/hの降温速度で冷却し、コンデンサ本体を作製した。このコンデンサ本体の大きさは2×1.3×1.3mm、誘電体層の厚みは2μmであった。
次に、焼成した電子部品本体をバレル研磨した後、電子部品本体の両端部にCu粉末とガラスを含んだ外部電極ペーストを塗布し、850℃で焼き付けを行い外部電極を形成した。その後、電解バレル機を用いて、この外部電極の表面に、順にNiメッキ及びSnメッキを行い、積層セラミックコンデンサを作製した。
上記作製した積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層は、断面の結晶組織におけるそれぞれの結晶粒子の面積比で、BCTZ結晶粒子の割合をABCTZ、BT結晶粒子の割合をABTとしたときに、ABT/ABCTZ=0.8〜1.2であった。また、チタン酸バリウム結晶粒子に含まれる希土類元素(イットリウム)は粒子表面である粒界相を最高濃度として結晶粒子表面から粒子内部にかけて0.05原子%/nm以上の濃度勾配を有していた。
次に、これらの積層セラミックコンデンサについて以下の評価を行った。以下の評価における試料数は100個とした。
静電容量および比誘電率ならびに比誘電率の温度特性は、周波数1.0kHz、測定電圧0.5Vrmsの測定条件で行った。比誘電率は、静電容量と内部電極層の有効面積、誘電体層の厚みから算出した。高温負荷試験は125℃、9.45V、1000時間まで評価した。
また、誘電体層を構成するBT型結晶粒子とBCTZ型結晶粒子の平均粒径は走査型電子顕微鏡(SEM)により求めた。研磨面をエッチングし、電子顕微鏡写真内の結晶粒子を任意に20個選択し、インターセプト法により各結晶粒子の最大径を求め、それらの平均値とD90(小径から大径にかけての90%累積値)を求めた。この場合の試料数は5個とした。
Ca濃度については透過電子顕微鏡およびEDS(元素分析装置)を用いて中心部近傍の任意の場所を分析した。その際、Ca濃度が0.4原子%よりも高いもの(小数点2位四捨五入)に関してCa濃度の高い誘電体粒子とした。この分析は1試料中の主結晶粒子100〜150個について行った。
Figure 0004557708
Figure 0004557708
表1、2の結果から明らかなように、BT粉末およびBCTZ粉末にMg、Y、Mnを含み、かつBaとCaとの合計量をAモルとし、TiとZrとの合計量をBモルとしたときに、モル比で、1.003≦A/B≦1.005である本発明にかかる試料では、焼成温度が1155〜1245℃において焼成したもの全ての温度領域において、比誘電率が5850以上、温度特性が125℃において−18.6%より小さく、また、−55℃においてはいずれも±15%以内であり、高温負荷試験での不良も無かった。
一方、BTおよびBCTZ粉末のA/Bサイト比が1.001以下のものに対して、炭酸バリウムを加えなかった試料では、焼成温度が1155〜1245℃において、1215℃での特性は上記本発明の試料と同じ程度の比誘電率を示したが、1215℃より高い温度の1245℃以上の温度、もしくは1155℃の温度で焼成した試料について静電容量の温度特性が大きく、高温負荷試験での不良がみられた。
本発明の積層セラミックコンデンサの縦断面図である。 本発明の積層セラミックコンデンサの製法を示す工程図である。
符号の説明
1 コンデンサ本体
3 外部電極
5 誘電体層
7 内部電極層
9 主結晶粒子
9a BCTZ結晶粒子
9b BT結晶粒子
21 セラミックグリーンシート
23 内部電極パターン
25 セラミックパターン
29 積層体

Claims (6)

  1. 主結晶粒子と粒界相とからなる誘電体層と、内部電極層とを交互に積層してなるコンデンサ本体を具備する積層セラミックコンデンサにおいて、前記主結晶粒子は、Ca濃度が0.2原子%以下のチタン酸バリウム結晶粒子(BT結晶粒子)と、Zrを含むとともにCa濃度が0.4原子%以上のチタン酸バリウム結晶粒子(BCTZ結晶粒子)とからなり、前記誘電体層は、Mg、希土類元素およびMnを含有するとともに、前記誘電体層のBaとCaとの合計量をAモルとし、TiとZrとの合計量をBモルとしたときに、1.003≦A/B≦1.005の関係を満足することを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
  2. 前記BCTZ結晶粒子中のBaとCaとの合計量をAモルとし、TiとZrとの合計量をBモルとしたときに、A/B≧1.003の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
  3. 請求項1又は2に記載の積層セラミックコンデンサの製法であって、CaおよびZrを含有していないペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BT粉末)および(Ba1− (Ti1−yZr)O(x=0.01〜0.2、y=0.15〜0.25)で表されるペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BCTZ粉末)の混合粉末に、Mg、希土類元素、Mnの酸化物粉末、アルミナの含有量が1質量%以下のガラス粉末、および炭酸バリウム粉末を添加した誘電体粉末と有機樹脂とを含有するグリーンシートと内部電極パターンとを交互に積層してコンデンサ本体成形体を作製し、該コンデンサ本体成形体を焼成することを特徴とする積層セラミックコンデンサの製法。
  4. 請求項1又は2に記載の積層セラミックコンデンサの製法であって、CaとZrとを含有していないペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BT粉末)および(Ba1− (Ti1−yZr)O(x=0.01〜0.2、y=0.15〜0.25)で表されるペロブスカイト型チタン酸バリウム粉末(BCTZ粉末)のそれぞれに、Mg、希土類元素およびMnの酸化物を被覆した混合粉末に、アルミナの含有量が1質量%以下のガラス粉末、および炭酸バリウム粉末を添加した誘電体粉末と有機樹脂とを含有するグリーンシートと内部電極パターンとを交互に積層してコンデンサ本体成形体を作製し、該コンデンサ本体成形体を焼成することを特徴とする積層セラミックコンデンサの製法。
  5. 前記BCTZ粉末として、BaおよびCaの合計量をAモル、TiおよびZrの合計量を
    Bモルとしたときに、A/B比が1.003以上であるものを用いることを特徴とする請求項3又は4に記載の積層セラミックコンデンサの製法。
  6. 前記BCTZ粉末として、Mg、希土類元素およびMnの合計の添加量が、質量で前記BT粉末に含まれるMg、希土類元素およびMnの合計の添加量よりも多いものを用いることを特徴とする請求項4に記載の積層セラミックコンデンサの製法。
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