JP2008202054A - 変性重合体の製造方法、その方法で得られた変性重合体及びゴム組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有機金属型の活性部位を分子中に有する重合体の該活性部位にヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる変性反応を行い、該変性反応の途中及び/又は終了後に反応系に縮合促進剤を加える変性重合体の製造方法であって、ランダマイザーの存在下にアニオン重合された該重合体の該活性部位の金属がアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種であり、該変性反応に使用するヒドロカルビルオキシシラン化合物が特定のものであることを特徴とする変性重合体の製造方法、及び上記方法で得られた変性重合体を含むゴム組成物、好ましくは、(A)該変性重合体少なくとも30重量%を含むゴム成分と、その100重量部当たり、(B)シリカ及び/又はカーボンブラック10〜100重量部を含むゴム組成物である。
【選択図】なし
Description
このような発熱の小さいゴム組成物を得るために、これまで、ゴム組成物に使用する充填材の分散性を高める技術開発が数多くなされてきた。その中でも特に、リチウム化合物を用いたアニオン重合で得られるジエン系重合体の重合活性部位を充填材と相互作用を持つ官能基にて修飾する方法が、最も一般的になりつつある。
一方、近年、自動車の安全性への関心の高まりに伴い、低燃費性能のみならず、湿潤路面での性能(以下ウェット性能という)、特に、制動性能についても要求が高まってきた。このため、タイヤトレッドのゴム組成物に対する性能要求は、単なる転がり抵抗の低減に止まらず、ウェット性能と低燃費性能を高度に両立するものが必要とされている。
このような良好な低燃費性と良好なウェット性能とを同時にタイヤに与えるゴム組成物を得る方法として、これまで一般的に用いられてきた補強用充填材であるカーボンブラックに変えてシリカを用いる方法がすでに行われている。
そこで、発熱性の良好なゴム組成物を生産性よく得るために、補強用充填材としてカーボンブラック又はシリカを単独で用いるのみでなく、シリカとカーボンブラックを併用し、さらに、このような多様な充填材に対して広く相互作用をもち、充填材の良好な分散性と、ゴム組成物の耐摩耗性とを与え得る活性部位変性重合体が必要とされている。
例えば、前述のスズ化合物については、カーボンブラックに対する分散効果は大きいものの、シリカに対してはほとんど分散効果がない上、補強効果は全く発揮されない。また、特許文献3に、アミノシランのシリカに対する分散効果について報告されているものの、その効果については、必ずしも充分ではない。
また、アルキルリチウム又はリチウムアミドを重合開始剤とするアニオン重合により得られた重合体の活性末端に、ジアルキルアミノ基を有するアルコキシシランを導入した変性重合体が開示されている(特許文献7)。しかしながら、この変性重合体を用いる場合、良好な作業性と共に、シリカ配合に対する補強性及びシリカとカーボンブラックの両者に対する一定の分散効果が得られるものの、ジアルキルアミノ基を有するアルコキシシランが高価なために、これを用いた変性重合体も高価であり、工業化が困難であった。
また、シリカおよびシランカップリング剤を含むゴム組成物にシラノール縮合触媒を配合時に添加する手法も開示されているが(特許文献8、特許文献9)、この手法では、シリカ配合に対する補強性及びシリカに対する分散効果が得られるものの、ヒドロカルビルオキシシランで末端変性したポリマーを用いるものでないために、分散効果による物性向上効果が不十分である。
また、これらの方法においては、重合体の活性部位に最高で一個の官能基を導入するのであって、重合体1分子当たり、複数個の前記官能基を導入するには、ジリチウム系開始剤やマクロモノマーを用いるなど、複雑な合成技術を使用する必要があるが、これらは工業的に利用しやすい方法とはいえない。さらに、ゴム組成物を調製する際に、前記官能基をヒドロカルビル化合物とシラン変性重合体を熱機械処理することで、物性の改良が試みられているが、この場合、その効果は不充分である上、貴重な混練り機のマシンタイムを消費する、混練り機中でのアルコール蒸散量が増えるなどの問題が生じ、工業的に好ましい方法とはいえない。
すなわち、本発明は、
(1)有機金属型の活性部位を分子中に有する重合体の該活性部位にヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる変性反応を行い、該反応の途中及び/又は終了後に反応系に縮合促進剤を加える変性重合体の製造方法、
(2)前記重合体が、共役ジエン化合物を単独して、又は共役ジエン化合物と他のモノマーを重合して得られた重合体である上記(1)の変性重合体の製造方法、
(3)前記活性部位の金属がアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種である上記(1)又は上記(2)の変性重合体の製造方法、
(4)上記(1)〜(3)のいずれかの製造方法により得られた変性重合体、
(5)上記(4)の変性重合体を含むゴム組成物、
(6)(A)上記(4)の変性重合体少なくとも15重量%を含むゴム成分と、その100重量部当たり、(B)無機フィラー及び/又はカーボンブラック10〜100重量部を含む上記(5)のゴム組成物、
(7)有機金属型の活性部位を分子中に有する重合体の該活性部位にヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させて得られた変性重合体に、配合時に縮合促進剤を添加してなるゴム組成物、及び
(8)上記(5)〜(7)のいずれかのゴム組成物を用いたタイヤ、
を提供するものである。
さらに、本発明のゴム組成物を用いて得られる本発明のタイヤは、低燃費性が良好であると共に、特に破壊特性及び耐摩耗性に優れており、しかも該ゴム組成物の加工性が良好であるので、生産性にも優れている。
本発明の変性重合体の製造方法においては、有機金属型の活性部位を分子中に有する重合体の該活性部位に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物残基を導入する変性を行い、次いで該反応系に縮合促進剤を加える。
また、本発明における重合体の変性は、重合体の変性段階では縮合促進剤を加えず、有機金属型の活性部位を分子中に有する重合体の該活性部位に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物残基を導入して得た変性重合体に、配合時に縮合促進剤を添加することによっても行うことができる。
また、前記活性部位の金属はアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる1種であることが好ましく、特にリチウム金属が好ましい。
上記溶液重合法においては、例えばリチウム化合物を重合開始剤とし、共役ジエン化合物単独又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物をアニオン重合させることにより、目的の重合体を製造することができる。
さらには、ハロゲン含有モノマーを混在させ、ポリマー中のハロゲン原子を有機金属化合物によって活性化することも有効である。例えば、イソブチレン単位、パラメチルスチレン単位及びパラブロモメチルスチレン単位を含む共重合体の臭素部分をリチオ化して活性部位とすることも有効である。
尚、前記活性部位は重合体の分子中に存在すればよく、特に限定されないが、重合体がアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤としたアニオン重合によるものである場合には、一般的に前記活性部位は重合体の末端にくる。
また、これらの共役ジエン化合物との共重合に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン;α−メチルスチレン;1−ビニルナフタレン;3−ビニルトルエン;エチルビニルベンゼン;ジビニルベンゼン;4−シクロヘキシルスチレン;2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、スチレンが特に好ましい。
また、溶液重合法を用いた場合には、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。尚、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、仕込み単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含量は好ましくは3〜50重量%、さらには5〜45重量%の範囲が好ましい。
これらのリチウムアミド化合物は、一般に、二級アミンとリチウム化合物とから、予め調製したものを重合に使用することが多いが、重合系中(in−situ)で調製することもできる。また、この重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり、0.2〜20ミリモルの範囲で選定される。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を、前記リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるランダマイザーの存在化にアニオン重合させることにより、目的の共役ジエン系重合体が得られる。
これらのランダマイザーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、リチウム化合物1モル当たり、好ましくは0.01〜1000モル当量の範囲で選択される。
この重合においては、重合開始剤、溶媒、単量体など、重合に関与する全ての原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物などの反応阻害物質を除去したものを用いることが望ましい。
縮合促進剤を加える時期としては、ヒドロカルビルシラン化合物残基を導入した変性直後の反応系に添加することが好ましいが、該反応により変性された重合体を乾燥して後、配合時、望ましくは配合の第1ステージにおいて縮合促進剤を添加してもよい。
この変性反応において、使用する重合体は、少なくとも20%のポリマー鎖が該活性部位を有するものが好ましい。
で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物を用いることができる。ここで部分縮合物とは、ヒドロカルビルオキシシラン化合物のSiORの一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。
R1のうちの二価の不活性炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキレン基を好ましく挙げることができる。このアルキレン基は直鎖状,枝分かれ状,環状のいずれであってもよいが、特に直鎖状のものが好適である。この直鎖状のアルキレン基の例としては、メチレン基,エチレン基,トリメチレン基,テトラメチレン基,ペンタメチレン基,ヘキサメチレン基,オクタメチレン基,デカメチレン基,ドデカメチレン基などが挙げられる。
R2及びR3としては、炭素1〜20のアルキル基,炭素数2〜20のアルケニル基,炭素数6〜18のアリール基,炭素数7〜18のアラルキル基などを挙げることができる。ここで、上記アルキル基及びアルケニル基は直鎖状,枝分かれ状,環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,オクチル基,デシル基,ドデシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,ビニル基,プロぺニル基,アリル基,ヘキセニル基,オクテニル基,シクロペンテニル基,シクロヘキセニル基などが挙げられる。
また、該アリール基は、芳香環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよく、その例としては、フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基などが挙げられる。さらに該アラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよく、その例としては、ベンジル基,フェネチル基,ナフチルメチル基などが挙げられる。
nは0〜2の整数であるが、0が好ましく、また、この分子中には活性プロトン及びオニウム塩を有しないことが必要である。
また、ヒドロカルビルオキシシラン化合物としてイソシアネート基含有化合物が挙げられる。具体的には、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシラン等が挙げられ、その中でも3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランが好ましい。
さらに、ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、カルボン酸無水物含有化合物が挙げられる。具体的には、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられ、その中でも、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物が好ましい。
これらのヒドロカルビルオキシシラン化合物(I)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物を用いることができる。尚、ここで部分縮合物とは一般式(I)で記載したのと同様である。
これらのヒドロカルビルオキシシラン化合物(II)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
R7 p−Si(OR8)4-p (III)
(式中、R7及びR8は、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基を示し、pは0〜2の整数であり、OR8が複数ある場合、複数のOR8はたがいに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。)
で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物を用いることができる。尚、ここで部分縮合物とは一般式(I)で記載したのと同様である。
前記一般式(III)において、R7及びR8は、前述の一般式(I)におけるR2及びR3で説明したとおりである。
このヒドロカルビルオキシシラン化合物(III)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における前記変性反応は、溶液反応及び固相反応のいずれも用いることができるが、溶液反応(重合時に使用した未反応モノマーを含んでいてもよい。)が好適である。また、この変性反応の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いて行ってもよく、多段連続式反応器やインラインミキサなどの装置を用いて連続式で行ってもよい。また、該変性反応は、重合反応終了が望まれる転化率に達した後、脱溶媒処理、水処理、熱処理などを行う前に実施することが肝要である。
また、変性反応の温度は、20℃以上で行うことが好ましいが、共役ジエン系重合体の重合温度をそのまま用いることができ、30〜120℃がさらに好ましい範囲として挙げられる。反応温度が低くなると重合体の粘度が上昇しすぎる、反応物の分散性が悪くなる傾向がある。一方、反応温度が高くなると、重合活性部位が失活し易くなる傾向がある。
Sn(OCOR9)2 ・・・(IV)
(式中、R9は炭素数2〜19のアルキル基である。)
下記一般式(V)で表される酸化数4のスズ化合物、
R10 xSnA3 yB1 4-y-x・・・(V)
(式中、R10は炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、xは1〜3の整数、yは1又は2、A3は炭素数2〜30のカルボキシル基、炭素数5〜20のα,γ−ジオニル基、炭素数3〜20のヒドロカルビルオキシ基、及び炭素数1〜20のヒドロカルビル基及び/又は炭素数1〜20のヒドロカルビルオキシ基で三置換されたシロキシ基から選ばれる基、B1はヒドロキシル基又はハロゲンである。)
及び下記一般式(VI)で表されるチタン化合物
A4 zTiB2 4-z・・・(VI)
(式中、A4は炭素数3〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基及び/又は炭素数1〜20のアルコキシ基で三置換されたシロキシ基から選ばれる基、B2は炭素数5〜20のα,γ−ジオニル基、zは2又は4である。)
が好ましい。
前記チタン化合物としては、酸化数4のチタンのテトラアルコキシド、ジアルコキシビス(α、γ―ジケトネート)、テトラキス(トリヒドロカルビオキシド)などが挙げられ、特にテトラキス(トリヒドロカルビオキシド)が好適に用いられる。
縮合促進剤を形成するこれら二者は、反応系に別々に投入しても、使用直前に混合して混合物として投入してもよいが、混合物の長期保存は金属化合物の分解を招くので好ましくない。
この縮合促進剤の使用量は、前記金属化合物の金属及びプロトン源の、系内に存在するヒドロカルビルオキシシリル結合総量に対するモル比が、共に0.1以上になるように選定するのが好ましい。
前記金属化合物の金属および反応に有効な水のモル数は、反応系内に存在するヒドロカルビオキシシリル基の総量に対するモル比として、共に0.1以上が好ましい。上限は目的や反応条件によっても異なるが、縮合処理以前の段階で重合体活性部位に結合されたヒドロカルビオキシシリル基の量に対して0.5から3モル当量の有効な水が存在することが好ましい。
また、該縮合促進剤を用いた反応は20℃以上の温度で行うことが好ましく、さらには30〜120℃の範囲が好ましい。反応時間としては、0.5〜120分程度で行うことが好ましく、さらには3〜60分の範囲が好ましい。
このようにして変性処理したのち、脱溶媒などの従来公知の後処理を行い、目的の変性重合体を得ることができる。この変性重合体の重合鎖活性部位変性基の分析は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や、核磁気共鳴分光(NMR)を用いて行うことができる。
また、該変性重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは15〜100である。ムーニー粘度が10未満の場合は破壊特性を始めとするゴム物性が十分に得られず、150を超える場合は作業性が悪く配合剤とともに混練りすることが困難である。
本発明はまた、このようにして得られた変性重合体をも提供する。
また、本発明における変性重合体は、前記ヒドロカルビルオキシシラン化合物残基を末端に導入して得られた一次変性の重合体に、配合の段階で、前記縮合剤を添加・混練りすることによっても得ることができる。
本発明のゴム組成物は、前記方法により得られた変性重合体を含むものであり、通常(A)該変性重合体少なくとも15重量%を含むゴム成分と、その100重量部当たり、(B)無機フィラー及び/又はカーボンブラック10〜100重量部を含む組成物が用いられる。
本発明のゴム組成物においては、(A)成分のゴム成分として、前記変性重合体を少なくとも15重量%含むことが好ましい。この量が15重量%未満では所望の物性を有するゴム組成物が得られにくく、本発明の目的が達せられない場合がある。ゴム成分中の該変性重合体のより好ましい含有量は30重量%以上であり、特に40〜100重量%が好適である。
この変性重合体は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、この変性重合体と併用されるゴム成分としては、天然ゴム及びジエン系合成ゴムが挙げられ、ジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体及びこれらの混合物等が挙げられる。また、その一部が多官能型変性剤、例えば四塩化スズのような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているものでもよい。
ここで、無機フィラーとは、シリカ又は下記式で表される化合物をいう。
mM1 ・xSiOy・zH2 O
(式中、M1 は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、m、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。尚、上記式において、x、zがともに0である場合には、該無機化合物はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物又は金属水酸化物となる。)
上記式で表されるこれらの無機化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの化合物はシリカと混合して使用することもできる。
このシリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、中でも破壊特性の改良効果並びにウェットグリップ性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。一方、カーボンブラックとしては特に制限はなく、従来ゴムの補強用充填材として慣用されているものの中から任意のものを選択して用いることができる。このカーボンブラックとしては、例えばFEF,SRF,HAF,ISAF,SAF等が挙げられる。好ましくはヨウ素吸着量(IA)が60mg/g以上で、かつ、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が80ミリリットル/100g以上のカーボンブラックである。このカーボンブラックを用いることにより、諸物性の改良効果は大きくなるが、特に、耐摩耗性に優れるHAF,ISAF,SAFが好ましい。
この(B)成分の補強用充填剤の配合量は、前記(A)成分のゴム成分100重量部に対して、10〜100重量部であることが好ましい。(B)成分の補強用充填剤の配合量が、前記(A)成分のゴム成分に対し、10重量部未満では補強性や他の物性の改良効果が充分に発揮されにくく、また、100重量部を超えると加工性などが低下する原因となる。補強性や他の物性及び加工性などを考慮すると、この(B)成分の配合量は、20〜60重量部の範囲が特に好ましい。
上記加硫剤としては、硫黄等が挙げられ、その使用量は、ゴム成分100重量部に対し、硫黄分として0.1〜10.0重量部が好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0重量部である。0.1重量部未満では加硫ゴムの破壊強度、耐摩耗性、低発熱性が低下するおそれがあり、10.0重量部を超えるとゴム弾性が失われる原因となる。
本発明で使用できる加硫促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアジニン系の加硫促進剤等を挙げることができ、その使用量は、ゴム成分100重量部に対し、0.1〜5.0重量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3.0重量部である。
また、本発明のゴム組成物で使用できるプロセス油としては、例えばパラフィン系、ナフテン系、アロマチック系等を挙げることができる。引張強度、耐摩耗性を重視する用途にはアロマチック系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、ゴム成分100重量部に対して、0〜100重量部が好ましく、100重量部を超えると加硫ゴムの引張強度、低発熱性が悪化する傾向がある。
このようにして得られた本発明のタイヤは、低燃費性が良好であると共に、特に破壊特性及び耐摩耗性に優れており、しかも該ゴム組成物の加工性が良好であるので、生産性にも優れている。
なお、重合体の物性は、下記の方法に従って測定した。
重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー〔GPC;東ソ−製HLC−8020、カラム;東ソ−製GMH−XL(2本直列)〕により行い、示差屈折率(RI)を用いて、単分散ポリスチレンを標準としてポリスチレン換算で行った。
重合体のブタジエン部分のミクロ構造は、赤外法(モレロ法)によって求め、重合体中のスチレン単位含有量は1H−NMRスペクトルの積分比より算出した。
重合体のムーニー粘度は東洋精機社製のRLM−01型テスターを用いて、100℃で測定した。
《加硫ゴムの物性》
(1)低発熱性
粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、温度50℃、歪み5%、周波数15Hzでtanδ(50℃)を測定した。tanδ(50℃)が小さい程、低発熱性である。
(2)破壊特性(引張応力)
300%伸張時の応力(Tb)をJIS K6301−1995に従って測定した。
(3)耐摩耗性
ランボーン型摩耗試験機を用い、室温におけるスリップ率60%の摩耗量を測定し、コントロールの耐摩耗性を100として、耐摩耗指数として指数表示した。指数が大きい方が良好となる。
《ゴム組成物のムーニー粘度》
JIS K6300−1994に準拠し、130℃にてムーニー粘度〔ML1+4/130℃〕を測定した。
また、重合に用いる原材料としては、特にことわりのない限り、乾燥精製したものを用いた。
乾燥し、窒素置換された800ミリリットルの耐圧ガラス容器に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16%)、スチレンのシクロヘキサン溶液(21%)をブタジエン単量体40g、スチレン単量体10gとなるように注入し、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.34ミリモルを注入し、これにn−ブチルリチウム(BuLi)0.38ミリモルを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。
この後、重合系にさらに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール5重量%溶液0.5ミリリットルを加えて反応の停止を行い、さらに常法に従い乾燥することにより重合体Aを得た。得られた重合体の分析値を第1表に示す。
乾燥し、窒素置換された800ミリリットルの耐圧ガラス容器に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16%)、スチレンのシクロヘキサン溶液(21%)をブタジエン単量体40g、スチレン単量体10gとなるように注入し、これにジテトラヒドロフリルプロパン0.44ミリモルを加え、さらにn−ブチルリチウム(BuLi)0.48ミリモルを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。
この重合系にテトラエトキシシラン0.43ミリモルを加えた後、さらに50℃で30分間変性反応を行った。この後、重合系に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール5重量%溶液0.5ミリリットルを加えて反応の停止を行い、さらに常法に従い乾燥することにより重合体Bを得た。得られた重合体の分析値を第1表に示す。
製造例2において、変性剤であるテトラエトキシシランの代わりに、第1表に示す種類の変性剤を用いた以外は、製造例2と同様にして重合体C〜重合体Gを得た。得られた各重合体の分析値を第1表に示す。
製造例8(重合体H)
乾燥し、窒素置換された800ミリリットルの耐圧ガラス容器に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16%)、スチレンのシクロヘキサン溶液(21%)をブタジエン単量体40g、スチレン単量体10gとなるように注入し、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.44ミリモルを注入し、これにn−ブチルリチウム(BuLi)0.48ミリモルを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。
この重合系にテトラエトキシシラン0.43ミリモルを加えた後、さらに50℃で30分間変性反応を行った。この後、重合系に、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ1.26ミリモル及び水1.26ミリモルを加えた後、50℃で30分間縮合反応を行った。この後、重合系にさらに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール5重量%溶液0.5ミリリットルを添加し、反応を停止させた。その後、常法に従い乾燥することにより、重合体Hを得た。得られた重合体の分析値を第1表に示す。
製造例8において、変性剤であるテトラエトキシシランの代わりに、第1表に示す種類のものに変更した以外は、製造例8と同様にして重合体I〜重合体Lを得た。得られた重合体の分析値を第1表に示す。
製造例13(重合体M)
製造例8において、縮合促進剤であるビス(2−エチルヘキサノエート)スズの代わりに、チタンテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)を用いた以外は、製造例8と同様にして重合体Mを得た。得られた重合体の分析値を第1表に示す。
製造例14(重合体N)
製造例8において、重合開始剤であるn−ブチルリチウムの代わりに、反応系で調製されたリチウムヘキサメチレンイミド(ヘキサメチレンイミド/Liモル比=0.9)を、リチウム当量で0.48ミリモル用いた以外は、製造例8と同様にして重合体Nを得た。得られた重合体の分析値を第1表に示す。
製造例15(重合体O)
製造例2において、重開始剤であるn−ブチルリチウムの代わりに、反応系で調製されたリチウムヘキサメチレンイミド(ヘキサメチレンイミド/Liモル比=0.9)を、リチウム当量で0.48ミリモル用いた以外は、製造例2と同様にして重合体Oを得た。得られた重合体の分析値を第1表に示す。
Base Mw ;変性反応前の重量平均分子量(Mw)
Total Mw;一段目変性反応後の重量平均分子量(Mw)
BEHAS ;ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ
TEHO ;チタンテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)
HMI ;反応系で合成されたヘキサメチレンイミノリチウム
TEOS ;テトラエトキシシラン
TTC ;四塩化スズ
TEOSPDI ;N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール
DMBTESPA;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン
GPMOS ;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
GPEOS ;3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
製造例1〜15で得られた重合体を用い、第2表に示す配合1及び配合2に従って、それぞれシリカ系配合のゴム組成物及びカーボンブラック系配合のゴム組成物を以下に示す方法により調製し、ゴム組成物のムーニー粘度を測定すると共に、160℃、15分間の条件で加硫し、加硫ゴムの物性を測定した。その結果を第3表に示す。
重合体Dを用い、第2表に示す配合3及び配合4に従って、それぞれシリカ系配合のゴム組成物及びカーボンブラック系配合のゴム組成物を以下に示す方法により調製し、ゴム組成物のムーニー粘度を測定すると共に、160℃、15分間の条件で加硫し、加硫ゴムの物性を測定した。その結果を第3表に示す。
《配合1 シリカ系配合》
第1表に示す種類の重合体80重量部及び天然ゴム20重量部に対し、第2表の配合1に従って、シリカ、アロマオイル、ステアリン酸、カップリング剤及び老化防止剤6Cを配合してマスターバッチを調製し、さらに亜鉛華、加硫促進剤DPG、DM、NS及び硫黄を配合してシリカ系配合ゴム組成物を調製した。
《配合2 カーボンブラック系配合》
第1表に示す種類の重合体80重量部及び天然ゴム20重量部に対し、第2表の配合2に従って、カーボンブラック、アロマオイル、ステアリン酸及び老化防止剤6Cを配合してマスターバッチを調製し、さらに亜鉛華、加硫促進剤DPG、DM、NS及び硫黄を配合してカーボンブラック系配合ゴム組成物を調製した。
《配合3 シリカ系配合》
マスターバッチを調製する第1ステージで縮合促進剤BEHASを添加したこと以外は、配合1と同様にしてシリカ系配合ゴム組成物を調製した。
《配合4 カーボンブラック系配合》
マスターバッチを調製する第1ステージで縮合促進剤BEHASを添加したこと以外は、配合2と同様にしてカーボンブラック系配合ゴム組成物を調製した。
シリカ;日本シリカ工業(株)製「ニプシルAQ(商標)」
カーボンブラック;東海カーボン(株)製「シーストKH(N339)(商標)」
カップリング剤;デグサ社製シランカップリング剤「Si69(商標)」、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
老化防止剤6C;N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
加硫促進剤DPG;ジフェニルグアニジン
加硫促進剤DM;メルカプトベンゾチアジルジスルフィド
加硫促進剤NS;N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
縮合促進剤BEHAS;ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ
また、配合時に縮合促進剤を加えた実施例8でも同様の傾向が認められる。
特に本発明のゴム組成物を使用した乗用車用タイヤトレッドは無機フィラーを多く含有する配合においても、加硫ゴムのヒステリシスロスを低下することができ、補強性が大幅に改良される。
さらに、縮合促進剤を変性反応後の重合体に加えた場合、コールドフロー耐性も改良されるため、コールドフロー耐性を改良するために使用する多価カップリング剤を部分使用する必要がないという利点もある。
Claims (15)
- 有機金属型の活性部位を分子中に有する重合体の該活性部位にヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる変性反応を行い、該変性反応の途中及び/又は終了後に反応系に縮合促進剤を加える変性重合体の製造方法であって、ランダマイザーの存在下にアニオン重合された該重合体の該活性部位の金属がアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種であり、該変性反応に使用するヒドロカルビルオキシシラン化合物が、
一般式(III)
R7 p−Si−(OR8)4-p ・・・(III)
(式中、R7及びR8は、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基を示し、pは0〜2の整数であり、OR8が複数ある場合、複数のOR8はたがいに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。)
で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物の中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする変性重合体の製造方法。 - 前記重合体が、共役ジエン化合物を単独重合して、又は共役ジエン化合物と他のモノマーを共重合して得られた重合体である請求項1に記載の変性重合体の製造方法。
- 前記他のモノマーが芳香族ビニル化合物である請求項2に記載の変性重合体の製造方法。
- 前記活性部位が前記重合体の末端にあり、かつ少なくともその一部が活性状態である請求項1〜3のいずれかに記載の変性重合体の製造方法。
- 有機金属型の前記活性部位を有する前記重合体に、変性用ヒドロカルビルオキシシラン化合物を該部位に対する化学量論的量又はそれより過剰量加えて反応させる請求項1〜4のいずれかに記載の変性重合体の製造方法。
- 前記縮合促進剤が、スズのカルボン酸塩及び/又はチタンアルコキシドと水との組み合わせである請求項1〜5のいずれかに記載の変性重合体の製造方法。
- 前記スズのカルボン酸塩が、下記一般式(IV)
Sn(OCOR9)2 ・・・(IV)
(式中、R9は炭素数2〜19のアルキル基である。)
で表される酸化数2のスズ化合物、又は下記一般式(V)
R10 xSnA3 yB1 4-y-x・・・(V)
(式中、R10は炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、xは1〜3の整数、yは1又は2、A3は炭素数2〜30のカルボキシル基、炭素数5〜20のα,γ−ジオニル基、炭素数3〜20のヒドロカルビルオキシ基、及び炭素数1〜20のヒドロカルビル基及び/又は炭素数1〜20のヒドロカルビルオキシ基で三置換されたシロキシ基から選ばれる基、B1はヒドロキシル基又はハロゲンである。)
で表される酸化数4のスズ化合物であり、前記チタンアルコキシドが下記一般式(VI)
A4 zTiB2 4-z・・・(VI)
(式中、A4は炭素数3〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基及び/又は炭素数1〜20のアルコキシ基で三置換されたシロキシ基から選ばれる基、B2は炭素数5〜20のα,γ−ジオニル基、zは2又は4である。)で表されるチタン化合物である請求項6に記載の変性重合体の製造方法。 - 前記共役ジエン化合物が1,3−ブタジエン又はイソプレンである請求項2〜7のいずれかに記載の変性重合体の製造方法。
- 前記芳香族ビニル化合物がスチレンである請求項3〜8のいずれかに記載の変性重合体の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法により得られる変性重合体。
- ムーニー粘度(ML1+4/100℃)が10〜150である請求項10記載の変性重合体。
- 請求項10又は11に記載の変性重合体を含むゴム組成物。
- (A)前記変性重合体少なくとも15重量%を含むゴム成分と、その100重量部当たり、(B)無機フィラー及び/又はカーボンブラック10〜100重量部を含む請求項12に記載のゴム組成物。
- 前記無機フィラーとしてシリカ10〜100重量部を含む請求項13記載のゴム組成物。
- 請求項12〜14のいずれかに記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
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