JP2008128016A - 内燃機関の制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジン始動後アイドル回転に応じて減筒運転の制御を行うことによりコールドスタート直後の温度平衡タイムラグ時の白煙排出を抑制する。
【解決手段】内燃機関1の冷却水温度を検出する冷却水温度検出手段10と、内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段12と、前記冷却水温度と回転数に応じて内燃機関の動作を制御する制御手段5と、を具備する内燃機関の制御方法において、内燃機関がコールドスタートにあると判定された場合には機関始動後所定回転数となった時より、一定期間燃料噴射させる気筒を減じる減筒運転を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンジンが冷えた状態での始動、所謂、コールドスタート直後における白煙排出を低減させることができる内燃機関の制御方法に関する。
従来より、直噴式ディーゼル機関等においては低温時に始動した場合、刺激臭を伴う白煙が排出するため、この対策として、始動時に燃料噴射を行う気筒を減筒して、燃料噴射される気筒では燃料噴射量を増やして燃焼室内の燃焼温度を上昇させて白煙を低減させる、いわゆる減筒運転と呼ばれる技術が公知となっている。(例えば特許文献1、特許文献2参照)
また、始動時に白煙が生じる原因として、例えば直噴式ディーゼルエンジンからの白煙排出傾向については燃焼室の壁面温度が強く関与している。
具体的には以下のようなメカニズムが考えられている。燃焼室壁面温度が負荷運転時に比べ低いため、燃料噴射によって燃焼室壁面に付着した一部燃料が十分に蒸発せず、燃焼に寄与することなく白煙として排出される。また、圧縮端のガス温度・圧力も熱損失により低くなることから燃焼温度が低下し、付着しなかった燃料も一部は未燃のまま排出される。これら不完全燃焼となった燃料分が排気とともに煙道より出る際に刺激臭を伴う白煙となる。従って、白煙を防止するためには(1)燃料を壁面に衝突させない(2)燃焼ガス温度を上げて完全燃焼させるの2つの対策が重要になる。
昨今の電子制御化によって燃料噴射の自由度が増し、上記対策を用いた白煙低減が可能となっている。これは冷却水温度を測定することで燃焼室壁面温度を推定し、暖機状態に対して冷却水温度が低いときには該温度に応じて噴射時期を進角するなどの所作(水温補正)を行うことができるためである。このように冷却水温度と燃焼室壁面温度の間に比例関係が成立する場合は上記水温補正制御が有効である。
特開昭61−258950号公報 実公平7−35835号公報
しかし、コールドスタート直後(冷態始動直後)数分間においては、上記平衡状態が成立せず、燃焼室壁面温度は始動前の冷却水温度と同等レベルから急速に暖められる一方、冷却水温度はほとんど増加しない。すなわち始動直後から一定時間は上記平衡状態が成立しないのである。したがって、この期間の燃料噴射制御を従来法である上記水温補正のみで行った場合は不適切な噴射諸元を選択することとなり、白煙の抑制が困難となる。さらに、この条件は燃料の圧縮着火に対して極端に悪条件であるため、特に低セタン燃料を使用している場合などは市場クレームを起こす大きな要因となる場合がある。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、エンジン始動後アイドル回転に応じて減筒運転の制御を行うことによりコールドスタート直後の温度平衡タイムラグ時の白煙排出を抑制することを目的とする。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、内燃機関の冷却水温度を検出する冷却水温度検出手段と、内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と、前記冷却水温度と回転数に応じて内燃機関の動作を制御する制御手段と、を具備する内燃機関の制御方法において、内燃機関がコールドスタートにあると判定された場合には機関始動後所定回転数となった時より、一定期間燃料噴射させる気筒を減じる減筒運転を行うものである。
請求項2においては、機関始動時の冷却水温度に対応して前記減筒運転の継続時間を設定した減筒運転継続時間マップを有し、該減筒運転継続時間マップに基づいて、減筒運転継続時間を設定して、一定期間前記減筒運転を行うものである。
請求項3においては、前記内燃機関の冷却水温度に対応して減筒運転終了時温度を設定した減筒運転終了時温度マップを有し、冷却水温度が該減筒運転終了時温度マップに予め設定された温度となるまでの間、前記減筒運転を行うものである。
請求項4においては、前記減筒運転は常に少なくとも2段以上の多段燃料噴射で構成したものである。
請求項5においては、前記減筒運転時には通常運転マップと異なる減筒運転専用の噴射マップを有するものである。
請求項6においては、前記内燃機関の減筒運転モードはメイン燃料噴射開始時期を通常運転モード時より遅らせているものである。
請求項7においては、内燃機関が負荷運転に相当する状態に変化した場合は、減筒運転モードが速やかに通常制御モードに復帰するものである。
請求項8においては、前記内燃機関の減筒運転モードは、内燃機関が一定回転以上に増速した場合は速やかに通常制御モードに復帰するものである。
請求項9においては、前記内燃機関の燃焼室内での失火を検出する失火検出手段を有し、減筒運転終了時に依然として失火あるいは遅延燃焼が発生していると判定した場合には、一定期間減筒運転を継続するものである。
請求項10においては、前記内燃機関の燃焼室内に導入される吸気を加熱する吸気加熱装置を装備し、該吸気加熱装置は減筒運転時に運転される気筒に対して作動するようにしたものである。
請求項11においては、前記内燃機関への吸気量を制御する吸気絞り弁または排気量を制御する排気絞り弁で構成される絞り機構を装備し、減筒運転時には作動させずに、減筒運転終了後から有効とするものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1においては、当該期間に燃料噴射する気筒の数を減じることにより、1気筒あたり噴射量が増し(等量比が上がり)、燃焼温度が高くなるため燃焼が改善し、始動時ならびに始動直後の白煙を防止することができる。
請求項2においては、時間マップにより白煙が問題となる始動直後を重点的に改善するため、効率的に白煙を防止することができる。
請求項3においては、温度マップにより白煙が問題となる始動直後を重点的に改善するため、効率的に白煙を防止することができる。
請求項4においては、燃料噴射の際に燃料が燃焼室壁面に付着するのを抑制し、低壁面温度状態で噴射燃料を着実に着火させることによって白煙の発生を低減できる。
請求項5においては、減筒運転の際の最適な噴射パターンを選択できる。
請求項6においては、メイン噴射を遅らせることにより騒音が低減できる。
請求項7においては、白煙発生の要因が無くなり次第、減筒運転を通常運転に切り換えて正規のエンジン仕様を発揮できる。
請求項8においては、減筒運転を通常運転に切り換えて正規のエンジン仕様を速やかに発揮できる。
請求項9においては、燃料性状に起因する制御移行時のハンチングや白煙増大を抑制し、エンジンが全気筒噴射に十分耐えうるレベルまで暖機した後に減筒運転を解除することができる。
請求項10においては、休止気筒に割り当てられる加熱エネルギーを運転気筒に廻す事ができるため消費電力は一定で高い効果を得ることができる。
請求項11においては、黒煙の発生を抑える。
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係る直噴式ディーゼル機関の制御システムの概略構成図、図2はエンジン制御フローを示す図、図3は通常運転時の白煙の発生挙動を示す図、図4は減筒運転制御の一例を示す図、図5は始動前冷却水温度と白煙濃度の関係を示す図、図6は減筒運転時の白煙の発生挙動を示す図、図7は燃焼室内の温度の時間変化を示す図、図8は単発噴射により燃料を噴射した際の燃料の到達距離と時間の関係を示す図、図9は多段噴射により燃料を噴射した際の燃料の到達距離と時間の関係を示す図、図10は減筒噴射のマップ例を示す図、図11は噴射時期と騒音・白煙の関係を示す図、図12は失火検知による減筒運転再導入を示す図、図13は6気筒エンジンで1・2・3群のみ運転する場合の実施例を示す図、図14は吸気絞り弁・排気絞り弁の配置例を示す図、図15は排気絞り弁を用いた減筒運転時の燃焼悪化事例を示す図、図16は従来のエンジン制御フローを示す図である。
まず本発明を適用した内燃機関の一例である直噴式ディーゼル機関1の制御システムの概略構成について説明する。図1に示すように、直噴式ディーゼル機関(以下、「エンジン」という)の制御システムは、主にエンジン1、サプライポンプ、アクセルレバー6、始動スイッチ4及びECU5等から構成されている。
エンジン1には、サプライポンプ、コモンレール3、インジェクタ7、ピストン9、セルモータ(図示せず)、冷却水温度検出手段である冷却水温度センサ10、吸気温度センサ11、エンジン1の回転数検出手段の一例であるピックアップセンサ12、クラッチの「入」「切」を検知するクラッチセンサ13が配設されている。セルモータはエンジン始動時にエンジン1のフライホイルを介してクランク軸8を回転するものである。該クランク軸8はシリンダブロックに回転自在に支持されコンロッドを介してピストン9に連結される軸であり、ピストン9の往復運動により回転運動する。ピストン9は燃焼室2の内周面に気密的に摺動することにより往復運動する部材である。インジェクタ7を介して燃焼室2に供給された燃料が燃焼し、膨張することによりピストン9は下方(燃焼室2の体積が大きくなる方)に摺動する。サプライポンプが駆動されることによりコモンレール3に燃料が高圧で蓄圧され、該コモンレール3内の圧力はセンサにより検知されECU5に入力される。ECU5はピックアップセンサ12を介してエンジン回転速度を認識して、ECU5内に記憶されているエンジン回転数と燃料噴射量とのマップに基づいてインジェクタ7を制御する。
インジェクタ7は、クランク軸8の回転に同期して燃料を所定量噴射するものであり、内装される電子ガバナやアクセルレバー6等により燃料噴射量が調整される。そして、ピックアップセンサ12はクランク軸8の回転速度を認識するものであり、これによりエンジン1がクランキング状態か運転状態かも認識できる。冷却水温度センサ10はエンジン1の冷却水温度を認識する。
ECU5は始動スイッチ4、コモンレール3の圧力センサ、ピックアップセンサ12、冷却水温度センサ10、アクセルレバー6の回動角センサ、クラッチセンサ13等に接続している。そして、始動スイッチ4の入・切およびクランク軸8の回転速度を認識可能となっており、インジェクタ7を制御可能としている。始動スイッチ4はエンジン1の運転状態と停止状態を設定するものであり、「OFF(停止)」、「ON(運転)」、「始動」の位置が設定されている。始動スイッチ4を「始動」位置に入れることにより、セルモータを駆動しクランク軸8に駆動力を伝達してクランキング(エンジン始動)を行う。始動スイッチ4は「始動」位置おいて、「ON」位置に自動復帰する構成となっており、エンジン1が運転状態になった後にキースイッチから手を離した後、始動スイッチ4は「ON」位置に保持されてエンジン1の運転状態が維持される。この始動スイッチ4「ON」位置で、冷却水温度センサ10により、ECU5においてエンジン1の冷却水温度が随時認識できる構成となっている。そして、ECU5において、始動スイッチ36の「始動」位置での保持時間を認識して、セルモータの通電時間として認識する構成となっている。
エンジン1の回転数検出手段であるピックアップセンサ12はクランク軸8の回転数、すなわちエンジン1の回転数や角速度等を検出するものである。なお、回転数検出手段としては本実施例では磁気ピックアップ式の回転数センサを使用しているが、ロータリエンコーダ等による回転数検出手段を用いてもかまわない。
次に、本発明に係るエンジン始動時のエンジン1の制御フローについて説明する。
図2は、エンジン制御フローを示す図であり、図16は従来のエンジン制御フローを示す図である。
まず、キースイッチをONした状態で制御回路は、ステップS10においてエンジン1がストップしているかどうか判断される。エンジン1がストップしていない場合には、エンジン1が回転している状態と判断して後述するステップ40に移行する。エンジン1がストップしている状態では、ステップS20において、始動スイッチ4が「始動」に入っていない場合には、セルモータを回転させないスタンバイの状態と判断して元に戻る。始動スイッチ4が「始動」に入っている(ECU5においてスタート信号がONとなっている)場合には、ステップS30において、冷却水温(TW0)検出が行われる。
この検出された水温(TW0)が設定温度t0と比較され(S31)、設定温度t0よりも高い場合には、エンジン始動時に白煙等が生じることなく通常に始動できるため、減筒運転は行われず、全ての気筒に燃料が噴射されて始動される。水温(TW0)が設定温度t0以下の場合には、減筒運転とされる(S32)。
そして、ステップS10において、エンジンが始動されて運転状態のとき、前記冷却水温(TW0)に基づいて減筒運転が行われているかどうかがECU5において判断される。ステップS40において減筒運転をONしないと判断された場合は、ECU5に記憶されている通常制御噴射諸元マップ(ステップS70)が参照されて噴射諸元(ステップS75)が決定される。またステップS40において減筒運転と判断された場合は、続いてステップS50において始動後経過時間tが予め設定されている所定時間tsicと比較されて、所定時間以下である場合は、ECU5に記憶されている減筒噴射マップ(ステップS60)が参照されて噴射諸元(ステップS65)が決定されて運転される。また、前記始動後経過時間tが予め設定されている所定時間tsicを超えて経過した場合には、減筒運転を解除して(S51)通常制御噴射諸元マップ(ステップS70)が参照されて噴射諸元が決定されて運転される。
図3は通常運転時の白煙の発生挙動を示す図である。
図3において、縦軸は白煙濃度または冷却水温度または燃焼室壁面温度を示す。横軸はエンジン1の始動後の経過時間を示す。図3に示すように、燃焼室壁面温度は経過時間に応じて上昇していくが、冷却水温度は始動直後熱が伝わるまでのしばらくの間ほぼ一定温度で推移し、燃焼室壁面温度とはある程度の時間差をおいて温度上昇を開始する。このように、通常コールドスタート直後数分間においては冷却水温度と燃焼室壁面温度との間の平衡関係が成立せず、燃焼室壁面温度は始動前の冷却水温度と同等レベルから急速に暖められる一方、冷却水温度はほとんど増加しない。すなわち始動直後から一定時間は上記平衡状態が成立しない。
図16に示すように、従来のエンジンの制御フローは、ステップS100において始動かエンジンストップかどうかが判断される。エンジンストップでない場合には、冷却水温度が検出されて(ステップS200)、ECU5に記憶されている通常制御噴射諸元マップ(水温補正、ステップS300)が参照されて噴射諸元が決定される(ステップS400)。
具体的には、検出された冷却水温度により燃焼室壁面温度を推定し、暖機状態に対して冷却水温度が低いときには該温度に応じて噴射時期を進角すること(水温補正)で白煙低減を可能であるが、上記のように平衡状態が成立しない場合においてはこの水温補正が有効ではないのである。
図4は減筒運転制御の一例を示す図である。
上記に鑑み、本実施例では、図4に示すように減筒運転はエンジン始動直後から壁面温度−冷却水温度平衡状態が形成されるごくわずかの時間にのみ減筒運転を適用すればよく、その後は速やかに通常制御へ移行するものである。
つまり、エンジン始動時の冷却水温度を検出し、その温度が一定値以下の場合はコールドスタートであると判定し、該冷却水温度に基づいて所定時間・所定の噴射諸元にて減筒運転を実施する。また、運転状態が所定の値(図2の場合、所定時間が経過)となると、速やかに通常噴射に戻す。
次に、本発明の制御方法を適用する状況について説明する。
図5は始動前冷却水温度と白煙濃度の関係を示す図である。縦軸は白煙濃度を示し、横軸は始動前冷却水温度を示す。図6は減筒運転時の白煙の発生挙動を示す図であり、縦軸は白煙濃度または冷却水温度または燃焼室壁面温度を示す。横軸はエンジン1の始動後経過時間を示す。
図5に示すように、ある冷却水温度(変曲点温度)t0以上では始動時の白煙レベルは通常運転時の白煙濃度と殆ど変わらず、変曲点温度t0以下では水温が低いほど白煙濃度が高いことが分かる。従ってコールドスタートか否かは白煙特性の変曲点温度を指標として用いると良い。つまり、前記水温(TW0)の設定温度t0とする。
本発明の制御方法においては始動時においてピックアップセンサ12によりエンジン回転数をモニターし、エンジン回転数がアイドル回転の50〜100%に達したとECU5より判断された時から減筒運転を開始する。白煙低減の観点からはイグニッションON時より減筒運転する方が理想であるが、始動に要する時間が長くなってしまう。また、始動を早めるために燃料噴射量を増すと黒煙を排出してしまう。従って、始動初期は全気筒噴射とし、所定のエンジン回転数(アイドル回転に対して50%以上)になった時点で減筒運転にシフトして一定期間継続する。そうすることで減筒運転の本来の効果であるところの、1気筒あたりの燃料噴射量を上げて燃焼温度を高くして、燃焼室壁面の速やかな昇温が可能となり、白煙低減が図れるのである(図6参照)。
また、上記一定期間とは、休止側気筒の燃焼室壁面温度が白煙を生成しないレベルまで十分暖まるまでの時間である。
このように、エンジン1がコールドスタートにあると判定された場合には機関始動後所定回転数となった時より、一定期間燃料噴射させる気筒を減じる減筒運転を行うことにより、1気筒あたり噴射量が増し(等量比が上がり)、燃焼温度が高くなるため燃焼が改善し、始動時ならびに始動直後の白煙を防止することができる。
次に、減筒運転から通常運転(全気筒運転)に切り替えるタイミングについて説明する。
図2で示すように、減筒運転がONされた場合、ECU5に記憶されている減筒運転マップ(ステップS60)が参照される。該減筒運転マップ内においては減筒運転から通常運転に切り替えるタイミングの基準となる、例えば後述する減筒運転継続時間マップや減筒運転終了時温度マップ等が収められており、該マップに基づいて一定期間減筒運転を行うものである。
<減筒運転継続時間マップの作成>
エンジン1の始動スイッチ4(スタータ)をONした時の冷却水温度(TW0)を冷却水温度センサ10を介してサンプルし、該水温で始動した際に必要な減筒運転継続時間を求める。これは冷却水温度(TW0)をX軸に、減筒運転継続時間(τrc)をY軸にとったテーブル等から算出する。
<減筒運転終了時温度マップの作成>
エンジン1の始動スイッチ4(スタータ)をONした時の冷却水温度(TW0)を冷却水温度センサ10を介してサンプルし、該水温で始動した際に必要な減筒運転目標水温上昇量を求める。これは冷却水温度(TW0)をX軸に、目標水温(TWt)をY軸にとったテーブル等から算出する。
あるいは始動時の冷却水温度(TW0)に対し一律ΔTWを足した値を目標水温TWtとしても良い。この場合のΔTWは20℃以内の値とすることが望ましい。
ただし、サーモスタットや温度センサ等の設置位置や停止前の運転状態によってはエンジン1は準暖機状態にあっても冷却水温が低く読み取られている可能性もある。この場合は始動後速やかに水温が上昇するため、該水温が一定値を超えたときに通常制御に戻すように設定する。
上記いずれかの条件を考慮することにより減筒運転を終了する目標冷却水温を設定し、減筒運転終了時温度マップを作成する。
このように、機関始動時の冷却水温度に対応して前記減筒運転の継続時間を設定した減筒運転継続時間マップを有し、該減筒運転継続時間マップに基づいて、機関始動時の冷却水温度に応じた減筒運転継続時間を設定して、一定期間前記減筒運転を行うことにより、当該期間をマップにより適切な値に条件設定できるため、効率的に白煙を防止することができる。
また、前記エンジン1の冷却水温度に対応して減筒運転終了時温度を設定した減筒運転終了時温度マップを有し、冷却水温度が該減筒運転終了時温度マップに予め設定された温度となるまでの間、前記減筒運転を行うことにより、必要最低限の減筒運転によって、白煙の発生を抑制することができる。
次に、減筒運転時の燃料噴射の構成について図7、図8及び図9を用いて説明する。
図7は燃焼室内の温度の時間変化を示す図であり、図7(a)は単発噴射の場合であり、図7(b)は多段噴射の場合である。図8は単発噴射により燃料を噴射した際の燃料の到達距離と時間の関係を示す図、図9は多段噴射により燃料を噴射した際の燃料の到達距離と時間の関係を示す図である。図8及び図9の縦軸は噴霧の到達距離を示し、横軸τidは燃料が燃焼室2内で圧縮されて着火するのに要する時間(以下、着火遅れ時間という)を示す。
図8においては、単発噴射の場合では着火時刻に達する前に燃料は壁面に到達する。エンジン1の温度が高い場合は、壁面に付着した燃料は蒸発し易いため燃焼へと進むが、エンジン始動時の減筒運転の場合は、壁面温度が低く蒸発し難い。
具体的には、コールドスタート直後のような圧縮端温度・圧力が極端に低いときに(減筒運転することで)通常運転の倍に相当する大量の燃料をインジェクタ7から燃焼室2内に一度に噴射すると、壁面に付着する燃料が増加し、それらの蒸発潜熱で大幅に筒内圧・温度が低下し失火する可能性がある。一方、コモンレール3からインジェクタ7に高圧の燃料を供給する構成では、多段噴射が可能であり、この場合、メインの燃料噴射前に少量の燃料を噴射し、それらが可燃状態となったときにメイン燃料を噴射し確実に着火させる方法が有効である(図7参照)。また、一噴射あたりの時間が長くなると燃焼室壁面に衝突する燃料量が増すため、メイン噴射前のプレ噴射は可能な限り少量多段(本実施例では2段噴射)に分割するほうが白煙低減には望ましいのである。(図9参照)。
つまり、多段噴射にすることで、一噴射あたりの噴霧力が小さくなるため壁面に到達しにくくなるのである。
このように、前記減筒運転は常に少なくとも2段以上の燃料噴射で構成したことにより、燃料噴射の際に燃料が燃焼室壁面に付着するのを抑制し、低壁面温度状態で噴射燃料を着実に着火させることによって白煙の発生を低減できる。また、同時に、多段噴射によって、着火遅れを短縮できるので、燃焼騒音も減じる事が可能である。
図10は、減筒噴射のマップ例を示す図である。
本発明においては減筒運転の効果をさらに高めるため、通常運転時の燃料の噴射パターンと減筒運転時の噴射パターンを分けて構成している。具体的には減筒運転モードにあると判定した際には通常運転と異なる噴射時期、噴射圧、プレ噴射などのマップを参照させる。特に始動直後の白煙低減を狙いとしているため、該マップは図10の例のように冷却水温度に対して噴射パターンを設定できる形が望ましい。なお、基本的な考えとしては、水温が低いほどメイン噴射前のプレ噴射量を増し、かつ噴射間隔を広げると白煙抑制に効果的であるが、燃焼騒音等他の因子も考慮する必要があるため、詳細な値は適合試験にて求めるべきである。
このように、前記減筒運転時には通常運転マップと異なる減筒運転専用の噴射マップを有することにより、減筒運転の際の最適な噴射パターンを選択できる。
図11は噴射時期と騒音・白煙の関係を示す図である。縦軸は燃焼騒音、白煙濃度を示し、横軸はメイン噴射時期を示す。
減筒運転時は通常制御(全気筒噴射)に比べて噴射量が多いため、燃焼騒音は高くなる。一般的に燃焼騒音と白煙吐出傾向は図11のような関係にあるため、通常制御時と同等か、よりリタード側にメイン噴射タイミングを設定し、白煙排出を抑制しつつ騒音対策を講じることが可能である。
このように、前記エンジン1の減筒運転モードはメイン燃料噴射開始時期を通常運転モード時より遅らせていることにより、騒音が低減できる。
また、減筒運転時にエンジン負荷がかかるとクランク折損等のトラブルを発生する恐れがある。そのため、負荷運転となる前段階で速やかに減筒運転モードから通常モードに戻す制御、つまり減筒運転を途中終了するように制御している。前記負荷を検知する方法としては、例えば主クラッチ検出位置や作業レバー操作位置を検出する方法が考えられるが、その他にも、電子ガバナのラック位置検出や、要求噴射量検出値から負荷を検出する方法も有効である。
このように、エンジン1が負荷運転に相当する状態に変化した場合は、減筒運転モードが速やかに通常制御モードに復帰することにより、白煙発生の要因が無くなり次第、減筒運転を通常運転に切り換えて正規のエンジン仕様を発揮できる。
また、エンジン回転数を増速した場合にも速やかに通常制御に戻すようにしている。エンジンの増速を検出する手段としては、エンジン回転数やアクセル開度等が有効である。例えば図1のようにピックアップセンサ12によりエンジン回転数を検出している場合は所定の機関回転数を超えた場合に、また、アクセル開度を検出する場合は所定のアクセル量を超えた場合にそれぞれ通常制御に戻す。
このように、前記エンジン1の減筒運転モードは、エンジン1が一定回転以上に増速した場合は速やかに通常制御モードに復帰することにより、減筒運転を通常運転に切り換えて正規のエンジン仕様を速やかに発揮できる。
図12は、失火検知による減筒運転再導入を示す図である。縦軸は白煙温度、要求噴射量(QFIN)を示し、横軸は始動後経過時間を示す。
本発明においては、低セタン燃料を使用する場合減筒運転継続時間は通常の高セタン燃料を使用した場合に比べ長く設定する必要がある。これは水温すなわち燃焼室壁面温度がより高く昇温した状態でないと通常制御に戻った際に失火を発生するためである。このような場合に備えて通常制御移行(減筒運転OFF)直後に一部気筒が失火している、すなわち要求噴射量(QFIN)が所定時間内において不安定(失火によるハンチング発生)であるとECU5が判定した場合は、速やかに減筒運転に復帰させて(減筒運転再ON)、白煙濃度を下げることが求められる。つまり、要求噴射量(QFIN)をECU5においてモニターすることで燃焼室内での失火検出を可能としている。
このように、前記エンジン1の燃焼室2内での失火を検出する失火検出手段を有し、減筒運転終了時に依然として失火あるいは遅延燃焼が発生していると判定した場合には、一定期間減筒運転を継続することにより、燃料性状に起因する制御移行時のハンチングや白煙増大を抑制し、エンジン1が全気筒噴射に十分耐えうるレベルまで暖機した後に減筒運転を解除することができる。
なお、エンジン1の失火検出手段としては本実施例のようにECUにおける要求噴射量(QFIN)またはエンジン回転数(角速度・角加速度)等が考えられるが、排気中のTHCやCO、排気温度等を用いることも可能である。
図13は6気筒エンジンで1・2・3群(気筒No1・No2・No3)のみ運転する場合の実施例を示す図である。
図13(a)の実施例の6気筒エンジンは、シリンダが一列に配置され、吸気マニホールドの長手方向一側に吸気ポートが設けられ、該吸気ポートにエアヒータが配置されている。図13(b)の実施例の6気筒エンジンは一列にシリンダを並べ、吸気マニホールドの長手方向中央に吸気ポートを配置し、該吸気ポートには左右を仕切る仕切り板を配置し、左右位置側へ吸気する側にエアヒータを配置している。
吸気加熱装置であるエアヒータやグローヒータはコールドスタート時に吸入空気温度を上昇させることで、圧縮端の吸気エア温度を高くし、燃料の蒸発・着火を促進するのが狙いとして用いられる。減筒運転を採用する場合は極端に白煙の悪化するコールドスタート直後に着火運転をする気筒に対し選択的に上記昇温手段を実行することで、その効果を高めることができる。具体的な実施方法としては、例えばV型機関において片バンクのみ減筒運転させる場合は、片バンクの減筒運転させる側(燃料噴射側)のバンクのエアクリーナから吸気マニホールドへの連絡部に設置したエアヒータ(吸気加熱装置)を作動することが考えられる。
また、直列6気筒エンジンでは、吸気マニホールドとシリンダヘッドが6気筒一体的に取り付けられているため、例えば、図13(a)に示すように吸気ポートに近い側の1・2・3群(気筒No1・No2・No3)のみ減筒運転するようにして、エアクリーナからの連絡管を1・2・3群気筒近くに接続し、該連絡部にエアヒータ(吸気加熱装置)を設置することで吸気エアを温めて選択的に昇温が可能である。また、図13(b)に示すように、1・2・3群と4・5・6群(気筒No4・No5・No6)との間の吸気マニホールドに間仕切り板を設置し、その後流側にエアヒータを設置して一側の吸気エアを温めて始動性を高め白煙を減少することも可能である。これらは、運転気筒に対してのみ吸気加熱装置を働かせる構造であれば上述の例以外でも実現可能である。また、グローヒータを用いる内燃機関の場合はシリンダ内に直接挿入されているものであるため、始動時に減筒運転する気筒のみ通電することで上記目的を達することが可能である。
上記方法は、特にV型機関において片バンクのみ減筒運転させる場合や直列機関において特定気筒のみ減筒運転させる場合に適する方法である。この場合、燃焼させる気筒はクランク軸8の回転がアンバランスとならないように考慮して選択される。例えば、クランク軸8の回転時に等角度ごとに燃焼して、できるだけ接近した気筒(シリンダ)が選択される。
このように、前記エンジン1の燃焼室2内に導入される吸気を加熱する吸気加熱装置を装備し、コールドスタート時に減筒運転する気筒側の吸気加熱装置がONとなるようにし、水温が設定温度以上となると(または、減筒運転終了後、または、エンジン始動一定時間後)吸気加熱装置を停止して、消費電力は一定で高い効果を得ることができる。なお、低温で減筒運転後も吸気エアを加熱する場合は、全気筒のグローヒータを加熱させる。
図14は吸気絞り弁・排気絞り弁の配置例を示す図である。
図14に示すように、エンジンは吸入空気を圧縮して供給する過給機20を有しており、該過給機20から出た吸入空気が、吸気絞り弁21を介して吸気マニホールド23へと入り、該吸気マニホールド23を介してシリンダヘッドHに設けられた6本のシリンダの各気筒へと供給される。そして、燃焼後の排気は、シリンダに取り付けられる排気マニホールド24を介して排出され、該排気は過給機20及び排気管を介して排出される。該排気管には排気絞り弁22が設けられている。
このような構成において、吸気絞り弁21は、特にローアイドルにおいて吸入空気量を減少させることで筒内ガスの等量比を増し、これによって燃焼温度を上げることを狙いとして装着される。また、排気絞り弁22はいったん排出された高温の既燃ガスの一部を背圧増加により再度シリンダ内に導入することで等量比アップとシリンダ内ガスの予熱を図るものである。また、両者ともにポンピングロスを招くことから、サイクルあたりの噴射量を増す効果もある。
これらの手段は通常燃焼の場合には有効であるが、減筒運転との併用は等量比が過大となり黒煙を発生することから不適当である(図15参照)。従って、減筒運転時にはこれらの機能をキャンセルすべきである。
このように、前記エンジン1への吸気量を制御する吸気絞り弁21または排気量を制御する排気絞り弁22で構成される絞り機構を装備し、減筒運転時には作動させずに、減筒運転終了後から有効とすることにより、黒煙の発生を抑える。
本発明に係る直噴式ディーゼル機関の制御システムの概略構成図。 エンジン制御フローを示す図。 通常運転時の白煙の発生挙動を示す図。 減筒運転制御の一例を示す図。 始動前冷却水温度と白煙濃度の関係を示す図。 減筒運転時の白煙の発生挙動を示す図。 燃焼室内の温度の時間変化を示す図。 単発噴射により燃料を噴射した際の燃料の到達距離と時間の関係を示す図。 多段噴射により燃料を噴射した際の燃料の到達距離と時間の関係を示す図。 減筒噴射のマップ例を示す図。 噴射時期と騒音・白煙の関係を示す図。 失火検知による減筒運転再導入を示す図。 6気筒エンジンで1・2・3群のみ運転する場合の実施例を示す図。 吸気絞り弁・排気絞り弁の配置例を示す図。 排気絞り弁を用いた減筒運転時の燃焼悪化事例を示す図。 従来のエンジン制御フローを示す図。
符号の説明
1 エンジン
5 ECU
10 冷却水温度センサ
12 ピックアップセンサ
21 吸気絞り弁
22 排気絞り弁

Claims (11)

  1. 内燃機関の冷却水温度を検出する冷却水温度検出手段と、内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と、前記冷却水温度と回転数に応じて内燃機関の動作を制御する制御手段と、を具備する内燃機関の制御方法において、内燃機関がコールドスタートにあると判定された場合には機関始動後所定回転数となった時より、一定期間燃料噴射させる気筒を減じる減筒運転を行うことを特徴とする内燃機関の制御方法。
  2. 機関始動時の冷却水温度に対応して前記減筒運転の継続時間を設定した減筒運転継続時間マップを有し、該減筒運転継続時間マップに基づいて、機関始動時の冷却水温度に応じた減筒運転継続時間を設定して、一定期間前記減筒運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
  3. 前記内燃機関の冷却水温度に対応して減筒運転終了時温度を設定した減筒運転終了時温度マップを有し、冷却水温度が該減筒運転終了時温度マップに予め設定された温度となるまでの間、前記減筒運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
  4. 前記減筒運転は少なくとも2段以上の多段燃料噴射で構成したことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
  5. 前記減筒運転時には通常運転マップと異なる減筒運転専用の噴射マップを有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
  6. 前記内燃機関の減筒運転モードはメイン燃料噴射開始時期を通常運転モード時より遅らせていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
  7. 前記内燃機関が負荷運転に相当する状態に変化した場合は、減筒運転モードが速やかに通常制御モードに復帰することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
  8. 前記内燃機関の減筒運転モードは、内燃機関が一定回転以上に増速した場合は速やかに通常制御モードに復帰することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
  9. 前記内燃機関の燃焼室内での失火を検出する失火検出手段を有し、減筒運転終了時に依然として失火あるいは遅延燃焼が発生していると判定した場合には、一定期間減筒運転を継続することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
  10. 前記内燃機関の燃焼室内に導入される吸気を加熱する吸気加熱装置を装備し、該吸気加熱装置は減筒運転時に運転される気筒に対して作動するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
  11. 前記内燃機関への吸気量を制御する吸気絞り弁または排気量を制御する排気絞り弁で構成される絞り機構を装備し、減筒運転時には作動させずに、減筒運転終了後から有効とすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
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