JP2008128018A - 内燃機関の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コールドスタート時(冷態始動時)に減筒運転を実施する電子制御直噴式内燃機関1(直噴式ディーゼル機関等)の制御方法において、減筒運転期間を始動後一定時間に限定するとともに、該一定時間経過後は運転気筒と休止気筒の燃料噴射量比を漸次変化させる。
【選択図】図1
Description
また、始動時に白煙が生じる原因として、例えば直噴式ディーゼルエンジンからの白煙排出傾向については燃焼室の壁面温度が強く関与している。
具体的には以下のようなメカニズムが考えられている。燃焼室壁面温度が負荷運転時に比べ低いため、燃料噴射によって燃焼室壁面に付着した一部燃料が十分に蒸発せず、燃焼に寄与することなく白煙として排出される。また、圧縮端のガス温度・圧力も熱損失により低くなることから燃焼温度が低下し、付着しなかった燃料も一部は未燃のまま排出される。これら不完全燃焼となった燃料分が排気とともに煙道より出る際に刺激臭を伴う白煙となる。従って、白煙を防止するためには(1)燃料を壁面に衝突させない(2)燃焼ガス温度を上げて完全燃焼させるの2つの対策が重要になる。
昨今の電子制御化によって燃料噴射の自由度が増し、上記対策を用いた白煙低減が可能となっている。これは冷却水温度を測定することで燃焼室壁面温度を推定し、暖機状態に対して冷却水温度が低いときには該温度に応じて噴射時期を進角するなどの所作(水温補正)を行うことができるためである。このように冷却水温度と燃焼室壁面温度の間に比例関係が成立する場合は上記水温補正制御が有効である。
また、減筒運転は白煙の低減に有効であることは既知であったが、特定気筒のみ噴射する減筒運転は運転気筒と休止気筒の間に温度の偏り(温度差)が生じ信頼性の低下や減筒運転解除時に休止気筒より白煙が出る等の問題点があった。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、特に気筒間の偏温を抑制し、減筒運転から通常運転への移行時の燃焼変動を防止して白煙発生を抑制することを目的とする。
図1は本発明に係る直噴式ディーゼル機関の制御システムの概略構成図、図2はエンジン制御フローを示す図、図3は通常運転時の白煙の発生挙動を示す図、図4は減筒運転制御の一例を示す図、図5は始動前冷却水温度と白煙濃度の関係を示す図、図6は減筒運転時の燃焼騒音を示す図、図7は気筒あたり燃焼噴射量と燃焼騒音の関係を示す図、図8は減筒運転から通常運転への切替制御例(A)を示す図、図9は減筒運転から通常運転への切替制御例(B)を示す図、図10は減筒運転から通常運転への切替制御例(C)を示す図、図11は従来のエンジン制御フローを示す図である。
インジェクタ7は、クランク軸8の回転に同期して燃料を所定量噴射するものであり、内装される電子ガバナやアクセルレバー6等により燃料噴射量が調整される。そして、ピックアップセンサ12はクランク軸8の回転速度を認識するものであり、これによりエンジン1がクランキング状態か運転状態かも認識できる。冷却水温度センサ10はエンジン1の冷却水温度を認識する。
ECU5は始動スイッチ4、コモンレール3の圧力センサ、ピックアップセンサ12、冷却水温度センサ10、アクセルレバー6の回動角センサ、クラッチセンサ13等に接続している。そして、始動スイッチ4の入・切およびクランク軸8の回転速度を認識可能となっており、インジェクタ7を制御可能としている。始動スイッチ4はエンジン1の運転状態と停止状態を設定するものであり、「OFF(停止)」、「ON(運転)」、「始動」の位置が設定されている。始動スイッチ4を「始動」位置に入れることにより、セルモータを駆動しクランク軸8に駆動力を伝達してクランキング(エンジン始動)を行う。始動スイッチ4は「始動」位置おいて、「ON」位置に自動復帰する構成となっており、エンジン1が運転状態になった後にキースイッチから手を離した後、始動スイッチ4は「ON」位置に保持されてエンジン1の運転状態が維持される。この始動スイッチ4「ON」位置で、冷却水温度センサ10により、ECU5においてエンジン1の冷却水温度が随時認識できる構成となっている。そして、ECU5において、始動スイッチ4の「始動」位置での保持時間を認識して、セルモータの通電時間として認識する構成となっている。
図2は、エンジン制御フローを示す図であり、図11は従来のエンジン制御フローを示す図である。
まず、キースイッチをONした状態で制御回路は、ステップS10においてエンジン1がストップしているかどうか判断される。エンジン1がストップしていない場合には、エンジン1が回転している状態と判断して後述するステップ40に移行する。エンジン1がストップしている状態では、ステップS20において、始動スイッチ4が「始動」に入っていない場合には、セルモータを回転させないスタンバイの状態と判断して元に戻る。始動スイッチ4が「始動」に入っている(ECU5においてスタート信号がONとなっている)場合には、ステップS30において、冷却水温(TW0)検出が行われる。
この検出された水温(TW0)が設定温度t0と比較され(S31)、設定温度t0よりも高い場合には、エンジン始動時に白煙等が生じることなく通常に始動できるため、減筒運転は行われず、全ての気筒(シリンダ)に燃料が噴射されて始動される。水温(TW0)が設定温度t0以下の場合には、減筒運転とされる(S32)。
そして、ステップS10において、エンジンが始動されて運転状態のとき、前記冷却水温(TW0)に基づいて減筒運転が行われているかどうかがECU5において判断される。ステップS40において減筒運転をONしないと判断された場合は、ECU5に記憶されている通常制御噴射諸元マップ(ステップS70)が参照されて噴射諸元(ステップS75)が決定される。またステップS40において減筒運転と判断された場合は、続いてステップS50において始動後経過時間tが予め設定されている所定時間tsicと比較されて、所定時間以下である場合は、ECU5に記憶されている減筒噴射マップ(ステップS60)が参照されて噴射諸元(ステップS65)が決定されて運転される。また、前記始動後経過時間tが予め設定されている所定時間tsicを超えて経過した場合には、減筒運転を解除して(S51)通常制御噴射諸元マップ(ステップS70)が参照されて噴射諸元が決定されて運転される。
特に、本発明においては、減筒運転の継続時間である前記始動後経過時間t後において運転気筒と休止気筒の燃料噴射量比を漸次変化させるものであり、ECU5に予め気筒の噴射条件が設定されて、該噴射条件に基づいて各気筒が制御される。
図3において、縦軸は白煙濃度または冷却水温度または燃焼室壁面温度を示す。横軸はエンジン1の始動後の経過時間を示す。図3に示すように、燃焼室壁面温度は経過時間に応じて上昇していくが、冷却水温度は始動直後熱が伝わるまでのしばらくの間ほぼ一定温度で推移し、燃焼室壁面温度とはある程度の時間差をおいて温度上昇を開始する。このように、通常コールドスタート直後数分間においては冷却水温度と燃焼室壁面温度との間の平衡関係が成立せず、燃焼室壁面温度は始動前の冷却水温度と同等レベルから急速に暖められる一方、冷却水温度はほとんど増加しない。すなわち始動直後から一定時間は上記平衡状態が成立しない。
具体的には、検出された冷却水温度により燃焼室壁面温度を推定し、暖機状態に対して冷却水温度が低いときには該温度に応じて噴射時期を進角すること(水温補正)で白煙低減を可能であるが、上記のように平衡状態が成立しない場合においてはこの水温補正が有効ではないのである。
上記に鑑み、本実施例では、図4に示すように減筒運転はエンジン始動直後から壁面温度−冷却水温度平衡状態が形成されるごくわずかの時間にのみ減筒運転を適用すればよく、その後は通常制御へ移行するものである。
つまり、エンジン始動時の冷却水温度を検出し、その温度が一定値以下の場合はコールドスタートであると判定し、該冷却水温度に基づいて所定時間・所定の噴射諸元にて減筒運転を実施する。また、運転状態が所定の値(図2の場合、所定時間が経過)となると、通常噴射に戻す。
図5は始動前冷却水温度と白煙濃度の関係を示す図である。縦軸は白煙濃度を示し、横軸は始動前冷却水温度を示す。図6は減筒運転時の白煙の発生挙動を示す図であり、縦軸は白煙濃度または冷却水温度または燃焼室壁面温度を示す。横軸はエンジン1の始動後経過時間を示す。
図5に示すように、ある冷却水温度(変曲点温度)t0以上では始動時の白煙レベルは通常運転時の白煙濃度と殆ど変わらず、変曲点温度t0以下では水温が低いほど白煙濃度が高いことが分かる。従ってコールドスタートか否かは白煙特性の変曲点温度を指標として用いると良い。つまり、前記水温(TW0)の設定温度t0とする。
本発明の制御方法においては始動時においてピックアップセンサ12によりエンジン回転数をモニターし、エンジン回転数がアイドル回転の50〜100%に達したとECU5より判断された時から減筒運転を開始する。白煙低減の観点からはイグニッションON時より減筒運転する方が理想であるが、始動に要する時間が長くなってしまう。また、始動を早めるために燃料噴射量を増すと黒煙を排出してしまう。従って、始動初期は全気筒噴射とし、所定のエンジン回転数(アイドル回転に対して50%以上)になった時点で減筒運転にシフトして一定期間継続する。そうすることで減筒運転の本来の効果であるところの、1気筒あたりの燃料噴射量を上げて燃焼温度を高くして、燃焼室壁面の速やかな昇温が可能となり、白煙低減が図れるのである。
また、上記一定期間とは、休止側気筒の燃焼室壁面温度が白煙を生成しないレベルまで十分暖まるまでの時間である。
図2で示すように、減筒運転がONされた場合、ECU5に記憶されている減筒運転マップ(ステップS60)が参照される。該減筒運転マップ内においては減筒運転から通常運転に切り替えるタイミングの基準となる、例えば後述する減筒運転継続時間マップや減筒運転終了時温度マップ等が収められており、該マップに基づいて一定期間減筒運転を行うものである。
エンジン1の始動スイッチ4(スタータ)をONした時の冷却水温度(TW0)を冷却水温度センサ10を介してサンプルし、該水温で始動した際に必要な減筒運転継続時間を求める。これは冷却水温度(TW0)をX軸に、減筒運転継続時間(τrc)をY軸にとったテーブル等から算出する。
エンジン1の始動スイッチ4(スタータ)をONした時の冷却水温度(TW0)を冷却水温度センサ10を介してサンプルし、該水温で始動した際に必要な減筒運転目標水温上昇量を求める。これは冷却水温度(TW0)をX軸に、目標水温(TWt)をY軸にとったテーブル等から算出する。
あるいは始動時の冷却水温度(TW0)に対し一律ΔTWを足した値を目標水温TWtとしても良い。この場合のΔTWは20℃以内の値とすることが望ましい。
ただし、サーモスタットや温度センサ等の設置位置や停止前の運転状態によってはエンジン1は準暖機状態にあっても冷却水温が低く読み取られている可能性もある。この場合は始動後速やかに水温が上昇するため、該水温が一定値を超えたときに通常制御に戻すように設定する。
上記いずれかの条件を考慮することにより減筒運転を終了する目標冷却水温を設定し、減筒運転終了時温度マップを作成する。
気筒間の偏温に伴う弊害(信頼性の低下)は長時間減筒運転した際に顕著となる。図4に示すようにコールドスタート時の白煙低減には始動時から数分〜十数分間だけ減筒運転すればよいだけで、それ以降は通常運転に切り替えても白煙が悪化することはない。しかし、図6に示すように減筒運転を行うことで通常運転と比べて燃焼騒音や振動が増すため、減筒運転を長時間継続することは望ましくないのである。
また、減筒運転から通常運転に切替時の白煙発生を、さらに回避するためには減筒運転終了から運転気筒に切り替わる間に休止気筒側を暖める所作を施し、燃焼室壁面温度を均一に昇温させる必要がある。そこで本発明のように減筒運転を一定時間実施した後においても、運転気筒と休止気筒の燃料噴射量比を制御して、漸次休止気筒を暖めるようにして、さらに白煙排出を抑制しているのである。
なお、運転気筒と休止気筒の数は必ずしも同じである必要はなく、エンジン1の構成によって任意に設定可能である。しかし、不適切な気筒群の組合せを選択するとトルク変動にともなってエンジン1の異常振動が発生するため回転バランスに配慮して選定する必要がある。
上述したように、所定の減筒運転時間を終了したのち、通常運転に復帰するが、その際に休止気筒側で白煙が発生することを予防するために、所定の時間、全気筒に燃料を噴射させる。ただし、このときの燃料噴射量比は運転気筒側と休止気筒側で異なるように設定する(減筒運転時間を終了したのちの所定時間の白煙防止運転をセミ減筒運転とする)。
また、燃焼室壁面温度が比較的低い休止側気筒群においても燃焼が行われていることから、通常運転に切り替わったときに、にわかに白煙を発生することはなくなる。
さらに、上記の所作を実施するもう一つの目的は、減筒運転時に比べて一気筒あたりの燃料噴射量を減らすことができるため、燃焼騒音や振動を低減することである(図7参照)。
上記所作を継続させる時間は、例えば冷却水温度(TW0)や吸気温度、室温等をもとに作成したマップ等から決定する。
図8に示すように減筒運転が一定時間実施され、減筒運転終了後t2秒間休止気筒側に少量の燃料を噴射させる(QB)。この際、全体的な供給熱量が増加するので、運転気筒側の燃料噴射量(QA)を減少させる。つまり、燃料噴射量比として運転側噴射量:休止側噴射量=X:Y(X>Y)という関係の下で運転を継続させる(図8においては運転側噴射量:休止側噴射量=QA:QB、QA>QB)。この切替制御例(A)を行った場合は、休止気筒を緩やかに加熱することが可能となる。なお、この場合、両者の噴射量比は少量噴射気筒群からの白煙を増加させない範囲で多めに設定する。
図9に示す制御例(B)は、減筒運転が一定時間実施され、減筒運転終了後t2秒間において、図8で示した切替制御例(A)とは逆に休止気筒側の噴射量(QB)を多くして燃焼室壁面温度の昇温を急いで行う制御方法である。つまり、運転側噴射量:休止側噴射量=X:Y(X<Y)という関係の下で運転を継続させる(図9においては運転側噴射量:休止側噴射量=QA:QB、QA<QB)。この切替制御例(B)を行った場合は、休止気筒を速やかに加熱することが可能となる。
図10に示すように減筒運転が一定時間実施され、減筒運転終了後t2秒間において、休止側噴射量が0の状態から漸増させ、運転側噴射量を漸減させていき、減筒運転終了後t2秒経過後に両噴射量比が1:1となるように漸次両者の噴射量比を変化させる制御方法である。
5 ECU
Claims (5)
- コールドスタート時に減筒運転を実施する電子制御直噴式内燃機関の制御方法において、減筒運転期間を始動後一定時間に限定するとともに、該一定時間経過後は運転気筒と休止気筒の燃料噴射量比を漸次変化させることを特徴とする内燃機関の制御方法。
- 前記一定時間経過後には休止気筒側に少量の燃料を噴射することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
- 前記一定時間経過後には休止気筒側と運転気筒側の燃料噴射量比を逆転させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
- 前記一定時間経過後には休止気筒側と運転気筒側の燃料噴射量比を漸次変化させて、最終的には通常運転と同等にすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
- 請求項1、2、3、4のいずれかに記載の減筒運転期間から一定時間経過するまでの運転条件下において、内燃機関が負荷運転あるいは増速されると判定した場合には速やかに通常運転に復帰することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御方法。
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