JP4193590B2 - 車両用エンジンの排気浄化装置 - Google Patents

車両用エンジンの排気浄化装置 Download PDF

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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Exhaust Gas Treatment By Means Of Catalyst (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は車両用エンジンの排気浄化装置、特にHC吸着触媒を備えるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
排気通路に三元触媒を備える車両用エンジンにおいて、車両走行中に燃料カットが行われ、燃料カットからのリカバー直後に空燃比フィードバック制御を行わせたとしても、燃料カットが長引いて三元触媒が、酸素が過剰に存在する状態となっていれば、この状態は燃料カットからのリカバー直後にも引き継がれて、NOxの転化効率が低下してしまうので、燃料カットからのリカバー時に点火を遮断しつつ空燃比のリッチ化処理を行って未燃のHCを三元触媒へと供給し、三元触媒内の過酸素状態を解消するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平2002−138883号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、三元触媒を有するHC吸着触媒を排気通路に備え、三元触媒が活性化する前の冷間始動時などエンジン低温時に多く発生する未燃HCをこのHC吸着触媒により吸着する一方、HC吸着触媒の温度がHC脱離開始温度以上になると吸着していたHCをHC吸着触媒が脱離すると共に、このタイミングでは活性化している三元触媒により、脱離してくるHCをCOやNOxの存在のもとで無害な物質へと浄化するようにしたものがあり、このものにおいても、均質ストイキ燃焼域になると、前記三元触媒により排気中のHC、CO、NOxが同時に浄化される。
【0005】
こうした三元触媒を有するHC吸着触媒を備える車両用エンジンの場合にも、上記従来装置を適用して、燃料カットからのリカバー時に空燃比のリッチ化処理を行って未燃HCを三元触媒へと供給することが考えられる。
【0006】
しかしながら、冷間始動後にHC吸着触媒の温度が上昇してHC脱離開始温度に達しHC吸着触媒からHCが脱離している状態で、タイミング悪く燃料カットからのリカバー時となり空燃比のリッチ化処理が行われると、三元触媒へのHCが供給過多となり、これにより三元触媒が酸素欠乏状態になり却って未燃HCが多く排出されてしまうことがわかった。
【0007】
これについてさらに図2を参照して説明すると、図2は冷間始動直後に高車速で運転していた車両を急減速したときの様子をモデルで示したものである。エンジン回転速度Neが低下して燃料カット回転速度Ncutと一致するt1のタイミングで燃料カットに入り、さらにエンジン回転速度Neが低下してリカバー回転速度Nrcvに達するt2のタイミングで上記従来装置を適用してリッチ化処理を行わせる。すなわち、燃料カット中は100%を保っていた空燃比フィードバック補正係数αをt2で100%を超える初期値へとステップ的に大きくし、以降は一定の速度で100%となるまで減少させる(図2第2段目の実線参照)。このとき点火は遮断する。そして、空燃比フィードバック補正係数αが100%に達するt3のタイミングで点火の遮断と空燃比のリッチ化処理を終了し、続いてO2センサ出力に基づく空燃比のフィードバック制御を行わせる。
【0008】
こうした空燃比のリッチ化処理により、リカバー時のαの波形とα=100%のラインとで囲まれる面積に相当する未燃HCが三元着触媒へと供給され、三元触媒における燃料カット直後の過酸素状態が解消される。言い換えると、排気通路に設けた三元触媒における燃料カット直後の過酸素状態が解消されるようにt2でステップ的に与える空燃比リッチ化分R1とその後の空燃比の減少速度とを予め設定しておくのである。
【0009】
一方、冷間始動直後より排気中のHCがHC吸着触媒に吸着され、HC吸着触媒の温度がHC脱離開始温度に達するタイミングよりHC吸着触媒からHCが脱離されるのであるが、図2にはこのHC吸着触媒がHCを脱離し始めるタイミングが、空燃比リッチ化処理を開始するタイミング(t2)とちょうど一致する場合を示しており、従って空燃比のリッチ化処理により三元触媒への未燃HCの供給が開始されるt2より、HC吸着触媒から脱離するHCが加わって三元触媒へと供給される。すなわち、HC吸着触媒が、従来装置と同じ容量の三元触媒を有しているとした場合に、この三元触媒に対しても従来装置と同じリッチ化分R1を与えたのでは、HC吸着触媒に吸着しているHC吸着量の分だけHCの供給過剰となるのであり、これにより三元触媒が酸素欠乏状態となり、却って三元触媒におけるHC、COの転化効率が悪くなり、燃料カットからのリカバー直後にHC排出量が増えてしまうのである(図2最下段の実線参照)。
【0010】
そこで本発明は、冷間始動直後にHC吸着触媒よりHCが脱離している状態と、燃料カットからのリカバー時とが重なる場合に、三元触媒へのHCの供給過多を防止することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、三元触媒を有するHC吸着触媒を排気通路に備える車両用エンジンの排気浄化装置において、第1の所定条件でエンジンへの燃料供給を遮断し、その後に第2の所定条件となったとき燃料供給を再開する一方、前記燃料供給を再開するときと、前記吸着していたHCを前記吸着触媒が脱離している状態とが重なっているか否かを判定し、この判定結果より前記燃料供給を再開するときと、前記吸着していたHCを前記吸着触媒が脱離している状態とが重なっていないときには、空燃比リッチ化処理を行って未燃HCを前記三元触媒に供給し、また前記判定結果より前記燃料供給を再開するときと、前記吸着していたHCを前記吸着触媒が脱離している状態とが重なっているときには、前記空燃比リッチ化処理を禁止するように構成した。
【0012】
本発明はまた、三元触媒を有するHC吸着触媒を排気通路に備える車両用エンジンの排気浄化装置において、第1の所定条件でエンジンへの燃料供給を遮断し、その後に第2の所定条件となったとき燃料供給を再開する一方、前記燃料供給を再開するときと、前記吸着していたHCを前記吸着触媒が脱離している状態とが重なっているか否かを判定し、この判定結果より前記燃料供給を再開するときと、前記吸着していたHCを前記吸着触媒が脱離している状態とが重なっていないときには、第1の空燃比リッチ化処理を行って未燃HCを前記三元触媒に供給し、また前記判定結果より前記燃料供給を再開するときと、前記吸着していたHCを前記吸着触媒が脱離している状態とが重なっているときには、前記第1の空燃比リッチ化処理による未燃HCの供給量より少なくなるように第2の空燃比リッチ化処理を行うように構成した。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、燃料供給を再開するときと、吸着していたHCを吸着触媒が脱離している状態とが重なっているときには、空燃比リッチ化処理を禁止するので、燃料供給を再開するときと、吸着していたHCを吸着触媒が脱離している状態とが重なっている場合においても、三元触媒へのHCの供給過多を防いでHC排出量を抑えることができる。
【0014】
また、本発明によれば、燃料供給を再開するときと、吸着していたHCを吸着触媒が脱離している状態とが重なっていないときには、第1の空燃比リッチ化処理を行って未燃HCを三元触媒に供給し、燃料供給を再開するときと、吸着していたHCを吸着触媒が脱離している状態とが重なっているときには、前記第1の空燃比リッチ化処理による未燃HCの供給量より少なくなるように第2の空燃比リッチ化処理を行うことで、燃料供給を再開するときと、吸着していたHCを吸着触媒が脱離している状態とが重なっている場合においても、三元触媒の酸素過剰状態を解消しつつ、三元触媒へのHCの供給過多を防いでHC排出量を抑えることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は図示しない車両に搭載されている筒内直接噴射式火花点火エンジンの概略構成図である。
【0016】
図1において、空気は吸気通路2を介して各気筒の燃焼室3に導入される。燃料は各気筒の燃焼室3に直接臨んで配置された燃焼噴射弁11より最適な時期に噴射供給される。噴射された燃料は気化しつつ混合気を形成し、この混合気に点火プラグ12により着火されると燃焼し、燃焼後のガス(排気)は吸気通路4へと排出される。
【0017】
吸気マニホールド2上流の吸気通路2には吸気絞り弁5aがスロットルモータ6により駆動される、いわゆる電子制御スロットル5を備える。運転者が要求するトルクはアクセルペダルの踏み込み量に現れるので、エンジンコントローラ21ではアクセルセンサ22からの信号に基づいて目標トルクを定め、この目標トルクを実現するための目標空気量と目標燃料量を定め、この目標空気量が得られるようにスロットルモータ6を介して吸気絞り弁5aの開度を制御する。
【0018】
エンジンコントローラ21にはまた、エアフローメータ23からの吸入空気量Q、クランク角センサ24からのクランク角、水温センサ25からの冷却水温Twの各信号が入力し、これら信号に基づいて目標燃料量が得られるように燃料噴射弁11からの燃料噴射量を制御する。
【0019】
排気通路4には上流側(排気マニホールド出口)に第1の触媒7を、またその下流(車両の床下部)に第2の触媒8を備える。第1の触媒7は三元触媒である。三元触媒では排気の空燃比が理論空燃比を中心とした狭い範囲(ウインドウ)にあるとき、排気に含まれるHC、CO、NOxを同時に効率よく除去するので、均質ストイキ燃焼域になりかつ空燃比フィードバック制御条件が成立したとき、第1の触媒7上流に設けたO2センサ26出力に基づいて空燃比フィードバック補正係数αを算出し、この空燃比フィードバック補正係数αで基本噴射パルス幅Tpを補正する。なお、O2センサ26はヒーター付きであり、第1の触媒(三元触媒)7の活性化の前に活性化する。
【0020】
第2の触媒8は、HC吸着触媒9と、三元触媒10とが上流側よりこの順に配置されたものである。このうち、HC吸着触媒9は、冷間始動時などエンジンの低温時に多く発生するHCをHC吸着触媒により吸着する一方、HC吸着触媒が高温になってくるとHC吸着触媒に吸着しているHCを脱離すると共に、この脱離してくるHCを三元触媒が排気中のCOやNOxの存在のもとで無害な物質へと転化する。言い換えると、活性化前で三元触媒が働かないときに、HC吸着触媒によりHCを吸着させておき、HC吸着触媒がHCの脱離を開始する温度までに三元触媒を活性化させ(三元触媒が活性化する温度は300℃前後)、HC吸着触媒が脱離してくるHCを、この活性化した三元触媒により酸化して浄化するのである。
【0021】
具体的には、HC吸着触媒は、ハニカム状に形成されている担体にまず三元触媒を担持し、その上に層状にHC吸着触媒を塗布することにより製造している。この場合に、担体にはいわば二度塗りすることになるので、三元触媒だけを担持する場合より担体のセル密度は小さくなる。このため、HC吸着触媒の有する三元触媒の機能は三元触媒のみを担持する場合より弱くならざるを得ない。下流に設けた三元触媒10は、このHC吸着触媒9の有する三元触媒の機能低下を補わせるためのものである。ここで、HC吸着触媒の有する三元触媒を、第1の触媒7である三元触媒や下流側の三元触媒10と区別するため、以下「付属三元触媒」という。
【0022】
さて、エンジンの暖機完了後には運転条件により目標当量比Tfbya1.0より小さな値とする成層リーン燃焼と、目標当量比Tfbyaを1.0(理論空燃比)とする成層ストイキ燃焼とに切換制御するのであるが、エンジンがもともと安定しない冷間始動直後にはリーン運転条件が成立しないので、目標当量比Tfbyaを1.0として成層ストイキ燃焼が行われる。
【0023】
この冷間始動直後で成層ストイキ燃焼が行われる場合においても、燃料カット条件(第1の所定条件)が成立すればエンジンへの燃料供給を遮断する燃料カットが行われ、その後にリカバー条件(第2の所定条件)が成立したとき燃料供給を再開する。この場合に、燃料カットが長引いたときには第1の触媒(三元触媒)7、付属三元触媒及び下流の三元触媒10が過酸素状態となるので、燃料カットからのリカバー時に点火を遮断しつつ空燃比のリッチ化処理を行う。
【0024】
この空燃比リッチ化処理では、例えば上記の空燃比フィードバック補正係数αを100%を超える初期値へとステップ的に大きくし、以降は一定の速度で100%となるまで減少させる。そして、空燃比フィードバック補正係数αが100%に達するタイミングで点火遮断と空燃比のリッチ化処理を終了し、続いてO2センサ出力に基づく空燃比のフィードバック制御を行わせる。このとき、αの波形とα=100%のラインとで囲まれる面積に相当する未燃HCが第1の触媒(三元触媒)7、付属三元触媒及び下流の三元触媒10へと供給され、三元触媒の過酸素状態が解消される。言い換えると、排気通路に設けた三元触媒(第1の触媒7、付属三元触媒及び下流の三元触媒10)における燃料カット直後の過酸素状態が解消されるように空燃比リッチ化分(後述するR1)とその後の空燃比の減少速度とを予め設定しておくのである。
【0025】
こうした付属三元触媒を有するHC吸着触媒9を備えるエンジンに対して、燃料カットからのリカバー時に第1の空燃比リッチ化処理を行うものを前提として、本発明では、燃料カットからのリカバー時(燃料供給を再開するとき)と、吸着していたHCを吸着触媒9が脱離している状態とが重なっているか否かを判定し、燃料カットからのリカバー時と、吸着していたHCを吸着触媒9が脱離している状態とが重なっているときに限り、点火を遮断しつつ前記第1の空燃比リッチ化処理による未燃HCの供給量より少なくなるように第2の空燃比リッチ化処理を行う。
【0026】
なお、燃料カットからのリカバー時と、吸着していたHCを吸着触媒9が脱離している状態とが重なっていないときには、点火を遮断しつつ第1の空燃比リッチ化処理を行って未燃HCを排気通路に設けた三元触媒に供給する。
【0027】
エンジンコントローラ21で実行されるこの制御の内容を以下のフローチャートにより詳述する。
【0028】
図3はリッチ化フラグ1、2を設定するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0029】
ステップ1では燃料カットフラグをみる。ここで、燃料カットフラグは、図示しないが車両走行中にアクセルペダルを離したときの回転速度が燃料カット回転速度Ncut以上ありかつそのときの車速が所定の範囲にあるとき(燃料カット条件が成立したとき)に燃料カットフラグ=1となり、その後に車速が所定値以下になったり、アクセルペダルが踏み込まれたり、エンジン回転速度がリカーバー回転速度Nrcvまで低下したときなど(燃料カットリカバー条件が成立したとき)に、燃料カットフラグ=0となるフラグである。燃料カットフラグ=0であるときにはリッチ化処理を行う必要がないので、そのまま今回の処理を終了する。
【0030】
燃料カットフラグ=1であるときにはステップ2、3に進んで燃料カットリカバー条件が成立したか否か、また前回は燃料カットリカバー条件が成立したか否かをみる。リカバー条件が成立していないときにはそのまま今回の処理を終了する。今回にリカバー条件が成立しかつ前回にリカバー条件が成立していなかった、つまり今回初めてリカバー条件が成立したときにはステップ4に進んでリカバーフラグ(ゼロに初期設定)=1とすると共に、燃料カットフラグ=0とする。
【0031】
ステップ6では始動後時間(始動からの経過時間)と所定値tslを比較する。冷間始動直後よりHC吸着触媒9が排気中のHCを吸着し、その後にHC吸着触媒9が昇温して、吸着していたHCの脱離を開始し、やがてHCの脱離を完了するが、HC吸着触媒がHCの脱離を完了するまでの時間はだいたい決まっている。この時間が所定値tslである。従って、始動後時間が所定値tslを超えているときにはHCが脱離してくることはあり得ないと判断し、ステップ7に進みリッチ化フラグ1(ゼロに初期設定)=1とする。リッチ化フラグ1=1は従来と同じリッチ化処理(第1の空燃比リッチ化処理)を指示するものである。
【0032】
なお、HC吸着触媒がHCの脱離を完了しているか否かを判定するパラメータは始動後時間に限られない。例えば、水温や排気温度に基づいてHC吸着触媒がHCの脱離を完了しているか否かを判定することができる。
【0033】
一方、始動後時間が所定値tsl以下であるときには、HCが脱離してくることが考え得るので、ステップ6よりステップ8に進み水温センサ25により検出される冷却水温Twと所定値TWNを比較する。所定値TWNはHC脱離開始温度相当の水温である。冷却水温Twが所定値TWN未満であるときにはHC吸着触媒はHCを吸着している状態にあるので、ステップ7に進んでリッチ化フラグ1=1とする。なお、冷却水温は触媒温度の代用として用いているので直接にHC吸着触媒温度をセンサにより検出し、その実HC吸着触媒温度とHC脱離開始温度を比較させてもかまわない。
【0034】
冷却水温Twが所定値TWN以上であるときには、吸着しているHCをHC吸着触媒9が脱離していると判断し、ステップ8よりステップ9に進んでリッチ化フラグ2(ゼロに初期設定)=1とする。リッチ化フラグ2は本発明により新たに導入したものであり、リッチ化フラグ2=1は従来と相違する内容のリッチ化処理を指示するものである。
【0035】
図4は空燃比フィードバック補正係数αを演算するためのもので、Ref信号(クランク角の基準位置信号)の入力毎に実行する。
【0036】
ステップ11〜18は第1の空燃比リッチ化処理を行う部分である。すなわち、ステップ11、12ではリッチ化フラグ1=1であるか否か、前回はリッチ化フラグ1=0あったか否かをみる。今回にリッチ化フラグ1=1でありかつ前回はリッチ化フラグ1=0であった、つまり今回初めてリッチ化フラグ1=1となったときにはステップ13に進み、次式により空燃比フィードバック補正係数α[%]を計算する。
【0037】
α=100+R1…(1)
ただし、R1:正の所定値、
ここで、(1)式は第1の空燃比リッチ化処理における初期値を与えている。αは100%を中心とする値であり、αが100%を超えるとき排気の空燃比はリッチ側に補正され、この逆にαが100%を下回るとき排気の空燃比はリーン側に補正される。このため、(1)式によりαに100%を超える値を初期値として与えることで、排気の空燃比をリッチ化する。
【0038】
次回より、今回にリッチ化フラグ1=1でありかつ前回もリッチ化フラグ1=1であった、つまり続けてリッチ化フラグ1=1となるので、ステップ11、12よりステップ14に進み、空燃比フィードバック補正係数αを正の値である所定値Δαだけ減量する。
【0039】
ステップ15では減量後の空燃比フィードバック補正係数係数αと100%を比較する。減量の開始当初はαが100%を超えているのでそのまま終了し、ステップ14でのαの減量を繰り返す。すなわち、Ref信号の入力毎にΔαずつ減量するのであり、Δαはαの減少速度を定めている。
【0040】
やがてαが100%未満になればステップ15よりステップ16に進んでαを100%に制限する。これで第1の空燃比リッチ化処理を終えるので、ステップ17、18では次回に備えてリッチ化フラグ1=0、リカバーフラグ=0とする。
【0041】
次に、ステップ19〜26は第2の空燃比リッチ化処理を行う部分である。ただし、操作そのものはステップ11〜18と同様である。繰り返しになるが、述べると、ステップ19、20ではリッチ化フラグ2=1であるか否か、前回はリッチ化フラグ2=0あったか否かをみる。今回にリッチ化フラグ2=1でありかつ前回はリッチ化フラグ2=0であった、つまり今回初めてリッチ化フラグ2=1となったときにはステップ21に進み、次式により空燃比フィードバック補正係数α[%]を計算する。
【0042】
α=100+R2…(2)
ただし、R2:正の所定値、
ここで、(2)式は第2の空燃比リッチ化処理における初期値を与えている。αは100%を中心とする値であり、このため、(2)式によりαに100%を超える値を初期値として与えることで、排気の空燃比をリッチ化する。
【0043】
次回より、今回にリッチ化フラグ2=1でありかつ前回もリッチ化フラグ2=1であった、つまり続けてリッチ化フラグ2=1となるので、ステップ19、20よりステップ23に進み、αを正の値である所定値Δαだけ減量する。
【0044】
ステップ23では減量後のαと100%を比較する。減量の開始当初はαが100%を超えているのでそのまま終了し、ステップ22でのαの減量を繰り返す。すなわち、Ref信号の入力毎にΔαずつ減量するのであり、Δαはαの減少速度を定めている。
【0045】
やがてαが100%未満になればステップ23よりステップ24に進んでαを100%に制限する。これで第2の空燃比リッチ化処理を終えるので、ステップ25、26では次回に備えてリッチ化フラグ2=0、リカバーフラグ=0とする。
【0046】
このようにして第2の空燃比リッチ化処理においても、第1の空燃比リッチ化処理と同様の処理を行うのであるが、次の点で第1の空燃比リッチ化処理とは異ならせている。すなわち、空燃比リッチ化処理期間におけるαの波形とα=100%のラインとで囲まれる面積に相当するHCが供給されるので、第1の空燃比リッチ化処理においては、排気通路4に設けた三元触媒(第1の触媒7、付属三元触媒及び下流の三元触媒10)における燃料カット直後の過酸素状態が解消されるようにリッチ化の程度を定める上記の所定値R1と、その後の空燃比の減少速度を定める所定値Δαとを予め設定しておくことになる。
【0047】
ところが、第2の空燃比リッチ化処理時にはHC吸着触媒9からHCが脱離され、この脱離してくるHCの分だけ、付属三元触媒や下流の三元触媒10へのHC供給量が多くなる。従って、第2の空燃比リッチ化処理時には、この脱離HC量の分だけ空燃比リッチ化によるHC供給量を減らしてやればよい。すなわち第1の空燃比リッチ化処理による未燃HCの供給量より少なくする減少量は、HC吸着触媒9が吸着しているHC吸着量であることが望ましい。そこで、(2)式の所定値R2は(1)式の所定値R1よりも小さくする。
【0048】
なお、HC供給量を減少させる方法はこれに限られない。実施形態ではリッチ化の程度をR1よりR2へと小さくするだけでαの減少速度は変えていないが、リッチ化の程度はR1のままαの減少速度を第1の空燃比リッチ化処理時より大きくするようにしてもかまわない。また、第1の空燃比リッチ化処理時よりリッチ化の程度を小さくかつαの減少速度を大きくしてもかまわない。
【0049】
一方、リッチ化フラグ1=0かつリッチ化フラグ2=0のときにはステップ11、19よりステップ27に進んで燃料カットフラグをみる。燃料カットフラグ=1であるときにはステップ28でα=100とする。なお、燃料カット直前のαの値を保持させてもかまわない。
【0050】
燃料カットフラグ=0であるときにはステップ27よりステップ29に進み、O2センサ26出力に基づいて空燃比フィードバック補正係数αを算出する。
【0051】
図5は目標当量比Tfybaを算出するためのもので、一定時間毎に実行する。
【0052】
ステップ31、32では燃料カットフラグ、リカバーフラグをみる。燃料カットフラグ=1であるときにはそのまま今回の処理を終了する。
【0053】
燃料カットフラグ=0でありかつリカバーフラグ=1であるときにはステップ33に進んで目標当量比Tfyba=1.0とする。
【0054】
燃料カットフラグ=0かつリカバーフラグ=0であるときにはステップ34に進み、エンジン回転速度とエンジン負荷から所定のマップを検索することにより運転条件に応じた目標当量比Tfybaを設定する。
【0055】
図示しない燃料噴射パルス幅Tiの演算フローでは、このようにして算出された空燃比フィードバック補正係数α、目標当量比Tfbyaを用いて次式により燃料噴射パルス幅Tiが算出され、気筒別にこのTiだけ燃料噴射弁11が所定の時期に開かれる。
【0056】
Ti=Tp×Tfyba×α×2+Ts…(3)
ただし、Tp:基本噴射パルス幅、
Tfbya:目標当量比、
Ts:無効パルス幅、
ここで、(3)式は燃料カット時には用いられない。燃料カット時にはTi=Tsとなり燃料供給が遮断される。一方、リカバーフラグ=1である間は、目標当量比Tfbya=1.0であることより成層ストイキ燃焼が指示され、さらに空燃比フィードバック補正係数αにより空燃比リッチ化処理が行われる。
【0057】
ここで、本実施形態の作用を再び図2を参照して説明する。
【0058】
本実施形態によれば、燃料カットからのリカバー時に、始動後時間が所定値以下でありかつ冷却水温Twが所定値TWN以上であることより、吸着していたHCを吸着触媒9が脱離している状態にあると判断し(図3のステップ6、8、9)、このときには第2の空燃比リッチ化処理を行う(図4のステップ19〜26)。第1の空燃比リッチ化処理は、図2第2段目に示したように空燃比フィードバック補正係数α(空燃比)をステップ的に所定値R1だけリッチ側へと変化させ、この所定値R1を初期値としてその後は一定の減少速度で100%(理論空燃比)へと戻す処理であったが(図2第2段目の実線参照)、第2の空燃比リッチ化処理では、図2第2段目に重ねて示すように、初期値をR2として前記所定値R1より小さくしている(図2第2段目の破線参照)。
【0059】
ただし、ステップ変化後のαの減少速度は第1の空燃比リッチ化処理と同じであるため、第2の空燃比リッチ化処理によれば、αが100%に達するタイミングがt3よりt3’へと早まる。
【0060】
排気通路4に設けた三元触媒へのHCの供給量は、αの波形とα=100%のラインとで囲まれる面積に比例するので、第2の空燃比リッチ化処理によれば、排気通路4に設けた三元触媒へのHCの供給量が少なくなり、これにより当該三元触媒へのHCの供給過多が防がれHC排出量が抑えられている(図2最下段の破線参照)。
【0061】
このように本実施形態(請求項2に記載の発明)によれば、燃料カットからのリカバー時とHC吸着触媒9によるHC脱離時とが重なっていないときには、第1の空燃比リッチ化処理を行って未燃HCを、排気通路4に設けた三元触媒に供給し、燃料カットからのリカバー時とHC吸着触媒9によるHC脱離時とが重なっているときには、前記第1の空燃比リッチ化処理による未燃HCの供給量より少なくなるように第2の空燃比リッチ化処理を行うようにしたので、燃料カットからのリカバー時とHC吸着触媒9によるHC脱離時とが重なっている場合においても、排気通路4に設けた三元触媒の酸素過剰状態を解消しつつ、当該三元触媒へのHCの供給過多を防いでHC排出量を抑えることができる。
【0062】
第1の触媒7と第2の触媒8の配置は図1のものに限られるものでなく、例えば図6に示したように他の実施形態が考え得る。ここで、図1は(b)の場合である。要は、付属三元触媒を有するHC吸着触媒を少なくとも備えていればよい。
【0063】
実施形態では、燃料カットからのリカバー時とHC吸着触媒9によるHC脱離時とが重なっているときに、第1の空燃比リッチ化処理による未燃HCの供給量より少なくなるように第2の空燃比リッチ化処理を行う場合で説明したが、これにかぎられるものでない。例えば、燃料カットからのリカバー時とHC吸着触媒9によるHC脱離時とが重なっているときに、空燃比リッチ化処理を禁止することでも、余分な未燃HCの排出を抑制できる(請求項1に記載の発明)。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の筒内直接噴射式火花点火エンジンの概略構成図。
【図2】実施形態の作用を説明するための波形図。
【図3】リッチ化フラグの設定を説明するためのフローチャート。
【図4】空燃比フィードバック補正係数の算出を説明するためのフローチャート。
【図5】目標当量比の算出を説明するためのフローチャート。
【図6】他の実施形態による第1の触媒と第2の触媒の配置説明図。
【符号の説明】
4 排気通路
7 第1の触媒(三元触媒)
8 第2の触媒
9 HC吸着触媒
10 三元触媒
11 燃料噴射弁
12 点火プラグ
21 コントロールユニット
26 O2センサ

Claims (5)

  1. 三元触媒を有するHC吸着触媒を排気通路に備え、エンジン低温時に多く発生する未燃HCをこのHC吸着触媒により吸着する一方、HC吸着触媒の温度がHC脱離開始温度以上になったとき吸着していたHCをHC吸着触媒が脱離すると共に、このタイミングでは活性化している三元触媒により、脱離してくるHCを無害な物質へと浄化するようにした車両用エンジンの排気浄化装置において、
    第1の所定条件でエンジンへの燃料供給を遮断する燃料供給遮断手段と、
    その後に第2の所定条件となったとき燃料供給を再開する燃料供給再開手段と、
    前記燃料供給を再開するときと、前記吸着していたHCを前記吸着触媒が脱離している状態とが重なっているか否かを判定する判定手段と、
    この判定結果より前記燃料供給を再開するときと、前記吸着していたHCを前記吸着触媒が脱離している状態とが重なっていないときには、空燃比リッチ化処理を行って未燃HCを前記三元触媒に供給する空燃比リッチ化処理手段と、
    前記判定結果より前記燃料供給を再開するときと、前記吸着していたHCを前記吸着触媒が脱離している状態とが重なっているときには、前記空燃比リッチ化処理を禁止する空燃比リッチ化処理禁止手段と
    を備えることを特徴とする車両用エンジンの排気浄化装置。
  2. 三元触媒を有するHC吸着触媒を排気通路に備え、エンジン低温時に多く発生する未燃HCをこのHC吸着触媒により吸着する一方、HC吸着触媒の温度がHC脱離開始温度以上になったとき吸着していたHCをHC吸着触媒が脱離すると共に、このタイミングでは活性化している三元触媒により、脱離してくるHCを無害な物質へと浄化するようにした車両用エンジンの排気浄化装置において、
    第1の所定条件でエンジンへの燃料供給を遮断する燃料供給遮断手段と、
    その後に第2の所定条件となったとき燃料供給を再開する燃料供給再開手段と、
    前記燃料供給を再開するときと、前記吸着していたHCを前記吸着触媒が脱離している状態とが重なっているか否かを判定する判定手段と、
    この判定結果より前記燃料供給を再開するときと、前記吸着していたHCを前記吸着触媒が脱離している状態とが重なっていないときには、第1の空燃比リッチ化処理を行って未燃HCを前記三元触媒に供給する第1空燃比リッチ化処理手段と、
    前記判定結果より前記燃料供給を再開するときと、前記吸着していたHCを前記吸着触媒が脱離している状態とが重なっているときには、前記第1の空燃比リッチ化処理による未燃HCの供給量より少なくなるように第2の空燃比リッチ化処理を行う第2空燃比リッチ化処理手段と
    を備えることを特徴とする車両用エンジンの排気浄化装置。
  3. 前記第1の空燃比リッチ化処理が、空燃比をステップ的に所定値だけリッチ側へと変化させ、この所定値を初期値してその後は一定の減少速度で理論空燃比へと戻す処理である場合に、前記第2の空燃比リッチ化処理は前記所定値を小さくするか、前記減少速度を大きくするか、または前記所定値を小さくすると共に前記減少速度を大きくすることであることを特徴とする請求項2に記載の車両用エンジンの排気浄化装置。
  4. 前記第1の空燃比リッチ化処理による未燃HCの供給量より少なくする減少量は、前記吸着触媒が吸着しているHC吸着量であることを特徴とする請求項2に記載の車両用エンジンの排気浄化装置。
  5. 前記吸着していたHCを前記吸着触媒が脱離している状態は、始動後時間が所定値以下でありかつ冷却水温がHC脱離開始温度相当の水温以上である場合であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用エンジンの排気浄化装置。
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