JP2008011616A - モータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】演算用パラメータ調整の容易化等に寄与しうる、制御の切替え機能付きのモータ制御装置を提供する。
【解決手段】最大トルク制御を実現する際における電流ベクトルの向きと向きが一致する回転軸をqm軸とし、そのqm軸に直交する回転軸をdm軸とする。モータ制御装置は、回転子の回転速度に応じて、低速用センサレス制御と高速用センサレス制御を切替えて実行する。低速用センサレス制御では、モータの磁気突極性を利用し、高周波の回転電圧注入等によってd−q軸を推定する。高速用センサレス制御では、回転子の回転によって生じる誘起電圧等に基づいてdm−qm軸を推定する。高速用センサレス制御の実行時において、γ(dm)軸電流はδ(qm)軸電流に関係なくゼロに維持される。
【選択図】図15

Description

本発明は、モータの動作を制御するためのモータ制御装置に関する。また、このモータ制御装置を有するモータ駆動システムに関する。
従来より、回転子位置センサを用いることなくモータの回転子位置を推定し、この推定した回転子位置に基づいてモータを制御するモータ制御装置(位置センサレス制御装置)が開発されている。この種のモータ制御装置で実行されるセンサレス制御には、高速回転時に適した高速用センサレス制御と、低速回転時及び回転停止時に適した低速用センサレス制御と、がある。
高速用センサレス制御では、一般的に、回転子の回転により発生する誘起電圧に基づく手法が採用され、そのような手法では、低速回転時において精度良く回転子の位置及び速度を推定することは困難である。このため、低速回転時及び回転停止時には、一般的に、回転子の磁気突極性や磁気飽和を利用した低速用センサレス制御が用いられる。
モータ制御装置は、高速用センサレス制御に係る制御方式と低速用センサレス制御に係る制御方式とを含む複数の制御方式を切替えて用い、これによって、広い速度範囲でより安定した制御を実現できるように構成されることが多い。この切替えは、例えば、回転子の回転速度に応じて行われる。
また、下記特許文献1では、低周波領域用の位相決定方法で生成された位相と高周波領域用の位相決定方法で生成された位相とを周波数的に加重平均し、この加重平均によって得られた位相を、d−q座標系の位相として推定する手法が開示されている。
複数の制御方式を利用する従来のモータ制御装置では、同一の座標系間で制御方式が切替えられ、切替え前後において推定すべき回転軸(d−q軸)が変化しない。
ここで、図37を参照して、一般的なセンサレス制御(例えば、高速用センサレス制御)の動作について説明する。
図37は、従来のモータ制御装置103のブロック図である。図37に示す構成では、モータのベクトル制御における、d軸に対応する制御上の推定軸をγ軸とし、q軸に対応する制御上の推定軸をδ軸としている。図39に、d軸、q軸、γ軸及びδ軸の関係を示す。図39におけるEexは、一般的に拡張誘起電圧と呼ばれる電圧ベクトルである。
電流検出器11は、PWMインバータ2から突極機のモータ1に供給されるモータ電流のU相電流iu及びV相電流ivを検出する。座標変換器12は、U相電流iu及びV相電流ivをγ軸電流iγ及びδ軸電流iδに変換する。位置・速度推定器120(以下、単に「推定器120」という)は、推定回転子位置θe及び推定モータ速度ωeを推定して出力する。
減算器19は、推定器120から与えられる推定モータ速度ωeを、モータ速度指令値ω*から減算し、その減算結果を出力する。速度制御部17は、減算器19の減算結果(ω*−ωe)に基づいて、δ軸電流iδが追従すべきδ軸電流指令値iδ*を作成する。磁束制御部116は、δ軸電流指令値iδ*等に基づいてγ軸電流iγが追従すべきγ軸電流指令値iγ*を出力する。電流制御部15は、減算器13及び14を介して与えられる電流誤差(iγ*−iγ)及び電流誤差(iδ*−iδ)が双方ゼロに収束するように、γ軸電圧指令値vγ*とδ軸電圧指令値vδ*を出力する。
座標変換器18は、推定器120から与えられる推定回転子位置θeに基づいて、γ軸電圧指令値vγ*及びδ軸電圧指令値vδ*の逆変換を行い、U相電圧指令値vu *、V相電圧指令値vv *及びW相電圧指令値vw *から成る三相の電圧指令値を作成して、それらをPWMインバータ2に出力する。PWMインバータ2は、その三相の電圧指令値(vu *、vv *及びvw *)に基づいてパルス幅変調された信号を作成し、該三相の電圧指令値に応じたモータ電流をモータ1に供給してモータ1を駆動する。
図38に、推定器120の内部構成を示す。推定部120は、軸誤差推定部130と、比例積分演算器131と、積分器132と、を有して構成される。軸誤差推定部130は、d軸とγ軸との間の軸誤差Δθを推定する。軸誤差推定部130は、例えば、下記式(1)を用いて軸誤差Δθを算出する。ここで、Ld及びLqは、夫々モータ1のd軸インダクタンス及びq軸インダクタンスであり、Raはモータ1のモータ抵抗である。また、sは、ラプラス演算子である。回転子位置を推定するための様々な手法が提案されているが、下記式(1)のように、推定用の算出式において、モータのq軸インダクタンスの値が演算用パラメータとして用いられる場合が多い。
Figure 2008011616
上記式(1)は、下記特許文献2にも示されている軸誤差Δθの算出式である。尚、下記特許文献2ではd軸を基準としたd軸とγ軸(dc軸)との差をΔθとしているが、本明細書ではγ軸を基準としたd軸とγ軸(dc軸)との差をΔθと扱うようにしているため、下記特許文献2における軸誤差Δθの算出式と式(1)とでは、符号が逆になっている。また、式(1)において、Eexγ及びEexδは、それぞれ、拡張誘起電圧Eexのγ軸成分及びδ軸成分を表している。
比例積分演算器131は、PLL(Phase Locked Loop)を実現すべく、モータ制御装置103を構成する各部位と協働しつつ比例積分制御を行って、軸誤差推定部130が算出した軸誤差Δθがゼロに収束するように推定モータ速度ωeを算出する。積分器132は、比例積分演算器131から出力される推定モータ速度ωeを積分して推定回転子位置θeを算出する。比例積分演算器131が出力する推定モータ速度ωeと積分器132が出力する推定回転子位置θeは、共に推定器120の出力値として、その値を必要とするモータ制御装置103の各部位に与えられる。
このようにモータ制御装置103を構成することにより、d軸とγ軸との間の軸誤差Δθはゼロに収束することになり、安定したモータ制御が可能となる。尚、軸誤差Δθがゼロに維持されている場合、d軸電流idはγ軸電流指令値iγ*に追従し、q軸電流iqはδ軸電流指令値iδ*に追従することになる。
ところで、リラクタンストルクを利用した最大トルク制御を行うためのd軸電流idの算出式は広く知られており、上記のように構成されたモータ制御装置103において、最大トルク制御を行う場合、磁束制御部116は、下記式(2)に基づいてγ軸電流指令値iγ*を算出する。ここで、Φaは永久磁石による電機子鎖交磁束である。
Figure 2008011616
上記式(2)を用いて最大トルク制御を実現するためには、前提として、軸誤差Δθがゼロに維持されている必要がある。一方において、上記式(1)を用いた軸誤差Δθの算出には、演算用パラメータ(モータパラメータ)として、q軸インダクタンスLqの値が必要となる。従って、従来は、最大トルク制御を行うためにモータ1の実際のq軸インダクタンスLqの値を調べ、その実際のq軸インダクタンスLqの値をそのまま用いて軸誤差Δθ(ひいては推定回転子位置θe)を求めるようにしていた。
また、リラクタンストルクを利用した最大トルク制御等による高効率運転を行うためには、上記式(2)からも分かるように、q軸電流iqに応じたd軸電流idをモータに流す必要がある。このため、そのような高効率運転を行うためには、γ軸電流指令値iγ*を逐次計算する必要があった。
また、最大トルク制御等を行うためのγ軸電流指令値iγ*の算出式には、真値の不明な複数のモータパラメータが存在しており、γ軸電流指令値iγ*の算出に用いるそれらのモータパラメータ(演算用パラメータ)と真のモータパラメータとの間に誤差があれば、所望のモータ制御を行うことができない。このため、このような誤差を極力小さくするための調整が必須となるが、複数のモータパラメータについての調整は容易ではなく、その調整に多大な時間が必要となっていた。
上記のように、従来のモータ制御装置にて最大トルク制御を行う際には、
第1に、軸誤差Δθをゼロに維持するための(回転子位置を推定するための)パラメータの調整が必要である。
第2に、γ軸電流指令値iγ*の算出式(2)で用いられるパラメータの調整も必要である。
第3に、複雑な計算を要するγ軸電流指令値iγ*の算出を逐次行う必要がある。
回転子位置推定用のパラメータ調整とγ軸電流指令値iγ*算出用のパラメータ調整は個別に行われ、その分だけ調整の時間が必要となってしまう。加えて、回転子位置推定用のパラメータ調整における誤差とγ軸電流指令値iγ*算出用のパラメータ調整における誤差は相互に影響しあい、調整を更に困難なものにする。また、調整が困難であることに起因してパラメータの最適化が実現し難く、その結果、モータの最適な駆動を実現し難い。
尚、下記非特許文献1には、回転子位置の推定に用いる演算用パラメータの誤差と位置推定誤差(軸誤差)との関係が開示されている。
特開平10−94298号公報 特許第3411878号公報 森本茂雄、他2名、「推定位置誤差情報を利用したIPMSMの位置・センサレス制御」、T.IEE(電学論D)、平成14年、第122巻、第7号、p.722−729 特開平11−18499号公報 特開2001−190099号公報
d−q座標上でセンサレス制御を行う場合、上述したような問題点が生じる。そして、回転速度に応じて同一の座標(d−q座標)間で制御方式を切替える場合、あらゆる速度範囲において上記問題点がつきまとう。
そこで本発明は、演算用パラメータ調整の容易化等に寄与しうる、制御の切替え機能付きのモータ制御装置を提供することを目的とする。また本発明は、そのようなモータ制御装置を有するモータ駆動システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明に係るモータ制御装置は、モータの回転子位置を推定する推定器と、推定された前記回転子位置に基づいて前記モータを制御する制御部と、を備えたモータ制御装置において、前記モータの回転子の回転に応じて回転する、互いに直交する2つの回転軸をx1軸及びy1軸とし、前記x1軸と異なる回転軸をx2軸とし、前記x2軸に直交する回転軸をy2軸とした場合、前記制御部は、前記モータに流れるモータ電流を前記x1軸に平行なx1軸成分と前記y1軸に平行なy1軸成分とに分解して、前記モータの制御を行う第1の制御と、前記モータ電流を前記x2軸に平行なx2軸成分と前記y2軸に平行なy2軸成分とに分解して、前記モータの制御を行う第2の制御と、を切替えて実行可能に形成されていることを特徴とする。
演算用パラメータ調整の容易化や演算量の軽減効果を得ることを目指した場合、同一の座標系間での切替えは、必ずしも適切ではない。そこで、上記の如く、制御に用いる軸を可変とする。
具体的には例えば、前記推定器は、前記制御部に前記第1の制御を実行させるための第1の推定処理と、前記制御部に前記第2の制御を実行させるための第2の推定処理と、を実行可能に形成され、前記回転子の回転速度を表す速度情報に応じて、実際に実行する推定処理を前記第1の推定処理と前記第2の推定処理とで切替える。
そして具体的には例えば、前記回転子を構成する永久磁石が作る磁束に平行な軸をd軸とし、d軸から電気角で90度進んだ軸をq軸とし、最大トルク制御を実現する際における電流ベクトルの向きと向きが一致する回転軸またはその回転軸よりも位相が進んだ回転軸をqm軸とし、そのqm軸に直交する回転軸をdm軸とした場合、前記x1軸及び前記y1軸は、それぞれ前記d軸及び前記q軸であるか、或いは、与えられた速度指令に基づく軸であり、前記x2軸及び前記y2軸は、それぞれ前記dm軸及び前記qm軸である。
dm軸及びqm軸に基づく制御を実行可能とすることにより、最大トルク制御等を得るための演算用パラメータの調整の容易化や、演算量の軽減効果を得ることが可能となる。
また例えば、前記推定器は、実際に実行する推定処理を前記第1の推定処理と前記第2の推定処理とで切替える際、前記速度情報に応じて、又は、切替え開始からの経過時間に応じて、双方の推定処理の推定結果を加味した推定処理を介しつつ実際に実行する推定処理を一方の推定処理から他方の推定処理へと移行する。
これにより、滑らかな推定処理の切替えが実現可能となる。
また例えば、前記推定器は、所定の固定軸を基準とした前記x1軸の位相を推定するための値を算出する第1推定処理部と、前記モータのq軸インダクタンスに対応する演算用パラメータとして所定の第1インダクタンスを用いて、前記固定軸を基準とした前記x2軸の位相を推定するための値を算出する第2推定処理部と、を備え、前記第1推定処理部の算出値に基づいて推定される前記x1軸の位相は、前記第1の推定処理の実行時において推定されるべき前記回転子位置を表すとともに、前記第2推定処理部の算出値に基づいて推定される前記x2軸の位相は、前記第2の推定処理の実行時において推定されるべき前記回転子位置を表し、前記第2推定処理部は、前記第1インダクタンスと異なる所定の第2インダクタンスを前記演算用パラメータとして用いることにより、前記x1軸の位相を推定するための値を算出可能であり、前記推定器は、実際に実行する推定処理を前記第1の推定処理から前記第2の推定処理へと切替える際、一時的に前記第2推定処理部にて用いる前記演算用パラメータを前記第2インダクタンスとしてから前記第1インダクタンスに向かって変更して最終的に前記第1インダクタンスに収束させ、その変更の過程における前記第2推定処理部の算出値に基づいて切替えの際の前記回転子位置を推定する。
これに代えて例えば、前記推定器は、所定の固定軸を基準とした前記x1軸の位相を推定するための値を算出する第1推定処理部と、前記固定軸を基準とした前記x2軸の位相を推定するための値を算出する第2推定処理部と、を備え、前記第1推定処理部の算出値に基づいて推定される前記x1軸の位相は、前記第1の推定処理の実行時において推定されるべき前記回転子位置を表すとともに、前記第2推定処理部の算出値に基づいて推定される前記x2軸の位相は、前記第2の推定処理の実行時において推定されるべき前記回転子位置を表し、前記第1推定処理部は、前記推定器が実際に実行する推定処理を前記第1の推定処理から前記第2の推定処理へと切替える際、一時的に前記x2軸の位相を推定するための値を算出可能であり、前記推定器は、実際に実行する推定処理を前記第1の推定処理から前記第2の推定処理へと切替える際、その切替え前に、一時的に前記第1推定処理部の算出値を、前記x2軸の位相を推定するための、前記第2の推定処理部の算出値に向かわせて収束させ、その収束後に、前記第1の推定処理から前記第2の推定処理への実際の切替えを実行する。
これらによっても、滑らかな推定処理の切替えが実現可能となる。
また例えば、前記回転子を構成する永久磁石が作る磁束に平行な軸をd軸とし、d軸に対応する制御上の推定軸をγ軸とした場合、前記制御部は、実際に実行する制御を前記第1の制御と前記第2の制御とで切替える際、前記モータ電流のγ軸成分が追従すべきγ軸電流指令を、第1の制御用の電流指令と第2の制御用の電流指令とで切替える。
第1の制御と第2の制御とで推定軸を異ならせる場合、制御の切替えに伴ってγ軸電流指令を変更する必要が生じうる。そのような場合、上記の如く構成すればよい。
そして例えば、前記制御部は、実際に実行する制御を前記第1の制御と前記第2の制御とで切替える際、一時的に前記第1及び前記第2の制御用の電流指令の双方に基づいて前記γ軸電流指令を算出するとよい。
これにより、制御の切替えの際、γ軸電流指令を滑らかに切替えることも可能となる。
また、上記目的を実現するために本発明に係るモータ駆動システムは、モータと、前記モータを駆動するインバータと、前記インバータを制御することにより前記モータを制御する上記の何れかに記載のモータ制御装置と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、演算用パラメータ調整の容易化等に寄与しうる、制御の切替え機能付きのモータ制御装置を実現可能である。
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付す。
本発明の主たる目的の1つを実現するための、制御方式の切替えに関する実施形態は、第2実施形態以降に説明する。まず、第2実施形態以降の説明の理解の容易化等を目的とし、第2実施形態の前提技術として第1実施形態を説明する。
<<第1実施形態>>
図1は、本発明の第1実施形態に係るモータ駆動システムのブロック構成図である。1は、永久磁石を回転子(不図示)に、電機子巻線を固定子(不図示)に設けた三相永久磁石同期モータ1(以下、単に「モータ1」と記す)である。モータ1は、埋込磁石形同期モータに代表される突極機(突極性を有するモータ)である。
2は、PWM(Pulse Width Modulation)インバータであり、モータ1の回転子位置に応じてモータ1にU相、V相及びW相から成る三相交流電圧を供給する。このモータ1に供給される電圧をモータ電圧(電機子電圧)Vaとし、インバータ2からモータ1に供給される電流をモータ電流(電機子電流)Iaとする。
3は、モータ制御装置(位置センサレス制御装置)であり、モータ電流Iaを用いてモータ1の回転子位置等を推定し、モータ1を所望の回転速度で回転させるための信号をPWMインバータ2に与える。この所望の回転速度は、図示されないCPU(中央処理装置;Central Processing Unit)等からモータ制御装置3にモータ速度指令値ω*として与えられる。
図2は、モータ1の解析モデル図である。以下の説明において、電機子巻線とはモータ1に設けられているものを指す。図2には、U相、V相、W相の電機子巻線固定軸が示されている。1aは、モータ1の回転子を構成する永久磁石である。永久磁石1aが作る磁束と同じ速度で回転する回転座標系において、永久磁石1aが作る磁束の方向をd軸にとり、d軸に対応する制御上の推定軸をγ軸とする。また、図示していないが、d軸から電気角で90度進んだ位相にq軸をとり、γ軸から電気角で90度進んだ位相に推定軸であるδ軸をとる。実軸に対応する回転座標系はd軸とq軸を座標軸に選んだ座標系であり、その座標軸をd−q軸と呼ぶ。制御上の回転座標系(推定回転座標系)はγ軸とδ軸を座標軸に選んだ座標系であり、その座標軸をγ−δ軸と呼ぶ。
d−q軸は回転しており、その回転速度を実モータ速度ωと呼ぶ。γ−δ軸も回転しており、その回転速度を推定モータ速度ωeと呼ぶ。また、ある瞬間の回転しているd−q軸において、d軸の位相をU相の電機子巻線固定軸を基準としてθ(実回転子位置θ)により表す。同様に、ある瞬間の回転しているγ−δ軸において、γ軸の位相をU相の電機子巻線固定軸を基準としてθe(推定回転子位置θe)により表す。そうすると、d軸とγ軸との軸誤差Δθ(d−q軸とγ−δ軸との軸誤差Δθ)は、Δθ=θ―θeで表される。
以下の記述において、モータ電圧Vaのγ軸成分、δ軸成分、d軸成分及びq軸成分を、それぞれγ軸電圧vγ、δ軸電圧vδ、d軸電圧vd及びq軸電圧vqで表し、モータ電流Iaのγ軸成分、δ軸成分、d軸成分及びq軸成分を、それぞれγ軸電流iγ、δ軸電流iδ、d軸電流id及びq軸電流iqで表す。
また、以下の記述において、Raは、モータ抵抗(モータ1の電機子巻線の抵抗値)であり、Ld、Lqは、夫々d軸インダクタンス(モータ1の電機子巻線のインダクタンスのd軸成分)、q軸インダクタンス(モータ1の電機子巻線のインダクタンスのq軸成分)であり、Φaは、永久磁石1aによる電機子鎖交磁束である。尚、Ld、Lq、Ra及びΦaは、モータ駆動システムの製造時に定まる値であり、それらの値はモータ制御装置の演算にて使用される。また、後に示す各式において、sはラプラス演算子を意味する。
図3は、図1のモータ制御装置3の内部構成を詳細に表した、モータ駆動システムの構成ブロック図である。モータ制御装置3は、電流検出器11、座標変換器12、減算器13、減算器14、電流制御部15、磁束制御部16、速度制御部17、座標変換器18、減算器19及び位置・速度推定器20(以下、単に「推定器20」という)、を有して構成される。モータ制御装置3を構成する各部位は、必要に応じてモータ制御装置3内で生成される値の全てを自由に利用可能となっている。
電流検出器11は、例えばホール素子等から成り、PWMインバータ2からモータ1に供給されるモータ電流Iaの固定軸成分であるU相電流iu及びV相電流ivを検出する。座標変換器12は、電流検出器11からのU相電流iu及びV相電流ivの検出結果を受け取り、それらを推定器20から与えられる推定回転子位置θeを用いて、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδに変換する。この変換には、下記式(3)を用いる。
Figure 2008011616
推定器20は、推定回転子位置θe及び推定モータ速度ωeを推定して出力する。推定回転子位置θe及び推定モータ速度ωeの推定手法については、後に詳説する。
減算器19は、推定器20から与えられる推定モータ速度ωeを、モータ速度指令値ω*から減算し、その減算結果(速度誤差)を出力する。速度制御部17は、減算器19の減算結果(ω*−ωe)に基づいて、δ軸電流指令値iδ*を作成する。このδ軸電流指令値iδ*は、モータ電流Iaのδ軸成分であるδ軸電流iδが追従すべき電流の値を表す。磁束制御部16は、γ軸電流指令値iγ*を出力する。このγ軸電流指令値iγ*は、モータ電流Iaのγ軸成分であるγ軸電流iγが追従すべき電流の値を表す。位置・速度推定器20との関係において後に詳説するが、このγ軸電流指令値iγ*は、本実施形態において「ゼロ」に維持される。
減算器13は、磁束制御部16が出力するγ軸電流指令値iγ*から、座標変換器12が出力するγ軸電流iγを差し引いて、電流誤差(iγ*−iγ)を算出する。減算器14は、速度制御部17が出力するδ軸電流指令値iδ*から、座標変換器12が出力するδ軸電流iδを差し引いて、電流誤差(iδ*−iδ)を算出する。
電流制御部15は、減算器13及び14にて算出された各電流誤差、座標変換器12からのγ軸電流iγ及びδ軸電流iδ、並びに推定器20からの推定モータ速度ωeを受け、γ軸電流iγがγ軸電流指令値iγ*に追従するように、且つδ軸電流iδがδ軸電流指令値iδ*に追従するように、γ軸電圧指令値vγ*とδ軸電圧指令値vδ*を出力する。
座標変換器18は、推定器20から与えられる推定回転子位置θeに基づいて、γ軸電圧指令値vγ*及びδ軸電圧指令値vδ*の逆変換を行い、モータ電圧VaのU相成分、V相成分及びW相成分を表すU相電圧指令値vu *、V相電圧指令値vv *及びW相電圧指令値vw *から成る三相の電圧指令値を作成して、それらをPWMインバータ2に出力する。この逆変換には、下記の2つの等式から成る式(4)を用いる。
Figure 2008011616
PWMインバータ2は、モータ1に印加されるべき電圧を表す三相の電圧指令値(vu *、vv *及びvw *)に基づいてパルス幅変調された信号を作成し、該三相の電圧指令値に応じたモータ電流Iaをモータ1に供給してモータ1を駆動する。
図4に、推定器20の内部構成の一例を示す。図4の推定器20は、軸誤差推定部30と、比例積分演算器31と、積分器32と、を有して構成される。
軸誤差推定部30は、軸誤差Δθ’を算出する。この軸誤差Δθ’は、後述の説明から明らかとなるが、軸誤差Δθとは異なる。図38の軸誤差推定部130は、上記式(1)を用いて軸誤差Δθを算出するが、図4の軸誤差推定部30は、下記式(5)を用いて軸誤差Δθ’を算出する。
Figure 2008011616
式(5)は、上記式(1)におけるΔθ及びLqを、夫々Δθ’及びLに置換したものとなっている。このため、軸誤差推定部30は、Lを回転子位置を推定する際のq軸インダクタンスに対応する演算用パラメータとして取り扱い、軸誤差Δθ’を推定することになる。この演算用パラメータLの値の設定手法及びその設定手法との関係における軸誤差Δθ’の意義については、後に詳説する。
比例積分演算器31は、PLL(Phase Locked Loop)を実現すべく、モータ制御装置3を構成する各部位と協働しつつ比例積分制御を行って、軸誤差推定部30が算出した軸誤差Δθ’がゼロに収束するように推定モータ速度ωeを算出する。積分器32は、比例積分演算器31から出力される推定モータ速度ωeを積分して推定回転子位置θeを算出する。比例積分演算器31が出力する推定モータ速度ωeと積分器32が出力する推定回転子位置θeは、共に推定器20の出力値として、その値を必要とするモータ制御装置3の各部位に与えられる。
仮に、式(5)中のLとしてq軸インダクタンスの真値(実際の値)を用いた場合、即ち、L=Lqの場合、Δθ’=Δθとなり、比例積分演算器31等によるPLL制御により、軸誤差Δθ’(=Δθ)はゼロに収束するようになる(つまり、図37の構成と同じ制御となる)。しかしながら、本実施形態の特徴的な点として、演算用パラメータLは、下記式(6)を満たすように設定されている。つまり、モータ1の実際のq軸インダクタンス(即ち、Lq)と実際のd軸インダクタンス(即ち、Ld)の間の値を、q軸インダクタンスに対応する演算用パラメータとして採用した上で、軸誤差の算出を行う。尚、勿論、Ld<Lqが成立している。
Figure 2008011616
また、望ましくは、下記式(7)を満たすように、演算用パラメータLは設定される。
Figure 2008011616
上記のように設定されたLをq軸インダクタンスに対応する演算用パラメータとして採用することにより得られる軸誤差Δθ’は、軸誤差Δθとは当然異なる。このため、軸誤差Δθ’をゼロに収束させるようにPLL制御を行っても、d軸とγ軸との間にはずれ(ゼロではない軸誤差)が生じることになる。
本実施形態では、このずれを意図的に発生させ、このずれを積極的に利用しつつ磁束制御部16が出力するγ軸電流指令値iγ*をゼロとすることによって、最大トルク制御に近似した制御を行うようにしている。この制御について、以下、考察する。
まず、上記非特許文献1にも開示されているように、回転子位置の推定(即ち、推定回転子位置θeの算出)に用いる演算用パラメータの誤差と位置推定誤差(軸誤差)との関係は、下記式(8)のように表される。ここで、Ra’は、回転子位置の推定のための演算式に用いる演算用パラメータとしてのモータ抵抗の値であり、(Ra−Ra’)は、その演算用パラメータと真のモータ抵抗Raとの誤差を表している。Lq’は、回転子位置の推定のための演算式に用いる演算用パラメータとしてのq軸インダクタンスの値であり、(Lq−Lq’)は、その演算用パラメータと真のq軸インダクタンスとの誤差を表している。
Figure 2008011616
今、Lq’=L、とする。つまり、回転子位置の推定に際して、(Lq−L)に相当する誤差を積極的に与えるとする。上記式(5)を用いて軸誤差Δθ’を推定するということは、(Lq−L)に相当する誤差を積極的に与えて軸誤差を推定するということに相当する。また、(Ra−Ra’)がゼロであると仮定する。また更に、上述の如く、γ軸電流iγが追従すべきγ軸電流指令値iγ*をゼロとする場合を考える。即ち、式(8)において、iγ=0、とする。そうすると、式(8)は下記式(9)のように変形される。
Figure 2008011616
そして、式(9)に、最大トルク制御に一致するd軸電流idの式(10)を代入し、Lについて解くと下記式(11)が得られる。尚、式(10)は、一般的に知られている式であり、q軸電流iqに応じて式(10)を満たすd軸電流idをモータ1に供給すれば、最大トルク制御が得られる。
Figure 2008011616
Figure 2008011616
式(11)の導出手法から明らかなように、式(11)にて表されるLは、γ軸電流指令値iγ*をゼロとした場合において、理想的に最大トルク制御を得るために軸誤差推定部30が採用すべき演算用パラメータとしてのq軸インダクタンスの値を表している。
式(11)にて表されるLは、q軸電流iqの関数となっている。以下、説明の具体化のため、Φa=0.2411[Vs/rad]、Ld=0.003[H]、Lq=0.008[H]、という数値例の下で説明を行う。この場合におけるiqとLの関係を、図5の曲線60に示す。γ軸電流指令値iγ*をゼロとした場合、最大トルク制御に一致するLの値は、1[A]≦iq≦40[A]において、概ね0.003[H]から0.0042[H]の範囲内にある。つまり、γ軸電流指令値iγ*をゼロとした場合、最大トルク制御に一致するLの値は、Lq(今の場合、0.008[H])よりも随分Ld(今の場合、0.003[H])側に存在していることが分かる。
これに着目し、本実施形態では、上記式(6)又は(7)を満たす演算用パラメータLを採用し、且つγ軸電流指令値iγ*をゼロとすることにより、最大トルク制御に近い制御を実現する。例えば、上記の数値例の下、iqに関係なく演算用パラメータLを、L=0.0039[H]に固定した場合にモータ1に流れるd軸電流idとq軸電流iqとの関係を、図6の破線62により表す。実線61は、理想的に最大トルク制御を行った場合におけるd軸電流idとq軸電流iqとの関係を示した曲線であるが、破線62と実線61は非常に類似した曲線であることが図6から分かる。
iγ*=0としているのに拘わらずq軸電流iqに応じたd軸電流idが流れるのは、q軸インダクタンスに対応する演算用パラメータとして上記式(6)又は(7)を満たす演算用パラメータLを採用したことに起因してd軸とγ軸との間にずれが生じているためである。尚、図5の曲線60において、iq=30[A]のとき、L=0.0039[H]となっているため、当然ではあるが、実線61と破線62は、iq=30[A]において交差している。
尚、説明の具体化のため、γ軸電流指令値iγ*の値をゼロとする例を説明したが、γ軸電流指令値iγ*の値は厳密にゼロである必要はなく、ゼロ近傍の値となっておればよい(即ち、iγ*≒0であればよい)。換言すれば、γ軸電流指令値iγ*の値を議論する場合における「ゼロ」は、或る程度の幅を持った「実質的なゼロ」と解釈されるべきである。iγ*が厳密にゼロでなくても、実質的にゼロとみなせる程度であれば、最大トルク制御に近い制御を得ることができるからである。
演算用パラメータLの値は、上記のような最大トルク制御に近似した制御を実現するべく、上記式(6)又は式(7)を満たす範囲内から選ばれる。具体的には、γ軸電流指令値iγ*をゼロ又はゼロ近傍の所定値とすることによってγ軸電流iγを該所定値とし且つモータ1に所定の負荷トルクを与える。そして、その状態において、モータ電流Iaの大きさが最小になるような演算用パラメータLの値を、上記式(6)又は式(7)を満たす範囲内から選ぶ。iγ*≒0の下でモータ電流Iaの大きさに最小値を与えるLの値は、図7に示すようにLdとLqの間に存在しており、Φa、Ld、Lqの値として様々な値を採用しても、そのようなLは、上記式(7)を満たす。
iγ*≒0の下でモータ電流Iaの大きさに最小値を与えるLの値を選んだとき、その所定の負荷トルクにおいて、そのLは、最大トルク制御を理想的に実現する演算用パラメータとなる。尚、そのような演算用パラメータLの値は、設計段階において調査され、設定される。
このように、回転子位置の推定に用いる演算用パラメータとしてのq軸インダクタンスの値を適切に設定しておくことによって、iγ*を逐次計算することなくiγ*≒0としておくだけで最大トルク制御に近い制御が実現できる。このため、まず、最大トルク制御のための演算量の削減効果が得られる。また、図37及び図38に示すような従来例では、回転子位置推定用の演算用パラメータの調整と最大トルク制御を行うための演算用パラメータの調整が必要であったが、本実施形態においては、回転子位置推定用の演算用パラメータLを調整するのみで、最大トルク制御に近い制御を得ることができる。これにより、調整に必要となる時間が激減し、時間的な効率が向上する。
また、q軸電流iqの値に関係なく、演算用パラメータLを固定値(上述の例では、L=0.0039[H])とする例を上述したが、演算用パラメータLをq軸電流iqの値に応じて(δ軸電流指令値iδ*の値に応じて)変化させても構わない。例えば、図5の曲線60上にのるように、演算用パラメータLをq軸電流iqの値に応じて(δ軸電流指令値iδ*の値に応じて)変化させれば、iγ*≒0としていても、理想的な最大トルク制御を得ることができる(この場合、図6における実線61と破線62が完全に重なる)。尚、q軸電流iqの値に応じて(δ軸電流指令値iδ*の値に応じて)演算用パラメータLをどのように設定するかは、設計段階において予め調べておけばよい。
また、最大トルク制御或いは最大トルク制御に近似した制御を得る手法を上述したが、演算用パラメータLの設定手法によっては、リラクタンストルクを利用した他の制御を得ることも可能である。
例えば、γ軸電流指令値iγ*をゼロ又はゼロ近傍の所定値とすることによってγ軸電流iγを該所定値とし且つ所定の負荷条件をモータ1に与える。そして、その状態において、モータ1における損失(銅損及び鉄損)が最小になるような演算用パラメータLの値を、上記式(6)又は式(7)を満たす範囲内から選ぶ。iγ*≒0の下で損失に最小値を与えるLの値は、最大トルク制御における場合と同様、LdとLqの間に存在しており、Φa、Ld、Lqの値として様々な値を採用しても、そのようなLは、上記式(7)を満たす。
iγ*≒0の下で損失を最小値とするLの値を選んだとき、その所定の負荷条件において、そのLは、最大効率制御を実現する演算用パラメータとなる。尚、そのような演算用パラメータLの値は、設計段階において調査され、設定される。また、上記の「所定の負荷条件」とは、例えば、モータ1を所定の回転速度で回転させるという条件や、モータ1に所定の負荷トルクを与えるという条件である。
また、電流制御部15は下記の2つの等式から成る式(12a)及び(12b)を用いて必要な演算を行う。また、速度制御部17及び比例積分演算器31は、夫々下記式(13)及び(14)を用いて必要な演算を行う。
Figure 2008011616
Figure 2008011616
Figure 2008011616
ここで、Kcp、Ksp及びKpは比例係数、Kci、Ksi及びKiは積分係数であり、それらはモータ駆動システムの設計時において予め設定される値である。
[推定器について]
上述してきた推定器20による回転子位置の推定手法は一例であって、様々な推定手法を採用することが可能である。回転子位置の推定(即ち、推定回転子位置θeの算出)を行うに際して、モータ1のq軸インダクタンスに対応する演算用パラメータを用いる推定手法であれば、何れの推定手法も採用可能である。
例えば、上記非特許文献1に記載されている手法を用いて回転子位置を推定するようにしてもよい。上記非特許文献1においては、下記式(15)を用いて軸誤差Δθを算出していることになる。本実施形態における符号及び記号を適用した場合、eγ及びeδは、夫々、モータ1の回転と永久磁石1aによる電機子鎖交磁束Φaとによって発生する誘起電圧のγ軸成分及びδ軸成分を表している。また、sはラプラス演算子であり、gは外乱オブザーバのゲインである。
Figure 2008011616
式(15)に示されるような誘起電圧から軸誤差を推定する手法を図4の軸誤差推定部30に当てはめた場合、軸誤差推定部30は、下記式(16)を用いて軸誤差Δθ’を算出すればよい。式(16)は、上記式(15)におけるΔθ及びLqを、夫々Δθ’及びLに置換したものとなっている。そして、図4の構成と同様に、その軸誤差Δθ’がゼロに収束するように、比例積分演算器31が推定モータ速度ωeを算出し且つ積分器32が推定回転子位置θeを算出するようにすれば、d軸とγ軸との間にずれが生じることになる。
Figure 2008011616
また、その他、特開2004−96979号公報に記載されている手法等を用いて、回転子位置を推定するようにしてもよい。
また、図4の構成に代えて、誘起電圧の元となる鎖交磁束から軸誤差(回転子位置)を推定する構成を採用してもよい。この手法について、説明を加えておく。まず、実軸上での拡張誘起電圧方程式は、一般的に下記式(17)のように表される。式(17)におけるEexは、式(18)で表され、拡張誘起電圧と呼ばれている。尚、下記の式中におけるpは、微分演算子である。
Figure 2008011616
Figure 2008011616
実軸上の式(17)を、制御軸上に座標変換すると、式(19)が得られる。
Figure 2008011616
また、拡張誘起電圧Eexを表す式(18)の過渡項(右辺第2項)を無視した場合における磁束を、下記式(20)のように拡張磁束Φexと定める。
Figure 2008011616
ところで、モータ速度や負荷が一定の状態では、モータ電流の大きさ及び位相の変化は微小であるから、q軸電流の微分項である式(18)の右辺第2項は、ωΦexより十分に小さくゼロとみなせる。また、モータ1が脱調しないで駆動されている場合は、実モータ速度ωと推定モータ速度ωeは近い値をとるため、式(19)の右辺第3項も、ωΦexより十分に小さくゼロとみなせる。そこで、式(18)の右辺第2項及び式(19)の右辺第3項を無視して考えると、式(19)は下記式(21)のようになる。
Figure 2008011616
ここで、図8に、モータ1における各部の電圧の関係等を表したベクトル図を示す。モータ印加電圧Vaは、拡張誘起電圧Eex=ωΦexと、モータ抵抗Raでの電圧降下ベクトルRa・Iaと、電機子巻線のインダクタンスでの電圧降下ベクトルVLとの和で表される。拡張磁束Φexは、永久磁石の作る磁束Φaとd軸電流の作る磁束(Ld−Lq)idとの和であるから、ベクトルの方向はd軸と一致する。Lq・Iaで表されるベクトルは、q軸インダクタンスとモータ電流Iaによって生じる磁束のベクトルであり、符号70は、ΦexとLq・Iaの合成磁束ベクトルを表す。
また、Φδは、拡張磁束Φexのδ軸成分である。従って、Φδ=Φex・sinΔθが成立する。また、上記式(21)の行列の1行目を展開して整理することにより、下記式(22)が導かれる。
Figure 2008011616
通常、永久磁石の作る磁束は、d軸電流の作る磁束よりも十分に大きく、Φa>>(Ld−Lq)idであるため、Φexは一定、即ち、Φex≒Φaと考えることができる。そして、軸誤差Δθが小さく、sinΔθ≒θにて近似できるとすると、式(22)を参照して、下記式(23)が成立する。
Figure 2008011616
上記式(23)から分かるように、Φδは、電機子鎖交磁束Φaのδ軸成分(モータ1の永久磁石1a(図2)のδ軸に平行な磁束成分であるδ軸磁束)に等しいと近似される。つまり、Φδ≒(一定値)×Δθ と近似される。このため、このΦδがゼロに収束するように制御することによっても軸誤差Δθはゼロに収束することになる。即ち、Φδに基づいて回転子位置やモータ速度を推定することが可能となる。
従って、図3及び図4における推定器20を図9に示す推定器20aに置換することが可能である。推定器20aは、δ軸磁束推定部33と、比例積分演算器31aと、積分器32aから構成される。軸誤差Δθをゼロに収束させるならばδ軸磁束推定部33はδ軸磁束Φδを推定すればよいのであるが、上述の考え方と同様、d軸とγ軸との間に意図的にずれを生じさせるべく、δ軸磁束推定部33は下記式(24)に従ってδ軸磁束Φδ’を推定する。つまり、q軸インダクタンスに対応する演算用パラメータとして、実際のLqを用いずに、上記式(6)又は式(7)を満たすLを用いて、δ軸磁束Φδ’を算出する。
Figure 2008011616
比例積分演算器31aは、図4の比例積分演算器31と同様のものであり、モータ制御装置3を構成する各部位と協働しつつ比例積分制御を行って、δ軸磁束推定部33が算出したδ軸磁束Φδ’がゼロに収束するように推定モータ速度ωeを算出する。積分器32aは、比例積分演算器31aから出力される推定モータ速度ωeを積分して推定回転子位置θeを算出する。比例積分演算器31aが出力する推定モータ速度ωeと積分器32aが出力する推定回転子位置θeは、共に推定器20aの出力値として、その値を必要とするモータ制御装置3の各部位に与えられる。
尚、式(24)から分かるように、Ldを含む項はiγにかかっているため、その項の値は比較的小さい。即ち、回転子位置の推定に際して、d軸インダクタンスLdの影響は小さい(なぜならば、iγの値はiδの値よりもかなり小さい)。これを考慮し、推定に用いる式(24)において、Ldの値としてLを用いるようにしてもよい。この場合、リラクタンストルクを利用しない非突極機(表面磁石形同期モータ等)に用いる制御と同じ制御にて、突極機の高効率運転が可能となるため、磁石の埋め込み構造の違い等を区別して制御を変える必要がなくなり、汎用性が高まる。このような汎用性の高さは、式(5)及び式(16)等を用いた場合にも言えることである。
また、式(23)ではΦex≒Φaの近似を用いているが、この近似を用いることなくδ軸磁束を推定するようにしてもよい。この場合、下記式(25)に従ってδ軸磁束Φδ’を推定するようにすればよい。この場合も、q軸インダクタンスに対応する演算用パラメータとして、実際のLqを用いずに、上記式(6)又は式(7)を満たすLを用いるようにする。
Figure 2008011616
<<第2実施形態>>
次に、本発明の主たる目的の1つを実現するための、制御方式の切替えに関する実施形態として第2実施形態を説明する。上述した第1実施形態、本実施形態及び後述する他の実施形態の説明において、特に記述しない限り、同一の符号を付したものは同一のものであると共に同一の記号(θやωなど)を付したものは同一のものである。このため、同一の符号または記号を付したものについての重複する説明を省略する場合がある。
図10は、第2実施形態に係るモータ駆動システムのブロック構成図である。第2実施形態に係るモータ駆動システムは、モータ1と、インバータ2と、モータ制御装置3aと、を備えて構成される。
モータ制御装置3aは、モータ電流Iaを用いてモータ1の回転子位置等を推定し、モータ1を所望の回転速度で回転させるための信号をPWMインバータ2に与える。この所望の回転速度は、図示されないCPU(中央処理装置;Central Processing Unit)等からモータ制御装置3aにモータ速度指令値ω*として与えられる。
図11及び図12は、本実施形態に適用される、モータ1の解析モデル図である。図11には、U相、V相、W相の電機子巻線固定軸が示されている。本実施形態においても、d軸、q軸、γ軸及びδ軸、実回転子位置θ、推定回転子位置θe及び軸誤差Δθ、並びに、実モータ速度ω及び推定モータ速度ωeを、第1実施形態(図2参照)と同様に定義する。
更に、最大トルク制御を実現する際にモータ1に供給されるべき電流ベクトルの向きと向きが一致する回転軸をqm軸と定める。そして、qm軸から電気角で90度遅れた軸をdm軸と定める。dm軸とqm軸とから成る座標軸をdm−qm軸と呼ぶ。
最大トルク制御実現時における電流軌跡を表す図6の実線61からも明らかなように、最大トルク制御を実現するモータ電流は、正のq軸成分と負のd軸成分を有する。このため、qm軸はq軸よりも位相が進んだ軸となる。図11及び図12において、反時計回りの方向が位相の進みの方向である。
qm軸から見たq軸の位相(角度)をθm、δ軸から見たqm軸の位相(角度)をΔθm、と表す。この場合、勿論、dm軸から見たd軸の位相もθm、γ軸から見たdm軸の位相もΔθmとなる。θmは、q軸(d軸)からみたqm軸(dm軸)の進み角である。Δθmは、qm軸とδ軸との間の軸誤差(dm−qm軸とγ−δ軸との間の軸誤差)を表している。d軸とγ軸との間の軸誤差であるΔθは、Δθ=Δθm+θm、にて表される。
上述のごとく、dm軸はd軸よりも位相が進んでおり、この際、θmは負の値をとるものとする。同様に、γ軸がdm軸よりも位相が進んでいる場合、Δθmは負の値をとる。図12に示されているベクトル(Em等)については、後述する。
また、モータ電流Iaのdm軸成分及びqm軸成分を、夫々、dm軸電流idm及びqm軸電流iqmで表す。モータ電圧Vaのdm軸成分及びqm軸成分を、それぞれdm軸電圧vdm及びqm軸電圧vqmで表す。
本実施形態に係るモータ制御装置では、モータ1の回転停止時及び低速回転時と、高速回転時と、で制御方式を切替える。回転停止時及び低速回転時で実行される制御を、低速用制御(低速用センサレス制御)と呼び、高速回転時で実行される制御を高速用制御(高速用センサレス制御)と呼ぶことにする。
低速用制御では、d軸とγ軸との間の軸誤差Δθを推定して推定軸であるγ軸をd軸に収束させる(即ち、軸誤差Δθをゼロに収束させる)。そして、モータ電流Iaをd軸成分とq軸成分とに分解してモータ1の制御を行う。他方、高速用制御では、dm軸とγ軸との間の軸誤差Δθmを推定して推定軸であるγ軸をdm軸に収束させる(即ち、軸誤差Δθmをゼロに収束させる)。そして、モータ電流Iaをdm軸成分とqm軸成分とに分解してモータ1の制御を行う。
従来のモータ制御装置において最大トルク制御を実現するためには、上述したように、軸誤差をゼロに維持するための推定用のパラメータの調整と、最大トルク制御実現用のパラメータの調整と、が必要となる。本実施形態に係る高速用制御を用いて最大トルク制御を実現する場合も、軸誤差Δθmを推定するための(軸誤差Δθmをゼロに収束させるための)推定用のパラメータの調整が必要となるが、この調整を行うことによって同時に最大トルク制御実現用のパラメータの調整が完了する(qm軸の定義を参照)。つまり、軸誤差推定用のパラメータ調整が最大トルク制御実現用のパラメータ調整を兼ねているため、調整が非常に容易となる。
また、qm軸の定義から明らかなように、最大トルク制御を行う際におけるモータ電流Iaの電流軌跡は、図13の実線82に示す如く、qm軸上にのる。このため、最大トルク制御を行うに際して、上記式(2)で示されるような複雑なγ軸電流指令値iγ*の算出は不要となり、演算負荷が軽減される。具体的には、高速用制御を実現する際、γ軸電流指令値iγ*は、iδの値に関係なくゼロまたはゼロ近傍の所定値とされる。
ここで、電圧方程式を用い、dm−qm軸に基づく制御(上記の高速用制御に対応)に関する理論式について説明する。まず、実軸上での拡張誘起電圧方程式は、式(26)にて表され、拡張誘起電圧Eexは式(27)にて表される。式(26)は上記式(17)と同じものであり、式(27)は上記式(18)と同じものである。尚、下記の式中におけるpは、微分演算子である。
Figure 2008011616
Figure 2008011616
実軸上の式(26)を、制御上の推定軸であるγ−δ軸上に座標変換すると、式(28)が得られ、簡単化のために式(28)の右辺第3項を無視すると、式(29)が得られる。
Figure 2008011616
Figure 2008011616
dm−qm軸に着目して、式(29)を書き改めると、式(30)が得られる。
Figure 2008011616
ここで、式(31)が成立すると定義する。更に、id=iqm・sinθmであることを考慮すると、式(32)が成立する。
Figure 2008011616
Figure 2008011616
式(32)を用いて式(30)を変形すると、式(33)が得られる。但し、Emは、式(34)によって表される。Lq1は、θmに依存する仮想インダクタンスである。Lq1は、式(30)の右辺第2項に存在するEex・sinθmを、仮想インダクタンスによる電圧降下として取り扱うために便宜上定められる。尚、Lq1は、負の値をとる。
Figure 2008011616
Figure 2008011616
ここで、等式:Lm=Lq+Lq1、が成立すると近似する(θmはiq及びiqmに依存するため、Lq1はiq及びiqmに依存する。また、Lqも磁気飽和の影響によりiq及びiqmに依存する。Lq1のiq依存性とLqのiq依存性を、Lmに集約し、推定時にiq及びiqmの影響を考慮する)。そうすると、式(33)は、下記式(35)のように変形される。尚、後にも述べるが、このLmは、第1実施形態における演算用パラメータLに相当するものである。
Figure 2008011616
更に、式(35)を変形すると、下記式(36)が得られる。ここで、Eexmは、下記式(37)によって表される。
Figure 2008011616
Figure 2008011616
γ−δ軸とdm−qm軸との間に軸誤差Δθmがあったとすると、式(36)は下式(38)のように変形される。つまり、式(26)を式(28)に変形したのと同様に、dm−qm軸上の式(36)をγ−δ軸上に座標変換すると、式(38)が得られる。
Figure 2008011616
また、pΔθm≒0、idm≒0、(Ld−Lq)(piq)≒0、と近似すると、式(37)によって表されるEexmは、下記式(39)のように近似される。
Figure 2008011616
また、上記式(32)に「Lm=Lq+Lq1」を代入して得られる式をθmについて解き、更に、iδ≒iqmと仮定すると、下記式(40)が得られる。式(40)で表されるように、θmはiδの関数であるから、Eexmもiδの関数となる。
Figure 2008011616
図12を参照しつつ、EexとEmとEexmとの関係について説明を加えておく。Eex、Em及びEexmを、回転座標系における電圧ベクトルとして考える。この場合、Eexは拡張誘起電圧ベクトルと呼ぶことができる。拡張誘起電圧ベクトルEexは、q軸上の誘起電圧ベクトルである。拡張誘起電圧ベクトルEexを、qm軸上の誘起電圧ベクトルとdm軸上の誘起電圧ベクトルとに分解して考える。上記式(34)からも分かるように、この分解によって得られたqm軸上の誘起電圧ベクトルが、Emである。また、この分解によって得られた、図12の符号80で表されるdm軸上の誘起電圧ベクトル(Eex・sinθm)は、仮想インダクタンスLq1による電圧降下ベクトルである。
式(34)と(37)の比較からも分かるように、Eexmは、Emにω(Lq−Lm)idmを加えたものとなっている。このため、回転座標系において、Eexmも、Emと同様、qm軸上の誘起電圧ベクトルとなる。最大トルク制御を行う際には、上述したようにidm≒0であるため、EexmはEmに(略)一致する。
続けて、図12を参照しつつ、Eex、Em及びEexmに対応する磁束についても説明を加えておく。Eexは、モータ1の鎖交磁束であるΦexとモータ1の回転とによって発生する誘起電圧である(上記式(20)参照)。逆に言えば、ΦexはEexをωで割ることによって算出される(但し、式(27)で表されるEexの過渡項(右辺第2項)を無視)。
Φexを回転座標系における鎖交磁束ベクトルとして考えると、鎖交磁束ベクトルΦexは、d軸上の鎖交磁束ベクトルである。鎖交磁束ベクトルΦexを、qm軸上の鎖交磁束ベクトルとdm軸上の鎖交磁束ベクトルとに分解して考える。この分解によって得られたdm軸上の鎖交磁束ベクトルをΦmと定義すると、Φm=Em/ωとなる。また、この分解によって得られた、図12の符号81で表されるqm軸上の鎖交磁束ベクトル(Φex・sinθm)は、仮想インダクタンスLq1による磁束ベクトルである。
「Φexm=Eexm/ω」とおくと、ΦexmはΦmに(Lq−Lm)idmを加えたものとなる。このため、回転座標系において、Φexmも、Φmと同様、dm軸上の鎖交磁束ベクトルとなる。最大トルク制御を行う際には、上述したようにidm≒0であるため、ΦexmはΦmに(略)一致する。
[具体的構成;図14]
次に、上記の各式を利用した、具体的なモータ駆動システムの例を示す。図14は、図10のモータ制御装置3aの内部構成を詳細に表した、モータ駆動システムの構成ブロック図である。モータ制御装置3aは、電流検出器11、座標変換器12、減算器13、減算器14、電流制御部15、磁束制御部44、速度制御部17、座標変換器18、減算器19、位置・速度推定器40(以下、単に「推定器40」という)、重畳電圧生成部41、加算器42及び43、を有して構成される。モータ制御装置3aを構成する各部位は、必要に応じてモータ制御装置3a内で生成される値の全てを自由に利用可能となっている。
電流検出器11は、モータ電流Iaの固定軸成分であるU相電流iu及びV相電流ivを検出する。座標変換器12は、電流検出器11からのU相電流iu及びV相電流ivの検出結果を受け取り、それらを推定器40から与えられる推定回転子位置θeを用いて、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδに変換する。この変換には、第1実施形態と同様、上記式(3)を用いる。
推定器40は、推定回転子位置θe及び推定モータ速度ωeを推定して出力する。推定器40による具体的な推定手法については後述するが、推定器40は、回転子の回転速度に応じて、低速用制御を実現させるための低速用推定処理と、高速用制御を実現させるための高速用推定処理と、を切替えて実行するように形成される。
減算器19は、推定器40から与えられる推定モータ速度ωeを、モータ速度指令値ω*から減算し、その減算結果(速度誤差)を出力する。速度制御部17は、減算器19の減算結果(ω*−ωe)に基づいて、δ軸電流指令値iδ*を作成する。磁束制御部44は、推定モータ速度ωe及びδ軸電流指令値iδ*を参照してγ軸電流指令値iγ*を作成する。
減算器13は、磁束制御部44が出力するγ軸電流指令値iγ*から、座標変換器12が出力するγ軸電流iγを差し引いて、電流誤差(iγ*−iγ)を算出する。減算器14は、速度制御部17が出力するδ軸電流指令値iδ*から、座標変換器12が出力するδ軸電流iδを差し引いて、電流誤差(iδ*−iδ)を算出する。
電流制御部15は、減算器13及び14にて算出された各電流誤差、座標変換器12からのγ軸電流iγ及びδ軸電流iδ、並びに推定器40からの推定モータ速度ωeを受け、γ軸電流iγがγ軸電流指令値iγ*に追従するように、且つδ軸電流iδがδ軸電流指令値iδ*に追従するように、γ軸電圧指令値vγ*とδ軸電圧指令値vδ*を算出して出力する。
重畳電圧生成部41は、γ軸電圧指令値vγ*及びδ軸電圧指令値vδ*に重畳するための重畳電圧を生成して出力する。この重畳電圧は、vγ*に対するγ軸重畳電圧vhγ*(重畳電圧のγ軸成分)と、vδ*に対するδ軸重畳電圧vhδ*(重畳電圧のδ軸成分)と、から成る。以下、γ軸重畳電圧vhγ*及びδ軸重畳電圧vhδ*を、総称して、重畳電圧vhγ*及びvhδ*ということもある。
本実施形態では、vγ*及びvδ*によって表される、モータ1を駆動するための駆動電圧に、重畳電圧が重畳される。この重畳電圧の重畳によって、γ軸電流指令値iγ*及びδ軸電流指令値iδ*にて表される、モータ1を駆動するための駆動電流に、上記重畳電圧に応じた重畳電流が重畳されることになる。
重畳電圧生成部41によって生成される重畳電圧は、例えば、高周波の回転電圧である。ここで、「高周波」とは、その重畳電圧の周波数が駆動電圧の周波数よりも十分に大きいことを意味している。従って、この重畳電圧に従って重畳される上記重畳電流の周波数は、上記駆動電流の周波数よりも十分に大きい。また、「回転電圧」とは、重畳電圧の電圧ベクトル軌跡が固定座標軸上で円を成すような電圧を意味する。
加算器42は、電流制御部15から出力されるγ軸電圧指令値vγ*にγ軸重畳電圧vhγ*を加算し、その加算結果(vγ*+vhγ*)を座標変換器18に出力する。加算器43は、電流制御部15から出力されるδ軸電圧指令値vδ*にδ軸重畳電圧vhδ*を加算し、その加算結果(vδ*+vhδ*)を座標変換器18に出力する。
座標変換器18は、推定器40から与えられる推定回転子位置θeに基づいて、vhγ*が重畳されたγ軸電圧指令値(即ち、(vγ*+vhγ*))及びvhδ*が重畳されたδ軸電圧指令値(即ち、(vδ*+vhδ*))の逆変換を行い、モータ電圧VaのU相成分、V相成分及びW相成分を表すU相電圧指令値vu *、V相電圧指令値vv *及びW相電圧指令値vw *から成る三相の電圧指令値を作成して、それらをPWMインバータ2に出力する。この逆変換には、上記式(4)におけるvγ*及びvδ*を(vγ*+vhγ*)及び(vδ*+vhδ*)に置換した式を用いる。
PWMインバータ2は、モータ1に印加されるべき電圧を表す三相の電圧指令値(vu *、vv *及びvw *)に基づいてパルス幅変調された信号を作成し、該三相の電圧指令値に応じたモータ電流Iaをモータ1に供給してモータ1を駆動する。
図15に、図14の推定器40の第1構成例としての位置・速度推定器40a(以下、単に「推定器40a」と呼ぶ)の内部ブロック図を示す。推定器40aを、図14における推定器40として用いることができる。
推定器40aは、第1軸誤差推定部201と、第2軸誤差推定部202と、切替処理部203と、比例積分演算器204と、積分器205と、を有する。
第1軸誤差推定部201は、vγ*、vδ*、iγ及びiδの値の全部または一部を用い、注入された高周波の重畳電圧に応じて流れる重畳電流成分に基づいて、d軸とγ軸との軸誤差Δθを推定する。また、この際、第1軸誤差推定部201は、必要に応じて、推定モータ速度ωeの値を用いる。この軸誤差Δθの推定手法(算出手法)については、古くから多数の手法が提案されており、第1軸誤差推定部201は、その何れの手法をも採用することができる。後に(第7実施形態の説明の後に)、軸誤差Δθの推定手法の例を挙げる。このような高周波の重畳成分に基づく、磁気突極性を利用した推定は、低速回転時においても高い精度を実現できる。
第2軸誤差推定部202は、vγ*、vδ*、iγ及びiδの値の全部または一部を用い、回転子の回転によって生じる誘起電圧などに基づいて、dm軸とγ軸との軸誤差Δθmを推定する。また、この際、第2軸誤差推定部202は、必要に応じて、推定モータ速度ωeの値を用いる。この軸誤差Δθmの推定手法(算出手法)については、後に(第7実施形態の説明の後に)複数の具体例を挙げるが、例えば、第2軸誤差推定部202は、下記式(A1)に従って軸誤差Δθmを算出する(推定する)。式(A1)は、上記の行列式(38)の1行目と2行目を変形した結果から導かれる(但し、行列式(38)の右辺第3項を無視する)。第2軸誤差推定部202は、下記式(A1)のvγ、vδ及びωとしてvγ*、vδ*及びωeを用いる。
Figure 2008011616
式(A1)は、上記の式(1)における演算用パラメータとしてのLqをLmに置換した式となっている。つまり、q軸インダクタンスに対応する演算用パラメータとして、実際のq軸インダクタンスの値であるLqを用いた場合はΔθが得られ、Lmを用いた場合はΔθmが得られることになる。このような誘起電圧などを利用した推定は、高速回転時において特に高い精度を有する。尚、軸誤差Δθmの推定手法に関する後述の説明にても述べるが、Lmは、Ld以上Lq未満の値に設定される。
切替処理部203は、軸誤差Δθを第1入力値として受けると共に軸誤差Δθmを第2入力値として受け、モータ1の回転子の回転速度を表す速度情報に応じて、第1入力値と第2入力値から出力値を算出して出力する。推定器40aにおいては、速度情報として、比例積分演算器204にて算出される推定モータ速度ωeが用いられる。但し、速度情報として、モータ速度指令値ω*を用いても構わない。
具体的には例えば、切替処理部203では、速度情報に応じた加重平均処理が行われる。この場合、切替処理部203は、速度情報によって表される回転速度が、所定の第1閾値速度VTH1よりも小さい時は第1入力値を出力値として出力し、所定の第2閾値速度VTH2よりも大きい時は第2入力値を出力値として出力する。ここで、VTH1<VTH2、が成立する。
そして、速度情報によって表される回転速度が第1閾値速度VTH1から第2閾値速度VTH2の範囲内にあるとき、第1入力値と第2入力値の加重平均値を出力値として算出及び出力する。具体的には、図16の模式図に示す如く、速度情報によって表される回転速度が第1閾値速度VTH1から第2閾値速度VTH2の範囲内にあるとき、その回転速度が増加するに従って出力値に対する第2入力値の寄与率が増大するように、その回転速度が減少するに従って出力値に対する第1入力値の寄与率が増大するように、第1入力値と第2入力値の加重平均を行う。
また例えば、切替処理部203による加重平均処理を、切替え開始からの経過時間に応じて行うようにしてもよい。つまり、例えば、図17の模式図に示す如く、速度情報によって表される回転速度が第1閾値速度VTH1より小さい状態から第1閾値速度VTH1より大きい状態に移行したタイミングt1を基準として、出力値を第1入力値から第2入力値に切替え始める。タイミングt1時点では、出力値は例えば第1入力値とされる。そして、タイミングt1からの経過時間が増大するに従って出力値に対する第2入力値の寄与率が増大するように、第1入力値と第2入力値の加重平均を行う。そして、切替え開始のタイミングt1から所定の時間が経過した時点で、出力値を第2入力値に一致させて切替えを終了する。速度情報によって表される回転速度が第2閾値速度VTH2より大きい状態から第2閾値速度VTH2より小さい状態に移行した場合も同様である。尚、切替え開始からの経過時間に応じて加重平均処理を行う場合、第1閾値速度VTH1と第2閾値速度VTH2は同じであってもよい。
尚、第1閾値速度VTH1は、例えば10rps(rotation per second)〜20rpsの範囲内の回転速度とされ、第2閾値速度VTH2は、例えば20rps〜30rpsの範囲内の回転速度とされる。
図15の推定器40aにおいて、切替処理部203の出力値は、速度推定部として機能する比例積分演算器204に与えられる。比例積分演算器204は、PLL(Phase Locked Loop)を実現すべく、モータ制御装置3aを構成する各部位と協働しつつ比例積分制御を行って、切替処理部203の出力値がゼロに収束するように推定モータ速度ωeを算出する。積分器205は、比例積分演算器204から出力される推定モータ速度ωeを積分して推定回転子位置θeを算出する。比例積分演算器204が出力する推定モータ速度ωeと積分器205が出力する推定回転子位置θeは、共に推定器40aの出力値として、その値を必要とするモータ制御装置3aの各部位に与えられる。
図18に、図14の磁束制御部44の構成例としての磁束制御部44aの内部ブロック図を示す。磁束制御部44aを、図14における磁束制御部44として用いることができる。
磁束制御部44aは、第1磁束制御部221と、第2磁束制御部222と、iγ切替制御部223と、を有する。第1磁束制御部221及び第2磁束制御部222には、図14の速度制御部17にて算出されたδ軸電流指令値iδ*が与えられる。
第1磁束制御部221は、低速用制御を実現するためのγ軸電流指令値を算出及び出力する。第1磁束制御部221から出力されるγ軸電流指令値は、磁束制御部44aから出力されるべきiγ*の候補として取り扱われ、それをiγ1 *と表記する。上述の如く、低速用制御はd−q軸に基づく制御であるため、最大トルク制御を実現する場合、第1磁束制御部221は、周知の如く、iγ1 *を下記式(A2)に従って算出する。
Figure 2008011616
第2磁束制御部222は、高速用制御を実現するためのγ軸電流指令値を出力する。第2磁束制御部222から出力されるγ軸電流指令値は、磁束制御部44aから出力されるべきiγ*の候補として取り扱われ、それをiγ2 *と表記する。高速用制御はdm−qm軸に基づく制御であるため、最大トルク制御を実現する場合、iδ*に関係なくiγ2 *はゼロ又はゼロ近傍の所定値とされる。γ−δ軸がdm−qm軸に追従しておれば、最大トルク制御を実現するγ軸電流はゼロ又は略ゼロでよいからである。
iγ切替制御部223は、iγ1 *を第1入力値として受けると共にiγ2 *を第2入力値として受け、モータ1の回転子の回転速度を表す速度情報に応じて、iγ1 *とiγ2 *から出力値としてのiγ*を算出及び出力する。iγ切替制御部223が用いる速度情報として、推定モータ速度ωeが用いられる。但し、速度情報として、モータ速度指令値ω*を用いても構わない。
具体的には例えば、図15の切替処理部203と同様、iγ切替制御部223では、速度情報に応じた加重平均処理が行われる。この場合、iγ切替制御部223は、速度情報によって表される回転速度が、所定の第1閾値速度VTH1よりも小さい時はiγ1 *をiγ*として出力し、所定の第2閾値速度VTH2よりも大きい時はiγ2 *をiγ*として出力する。
そして、速度情報によって表される回転速度が第1閾値速度VTH1から第2閾値速度VTH2の範囲内にあるとき、iγ1 *とiγ2 *の加重平均値をiγ*として算出及び出力する。具体的には、図15の切替処理部203と同様(図16参照)、速度情報によって表される回転速度が第1閾値速度VTH1から第2閾値速度VTH2の範囲内にあるとき、その回転速度が増加するに従ってiγ*に対するiγ2 *の寄与率が増大するように、その回転速度が減少するに従ってiγ*に対するiγ1 *の寄与率が増大するように、iγ1 *とiγ2 *の加重平均を行う。
また例えば、iγ切替制御部223による加重平均処理を、切替え開始からの経過時間に応じて行うようにしてもよい。つまり、例えば、図17の模式図に示す如く、速度情報によって表される回転速度が第1閾値速度VTH1より小さい状態から第1閾値速度VTH1より大きい状態に移行したタイミングt1を基準として、出力値(iγ*)を第1入力値(iγ1 *)から第2入力値(iγ2 *)に切替え始める。タイミングt1時点では、出力値(iγ*)は例えば第1入力値(iγ1 *)とされる。そして、タイミングt1からの経過時間が増大するに従って出力値(iγ*)に対する第2入力値(iγ2 *)の寄与率が増大するように、第1入力値(iγ1 *)と第2入力値(iγ2 *)の加重平均を行う。そして、切替え開始のタイミングt1から所定の時間が経過した時点で、出力値(iγ*)を第2入力値(iγ2 *)に一致させて切替えを終了する。速度情報によって表される回転速度が第2閾値速度VTH2より大きい状態から第2閾値速度VTH2より小さい状態に移行した場合も同様である。尚、切替え開始からの経過時間に応じて加重平均処理を行う場合、第1閾値速度VTH1と第2閾値速度VTH2は同じであってもよい。
また、低速回転時など、第1軸誤差推定部201にて算出される軸誤差Δθが必要となるタイミングにおいては、図14の重畳電圧生成部41による重畳電圧の生成が必須となるが、高速回転時など、第1軸誤差推定部201にて算出される軸誤差Δθが必要とならないタイミングにおいては、重畳電圧生成部41による重畳電圧の生成を休止するようにすると良い。軸誤差Δθmの算出にとって必要なのは駆動電圧(vγ*及びvδ*)に応じて流れる駆動電流成分であり、重畳電流成分は軸誤差Δθmの算出に対してノイズとなるからである。
但し、加重平均処理を行う場合などでは、重畳電圧を重畳しつつ、軸誤差Δθmを算出する必要がある。そのような場合は、座標変換器12からのγ軸電流iγ及びδ軸電流iδに高域遮断処理を施して、重畳電流(第7実施形態の説明の後に述べるihγ及びihδ)の成分を除去したγ軸電流iγ及びδ軸電流iδの値を軸誤差Δθmの算出に利用するとよい。
上述の如く、低速回転時及び回転停止時においてはγ軸とd軸との推定軸誤差であるΔθがゼロに収束するように重畳成分に基づく低速用制御が行われ、高速回転時においてはγ軸とdm軸との推定軸誤差であるΔθmがゼロに収束するように誘起電圧などに基づく高速用制御が行われる。このため、広い速度範囲で良好なセンサレス制御を実現可能となる。更に、高速用制御をdm−qm軸に基づく制御とすることにより、上述の如く、パラメータ調整の容易化及び演算負荷の軽減効果が得られる。
低速用制御を実現する場合は、軸誤差Δθに基づく低速用推定処理が実施され、軸誤差Δθに基づいて算出される推定回転子位置θeは、U相の電機子巻線固定軸を基準としたd軸の位相θの推定値(推定位相)を表すこととなる。高速用制御を実現する場合は、軸誤差Δθmに基づく高速用推定処理が実施され、軸誤差Δθmに基づいて算出される推定回転子位置θeは、U相の電機子巻線固定軸を基準としたdm軸の位相(θ−θm)の推定値(推定位相)を表すこととなる。2つの推定処理は、回転子の回転速度を表す速度情報に応じて切替え実行される。
低速用制御と高速用制御とでは推定される軸が異なるため、制御の切替え時において工夫が必要となる。本実施形態では、低速用制御から高速用制御へと移行する際または高速用制御から低速用制御へと移行する際、加重平均処理によって、一時的に2つの推定結果(今の例の場合、ΔθとΔθm)を加味した推定処理を実施する。このため、切替えの際、推定回転子位置θe及び推定モータ速度ωeの算出の基になる値が不連続とはならず、滑らかな切替えが実現できる。
また、d−q軸に基づく制御(低速用制御)とdm−qm軸に基づく制御(高速用制御)とではモータ1に供給すべきγ軸電流が異なるため、制御の切替えに伴ってγ軸電流指令値iγ*を適切に変更する必要がある。本実施形態では、低速用制御から高速用制御へと移行する際または高速用制御から低速用制御へと移行する際、推定器における加重平均処理と連動した、iγ1 *とiγ2 *の加重平均値をiγ*とする。これにより、切替えの際、iγ*が不連続とはならず、滑らかな切替えが可能となるとともに高効率運転が切替え時においても実現可能となる。
<<第3実施形態>>
図15における切替処理部203を、第1入力値と第2入力値とを切替える、単なるスイッチとして機能させることも可能である。切替処理部203をスイッチとして機能させる場合の実施形態を第3実施形態として説明する。第2実施形態にて説明した事項は、矛盾無き限り、全て本実施形態にも適用される。
図19は、第3実施形態に係る位置・速度推定器40b(以下、単に「推定器40b」と呼ぶ)の内部ブロック図である。推定器40bでは、切替処理部がスイッチとして機能する。推定器40bにおける切替処理部を切替処理部203aと呼ぶ。切替処理部203aは切替処理部203の一構成例に相当する。推定器40bを、図14の推定器40として用いることができる。
図19の推定器40bは、図15の推定器40aにおける切替処理部203を切替処理部203aに置換した点において推定器40aと相違しており、その他の点において両者は共通している。
切替処理部203aは、軸誤差Δθを第1入力値として受けると共に軸誤差Δθmを第2入力値として受け、モータ1の回転子の回転速度を表す速度情報に応じて、第1入力値または第2入力値を出力値として出力する。具体的には、切替処理部203aは、速度情報によって表される回転速度が所定の閾値速度VTHより小さい時に第1入力値を出力値として出力し、閾値速度VTHより大きい時に第2入力値を出力値として出力する。切替処理部203aは、速度情報として推定モータ速度ωeを用いる。但し、速度情報として、モータ速度指令値ω*を用いても構わない。
尚、閾値速度VTHは、例えば10rps(rotation per second)〜30rpsの範囲内の回転速度とされる。
切替処理部203aを用いて比例積分演算器204に与える軸誤差をΔθとΔθmとで急峻に切替えたとしても、比例積分演算器204を用いたPLL制御の応答性に応じた速度でしかモータ速度や回転子位置の推定値は変化しないため、加重平均処理などを行わずとも、それらの推定値の連続性は担保される。
また、図19の推定器40bは、例えば、図18の磁束制御部44aと組み合わせて用いられるが、比例積分演算器204に与える軸誤差をΔθからΔθmに急峻に切替える場合、上記のPLL制御の応答性を考慮してγ軸電流指令値iγ*をiγ1 *からiγ2 *へと徐々に移行させるとよい。比例積分演算器204に与える軸誤差をΔθmからΔθに急峻に切替える場合も同様である。
[切替スムージング処理α]
また、モータ制御装置にて実行される制御及び推定処理を低速用制御及び低速用推定処理から高速用制御及び高速用推定処理に移行するべく、比例積分演算器204に与える値を第1軸誤差推定部201の出力値から第2軸誤差推定部202の出力値へと切替える際、以下のような処理(この処理を、以下、「切替スムージング処理α」という)を採用してもよい。その切替えのタイミングをT1と称する。例えば、速度情報によって表される回転速度が閾値速度VTHより小さい状態から閾値速度VTHより大きい状態に移行したタイミングがタイミングT1となる。
図20を参照する。まず、切替えた瞬間において(即ち、タイミングT1において)、第2軸誤差推定部202にΔθを推定させる。これは、第2軸誤差推定部202に、q軸インダクタンスに対応する演算用パラメータとしてLmではなくLqを使わせることにより実現される。
そして、タイミングT1の後、タイミングT1から時間が経過するに従って、第2軸誤差推定部202の出力値がΔθからΔθmへと近づいていくように、軸誤差の算出に用いるq軸インダクタンスに対応する演算用パラメータをLqからLmに向かって徐々に減少させていく。タイミングT1から所定の時間が経過したタイミングT2において、q軸インダクタンスに対応する演算用パラメータはLmとされ、高速用制御(高速用推定処理)への切替えを完了する。
例えば、上記式(A1)を利用する場合、第2軸誤差推定部202は、
タイミングT1において、式(A1)のLmをLqに置換した式を用いて軸誤差を算出及び出力し、タイミングT2において、式(A1)そのものを用いて軸誤差を算出及び出力し、タイミングT1とT2の間において、式(A1)のLmを「LqとLmの間の値」に置換した式を用いて軸誤差を算出及び出力する。
切替スムージング処理αを行う場合、図20に示す如く、q軸インダクタンスに対応する演算用パラメータの変化に連動して、iγ*をiγ1 *からiγ2 *に向かって徐々に増加させるとよい。具体的には、タイミングT1においてiγ*をiγ1 *とし、タイミングT1からT2に向かうにつれてiγ*を増加させ、且つ、タイミングT2及びそれ以降においてiγ*をiγ2 *とする。
切替え開始からの経過時間に応じて、第2軸誤差推定部202の推定軸誤差をΔθからΔθmへ移行させる場合を例示したが、モータ1の回転子の回転速度を表す速度情報(ω*またはωe)に応じて、この移行を実行してもよい。即ち、タイミングT1の後、速度情報によって表される回転速度が増加するに従って、第2軸誤差推定部202の出力値がΔθからΔθmへと近づいていくように、軸誤差の算出に用いるq軸インダクタンスに対応する演算用パラメータをLqからLmに向かって徐々に減少させていく。そして、その回転速度が所定の閾値速度に達した場合は、その演算用パラメータをLmとし、高速用制御(高速用推定処理)への切替えを完了する。
また、この場合も、q軸インダクタンスに対応する演算用パラメータの変化に連動して(換言すれば、回転速度の変化に連動して)、iγ*をiγ1 *からiγ2 *に向かって徐々に変化させるとよい。具体的には、タイミングT1においてiγ*をiγ1 *とし、タイミングT1以降において、速度情報によって表される回転速度が増加するに従ってiγ*を増加させる。そして、上記の演算用パラメータがLmに達した時点でiγ*をiγ2 *に収束させる。
尚、低速用制御から高速用制御への切替えが必要となる場合、通常、回転速度は増加方向に向かっていくが、仮に、高速用制御への切替えが完了する前に速度情報によって表される回転速度が減少した場合は、上記の演算用パラメータをLqに向けて増加させると共にiγ*をiγ1 *に向けて減少させてもよい。
上記の如く、切替スムージング処理αでは、実際に実行する制御及び推定処理を低速用制御及び低速用推定処理から高速用制御及び高速用推定処理へと切替える際、切替え開始からの経過時間に応じてまたは速度情報に応じて、推定用の演算用パラメータをLqからLmに向かって徐々に変更してゆき最終的にLmに収束させて、所望の切替えを完了させる。この演算用パラメータの変更過程における第2軸誤差推定部202の出力値に基づいて、その変更過程における推定モータ速度ωe及び推定回転子位置θeは算出される。また、これに併せてiγ*も徐々に変更される。これにより、軸誤差及びγ軸電流の連続性が担保された滑らかな制御の切替えが実現される。
尚、切替スムージング処理αを推定器40bにて実施する場合、第1軸誤差推定部201は、d軸の位相θを推定するための値(Δθ)を算出する第1推定処理部として機能し、第2軸誤差推定部202は、dm軸の位相(θ−θm)を推定するための値(Δθm)を算出する第2推定処理部として機能する。
[切替スムージング処理β]
また、滑らかな制御の切替えを実現するべく、図19の推定器40bを図21のように変形しても良い。図21は、この変形例に係る位置・速度推定器40c(以下、単に「推定器40c」と呼ぶ)の内部ブロック図である。推定器40cを、図14の推定器40として用いることができる。推定器40cを用いた処理を切替スムージング処理βと呼ぶ。
図21の推定器40cは、図19の推定器40bに減算器211が追加されている点において推定器40bと相違しており、その他の点において両者は共通している。共通点に関する重複する説明を割愛する。但し、推定器40cは、減算器211の追加に対応して、以下に示すような特徴的な動作を行う。
推定器40cにおいて、減算器211は、第1軸誤差推定部201にて算出される軸誤差Δθから軸誤差指令値Δθ*を減算して、その減算値(Δθ−Δθ*)を出力する。推定器40cにおいて、切替処理部203aは、減算器211の算出結果である(Δθ−Δθ*)を第1入力値として受けると共に軸誤差Δθmを第2入力値として受け、モータ1の回転子の回転速度を表す速度情報に応じて、第1入力値または第2入力値を出力値として出力する。軸誤差指令値Δθ*は、低速用制御(低速用推定処理)の実行時においてゼロとされる。また、推定器40cにおける第2軸誤差推定部202は、上記の切替スムージング処理αにおけるそれと異なり、常にΔθmを推定及び出力するものとする。
推定器40cでは、モータ制御装置にて実行される制御及び推定処理を低速用制御及び低速用推定処理から高速用制御及び高速用推定処理に移行するべく、比例積分演算器204に与える値を減算器211の出力値から第2軸誤差推定部202の出力値へと切替える際、その切替えの前において、軸誤差指令値Δθ*をゼロからθmに向けて徐々に変化させる。そして、軸誤差指令値Δθ*がθmに収束した後に、比例積分演算器204に与える値を減算器211の出力値から第2軸誤差推定部202の出力値へと切替えるようにする。Δθ*=θmのとき、減算器211の出力値は、Δθmと等しくなる。
軸誤差指令値Δθ*の値のゼロからθmへの変化は、切替スムージング処理αと同様、その変化の開始時点からの経過時間の増加と共に、または、速度情報によって表される回転速度の増加と共に、行われる。
また、軸誤差指令値Δθ*の値のゼロからθmへの変化に伴って、iγ*もiγ1 *からiγ2 *に向かって徐々に変化させる。
このように、切替スムージング処理βに対応する推定器40cにおいては、比例積分演算器204に与える値を第2軸誤差推定部202の出力値へと切替える前において、一時的に、第1軸誤差推定部201と減算器211から成る部位の出力値(Δθ−Δθ*)を第2軸誤差推定部202の出力値Δθmに向かわせて収束させ、その収束後に、切替処理部203aによる実際の切替えを実行する。また、これに併せてiγ*も変更する。これにより、軸誤差及びγ軸電流の連続性が担保された滑らかな制御の切替えが実現される。
尚、推定器40cにおいて、第1軸誤差推定部201と減算器211から成る部位は、d軸の位相θを推定するための値を算出する第1推定処理部として機能し、第2軸誤差推定部202は、dm軸の位相(θ−θm)を推定するための値を算出する第2推定処理部として機能する。
また、軸誤差指令値Δθ*を決定するために必要なθmの値は、推定器40cの内部又は外部に設けられる図示されないθm算出部によって算出される。このθm算出部は、図14の座標変換器12から出力されるδ軸電流iδの値を上記式(40)におけるiδとして利用しつつ、上記式(40)を用いてθmを算出する。この際、iδに応じたθmの値を事前にテーブルデータとして用意しておき該テーブルデータを参照することによってθmの値を得るようにしても構わない。
<<第4実施形態>>
また、図18におけるiγ切替処理部223を、第1入力値と第2入力値とを切替える、単なるスイッチとして機能させることも可能である。iγ切替処理部223をスイッチとして機能させる場合の実施形態を第4実施形態として説明する。
図22は、第4実施形態に係る磁束制御部44bの内部ブロック図である。磁束制御部44bでは、iγ切替処理部がスイッチとして機能する。磁束制御部44bにおけるiγ切替処理部をiγ切替処理部223aと呼ぶ。iγ切替処理部223aはiγ切替処理部223の一構成例に相当する。磁束制御部44bを、図14の磁束制御部44として用いることができる。磁束制御部44bは、第2及び第3実施形態並びに後述する第5及び第6実施形態と組み合わせて用いられる。
図22の磁束制御部44bは、図18の磁束制御部44aにおけるiγ切替処理部223をiγ切替処理部223aに置換した点において磁束制御部44aと相違しており、その他の点において両者は共通している。
iγ切替処理部223aは、iγ1 *を第1入力値として受けると共にiγ2 *を第2入力値として受け、モータ1の回転子の回転速度を表す速度情報に応じて、iγ1 *またはiγ2 *をiγ*として出力する。iγ切替処理部223aが用いる速度情報として、推定モータ速度ωeが用いられる。但し、速度情報として、モータ速度指令値ω*を用いても構わない。
具体的には例えば、図19の切替処理部203aと同様、iγ切替制御部223aは、速度情報によって表される回転速度が、所定の閾値速度VTHよりも小さい時は第1入力値としてのiγ1 *をiγ*として出力し、閾値速度VTHよりも大きい時は第2入力値としてのiγ2 *をiγ*として出力する。
<<第5実施形態>>
第2(及び第3)実施形態では、図14の推定器40の第1構成例としての推定器40a(並びに40b及び40c)を説明した。第5実施形態では、図14の推定器40の第2構成例としての位置・速度推定器40d(以下、単に「推定器40d」と呼ぶ)を説明する。
図23は、推定器40dの内部ブロック図である。推定器40dを、図14における推定器40として用いることができる。
推定器40dは、第1軸誤差推定部201と、第2軸誤差推定部202と、切替処理部203と、比例積分演算器206及び207と、積分器208と、を有する。推定器40dでは、推定速度の段階で切替処理を行う。
推定器40dにおける第1軸誤差推定部201及び第2軸誤差推定部202は、図15の推定器40aにおけるそれらと同様のものである。但し、第1軸誤差推定部201は、軸誤差Δθの算出の際、必要に応じて、比例積分演算器206の出力値(後述する第1候補速度ωe1)を推定モータ速度ωeと取り扱って利用する。同様に、第2軸誤差推定部202は、軸誤差Δθmの算出の際、必要に応じて、比例積分演算器207の出力値(後述する第2候補速度ωe2)を推定モータ速度ωeと取り扱って利用する。
比例積分演算器206は、PLLを実現すべく、モータ制御装置3aを構成する各部位と協働しつつ比例積分制御を行って、軸誤差Δθがゼロに収束するように推定モータ速度を算出する。比例積分演算器206にて算出された推定モータ速度は、第1候補速度ωe1として出力される。第1候補速度ωe1は、d−q軸の回転速度ωの推定値(推定回転速度)に相当する。
比例積分演算器207は、PLLを実現すべく、モータ制御装置3aを構成する各部位と協働しつつ比例積分制御を行って、軸誤差Δθmがゼロに収束するように推定モータ速度を算出する。比例積分演算器207にて算出された推定モータ速度は、第2候補速度ωe2として出力される。第2候補速度ωe2は、dm−qm軸の回転速度の推定値(推定回転速度)に相当する。
推定器40dにおける切替処理部203は、図15の推定器40aにおけるそれと同様のものであり、また、図19の切替処理部203aと同様のスイッチであっても良い。但し、推定器40dにおいては、切替処理部203の第1入力値及び第2入力値は、それぞれ第1候補速度ωe1及び第2候補速度ωe2となっている。このため、推定器40dにおける切替処理部203は、モータ1の回転子の回転速度を表す速度情報に応じて、第1候補速度ωe1、第2候補速度ωe2又はそれらの加重平均値を出力することになる。尚、速度情報としては、モータ速度指令値ω*を用いるとよい。推定器40dにおいて、切替処理部203の出力値は、推定モータ速度ωeとして出力される。
積分器208は、切替処理部203から出力される推定モータ速度ωeを積分して推定回転子位置θeを算出する。切替処理部203が出力する推定モータ速度ωeと積分器208が出力する推定回転子位置θeは、共に推定器40dの出力値として、その値を必要とするモータ制御装置3aの各部位に与えられる。
<<第6実施形態>>
更に、図14の推定器40の第3構成例としての位置・速度推定器40e(以下、単に「推定器40e」と呼ぶ)を、第6実施形態として説明する。
図24は、推定器40eの内部ブロック図である。推定器40eを、図14における推定器40として用いることができる。
推定器40eは、第1軸誤差推定部201と、第2軸誤差推定部202と、切替処理部203と、比例積分演算器206及び207と、積分器209及び210と、を有する。推定器40eでは、推定位置の段階で切替処理を行う。
推定器40eにおける第1軸誤差推定部201及び第2軸誤差推定部202並びに比例積分演算器206及び207は、図23の推定器40dにおけるそれらと同様のものである。積分器209は、比例積分演算器206から出力される第1候補速度ωe1を積分して第1候補位置θe1を算出する。第1候補位置θe1は、U相の電機子巻線固定軸を基準としたd軸の位相θの推定値(推定位相)に相当する。積分器210は、比例積分演算器207から出力される第2候補速度ωe2を積分して第2候補位置θe2を算出する。第2候補位置θe2は、U相の電機子巻線固定軸を基準としたdm軸の位相(θ−θm)の推定値(推定位相)に相当する。
推定器40eにおける切替処理部203は、図15の推定器40aにおけるそれと同様のものであり、また、図19の切替処理部203aと同様のスイッチであっても良い。但し、推定器40eにおいては、切替処理部203の第1入力値及び第2入力値は、それぞれ第1候補位置θe1及び第2候補位置θe2となっている。このため、推定器40eにおける切替処理部203は、モータ1の回転子の回転速度を表す速度情報に応じて、第1候補位置θe1、第2候補位置θe2又はそれらの加重平均値を出力することになる。尚、速度情報としては、モータ速度指令値ω*を用いるとよい。推定器40eにおいて、切替処理部203の出力値は、推定回転子位置θeとして出力される。
切替処理部203が出力する推定回転子位置θeは推定器40eの出力値として、その値を必要とするモータ制御装置3aの各部位に与えられる。必要であれば、切替処理部203が出力する推定回転子位置θeを微分して推定モータ速度ωeを算出するようにしてもよい。
尚、推定器40a、40b及び40cの説明にて記載した事項は、矛盾なき限り、推定器40d及び40eに対しても適用可能である。また、図23の推定器40d及び図24の推定器40eは、図18の磁束制御部44a又は図22の磁束制御部44bと組み合わせて用いられる。
また、推定器40d又は40eにおける切替処理部203を、図19の切替処理部203aの如くスイッチとして機能させた場合、推定器40d又は40eに対しても、上記の切替スムージング処理αは適用可能である。即ち、推定器40d又は40eにおいて、切替処理部203の出力値を第1入力値から第2入力値に切替えた直後は、q軸インダクタンスに対応する演算用パラメータとしてLqを用いることにより第2軸誤差推定部202に軸誤差Δθを算出させる。その後、時間の経過とともに、或いは、速度情報によって表される回転子の回転速度の増加とともに、該演算用パラメータをLqからLmに向かって徐々に減少させ最終的にLmに収束させる。
また、推定器40d又は40eにおける切替処理部203を、図19の切替処理部203aの如くスイッチとして機能させた場合、推定器40d又は40eに対しても、図21に対応する上記の切替スムージング処理βは適用可能である。即ち、推定器40d又は40eにおいて、第1軸誤差推定部201と比例積分演算器206の間に図21の減算器211と同様の減算器を設けて、減算器の出力値(Δθ−Δθ*)を比例積分演算器206に与えるようにする。そして、切替処理部203の出力値を第1入力値から第2入力値に切替える前に、一時的に、減算器の出力値(Δθ−Δθ*)を第2軸誤差推定部202の出力値Δθmに向かわせて収束させ、その収束後に、切替処理部203による実際の切替えを実行する。
第5または第6実施形態のように推定器を構成しても、第2及び第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
<<第7実施形態>>
上述の第2〜第6実施形態に係るモータ制御装置では、低速回転時において、d−q軸に基づく制御を実行するようにしているが、d−q軸に基づく制御の代わりに速度指令に応じた軸に基づく制御を実行するようにしてもよい。低速回転時に、速度指令に応じた軸に基づく制御を実行する実施形態として第7実施形態を説明する。
図25は、第7実施形態に係るモータ駆動システムの構成ブロック図である。第7実施形態に係るモータ駆動システムは、モータ1と、PWMインバータ2と、モータ制御装置3bと、を備える。モータ制御装置3aは、電流検出器11、座標変換器12、減算器13、減算器14、電流制御部15、磁束制御部47、速度制御部17、座標変換器18、減算器19、位置・速度推定器45(以下、単に「推定器45」という)、スイッチ46、を有して構成される。モータ制御装置3bを構成する各部位は、必要に応じてモータ制御装置3b内で生成される値の全てを自由に利用可能となっている。
図25のモータ駆動システム及びモータ制御装置3bは、図14における推定器40及び磁束制御部44が推定器45及び磁束制御部47に置換されている点と、スイッチ46が新たに設けられている点と、重畳電圧生成部41並びに加算器42及び43を有していない点において、図14のモータ駆動システム及びモータ制御装置3aと相違しており、その他の点において両者は共通している。従って、以下、両者の相違点にのみ着目して説明を行い、共通点に関する説明を原則として省略する。
上記の相違に伴い、電流制御部15が出力するγ軸電圧指令値vγ*及びδ軸電圧指令値vδ*は、そのまま座標変換器18に与えられる(即ち、重畳電圧の重畳はない)。また、速度制御部17にて算出されたδ軸電流指令値は、一旦、スイッチ46に与えられる。
スイッチ46は、低速回転時において、即ち例えば、モータ速度指令値ω*によって表されるモータ1の回転子の回転速度が所定の閾値速度VTHより小さい場合において、CPU(不図示)等から与えられる所定の低速用δ軸電流指令値iδ0 *をδ軸電流指令値iδ*として減算器14及び磁束制御部47に出力する。一方、スイッチ46は、高速回転時において、即ち例えば、モータ速度指令値ω*によって表されるモータ1の回転子の回転速度が上記の閾値速度VTHより大きい場合において、速度制御部17にて算出されたδ軸電流指令値をδ軸電流指令値iδ*として減算器14及び磁束制御部47に出力する。
減算器14は、スイッチ46からのδ軸電流指令値iδ*と座標変換器12からのδ軸電流iδとの電流誤差(iδ*−iδ)を算出し、算出結果を電流制御部15に与える。減算器13は、磁束制御部47からのγ軸電流指令値値iγ*と座標変換器12からのγ軸電流iγとの電流誤差(iγ*−iγ)を算出し、算出結果を電流制御部15に与える。
図26は、推定器45と磁束制御部47の内部ブロック図である。推定器45は、軸誤差推定部231と、比例積分演算器232と、切替処理部233と、積分器234と、を備える。
軸誤差推定部231は、図15の第2軸誤差推定部202と同様の部位であり、vγ*、vδ*、iγ及びiδの値の全部または一部を用い、回転子の回転によって生じる誘起電圧などに基づいて、dm軸とγ軸との軸誤差Δθmを推定する。また、この際、軸誤差推定部231は、必要に応じて、比例積分演算器232の出力値(後述するdm軸推定速度ωmの値)を推定モータ速度ωeと取り扱って利用する。軸誤差推定部231が推定した軸誤差Δθmは、速度推定部として機能する比例積分演算器232に与えられる。
比例積分演算器232は、PLL(Phase Locked Loop)を実現すべく、モータ制御装置3bを構成する各部位と協働しつつ比例積分制御を行って、軸誤差Δθmがゼロに収束するようにdm軸推定速度ωmを算出する。dm軸推定速度ωmは、dm−qm軸の回転速度の推定値に相当する。
切替処理部233は、図19に示す切替処理部203aと同様のものであり、モータ1の回転子の回転速度を表す速度情報(ω*またはωe)に応じて、第1入力値としてのモータ速度指令値ω*又は第2入力値としてのdm軸推定速度ωmを出力値として出力する。具体的には、切替処理部233は、速度情報によって表される回転速度が所定の閾値速度VTHより小さい時に第1入力値(ω*)を出力値として出力し、閾値速度VTHより大きい時に第2入力値(ωm)を出力値として出力する。切替処理部233の出力値は、モータ推定速度ωeとして取り扱われる。
積分器234は、切替処理部233から出力される推定モータ速度ωeを積分して推定回転子位置θeを算出する。切替処理部233が出力する推定モータ速度ωeと積分器234が出力する推定回転子位置θeは、共に推定器45の出力値として、その値を必要とするモータ制御装置3bの各部位に与えられる。
図26を参照して、磁束制御部47は、第1磁束制御部221aと、第2磁束制御部222と、iγ切替処理部223と、を備える。第1磁束制御部221a及び第2磁束制御部222には、スイッチ46からのδ軸電流指令値iδ*が与えられる。
第1磁束制御部221aは、低速用制御を実現するためのγ軸電流指令値を出力する。第1磁束制御部221aから出力されるγ軸電流指令値は、磁束制御部47から出力されるべきiγ*の候補として取り扱われ、それをiγ1 *と表記する。
図26の第2磁束制御部222は、高速用制御を実現するためのγ軸電流指令値を出力する、図18のそれと同様の部位である。第2磁束制御部222から出力されるγ軸電流指令値は、磁束制御部47から出力されるべきiγ*の候補として取り扱われ、それをiγ2 *と表記する。最大トルク制御を実現する場合、iδ*に関係なくiγ2 *はゼロ又はゼロ近傍の所定値とされる。
図26のiγ切替処理部223は、図18のそれと同様の部位であり、速度情報(ω*またはωe)に応じて、第1磁束制御部221aが出力するiγ1 *、第2磁束制御部222が出力するiγ2 *またはそれらの加重平均値をiγ*として出力する。
上記のように構成することにより、高速回転時には、ωe=ωm且つiγ*=iγ2 *となってdm−qm軸に基づく高速用制御が実行されると共に推定器45によって高速用制御を実行するための高速用推定処理が実行される。他方、低速回転時には、ωe=ω*且つiγ*=iγ1 *となって速度指令(ω*)に応じて定まる軸に基づく低速用制御が実行されると共に推定器45によって低速用制御を実行するための低速用推定処理が実行される。
低速用制御における制御軸(γ−δ軸)について説明する。ωe=ω*且つiγ*=iγ1 *=0、である場合の、回転座標系上の電流ベクトルを図27に示す。この場合、電流ベクトルの向きはδ軸に平行で、その大きさはiδ0 *の大きさ(iδ0)となる。そして、この電流ベクトルで発生するトルクと負荷トルクが釣り合うようにq軸に対してδ軸が遅れた状態で運転がなされる。
この運転の状態について補足説明する。ベクトルの大きさが一定の電流ベクトルを考える。この電流ベクトルで発生することができる最大トルクよりも負荷トルクが小さい場合、電流ベクトルで発生するトルクと負荷トルクが釣り合うようにq軸に対してδ軸が遅れた状態で運転がなされる(尚、負荷トルクが最大トルクよりも大きい場合は脱調してしまう)。
(1)そして、電流ベクトルがq軸から遅れれば遅れるほど、正のd軸電流が増加する一方でq軸電流は低下するため、発生トルクは低下する。
(2)また、発生トルクが負荷トルクよりも大きい場合は、回転子の回転速度は増加して、q軸に対するδ軸の遅れは増加方向に向かうと共に発生トルクが低下する。
(3)逆に、発生トルクが負荷トルクよりも小さい場合は、回転子の回転速度は減少して、q軸に対するδ軸の遅れは減少方向に向かうと共に発生トルクが増加する。
このような動作によって、負荷トルクと発生トルクが釣り合うような位相差(q軸とδ軸との位相差)が生じた状態で、運転がなされる。
iγ1 *をゼロとしても良いが、iγ1 *を正の値とすることも可能である。ωe=ω*としている状態において、iγ*(=iγ1 *)を正とすることにより、d軸をγ軸に拘束するためのトルクが発生し、低速回転時での安定性が向上することが知られている(例えば、上記特許文献3及び4参照)。ωe=ω*としている状態において、iγ*(=iγ1 *)を正とした場合の、回転座標系上の電流ベクトルを図28に示す。
iγ1 *を正の値とする場合は、切替処理部233によってωeをω*から比例積分演算器232の出力値に切替えた後に、iγ*をiγ1 *からiγ2 *に移行させればよい。また、Δθm及びωmを算出することによるdm−qm軸の推定は、図26の切替処理部233の出力値をω*から比例積分演算器232の出力値に切替えると同時に開始する。この際、比例積分演算器232における比例積分演算の積分値を適切に初期化することにより、その推定開始直後における、比例積分演算器232の出力値の初期値をω*とするとよい。また、切替処理部233の出力値をω*から比例積分演算器232の出力値に切替えると同時に、図25のスイッチ46の切替処理を行って減算器14等に与えるべきiδ*をiδ0 *から速度制御部17の出力値に切替える。この際、速度制御部17における比例積分演算の積分値を適切に初期化することにより、その切替直後における、速度制御部17の出力値の初期値をiδ0 *とするとよい。
尚、iγ1 *がゼロである場合など、iγ1 *=iγ2 *である場合は、図26の磁束制御部47からiγ切替処理部223を省略し、常に、iγ1 *又はiγ2 *をiγ*とすることも可能である。
また、図26に示す推定器45では、dm−qm軸に基づく制御と速度指令に応じて定まる軸に基づく制御とを切替えるための切替処理を推定速度の段階で行っているが、図23の推定器40dを図24の推定器40eへと変更するが如く、その切替処理を推定位置の段階で行うようにしても構わない。しかしながら、回転子位置の推定値(θe)が積分演算を介して算出されることに起因して、推定速度の段階で切替えを行った場合は、その推定値が切替えに伴って不連続とはならない。このため、図26の推定器45の如く、推定速度の段階で切替えを行った方が望ましい。
本実施形態の如くモータ制御装置を構成しても、低速用制御と高速用制御が適切に切替えられ、第2実施形態等と同様の効果が得られる。勿論、高速用制御をdm−qm軸に基づく制御としているため、上述の如く、パラメータ調整の容易化及び演算負荷の軽減効果が得られる。
<<軸誤差Δθの算出法>>
次に、図15等の第1軸誤差推定部201にて実施される軸誤差Δθの算出の手法について説明する。上述したように、高周波の重畳成分に基づく軸誤差Δθの推定手法(算出手法)については、古くから多数の手法が提案されており、どのような手法を用いてΔθを算出してもよい訳であるが、ここでは、本出願人が提案する一手法を例示する。
今、第2実施形態で述べたように、図14の重畳電圧生成部41によって生成される重畳電圧が回転電圧である場合を考える。この場合、γ−δ軸上において、重畳電圧の電圧ベクトル軌跡は、図29の電圧ベクトル軌跡270のような円を成す。重畳電圧が3相平衡電圧の場合、その電圧ベクトル軌跡は、電圧ベクトル軌跡270の如く、γ−δ軸上で原点を中心とする真円を成すことになる。この回転電圧(重畳電圧)は、モータ1に同期しない高周波の電圧であるため、この回転電圧の印加によってモータ1が回転することはない。
モータ1が埋込磁石形同期モータ等であってLd<Lqが成立するとき、電圧ベクトル軌跡270を成す重畳電圧によってモータ1に流れる重畳電流の電流ベクトル軌跡は、図30の電流ベクトル軌跡271に示す如く、γ−δ軸上で原点を中心とし、γ軸方向を長軸方向且つδ軸方向を短軸方向とする楕円を成す。但し、電流ベクトル軌跡271は、d軸とγ軸との軸誤差Δθがゼロの場合の電流ベクトル軌跡である。軸誤差Δθがゼロでない場合における重畳電流の電流ベクトル軌跡は、電流ベクトル軌跡272にて表される楕円のようになり、その長軸方向はγ軸方向と一致しない。即ち、軸誤差Δθがゼロでない場合は、γ−δ軸上で原点を中心として電流ベクトル軌跡271が傾き、電流ベクトル軌跡272を描くようになる。
重畳電流のγ軸成分及びδ軸成分を、夫々γ軸重畳電流ihγ及びδ軸重畳電流ihδとすると、それらの積(ihγ×ihδ)には、電流ベクトル軌跡272にて表される楕円の傾きに依存した直流成分が存在する。積(ihγ×ihδ)は、電流ベクトル軌跡の第1及び第3象限で正の値をとる一方で第2及び第4象限で負の値をとるため、楕円が傾いていない時は(電流ベクトル軌跡271の場合は)直流成分を含まないが、楕円が傾くと(電流ベクトル軌跡272の場合は)直流成分を含むようになる。尚、図30におけるI、II、III及びIVは、γ−δ軸上での第1、第2、第3及び第4象限を表している。
図31に、時間を横軸にとり、軸誤差Δθがゼロの場合における積(ihγ×ihδ)とその積の直流成分を夫々曲線280及び281にて表す。図32に、時間を横軸にとり、軸誤差Δθがゼロではない場合における積(ihγ×ihδ)とその積の直流成分を夫々曲線282及び283にて表す。図31及び図32からも分かるように、積(ihγ×ihδ)の直流成分は、Δθ=0°の場合にゼロとなり、Δθ≠0°の場合にゼロとならない。また、この直流成分は、軸誤差Δθの大きさが増大するにつれて大きくなる(軸誤差Δθに概ね比例する)。従って、この直流成分がゼロに収束するように制御すれば、軸誤差Δθはゼロに収束するようになる。
図15等の第1軸誤差推定部201は、この点に着目して軸誤差Δθの推定を行う。図33に、第1軸誤差推定部201の内部ブロック図を示す。図33の第1軸誤差推定部201は、BPF(バンドパスフィルタ)241と、乗算器242と、LPF(ローパスフィルタ)243と、係数乗算器244と、を備える。今、重畳電圧vhγ*及びvhδ*の周波数(γ−δ座標軸上における電気角速度)をωhとする。
BPF241は、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδからωhの周波数成分を抽出して、γ軸重畳電流ihγ及びδ軸重畳電流ihδを出力する。BPF241は、iγ及びiδを入力信号として受ける、ωhの周波数を通過帯域内に含むバンドパスフィルタであり、典型的には例えば、その通過帯域の中心周波数はωhとされる。また、BPF241によって駆動電流の周波数成分は除去される。
乗算器242は、iγ及びiδの積を算出し、LPF243は、その積(ihmγ×ihmδ)の直流成分を抽出する。係数乗算器244は、LPF243にて抽出された直流成分に比例係数Kを乗算し、その乗算結果を軸誤差Δθとして算出及び出力する。
尚、γ−δ軸上における重畳電圧の電圧ベクトル軌跡が、真円の回転電圧である場合を例示したが、その電圧ベクトル軌跡は、γ軸方向を短軸方向または長軸方向とする楕円でもよいし、γ軸またはδ軸上の線分でもよいし(即ち、重畳電圧は交番電圧でもよいし)、原点を中心とする四角形でもよい。
<<軸誤差Δθmの算出法>>
次に、図15等における第2軸誤差推定部202や図26における軸誤差推定部231にて実施される軸誤差Δθmの算出の手法について説明する。軸誤差Δθmの算出法として、様々な算出法を適用可能である。以下に、軸誤差Δθmの算出法として、第1、第2、第3、第4及び第5算出法を例示する。
尚、第1〜第5算出法に記載された各式を利用する場合、各式中のvγ、vδ及びωの値として、それぞれ、vγ*、vδ*及びωeの値を用いる。また、各算出法で説明した内容(Lmの値の決定法など)は、全ての算出法において適用可能である。
[第1算出法]
まず、軸誤差Δθmの第1算出法について説明する。第1算出法では、モータ1に発生する誘起電圧Eexをqm軸上の誘起電圧ベクトルとdm軸上の誘起電圧ベクトルに分解して考える。そして、qm軸上の誘起電圧ベクトルである誘起電圧ベクトルEexm(≒Em;図12参照)用いて、軸誤差Δθmを算出し、これによって、制御上の推定軸であるγ軸の位相(θe)を算出する(即ち、回転子位置を推定する)。
誘起電圧ベクトルEexmのγ軸成分及びδ軸成分を、それぞれ、Eexmγ及びEexmδとすると、図12から明らかなように、Δθm=tan-1(−Eexmγ/Eexmδ)が成立する。そして、上記の行列式(38)の1行目と2行目を変形した結果を用いると、Δθmは、下記式(41)のように表される(但し、行列式(38)の右辺第3項を無視する)。尚、式(41)において、最終的にΔθmは小さいと仮定して、tan-1(−Eexmγ/Eexmδ)≒(−Eexmγ/Eexmδ)の近似を用いている。
Figure 2008011616
式(41)を利用してΔθmを算出する際、微分項pLdiγ及びpLdiδを無視することができる。また、Δθmの算出に必要なLmの値の算出には、下記式(42)を利用する。上記式(32)に「idm=0と下記式(43)及び(44)」を代入して得られた式をLq1について解き、その結果を利用することで、式(42)を得ることができる。
Figure 2008011616
Figure 2008011616
Figure 2008011616
更に、最大トルク制御に一致するd軸電流idの式(45)と、idとiqとiqmの関係式(近似式)である式(43)とを利用して、上記式(42)を変形すると、Lmはiqmの関数となる(即ち、Lmの算出式からidとiqの項がなくなる)。従って、第2軸誤差推定部202等は、iδ≒iqmと仮定することにより、iqmの関数で表されるLmの値をiδに基づいて算出可能である。そして、算出したLmの値を用いて式(41)から軸誤差Δθmを算出する。
Figure 2008011616
尚、iδ≒iqmと仮定し、Lmをiδの関数として表した近似式を利用してLmの値を得るようにしても構わないし、iδに応じたLmの値を事前にテーブルデータとして用意しておき該テーブルデータを参照することによってLmの値を得るようにしても構わない。
図34に、LdとLqとLmのiqm依存性を表す、或る数値例の下でのグラフを示す(iγ*≒0とする)。図34に示す如く、Lmの値は、iqmに依存しており、iqmが増加するに従って増加する。本実施形態にて定めたLmは、第1実施形態における演算用パラメータLに相当するものであり、最大トルク制御に一致するLmの値は、Lと同様、Lqよりも随分Ld側に存在していることが分かる(図5及び図7等もあわせて参照)。
mの値は、結果的に、第1実施形態と同様、下記式(46)または式(47)を満たすように、定められることになる。これによって、図14のモータ制御装置3a等は、第1実施形態と同様、d軸とγ軸との間に意図的にずれを生じさせ、iγ*≒0とすることで、最大トルク制御に近似した制御を実現する。
Figure 2008011616
Figure 2008011616
また、Lmを固定値としても構わない。つまり、iδの値に関係なく固定された値を、Lmの値として採用するようにしても構わない。Lmを所定の固定値とした場合における、d軸電流idとq軸電流iqとの関係を、図35の実線83により表す。破線84は、理想的に最大トルク制御を行った場合におけるd軸電流idとq軸電流iqとの関係を示した曲線であるが、実線83と破線84は非常に類似した曲線であることが図35から分かる。
[第2算出法]
次に、軸誤差Δθmの第2算出法について説明する。第2算出法でも、上記の第1算出法と同様、誘起電圧ベクトルEexmを用いて、軸誤差Δθmを算出し、これによって、制御上の推定軸であるγ軸の位相(θe)を算出する(即ち、回転子位置を推定する)。但し、第2算出法では、誘起電圧ベクトルEexmのδ軸成分Eexmδを利用しない。具体的には、下記式(48)を用いて軸誤差Δθmを算出する。尚、式(48)において、最終的にΔθmは小さいと仮定して、sin-1(−Eexmγ/Eexm)≒(−Eexmγ/Eexm)の近似を用いている。
Figure 2008011616
式(48)を利用してΔθmを算出する際、微分項pLdiγを無視することができる。また、Lmの値は、上記第1算出法における手法と同様の手法によって決定される。
式(48)中のEexmの算出には、上記式(39)を利用する。Eexm算出用の近似式として、例えば、下記式(49)、(50)または(51)を利用可能である。式(49)は「pΔθm≒0、idm≒0、(Ld−Lq)(piq)≒0」の近似を利用した式(37)の近似式であり、式(50)は更に「cosθm≒1」の近似を利用した式(49)の近似式であり、式(51)は更に「(Ld−Lq)iδsinθm<<Φa」の近似を利用した式(50)の近似式である。尚、式(49)、(50)または(51)を利用する際、ωの値としてωeが用いられる。
Figure 2008011616
Figure 2008011616
Figure 2008011616
式(49)等に含まれるθmを算出するために、上記式(40)が利用される。式(40)から分かるようにθmはiδの関数であるから、Eexmもiδの関数となる。Eexmの計算は複雑であるから、算出に当たって適当な近似式を用いることが望ましい。また、iδに応じたEexmの値を事前にテーブルデータとして用意しておき該テーブルデータを参照することによってEexmの値を得るようにしておくのも良い。
[第3算出法]
次に、軸誤差Δθmの第3算出法について説明する。第3算出法では、モータ1の電機子巻線を鎖交する鎖交磁束Φexを、qm軸上の鎖交磁束ベクトルとdm軸上の鎖交磁束ベクトルとに分解して考える。そして、dm軸上の鎖交磁束ベクトルである鎖交磁束ベクトルΦexm(≒Φm;図12参照)を用いて、軸誤差Δθmを算出し、これによって、制御上の推定軸であるγ軸の位相(θe)を算出する(即ち、回転子位置を推定する)。
鎖交磁束ベクトルΦexmのγ軸成分及びδ軸成分を、それぞれ、Φexmγ及びΦexmδとすると、図12から明らかなように、Δθm=tan-1(−Φexmδ/Φexmγ)が成立する。ΦexmはEexmをωにて割ったものであるから、Δθmは、下記式(52)のように表される。尚、式(52)において、最終的にΔθmは小さいと仮定して、tan-1(−Φexmδ/Φexmγ)≒(−Φexmδ/Φexmγ)の近似を用いている。
Figure 2008011616
式(52)を利用してΔθmを算出する際、微分項pLdiγ及びpLdiδを無視することができる。また、Lmの値は、上記第1算出法における手法と同様の手法によって決定される。
[第4算出法]
次に、軸誤差Δθmの第4算出法について説明する。第4算出法でも、上記の第3算出法と同様、鎖交磁束ベクトルΦexmを用いて、軸誤差Δθmを算出し、これによって、制御上の推定軸であるγ軸の位相(θe)を算出する(即ち、回転子位置を推定する)。但し、第4算出法では、鎖交磁束ベクトルΦexmのγ軸成分Φexmγを利用しない。具体的には、下記式(53)を用いて軸誤差Δθmを算出する。尚、式(53)において、最終的にΔθmは小さいと仮定して、sin-1(−Φexmδ/Φexm)≒(−Φexmδ/Φexm)の近似を用いている。
Figure 2008011616
式(53)を利用してΔθmを算出する際、微分項pLdiγを無視することができる。また、Lmの値は、上記第1算出法における手法と同様の手法によって決定される。
式(53)中のΦexmの算出には、上記式(39)の両辺をωで割った式を利用する。Φexm算出用の近似式として、例えば、下記式(54)、(55)または(56)を利用可能である。下記式(54)、(55)及び(56)は、それぞれ、式(49)、(50)及び(51)の両辺をωで割った式である。尚、式(54)、(55)または(56)を利用する際、ωの値としてωeが用いられる。
Figure 2008011616
Figure 2008011616
Figure 2008011616
式(54)等に含まれるθmを算出するために、上記式(40)が利用される。式(40)から分かるようにθmはiδの関数であるから、Φexmもiδの関数となる。Φexmの計算は複雑であるから、算出に当たって適当な近似式を用いることが望ましい。また、iδに応じたΦexmの値を事前にテーブルデータとして用意しておき該テーブルデータを参照することによってΦexmの値を得るようにしておくのも良い。
K(iδ)=1/Φexmとおき、K(iδ)を補正係数と捉えると、第4算出法における第2軸誤差推定部202等の内部構成は、図36のようになる。また、補正係数K(iδ)を用いる代わりに、比例積分演算器で用いるゲイン(比例係数や積分係数)をiδの値に応じて変更するようにしてもよい。
[第5算出法]
次に、軸誤差Δθmの第5算出法について説明する。第5算出法では、dm−qm軸上の電流(モータモデルの電流)とγ―δ軸上の電流との誤差電流を用いて、軸誤差Δθmを算出し、これによって、制御上の推定軸であるγ軸の位相(θe)を算出する(即ち、回転子位置を推定する)。
この手法を、数式を用いて説明する。まず、上記式(38)の右辺第3項を無視すると、下記式(57)が得られる。
Figure 2008011616
サンプリング周期Tsで離散化すると、式(57)は下記式(58)のように書き表すことができる。
Figure 2008011616
一方、第2軸誤差推定部202等の計算によって得られる推定電流iMγ及びiMδは、Eexmγ及びEexmδをモデル的に算出した推定誘起電圧EMexmγ及びEMexmδを用いて、下記式(59)にて表される。
Figure 2008011616
第2軸誤差推定部202等は、Eexmγ及びEexmδの推定値として、それぞれ推定誘起電圧EMexmγ及びEMexmδを算出する。また、Lqの代わりにLmを用いて推定電流iMγ及びiMδは算出されるため、推定電流iMγ及びiMδは、それぞれ、モータ電流Iaのdm軸成分及びqm軸成分を推定した電流と呼ぶことができる。
電流検出器11によって検出されたモータ電流Iaの固定軸成分(iu及びiv)に基づく電流iγ及びiδと、計算によって得られた推定電流iMγ及びiMδと、の差である誤差電流Δiγ及びΔiδは、式(58)及び(59)から、下式(60)にて表される。
Figure 2008011616
ここで、ΔEexmγは、誘起電圧Eexmγと誘起電圧Eexmγの推定値である推定誘起電圧EMexmγとの誤差であり、ΔEexmδは、誘起電圧Eexmδと誘起電圧Eexmδの推定値である推定誘起電圧EMexmδとの誤差である。
式(60)から明らかなように、誘起電圧の推定値の誤差(ΔEexmγ等)と誤差電流(Δiγ等)は比例関係にある。このため、誘起電圧の推定値の誤差を、誤差電流を用いて収束させることが可能である。つまり、推定誘起電圧EMexmγ及びEMexmδを、誘起電圧Eexmγ及びEexmδを正しく推定したものとして利用可能である(誘起電圧を正しく推定することが可能となる)。
具体的には、今回の推定誘起電圧を、前回の推定誘起電圧と前回の推定誤差とを用いて算出するようにする。より具体的には、下式(61)によって、推定誘起電圧EMexmγ及びEMexmδを逐次算出する。ここで、gは誘起電圧の推定値の誤差を収束させるためのフィールドバックゲインである。
Figure 2008011616
そして、上述した第1または第2算出法のように、下記式(62)または(63)を用いて、軸誤差Δθmを算出する。
Figure 2008011616
Figure 2008011616
尚、式(58)〜式(63)において、カッコ“( )”内に表記される記号(nまたはn−1)は、サンプリング周期Tsで離散化した場合のサンプリングタイミングを表している。nは自然数であり、nは、(n−1)の次に訪れるサンプリングタイミングを表す。モータ制御装置3a又は3bを構成する各部位は、サンプリング周期Tsごとに、逐次、各値を算出及び出力する。具体的には、例えば、iγ(n)及びiδ(n)は、n番目のサンプリングタイミングにおけるiγ及びiδであり、iγ(n−1)及びiδ(n−1)は、(n−1)番目のサンプリングタイミングにおけるiγ及びiδである。iγ及びiδ以外も同様である。
上記の如く算出される軸誤差Δθmをゼロに収束させてγ軸をdm軸に追従させると、iγ及びiδは、夫々idm及びiqmに追従することになる。つまり、高速用制御の実行時において、モータ制御装置3a又は3bは、モータ1に流れる電流をqm軸成分とdm軸成分に分解してモータ1の駆動制御を行う、といえる。
<<変形等>>
各実施形態で説明した事項は、矛盾なき限り、他の実施形態にも適用可能である。また、上述した説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
上述の第1実施形態において、iγ*をゼロまたは略ゼロとし、第2〜第7実施形態において、高速用制御の実行時はiγ*をゼロまたは略ゼロとすると説明したが、弱め磁束制御を行う必要がある回転速度においては、その回転速度に応じた値を有するiγ*を出力してもよいのは、勿論である。
また、電流検出器11は、図3等に示す如く、直接モータ電流を検出する構成にしてもいいし、それに代えて、電源側のDC電流の瞬時電流からモータ電流を再現し、それによってモータ電流を検出する構成にしてもよい。
また、各実施形態におけるモータ制御装置の機能の一部または全部は、例えば汎用マイクロコンピュータ等に組み込まれたソフトウェア(プログラム)を用いて実現される。ソフトウェアを用いてモータ制御装置を実現する場合、モータ制御装置の各部の構成を示すブロック図は機能ブロック図を表すこととなる。勿論、ソフトウェア(プログラム)ではなく、ハードウェアのみによってモータ制御装置を構成しても構わない。
また、高速用制御の実行時に最大トルク制御(或いはそれに近似した制御)を実現することを前提として第2〜第7実施形態の説明を行ったが、上述してきた内容を流用することによって最大トルク制御と異なる所望のベクトル制御を得ることが可能である。勿論、その際も、上述したパラメータ調整の容易化等の効果が得られる。
例えば、第2〜第7実施形態において、最大トルク制御を実現する際にモータ1に供給されるべき電流ベクトルの向きと向きが一致する回転軸よりも更に位相が進んだ回転軸をqm軸として採用する。これにより、鉄損を低減することができ、モータの効率が向上する。qm軸の位相を適切に進めれば最大効率制御を実現することも可能である。
最大トルク制御を実現する場合には、Lmの値を上記式(42)にて算出することになるが、上記式(42)にて算出する値よりも小さな値をLmの値として採用することにより、モータの効率を向上することができる。
また、低速用制御と高速用制御とを切替えるべく、第2〜第6実施形態では、推定軸をd−q軸とdm−qm軸とで切替える構成を例示し、第7実施形態では、推定軸を速度指令に基づく軸とdm−qm軸とで切替える構成を例示した。しかしながら、本発明は、これに限定されない。つまり、低速用制御を実行する際に推定される軸はd−q軸や速度指令に基づく軸以外でもよく、高速用制御を実行する際に推定される軸はdm−qm軸以外でもよい。そして、低速用制御を実行する際に推定される軸と、高速用制御を実行する際に推定される軸と、が異なる場合、第2〜第7実施形態で示したような、制御(及び推定処理)の切替えに関する技術を利用可能である。
図3のモータ制御装置3から推定器20を除いた部分は、制御部を構成している。図14のモータ制御装置3aから推定器40を除いた部分は、制御部を構成している。図14のモータ制御装置3aにおいて、制御部は、重畳電圧生成部41を含むと考えてもよいし、含まないと考えてもよい。図25のモータ制御装置3bから推定器45を除いた部分は、制御部を構成している。
各実施形態において、座標変換器12及び18、減算器13及び14並びに電流制御部15は、電圧指令演算部を構成している。磁束制御部(16、44又は47)、速度制御部17及び減算器19は、電流指令演算部を構成している。
また、本明細書では、記述の簡略化上、記号(iγなど)のみの表記によって、その記号に対応する状態量などを表現している場合もある。即ち、本明細書では、例えば、「iγ」と「γ軸電流iγ」は同じものを指す。
また、本明細書において下記の点に留意すべきである。上記の数m(mは1以上の整数)と表記した墨付きかっこ内の式(式(1)等)の記述において、所謂下付き文字として表現されているγ及びδは、それらの墨付きかっこ外において、下付き文字でない標準文字として表記されうる。このγ及びδの下付き文字と標準文字との相違は無視されるべきである。
Figure 2008011616
本発明は、モータを用いるあらゆる電気機器に好適である。例えば、モータの回転によって駆動する電気自動車や、空気調和機等に用いられる圧縮機等に好適である。
本発明の第1実施形態に係るモータ駆動システムの概略構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態に係るモータの解析モデル図である。 図1のモータ駆動システムの構成ブロック図である。 図3の位置・速度推定器の内部ブロック図である。 γ軸電流をゼロとする条件下における、最大トルク制御に一致するq軸電流と演算用パラメータとしてのq軸インダクタンスとの関係を示す図である。 理想的な最大トルク制御と、図1のモータ駆動システムにおける制御とを比較するための図である。 γ軸電流をゼロとする条件下における、演算用パラメータとしてのq軸インダクタンスとモータ電流との関係を示す図である。 図1のモータの動作を説明するためのベクトル図である。 図3の位置速度・推定器の変形例を示す図である。 本発明の第2実施形態に係るモータ駆動システムの概略構成を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態に係るモータの解析モデル図である。 本発明の第2実施形態に係るモータの解析モデル図である。 図10のモータに流れるモータ電流の電流軌跡の一例を示す図である。 図10のモータ駆動システムの構成ブロック図である。 図14の位置・速度推定器として適用可能な位置・速度推定器の内部ブロック図である(第1構成例)。 図15の切替処理部の動作を説明するための図である。 図15の切替処理部の動作を説明するための図である。 図14の磁束制御部として適用可能な磁束制御部の内部ブロック図である。 本発明の第3実施形態に係る、図15の位置・速度推定器の変形内部ブロック図である。 図19の位置・速度推定器の動作を説明するための図である。 本発明の第3実施形態に係る、図15の位置・速度推定器の変形内部ブロック図である。 図14の磁束制御部として適用可能な磁束制御部の内部ブロック図である。 図14の位置・速度推定器として適用可能な位置・速度推定器の内部ブロック図である(第2構成例)。 図14の位置・速度推定器として適用可能な位置・速度推定器の内部ブロック図である(第3構成例)。 本発明の第7実施形態に係るモータ駆動システムの概略構成を示すブロック図である。 図25の位置・速度推定器と磁束制御部の内部ブロック図である。 図25のモータ制御装置に係る、低速用制御実行時の電流ベクトルを示す図である。 図25のモータ制御装置に係る、低速用制御実行時の電流ベクトルを示す図である。 図15の第1軸誤差推定部で推定される軸誤差(Δθ)の算出法を説明するための図であり、図14の重畳電圧生成部によって生成される重畳電圧の電圧ベクトル軌跡を例示する図である。 図29に示されるような重畳電圧の重畳によってモータに流れる重畳電流の電流ベクトル軌跡を示す図である。 図29に示されるような重畳電圧の重畳によってモータに流れる重畳電流のγ軸成分とδ軸成分の積及び該積の直流成分を示す図である。 図29に示されるような重畳電圧の重畳によってモータに流れる重畳電流のγ軸成分とδ軸成分の積及び該積の直流成分を示す図である。 図15の第1軸誤差推定部の内部ブロック図である。 本発明の第2実施形態等に係る、各インダクタンスのqm軸電流依存性を表すグラフである。 理想的な最大トルク制御と、本発明の第2実施形態等に係るモータ駆動システムにおける制御(高速用制御)と、を比較するための図である。 図15の第2軸誤差推定部などの内部構成例を示す図である。 従来のモータ制御装置の構成ブロック図である。 図37の位置速度・推定器の内部ブロック図である。 図37のモータの動作を説明するためのベクトル図である。
符号の説明
1 モータ
2 PWMインバータ
3、3a、3b モータ制御装置
16、44、47 磁束制御部
20、40、45 位置・速度推定器
ω* モータ速度指令値
ωe 推定モータ速度
θe 推定回転子位置
vγ* γ軸電圧指令値
vδ* δ軸電圧指令値
iγ* γ軸電流指令値
iδ* δ軸電流指令値
iγ γ軸電流
iδ δ軸電流

Claims (9)

  1. モータの回転子位置を推定する推定器と、推定された前記回転子位置に基づいて前記モータを制御する制御部と、を備えたモータ制御装置において、
    前記モータの回転子の回転に応じて回転する、互いに直交する2つの回転軸をx1軸及びy1軸とし、
    前記x1軸と異なる回転軸をx2軸とし、前記x2軸に直交する回転軸をy2軸とした場合、
    前記制御部は、前記モータに流れるモータ電流を前記x1軸に平行なx1軸成分と前記y1軸に平行なy1軸成分とに分解して、前記モータの制御を行う第1の制御と、前記モータ電流を前記x2軸に平行なx2軸成分と前記y2軸に平行なy2軸成分とに分解して、前記モータの制御を行う第2の制御と、を切替えて実行可能に形成されている
    ことを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記推定器は、前記制御部に前記第1の制御を実行させるための第1の推定処理と、前記制御部に前記第2の制御を実行させるための第2の推定処理と、を実行可能に形成され、前記回転子の回転速度を表す速度情報に応じて、実際に実行する推定処理を前記第1の推定処理と前記第2の推定処理とで切替える
    ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記回転子を構成する永久磁石が作る磁束に平行な軸をd軸とし、d軸から電気角で90度進んだ軸をq軸とし、最大トルク制御を実現する際における電流ベクトルの向きと向きが一致する回転軸またはその回転軸よりも位相が進んだ回転軸をqm軸とし、そのqm軸に直交する回転軸をdm軸とした場合、
    前記x1軸及び前記y1軸は、それぞれ前記d軸及び前記q軸であるか、或いは、与えられた速度指令に基づく軸であり、
    前記x2軸及び前記y2軸は、それぞれ前記dm軸及び前記qm軸である
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記推定器は、実際に実行する推定処理を前記第1の推定処理と前記第2の推定処理とで切替える際、
    前記速度情報に応じて、又は、切替え開始からの経過時間に応じて、双方の推定処理の推定結果を加味した推定処理を介しつつ実際に実行する推定処理を一方の推定処理から他方の推定処理へと移行する
    ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。
  5. 前記推定器は、
    所定の固定軸を基準とした前記x1軸の位相を推定するための値を算出する第1推定処理部と、
    前記モータのq軸インダクタンスに対応する演算用パラメータとして所定の第1インダクタンスを用いて、前記固定軸を基準とした前記x2軸の位相を推定するための値を算出する第2推定処理部と、を備え、
    前記第1推定処理部の算出値に基づいて推定される前記x1軸の位相は、前記第1の推定処理の実行時において推定されるべき前記回転子位置を表すとともに、前記第2推定処理部の算出値に基づいて推定される前記x2軸の位相は、前記第2の推定処理の実行時において推定されるべき前記回転子位置を表し、
    前記第2推定処理部は、前記第1インダクタンスと異なる所定の第2インダクタンスを前記演算用パラメータとして用いることにより、前記x1軸の位相を推定するための値を算出可能であり、
    前記推定器は、実際に実行する推定処理を前記第1の推定処理から前記第2の推定処理へと切替える際、一時的に前記第2推定処理部にて用いる前記演算用パラメータを前記第2インダクタンスとしてから前記第1インダクタンスに向かって変更して最終的に前記第1インダクタンスに収束させ、その変更の過程における前記第2推定処理部の算出値に基づいて切替えの際の前記回転子位置を推定する
    ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。
  6. 前記推定器は、
    所定の固定軸を基準とした前記x1軸の位相を推定するための値を算出する第1推定処理部と、
    前記固定軸を基準とした前記x2軸の位相を推定するための値を算出する第2推定処理部と、を備え、
    前記第1推定処理部の算出値に基づいて推定される前記x1軸の位相は、前記第1の推定処理の実行時において推定されるべき前記回転子位置を表すとともに、前記第2推定処理部の算出値に基づいて推定される前記x2軸の位相は、前記第2の推定処理の実行時において推定されるべき前記回転子位置を表し、
    前記第1推定処理部は、前記推定器が実際に実行する推定処理を前記第1の推定処理から前記第2の推定処理へと切替える際、一時的に前記x2軸の位相を推定するための値を算出可能であり、
    前記推定器は、実際に実行する推定処理を前記第1の推定処理から前記第2の推定処理へと切替える際、
    その切替え前に、一時的に前記第1推定処理部の算出値を、前記x2軸の位相を推定するための、前記第2の推定処理部の算出値に向かわせて収束させ、
    その収束後に、前記第1の推定処理から前記第2の推定処理への実際の切替えを実行する
    ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。
  7. 前記回転子を構成する永久磁石が作る磁束に平行な軸をd軸とし、d軸に対応する制御上の推定軸をγ軸とした場合、
    前記制御部は、実際に実行する制御を前記第1の制御と前記第2の制御とで切替える際、前記モータ電流のγ軸成分が追従すべきγ軸電流指令を、第1の制御用の電流指令と第2の制御用の電流指令とで切替える
    ことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載のモータ制御装置。
  8. 前記制御部は、実際に実行する制御を前記第1の制御と前記第2の制御とで切替える際、一時的に前記第1及び前記第2の制御用の電流指令の双方に基づいて前記γ軸電流指令を算出する
    ことを特徴とする請求項7に記載のモータ制御装置。
  9. モータと、
    前記モータを駆動するインバータと、
    前記インバータを制御することにより前記モータを制御する請求項1〜請求項8の何れかに記載のモータ制御装置と、を備えた
    ことを特徴とするモータ駆動システム。
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