JP2007322310A - 検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法 - Google Patents
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Abstract
検体中の分析対象物質をイムノクロマト法で検出あるいは測定する際に、判定の実施時刻を厳密に管理する必要がない検出あるいは測定方法及びそれに用いるキットが求められていた。
【解決手段】
少なくとも判定部位と標識結合体保持部位を有する乾式試験片を使用し、展開液を用いて毛管作用により検体を移送する検体中の分析対象物質の検出あるいは測定において、展開液の緩衝剤の濃度が0.01mM〜10mMであることを特徴とする検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法及びsれに用いる検査・測定キットを提供する。
【選択図】なし
Description
特許文献1及び2には少量の生体試料中の分析対象物質をイムノクロマト法で検出する方法が記載されているが、緩衝剤の濃度についての検討はしていない。
上記の測定者の負担を軽くする分析対象物質の検出あるいは測定方法が求められていた。
(1)少なくとも判定部位と標識結合体保持部位を有する乾式試験片を使用し、展開液を用いて毛管作用により検体を移送する検体中の分析対象物質の検出あるいは測定において、展開液の緩衝剤の濃度が0.01mM〜10mMであることを特徴とする検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法。
(3)判定部位及び/又は標識結合体保持部位において検体中の分析対象物質と抗体が結合することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法。
(5)検体が乳頭分泌液である上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法。
(6)分析対象物質が癌胎児性抗原である上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法。
(7)乾式試験片及び展開液を含んで構成され、上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載された検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法で用いる検査・測定キット。
標識結合体は、展開液等と接触して容易に溶け標識結合体保持部位に残らないようにするため、ショ糖やマンニトール等の糖類やアミノ酸、牛血清アルブミンやカゼイン等のタンパク質とともに塗布・乾燥するとよい。
該緩衝剤としては特に限定されず、一般の生化学実験等に使用されるものが挙げられ、例えば、リン酸、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)、ホウ酸、酢酸、クエン酸、炭酸、グリシン、グッド(例えば、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸等)等が挙げられる。なお、これらは遊離の酸あるいは塩基として示したものであり、通常の緩衝剤として知られるこれらの塩を使用したものであってもよい。
又、リン酸−クエン酸緩衝液の様に複数の緩衝剤を組み合わせて使用することもできる。
本発明の検出あるいは測定方法に使用する緩衝剤としてはリン酸、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸が好ましく、中でもトリスが特に好ましい。
該添加剤としては、例えば、抗原抗体反応の促進あるいは非特異反応の抑制のための蛋白質(例えば、牛血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン等)、高分子化合物(例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ツイーン20、トリトンX−100等)、イオン性界面活性剤又はポリアニオン(例えば、デキストラン硫酸、ヘパリン、ポリスチレンスルホン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等)若しくはその塩等;あるいは、抗菌剤としてのアジ化ナトリウム、チメロサール、ケーソンCG、長鎖アルキル4級アンモニウム塩等が挙げられる。
本発明の検出あるいは測定方法における分析対象物質としては、例えば、癌胎児性抗原(CEA)、HER2タンパク、前立腺特異抗原(PSA)、CA19−9、α−フェトプロテイン(AFP)、免疫抑制酸性タンパク(IPA)、CA15−3、CA125、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、便潜血、トロポニンI、トロポニンT、CK−MB、CRP、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、梅毒抗体、インフルエンザウイルス、クラミジア抗原、A群β溶連菌抗原、HBs抗体、HBs抗原、ロタウイルス、アデノウイルス、アルブミン、糖化アルブミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも、CEAが好ましい。
(1)測定装置の作製
1)金コロイドの調製
濃度0.01重量%の塩化金酸水溶液400mlを沸騰させ、これに濃度1重量%のクエン酸ナトリウム水溶液6mlを加え、溶液の色が赤色に変わるまで加熱沸騰し、金コロイド分散液を調製した。その後、遠心分離機により金コロイドを沈殿させ上清を抜き取り、精製水で再分散してOD(光学濃度)=3.0に調製した。
2)金コロイド粒子標識抗体の調製
1)で調製した金コロイド分散液100mlに1mM炭酸カリウム水溶液を加えpH7.2に調整した後、蒸留水を加えて全量を300mlにした。それに、0.5mg/mlのマウス抗ヒトCEAモノクローナル抗体F(ab’)2を3ml加えて15分攪拌した後、10重量%のBSA(牛血清アルブミン)を含む4mMトリス−塩酸緩衝液pH7.5を34ml加え10分間攪拌した。この分散液を4℃、10,000rpmで1時間遠心して上清を除いた後、得られたペレットに1重量%のBSAを含む4mMトリス−塩酸緩衝液pH7.5を加えて再懸濁した。同様にして遠心操作を更に2回繰り返した後、OD=3.0になるよう再懸濁した。
3)金コロイド粒子標識抗体パッド(標識結合体保持部材)の調製
上記の金コロイド粒子標識抗体懸濁液5.5mlに1重量%のBSAと5重量%のサッカロースを含む4mMトリス−塩酸緩衝液pH7.5を5.5ml加えよく混合した後、その全量をミリポア社製グラスファイバーフィルター(10×18cm)に含浸させ凍結乾燥した。
4)抗体固定化メンブレン
100mM食塩水に溶解したウサギ抗ヒトCEA抗体(濃度2mg/ml)を25×250mmに切断したミリポア社製ニトロセルロースメンブレン(ハイフローメンブレン、マイラーバック)の判定部位とする位置(図1参照)に幅1mmのライン状に添着し風乾した。その後、1重量%のスキムミルクを含む20mMトリス−塩酸緩衝液pH7.5に1時間浸漬し、次いで3重量%のサッカロースを含む5mMトリス−塩酸緩衝液pH7.5に1時間浸漬し、再び風乾して抗体固定化メンブレンとした。
5)装置の組み立て
上流側から展開液添加部位となる展開液添加パッド(アドバンテック東洋製ろ紙、15mm×5mm)、金コロイド粒子標識抗体パッド(20mm×5mm)、試料添加部位(ミリポア社製グラスファイバーフィルター、8mm×5mm)、検体中の血球成分を除くための血球分離膜(ワットマン社製GF/AVA、11mm×5mm)、抗体固定化メンブレン(25mm×5mm)、未反応の検体及び展開液を吸い取る吸収パッド(アドバンテック東洋製ろ紙、30mm×5mm)の順に糊の付いたプラスチックシート上に各部品を1mmの重なりをもって繋がるように貼り付けて配置し(図1参照)、測定装置を作製した。
(2)測定
1)展開液
0.1%トリトンX−100、0.3%塩化ナトリウム及び0.02%アジ化ナトリウムを含むトリス−塩酸緩衝液(pH=7.5)を試験用展開液として調製した。なお、トリス−塩酸緩衝液中のトリスの濃度は0.01mM、2.5mM、5mM、10mMになるように調製した。
2)測定
検体として1000ng/mlのCEA標準品を含有する血清を用いて、(1)の測定装置の試料添加部位に3μl添加し、直ちに展開液200μlを展開液添加部位に添加する。判定部位に出現した金コロイドの着色を、15分後、30分後、60分後、90分後及び120分後にアトー株式会社製デンシトメータで測定した。デンシトメータのCCDカメラで撮影した画像をデータ処理ソフト(ATTO Densitograph software library Lane & Spot Analyzer;アトー株式会社)で処理して、金コロイドによる着色強度を輝度として求めた。15分後の輝度と各々の時間の輝度の比(輝度比)をもって15分以降の経時変化を表1に示す。
実施例1の測定装置を用い、展開液のトリス−塩酸緩衝液中のトリスの濃度を25mM、50mM、150mMにして実施例1と同様な方法で測定を行ない、結果を表1に示す。
表1に示すように、トリス濃度25mM以上では、時間の経過とともに輝度が上昇し輝度比が大きくなっている(90分で1.23〜1.34、120分で1.24〜1.36)。それに対して、トリス濃度10mM以下では90分で1.03〜1.17、120分で1.06〜1.12と、トリス濃度25mM以上に比べて輝度比の変化が小さく、輝度の経時変化が小さいことが明らかである。
(1)測定装置
実施例1で作製した測定装置を使用した。
(2)測定
1)展開液
0.3%塩化ナトリウムを含むリン酸濃度5mMのリン酸緩衝液(リン酸水素二ナトリウム−リン酸二水素カリウム;pH=7.5)(実施例2)又はリン酸濃度150mMのリン酸緩衝液(pH=7.5)(比較例2)を試験用展開液とした。
2)測定
実施例1と同様な方法で測定し、評価結果を表2に示す。
(3)結果
表2に示すように、リン酸濃度150mMのリン酸緩衝液を使用した場合と比較して、リン酸濃度5mMのリン酸緩衝液を使用した場合には輝度比の変化が小さく、輝度の経時変化が小さいことが明らかである。
(1)測定装置
実施例1で作製した測定装置を使用した。
(2)測定
1)展開液
0.3%塩化ナトリウムを含む2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸5mMのHEPES緩衝液(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸−水酸化ナトリウム;pH=7.5)(実施例3)又は2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸150mMのHEPES緩衝液(pH=7.5)(比較例3)を試験用展開液とした。
2)測定
実施例1と同様な方法で測定し、評価結果を表3に示す。
(3)結果
表3に示すように、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸150mMのHEPES緩衝液を使用した場合と比較して、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸5mMのHEPES緩衝液を使用した場合には輝度比の変化が小さく、輝度の経時変化が小さいことが明らかである。
(1)測定装置
実施例1で作製した測定装置を使用した。
(2)測定
1)検体含有展開液の調製
検体として1000ng/mlのCEA標準品を含有する血清を用いて、検体5μlを各濃度のトリス−塩酸緩衝液を用いた試験用展開液でそれぞれ稀釈して200μlとした。試験用展開液は0.1%トリトンX−100、0.3%塩化ナトリウム及び0.02%アジ化ナトリウムを含むトリス濃度5mMのトリス−塩酸緩衝液(pH=7.5)(実施例4)又はトリス濃度150mMのトリス−塩酸緩衝液(pH=7.5)(比較例4)を用いた。
2)測定
検体含有展開液200μlを実施例1で作成した測定装置の展開液添加部位に添加し、判定部位に出現した金コロイドの着色を、15分後、30分後、60分後及び120分後にアトー株式会社製デンシトメータで測定した。デンシトメータのCCDカメラで撮影した画像をデータ処理ソフト(ATTO Densitograph software library Lane & Spot Analyzer;アトー株式会社)で処理して、金コロイドによる着色強度を輝度として求めた。15分後の輝度と各々の時間の輝度の比(輝度比)をもって15分以降の経時変化を表4に示す。
(3)結果
表4に示すように、検体含有トリス濃度150mMのトリス緩衝液を使用した場合と比較して、検体含有トリス濃度5mMのトリス緩衝液を使用した場合には輝度比の変化が小さく、輝度の経時変化が小さいことが明らかである。
(1)測定装置
実施例1で作製した測定装置を使用した。
(2)測定
1)展開液;0.1%トリトンX−100、0.3%塩化ナトリウム、0.02%アジ化ナトリウムを含むトリス濃度5mMのトリス−塩酸緩衝液(pH=7.5)(実施例5)又はトリス濃度150mMのトリス−塩酸緩衝液(pH=7.5)(比較例5)を展開液とした。
2)検体
検体No.1 CEA100ng/mlを含む乳頭分泌液
検体No.2 CEA400ng/mLを含む乳頭分泌液
検体No.3 CEA1000ng/mlを含む乳頭分泌液
3)測定
測定装置の試料添加部位に各検体の乳頭分泌液3μlを添加し、直ちに展開液200μlを展開液添加部位に添加する。判定部位に出現した金コロイドの着色を15分後及び120分後にアトー株式会社製デンシトメータで測定した。デンシトメータのCCDカメラで撮影した画像をデータ処理ソフト(ATTO Densitograph software library Lane & Spot Analyzer;アトー株式会社)で処理して、金コロイドによる着色強度を輝度として求めた。15分後の輝度に対する120分後の輝度の比(輝度比)をもって輝度比の経時変化を表5に示す。
(3)結果
表5に示すように、トリス濃度150mMのトリス緩衝液を使用した場合と比較して、トリス濃度5mMのトリス緩衝液を使用した場合は120分後の輝度比の変化が小さく、輝度の経時変化が小さいことが明らかである。
(1)測定装置
実施例1で作製した測定装置を使用した。
(2)測定
1)検体含有展開液の調製
1000ng/mlのCEA標準品を含有する血清3μlと、適量のCEA濃度0ng/mlの血清及び展開液を用いて、検体含有展開液中の検体(血清)濃度が100%、50%、25%、1.5%で、且つ、CEA濃度を同一とした検体含有展開液200μlを調製した。試験用展開液は0.1%トリトンX−100、0.3%塩化ナトリウム、0.02%アジ化ナトリウムを含むトリス濃度5mMのトリス−塩酸緩衝液(pH=7.5)を用いた。
2)測定
乾式試験片の展開液添加部位に上記1)で調製した検体含有展開液200μlを調製後直ちに添加する。判定部位に出現した金コロイドの着色を、15分後、30分後、60分後及び120分後にアトー株式会社製デンシトメータで測定した。デンシトメータのCCDカメラで撮影した画像をデータ処理ソフト(ATTO Densitograph software library Lane & Spot Analyzer;アトー株式会社)で処理して、金コロイドによる着色強度を輝度として求めた。15分後の輝度と各々の時間の輝度の比(輝度比)をもって15分以降の経時変化を表6に示す。
(3)結果
表6に示すように、検体含有展開液中の検体濃度が50%以上になると輝度比が大きくなり、輝度の経時変化が大きいことが明らかである。
Claims (7)
- 少なくとも判定部位と標識結合体保持部位を有する乾式試験片を使用し、展開液を用いて毛管作用により検体を移送する検体中の分析対象物質の検出あるいは測定において、展開液の緩衝剤の濃度が0.01mM〜10mMであることを特徴とする検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法。
- 標識が金コロイドである請求項1に記載の検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法。
- 判定部位及び/又は標識結合体保持部位において検体中の分析対象物質と抗体が結合することを特徴とする請求項1又は2に記載の検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法。
- 展開液の緩衝剤がリン酸、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール又は2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸である請求項1〜3のいずれか一項に記載の検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法。
- 検体が乳頭分泌液である請求項1〜4のいずれか一項に記載の検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法。
- 分析対象物質が癌胎児性抗原である請求項1〜5のいずれか一項に記載の検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法。
- 乾式試験片及び展開液を含んで構成され、請求項1〜6のいずれか一項に記載された検体中の分析対象物質の検出あるいは測定方法で用いる検査・測定キット。
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