JP2007295744A - 電力変換装置の制御装置および制御方法 - Google Patents

電力変換装置の制御装置および制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】広い周波数帯域におけるノイズレベルを低減しつつ、所定の周波数帯域に対するノイズレベルをさらに低減できる電力変換装置の制御装置および制御方法を提供することにある。
【解決手段】インバータシステム1の制御装置13では、キャリア周波数可変部12は、第一の周波数範囲fc1〜fc2(fc1<fc2)内および第二の周波数範囲fc3〜fc4(fc3<fc4)内で周期的に変化する波形に基づいて、制御信号の周波数を変化させ、周波数fc1およびfc4は、所定の周波数帯域fs±Δfsに対して、次の不等式n・fc2≦fs−Δfs、fs+Δfs≦n・fc3を満たす整数n、fc2およびfc3に対して、(n−1)・fc4≦n・fc2、n・fc3≦(n+1)・fc1を満たすように決定されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両に搭載されるモータに使用される電力変換装置の制御装置およびその制御方法に関する。
電力変換装置とは、入力電力から所望の形態の電力を生成し、負荷に出力する装置である。例えば、直流電力を基に直流モータを駆動する直流モータ駆動装置は、直流電力からモータを駆動するための電力の形態に変化させることから、電力変換装置の一つと考えられる。直流モータ駆動装置の制御装置の従来技術としては、特許公報・特開平7−99795号に記載のような技術がある。この技術について、概要を説明する。
従来技術のステッピングモータシステムは、4つのスイッチであるFETをHブリッジ状に構成し、それらのFETを開閉させることで、直流電源からステッピングモータに印加される電流の大きさと向きを制御して、所望のモータ回転力を実現するものである。FETの開閉は、PWM制御により行われる。FETの開閉によって、EMIノイズが発生する。そのEMIノイズは、キャリア信号の所定の周波数のn次高調波(n:整数)の周波数に対して、ノイズレベルの高いスペクトル成分を示していた。このEMIノイズはラジオ受信や他の電子機器の動作に対して障害を与える可能性がある。本従来技術においては、そのEMIノイズのレベルを低減するために、PWM制御におけるキャリア信号の周波数(以下、キャリア周波数とする。)を時間とともに変化させるようにしている。従来技術では、キャリア周波数を周期的に正弦波状に変化させている。キャリア周波数を時間とともに変化させることで、所定のキャリア周波数のn次高調波の周波数に発生していたノイズレベルの高いスペクトル成分を、キャリア周波数の時間とともに変化する周波数帯域(例えば、5kHz〜20kHz)のn次周波数帯域(例えば、n・5kHz〜n・20kHz)で拡散させることができる。よって、n次高調波の周波数に発生していたノイズレベルを低減することができる。このようにしてラジオ受信や他の電子機器への障害を抑制するというものである。
特開平7−99795号公報
上記のステッピングモータシステムにおいては、キャリア周波数を時間とともに変化させることにより、所定のキャリア周波数のn次高調波の周波数に発生していたノイズレベルの高いスペクトル成分を、キャリア周波数の時間とともに変化する周波数帯域(例えば、5kHz〜20kHz)のn次周波数帯域(例えば、n・5kHz〜n・20kHz)で拡散させることができることから、n次高調波の周波数に発生していたノイズレベルを低減できるものの、この場合、上記n次周波数帯域(例えば、n・5kHz〜n・20kHz)に発生するノイズレベルの合計、すなわち、EMIノイズのエネルギの合計は変化しない。そのため、ノイズレベルが最も低減された場合のスペクトルは、上記エネルギの合計が上記n次周波数帯域(例えば、n・5kHz〜n・20kHz)内で均一に分布した場合である。すなわち、上記n次周波数帯域(例えば、n・5kHz〜n・20kHz)内で均一に分布した場合のノイズレベルが、キャリア周波数を時間とともに変化させた場合に、最も低減可能なノイズレベルということになる。これから、上記のステッピングモータシステムでは、キャリア周波数の時間変化によるノイズレベルの低減には限界があるため、所定の周波数帯域に対するノイズレベルを十分に低減できないといった問題があった。
また、高電圧や高電流をスイッチングするような電力変換装置では、非常に高いレベルのEMIノイズが発生されることが想定できるが、このようにもともと発生するノイズレベルが高い場合は、上記周波数帯域で拡散させただけでは、ノイズレベルを十分に低減できず、よって、ラジオ受信や他への障害を抑制することが不可能であるという問題があった。
また、キャリア周波数の時間とともに変化する周波数帯域を更に広くすることにより、所定のキャリア周波数のn次高調波の周波数に発生していたノイズレベルの高いスペクトル成分を、上記n次周波数帯域で拡散させることができることから、n次高調波の周波数に発生していたノイズレベルをより低減できるものの、上記n次周波数帯域を広くしすぎると、所定のキャリア周波数のn次高調波の周波数に発生していたノイズレベルを上記n次周波数帯域で拡散させたスペクトルと、(n+1)次高調波の周波数に発生していたノイズレベルを(n+1)次周波数帯域で拡散させたスペクトルが重畳し、所定の周波数帯域に対するノイズレベルが上昇するといった恐れを完全に否定できないといった問題もあった。
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、広い周波数帯域におけるノイズレベルを低減しつつ、所定の周波数帯域に対するノイズレベルをさらに低減できる電力変換装置の制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
上記目的達成のため、本発明に係る電力変換装置の制御装置では、前記スイッチング周波数変更手段は、第一の周波数範囲fc1〜fc2(fc1<fc2)内および第二の周波数範囲fc3〜fc4(fc3<fc4)内で周期的に変化する波形に基づいて、前記制御信号の周波数を変化させ、前記周波数fc1およびfc4は、所定の周波数帯域fs±Δfsに対して、次の不等式n・fc2≦fs−Δfs、fs+Δfs≦n・fc3を満たす整数n、fc2およびfc3に対して、(n−1)・fc4≦n・fc2、n・fc3≦(n+1)・fc1を満たすように決定されることを特徴としている。
本発明により、広い周波数帯域におけるノイズレベルを低減しつつ、所定の周波数帯域に対するノイズレベルをさらに低減できる。
本発明に係る電力変換装置の一例として、直流電源の出力をPWM変調することにより正弦波状の交流電力をモータに供給するインバータを備えるインバータシステムについて説明する。以下に、本発明の第一乃至第五の実施形態に係るインバータシステムについて、図1乃至図6を参照して説明する。
(第一の実施形態)
以下、図1を参照して、インバータシステム1の構成と動作について説明する。図1はインバータシステムの構成を示す図である。
インバータシステム1は、図1に示すように、PWMインバータ2、三相ブラシレス直流モータ(以下、モータとする。)3、電流センサ4a、4b、4c、制御装置13、電源BおよびコンデンサCを主な構成要素として備える。また、制御装置13は、電流指令生成部5、PID制御部6a、6b、6c、比較器8a、8b、8c、キャリア周波数可変部12を主な構成要素として備える。上記PWMインバータ2は、比較器8a、8b、8cの制御に従って電池BおよびコンデンサCから成る直流電源の正極又は負極を選択し、選択した電極をモータ3のU相、V相、W相の各電極に接続する6個のスイッチング素子Tu+、Tu−、Tv+、Tv−、Tw+、Tw−を備え、これらのスイッチング素子はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子により構成されている。上記電流センサ4a、4b、4cはそれぞれ、PWMインバータ2からモータ3に供給されるU相、V相、W相の電流値を検出し、上記電流指令生成部5は、電流センサ4a、4b、4cの検出値が正弦波状の交流電流に変換されるように、正弦波状の電流指令値を生成する。上記PID制御部6a、6b、6cは、電流センサ4a、4b、4cの検出値が電流指令生成部5が生成した電流指令値に従うように、電流センサ4a、4b、4cの検出値をPID制御する。
また、キャリア周波数可変部12は、キャリア信号生成部7および波形生成部9から構成されている。波形生成部9は、後述するキャリア信号の周波数(以下、キャリア周波数とする。)を可変するために出力する電圧波形を生成する。具体的には、図示しない第1の発信器、図示しない第2の発信器および図示しない加算器から構成されている。図示しない第1の発信器は、所定の周波数を持つ三角波を出力する。また、図示しない第2の発信器は、上記三角波よりも小さい周波数を持つ方形波を出力する。第1の発振器の出力と第2の発振器の出力は周期が同じで、それぞれ半周期で対称な形をしている。図示しない加算器は、上記三角波と上記方形波を加算した波形を有する電圧波形を生成し、キャリア信号生成部7に出力する。
キャリア信号生成部7は、波形生成部9から出力された上記電圧波形に基づいて、電圧制御発振器(VCO:Voltage
Control Oscillator)等を用いることにより、キャリア信号を生成する。キャリア信号は、キャリア周波数fc(後述する図2参照)を有する三角波である。キャリア信号生成部7は、上記キャリア信号を比較器8a、8b、8cに出力する。
上記比較器8a、8b、8cは、PID制御部6a、6b、6cの出力値と三角波状のキャリア信号の大小関係を比較し、その大小関係に応じてPWMインバータ2のスイッチング素子Tu+、Tu−、Tv+、Tv−、Tw+、Tw−のオン/オフを制御する信号をPWMインバータ2に入力する。U相のスイッチング素子Tu+、Tu−の制御を例として比較器8aの動作を具体的に説明すれば、比較器8aは、PID制御部6aの出力値が三角波状のキャリア信号よりも大きい場合、Tu+、Tu−をそれぞれオン状態およびオフ状態に制御することにより正の電圧をモータのU相に印加し、逆にPID制御部の出力値6aが三角波状キャリア信号よりも小さい場合には、Tu+、Tu−をそれぞれオフ状態およびオン状態に制御することにより、負の電圧をモータのU相に印加する。
ここで、本発明において提案するキャリア周波数fcの変化について、説明する。図2は本発明第一の実施形態を示すキャリア周波数fcの時間変化と高調波スペクトルを示す図である。ここで、図2(a)はキャリア周波数fcの時間変化を示す図、図2(b)は高調波スペクトルを示す図である。
図2(a)に示すように、キャリア周波数fcは、第一の周波数範囲fc1〜fc2(fc1<fc2)および第二の周波数範囲fc3〜fc4(fc3<fc4)では、三角波状に変化している。また、第三の周波数範囲fc2〜fc3(fc2<fc3)では、ほぼ垂直に推移している。図2(a)で示すキャリア周波数fcの時間変化の場合、第一の周波数範囲fc1〜fc2および第二の周波数範囲fc3〜fc4で、三角波の波数は2個連続している。図2(a)のようなキャリア周波数fcの変化において、キャリア周波数fcのn次高調波(n:整数)の周波数スペクトルは図2(b)のようになる。図2(b)において、n次高調波の周波数スペクトルは、n・fc1〜n・fc2までのn次周波数帯域でほぼ平坦な第一のノイズレベル21を有する。また、n・fc3〜n・fc4までのn次周波数帯域でほぼ平坦な第二のノイズレベル22を有する。一方、n・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域では、第一のノイズレベル21および第二のノイズレベル22よりも低い第三のノイズレベル23を有している。これより、所定の周波数帯域、すなわち、n・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域のEMIノイズをさらに低減できる。
また(n+1)次高調波の周波数スペクトルも同様に、(n+1)・fc1〜(n+1)・fc2までの(n+1)次周波数帯域でほぼ平坦な第一のノイズレベル24を有する。また、(n+1)・fc3〜(n+1)・fc4までの(n+1)次周波数帯域でほぼ平坦な第二のノイズレベル25を有する。一方、(n+1)・fc2〜(n+1)・fc3までの(n+1)次周波数帯域では、第一のノイズレベル24および第二のノイズレベル25よりも低い第三のノイズレベル26を有している。さらに(n−1)次高調波の周波数スペクトルも同様に、(n−1)・fc1〜(n−1)・fc2までの(n−1)次周波数帯域でほぼ平坦な第一のノイズレベル27を有する。また、(n−1)・fc3〜(n−1)・fc4までの(n−1)次周波数帯域でほぼ平坦な第二のノイズレベル28を有する。一方、(n−1)・fc2〜(n−1)・fc3までの(n−1)次周波数帯域では、第一のノイズレベル27および第二のノイズレベル28よりも低い第三のノイズレベル29を有している。
ここで、本発明においては、
(n−1)・fc4≦n・fc2 (1.1)
n・fc3≦(n+1)・fc1 (1.2)
が成立するようにfc1、fc2、fc3およびfc4を決めている。これらの式が成立する場合、キャリア周波数fcのn次高調波の周波数スペクトルにおいて、第三のノイズレベル23を有する周波数帯域、すなわち、n・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域に、隣り合う(n−1)次高調波の周波数スペクトルの第二のノイズレベル28を有する周波数帯域、すなわち、(n−1)・fc3〜(n−1)・fc4までのn次周波数帯域が重畳しないことになる。同様に、キャリア周波数fcのn次高調波の周波数スペクトルにおいて、第三のノイズレベル23を有する周波数帯域、すなわち、n・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域に、隣り合う(n+1)次高調波の周波数スペクトルの第一のノイズレベル24を有する周波数帯域、すなわち、(n+1)・fc1〜(n+1)・fc2までのn次周波数帯域が重畳しないことになる。したがって、キャリア周波数fcのn次高調波の周波数スペクトルのn・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域において、第三のノイズレベル23に第一のノイズレベル24および第二のノイズレベル28が重畳することによるノイズレベルの上昇を抑制することが可能となる。
ここでn次高調波の周波数スペクトルのn・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域に、例えば、放送周波数帯域fs±Δfsのラジオ放送波の帯域が含まれるようにn、fc2、fc3を決定することで、インバータシステム1の動作により発生するキャリア周波数fcに起因するEMIノイズにより、インバータシステム1の近傍に配置されたラジオ受信機で受信される放送を聴取する場合の障害を抑制させることができる。また、放送周波数帯域fs±Δfs以外の周波数帯域においては、キャリア周波数fcを時間的に変化させていることから、キャリア周波数fcを一定としている場合に、キャリア周波数fcのn次高調波の周波数に発生していたノイズレベルの高いスペクトル成分を、キャリア周波数fcの時間とともに変化する周波数帯域(fc1〜fc4)のn次周波数帯域(n・fc1〜n・fc4)で拡散させることができる。よって、キャリア周波数fcを一定としている場合よりもノイズレベルを低減させることが可能である。また、放送周波数帯域fs±Δfsに、隣り合うキャリア周波数fcの(n+1)次高調波の周波数スペクトルの第一のノイズレベル24を有する周波数帯域および(n−1)次高調波の周波数スペクトルの第二のノイズレベル28を有する周波数帯域が重畳しないので、放送周波数帯域fs±Δfsにおけるノイズレベルの上昇を抑制できる。したがって、その他の受信装置や機器への障害も抑制することが可能となる。以上より、キャリア周波数fcを時間とともに変化させつつ、上記式(1.1)および(1.2)が成立するようにfc1、fc2、fc3およびfc4を決めることで、広い周波数帯域におけるノイズレベルを低減しつつ、所定の周波数帯域(n・fc2〜n・fc3)に対するノイズレベルをさらに低減することができる。
(第二の実施形態)
次に、第二の実施形態に係るインバータシステムについて、第一の実施形態に係るインバータシステム1と異なる点を中心に図3を参照して説明する。また、第二の実施形態に係るインバータシステムについて、第一の実施形態に係るインバータシステム1と同様の構造には同じ番号を付し、説明を省略する。図3は、本発明第二の実施形態を示すキャリア周波数fcの時間変化と高調波スペクトルを示す図である。ここで、図3(a)はキャリア周波数fcの時間変化を示す図、図3(b)は高調波スペクトルを示す図である。第二の実施形態に係るインバータシステムの構成は、第一の実施形態に係るインバータシステム1と全く同じである。また、図3(a)に示したキャリア周波数fcの波形も、図2(a)で示したキャリア周波数fcの波形と同じである。さらに、図3(b)に示したキャリア周波数fcの周波数スペクトルも、図2(b)で示したキャリア周波数fcの周波数スペクトルと酷似している。第二の実施形態に係るインバータシステムが、第一の実施形態と相違する点は、キャリア周波数fcの変化させる範囲の決め方が異なっていることだけである。
ここで、第二の実施形態では、更に、
n・fc4≒(n+1)・fc1 (2)
を満たすようにfc1とfc4を決定している。このようにfc1とfc4を決定すると、n次高調波の周波数スペクトルと(n+1)次高調波の周波数スペクトルがほぼ隣り合う、すなわちもっとも接近しながらもスペクトルの重畳がほとんどないといったスペクトルが形成される。また、この関係を満たせば、n次高調波の周波数スペクトルと(n−1)次高調波の周波数スペクトルにおけるスペクトルの重畳もほとんどない。このようにすることは、以下の2つの点で有効である。
第一に、n次高調波の周波数スペクトルにおいて、第三のノイズレベル23を有する周波数帯域、すなわち、n・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域に(n+1)次高調波の周波数スペクトルの第一のノイズレベル24および(n−1)次高調波の周波数スペクトルの第二のノイズレベル28が重畳しない。これから、n・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域において、ノイズレベルの上昇を抑制することができる。第二に、キャリア周波数fcを時間的に変化させることで、各次数の高調波の周波数スペクトルの周波数帯域を広げ、ノイズレベルを低減するという観点からすると、各次数の高調波の周波数スペクトルの周波数帯域をより広くすることが有効である。そこで、(2)式を満足するようにfc1とfc4を決めると、n次以下の次数の高調波のスペクトルの重畳を抑制しつつ、スペクトルが含まれない周波数帯域、すなわち隣り合う高調波の周波数スペクトルの間の周波数帯域を最も狭くすることができる。これにより周波数帯域を有効に用いることが可能となり、その分の広い周波数帯域でのノイズレベルの低減が実現できる。
さらに、第一の実施形態と同様に、キャリア周波数fcの時間変化において、fc2〜fc3への推移が、ほぼ垂直になっていることから、所定の周波数帯域、すなわち、n・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域のEMIノイズをさらに低減できる。
以上より、キャリア周波数fcを時間とともに変化させつつ、上記式(2)が成立するようにfc1、fc2、fc3およびfc4を決めることで、広い周波数帯域におけるノイズレベルを低減しつつ、所定の周波数帯域(n・fc2〜n・fc3)に対するノイズレベルをさらに低減することができる。
(第三の実施形態)
次に、第三の実施形態に係るインバータシステムについて、第一の実施形態に係るインバータシステム1と異なる点を中心に図4を参照して説明する。また、第三の実施形態に係るインバータシステムについて、第一の実施形態に係るインバータシステム1と同様の構造には同じ番号を付し、説明を省略する。図4は、本発明第三の実施形態を示すインバータシステム1と受信装置10の構成を示す図である。第三の実施形態では、第一の実施形態に係るインバータシステム1の近傍に受信装置10を配置した構成となっている。これから、第一の実施形態と同様の効果を取得することができる。
なお、第三の実施形態において、受信装置10はAMラジオ受信機である。AMラジオ受信機10は、AMラジオ受信機10で現在聴取している放送局のチャンネル周波数を、インバータシステム1内に存在するキャリア周波数可変部12の波形生成部9に対して知らせる機能、すなわち、チャンネル周波数出力部11を有している。このようにすると、AMラジオ受信機10で聴取しようとする放送局が変わった場合でも、そのチャンネル周波数に応じて、キャリア周波数fcを時間とともに変化させる場合の変化の範囲を変更することが可能となり、インバータシステム1から発生するキャリア周波数fcに起因するEMIノイズによるAMラジオ受信機10で受信される放送を聴取する場合の障害を、任意のチャンネルにおいて、抑制することが可能となる。
(第四の実施形態)
次に、第四の実施形態に係るインバータシステムについて、第一の実施形態に係るインバータシステム1と異なる点を中心に図5を参照して説明する。図5は、本発明第四の実施形態を示すキャリア周波数fcの時間変化と高調波スペクトルを示す図である。ここで、図5(a)はキャリア周波数fcの時間変化を示す図、図5(b)は高調波スペクトルを示す図である。第四の実施形態に係るインバータシステムの構成は、第一の実施形態に係るインバータシステム1と全く同じである。第四の実施形態に係るインバータシステムが、第一の実施形態と相違する点は、図5(a)に示したように、キャリア周波数fcの時間変化、すなわち、波形が異なっていることだけである。
第四の実施形態では、図5(b)に示したように、n次高調波の周波数スペクトルにおいて、放送周波数帯域fs±Δfsを含むn・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域がn・fc1〜n・fc4までのn次周波数帯域の中央に存在するのではなく、中央よりも高周波側に偏っている。第一の実施形態と同様に、n次高調波の周波数スペクトルは、n・fc1〜n・fc2までのn次周波数帯域でほぼ平坦な第一のノイズレベル41を有し、n・fc3〜n・fc4までのn次周波数帯域でほぼ平坦な第二のノイズレベル42を有する。一方、n・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域では、第一のノイズレベル41および第二のノイズレベル42よりも低い第三のノイズレベル43を有している。この場合、
(fc2−fc1):(fc4−fc3)=T2:T1 (3)
という関係が成り立つように、T1とT2を決める。ここで、T1はキャリア周波数fcが第一の周波数範囲fc1〜fc2を変化する時間であり、T2はキャリア周波数fcが第二の周波数範囲fc3〜fc4を変化する時間である。図5では、キャリア周波数fcは、時間T1およびT2で、それぞれ三角波状に変化している。それぞれの三角波の周期をTm1、Tm2とすると、
Tm1=Tm2 (4)
が成り立つようにする。また(3)式の関係から、第一の周波数範囲fc1〜fc2における三角波の波数と、第二の周波数範囲fc3〜fc4における三角波の波数の比はT1:T2になる。このようにすることで、n次高調波の周波数スペクトルにおいて、第一のノイズレベル41と第二のノイズレベル42をほぼ等しくすることが可能となり、引いては、各次数の高調波の周波数スペクトルのノイズレベルを最も低くすることが可能となる。
さらに、第一の実施形態と同様に、キャリア周波数fcの時間変化において、第三の周波数範囲fc2〜fc3の推移が、ほぼ垂直になっていることから、所定の周波数帯域、すなわち、n・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域のEMIノイズをさらに低減できる。また、上記式(1.1)および(1.2)を成立するようにfc1、fc2、fc3およびfc4を決めることで、キャリア周波数fcのn次高調波の周波数スペクトルのn・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域において、第三のノイズレベル43に第一および第二のノイズレベルが重畳することによるノイズレベルの上昇を抑制することが可能となる。これより、広い周波数帯域におけるノイズレベルを低減しつつ、所定の周波数帯域(n・fc2〜n・fc3)に対するノイズレベルをさらに低減することもできる。
(第五の実施形態)
次に、第五の実施形態に係るインバータシステムについて、第四の実施形態に係るインバータシステムと異なる点を中心に図6を参照して説明する。図6は、本発明第五の実施形態を示すキャリア周波数fcの時間変化と高調波スペクトルを示す図である。ここで、図6(a)はキャリア周波数fcの時間変化を示す図、図6(b)は高調波スペクトルを示す図である。第五の実施形態に係るインバータシステムの構成は、第四の実施形態に係るインバータシステム、すなわち、第一の実施形態に係るインバータシステム1と全く同じである。第五の実施形態に係るインバータシステムが、第四の実施形態と相違する点は、図6(a)に示したように、キャリア周波数fcの時間変化、すなわち、波形が三角波状ではなく、一定時間毎にランダムに選択された周波数値を階段状に変化させた形状になっていることだけである。
ただし、第一の周波数範囲fc1〜fc2および第二の周波数範囲fc3〜fc4内では単位時間(T1+T2)において均一な分布になるように、キャリア周波数fcの値を決めている。例えば図6(a)では、第一の周波数範囲fc1〜fc2の周波数帯域幅と第二の周波数範囲fc3〜fc4の周波数帯域幅の比が5:3となっている。第一の周波数範囲fc1〜fc2における周波数値を、上記周波数帯域幅の比に合わせて、5つ有している。キャリア周波数fcを5つの周波数値から一定時間毎にランダムに選択して、選択された周波数値に階段状に変化させている。このとき、すでに一度選択された周波数値は選択されないようにしている。同様に、第二の周波数範囲fc3〜fc4における周波数値を、上記周波数帯域幅の比に合わせて、3つ有している。キャリア周波数fcを3つの周波数値から一定時間毎にランダムに選択して、選択された周波数値に階段状に変化させている。同様に、すでに一度選択された周波数値は選択されないようにしている。この場合、T1とT2の比を5:3とすることで、キャリア周波数fcの分布が均一になる。このようにすることで、第四の実施形態の場合と同様に、n次高調波の周波数スペクトルにおいて、第一のノイズレベル41と第二のノイズレベル42をほぼ等しくすることが可能となり、引いては、各次数の高調波の周波数スペクトルのノイズレベルを最も低くすることが可能となる。
さらに、第四の実施形態と同様に、キャリア周波数fcの時間変化において、第三の周波数範囲fc2〜fc3の推移が、ほぼ垂直になっていることから、所定の周波数帯域、すなわち、n・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域のEMIノイズをさらに低減できる。また、上記式(1.1)および(1.2)を成立するようにfc1、fc2、fc3およびfc4を決めることで、キャリア周波数fcのn次高調波の周波数スペクトルのn・fc2〜n・fc3までのn次周波数帯域において、第三のノイズレベル43に第一および第二のノイズレベルが重畳することによるノイズレベルの上昇を抑制することが可能となる。これより、広い周波数帯域におけるノイズレベルを低減しつつ、所定の周波数帯域(n・fc2〜n・fc3)に対するノイズレベルをさらに低減することができる。
なお、以上に述べた実施形態は、本発明の実施の一例であり、本発明の範囲はこれらに限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で、他の様々な実施形態に適用可能である。例えば、第一乃至第五の実施形態では、本発明をインバータシステムに適用しているが、特にこれに限定されるものでなく、他の電力変換装置の制御装置にも適用可能である。例えば、従来技術で説明したようなHブリッジ構成のスイッチにより直流モータを駆動する場合をはじめ、その他、スイッチの開閉により入力電力の形態を変化させて出力電力を形成する、種々の電力変換装置の制御装置への適用が可能である。
また、n・fc2〜n・fc3のn次周波数帯域と放送周波数帯域fs±Δfsとを同じにしているが、特にこれに限定されるものでなく、異なっていても良い。
また、第一乃至第五の実施形態におけるインバータシステム1は、PWMインバータ2、三相ブラシレス直流モータ3、電流センサ4a、4b、4c、制御装置13、電源BおよびコンデンサCを備えているが、特にこれに限定されるものでない。同様に、制御装置13は、電流指令生成部5、PID制御部6a、6b、6c、比較器8a、8b、8c、キャリア周波数可変部12を備えているが、特にこれに限定されるものでない。また、キャリア周波数可変部12は、キャリア信号生成部7と波形生成部9を備えているが、特にこれに限定されるものでなく、波形生成部9を別個独立の構成としても良い。
また、波形生成部9は、図示しない第1の発信器の出力波形と図示しない第2の発信器の出力波形を図示しない加算器で加算した電圧波形をキャリア信号生成部7に出力しているが、特にこれに限定されるものでなく、ディジタル演算で、上記の電圧波形を生成しても良い。
また、第一乃至第四の実施形態におけるキャリア周波数fcは、第一の周波数範囲fc1〜fc2および第二の周波数範囲fc3〜fc4において、三角波状に変化しているが、特にこれに限定されるものでない。
また、第四の実施形態および第五の実施形態では、上記式(1.1)および(1.2)が成立するように周波数fc1〜fc4を決めているが、特にこれに限定されるものでなく、代わりに、上記式(2)が成立するように周波数fc1〜fc4を決めても良い。
インバータシステムの構成 本発明第一の実施形態を示すキャリア周波数の時間変化と高調波スペクトル 本発明第二の実施形態を示すキャリア周波数の時間変化と高調波スペクトル 本発明第三の実施形態を示すインバータシステムと受信装置の構成 本発明第四の実施形態を示すキャリア周波数の時間変化と高調波スペクトル 本発明第五の実施形態を示すキャリア周波数の時間変化と高調波スペクトル
符号の説明
1 インバータシステム、2 PWMインバータ、
3 三相ブラシレス直流モータ、4a、4b、4c 電流センサ、
5 電流指令生成部、6a、6b、6c PID制御部、
7 キャリア信号生成部、8a、8b、8c 比較器、9 波形生成部、
10 受信装置であるAMラジオ受信機、11 チャンネル周波数出力部、
12 スイッチング周波数変更手段であるキャリア周波数可変部、
13 制御装置、21、24、27、41 第一のノイズレベル、
22、25、28、42 第二のノイズレベル、
23、26、29、43 第三のノイズレベル、
B 電池、C コンデンサ、
fc、fc1、fc2、fc3、fc4 キャリア周波数、
fs±Δfs 所定の周波数帯域である放送周波数帯域、
Tu+、Tu−、Tv+、Tv−、Tw+、Tw− スイッチング素子、
T1、T2 時間、Tm1、Tm2 周期

Claims (16)

  1. 内蔵するスイッチの開閉により、入力される電力を所望の形態に変換して出力する電力変換装置の制御装置において、
    前記スイッチを開閉するための制御信号の周波数を時間とともに変化させるスイッチング周波数変更手段を備え、
    前記スイッチング周波数変更手段は、第一の周波数範囲fc1〜fc2(fc1<fc2)内および第二の周波数範囲fc3〜fc4(fc3<fc4)内で周期的に変化する波形に基づいて、前記制御信号の周波数を変化させ、
    前記周波数fc1およびfc4は、所定の周波数帯域fs±Δfsに対して、次の不等式
    n・fc2≦fs−Δfs
    fs+Δfs≦n・fc3
    を満たす整数n、fc2およびfc3に対して、
    (n−1)・fc4≦n・fc2
    n・fc3≦(n+1)・fc1
    を満たすように決定されることを特徴とする電力変換装置の制御装置。
  2. 内蔵するスイッチの開閉により、入力される電力を所望の形態に変換して出力する電力変換装置の制御装置において、
    前記スイッチを開閉するための制御信号の周波数を時間とともに変化させるスイッチング周波数変更手段を備え、
    前記スイッチング周波数変更手段は、第一の周波数範囲fc1〜fc2(fc1<fc2)内および第二の周波数範囲fc3〜fc4(fc3<fc4)内で周期的に変化する波形に基づいて、前記制御信号の周波数を変化させ、
    前記周波数fc1およびfc4は、所定の周波数帯域fs±Δfsに対して、次の不等式
    n・fc2≦fs−Δfs
    fs+Δfs≦n・fc3
    を満たす整数n、fc2およびfc3に対して、
    n・fc4≒(n+1)・fc1
    を満たすように決定されることを特徴とする電力変換装置の制御装置。
  3. 前記電力変換装置の近傍に受信装置が配置され、
    前記受信装置は、受信するチャンネルの周波数を選択する受信チャンネル選択手段と、
    前記スイッチング周波数変更手段に前記チャンネルの周波数を出力するチャンネル周波数出力手段とを有し、
    前記スイッチング周波数変更手段は、前記チャンネルの周波数を前記周波数fsとみなして、前記周波数fc1、fc2、fc3およびfc4を変更する手段を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置の制御装置。
  4. 第三の周波数範囲fc2〜fc3(fc2<fc3)における前記波形は、所定の傾きを有する直線状に変化することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電力変換装置の制御装置。
  5. 前記スイッチング周波数変更手段は、一定時間毎にランダムに選択した周波数値を階段状に変化させて、前記波形を生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電力変換装置の制御装置。
  6. 前記周波数fc1、fc2、fc3およびfc4は、前記第一の周波数範囲に属する時間と第二の周波数範囲に属する時間との比がa:bの場合、次式
    (fc2−fc1):(fc4−fc3)=b:a
    が成り立つように、決定されることを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置の制御装置。
  7. 前記波形は、第一の周波数範囲内および第二の周波数範囲内で三角波状に一定周期で変化することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電力変換装置の制御装置。
  8. 前記周波数fc1、fc2、fc3およびfc4は、前記第一の周波数範囲を推移する三角波の波数と第二の周波数範囲を推移する三角波の波数の比がc:dの場合、次式
    (fc2−fc1):(fc4−fc3)=c:d
    が成り立つように、決定されることを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置の制御装置。
  9. 内蔵するスイッチの開閉により、入力される電力を所望の形態に変換して出力する電力変換装置の制御方法において、
    前記スイッチを開閉するための制御信号の周波数を時間とともに変化させるスイッチング周波数変更手段により、第一の周波数範囲fc1〜fc2(fc1<fc2)内および第二の周波数範囲fc3〜fc4(fc3<fc4)内で周期的に変化する波形に基づいて、前記制御信号の周波数を変化させ、
    前記周波数fc1およびfc4を、所定の周波数帯域fs±Δfsに対して、次の不等式
    n・fc2≦fs−Δfs
    fs+Δfs≦n・fc3
    を満たす整数n、fc2およびfc3に対して、
    (n−1)・fc4≦n・fc2
    n・fc3≦(n+1)・fc1
    を満たすように決定することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
  10. 内蔵するスイッチの開閉により、入力される電力を所望の形態に変換して出力する電力変換装置の制御方法において、
    前記スイッチを開閉するための制御信号の周波数を時間とともに変化させるスイッチング周波数変更手段により、第一の周波数範囲fc1〜fc2(fc1<fc2)内および第二の周波数範囲fc3〜fc4(fc3<fc4)内で周期的に変化する波形に基づいて、前記制御信号の周波数を変化させ、
    前記周波数fc1およびfc4を、所定の周波数帯域fs±Δfsに対して、次の不等式
    n・fc2≦fs−Δfs
    fs+Δfs≦n・fc3
    を満たす整数n、fc2およびfc3に対して、
    n・fc4≒(n+1)・fc1
    を満たすように決定することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
  11. 前記電力変換装置の近傍に配置された前記受信装置は、受信するチャンネルの周波数を選択させて、前記スイッチング周波数変更手段に前記チャンネルの周波数を出力し、
    前記スイッチング周波数変更手段は、前記チャンネルの周波数を前記周波数fsとみなして、前記周波数fc1、fc2、fc3およびfc4を変更することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の電力変換装置の制御方法。
  12. 第三の周波数範囲fc2〜fc3(fc2<fc3)における前記波形を、所定の傾きを有する直線状に変化させることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の電力変換装置の制御方法。
  13. 前記スイッチング周波数変更手段は、一定時間毎にランダムに選択した周波数値を階段状に変化させて、前記波形を生成することを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の電力変換装置の制御方法。
  14. 前記周波数fc1、fc2、fc3およびfc4を、前記第一の周波数範囲に属する時間と第二の周波数範囲に属する時間との比がa:bの場合、次式
    (fc2−fc1):(fc4−fc3)=b:a
    が成り立つように、決定することを特徴とする請求項13に記載の電力変換装置の制御方法。
  15. 前記波形は、第一の周波数範囲内および第二の周波数範囲内で三角波状に一定周期で変化することを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の電力変換装置の制御方法。
  16. 前記周波数fc1、fc2、fc3およびfc4を、前記第一の周波数範囲を推移する三角波の波数と第二の周波数範囲を推移する三角波の波数の比がc:dの場合、次式
    (fc2−fc1):(fc4−fc3)=c:d
    が成り立つように、決定することを特徴とする請求項15に記載の電力変換装置の制御方法。
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