JP4599694B2 - 電圧形pwmインバータのデッドタイム補償方法 - Google Patents

電圧形pwmインバータのデッドタイム補償方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電圧形PWMインバータの逆変換回路を構成する上下アームの短絡を防止するためのインタロックとして短絡防止時間(デッドタイム)が挿入されるが、これに起因した該インバータのPWM電圧指令と出力電圧との間の誤差電圧を補償する電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電圧形PWMインバータの逆変換回路を構成する上下アームの短絡を防止するためのインタロックとして、該逆変換回路を形成するスイッチング素子のターンオフ時間も包含した短絡防止時間(デッドタイム)が挿入されるが、これに起因した該インバータのPWM電圧指令と出力電圧との間の誤差電圧を補償するためには、該PWM電圧指令に加算される方形波状の補償電圧の極性を、該インバータの出力電流が零クロス点を通過する時点に同期して変更する方法が一般に行われている。
【0003】
また前記補償電圧の振幅は、前記逆変換回路の入力直流電圧と、前記デッドタイムと、前記インバータにおけるPWM演算の際のキャリア周波数との積に基づいた値になることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来の電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法によると、該インバータの出力電流の零クロス点でステップ状に前記補償電圧の極性を変更しているため、該零クロス点近傍での出力電流のリプルが増大し、このリプルの増大に伴って前記零クロス点が変動して前記出力電流のリプルを更に増大させるという悪循環を招き、特に、前記インバータの負荷が電動機のときで、この電動機が低速運転される用途において、該リプルに起因する回転むらが大きくなるという問題があった。
【0005】
従来の上記問題点の解決策として、前記デッドタイムを短くするためにより高速の前記スイッチング素子を使用し、さらに前記キャリア周波数を余り高くしない方法があるが、この方法では前記インバータ全体の価格を上昇させる、前記電動機の回転速度制御範囲に制約が生じる、前記電動機の電磁騒音を大きくするなどの新たな問題点が発生する。
【0006】
また、上述の補償電圧をPWM電圧指令に加算する方法に代えて、フィードバックループを設けて制御応答を速くして補償する方法もあるが、回路構成の簡単なF/V方式(オープンループ方式)の汎用インバータでは、回路構成を複雑にすることなどからこの方法の導入は困難である。
【0007】
この発明の目的は、上記問題点を解決する電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この第1の発明は、電圧形PWMインバータの逆変換回路を構成する上下アームの短絡を防止するための短絡防止時間(デッドタイム)を有し、該デッドタイムによるインバータのPWM電圧指令と出力電圧との間の誤差電圧を補償する電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法において、
該デッドタイム補償のために前記PWM電圧指令に加算される補償電圧の振幅を前記逆変換回路の入力直流電圧と、前記デッドタイムと、PWMパルス演算器におけるPWM演算の際のキャリア周波数との積に基づいた値に設定し、この補償電圧を前記電圧形PWMインバータの出力電流が零クロス点を通過するのに伴って電圧極性を切替えるとともに、
前記出力電流の振幅値を求め、この求めた出力電流の振幅値に基づいて前記補償電圧値の振幅値を補正することを特徴とする。
【0009】
また第2の発明は、電圧形PWMインバータの逆変換回路を構成する上下アームの短絡を防止するための短絡防止時間(デッドタイム)を有し、該デッドタイムによるインバータのPWM電圧指令と出力電圧との間の誤差電圧を補償する電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法において、
該デッドタイム補償のために前記PWM電圧指令に加算される補償電圧の振幅を前記逆変換回路の入力直流電圧と、前記デッドタイムと、PWMパルス演算器におけるPWM演算の際のキャリア周波数との積に基づいた値に設定し、この補償電圧を前記電圧形PWMインバータの出力電流が零クロス点を通過するのに伴って電圧極性を切替えるとともに、
この補償電圧値の振幅を前記PWM電圧指令を生成するための出力電圧指令値に基づいて補正することを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、前記第1又は第2の発明の電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法において、
前記補償電圧の振幅は、前記出力電流の振幅値又は出力電圧指令値が零から所定値までは該出力電流の振幅値又は出力電圧指令値に比例させた値とし、該所定値を超えたときには一定の値となるように補正することを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、前記第3の発明の電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法において、
前記出力電流の振幅値又は出力電圧指令値が零から所定値まで生ずる補償不足分に対応する補償不足分電圧を求め、この補償不足分電圧を前記電圧指令値に加算した値を新たな電圧指令値としたことを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、前記第3の発明の電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法において、
前記電圧形PWMインバータにおけるPWM演算の際のキャリア周波数に基づいて、前記出力電流の振幅値又は出力電圧指令値が零から所定値までに生ずる補償不足分に対応する補正指令値を求め、この補正指令値を前記電圧指令値に加算した値を新たな電圧指令値としたことを特徴とする。
【0013】
この第1〜第3の発明によれば、電圧形PWMインバータの出力電流、または、該インバータへの出力電圧指令値が小さいときには、該インバータの出力電流の零クロス点でステップ状に変化する前記補償電圧の振幅を小さくすることにより、前記出力電流の零クロス点近傍のリプルを減少させることができる。
【0014】
さらに第4,第5の発明によれば、上記第1から第3の発明の作用に加えて、該第1〜第3の発明での出力電流値又は出力電圧指令値が零から所定値までの間で前記補償電圧の振幅を小さくすることによる生ずる前記インバータのPWM電圧指令と出力電圧との間の誤差を解消することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の第1の実施例を示す電圧形PWMインバータの回路構成図であり、1は整流電源などからなる直流電源、2は図示の如くトランジスタとダイオードの逆並列回路をブリッジ接続してなる三相の逆変換回路、3〜5は前記逆変換回路2の出力電流を検出するCT、6は負荷としての電動機、11はこの電圧形PWMインバータの出力周波数を指令する周波数設定器、12は周波数設定器11の指令値に対応する電圧指令値に変換する周波数/電圧(F/V)変換器、13は周波数設定器11の指令値に対応する角度指令を演算する積分器、14は前記電圧指令値と角度指令とから三相のPWM電圧指令を演算するPWM電圧指令演算器、15〜17は前記PWM電圧指令それぞれに後述のそれぞれの補償電圧を加算し、この加算値を新たなPWM電圧指令として出力する加算演算器、18はこの新たな三相のPWM電圧指令に基づくPWM(パルス幅変調)演算を行い、更に前記デッドタイムを付加した逆変換回路2への駆動信号を生成するPWMパルス演算器である。
【0016】
上述の補償電圧を生成する回路として、各相毎に備える補償電圧発生器(符号31,41,51)及び乗算器(符号32,42,52)と、CT3〜5の検出値から前記逆変換回路2の出力電流の振幅を求める振幅演算器21と、この振幅から振幅係数(k)を演算する振幅係数演算器22とから構成されている。
【0017】
図2は、いずれかの相の前記補償電圧発生器の動作を説明するための波形図であり、(イ)はCT3〜5のいずれかが検出したこの電圧形PWMインバータの出力電流波形を示し、(ロ)はこの電流波形に対応した補償電圧波形を示し、(イ)に示す電流波形の太実線,破線のようにその振幅に無関係に零クロス点で極性が切り替わり、(ロ)に示す補償電圧の振幅A(=一定値)は、逆変換回路2の入力直流電圧と、前記デッドタイムと、PWMパルス演算器18におけるPWM演算の際のキャリア周波数との積に基づいた値に設定される。
【0018】
図3は、振幅係数演算器22の動作を説明するための特性図である。
【0019】
前記補償電圧の振幅係数(k)は、振幅演算器21で得られた振幅が零から予め定められた所定値、例えば、逆変換回路2の出力電流の定格値の20%程度の振幅までは、該振幅に比例させた値(すなわち、k=0〜1.0)とし、また、該所定値を超えたときには、該所定値のときの比例値(すなわち、k=1.0)としている。
【0020】
すなわち、図1に示した電圧形PWMインバータにおいては、逆変換回路2の出力電流が定格値の20%以下のときには、乗算器(符号32,42,52)それぞれにより、補償電圧発生器(符号31,41,51が出力する振幅Aに対して、前記乗算器の演算結果はA×k(k<1.0)となり、この電圧形PWMインバータの出力電流が小さいときには、該出力電流の零クロス点でステップ状に変化する前記補償電圧の振幅を小さくすることにより、該出力電流の零クロス点近傍のリプルを減少させることができる。
【0021】
図4は、この発明の第2の実施例を示す電圧形PWMインバータの回路構成図であり、図1に示した実施例回路と同一機能を有するものには同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0022】
すなわち、図4に示した回路構成が図1に示した回路構成と異なる点は、振幅演算器21と振幅係数演算器22とに代えて、振幅係数演算器23を備えていることである。
【0023】
この振幅係数演算器23ではF/V変換器12の出力である電圧指令値を入力とし、前記補償電圧の振幅係数(k)は、該電圧指令値が零から予め定められた所定値、例えば、定格値の20%程度までは、該電圧指令値に比例させた値(すなわち、k=0〜1.0)とし、また、該所定値を超えたときには、該所定値のときの比例値(すなわち、k=1.0)としている。
【0024】
すなわち、図4に示した電圧形PWMインバータにおいては、前記電圧指令値が定格値の20%以下のときには、乗算器(符号32,42,52)それぞれにより、補償電圧発生器(符号31,41,51が出力する振幅Aに対して、前記乗算器の演算結果はA×k(k<1.0)となり、この電圧形PWMインバータの出力電圧が小さいときには、一般的に、逆変換回路2の出力電流も小さいことから、該出力電流の零クロス点でステップ状に変化する前記補償電圧の振幅を小さくすることにより、該出力電流の零クロス点近傍のリプルを減少させることができる。
【0025】
図5は、この発明の第3の実施例を示す電圧形PWMインバータの回路構成図であり、図1に示した実施例回路と同一機能を有するものには同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0026】
すなわち、図5に示した回路構成が図1に示した回路構成と異なる点は、図1の回路構成に対して、不足電圧発生器24と加算演算器25とが付加されていることである。
【0027】
図6は、不足電圧発生器24の動作を説明するための特性図である。
【0028】
図6において、縦軸のAの値は補償電圧発生器(符号31,41,51)における振幅Aと同じ値であり、この不足電圧発生器24では振幅係数演算器22が出力する振幅係数kを入力して、図6に示す如く、A×(1−k)を図6に従って演算し、この演算値を補償不足分電圧としている。
【0029】
すなわち、図5に示した電圧形PWMインバータにおいては、前記kがk<1のときにはPWM電圧指令に加算されるデッドタイム補償のための前記補償電圧がkの値に対応して小さくなり、この小さくなった分は前記補償不足分電電圧〔A×(1−k)〕となることから、この補償不足分電圧を前記電圧指令値に加算し、この加算値をPWM電圧指令演算器14に入力することにより、この電圧形PWMインバータの出力電流が小さいときの該出力電流の零クロス点近傍のリプルを減少させつつ、該インバータのPWM電圧指令と出力電圧との間の誤差を解消することができる。
【0030】
図7は、この発明の第4の実施例を示す電圧形PWMインバータの回路構成図であり、図1に示した実施例回路と同一機能を有するものには同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0031】
すなわち、図7に示した回路構成が図1に示した回路構成と異なる点は、図1の回路構成に対して、PWMパルス演算器18をPWMパルス演算器18aとし、加算演算器25と、関数発生器26と、補償指令演算器27とが付加されていることである。
【0032】
図8は、関数発生器26の動作を説明するための特性図である。
【0033】
図8において、関数発生器26はPWMパルス演算器18aから前記PWM演算の際のキャリア周波数に対応したキャリア周期を取り込み、このときのキャリア周期に対応したPWM電圧指令と逆変換回路2の出力電圧との誤差に対する補正値を、図示の如き反比例の関数値として演算し、出力している。なお、この特性図は逆変換回路2への入力電圧が400V系のときの補正値の一例である。
【0034】
また、補正指令演算器27では振幅係数演算器22からの補正係数kと、関数発生器26からの補正値(VCR)とから補正指令値として、VCR×(1−k)なる演算を行っている。
【0035】
すなわち、図7に示した電圧形PWMインバータにおいては、前記kがk<1のときにはPWM電圧指令に加算されるデッドタイム補償のための前記補償電圧がkの値に対応して小さくなることから、この小さくなった分に対応する前記補正指令値を前記電圧指令値に加算し、この加算値をPWM電圧指令演算器14に入力することにより、この電圧形PWMインバータの出力電流が小さいときの該出力電流の零クロス点近傍のリプルを減少させつつ、該インバータのPWM電圧指令と出力電圧との間の誤差を解消することができる。
【0036】
このとき、電圧形PWMインバータの出力周波数を指令する周波数設定器11の指令値により、PWMパルス演算器18aでの前記PWM演算の際のキャリア周波数を変更して動作させる用途では、該インバータのPWM電圧指令と出力電圧との間の誤差をより正確に解消することができる。
【0037】
【発明の効果】
この発明の電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法によれば、該インバータの低出力電流領域での該インバータの出力電圧が安定するので、特に電動機がこのインバータの負荷のときには、このインバータの低出力周波数領域での該電動機の回転が安定する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1の実施例を示す電圧形PWMインバータの回路構成図
【図2】 図1の動作を説明する波形図
【図3】 図1の動作を説明する特性図
【図4】 この発明の第2の実施例を示す電圧形PWMインバータの回路構成図
【図5】 この発明の第3の実施例を示す電圧形PWMインバータの回路構成図
【図6】 図5の動作を説明する特性図
【図7】 この発明の第4の実施例を示す電圧形PWMインバータの回路構成図
【図8】 図7の動作を説明する特性図
【符号の説明】
1…直流電源、2…逆変換回路、3〜5…CT、6…電動機、11…周波数設定器、12…F/V変換器、13…積分器、14…PWM電圧指令演算器、15〜17…加算演算器、18,18a…PWMパルス演算器、21…振幅演算器、22,23…振幅係数演算器、24…不足電圧発生器、25…加算演算器、26…関数発生器、27…補償指令演算器、31,41,51…補償電圧発生器、32,42,52…乗算器。

Claims (5)

  1. 電圧形PWMインバータの逆変換回路を構成する上下アームの短絡を防止するための短絡防止時間(デッドタイム)を有し、該デッドタイムによるインバータのPWM電圧指令と出力電圧との間の誤差電圧を補償する電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法において、
    該デッドタイム補償のために前記PWM電圧指令に加算される補償電圧の振幅を前記逆変換回路の入力直流電圧と、前記デッドタイムと、PWMパルス演算器におけるPWM演算の際のキャリア周波数との積に基づいた値に設定し、この補償電圧を前記電圧形PWMインバータの出力電流が零クロス点を通過するのに伴って電圧極性を切替えるとともに、
    前記出力電流の振幅値を求め、この求めた出力電流の振幅値に基づいて前記補償電圧値の振幅値を補正することを特徴とする電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法。
  2. 電圧形PWMインバータの逆変換回路を構成する上下アームの短絡を防止するための短絡防止時間(デッドタイム)を有し、該デッドタイムによるインバータのPWM電圧指令と出力電圧との間の誤差電圧を補償する電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法において、
    該デッドタイム補償のために前記PWM電圧指令に加算される補償電圧の振幅を前記逆変換回路の入力直流電圧と、前記デッドタイムと、PWMパルス演算器におけるPWM演算の際のキャリア周波数との積に基づいた値に設定し、この補償電圧を前記電圧形PWMインバータの出力電流が零クロス点を通過するのに伴って電圧極性を切替えるとともに、
    この補償電圧値の振幅を前記PWM電圧指令を生成するための出力電圧指令値に基づいて補正することを特徴とする電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法において、
    前記補償電圧の振幅は、前記出力電流の振幅値又は出力電圧指令値が零から所定値までは該出力電流の振幅値又は出力電圧指令値に比例させた値とし、該所定値を超えたときには一定の値となるように補正することを特徴とする電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法。
  4. 請求項3に記載の電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法において、
    前記出力電流の振幅値又は出力電圧指令値が零から所定値まで生ずる補償不足分に対応する補償不足分電圧を求め、
    この補償不足分電圧を前記電圧指令値に加算した値を新たな電圧指令値としたことを特徴とする電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法。
  5. 請求項3に記載の電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法において、
    前記電圧形PWMインバータにおけるPWM演算の際のキャリア周波数に基づいて、前記出力電流の振幅値又は出力電圧指令値が零から所定値までに生ずる補償不足分に対応する補正指令値を求め、
    この補正指令値を前記電圧指令値に加算した値を新たな電圧指令値としたことを特徴とする電圧形PWMインバータのデッドタイム補償方法。
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