JP2007262080A - ジアルキルパーオキシジカーボネート溶液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ジアルキルパーオキシジカーボネート(該アルキル基は2又は3個の炭素原子を有する)溶液の製造方法であって、第一段階で、水中で、水性反応混合物の密度を高めるのに十分な量で添加された無機塩の存在下で、適量のアルキルハロホルメートを無機過酸化物と反応させて、ジアルキルパーオキシジカーボネートを製造し、第二段階で、この製造されたジアルキルパーオキシジカーボネートを水に不溶性の溶媒によって抽出して、この溶媒中にジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を生成することを特徴とするジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を製造する方法。
【選択図】なし
Description
この欠点を克服する目的で、例えば、塩化ビニルに溶解したアルキルハロホルメートをアルカリ性の水に溶解した過酸化水素のようなパーオキシ化合物と反応させることによって、重合反応容器の中で(「容器内で」)、パーオキシジカーボネートを製造することは既に提案されている。この開始剤の「容器内」製造方法によっては、重合反応器に開始剤を自動的に供給することはできない。さらに、この方法は、再現性が欠如し(実際に重合に取り入れる開始剤の量についての精度の欠如)、生産効率がよくない(開始剤の「容器内」合成が各重合サイクルに先行する必要がある)。
これは、水及び水と混和しない揮発性の溶媒、好ましくは、ペンタン又はヘキサンのような沸点が100℃未満の溶媒の存在下で、アルキルハロホルメートを、パーオキシ化合物と反応させることによって調製される。そして、このようにして得られた開始剤溶液全体(有機相及び水相)を、次の重合に備えて重合反応器に充填する(英国特許第1 484 675号、Solvay & Cie)。この方法によれば、開始剤を自動的に供給することはできるが、重合の直前に、かなり厳密な量の開始剤を生成する必要がある。また、この方法では、ジアルキルパーオキシジカーボネートの導入を遅らせるという、例えば、重合速度論的に改良するために有利な手法を用いることも(また)できない。さらに、上述の「容器内」製造方法と同様に、この方法で生成した塩化ビニルポリマーを加工すると、多くのフィッシュアイを含んだ製品となってしまう。
本発明の方法で用いる短いアルキル鎖を有するジアルキルパーオキシジカーボネート溶液は、本質的に、ジアルキルパーオキシジカーボネートと溶媒(ジアルキルアルカンジカルボキシレート)とから成る。従って、その溶液は、例えば、モノマーのような他の重合成分は含まない。
本発明の方法で用いる液体で水に不溶性のエステルの沸点は(標準状態で)、通常、100℃よりかなり高い。多くの場合、150℃以上である。
本発明による重合方法で用いるジアルキルパーオキシジカーボネート溶液の濃度は、通常、約15〜40重量%である。重合において希薄なパーオキシジカーボネート溶液を用いると、例えば、約10重量%(又はそれ未満)のジアルキルパーオキシジカーボネート含有の溶液を用いると、ガラス転移温度ひいては耐熱性の低い塩化ビニルポリマーが生成してしまうおそれがある。濃度があまり高すぎると、開始剤を反応器に加える際に正確に測ることができないので、通常は、約40重量%を超えない。ジアルキルパーオキシジカーボネートの濃度が、約25〜35重量%の溶液を用いた場合に、良い結果が得られる。
本発明において、短いアルキル鎖を有するジアルキルパーオキシジカーボネートとは、2又は3個の炭素原子を含む、エチル、プロピル、又はイソプロピルラジカル、さらに特定するとエチル及びイソプロピルラジカルで代表されるアルキルラジカルを持ったパーオキシジカーボネートを意味する。ジエチルパーオキシジカーボネートが、特に好ましいパーオキシジカーボネートである。
従って、本発明の方法の最良の実施態様によれば、ジエチル又はジイソプロピルパーオキシジカーボネートを、アジピン酸とC6〜C10のアルカノールから誘導されるヘキサンジカルボキシレート(アジピン酸エステル)中で、溶液の状態で用いる。
短いアルキル鎖(C2又はC3)を有するジアルキルパーオキシジカーボネートをエステル中で溶液状態で用いるという特徴以外は、塩化ビニルの水性縣濁液中での非連続的重合で通常使用される重合条件が用いられる。
重合温度は、通常、約40〜80℃である。
重合の結果、本発明の方法で生成した塩化ビニルポリマーは、一般的には、残留モノマーから精製した後に、重合媒体から常法で分離される。
この方法によれば、第1段階で、水性反応媒体の密度を高めるのに十分な量の無機塩の存在下で、適量のアルキルハロホルメートを無機過酸化物と反応させることによって、短いアルキル鎖を有するジアルキルパーオキシジカーボネート(上述したような)を製造し、第2段階で、その製造されたジアルキルパーオキシジカーボネートを水に不溶性の溶媒を用いて抽出して、この溶媒中にジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を生成する。
ジアルキルパーオキシジカーボネートの製造段階で用いる塩の性質は、特に重要ではない。原則的に、無機塩は、ジアルキルパーオキシジカーボネートの生成にほとんど関与しないが、反応条件において沈殿しないものが適している。このような塩として、限定するものではないが、例えば、ハロゲン化物、特に、アルカリ及びアルカリ土類金属のハロゲン化物を挙げることができる。アルカリ金属のハロゲン化物が好ましい。特に有利な実施態様においては、塩化ナトリウムを使用している。
高密度の水性媒体中でパーオキシジカーボネートを製造すると、ジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を効率的に分離することができる。
多くの場合、反応温度は、-10℃〜+10℃である。パーオキシジカーボネートの製造は、通常、数分の反応で完了し、反応時間は、一般的には、10分を超えず、多くの場合、5分を超えない。
アルキルハロホルメートとしては、多くの場合、クロロホルメートが有利である。無機過酸化物は、多くの場合、過酸化カルシウム又は過酸化ナトリウム、あるいは、水性の過酸化水素である。この後者の場合には、さらに、水酸化カルシウム又は水酸化ナトリウムのようなベースを水性反応媒体に導入することが好ましい。
この方法は、本質的には、水相の密度を高めるための無機塩の使用を減らすことと、ジアルキルパーオキシジカーボネートの製造後の塩分を含んだ水相を廃棄することに関して環境問題を減少させ、あるいは、なくすことさえもできるという2つの利点を有する。
第2段階で用いるジアルキルパーオキシジカーボネートの抽出用の水に不溶性の溶媒の性質は、特に重要ではない。水に不溶性の溶媒とは、室温、大気圧で、水に不溶で、さらには、この状態で、水に対する溶解度が、0.5g/l未満、さらに好ましくは、0.3g/l未満であるものを意味する。
溶媒は、C4〜C8のアルカンジカルボン酸とC6〜C10のアルカノールから誘導されるジアルキルアルカンジカルボキシレートから選択することが特に好ましい。アジピン酸とC6〜C10のアルカノールから誘導されるヘキサンジカルボキシレート(アジピン酸エステル)から選択すると、さらに好ましい。アジピン酸ジエチルヘキシル(大気圧での沸点:214℃、室温での水に対する溶解度:0.2g/l未満、密度:0.922)によれば、最高の結果が得られる。
ジアルキルパーオキシジカーボネート溶液製造の第2段階、すなわち、第1段階で製造されたジアルキルパーオキシジカーボネートの抽出による分離は、公知の適当な方法で行うことができる。
ジアルキルパーオキシジカーボネートの製造反応が終了した後に、抽出溶媒を水性反応混合物に添加すると、その相は沈降し、水性反応相から上澄み有機相が分離し、純粋なパーオキシジカーボネート溶液が得られる。
特に好ましく有利な実施態様によれば、製造方法の第1段階では、水相の密度を高くするための無機塩として塩化ナトリウムを用い、第2段階では、C6〜C10-アルカノールのアジピン酸エステル、特に、アジピン酸ジエチルヘキシルを、ジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を生成するための抽出溶媒として用いて、短いアルキル鎖(ジエチル、ジプロピル、又はジイソプロピルのような)を有するジアルキルパーオキシジカーボネートを15〜40重量%含有するジアルキルパーオキシジカーボネート溶液が製造される。
本発明のジアルキルパーオキシジカーボネート溶液の製造方法によれば、純度が高く、貯蔵安定性のある溶液を高収率で得ることができる。この溶液は、危険を伴わずに輸送することができ、導管に析出するという問題も生じない。
以下の実施例で、本発明について説明する。本実施例は、アジピン酸ジエチルヘキシル中に約30重量%のでジエチルパーオキシジカーボネートを含有する溶液を用いた塩化ビニルの水性縣濁単独重合に関するものである。パーオキシジカーボネートは、アジピン酸ジエチルヘキシルで抽出する前に、エチルクロロホルメート、過酸化水素及び水酸化ナトリウムから製造する。
10℃以下に冷却した1000-Lの攪拌器に、予め5℃に冷却した180g/kgの塩化ナトリウムを含む水溶液を622 kg(すなわち、510kgの脱塩水と112kgのNaCl)を充填する。そして、その水溶液を攪拌しながら、20.4kgのクロロギ酸エチルと350g/kgの過酸化水素を含有する8.5kgの水溶液を、順次水溶液に加え、最後に、非常にゆっくりと、200g/kgの水酸化ナトリウムを含む36.1 Lの水溶液を添加して、温度を10℃以下に保持する。水性反応混合物の密度が1.11に増大する。NaOH溶液を添加し終えて10分後に、34.5kgのアジピン酸ジエチルヘキシルを予め5℃に冷却してから加える。反応混合物を5℃に冷却しながら、15分間攪拌後、攪拌を停止する。すると、水相(密度の高い相)が沈降して分離するので、有機相を回収する。このように生成されたアジピン酸ジエチルヘキシル中のジエチルパーオキシジカーボネートを次の処理で使用するために5℃で保存しておく。そのジエチルパーオキシジカーボネートの含量(分析で決定した)は、287g/kgである。
攪拌機とジャケットを備えた、容量3.9m3の反応器に、室温で攪拌しながら(50rev/min)、1869kgの脱塩水と、0.801kgのポリビニルアルコール(加水分解度72モル%)と、0.534kgのポリビニルアルコール(加水分解度55モル%)、及び上述のように調製した開始剤溶液(すなわち、0.515kgのジエチルパーオキシジカーボネート)1.793kgを加える。反応器を密封し、攪拌を停止して、減圧(絶対圧60mmHg)の状態で5分間保持する。攪拌を再び開始し(110 rev/min)、1335kgの塩化ビニルを仕込む。その混合物を53℃に加熱し、ジャケットを通して冷却水を循環させる。重合混合物が、53℃に達した時を重合開始時(タイム=t0)とする。6時間後に(t0から計って)、反応器内の圧力は、1.5kg/cm2まで下がる。順次、0.35kgのアンモニアを添加し、未反応の塩化ビニルを脱気し、冷却して重合を終了させる。生成したポリ塩化ビニルを、常法で水性縣濁液から分離する。K値が71.0(濃度が5g/lのシクロヘキサノン中20℃で)のPVCが、1118kg得られる。
生成したPVCを評価した物性:K値(濃度が5g/lのシクロヘキサノン中20℃で)、見掛け密度(AD)、空隙率(アジピン酸ジエチルヘキシルの吸収%)、粒度分布、さらに、このPVC100重量部とフタル酸ジエチルヘキシル40重量部の混合物を原料として押出し加工したフィルムで評価した1dm2の面積に存在する点の数として表したフィッシュアイの数;を下表にまとめて示した。
比較のために、室温で攪拌しながら、0.734kgのクロロギ酸エチルと0.109kgの過酸化水素を全重量の水(0.284kgの水酸化ナトリウムを添加してアルカリ性にした)と、重合に使用する全重量のポリビニルアルコール(例1参照:すなわち1860kgの水と全部で1.335kgのポリビニルアルコール)の存在下で、反応させることで、最初に、ジエチルパーオキシジカーボネートを反応器の中で合成することを除いて、実施例1と同様の条件で、塩化ビニルの重合を再度行った。開始剤の「反応器内で」の合成終了後に、反応器を密封し、攪拌を停止して、反応器を5分間減圧(絶対圧60mmHg)状態で放置後、攪拌しながら(110rev/min)、1335kgの塩化ビニルを仕込んだ。次いで、加熱し、実施例1と同様に重合を行った。5時間51分後に、反応器内の圧力が1.5kg/cm2まで下がり、重合が終了した。K値(同じ条件で)が 71.3のPVCが、1092kg得られた。
比較例2によって得られたPVCの物性も下表にまとめて示した。
1.ジアルキルパーオキシジカーボネート(該アルキル基は2又は3個の炭素原子を有する)を用いた塩化ビニルの水性縣濁重合方法であって、このジアルキルパーオキシジカーボネートを、実質的にジアルキルパーオキシジカーボネートと、液体で水に不溶性のジアルキルアルカンジカルボキシレートからなる溶液の状態で用いることを特徴とする塩化ビニルの水性縣濁重合方法。
2.塩化ビニルと共に使用されるコモノマーの量が、全モノマー混合物の50モル%以下であることを特徴とする上記1に記載の塩化ビニルの水性縣濁重合方法。
3.ジアルキルアルカンジカルボキシレートがC4〜C10のアルカンジカルボン酸とC2〜C12のアルカノールとから誘導される液体エステルから選択されたものであることを特徴とする上記1に記載の塩化ビニルの水性縣濁重合方法。
4.ジアルキルアルカンジカルボキシレートが、アジピン酸とC6〜C10のアルカノールから誘導されるヘキサンジカルボキシレート(アジピン酸エステル)から選択されたものであることを特徴とする上記3に記載の塩化ビニルの水性縣濁重合方法。
5.ジアルキルパーオキシジカーボネート溶液の濃度が、約15〜40重量%であることを特徴とする上記1に記載の塩化ビニルの水性縣濁重合方法。
6.ジエチル又はジイソプロピルパーオキシジカーボネートを、アジピン酸とC6〜C10のアルカノールから誘導されるヘキサンジカルボキシレート(アジピン酸エステル)中で溶液状態で用いることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の塩化ビニルの水性縣濁重合方法。
7.ジアルキルパーオキシジカーボネート(該アルキル基は2又は3個の炭素原子を有する)のみを使用して、重合を開始させることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の塩化ビニルの水性縣濁重合方法。
Claims (7)
- ジアルキルパーオキシジカーボネート(該アルキル基は2又は3個の炭素原子を有する)溶液の製造方法であって、第一段階で、水中で、水性反応混合物の密度を高めるのに十分な量で添加された無機塩の存在下で、適量のアルキルハロホルメートを無機過酸化物と反応させて、ジアルキルパーオキシジカーボネート(該アルキル基は2又は3個の炭素原子を有する)を製造し、第二段階で、この製造されたジアルキルパーオキシジカーボネートを水に不溶性の溶媒によって抽出して、この溶媒中にジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を生成することを特徴とするジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を製造する方法。
- 水性反応媒体の密度が、少なくとも1.05の値になるのに十分な量の無機塩を使用することを特徴とする請求項1に記載のジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を製造する方法。
- 無機塩が、塩化ナトリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を製造する方法。
- 水に不溶性の溶媒が、ポリ塩化ビニルに通常使用されている可塑剤から選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載のジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を製造する方法。
- 水に不溶性の溶媒が、C4〜C8のアルカンジカルボン酸とC6〜C10のアルカノールから誘導されるジアルキルアルカンジカルボキシレートから選択されたものであることを特徴とする請求項4に記載のジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を製造する方法。
- 水に不溶性の溶媒が、アジピン酸とC6〜C10のアルカノールから誘導されるヘキサンジカルボキシレート(アジピン酸エステル)から選択されたものであることを特徴とする請求項5に記載のジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を製造する方法。
- ジアルキルパーオキシジカーボネート(該アルキル基は2又は3個の炭素原子を有する)溶液の製造方法であって、第一段階で、水中で、水性反応混合物の密度を高めるのに十分な量の無機塩の存在下で、適量のアルキルハロホルメートを無機過酸化物と反応させて、ジアルキルパーオキシジカーボネート(該アルキル基は2又は3個の炭素原子を有する)を製造し、第二段階で、この製造されたジアルキルパーオキシジカーボネートを、ポリ塩化ビニルに通常使用されている可塑剤から選択された水に不溶性の有機化合物から選択された水に不溶性の溶媒によって抽出して、この溶媒中にジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を生成することを特徴とするジアルキルパーオキシジカーボネート溶液を製造する方法。
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