JP2007106953A - ドリップ防止用粉体及び難燃樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】数平均分子量が100万〜500万のポリテトラフルオロエチレン(A)30〜85質量%及びビニル系重合体(B)15〜70質量%からなるドリップ防止用粉体。熱可塑性樹脂100質量部に対するポリテトラフルオロエチレン(A)量が0.05〜2.0質量部となるよう前記ドリップ防止用粉体が配合されてなる難燃樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
熱可塑性樹脂のドリップ防止等のために改質剤として用いられるポリテトラフルオロエチレンはフィブリル形成能を有するために、ブロッキング現象やブリッジング現象が生じ易い。この粉体特性を改良するための方法がこれまで種々検討されている。
例えば、ポリテトラフルオロエチレン存在下で単量体を重合することにより、ポリテトラフルオロエチレンを完全又は部分的にカプセル封じする方法がある(特許文献1)。しかしながら、ポリテトラフルオロエチレンの分子量に関する記載はなく、表面外観に関しても明記されていない。
また、特許文献2には、難燃性ポリエステル樹脂に、非フィブリル性ポリテトラフルオロエチレンを添加する方法が記載されているが、これはドリップ防止用として用いられているものではなく、また、表面外観に関する記載もない。
また、特許文献3には、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる構成単位を70質量%以上含む(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを用いたポリテトラフルオロエチレン含有改質剤が開示されている。しかしながら、引用文献3記載の改質剤においては、熱可塑性樹脂への改質剤の添加量によって十分なドリップ防止性能が得られないことがあるとともに、得られる成形品の表面外観も不十分である。
また、これら技術は上記課題を解決するものの、押出混練条件、成形条件によっては、黄着色を発生する恐れや、ポリテトラフルオロエチレン由来の白点が発生することがあり、更なる改良が望まれていた。
即ち、本発明は、数平均分子量が100万〜500万のポリテトラフルオロエチレン(A)30〜85質量%及びビニル系重合体(B)15〜70質量%からなるドリップ防止用粉体にある。
また、本発明は、前記のドリップ防止用粉体と熱可塑性樹脂とからなり、熱可塑性樹脂100質量部に対するポリテトラフルオロエチレン(A)量が、0.05〜2.0質量部となるよう前記ドリップ防止剤粉体が配合されてなる難燃樹脂組成物にある。
ポリテトラフルオロエチレン(A)の分子量は、数平均分子量が100万〜500万であり、好ましくは100万〜300万である。500万以下であれば熱可塑性樹脂中での分散性に優れており、100万以上であれば十分なドリップ防止性能を得ることが可能である。
Mn=2.1×1010△Hc−5.16
(△Hc:DSC結晶化熱(cal/g))
尚、測定試料がポリテトラフルオロエチレン粒子分散液である場合には、120℃で分散液を乾燥させた後に測定する。
ビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、その他の共重合可能な単量体が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルキシレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、モノブロムスチレン、フルオロスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの中でスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
シアノ化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらの中で、アクリロニトリルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸エステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらの中で、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートが好ましい。
その他の共重合可能な単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和酸;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物;グリシジルメタクリレート等のエポキシ化合物等が挙げられる。尚、マレイミド化合物には、例えば、無水マレイン酸を共重合させ、これをアニリン等でイミド化したものも含まれる。
以上のビニル系単量体は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステルである。好ましい例としては、スチレンとブチルアクリレートの組み合わせ、より好ましい例としては、メチルメタクリレートとブチルアクリレートの組み合わせが挙げられる。
本発明のドリップ防止用粉体の粒子径については、質量平均粒子径で50〜1000μmのものが好ましく、さらに好ましくは100〜800μm、特に好ましくは200〜600μmである。質量平均粒子径が上記の範囲とすることにより、粉体特性に優れたドリップ防止用粉体とすることができる。
ここで、ドリップ防止用粉体の質量平均粒子径は、ドリップ防止用粉体20gを5分間振とうさせて分級し、その平均粒子径を標準ふるいにより求めた値である。
ビニル系単量体の乳化重合は、具体的には、ビニル系単量体に重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等を加えたものを攪拌しながら、通常、5〜98℃に加熱して行われる。
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機ハイドロパーオキサイド類と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤、又は過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物が使用される。
連鎖移動剤としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のメルカプタン類;クロロホルム、ブロモホルム、四塩化炭素、四臭化炭素等の炭化水素類;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン類;α−メチルスチレンダイマー、9,10−ジヒドロアントラセン、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、2,5−ジヒドロフラン等が挙げられる。
乳化剤としては、一般に用いられる乳化剤が使用でき、ロジン酸、オレイン酸、ラウリル酸、ステアリン酸、アルケニルコハク酸等の脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸等のアニオン性界面活性剤が挙げられる。共凝固性の観点から、脂肪酸の塩が好ましい。
乳化重合法としては、単量体の一括添加重合、単量体の連続添加重合、多段階重合等の公知の乳化重合法を採用することができ、乳化剤も単量体と同様にして添加することができる。
前記ポリテトラフルオロエチレン(A)量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。ポリテトラフルオロエチレン(A)の量が0.05質量部以上の場合には十分なドリップ防止性能を発揮できる。また、ポリテトラフルオロエチレン(A)の含有量の上限は2.0質量部以下であり、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
熱可塑性樹脂とドリップ防止用粉体を配合する方法は特に限定されるものではないが、溶融押出混練による方法が好ましい。例えば、同方向二軸押出機、異方向二軸押出機、単軸押出機等が挙げられ、特に良好な分散性を発揮する上で同方向二軸押出機が好ましい。
難燃樹脂組成物は、例えばPC、ABS、PBT等をマトリクス樹脂とするものが挙げられ、これらマトリクス樹脂に目的に応じて、難燃剤、可塑剤、安定剤、充填剤、耐衝撃改質剤、滑剤、加工助剤、発泡剤、顔料、防曇剤、抗菌剤、帯電防止剤、導電性付与剤、界面活性剤、結晶核剤、耐熱向上剤等の各種添加剤を添加することによって得られる。
実施例中、部及び%は特に断らない限り質量部及び質量%を示す。また、実施例中の各種の測定は下記の方法に拠った。
(1)粉体の流動性測定
JIS K6721に準拠した嵩比重計(筒井理化学器械(株)製)を用いて測定を行った。この測定においては、嵩比重計の漏斗に粉体を充填したのち、漏斗から粉体を10秒間流して、流れ出た粉体を計量して、粉体の流動性(g/10sec)の指標とした。10秒間に流れ出る粉体の量が多いほど、粉体の流動性が良好であることを意味している。実作業においても、流動性の良好な粉体は取扱性も良好であった。
(2)粉体の貯蔵安定性測定
アクリル樹脂製の円筒状容器(内径55mm、高さ50mm)に粉体20gを充填して、5Kgの重りを容器上に載せた状態で、オーブン内を50℃としたギヤオーブン(タバイ(株)製、GHPS−222)に入れて6時間放置し、その後取り出して室温にて冷却して、円筒状ブロック(直径55mm)を作製した。この粉体のブロックを目開きが12メッシュの篩に載せて、振動ふるい機(筒井理化学器械(株)製、ミクロ形電磁振動ふるい機M−2)で破砕し、破砕量が60%に到達した時点の時間を粉体の貯蔵安定性とした。この破砕量が60%に到達する時間が短いほど、実際に粉体を貯蔵しておいた際に粉体が固まりにくく、固まった場合でも容易に粉体の塊を崩すことができることを意味する。
(3)ドリップ防止性試験
UL94規格に従い、垂直型燃焼試験を実施した。試験片は1.6mm厚のものを用いた。
(4)成形物の表面外観
<分散性>射出成形した試験片中の凝集物の有無を目視にて観察し、以下の基準にて判定した。
◎:試片中に凝集物無し。
○:試片中に0.5mm以下の凝集物有り。
×:試片中に0.5mm超の凝集物有り。
<黄着色>目視で観察し、以下の基準にて判定した。
○:ドリップ防止用粉体を添加していないものと同等で、ドリップ防止剤由来の着色なし。
△:ドリップ防止用粉体を添加していないものに比べてやや黄着色あり。
蒸留水145部、乳化剤としてアルケニルコハク酸ジカリウム(花王(株)製、「ラテムルASK」)1.0部、メチルメタクリレート40部、ブチルアクリレート10部を、攪拌翼、コンデンサー、熱電対、窒素導入口を備えた5Lのセパラブルフラスコに仕込み、窒素気流下で60℃に昇温した。次いで、過硫酸カリウム0.1部を蒸留水5部に溶解したものを加え、ラジカル重合を開始した。重合発熱が終了した後、ジャケット温度を60℃で1時間保持し、有機重合体ラテックスを得た。
このラテックスに、ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」と略す)粒子分散液である旭フロロポリマーズ社製「フルオンXAD911」(以下「PTFE粒子分散液1」と略す)(固形分濃度63.0%、PTFEに対して5%の界面活性剤を含む、分子量280万)83.3部(PTFE分として50部)及び蒸留水16.7部を加え、ポリマーラテックスを得た。
次いで、1%酢酸カルシウム水溶液400部を20Lの凝固容器に添加した後、80℃に加熱攪拌し、温度を保ちながらポリマーラテックス300部(ポリマー分として100部)を徐々に滴下して、固形物を凝固、析出させスラリーとした後、5分間攪拌を続けた。その後、スラリーの温度を95℃まで昇温して、固化を行った。
最後に、この析出物を分離、濾過、乾燥して、粉体(X−1)を得た。粉体の流動性及び貯蔵安定性を評価し、表1の結果を得た。
蒸留水85部、乳化剤としてアルケニルコハク酸ジカリウム(花王(株)製、「ラテムルASK」)0.6部、メチルメタクリレート24部、ブチルアクリレート6部を、実施例1と同様のセパラブルフラスコに仕込み、窒素気流下で60℃に昇温した。次いで、過硫酸カリウム0.06部を蒸留水5部に溶解したものを加え、ラジカル重合を開始した。重合発熱が終了した後、ジャケット温度を60℃で1時間保持し、有機重合体ラテックスを得た。
このラテックスに、PTFE粒子分散液1を116.7部(PTFE分として70部)及び蒸留水63.3部を加え、ポリマーラテックスを得た。
次いで実施例1と同様にしてスラリー化、固化し、粉体(X−2)を得た。粉体の流動性及び貯蔵安定性を評価し、表1の結果を得た。
PTFE粒子分散液1を83.3部(PTFE分として50部)、蒸留水161.7部、乳化剤としてアルケニルコハク酸ジカリウム(花王(株)製、「ラテムルASK」)1.0部、メチルメタクリレート40部、ブチルアクリレート10部を、実施例1と同様のセパラブルフラスコに仕込み、窒素気流下で60℃に昇温した。次いで、過硫酸カリウム0.1部を蒸留水5部に溶解したものを加え、ラジカル重合を開始した。重合発熱が終了した後、系内の温度を60℃で1時間保持し、ポリマーラテックスを得た。
次いで実施例1と同様にしてスラリー化、固化し、粉体(X−3)を得た。粉体の流動性及び貯蔵安定性を評価し、表1の結果を得た。
ビニル系単量体として、メチルメタクリレート40部、ブチルアクリレート10部を使用する代わりに、スチレン40部、アクリロニトリル10部を使用する以外は実施例3と同様にして粉体(X−4)を得た。粉体の流動性及び貯蔵安定性を評価し、表1の結果を得た。
PTFE粒子分散液1の代わりに、PTFE粒子分散液である旭フロロポリマーズ社製「フルオンXAD938」(以下「PTFE粒子分散液2」と略す)(固形分濃度63.0%、PTFEに対して5%の界面活性剤を含む、分子量1500万)を用いる以外はそれぞれ実施例1〜4(粉体(X−1〜X−4))と同様に行い、対応する粉体(Y−1〜Y−4)を得た。
[比較例5]
PTFE(100%)粉体(旭硝子(株)製 フルオンPTFE CD−1)について、流動性及び貯蔵安定性を評価し、表1の結果を得た。
粉体(X−1)〜(X−4)、粉体(Y−1)〜(Y−4)、及びPTFE(100%)粉体を熱可塑性樹脂のドリップ防止用粉体剤として用い、表2に示す各成分を各割合(質量比)で混合し、シリンダー温度260℃に設定した同方向二軸押出機(TEX−30α、JSW製)で賦形し、ペレットを製造した。次いで、このペレットを用いて、シリンダー温度260℃、金型温度60℃に設定した射出成形機(SAV−60、山城精機製作所製)により射出成形を行って、難燃性試験片を得た。ドリップ防止性能と表面外観の評価結果を表2に示す。
また、ドリップ防止用粉体以外の成分としては、下記のものを用いた。
「PC」:ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名;ユーピロンS−2000F
「グラフト共重合体」:ブチルアクリレート−ブタジエンのゴム重合体にアクリロニトリル/スチレンをグラフト重合したグラフト共重合体、三菱レイヨン(株)製、商品名;MUX−30
「ビニル共重合体」:アクリロニトリル−スチレン共重合体、三菱レイヨン(株)製、商品名;AP−20
「難燃剤」:トリフェニルフォスフェート、大八化学工業(株)製、商品名;TPP
Claims (2)
- 数平均分子量が100万〜500万のポリテトラフルオロエチレン(A)30〜85質量%及びビニル系重合体(B)15〜70質量%からなるドリップ防止用粉体。
- 請求項1記載のドリップ防止用粉体と熱可塑性樹脂とからなり、熱可塑性樹脂100質量部に対するポリテトラフルオロエチレン(A)量が0.05〜2.0質量部となるよう前記ドリップ防止用粉体が配合されてなる難燃樹脂組成物。
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