JP2007063510A - 湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明が解決しようとする課題は、低温屈曲性及び柔軟性に非常に優れた硬化物を形成することの可能な湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物を提供することである。
【解決手段】
本発明は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有してなり、前記ポリオール(A)が、ビスフェノールAにアルキレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールとポリカルボン酸とを縮合反応させて得られるポリエステルポリオール(a−1)、及びポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)を含むことを特徴とする湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物に関するものである。

Description

本発明は、柔軟な風合い、接着性、耐久性、特に耐加水分解性及び耐熱性等に優れることから、接着剤等の様々な用途に適用可能な湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物に関するものである。
従来から、人工皮革や合成皮革は、靴や衣料、鞄、家具などの多様な用途に用いられている。人工皮革等は、一般的に表皮層、接着剤層及び繊維質基材層を有する積層体であり、近年は、人工皮革等の柔軟性や風合いを向上させることを目的として、さらに多孔質層を有する人工皮革等が、各種用途で使用されている。
前記人工皮革等の製造方法としては、例えば、皮革様の凹凸模様を有する離型紙上に、着色されたポリウレタン樹脂の有機溶剤溶液を塗布し、該有機溶剤を乾燥して得られた表皮に、ポリウレタン樹脂からなる接着剤を塗布し、該塗布面に、ポリウレタン樹脂等からなる多孔質層を有する繊維質基材を貼り合わせる方法が知られている。
前記したように、人工皮革等の表皮層や接着剤としては、従来より主として有機溶剤タイプのポリウレタン樹脂が使用されているため、製造工程途中において、乾燥や抽出の方法で有機溶剤を除去する必要があり、人体への悪影響、大気水質に対する環境汚染、有機溶剤を蒸発させるための多大なエネルギー負荷と製造コストなど種々の問題を有していた。
かかる問題に対応するために、従来からの有機溶剤型ポリウレタン樹脂に代えて、水性ポリウレタン樹脂を使用することが検討されてきたが、水性ポリウレタン樹脂を用いて得られた人工皮革等の積層体は、耐水性や耐久性などに劣り実用性に乏しいものであった。
また、有機溶剤型ポリウレタン樹脂に代えて無溶剤型ポリウレタン樹脂を用いることが検討されており、例えばポリオール成分としてポリテトラメチレンオキシグリコールを必須成分とするポリウレタンホットメルトプレポリマーを含有する合成皮革用無溶剤型湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂接着剤によれば、優れた接着性、耐久性、及び屈曲性、特に低温屈曲性を有する接着層を形成可能であることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。なお、低温屈曲性とは、目安として概ね−10〜23℃程度の温度範囲で屈曲試験をした際に、接着層のヒビ割れ等を引き起こしにくい性質であり、主に靴などの皮革製品を製造する際に使用可能な接着剤に求められている性質である。
しかし、合成皮革等に使用可能な接着剤には、前記した低温屈曲性の他に柔軟な風合い、即ち柔軟性も強く求められているにもかかわらず、前記した合成皮革用無溶剤型湿気硬化性ホットメルト樹脂接着剤では、実用レベルの柔軟性を有する接着層を形成することは困難であった。
また、合成皮革等としては、柔軟な風合いを付与することを目的として、前記したような多孔質層を有するものが知られており、かかる多孔質層を形成する樹脂としても、無溶剤型の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を使用することが検討されている(例えば、特許文献2参照。)。前記多孔質層には、前記接着剤層と同様に低温屈曲性や柔軟性が求められているが、前記した樹脂組成物では、かかる要求性能、特に柔軟性を満足しうる多孔質層を形成することは困難であった。
特開2003−049147号公報 特開2002−348347号公報
本発明が解決しようとする課題は、低温屈曲性及び柔軟性に非常に優れた硬化物を形成することの可能な湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物を提供することである。
本発明者等は、第一に、ポリオールの相溶性を改善することにより、硬化物の柔軟性を改善できるのではないかと考え、前記ポリオールとしてビスフェノールAにプロピレンオキサイドを付加して得られたポリエーテルポリオールを使用して得られた湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物を検討したが、該組成物では、十分なレベルの柔軟性及び低温屈曲性を有する硬化物を形成することはできず、また耐熱性の著しい低下を引き起こす場合があった。
そこで、得られた硬化物の柔軟性を低下させる一つの要因としては、使用する湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物が、十分なレベルの凝集力を発現する前に不織布などの繊維質基材中へ浸透してしまうために、該組成物由来の柔軟性を基材表面に反映することができないのではないかと考え、該組成物の初期凝集力を向上させることによって、柔軟性も改善することを検討した。
具体的には、前記ビスフェノールAにプロピレンオキサイドを付加して得られたポリエーテルポリオールとジカルボン酸とを縮合反応して得られたポリエステルポリオールを、ポリイソシアネートと反応させて得られたウレタンプレポリマーを含有してなる湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物を検討した。該組成物によれば、得られる硬化物の柔軟性については多少の改善が見られたが、低温屈曲性については、実用上十分なレベルにまで改善することはできなかった。
そこで、低温屈曲性を向上させることが可能なポリオールとして従来から知られているポリテトラメチレンオキシグリコール、及び、前記ビスフェノールAにプロピレンオキサイドを付加して得られたポリエーテルポリオールとポリカルボン酸とを縮合反応して得られたポリエステルポリオールを必須成分として含有するポリオールを、ポリイソシアネートと反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有してなる湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物を検討したところ、該組成物が、基材に対する接着性や耐久性、耐熱性を損なうことなく低温屈曲性を改善でき、更には、驚くべきことに実用上十分なレベルの柔軟性、即ち柔軟な風合いを有する硬化物を形成可能であることを見出した。つまり、ポリテトラメチレンオキシグリコールと、前記ビスフェノールAにプロピレンオキサイドを付加して得られたポリエーテルポリオールとポリカルボン酸とを縮合反応して得られたポリエステルポリオールとを、それぞれ別々に単独で使用しても、十分なレベルにまで柔軟性を改善することができなかったにもかかわらず、これらを併用して使用することによって、従来にないレベルにまで柔軟性を向上させることができることは、これまで見出されていないことである。
即ち、本発明は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有してなり、前記ポリオール(A)が、ビスフェノールAにアルキレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールとポリカルボン酸とを縮合反応させて得られるポリエステルポリオール(a−1)、及びポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)を含むことを特徴とする湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物に関するものである。
また、本発明は、前記湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を用いて、繊維質基材と、フィルム又は繊維質基材とを貼り合わせて得られる積層体シートに関するものである。
本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物によれば、耐久性(例えば、耐加水分解性及び耐熱性)や接着性などを損なうことなく、低温屈曲性や柔軟性に非常に優れた硬化物を形成することが可能であることから、柔軟な風合いが求められている合成皮革や人工皮革等の接着層や多孔質層をはじめ、繊維質基材同士及び繊維質基材とフィルム(例えば、透湿性を有するフィルム)を貼り合わせた透湿性を有する衣料(例えば、スポーツウエア)の接着層などに使用することが可能な、実用上、極めて有用なものである。
本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、後述する特定のポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを主成分として含有し、その他必要に応じて各種添加剤等を含有してなるものである。
本発明で使用するウレタンプレポリマーは、湿気架橋反応性とホットメルト性の2つの特性を共に有する。前記ウレタンプレポリマーが有する湿気架橋反応性は、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と湿気(水)が反応して開始する架橋反応に由来するものであり、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基に起因する性質である。
一方、前記ウレタンプレポリマーが有するホットメルト性は、常温では固体あるいは粘稠な性状であるが、加熱すると溶融し、流動状態あるいは液状となる性質もしくは物質の総称である。ホットメルトは、無溶剤型であるとともに、常温では固形あるいは粘稠な性状であるが、熱を加えると溶融して塗布が可能な状態となり、冷却により再度凝集力が出る性状を有する。
本発明で使用するポリオール(A)は、ビスフェノールAにアルキレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールとポリカルボン酸とを縮合反応させて得られるポリエステルポリオール(a−1)、及びポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)を必須成分として含有してなり、必要に応じてその他のポリオールを、本発明による効果を阻害しない範囲内で含有するものである。
はじめに、前記ポリエステルポリオール(a−1)について説明する。
ポリエステルポリオール(a−1)は、ビスフェノールAにアルキレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールとポリカルボン酸とを縮合反応させて得られる。
前記ポリエステルポリオール(a−1)は、後述するポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)やその他のポリオールと比較的相溶しやすいため、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物が硬化した際の透明性や接着性を阻害することなく、非常に柔軟な風合いを付与することができる。
前記ポリエステルポリオール(a−1)を製造する際に使用するアルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を使用することができ、なかでもプロピレンオキサイドを使用することが好ましい。
ビスフェノールAに前記アルキレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールは、例えば前記ビスフェノールAを開始剤として、前記アルキレンオキサイドを周知慣用の方法で付加させることにより製造することができる。
前記アルキレンオキサイドは、前記ビスフェノールAに対して1〜10モル付加することが好ましく、2〜8モル付加することがより好ましい。前記範囲のアルキレンオキサイドをビスフェノールAに付加したポリエーテルポリオールを使用することによって、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物の基材に対する適度な初期凝集力を維持でき、優れた柔軟性を発現することができる。
また、前記ポリカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸などを、後述するその他のポリオールとの相溶性に応じて、適宜選択して使用することができる。前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を使用することができ、該組成物の初期凝集力を向上させるためには、炭素数が6以上のジカルボン酸を使用するのが好ましく、具体的にはセバシン酸、ドデカンジカルボン酸を使用することがより好ましい。
また、前記芳香族ジカルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を使用することができる。また、前記脂環族ジカルボン酸としては、ヘキサヒドロイソフタル酸を使用できる。
特に、前記ポリエステルポリオール(a−1)としては、前記ビスフェノールAに、プロピレンオキサイドを4〜8モル付加して得られたポリエーテルポリオールと、前記脂肪族ジカルボン酸、及び前記脂環族ジカルボン酸とを縮合反応させて得られるものを使用することが、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物の各ポリオール成分との相溶性を向上でき、かつ基材に対する適度な初期凝集力を維持でき、優れた柔軟性、耐久性を発現することができるためより好ましい。
前記ポリエステルポリオール(a−1)としては、500〜10000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、特に1000〜7000の範囲を有するものを使用することが好ましい。前記範囲内の数平均分子量を有するポリエステルポリオール(a−1)を使用することにより、優れた柔軟性を有する硬化物を形成可能な湿気硬化性ポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
また、前記ポリエステルポリオール(a−1)としては、−50〜40℃の範囲のガラス転移温度を有するものを使用することが、得られる硬化物の良好な屈曲性、特に低温屈曲性を維持できることから好ましい。該ガラス転移温度は、ポリエステルポリオール(a−1)の組成を適宜変更することにより調整することが可能であり、例えば前記ビスフェノールAへのアルキレンオキサイド付加量を調整することにより、前記範囲のガラス転移温度に調整することが可能である。尚、ここでいうポリオールのガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量分析装置)を用いて、窒素雰囲気下で−80℃から、昇温速度5℃/分で測定した吸熱ピーク温度のことを表す。
次に、本発明で使用するポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)について説明する。
ポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)は、柔軟な風合いを有し、低温時と常温時の風合いの変化が少なく、且つ寒冷地でのひび割れが発生しない屈曲性、すなわち低温屈曲性に優れた硬化物を形成可能な湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得るうえで使用する。
前記ポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)としては、650〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
本発明で使用するポリオール(A)としては、前記したポリエステルポリオール(a−1)及びポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)以外に、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲でその他のポリオールを併用することができる。
前記その他のポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、シリコーン変性ポリオール等を使用することができる。
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールとポリカルボン酸とを縮合反応させて得られるものを使用することができる。
前記低分子量ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールなどを使用することができる。
また、前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸を使用することができる。また、前記ポリカルボン酸としては、前記低分子量ポリオールを開始剤としてγ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどを開環重合させたγ−ブチロラクトン類、ε−カプロラクトン類を使用することができる。
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば前記低分子量ポリオールと、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネート、及びアルキレンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種とを縮合反応させることにより得られるポリ(アルキレンカーボネート)ポリオールなどを使用することができる。
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の低分子量ジオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを単独又は2種以上開環重合して得られたものを使用することができる。
前記したその他のポリオールとしては、軟化温度(乾球式)が40〜130℃である常温固体のポリオール(a−3)を使用することが好ましい。上記ポリオール(a−3)を併用することにより、該組成物の初期凝集力が増大し、繊維質基材への浸透が適度に抑制されるため、良好な接着性及び柔軟性を発現することが可能となる。なお、本発明で言う軟化温度は、リングアンドボールメソッド(ring and ball method)を用いて昇温速度5℃/分にて測定した乾球式軟化点を表す。
また、前記その他のポリオールとしては、前記低分子量ポリオールのうち、炭素原子数が偶数個の低分子量ポリオールと、前記ポリカルボン酸のうち、炭素原子数が偶数個のポリカルボン酸とを重縮合させて得られるポリエステルポリオールを使用することが、種々の基材に対する接着性に優れているためより好ましい。また、前記低分子量ポリオールのうち、炭素原子数が偶数個の低分子量ポリオールを出発物質として得られるポリカーボネートポリオールを使用することが、耐久性、特に、耐加水分解性、耐熱性に優れた性質が求められている、例えば自動車のカーシートや家具等の接着剤に使用する場合により好ましい。
前記ポリエステルポリオール(a−1)は、本発明で使用するポリオール(A)の全量に対して10〜80質量%の範囲で使用することが好ましく、30〜70質量%の範囲で使用することがより好ましい。また、前記ポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)は、前記ポリオール(A)の全量に対して20〜90質量%の範囲で使用することが好ましく、30〜80質量%の範囲で使用することがより好ましい。前記範囲のポリエステルポリオール(a−1)及びポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)を使用することにより、非常に柔軟な風合いを有し、低温時と常温時の風合いの変化が少なく、且つ低温屈曲性に優れた硬化物を形成可能な湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物を得ることができる。
また、前記したように、特に優れた低温屈曲性が求められるスポーツシューズ等の用途に、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物を接着剤等として使用する場合、前記ポリエステルポリオール(a−1)は、本発明で使用するポリオール(A)の全量に対して20〜60質量%の範囲で使用することが好ましく、また、前記ポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)を、30〜80質量%の範囲で使用することが好ましい。前記範囲のポリエステルポリオール(a−1)及びポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)を使用することにより、該組成物が湿気硬化反応して得られた硬化物のガラス転移温度を、使用するウレタンプレポリマーの組成によって異なるものの、概ね−50〜25℃の範囲内に調整することが可能である。
一般的に、特定のガラス転移温度を有する物質は、ガラス転移温度以下の環境下において分子運動が凍結されるため硬くて脆い傾向を示し、ガラス転移温度以上の環境下では活発な分子運度が起こり、ゴム状で強く曲げても折れにくい傾向を示す。本発明において、前記硬化物のガラス転移温度(Tg)が前記範囲であれば、柔軟な風合いを有し、低温時と常温時の風合いの変化が少なく、且つ寒冷地でのひび割れが発生しにくい、いわゆる屈曲性、特に低温屈曲性に優れた湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物を形成することができる。尚、ここでいうTgは、硬化フィルムを動的粘弾性測定装置(レオメトリック社製)により、周波数1Hz、5℃/分の昇温速度にて測定して得られた損失正接(tanδ)のピーク温度(℃)を表す。
また、前記常温固体のポリオール(a−3)は、前記ポリオール(A)の全量に対して10〜50質量%の範囲で使用することが好ましい。前記範囲の常温固体のポリオール(a−3)を使用することにより、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の繊維質基材への適度な浸透性を保持し、柔軟な風合いを維持し、かつ繊維質基材に対する優れた接着性を発現することが可能である。
また、前記ポリオール(A)と反応させることが可能なポリイソシアネート(B)としては、特に限定するものではなく、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンイソシアネートなどの脂肪族又は脂環族ジイソシアネート等を使用することができ、特に、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の熱履歴による粘度安定性、初期凝集力を考慮すると、4,4’−フェニレンジイソシアネート、2,4’−フェニレンジイソシアネート、及び/または耐黄変色性を考慮するとキシリレンジイソシアネートを使用することがより好ましい。
本発明で使用するウレタンプレポリマーは、公知慣用の方法で製造することができる。例えば、反応容器中の前記ポリイソシアネート(B)に、水分を除去したポリオール(A)、すなわち前記ポリエステルポリオール(a−1)、ポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)、及び必要に応じてその他のポリオールを、それぞれ別々に滴下又はそれらの混合物を滴下した後に加熱し、ポリオール(A)の有する水酸基が実質的に無くなるまで反応させる方法によって製造することができる。前記ウレタンプレポリマーの製造は、通常、無溶剤で行うことができるが、有機溶剤中で反応させることによって製造してもよい。有機溶剤中で反応させる場合には、反応を阻害しない酢酸エチル、酢酸n−ブチル、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶剤を使用することができるが、反応の途中又は反応終了後に減圧加熱等の方法により有機溶剤を除去することが必要である。
前記ウレタンプレポリマーは、前記ポリオール(A)が有する水酸基1当量に対して前記ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基の当量割合が1.1〜5.0となる範囲で反応させることが好ましく、1.5〜3.0の範囲で反応させることがより好ましい。
前記ウレタンプレポリマーを製造する際には、必要に応じてウレタン化触媒などを使用することができる。ウレタン化触媒等は、前記反応の任意の段階で、適宜加えることができる。
前記ウレタン化触媒としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミンまたはモルホリン骨格を持つポリアミンなどの含窒素化合物;酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛またはオクチル酸錫、オクチル酸ビスマスなどの金属塩;ジブチル錫ジラウレートなどの有機金属化合物などを使用することができる。
また、本発明で使用するウレタンプレポリマーとしては、前記方法で得られた分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、前記イソシアネート基と反応し得る官能基と、加水分解性シリル基とを併有する化合物を反応させて得られる、加水分解性アルコキシシリル基及びイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを使用することができ、得られる硬化物の熱安定性、即ち熱履歴による溶融粘度の増加を低減する性質を向上させる観点から、前記末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、前記加水分解性アルコキシシリル基及びイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを併用することが好ましい。
また、前記アルコキシシリル基及びイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとしては、例えばイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、イソシアネート基と反応し得る官能基を1個以上有し、かつ加水分解性シリル基とを併有する化合物を反応させることによって、分子中に加水分解性シリル基を有するアルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーを使用することができる。
本発明で使用し得るイソシアネート基と反応し得る官能基と、加水分解性シリル基とを併有する化合物が有する、イソシアネート基と反応しうる官能基としては、例えばアミノ基、水酸基、及びSH基等があり、イソシアネート基との反応性に優れるアミノ基であることが好ましい。
また、加水分解性シリル基としては、例えば、ハロシリル基、アルコキシシリル基、アシロキシシリル基、フェノキシシリル基、イミノオキシシリル基及びアルケニルオキシシリル基などを使用することができ、具体的には下記一般式[1]で示されるものを使用することができる。
Figure 2007063510
(但し、一般式[1]中のR1は水素原子又はアルキル基、アリール基及びアラルキル基よりなる群から選ばれる一価の有機基を、R2はハロゲン原子又はアルコキシル基、アシロキシ基、フェノキシ基、イミノオキシ基及びアルケニルオキシ基を表す。また、nは0〜2の整数を表す。)
前記加水分解性シリル基のなかでも、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、(メチル)ジメトキシシリル基、(メチル)ジエトキシシリル基が、架橋反応を進行させ易いことから好ましい。
前記イソシアネート基と反応し得る官能基と、加水分解性シリル基とを併有する化合物としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ−(N,N−ジ−2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等を使用することができる。
前記方法で得られた本発明で使用するウレタンプレポリマーとしては、500〜30000の範囲の数平均分子量を有するものが好ましく、1000〜10000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。前記範囲内の数平均分子量を有するウレタンプレポリマーを使用することにより、加熱溶融状態での良好な作業安定性を維持することができる。なお、一般に、プレポリマーといわれるものは、比較的低分子量のものが多いが、当業者においては、数万の数平均分子量を有するものもプレポリマーと称されており、本発明においても数万の数平均分子量を有するプレポリマーも使用することができる。
本発明で使用するウレタンプレポリマーの溶融粘度(コーンプレート粘度計を用いて125℃で測定した際の溶融粘度)は、好ましくは100〜100000mPa・sの範囲であり、より好ましくは1000〜50000mPa・sの範囲内である。前記範囲内の溶融粘度を有するウレタンプレポリマーであれば、加熱溶融状態での作業安定性が良好であると共に、繊維質基材への適度な浸透性を保持することができ、優れた接着強さを発現させることができる。
本発明で使用するウレタンプレポリマーの全量に対する、前記ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基の質量割合は、好ましくは0.5〜8.0質量%の範囲であり、より好ましくは1.0〜5.0質量%の範囲である。かかる範囲内の質量割合を有するウレタンプレポリマーを使用することにより、加熱溶融状態のウレタンプレポリマーの溶融粘度を良好な作業性を維持できる適切な範囲に調整することができる。また、柔軟性や、耐久性を損なうことのない、適度な架橋密度を有する硬化物を形成することが可能である。
本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物としては、前記ウレタンプレポリマーに、必要に応じて架橋触媒やシランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、ワックス、可塑剤、整泡剤、充填剤、顔料、蛍光増白剤等の添加剤、熱可塑性樹脂等を、単独で使用又は2種以上を併用することができる。
前記架橋触媒としては、使用するウレタンプレポリマーが分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの場合は、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、及びモルホリン骨格を持つ化合物等の含窒素化合物;酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛及びオクチル酸錫等の金属塩;ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等を使用することができる。
また、前記架橋触媒としては、使用するウレタンプレポリマーが分子末端にアルコキシシリル基を有するウレタンプレポリマーの場合は、例えばリンゴ酸、クエン酸等の酸性化合物、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸カリウム、トリエチレンジアミン等の塩基性化合物類、テトライソプロピルチタネート、ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジ−n−ブチル錫マレエート等の含金属化合物類等を使用することができる。
前記シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランまたはγ−クロロプロピルトリメトキシシラン等を使用することができる。
また、前記紫外線吸収剤としては、例えば2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α’−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジブチル−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシルフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体等を使用することができる。
また、前記酸化防止剤としては、例えばトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスファネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジン)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトなどを使用することができる。
また、前記光安定剤としては、例えば2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6−テトタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートなどを使用することができる。
前記充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、カオリン、タルク、カーボンブラック、シリカ、アルミナ酸化マグネシウム、無機・有機バルーン等を使用することができる。
次に、本発明の積層体シートについて説明する。
本発明の積層体シートは、前記湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物を用いて、繊維質基材と、フィルムまたは繊維質基材とを貼り合わせて得られるものである。
本発明の積層体シートは、例えば合成皮革、人工皮革、透湿機能を有したスポーツウエア等である。
本発明で使用するフィルムは、例えば、従来から合成皮革用途に用いられる有機溶剤系ウレタン樹脂、水性ウレタン樹脂、反応性ポリウレタンホットメルト樹脂、UV/EB硬化性ポリウレタン樹脂や、塩化ビニル系樹脂等を用いて得られたフィルムであれば特に限定されるものでないが、透湿性を有したポリウレタンフィルムでもいい。通常は前記樹脂を離型紙上に塗布し、有機溶剤等を乾燥することによって得ることができる。前記フィルムの厚さは、好ましくは5〜500μmの範囲であり、より好ましくは10〜300μmの範囲である。
本発明で使用する繊維質基材としては、例えば不織布や織布、編布等の一般的に人工皮革や合成皮革に用いられている基布、天然皮革、紙等を使用することができる。さらに、少なくとも1種以上の溶剤系、水系又は無溶剤系のポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ブタジエン系樹脂(SBR、NBR、MBR)等が前記基布等に含浸したものを使用することもできる。
本発明の積層体シートは、例えば前記フィルム又は繊維質基材上に、設定温度100〜130℃で加熱溶融した本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物を、該組成物と同様に温度設定した鏡面又はグラビアロールを用いて、全面又は間欠的に塗布し、該組成物の粘着性が無くなる前に繊維質基材、又は前記フィルムをニップロールにて圧締して、巻き取り、常温で一定時間熟成することによって得ることができる。
一般的な熟成時間としては、23℃の環境温度、65%の環境湿度下で3日間である。該組成物を塗布後、その塗布面の粘着性や濡れが無くなった場合は、該組成物が湿気架橋する前であれば、再度加熱することによって粘着性を付与することができ、前記繊維質基材と貼り合せることが可能とある。前記フィルムは予め作製したものを使用しても良いが、離型紙上にインラインで乾燥機等で皮膜を形成した後、直ちに該組成物による前述の接着加工もできる。
本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を加熱溶融し、フィルム又は繊維質基材上に全面、又は間欠的に塗布する方法としては、例えば、フラットロールコーター、グラビアロールコーター、フラットダイコーター、ポーラスダイコーター、スプレイコーター、ファイバーコーター、フォームコーター、ナイフコーター等が挙げられる。
以下、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明する。
[溶融粘度の測定方法]
後述する各ウレタンプレポリマーの溶融粘度を、コーンプレート粘度計(ICI社製)を用いて測定温度125℃にて測定した。
[湿気硬化後のフィルムの透明性の評価方法]
120℃で加熱溶融した実施例及び比較例に記載の各湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物を、バーコーターを用いて50μm厚みに離型紙に塗布して、環境温度23℃、相対湿度65%RHで5日間熟成して得られたフィルムの透明性を、目視にて下記の3段階で評価した。
○:透明
△:やや白濁
×:白濁
[湿気硬化後のフィルムの引張特性の測定方法]
前記透明性の評価に使用したフィルムを5mm幅の正方形にカットして得られた試験片の引張特性を、JIS K−7311に準拠してテンシロン((株)島津製作所製、ヘッドスピード=300mm/分)を用いて評価した。フィルムの柔軟性は、引張特性のうちの100%モジュラスの値をもとに評価した。100%モジュラスの値が4.0MPa以下であるフィルムが、実用上十分なレベルの柔軟性を有しているといえる。
[湿気硬化後のフィルムの耐加水分解性の評価方法]
前記透明性の評価に使用したフィルムを、温度70℃で相対湿度95%の環境下に10週間放置した後に、JIS K−7311に準拠してテンシロン((株)島津製作所製、ヘッドスピード=300mm/分)を用いて破断点応力及び伸度を測定した。放置前のフィルムの破断点応力及び伸びの値に対する、放置後のフィルムの破断点応力及び伸びのそれぞれの変化の割合が、概ね80%以上であるフィルムは、耐加水分解性に優れるといえる。
[湿気硬化後のフィルムの耐熱性の評価方法]
前記透明性の評価に使用したフィルムを、120℃で500時間加熱した後に、JIS K−7311に準拠してテンシロン((株)島津製作所製、ヘッドスピード=300mm/分)を用いて破断点応力及び伸度を測定した。加熱前のフィルムの破断点応力及び伸度の値に対する、加熱後のフィルムの破断点応力及び伸びのそれぞれの変化の割合が、概ね80%以上であるフィルムは、耐熱性に優れるといえる。
[表皮フィルム1の作製方法]
合成皮革表皮用途に使用可能な溶剤型ウレタン樹脂であるクリスボンNY324(大日本インキ化学工業(株)製)と、顔料のDILAC−6001(大日本インキ化学工業(株)製)と、メチルエチルケトン(MEK)と、ジメチルホルムアミド(DMF)とを混合したものを、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布量が100g/m2(wet)になるように均一に塗布した後、70℃で1分間、次いで120℃で2分間乾燥することで、厚さ30μの表皮フィルム1を作製した。
[湿式ベース1(繊維質基材)の作製方法]
難黄変型ポリウレタン樹脂であるクリスボンMP−302(大日本インキ化学工業(株)製)の12質量%DMF溶液を、55デニール/168フィラメントのポリエステル繊維からなる厚み0.8mmの灰色に染色された片面起毛の編布に含浸、飽充させた後、その編布をDMF12%水溶液(液温度20℃)中に浸漬して凝固させた。得られたポリウレタンからなる被膜を有する基材を更に60℃の温水中で洗浄、乾燥することによってシート状の繊維質基材を得た。
[表皮フィルム1と湿式ベース1の接着方法]
前記表皮フィルム1に、ロールコーターを用いて120℃で加熱溶融した各湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物を50μmの厚みに塗布した後、前記湿式ベース1とラミネーションした。ラミネーション後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置することにより、各積層体シートを得た。
[積層体シートの風合いの測定方法]
前記積層体シートを、手で折り曲げるなどすることにより、積層体シートの風合いを下記の5段階にて評価した。下記5段階評価のうち、3以下の評価であることが、実用上好ましい。
1:非常に柔らかい硬い。
2:少し柔らかい。
3:柔らかい。
4:少し硬い。
5:硬い。
[積層体シートの耐屈曲性の測定方法]
各積層体シートの耐屈曲性を、フレキソメーター〔東洋精機製(株)製〕を用い、常温(23℃)で20万回屈曲した後の外観、及び低温(−10℃)で10万回屈曲した後の外観をもとに評価した。
◎:きわめて良好。
○:良好。
△:表面が若干破断している。
×:表面が破断している。
[積層体シートの剥離強度の測定方法]
上記接着方法にて得られた各構成体シートの表皮フィルム1にホットメルト布テープを130℃にて5秒間かけて接着した後、JIS K6311に準拠して、テンシロン(ヘッドスピード=200mm/分)を用いて、剥離強度を測定した。
[積層体シートの耐加水分解性の測定方法]
各積層体シートを耐加水分解試験(ジャングル試験条件:温度70℃、相対湿度95%、10週間保持)に供した後、試験後の外観変化及び剥離強度測定を行ない、下記の基準に従い、試験結果を評価した。
○:試験後の表皮フィルムに外観変化がない。
△:試験後の表皮フィルムに若干のヒビ・割れが発生している。
×:試験後の表皮フィルムにヒビ・割れが発生している。
[積層体シートの耐熱性の測定方法]
積層体シートを120℃の温度で500時間加熱した後、該積層体シートの外観及び剥離強度を測定し、下記の基準に従って評価した。
○:外観変化がない。
△:表皮フィルムに若干のヒビ・割れが発生している。
×:表皮フィルムにヒビ・割れが発生している。
[実施例1]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物1及び積層体シート1》
1リットル4ツ口フラスコに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、POと略称。)6モル付加体、イソフタル酸、及びセバシン酸を反応させて得られた数平均分子量(以下、Mnと略称。)が2000のポリエステルポリオール(ポリオール1と略称。)を10質量部と、Mnが2000のポリテトラメチレンオキシグリコール(PTMG2000と略称。)の90質量部とを加えて、120℃に減圧加熱して、水分が0.05質量%となるまで脱水した。70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4‘−MDIと略称。)を25質量部加え、次いで90℃でNCO含有量が一定となるまで3時間反応することによって湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物1(組成物1と略称。)を得た。該組成物1のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は3500mPa・sであり、NCO含有量は3.3質量%であった。
該組成物1を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム1を得た。本発明のフィルム1の特性評価結果を表1に示した。フィルム1は、透明で柔軟性があり、耐加水分解性、耐熱性に優れていた。
また、該組成物1を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート1を得た。本発明の積層体シート1は、柔軟な風合いを有しており、剥離強度も高く、耐屈曲性、耐加水分解性、耐熱性にも優れていた。
[実施例2]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物2及び積層体シート2》
1リットル4ツ口フラスコに、ポリオール1を80質量部、Mnが2000のPTMGの20質量部を加え、120℃で減圧加熱した後、水分が0.05質量%となるまで脱水した。70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを25質量部加え、次いで90℃でNCO含有量が一定となるまで3時間反応することによって湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物2(組成物2と省略。)を得た。該組成物2のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は6000mPa・sであり、NCO含有量は3.2質量%であった。
該組成物2を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム2を得た。フィルム2は、透明で非常に柔軟性があり、耐加水分解性、耐熱性に優れていた。
また、該組成物2を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート2を得た。本発明の積層体シート2は、非常に柔軟な風合いを有しており、剥離強度も高く、耐屈曲性、耐加水分解性、耐熱性にも優れていた。
[実施例3]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物3及び積層体シート3》
1リットル4ツ口フラスコに、ポリオール1を20質量部、Mnが2000のPTMGを70質量部、及びアジピン酸とヘキサンジオールとを反応させて得られるMnが2000のポリエステルポリオール(常温固体ポリオール1と略称。)の10質量部を加え、120℃に減圧加熱することによって水分0.05質量%となるまで脱水した。70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを25質量部加え、次いで90℃でNCO含有量が一定となるまで3時間反応することによって湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物3(組成物3と略称。)を得た。該組成物3のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は5000mPa・sで、NCO含有量は3.3質量%であった。
該組成物3を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム3を得た。フィルム3は、透明で非常に柔軟性があり、耐加水分解性、耐熱性に優れていた。
また、該組成物3を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート3を得た。積層体シート3は、非常に柔軟な風合いを有しており、剥離強度も高く、耐屈曲性、耐加水分解性、耐熱性にも優れていた。
[実施例4]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物4及び積層体シート4》
1リットル4ツ口フラスコに、ポリオール1を70質量部、Mnが2000のPTMGの20質量部、及び常温固体ポリオール1の10質量部を加えて、120℃で減圧加熱して水分が0.05質量%となるまで脱水した。70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを25質量部加え、次いで90℃でNCO含有量が一定となるまで3時間反応することによって湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物4(組成物4と略称。)を得た。該組成物4のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は6200mPa・sで、NCO含有量は3.2質量%であった。
該組成物4を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム4を得た。フィルム4は、透明で非常に柔軟性があり、耐加水分解性、耐熱性に優れていた。
また、該組成物4を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート4を得た。積層体シート4は、非常に柔軟な風合いを有しており、剥離強度も高く、耐屈曲性、耐加水分解性、耐熱性にも優れていた。
[実施例5]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物5及び積層体シート5》
1リットル4ツ口フラスコに、ポリオール1を20質量部、Mnが2000のPTMGの70質量部、及びMnが2000のポリカーボネートジオール(常温固体ポリオール2と略称。)の10質量部を加えて、120℃で減圧加熱して水分が0.05質量%となるまで脱水した。70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを25質量部加え、次いで90℃でNCO含有量が一定となるまで3時間反応することによって湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物5(組成物5と略称。)を得た。該組成物5のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は5500mPa・sで、NCO含有量は3.2質量%であった。
該組成物5を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム5を得た。フィルム5は、透明で非常に柔軟性があり、耐加水分解性、耐熱性に優れていた。
また、該組成物5を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート5を得た。積層体シート5は、柔軟な風合いを有しており、剥離強度も高く、耐屈曲性、耐加水分解性、耐熱性にも優れていた。
[実施例6]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物6及び積層体シート6》
1リットル4ツ口フラスコに、ポリオール1を70質量部、Mnが2000のPTMGの20質量部、及びMnが2000の常温固体ポリオール2の10質量部を加えて、120℃で減圧加熱して水分が0.05質量%となるまで脱水した。70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを25質量部加え、次いで90℃でNCO含有量が一定となるまで3時間反応することによって湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物6(組成物6と略称。)を得た。該組成物6のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は6500mPa・sで、NCO含有量は3.2質量%であった。
該組成物6を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム6を得た。フィルム6は、透明で非常に柔軟性があり、耐加水分解性、耐熱性に優れていた。
また、該組成物6を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート6を得た。積層体シート6は、非常に柔軟な風合いを有しており、剥離強度も高く、耐屈曲性、耐加水分解性、耐熱性にも優れていた。
[実施例7]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物7及び積層体シート7》
1リットル4ツ口フラスコに、ポリオール1を20質量部、Mnが2000のPTMGの70質量部、及び常温固体ポリオール1の10質量部を加えて、120℃で減圧加熱して水分が0.05質量%となるまで脱水した。70℃に冷却後、キシリレンジイソシアネート(表中では、XDIと略称。)を20.0質量部加え、次いで90℃でNCO含有量が一定となるまで3時間反応することによって湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物7を得た。該組成物7のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は5000mPa・sで、NCO含有量は3.1質量%であった。
該組成物7を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム7を得た。フィルム7は、透明で非常に柔軟性があり、耐加水分解性、耐熱性に優れていた。
また、該組成物7を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート7を得た。積層体シート7は、非常に柔軟な風合いを有しており、剥離強度も高く、耐屈曲性、耐加水分解性、耐熱性にも優れていた。
[実施例8]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物8及び積層体シート8》
前記実施例3で得られた組成物3の125質量部に、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランの10質量部とAP−1(酸性リン酸エステル;大八化学工業株式会社製)とを1.0質量部添加し2時間反応させることによって湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物8(組成物8と略称。)を得た。該組成物8のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は3500mPa・sで、NCO含有量は1.6質量%であった。
該組成物8を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム8を得た。フィルム8は、透明で非常に柔軟性があり、耐加水分解性、耐熱性に優れていた。
また、該組成物8を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート8を得た。積層体シート8は、非常に柔軟な風合いを有しており、剥離強度も高く、耐屈曲性、耐加水分解性、耐熱性にも優れていた。
[比較例1]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物9及び積層体シート9》
1リットル4ツ口フラスコに、ポリオール1の100質量部のみを加えて、120℃で減圧加熱して水分が0.05質量%となるまで脱水した。70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを25質量部加え、次いで90℃でNCO含有量が一定となるまで3時間反応して湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物9(組成物9と略称。)を得た。該組成物9のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は6500mPa・sで、NCO含有量は3.3質量%であった。
該組成物9を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム9を得た。フィルム9は、フィルム9は透明であり、柔軟性もあるが、耐加水分解性に劣るものであった。
また、該組成物9を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート9を得た。積層体シート9は、剥離強度は高いが、風合いは非常に硬いものであり、低温屈曲性、耐加水分解性、耐熱性に劣るものであった。
[比較例2]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物10及び積層体シート10》
1リットル4ツ口フラスコに、Mnが2000のPTMGの80質量部、及び常温固体ポリオール1の20質量部を加えて、120℃で減圧加熱して水分が0.05質量%となるまで脱水した。70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを25質量部加え、次いで90℃でNCO含有量が一定となるまで3時間反応することによって湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物10を得た。該組成物10のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は3000mPa・sで、NCO含有量は3.2質量%であった。
該組成物10を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム10を得た。フィルム10は、耐加水分解性は優れていたものの、白濁であり、柔軟性にも劣っているものであった。
また、該組成物10を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート10を得た。積層体シート10は、剥離強度は高く、耐加水分解性に優れていたものの、風合いは非常に硬いものであった。
[比較例3]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物11及び積層体シート11》
1リットル4ツ口フラスコに、Mnが2000のPTMGの20質量部、及び常温固体ポリオール1の80質量部を加えて、120℃で減圧加熱して水分が0.05質量%となるまで脱水した。70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを25質量部加え、次いで90℃でNCO含有量が一定となるまで3時間反応することによって湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物11を得た。該組成物11のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は4500mPa・sで、NCO含有量は3.2質量%であった。
該組成物11を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム11を得た。フィルム11は、白濁であり、柔軟性及び耐加水分解性に劣るものであった。
また、該組成物11を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート11を得た。積層体シート11は、風合いが非常に硬く、低温屈曲性、耐加水分解性に劣るものであった。
[比較例4]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物12及び積層体シート12》
1リットル4ツ口フラスコに、ポリオール1を20質量部、Mnが2000のポリプロピレングリコール(PPG2000と略称。)の70質量部、及び常温固体ポリオール1の10質量部を加えて、120℃で減圧加熱して水分が0.05質量%となるまで脱水した。70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを25質量部加え、次いで90℃でNCO含有量が一定となるまで3時間反応することによって湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物12を得た。該組成物12のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は2000mPa・sで、NCO含有量は3.3質量%であった。
該組成物12を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム12を得た。フィルム12は、柔軟性はあるが、白濁であり、耐加水分解性、耐熱性に劣るものであった。
また、該組成物12を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート12を得た。積層体シート12は、風合いが非常に硬く、低温屈曲性、耐加水分解性に劣るものであった。
[比較例5]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物13及び積層体シート13》
1リットル4ツ口フラスコに、ビスフェノールAのPO6モル付加体であるポリオール2を20質量部、Mnが2000のPTMGの70質量部、及び常温固体ポリオール1の10質量部を加えて、120℃で減圧加熱して水分0.05質量%となるまで脱水した。70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを36質量部加え、次いで90℃でNCO含有量が一定となるまで3時間反応することによって湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物13を得た。該組成物13のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は5600mPa・sで、NCO含有量は3.2質量%であった。
該組成物13を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム13を得た。フィルム13は、白濁で柔軟性があるが、耐加水分解性、耐熱性に劣るものであった。
また、該組成物13を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート13を得た。積層体シート13は、風合いが非常に硬く、耐加水分解性、耐熱性にも劣るものであった。
[比較例6]
《湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物14及び積層体シート14》
1リットル4ツ口フラスコに、Mnが2000のPTMGの100質量部のみを加えて、120℃で減圧加熱して水分が0.05質量%となるまで脱水した。70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを25質量部加え、次いで90℃でNCO含有量が一定となるまで3時間反応することによって湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物14を得た。該組成物14のコーンプレート粘度計での125℃の粘度は3000mPa・sで、NCO含有量は3.1質量%であった。
該組成物14を120℃で加熱溶融し、バーコーターを用いて、厚み50μmになるように離型紙上に塗布した後、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間放置して、フィルム14を得た。フィルム14は、白濁で柔軟性はなく、耐熱性に劣るものであった。
また、該組成物14を120℃に加熱溶融し、前記表皮フィルム1の上にロールコーターを用いて厚み50μmになるように塗布した後、前記湿式ベース1と接着した。その後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で3日間放置して、積層体シート14を得た。積層体シート14は、風合いが非常に硬く、耐熱性にも劣るものであった。
Figure 2007063510
Figure 2007063510
Figure 2007063510
表1〜3中の略称の名称を、以下に示す。
・「ポリオール1」:ビスフェノールAのプロピレンオキサイド 6モル付加体と、イソフタル酸及びセバシン酸とを縮合反応させて得られた数平均分子量(Mn)が2000のポリエステルポリオール。
・「ポリオール2」:ビスフェノールAにプロピレンオキサイドが6モル付加したポリエーテルポリオール。
・「PTMG2000」:数平均分子量が2000のポリテトラメチレンオキシグリコール。
・「PPG2000」:数平均分子量が2000のポリプロピレングリコール。
・「常温固体ポリオール1」:1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とを縮合反応させて得られた数平均分子量が2000の常温固体のポリエステルポリオール。
・「常温固体ポリオール2」:数平均分子量が2000の常温固体のポリカーボネートジオール。
・「4,4’−MDI」:4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート。
・「XDI」:キシリレンジイソシアネート。
・「DBTDL」:ジ−n−ブチル錫ジラウリレート。
・「AP−1」:酸性リン酸エステル(大八化学工業株式会社製)。

Claims (8)

  1. ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有してなり、
    前記ポリオール(A)が、ビスフェノールAにアルキレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールとポリカルボン酸とを縮合反応させて得られるポリエステルポリオール(a−1)、及びポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)を含むことを特徴とする湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物。
  2. 前記ポリエステルポリオール(a−1)が、−50〜40℃の範囲のガラス転移温度を有するものである、請求項1に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物。
  3. 前記ポリオール(A)が、さらに40℃〜130℃の範囲の軟化温度(乾球式)を有する常温固体のポリオール(a−3)を含むものである、請求項1に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物。
  4. 前記アルキレンオキサイドが、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物。
  5. 前記ポリオール(A)の全量に対する前記ポリエステルポリオール(a−1)の質量割合が10〜80質量%であり、かつ前記ポリテトラメチレンオキシグリコール(a−2)の質量割合が20〜90質量%である、請求項1に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物。
  6. 前記ポリカルボン酸が脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及び脂環族ジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物。
  7. 前記ポリイソシアネート(B)が、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びキシリレンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のポリイソシアネートである、請求項1に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト組成物を用いて、繊維質基材と、フィルム又は繊維質基材とを貼り合わせて得られる積層体シート。


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