JP2006346887A - サーマルプリントヘッド - Google Patents

Abstract

【課題】 熱効率がよく、ヒロックの発生による腐食物質の浸透に強いサーマルプリントヘッドを提供する。
【解決手段】 このサーマルプリントヘッドＡは絶縁基板上１に形成されたグレーズ層２と、上記グレーズ層２上に形成された抵抗体層３と上記抵抗体層３上に、上記抵抗体層３の一部を臨ませてその部分が発熱部７を形成するように形成された電極層４と、上記電極層４および発熱部７を覆うように形成された保護層５と、を備えており、上記保護層５は、Ａｌを主成分として形成されており、上記発熱部７から所定距離以上離れた部分においては下層側の第１電極層４ａと上層側の第２電極層４ｂとの２層構造を有しているとともに、上記発熱部７に隣接する部分においては上記２層構造部分の第２電極層４ｂが延出させられた１層構造を有しており、かつ、上記第1電極層４ａの厚みは０．５〜２．０μｍであり、上記第２電極層４ｂの厚みは０．２〜０．４μｍである。
【選択図】 図２

Description

本願発明は、バーコードプリンタ、昇華型フォトカラープリンタ等の感熱記録または熱転写記録に用いられるサーマルプリントヘッドに関し、特に、薄膜型サーマルプリントヘッドとして分類されるものに関する。

この種の薄膜型サーマルプリントヘッドの一例としてサーマルプリントヘッドＢを本願の図３に示した。図３に示すように、絶縁基板１０１上に蓄熱グレーズ層１０２を形成した上で、この蓄熱グレーズ層１０２上に、スパッタリング等により薄膜形成した抵抗体層１０３と、同じく薄膜形成した電極層１０４とを順次積層して設け、これら抵抗体層１０３と電極層１０４とを保護層１０５で覆った構成を有している。図３に示される例では、蓄熱グレーズ層１０２はなだらかな膨隆部１０２ｃを有している。抵抗体層１０３は膨隆部１０２ｃの一側から反対側まで連続するように形成される一方、電極層１０４は、上記膨隆部１０２ｃの頂部付近に一定間隔の途切れ部１０４ｃをもつように形成されている。また、抵抗体層１０３および電極層１０４は図３の紙面に直交する方向に、所定幅を有するものが複数並設されている。電極層１０４の一方側は図示しない電極パッド部を有し、図示しないドライバＩＣの出力パッドにワイヤボンディングされ、他方側は、通常、共通電極とされている。

電極層１０４の一方側と他方側の間に通電すると、抵抗体層１０３上を電極層１０４が覆う範囲においては、抵抗値の相違により、電極層１０４に電流が流れるが、電極層１０４の上記途切れ部１０４ｃにおいては、電流は抵抗体層１０３を流れ、ジュール熱を発生する。すなわち、電極層１０４の途切れ部１０４ｃに臨む抵抗体層１０３が、発熱部１０７として機能する。この発熱部１０７を保護層１０５越しに印字媒体に圧接させて感熱印字を行う。

上記電極層１０４は単層構造であり、スパッタリングにより形成されているので厚みは一定である。そのため、上記発熱部１０７周辺の電極層１０４の厚みと、上記ドライバＩＣとワイヤボンディングされる上記電極パッド部の厚みは同じになる。ワイヤボンディングの際、金線と電極パッド部の密着性を確保するためには、電極パッド部の厚みを０．５μｍ以上に形成する必要がある。このため、電極層１０４の厚みは通常０．８μｍ程度に形成されている。

ところで、電極層１０４に関しては、次のような問題が指摘されている。

電極層１０４の厚さが０．５μｍ以上であるため、電極層１０４の途切れ部１０４ｃの端部で、抵抗体層１０３と電極層１０４が０．５μｍを超える段差１０４ｄを形成している。そのため、その上にスパッタリングにより積層される保護層１０５にも０．５μｍ以上の段差１０５ｄが発生する。上記段差１０５ｄが大きいため、サーマルプリントヘッドＢと印字媒体との密着が悪くなり、印字の際の熱効率が下がっていた。また、サーマルプリントヘッドＢと印字媒体との間に異物が入り込んだ場合に、上記段差１０５ｄが大きいと、段差１０５ｄに異物が引っかかり、スクラッチ傷や膜剥がれの不具合が発生していた。

また、発熱部１０７周辺の電極層１０４の厚みが０．５μｍ以上と厚いため、発熱部１０７で発生した熱が電極層１０４を通って逃げやすく、サーマルプリントヘッドＢの発熱効率を下げていた。

さらには、電極層１０４の厚みが０．５μｍを超えると、図３のＢ４周辺を拡大して示した図４に表れているように、電極層１０４に、Ａｌ結晶の成長によって形成されるヒロックと呼ばれる微小突起１０８が多く発生する。電極層１０４を土台としてスパッタリング等により形成される保護層１０５の表面には、ヒロック１０８に対応した微小な凹凸１０９が形成される。上記凹凸１０９は印刷媒体との間の摩擦係数を大きくし、印刷媒体の蛇行や詰まり等の不具合の原因となる。また、凹凸１０９及びその下のヒロック１０８により、Ｃｌ^-やＮａ⁺イオン等が浸透し、電極層１０４を腐食させる等の信頼性に影響する不具合も発生していた。

特開平１１−２８３４１５号公報

本願発明は、以上の事情のもとで考え出されたものであって、より熱効率の良好であり、かつ、ヒロックによる印字品質への悪影響を少なくしたサーマルプリントヘッドを提供することを目的としている。

上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を採用した。

すなわち、本願発明によって提供されるサーマルプリントヘッドは、絶縁基板上に形成されたグレーズ層と、上記グレーズ層上に形成された抵抗体層と、上記抵抗体層上に、上記抵抗体層の一部を臨ませてその部分が発熱部を形成するように形成された電極層と、上記電極層および上記発熱部を覆うように形成された保護層と、を備えたサーマルプリントヘッドであって、上記電極層は、Ａｌを主成分として形成されており、上記発熱部から所定距離以上離れた部分においては下層側の第１電極層と上層側の第２電極層との２層構造を有しているとともに、上記発熱部に隣接する部分においては上記２層構造部分の上記第２電極層が延出させられた１層構造を有しており、かつ、上記第1電極層の厚みは０．５〜２．０μｍであり、上記第２電極層の厚みは０．２〜０．４μｍであることに特徴づけられる。

好ましい実施の形態においては、上記抵抗体層の厚みは５００〜１０００Åであり、上記保護層の厚みは６〜１０μｍである。

好ましい実施の形態においてはまた、上記グレーズ層には、膨隆部が形成されており、上記発熱部が上記膨隆部上に位置するように形成されている。また、上記膨隆部においては、上記発熱部に隣接するように上記第２電極層が形成されている。

上記の構成を備えるサーマルプリントヘッドにおいては、上記発熱部に隣接する上記第２電極層の厚みが０．２〜０．４μｍになっているため、その上に積層される保護層に生じる段差は従来に較べて大幅に小さくなり、印刷媒体とサーマルプリントヘッドとの密着性が良好となり、印刷時の熱効率が向上する。また、上記の段差が小さくなることにより、サーマルプリントヘッドと印刷媒体との間に入り込んだ異物による保護層のスクラッチ傷および膜剥がれ等の不具合が起こりにくくなる。さらには、上記発熱部に隣接する第２電極層の厚みを０．２〜０．４μｍとしたことは、上記発熱部周辺の上記第２電極層におけるヒロックの成長を抑え、ヒロックを起因とする保護層表面の凹凸が発生しにくくなる効果がある。

さらに、上記発熱部に隣接する上記第２電極層の厚みが薄くなったことにより、上記発熱部の熱が電極層を伝わって逃げていくのを最小限に抑えることができ、このこともまた、サーマルプリントヘッドの印刷時における熱効率の向上に大きく寄与する。

好ましい実施の形態においてはさらに、上記膨隆部を間に挟む、上記第１電極層の両端部は、１〜１０μｍのテーパ部が設けられている。

このようにすることにより、上記第１電極層と上記第２電極層の間の電気的密着をより高めることができる。なお、上記テーパ部は上記第１電極層のパターニングの際にフォトリソ技術により形成することができる。

好ましい実施の形態においてはまた、上記第１電極層と上記第２電極層との２層構造になっている領域において、上記保護層が絶縁層で覆われている。

発熱部に隣接して第２電極層のみで形成されている電極層は、上記したように０．２〜０．４μｍと薄状であるのでヒロックが形成されにくいが、上記第１電極層の厚みは０．５〜２．０μｍであるので、上記第１電極層と上記第２電極層との２層構造になっている領域においてはヒロックが成長しやすく、Ｃｌ^-やＮａ⁺イオン等の浸透による腐食が発生しやすい。しかしながら、この好ましい実施の形態では電極層の２層構造となっている領域が絶縁層で覆われているので、Ｃｌ^-やＮａ⁺イオン等の浸透による上記のような腐食の問題は、都合よく回避される。

本願発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行う詳細な説明から、より明らかとなろう。

以下、本願発明の好ましい実施の形態について図面を参照して具体的に説明する。

図１は本願発明に係るサーマルプリントヘッドＡの一実施形態の部分平面図、図２は図１のII−II線に沿う断面図である。ただし、図１において保護層および絶縁層は省略しており、図２は厚み方向に強調して描いてある。図１には、サーマルプリントヘッドの全体外形は示されていないが、このサーマルプリントヘッドＡは図１の左右方向に沿って図１と同一のパターンを連ねた、その方向を長手方向とする短冊状の外形を有する。また、図１に示すように、このサーマルプリントヘッドＡの電極層４の一方側は各々図示しないドライバＩＣの出力パッドとワイヤボンディングにより接続されており、電極層４の他方側は電源回路に共通接続されている。ドライバＩＣの作用により、印字データにしたがって、所望の電極層４の通電状態を選択することが可能である。

図２に示されているように、このサーマルプリントヘッドＡは、基板１、蓄熱グレーズ層２、抵抗体層３、第１電極層４ａ、第２電極層４ｂ、保護層５および絶縁層６を備えている。

基板１は、たとえばアルミナセラミックなどの絶縁材料によって形成されている。この基板１には、ガラスなどを主成分とする蓄熱グレーズ層２が厚膜印刷法などによって形成されており、この実施形態では、この蓄熱グレーズ層２はなだらかな膨隆部２ｃを有している。この膨隆部２ｃは、基板の長手方向に連続的に延びている。この蓄熱グレーズ層２上には、膨隆部２ｃをその一方側から他方側に横断するようにして、たとえばＴａＳｉＯ₂を主成分とする抵抗体層３が、スパッタリング法によって厚さ５００〜１０００Åに形成されている。そして、この抵抗体層３に重なるようにして、下層側の第１電極層４ａと上層側の第２電極層４ｂとからなる２層構造の電極層４が、上記膨隆部２ｃの頂部付近に一定幅の途切れ部４ｃをもつようにして形成されている。以下、この電極層４につき、さらに詳細に説明する。

第１電極層４ａは、Ａｌなどの導電材料を主成分としており、上記膨隆部２ｃを挟んで分断された格好で、スパッタリング法によって０．５〜２．０μｍの厚みに形成されている。この第１電極層４ａの膨隆部２ｃに隣接する端部には、それぞれ、幅３μｍ程のテーパ部４ｅが形成されている。このようなテーパ部４ｅを設けることにより、後記する第２電極層４ｂにできる段差が抑制され、また、第１電極層４ａに対する第２電極層４ｂの密着性が向上する。

第２電極層４ｂは、同じくＡｌなどの導電材料を主成分としており、上記第１電極層４ａを覆う部分と、第１電極層４ａの先端から延出して抵抗体層３を直接覆う部分とを有するように形成されている。図２に表れているように、この第２電極層４ｂの先端部は、膨隆部２ｃの頂部付近において、途切れ部４ｃを介して対向させられている。すなわち、この途切れ部４ｃにおいては、抵抗体層３が臨んでいるのであり、このように臨む抵抗体層３が発熱部７として機能することになる。この第２電極層４ｂもまた、スパッタリング法によって形成され、その厚みは、０．２〜０．４μｍとしてある。なお、この第２電極層４ｂは、発熱部７と隣接するので、その厚みを０．２μｍ未満にすると、熱集中が大きくなりすぎるため、耐圧性が弱くなり抵抗体層３が破壊される虞がある。

抵抗体層３およびこれに積層された電極層４は、それぞれ膨隆部２ｃを横断する一定幅の帯状部をなしており、図１に示すように、このような帯状部が基板１の長手方向にならべて配置したようなパターンをなしている。このようなパターンの形成は、抵抗体層３の形成時、第１電極層４ａの形成時および第２電極層４ｂの形成時にその都度フォト・エッチングを施すことで行うことができる。また、第１電極層４ａのフォト・エッチングを行う際に、テーパ部４ｅも形成することができる。

上記のようにパターンの形成が行われた抵抗体層３と電極層４とを覆うように、保護層５がスパッタリング法によってたとえば５〜８μｍの厚みに形成されている。図１および図２に示したサーマルプリントヘッドＡにおいて、保護層５はたとえばＳｉＯ₂等を主成分に単層構造に形成されているが、多層構造としても差し支えない。

さらに、図２に示すように、第１電極層４ａと第２電極層４ｂが重なっている領域には、保護層５の上に印刷により絶縁層６が設けてある。

以上の構成において、電極層４を選択してこれに通電すると、電極層４の途切れ部４ｃに臨む抵抗体層３（発熱部７）に電流が流れることによってジュール熱が発生し、この熱が保護層５越しに記録媒体に伝達され、所定の印刷作用を行う。

上記の構造を有するサーマルプリントヘッドＡは、発熱部７に隣接する電極層４（第２電極層４ｂ）の厚みが０．２〜０．４μｍ程度といった薄状に形成されているので、電極層４を介した外部への熱移動が抑制され、熱効率が従来構造の１．５倍以上となり、省エネルギー化が達成される。また、電極層４の段差部４ｄの影響で保護層５に形成される段差５ｄも抑えることができる。これに関し、加速スクラッチ試験を行ったところ、破壊ドット数も従来構造の場合の３分の１以下になった。さらに、第２電極層４ｂのみが形成されている領域ではヒロックが形成されず、第１電極層４ａと第２電極層４ｂが重なる領域には絶縁層６を設けたので、ヒロックによる弊害を極力解消することができる。すなわち、発熱部７に隣接する第２電極層４ｂのみが形成される領域では、この第２電極層４ｂが薄状であるが故にヒロックの発生そのものを抑制することができるので、このヒロックの影響によって保護層５の表面に微小な凹凸が発生することが抑制され、印刷媒体の引っ掛かりや蛇行といった問題や、凹凸からＣｌ^-やＮａ⁺イオン等が浸透して電極層４や抵抗体層３を腐食させるといった問題は抑制される。また、第１電極層４ａと第２電極層４ｂが重なる領域では、第２電極層４ａが比較的厚みを有することからヒロックの発生が避けられないが、この領域を覆う保護層５はさらに絶縁層６で覆われているので、この絶縁層６により、Ｃｌ^-やＮａ⁺イオン等の浸透による弊害は、都合よく回避される。

本願発明に係るサーマルプリントヘッドの一実施形態の部分平面図である。 図１のII-II線に沿う断面図である。 従来のサーマルプリントヘッドの断面図である。 図３におけるＢ４部分の拡大図である。

符号の説明

Ａ サーマルプリントヘッド
Ｂ サーマルプリントヘッド
１ 基板
２ 蓄熱グレーズ層
２ｃ 膨隆部
３ 抵抗体層
４ 電極層
４ａ 第１電極層
４ｂ 第２電極層
４ｃ 途切れ部
４ｄ 段差
４ｅ テーパ部
５ 保護層
５ｄ 段差
６ 絶縁層
７ 発熱部
１０８ ヒロック
１０９ 凹凸

Claims (6)

1. 絶縁基板上に形成されたグレーズ層と、
   上記グレーズ層上に形成された抵抗体層と、
   上記抵抗体層上に、上記抵抗体層の一部を臨ませてその部分が発熱部を形成するように形成された電極層と、
   上記電極層および上記発熱部を覆うように形成された保護層と、
   を備えたサーマルプリントヘッドであって、
   上記電極層は、Ａｌを主成分として形成されており、上記発熱部から所定距離以上離れた部分においては下層側の第１電極層と上層側の第２電極層との２層構造を有しているとともに、上記発熱部に隣接する部分においては上記２層構造部分の上記第２電極層が延出させられた１層構造を有しており、かつ、上記第1電極層の厚みは０．５〜２．０μｍであり、上記第２電極層の厚みは０．２〜０．４μｍであることを特徴とする、サーマルプリントヘッド。
2. 上記抵抗体層の厚みは５００〜１０００Åであり、上記保護層の厚みは６〜１０μｍである、請求項１に記載のサーマルプリントヘッド。
3. 上記グレーズ層には、膨隆部が形成されており、上記発熱部が上記膨隆部上に位置するように形成されている、請求項１または２に記載のサーマルプリントヘッド。
4. 上記膨隆部においては、上記発熱部に隣接するように上記第２電極層が形成されている、請求項３に記載のサーマルプリントヘッド。
5. 上記膨隆部を間に挟む、上記第１電極層の両端部は、１〜１０μｍのテーパ部が設けられている、請求項４に記載のサーマルプリントヘッド。
6. 上記第１電極層と上記第２電極層との２層構造になっている領域において、上記保護層が絶縁層で覆われている、請求項３ないし５のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。

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