JP2006173593A - 固体電解コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】短絡不良が少なく、素子形状のバラツキが少なく、薄いコンデンサ素子を安定して作製でき、固体電解コンデンサチップ内のコンデンサ素子の積層枚数を増やし高容量化可能で、等価直列抵抗のバラツキが小さい積層型固体電解コンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体皮膜上にモノマーを酸化剤により重合させて導電性重合体組成物を含む固体電解質層を設けた固体電解コンデンサの製造方法において、誘電体皮膜層を有する弁作用金属を、モノマーを含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程1)、酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程2)、及び酸化剤を含まない溶液に浸漬後乾燥する工程(工程3)を含む方法により、前記固体電解質層を設ける固体電解コンデンサの製造方法及びその方法により製造される固体電解コンデンサ。
【選択図】図2

Description

本発明は、導電性重合体を固体電解質層として用いた固体電解コンデンサ及びその製造方法に関するものである。
固体電解コンデンサの基本素子は、図1に示すように、一般にエッチング処理された比表面積の大きな金属箔からなる陽極基体(1)に誘電体の酸化皮膜層(2)を形成し、この外側に対向する電極として固体の半導体層(以下、固体電解質という。)(4)を形成し、そして望ましくはさらに導電ペーストなどの導電体層(5)を形成して作製される。次いで、このような素子は単独で、あるいは積層してリード線(6,7)を接合し、全体をエポキシ樹脂(8)等で完全に封止してコンデンサ(9)部品として幅広く電気製品に使用されている。
近年、電気機器のディジタル化、パーソナルコンピュータの高速化に伴い、小型で大容量のコンデンサ、高周波領域において低インピーダンスのコンデンサが要求されている。最近では、電子伝導性を有する導電性重合体を固体電解質として用いることが提案されている。
一般的に、誘電体酸化皮膜上に導電性重合体を形成する手法として電解酸化重合法及び化学酸化重合法が知られている。化学酸化重合法は、反応の制御あるいは重合膜形態の制御が難しいが、固体電解質の形成が容易で、短時間に大量生産が可能であるため種々の方法が提案されている。例えば、陽極基体をモノマーを含む溶液に浸漬する工程と酸化剤を含む溶液に浸漬する工程を交互に繰り返すことにより層状構造を有する固体電解質を形成する方法が開示されている(特許文献1:特許第3187380号公報)。この方法によれば、膜厚が0.01〜5μmの層状構造の固体電解質層を形成することによって、高容量、低インピーダンス、かつ耐熱性に優れた固体電解コンデンサを製造することができるが、固体電解質層を形成する層状構造部の層間の空間部分が大きいという問題があり、コンデンサ素子を複数積層する積層型コンデンサ用の素子として、固体電解質層全体の一層の薄膜化が求められている。
層状構造の固体電解質層を形成することなく、コンデンサ素子の細孔内及び外表面に固体電解質を形成する方法として、モノマー化合物を含む溶液に陽極基体を浸漬した後、酸化剤溶液中で重合し、酸化剤を洗浄した後に乾燥するサイクルを繰り返す方法が開示されているが(特許文献2:特開平9-306788号公報)、この方法で形成される固体電解質層は、層間に空間部が存在しないため外部応力に対する耐性が不十分であった。
一方、モノマーを含む溶液もしくは酸化剤を含む溶液を微粒子を含む懸濁液として、導電性重合体膜の形成を促進する方法が提案され、微粒子として導電性ポリマー粒子を添加する方法(特許文献3:特許第3478987号公報)、ポリマー微粒子を含むコロイド粒子を添加する方法(特許文献2:特開平9-306788号公報)、無機微粒子を添加する方法(特許文献4:特開平11-283875号公報)が開示されている。
特許第3187380号公報 特開平9−306788号公報 特許第3478987号 特開平11−283875号公報
所定の容量の固体電解コンデンサとするためには、通常コンデンサ素子を複数個積層して陽極端子に陽極リード線を接続し、導電性重合体を含む導電体層に陰極リード線を接続し、さらに全体をエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂で封止して作製されるが、固体電解コンデンサでは、コンデンサ素子の陰極部分で導電性重合体の重合条件をコントロ−ルして導電性重合体を厚くする必要がある。コンデンサ素子の陰極部分の導電性重合体の重合条件を綿密にコントロールしなければ、導電性重合体の厚さが不均一になり導電性重合体の薄い部分ができ、ペーストなどが誘電体酸化皮膜層と直接接触しやすくなり、漏れ電流の上昇につながるからである。また、所定の大きさの固体電解コンデンサチップに積層できるコンデンサ素子の枚数は素子の厚さによって制限されるため、固体電解コンデンサチップの容量を大きくすることができなかった。さらに、導電性重合体の付着厚さが不均一であると、積層されたコンデンサ素子とコンデンサ素子の接触面積が低下するため、等価直列抵抗(ESR)が大きくなるという問題もある。
したがって、本発明の課題は、上記の問題点を解決し、短絡不良を増加させること無く素子形状のバラツキを少なく、かつ薄いコンデンサ素子を安定して作製し、固体電解コンデンサチップ内のコンデンサ素子の積層枚数を増やして高容量化を可能とし、さらに等価直列抵抗のバラツキが小さい積層型固体電解コンデンサ素子及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体皮膜上にモノマーを酸化剤により重合させて固体電解質層を形成する方法において、従来より知られているモノマーを含む溶液に浸漬する工程(以下、工程1と略す。)と酸化剤を含む懸濁液に浸漬する工程(以下、工程2と略す。)に加えて酸化剤を含まない溶液に浸漬する工程(以下、工程3と略す。)を加えることによって層状構造を有するポリマー層とポリマー層の間の間隙(空間)が非常に狭くなり緻密で形状安定性に優れた固体電解質を形成できることを見出し本発明に至った。
モノマー溶液への浸漬工程(工程1)と酸化剤溶液への浸漬工程(工程2)を繰り返して行う化学酸化重合において固体電解質の形状は必然的に層状構造となる。ポリマー層とポリマー層の間に挟まれた酸化剤層は、最終的に不必要層として洗浄工程で除去され空間層に変わる。この空間層の膜厚によって最終的な固体電解質の形状が決定されることに鑑み、酸化剤層を非常に短時間の浸漬により酸化剤の毎回の重合で一部除去しても残存する酸化剤によって重合反応が完結することを見出した。
かくして得られる固体電解コンデンサは、誘電体皮膜上に形成される固体電解質の密着性が向上し、高容量で、誘電損失(tanδ)、漏れ電流、不良率が小さくなることを確認した。
さらに、上記の特性に優れた固体電解コンデンサ素子を複数枚積層することによりコンデンサの小型・高容量化ができることを確認した。
本発明は以下の1〜10に示す固体電解コンデンサ及びその製造方法に関する。
1. 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体皮膜上にモノマーを酸化剤により重合させて導電性重合体組成物を含む固体電解質層を設けた固体電解コンデンサの製造方法において、誘電体皮膜層を有する弁作用金属を、モノマーを含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程1)、酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程2)、及び酸化剤を含まない溶液に浸漬後乾燥する工程(工程3)を含む方法により、前記固体電解質層を設けることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
2. 「温水中で洗浄乾燥後のアルミニウム箔表面に残った正味固体電解質の質量」/「温水中で洗浄前のアルミニウム箔表面に形成された不純物を含む固体電解質の質量」×100で表わされる固体電解質の洗浄後残存率が55〜90%である前記1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
3. 誘電体皮膜層を有する弁作用金属をモノマー化合物を含む溶液に浸漬後乾燥する工程1、酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程2、及び酸化剤を含まない溶液に浸漬後乾燥する工程3を複数回繰り返す前記1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
4. 誘電体皮膜層を有する弁作用金属をモノマー化合物を含む溶液に浸漬後乾燥する工程1、酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程2、及び酸化剤を含まない溶液に浸漬後乾燥する工程3を複数回繰り返した後、モノマー化合物を含む溶液に浸漬後乾燥する工程1と酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程2を複数回繰り返す前記1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
5. 酸化剤を含まない溶液が水またはドーパント化合物及び/または界面活性剤の水溶液である前記1〜4のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
6. 弁作用金属を酸化剤を含まない水溶液に浸漬し保持する時間が0.1〜120秒の範囲である前記1〜5のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
7. 酸化剤が過硫酸塩である前記1〜4のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
8. 酸化剤を含まない溶液が有機微粒子を含む懸濁液である前記1〜6のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
9. 有機微粒子の平均粒子径(D50)が、1〜20μmの範囲である前記8に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
10. 有機微粒子が脂肪族スルホン酸化合物、芳香族スルホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物、芳香族カルボン酸化合物、それらの塩、及びペプチド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記9に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
11. 酸化剤を含む溶液が界面活性剤を含むことを特徴とする前記1〜10のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
12. 前記1〜11のいずれかに記載の製造方法で製造された固体電解コンデンサ。
微細孔を有する弁作用金属表面に誘電体層及び固体電解質層を有する固体電解コンデンサにおいて、固体電解質層全体に占める各層間の空間占有率が0.1〜20%である固体電解コンデンサ。
13. 微細孔を有する弁作用金属表面に誘電体層及び固体電解質層を有する固体電解コンデンサにおいて、固体電解質層全体に占める各層間の空間占有率が0.1〜20%である固体電解コンデンサ。
本発明によれば、短絡不良が少なく、素子形状のバラツキが少なく、薄いコンデンサ素子を安定して作製でき、固体電解コンデンサチップ内のコンデンサ素子の積層枚数を増やし高容量化可能で、等価直列抵抗のバラツキが小さい積層型固体電解コンデンサに適した固体電解コンデンサ素子を提供することができる。
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の方法を説明する。
本発明に使用する基板(1)表面の誘電体皮膜(2)は、通常、弁作用を有する金属の多孔質成形体を化成処理すること等により形成される。
本発明に使用できる弁作用を有する金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、珪素などの金属単体、またはこれらの合金である。また多孔質の形態については、圧延箔のエッチング物、微粉焼結体などの多孔質成形体の形態であればいずれでもよい。
次に、陽極基板としては、これら金属の多孔質焼結体、エッチング等で表面処理された板(リボン、箔等を含む。)、線等が使用できるが、好ましくは平板状、箔状のものである。さらに、この金属多孔体の表面に誘電体酸化皮膜を形成する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、アルミニウム箔を使用する場合には、ホウ酸、リン酸、アジピン酸、またはそれらのナトリウム塩、アンモニウム塩などを含む水溶液中で陽極酸化して酸化皮膜を形成することができる。また、タンタル粉末の焼結体を使用する場合には、リン酸水溶液中で陽極酸化して、焼結体に酸化皮膜を形成することができる。
例えば、弁作用金属箔の厚さは、使用目的によって異なるが、厚みが約40〜300μmの箔が使用される。薄型の固体電解コンデンサとするためには、例えばアルミニウム箔では、80〜250μmのものを使用し、固体電解コンデンサを設けた素子の最大高さを250μm以下となるようにすることが好ましい。金属箔の大きさ及び形状も用途により異なるが、平板状素子単位として幅約1〜50mm、長さ約1〜50mmの矩形のものが好ましく、より好ましくは幅約2〜15mm、長さ約2〜25mmである。
化成に用いる化成液、化成電圧等の化成条件は、製造される固体電解コンデンサに必要な容量、耐電圧等に応じて、予め実験により確認し適当な値に設定する。なお、化成処理に際しては、化成液が固体電解コンデンサの陽極となる部分に滲み上がるのを防止し、かつ後工程で形成される固体電解質(4)(陰極部分)との絶縁を確実とするために一般的にマスキング(3)が設けられる。
マスキング材としては一般的な耐熱性樹脂、好ましくは溶剤に可溶あるいは膨潤しうる耐熱性樹脂またはその前駆体、無機質微粉とセルロース系樹脂からなる組成物などが使用できるが、材料には制限されない。具体例としてはポリフェニルスルホン(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、シアン酸エステル樹脂、フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等)、低分子量ポリイミド及びそれらの誘導体及びその前駆体などが挙げられ、特に低分子量ポリイミド、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂及びそれらの前駆体が好ましい。
本発明は、弁作用金属多孔体基板を酸化剤溶液に浸漬した後乾燥して、酸化剤溶液濃度を基板上で徐々に高める工程を含む有機重合体モノマーの化学酸化重合を基本とする。本発明の化学酸化重合法では、モノマーを陽極基体の微細孔を有する誘電体皮膜上に付着させ、導電性重合体のドーパントとなり得る化合物の存在下、酸化的重合を生起させ、生じた重合体組成物を該固体電解質として誘電体表面上に形成させる。
本発明の方法によって形成される導電性重合体の固体電解質層は、フィブリル構造あるいはラメラ(薄い層状)構造をなしており、このような構造では広範囲に亘る重合体鎖間の重なりがある。本発明では、固体電解質層の全体の厚さを約10〜約100μmの範囲にし、重合体の層状構造の空間を0.01〜5μm、好ましくは0.05〜3μm、さらに好ましくは0.1〜2μmの範囲にし、重合膜全体に占める固体電解質の各層間の空間占有率を0.1〜20%の範囲にすることによって、重合体鎖間の電子ホッピングが容易となり電気伝導度が向上し、低インピーダンス等の特性の向上することを見出した。
以下、本発明における微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体皮膜上に固体電解質層を形成する方法について順を追って説明する。
本発明におけるモノマーを含む溶液に浸漬後乾燥する工程1は、誘電体表面上及び重合体組成物上にモノマーを供給するために実施される。さらに、誘電体表面上及び重合体組成物上にモノマーを均一に付着させるためにモノマー含有液を含浸後、一定の時間空気中で放置し溶媒を気化させる。この条件は溶媒の種類によって変わるが、概ね0℃以上から溶媒の沸点までの温度で行う。放置時間は、溶媒の種類によって変わるが、概ね5秒〜15分、例えばアルコール系溶媒では、5分以内でよい。この放置時間を設けることによりモノマーが誘電体表面上に均一に付着し、さらに次工程の酸化剤含有液への浸漬時の汚れを少なくすることができる。
モノマーの供給は、モノマーを含有する溶液に用いられる溶剤の種類、モノマー含有液の濃度、溶液温度、浸漬時間等によって制御することができる。
工程1で適用される浸漬時間は、含有液中のモノマー成分が金属箔基板の誘電体表面上に付着するに十分な時間以上15分未満の時間、好ましくは0.1秒〜10分、より好ましくは1秒〜7分とする。
また、浸漬温度は、−10〜60℃が好ましく、0〜40℃が特に好ましい。−10℃未満では、溶剤が揮発するのに時間がかかり反応時間が長くなることから好ましくなく、60℃を超えると、溶剤及びモノマーの揮発を無視することができず濃度管理が困難になる。
本発明の工程1において実施される乾燥温度は、室温から使用する溶剤の沸点の範囲の温度が好ましい。乾燥時間は、乾燥温度、雰囲気、風速、湿度等の組み合わせによって任意に選択することができるが、より具体的には1秒〜1時間が好ましく、より好ましくは10秒〜30分、特に好ましくは30秒〜10分である。
モノマー含有液の濃度は特に限定されず、任意の濃度のものを用いることができるが、弁作用金属の微細孔内への含浸性が優れた3〜70質量%が好ましく、より好ましくは25〜45質量%で使用される。
工程1で使用される溶液の溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)やジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン等の非芳香族性の塩素系溶媒;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類または水あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは、アルコール類またはケトン類あるいはそれらの混合系が望ましい。
本発明においてモノマーは、酸化剤含有液への浸漬及び一定の温度範囲において所定時間空気中で保持する工程2により酸化重合されるが、重合膜の形態をより緻密にするためには、空気中で保持する酸化重合を主とする方法が好ましい。空気中で保持する温度は、モノマーの種類により異なるが、例えばピロールでは5℃以下でよく、チオフェン系では約30〜60℃を必要とする。
重合時間は浸漬時のモノマーの付着量による。付着量はモノマー及び酸化剤含有液の濃度や粘度等で変わるので一概に規定できないが、一般に1回の付着量を少なくすると重合時間を短くすることができ、また1回の付着量を多くするとより長い重合時間が必要となる。本発明の方法では、一回の重合時間は10秒〜30分、好ましくは3〜15分とする。
工程2として適用される浸漬時間は、酸化剤成分が金属箔基板の誘電体表面上に付着するに十分な時間以上15分未満の時間、好ましくは0.1秒〜10分、より好ましくは1秒〜7分とする。
工程2において用いられる酸化剤としては、水溶液系の酸化剤と有機溶剤系の酸化剤が挙げられる。本発明で好ましく使用される水溶液系の酸化剤としては、ペルオキソ二硫酸及びそのNa塩、K塩、NH4塩、硝酸セリウム(IV)、硝酸セリウム(IV)アンモニウム、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、塩化鉄(III)等が挙げられる。また、有機溶剤系の酸化剤としては、有機スルホン酸の第二鉄塩、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、p−トルエンスルホン酸鉄(III)等が挙げられる。
本発明の工程2において用いられる溶液の溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)やジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、または水あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは、水、アルコール類またはケトン類あるいはそれらの混合系が望ましい。
なお、酸化剤溶液の濃度は5〜50質量%が好ましく、また酸化剤溶液の温度は−15〜60℃が好ましい。
本発明の工程2において実施される乾燥温度は、室温から使用する溶剤の沸点の範囲の温度が好ましい。乾燥時間は、乾燥温度、雰囲気、風速、湿度等の組み合わせによって任意に選択することができるが、より具体的には1秒〜1時間が好ましく、より好ましくは10秒〜30分、特に好ましくは30秒〜10分である。
本発明の工程2における浸漬後に実施される乾燥工程は、溶剤を蒸発させ酸化剤溶液を濃縮するために実施され、その乾燥工程で酸化剤と接触したモノマーの化学酸化重合が進行し、固体電解質が形成される。
本発明における酸化剤を含まない溶液に浸漬後乾燥する工程3は、工程2の後、乾燥過程を通じて誘電体表面上または重合体組成物上に形成された酸化剤を一部除去するために実施される。乾燥過程を通じて誘電体表面上または重合体組成物上に形成された酸化剤は、溶液に浸漬すること(洗浄ではなく)により大部分が溶解し除去される。溶解した酸化剤は、その近傍に拡散層を形成して存在しているが、その濃度が低いため再付着により誘電体表面上または重合体組成物上に残る酸化剤層は工程2の段階に比べて顕著に少なくなる。一方、重合体組成物に浸透した酸化剤は、工程3の短時間の浸漬によってはほとんど溶解除去されない。こうすることによって、重合工程で反応せずに残存する過剰の(未反応の)モノマーも次回の工程で重合可能となり、その結果広範囲な重なりを有する層状構造の導電性重合体からなる固体電解質を形成することができる。
工程3における浸漬時間として具体的には、0.1〜120秒の範囲であり、より好ましくは、0.1〜60秒、特に好ましくは、0.1〜30秒の範囲である。
固体電解質形成後の洗浄過程で酸化剤層は完全に溶解除去され、酸化剤層の存在していた空間が層状構造をなす重合膜を形成する。
層状構造をなす重合膜と重合膜に存在する層間距離としては、0.01〜5μmの範囲であり、より好ましくは0.1〜2μmの範囲である。
さらに、酸化剤を含んだ重合膜の質量に対し浸漬過程を通じて酸化剤を溶解除去された後の重合膜の質量が55〜90%、より好ましくは60〜85%であることが好ましい。
本発明における酸化剤を溶解除去した後の重合膜の体積に対する空間割合は、0.01〜20%であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜10%、さらに好ましくは0.5〜10%である。
工程3において用いられる溶液としては、工程2において使用された酸化剤を溶解する溶剤もしくは酸化剤を溶解できる溶液のいずれでも用いることができる。使用される溶剤としてより具体的には、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が用いられるが、好ましくは水またはアルコール類であり、特に好ましくは水である。
従来、高濃度の酸化剤を用いると微細孔を有する弁作用金属内の微細孔の入口が重合膜もしくは酸化剤により閉じられ、それ以降の細孔内へのモノマー供給もしくは酸化剤の供給が進行せず、細孔内の重合膜形成が不十分となることから容量の出現率の低下やリーク電流の増大等が生じていた。本発明の方法では、重合膜として機能していない酸化剤を重合の都度、不要分を除去するために細孔内の入口を密閉することがなく、その緻密な重合膜を形成するのに有効である。
工程2及び/または工程3では、有機微粒子を含む懸濁液がより好ましく用いられる。有機微粒子は、誘電体表面上または重合体組成物上に残存することによって、細孔内を重合膜で充填された平滑な重合膜表面への酸化剤及びモノマーの供給を助けるため有効である。特に、可溶性の有機微粒子を使用することによって固体電解質層を形成した後、可溶性の有機微粒子を溶解除去することができ、コンデンサ素子の信頼性を高めることができる。
有機微粒子を溶解除去する過程で用いられる溶剤としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が用いられるが、水またはアルコール類、もしくはそれらの混合溶剤が好ましく、酸化剤をも溶解させる溶剤であれば、酸化剤の除去と同時に実施できることからより好ましい。
なお、強酸の使用によって除去可能な可溶性の無機微粒子は、弁作用金属表面の誘電体皮膜をも溶解、もしくは腐食させる等のダメージを与えることから好ましくない。
可溶性の有機微粒子としては、平均粒子径(D50)が0.1〜20μmの範囲であることが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましい。可溶性の有機微粒子の平均粒子径(D50)が、20μmを超えると重合膜に形成される間隙が大きくなるため好ましくなく、0.1μm未満では、付着液の増量効果はなくなり水と同等になる。
可溶性の有機微粒子の具体例としては、脂肪族スルホン酸化合物、芳香族スルホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物、芳香族カルボン酸化合物、ペプチド化合物、または/及びその塩等が挙げられ、芳香族スルホン酸化合物、芳香族カルボン酸化合物、ペプチド化合物が好ましく用いられる。
芳香族スルホン酸化合物としてより具体的には、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アントラセンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸及び/またはその塩、芳香族カルボン酸化合物としてより具体的には、安息香酸、トルエンカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、アントラキノンカルボン酸または/及びその塩、ペプチド化合物としてより具体的には、サーファクチン、アイチュリン、プリパスタチン、セラウエッチン等を挙げることができる。
工程2及び/または工程3では、界面活性剤を使用することによって重合膜がより均一に形成される。すなわち、酸化剤溶液の濃縮乾燥過程でアルミニウム箔表面の酸化剤溶液の液切れを阻害し、液切れによる酸化剤溶液の凝集を防止することにより実現される。また、溶剤中に溶解した酸化剤が酸化剤溶液としてアルミニウム箔表面に再付着したときにアルミニウム箔表面の酸化剤溶液の液切れを阻害し、液切れによる酸化剤溶液の凝集を防止することにより実現される。界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ぺプチド系界面活性剤等が拳げられ、固体電解質を形成した後に洗浄除去できるものが好ましく用いられる。
陰イオン界面活性剤の具体例としては、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、脂肪酸、パーフルオロ脂肪酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、及びそれらの塩等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が拳げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アミンオキサイド、ペプチド系界面活性剤としては、サーファクチン、アイチュリン、プリパスタチン、セラウエッチン等が挙げられる。
これらの具体例の中でも、陰イオン性界面活性剤では、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、脂肪酸、パーフルオロ脂肪酸が好ましく、ノニオン性界面活性剤では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。
本発明の方法では、形成される導電性重合体組成物を湿度、熱、応力等に耐性を有する厚さにするために含浸回数を制御する必要がある。
本発明による固体電解質の好ましい形成工程の1つは、工程1、工程2、工程3の工程を1サイクルとして繰り返す方法である。前記サイクルは、1つの陽極基体に対して3回以上、好ましくは8〜30回繰り返すことによって、所望の固体電解質層を形成することができる。なお、工程1と工程2は逆順に行っても良いが、工程3は工程2の後で実施する。
本発明による固体電解質の好ましい形成工程の2つは、工程1、工程2、工程3の工程を1サイクルとして繰り返す工程(以下、サイクルAと略す。)を実施した後、工程1と工程2を1サイクルとする工程(以下、サイクルBと略す。)を繰り返す方法である。前記サイクルAを、1つの陽極基体に対して3回以上、好ましくは4〜10回繰り返した後、前記サイクルBを、1つの陽極基体に対して3回以上、好ましくは4〜30回繰り返しことによって、所望の固体電解質層を形成することができる。
本発明によれば、後述の実施例に示すように、誘電体酸化皮膜を有するアルミニウム箔を、例えば3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)のイソプロピルアルコール(IPA)溶液に含浸し、これを風乾してIPAを殆ど除去した後、約20質量%の酸化剤(過硫酸アンモニウム)水溶液に含浸後、40℃程度で10分間加熱することで、また、本工程を繰り返し実施することでポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の重合体を得ることができる。
本発明に用いられる固体電解質を形成する導電性重合体はπ電子共役構造を有する有機重合体モノマーの重合体であり、重合度2以上2000以下、より好ましくは3以上1000以下、さらに好ましくは5以上200以下である。具体例としては、チオフェン骨格を有する化合物、多環状スルフィド骨格を有する化合物、ピロール骨格を有する化合物、フラン骨格を有する化合物、アニリン骨格を有する化合物等で示される構造を繰り返し単位として含む導電性重合体が挙げられる。
チオフェン骨格を有するモノマーとしては、例えば、3−メチルチオフェン、3−エチルオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ペンチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−ノニルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−フルオロチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−シアノチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジエチルチオフェン、3,4−ブチレンチオフェン、3,4−メチレンジオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン等の誘導体を挙げることができる。これらの化合物は、一般には市販されている化合物または公知の方法(例えばSynthetic Metals誌, 1986年, 15巻, 169頁)で準備できる。
多環状スルフィド骨格を有するモノマーの具体例としては、1,3−ジヒドロ多環状スルフィド(別名、1,3−ジヒドロベンゾ[c]チオフェン)骨格を有する化合物、1,3−ジヒドロナフト[2,3−c]チオフェン骨格を有する化合物が使用できる。さらには1,3−ジヒドロアントラ[2,3−c]チオフェン骨格を有する化合物、1,3−ジヒドロナフタセノ[2,3−c]チオフェン骨格を有する化合物を挙げることができる。これらは公知の方法、例えば特開平8-3156号公報記載の方法により準備することができる。
また、1,3−ジヒドロナフト[1,2−c]チオフェン骨格を有する化合物が、1,3−ジヒドロフェナントラ[2,3−c]チオフェン誘導体や、1,3−ジヒドロトリフェニロ[2,3−c]チオフェン骨格を有する化合物が、1,3−ジヒドロベンゾ[a]アントラセノ[7,8−c]チオフェン誘導体なども使用できる。
縮合環に窒素またはN−オキシドを任意に含んでいる化合物も使用でき、例えば、1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンや、1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン−4−オキシド、1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン−4,9−ジオキシド等を挙げることができる。
ピロール骨格を有するモノマーとしては、例えば、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−ペンチルピロール、3−ヘキシルピロール、3−ヘプチルピロール、3−オクチルピロール、3−ノニルピロール、3−デシルピロール、3−フルオロピロール、3−クロロピロール、3−ブロモピロール、3−シアノピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジエチルピロール、3,4−ブチレンピロール、3,4−メチレンジオキシピロール、3,4−エチレンジオキシピロール等の誘導体を挙げることができる。これらの化合物は、市販品または公知の方法で準備できる。
フラン骨格を有するモノマーとしては、例えば、3−メチルフラン、3−エチルフラン、3−プロピルフラン、3−ブチルフラン、3−ペンチルフラン、3−ヘキシルフラン、3−ヘプチルフラン、3−オクチルフラン、3−ノニルフラン、3−デシルフラン、3−フルオロフラン、3−クロロフラン、3−ブロモフラン、3−シアノフラン、3,4−ジメチルフラン、3,4−ジエチルフラン、3,4−ブチレンフラン、3,4−メチレンジオキシフラン、3,4−エチレンジオキシフラン等の誘導体を挙げることができる。これらの化合物は市販品または公知の方法で準備できる。
アニリン骨格を有するモノマーとしては、例えば、2−メチルアニリン、2−エチルアニリン、2−プロピルアニリン、2−ブチルアニリン、2−ペンチルアニリン、2−ヘキシルアニリン、2−ヘプチルアニリン、2−オクチルアニリン、2−ノニルアニリン、2−デシルアニリン、2−フルオロアニリン、2−クロロアニリン、2−ブロモアニリン、2−シアノアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2,5−ジエチルアニリン、2,3−ブチレンアニリン、2,3−メチレンジオキシアニリン、2,3−エチレンジオキシアニリン等の誘導体を挙げることができる。これらの化合物は、市販品または公知の方法で準備できる。
これらの中でも、チオフェン骨格または多環状スルフィド骨格を有する化合物が好ましく、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)、1,3−ジヒドロイソチアナフテンが特に好ましい。
上記化合物群から選ばれる化合物の重合条件等には特に制限はなく、簡単な実験により予め好ましい条件を確認した上で容易に実施することができる。
また、上記モノマー群から選ばれる化合物を併用し、共重合体として固体電解質を形成させても良い。その時の重合性単量体の組成比などは重合条件等に依存するものであり、好ましい組成比、重合条件は簡単なテストにより確認できる。
例えば、EDTモノマー及び酸化剤を好ましくは溶液の形態において、前後して別々にまたは一緒に金属箔の酸化皮膜層に塗布して形成する方法等が利用できる(特許第3040113号公報、米国特許第6229689号公報)。
本発明において好ましく使用される3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)は、上記の一価アルコールによく溶けるが、水とはなじみが良くないため高濃度の酸化剤水溶液と接触させたときには、EDTはその界面において重合が良好に進行して、フィブリル構造あるいはラメラ(薄い層状)構造の導電性重合体固体電解質層が形成される。
本発明の製造方法においては固体電解質形成後の洗浄用溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン(THF)やジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン等の非芳香族性の塩素系溶媒;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸;該有機酸の酸無水物(例、無水酢酸等)または水あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは、水、アルコール類またはケトン類あるいはそれらの混合系が望ましい。
このようにして製造された固体電解質の電気伝導度は、約0.1〜約200S/cmの範囲であるが、好ましくは約1〜約150S/cm、さらに好ましくは約10〜約100S/cmの範囲である。
こうして形成された導電性重合体組成物層の上に、陰極リード端子との電気的接触を良くするために導電体層を設けることが好ましい。導電体層は例えば導電ペースト、メッキや蒸着、導電樹脂フィルムの貼付等により形成される。
本発明では、導電体層を形成した後に圧縮することもできる。例えば弾性体含む導電体層の場合には圧縮により塑性変形してさらに薄くさせることができ、かつ導電体層表面を平滑化させる効果もある。
かくして得られる固体電解コンデンサ素子は、通常、リード端子を接続して、例えば樹脂モールド、樹脂ケース、金属製の外装ケース、樹脂ディッピング等による外装を施すことにより、各種用途のコンデンサ製品とする。
以下に本発明について代表的な例を示し、さらに具体的に説明する。なお、これらは説明のための単なる例示であって、本発明はこれらに何等制限されるものではない。
実施例1:
アルミニウム化成箔(厚み100μm)を短軸方向3mm×長軸方向10mmに切り出し、長軸方向を4mmと5mmの部分に区切るように、両面に幅1mmのポリイミド溶液を周状に塗布、乾燥させマスキングを作成した。この化成箔の3mm×4mmの部分を、10質量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で4Vの電圧を印加して切り口部分に化成し、誘電体酸化皮膜を形成した。次に、このアルミニウム箔の3mm×4mmの部分を、3,4−エチレンジオキシチオフェンを溶解させた2.0mol/Lのイソプロピルアルコール(IPA)溶液に5秒間含浸し、これを室温で5分間乾燥した(工程1)。次いで、2−アントラキノンスルホン酸ナトリウム(D50=11μm;シスメックス(株)製マスターサイザーを用いて測定。)が0.07質量%となるように調整した1.5mol/Lの過硫酸アンモニウム水溶液に5秒間浸漬し、このアルミニウム箔を40℃の大気中で10分間放置して酸化的重合を行った(工程2)。引き続き、この箔を蒸留水に5秒間含浸させ、アルミニウム箔を取りだし、40℃の大気中で10分間放置することにより酸化的重合を行った(工程3)。さらにこの浸漬工程及び重合工程(工程1〜3)を全体で22回となるようにして、導電性重合体の固体電解質層をアルミニウム箔の外表面に形成した。最終的に生成したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を50℃温水中で洗浄し、その後100℃で30分乾燥を行い、固体電解質層を形成した。なお、「温水中で洗浄乾燥後のアルミニウム箔表面に残った正味固体電解質の質量」/「温水中で洗浄前のアルミニウム箔表面に形成された不純物を含む固体電解質の質量」×100で表わされる固体電解質の洗浄後残存率は、84%であった。
膜厚計(Peacock社製:デジタルダイヤルゲージ DG-205,精度3μm)を用いて、アルミニウム箔を膜厚計の測定部にゆっくりと挟んで厚みを測定した。120素子の平均膜厚は140μm、標準偏差は7μmであった。
また、重合膜の走査電子顕微鏡(Hitachi社製:S−900)によるアルミ箔及びアルミ箔上の重合膜の断面写真を図2に示す。さらに、アルミニウム箔の多孔質層内に形成された重合膜の写真を図3に示す。
次に、固体電解質層を形成した3mm×4mmの部分を、15質量%アジピン酸アンモニウム溶液中に浸漬し、固体電解質層を形成していない部分の弁作用金属箔に陽極の接点を設けて3.8Vの電圧を印加し、再化成を行った。
次に、図4に示すように上記アルミニウム箔の導電性重合体組成物層を形成した部分にカーボンペーストと銀ペーストを付けて上記アルミニウム箔を4枚積層し、陰極リード端子を接続した。また、導電性重合体組成物層の形成されていない部分には陽極リード端子を溶接により接続した。さらに、この素子をエポキシ樹脂で封止した後、125℃で定格電圧(2V)を印加して2時間エージングを行い、合計30個のコンデンサを完成させた。
これら30個のコンデンサ素子について、初期特性として120Hzにおける容量と損失係数(tanδ×100(%))、等価直列抵抗(ESR)、それに漏れ電流を測定した。なお、漏れ電流は定格電圧を印加して1分後に測定した。表1にこれらの測定値の平均値と、0.002CV以上の漏れ電流を不良品としたときの不良率を示した。ここで、漏れ電流の平均値は不良品を除いて計算した値である。
実施例2:
アルミニウム化成箔(厚み100μm)を短軸方向3mm×長軸方向10mmに切り出し、長軸方向を4mmと5mmの部分に区切るように、両面に幅1mmのポリイミド溶液を周状に塗布、乾燥させマスキングを作成した。この化成箔の3mm×4mmの部分を、10質量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で4Vの電圧を印加して切り口部分に化成し、誘電体酸化皮膜を形成した。次に、このアルミニウム箔の3mm×4mmの部分を、3,4−エチレンジオキシチオフェンを溶解させた2.0mol/Lのイソプロピルアルコール(IPA)溶液に5秒間含浸し、これを室温で5分間乾燥した(工程1)。次いで、2−アントラキノンスルホン酸ナトリウムが0.07質量%となるように調整した2.0mol/Lの過硫酸アンモニウム水溶液に5秒間浸漬し、このアルミニウム箔を40℃の大気中で10分間放置することで酸化的重合を行った(工程2)。引き続き、蒸留水に5秒間含浸し、このアルミニウム箔を40℃の大気中で10分間放置することで酸化的重合を行った(工程3)。工程1〜3からなるサイクルAを1サイクルとして4回繰り返した。
さらに、上述のモノマー溶液に5秒間含浸し、これを室温で5分間乾燥した(工程1)。次いで、上述の酸化剤を含む溶液に5秒間浸漬し、このアルミニウム箔を40℃の大気中で10分間放置することで酸化的重合を行った(工程2)。この工程1及び2からなるサイクルBを全体で10回となるようにして、導電性重合体の固体電解質層をアルミニウム箔の外表面に形成した。最終的に生成したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を50℃温水中で洗浄し、その後100℃で30分乾燥を行い、固体電解質層を形成した。実施例1と同様にして求めた固体電解質の残存率は、65%であった。
実施例1と同様にしてアルミニウム箔の厚みを測定したところ、120素子の平均膜厚は、173μm、標準偏差は、12μmであった。
また、重合膜の走査電子顕微鏡(Hitachi社製:S−900)によるアルミ箔及びアルミ箔上の重合膜の断面写真を図4に示す。
次に、再化成、カーボンペーストと銀ペーストの塗布、積層、陰極リード端子の接続、エポキシ樹脂で封止、エージング操作は実施例1と同様に行い、合計30個のコンデンサを完成させた。得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1に示す。
実施例3:
実施例1の工程3の浸漬工程において、蒸留水に替えて2−アントラキノンスルホン酸ナトリウム(D50=11μm)が2質量%となるように調製した懸濁液を使用し、工程1〜3の繰り返し回数を9回としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解質層を形成した。実施例1と同様にして求めた固体電解質の残存率は、79%であった。実施例1と同様にしてアルミニウム箔の厚みを測定したところ、120素子の平均膜厚は、146μm、標準偏差は、16μmであった。
次に、実施例1と同様にして30個のコンデンサを完成させた。得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1に示す。
実施例4:
実施例1の工程3の浸漬工程において、蒸留水に替えて2.0質量%の界面活性剤ペプチドであるアミノフェクト(昭和電工(株)製,D50=2μm)水溶液に1mol/Lの硫酸水を滴下し水溶液のpHを4に調整して調製した懸濁液を使用し、工程1〜3の繰り返し回数を15回としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解質層を形成し、実施例1と同様にしてアルミニウム箔の厚みを測定したところ、120素子の平均膜厚は136μm、標準偏差は4μmであった。さらに、実施例1と同様にして求めた固体電解質の残存率は、80%であった。
次に、実施例1と同様にして30個のコンデンサを完成させた。得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1に示す。
実施例5:
実施例1において、3,4−エチレンジオキシチオフェンに代えてピロールを使用し、ピロール溶液含浸後は、3℃で5分間乾燥し、さらに酸化剤溶液含浸後、5℃で10分間重合、蒸留水への含浸後、5℃で10分間乾燥したこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解質層を形成し、同様にしてアルミニウム箔の厚みを測定したところ、120素子の平均膜厚は147μm、標準偏差は8μmであった。さらに、実施例1と同様にして求めた固体電解質の残存率は、75%であった。
次に、実施例1と同様にして30個のコンデンサを完成させ、得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1に示す。
実施例6:
実施例1の工程2の浸漬工程において、2−アントラキノンスルホン酸ナトリウムが0.07質量%(D50=9μm;シスメックス(株)製マスターサイザーを用いて測定。)となるように調整した2.0mol/Lの過硫酸アンモニウム水溶液にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.1質量%になるように溶解させた懸濁液に5秒間浸漬し、工程1〜3の繰り返し回数を10回としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解質層を形成した。実施例1と同様にして測定したアルミニウム箔の厚みを測定したところ、120素子の平均膜厚は126μm、標準偏差は3μmであった。さらに、実施例1と同様にして求めた固体電解質の残存率は、77%であった。
次に、実施例1と同様にして30個のコンデンサを完成させ、得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1に示す。
比較例1:
実施例1において、工程3(蒸留水に5秒間含浸し、このアルミニウム箔を40℃の大気中で10分間放置する酸化的重合工程)を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解質層を形成し、同様にして測定したアルミニウム箔の厚みを測定したところ、120素子の平均膜厚は204μm、標準偏差は31μmであった。なお、実施例1と同様にして求めた固体電解質の残存率は、49%であった。
また、アルミニウム箔の多孔質層内に形成された重合膜の走査電子顕微鏡(Hitachi社製:S−900)による写真を図6に示す。
次に、実施例1と同様にして30個のコンデンサを完成させ、得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1に示す。
比較例2:
実施例1において、工程3(蒸留水に5秒間含浸し、このアルミニウム箔を40℃の大気中で10分間放置する酸化的重合工程)を実施せず、また工程1と工程2の繰り返し回数を15回としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解質層を形成し、同様にして測定したアルミニウム箔の厚みを測定したところ、120素子の平均膜厚は171μm、標準偏差は26μmであった。なお、実施例1と同様にして求めた固体電解質の残存率は、50%であった。
次に、実施例1と同様にして30個のコンデンサを完成させ、得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1に示す。
比較例3:
実施例5において、工程3(蒸留水に5秒間含浸し、このアルミニウム箔を5℃の大気中で10分間放置する酸化的重合工程)を実施しなかったこと以外は、実施例5と同様にして、固体電解質層を形成し、アルミニウム箔の厚みを測定したところ、120素子の平均膜厚は224μm、標準偏差は36μmであった。なお、実施例1と同様にして求めた固体電解質の残存率は、51%であった。
次に、実施例1と同様にして30個のコンデンサを完成させ、得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1に示す。
コンデンサ素子を用いた固体電解コンデンサ例の断面図。 実施例1のコンデンサ素子部のSEM断面写真(5,000倍)。 実施例1のコンデンサ素子部の細孔内のSEM写真(50,000倍)。 実施例2のコンデンサ素子部のSEM断面写真(5,000倍)。 比較例1のコンデンサ素子部の細孔内のSEM写真(50,000倍)。 コンデンサ素子を積層して得られた固体電解コンデンサ例の断面図。
符号の説明
1 陽極基体
2 誘電体(酸化皮膜)層
3 マスキング
4 半導体(固体電解質)層
5 導電体層
6,7 リード線
8 封止樹脂
9 固体電解コンデンサ

Claims (13)

  1. 微細孔を有する弁作用金属表面に形成された誘電体皮膜上にモノマーを酸化剤により重合させて導電性重合体組成物を含む固体電解質層を設けた固体電解コンデンサの製造方法において、誘電体皮膜層を有する弁作用金属を、モノマーを含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程1)、酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程2)、及び酸化剤を含まない溶液に浸漬後乾燥する工程(工程3)を含む方法により、前記固体電解質層を設けることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 「温水中で洗浄乾燥後のアルミニウム箔表面に残った正味固体電解質の質量」/「温水中で洗浄前のアルミニウム箔表面に形成された不純物を含む固体電解質の質量」×100で表わされる固体電解質の洗浄後残存率が55〜90%である請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  3. 誘電体皮膜層を有する弁作用金属をモノマー化合物を含む溶液に浸漬後乾燥する工程1、酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程2、及び酸化剤を含まない溶液に浸漬後乾燥する工程3を複数回繰り返す請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  4. 誘電体皮膜層を有する弁作用金属をモノマー化合物を含む溶液に浸漬後乾燥する工程1、酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程2、及び酸化剤を含まない溶液に浸漬後乾燥する工程3を複数回繰り返した後、モノマー化合物を含む溶液に浸漬後乾燥する工程1と酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程2を複数回繰り返す請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  5. 酸化剤を含まない溶液が水またはドーパント化合物及び/または界面活性剤の水溶液である請求項1〜4のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  6. 弁作用金属を酸化剤を含まない水溶液に浸漬し保持する時間が0.1〜120秒の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  7. 酸化剤が過硫酸塩である請求項1〜4のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  8. 酸化剤を含まない溶液が有機微粒子を含む懸濁液である請求項1〜6のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  9. 有機微粒子の平均粒子径(D50)が、1〜20μmの範囲である請求項8に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  10. 有機微粒子が脂肪族スルホン酸化合物、芳香族スルホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物、芳香族カルボン酸化合物、それらの塩、及びペプチド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  11. 酸化剤を含む溶液が界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法で製造された固体電解コンデンサ。
  13. 微細孔を有する弁作用金属表面に誘電体層及び固体電解質層を有する固体電解コンデンサにおいて、固体電解質層全体に占める各層間の空間占有率が0.1〜20%である固体電解コンデンサ。
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