JP2006324656A - 固体電解コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 固体電解コンデンサ素子用導体を複数個、支持板に列状に取り付け、この導体列をモノマー含有溶液と酸化剤含有溶液に順次浸漬し引き上げることにより各導体表面上に固体電解質層を形成するに際し、各導体の高さが異なるように支持板を引き上げる工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ素子の製造方法、それにより製造される固体電解コンデンサ素子、その固体電解コンデンサ素子を複数積層してなる積層型固体電解コンデンサ。
【選択図】図4
Description
(1)従来、溶液からの引き上げは導体列が水平になるように行なわれているが、この場合、各導体上の固体電解質層は、テンポラリーバーの中央部に取り付けた導体で最も厚く、両端に行くに従い層厚が低下していること、
(2)この層厚分布はテンポラリーバーを傾斜させて引き上げを行なうことによって制御し得ること、特に、
(3)モノマーを含む溶液と酸化剤を含む溶液への浸漬及び引き上げを複数回繰り返してモノマーを重合させ固体電解質層を形成する際、テンポラリーバーを傾斜させて引き上げを行ない、かつ、その傾け方(傾斜の向き)を引き上げごとに変化させること、特にその傾斜の向きを引き上げごとに左右逆転することで、素子間の固体電解質層の厚さを均一化させ得ることを見出し、本発明に至った。
1.固体電解コンデンサ素子用導体を複数個、支持板に列状に取り付け、この導体列をモノマー含有溶液と酸化剤含有溶液に順次浸漬し引き上げることにより各導体表面上に固体電解質層を形成するに際し、各導体の高さが異なるように支持板を引き上げる工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ素子の製造方法。
2.支持板を液面に対して傾斜させて引き上げることを特徴とする前記1に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
3.引き上げ操作を複数回繰り返し、引き上げごとに前記傾斜の向きを変化させる前記1または2に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
4.酸化剤を含む溶液からの引き上げを前記傾斜の向きを変化させて行なう前記3に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
5.表面に微細孔を有する弁作用金属の薄板または箔を誘電体層形成溶液に浸漬して通電を行なうことにより誘電体酸化皮膜を形成する工程を含む前記1〜4のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
6.傾斜度(傾斜時における支持板両端の導体の高さの差/両導体間の距離)が0.05〜2.5%となるように傾斜させて引き上げを行なう前記1〜5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
7.傾斜度が0.3〜1.5%となるように傾斜させて引き上げを行なう前記6に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
8.固体電解コンデンサ素子用導体を取り付けた複数の支持板を枠体に保持し、枠体の傾斜度を制御しつつ処理液上で上下させて前記浸漬及び引き上げ操作を行なう前記1〜7のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
9.前記1〜8のいずれかに記載の製造方法により製造される固体電解コンデンサ素子。
10.前記9に記載の固体電解コンデンサ素子を複数積層してなる積層型固体電解コンデンサ。
11.前記1〜8のいずれかに記載の製造方法を採用する固体電解コンデンサ素子製造装置。
12.前記10に記載の積層型固体電解コンデンサを備えた電気機器。
本発明の好ましい実施形態は、支持板(テンポラリーバー)(10)に取り付けた複数の導体(誘電体の酸化被膜層(2)を形成していてもよい陽極基体)(1)を処理液(11)から引き上げるに際し、各導体(1)の高さが異なるように支持板(10)を引き上げる工程を含むものであり、特に好ましくは、複数の固体電解コンデンサ素子用導体(1)を支持板(10)にその下辺に沿って列状に取り付け、この導体(1)の列をモノマー含有溶液と酸化剤含有溶液に順次浸漬し引き上げることにより各導体上に固体電解質層を形成する固体電解コンデンサ素子の製造方法において、処理液(11)からの引き上げを、列の両端の導体(1)の高さが異なるように支持板(10)を傾斜させて行なうことを特徴とする。
従来法において層厚分布が中央で厚く両端で薄くなる理由の詳細は定かではないが、従来法では引き上げ時に導体に付着した溶液は、支持板(テンポラリーバー)の中央部の導体に集まって液切れし、このような液切れが起こる結果、中央部の導体厚さが厚く、両端の導体の固体電解層が厚さは薄くなると考えられる。一方、本発明の好ましい実施形態では、導体列を傾けて引き上げるため、端部aの高さが低いときには、液切れは端部aであるいは中央より端部a寄りの位置で起こり、端部bの高さが低いときには、液切れは端部bであるいは中央より端部b寄りの位置で起こる。この結果、層厚分布の制御が可能であり、傾斜の向きを引き上げごとに変える(図4〜5の操作を繰り返す)ことにより、液切れの起こる位置が平均化され、結果として、各素子間の固体電解質層の厚みが均一化するものと考えられる。
また、傾きを持たせた引き上げ(以下、傾斜引き上げともいう。)は、モノマーを含む溶液からの引き上げ時にのみ行なってもよいし、酸化剤を含む溶液からの引き上げ時にのみ行なってもよく、これら両者において行なってもよい。もっとも、実際に重合が進行するのはモノマー及び酸化剤を含む溶液と空気の接触時であるため、酸化剤を含む溶液からの引き上げ時に傾斜引き上げを行なうのが好ましい。また、通常は、図4と図5で示されるように、傾斜の向きを左右交互に変化させるのが好ましい。
傾斜の度合い(傾斜時における支持板両端の導体の高さの差/両導体間の距離、すなわち、傾斜時における支持板の両端の高さの差/支持板の長手方向の長さ)は、支持板や導体の大きさ及び材質、溶液の成分、粘度及び温度、支持板上の導体の間隔、引き上げ速度等にもよるが、通常は、前記定義における傾斜度が0.05〜2.5%、好ましくは0.3〜1.5%の範囲である。例えば、約225mmの長さを有する支持板を用いた場合、両端の高さの差を、通常0.1mm〜5mmの範囲内、好ましくは1mm〜3mmに設定する。傾斜が小さ過ぎると本発明の効果がない。傾斜が大き過ぎると液切れ位置が極端に偏ってしまい、却って制御が困難になる。
好適な引き上げ速度は、各溶液の種類等に依存し特に限定されないが、一般に引き上げが遅いと層厚が薄くなり、引き上げが速いと層厚が厚くなる傾向があり、例えば、500〜20,000μm/sec(好ましくは2,000〜8,000μm/sec)である。
支持板に取り付ける固体電解コンデンサ素子用導体は、誘電体の酸化被膜層を形成していてもよく、酸化被膜層が形成される陽極基体として用いられる材料は、すべての慣用の材料及び陽極基体として利用可能なものを含むが、一般的には、弁作用を有する金属である。本発明に使用できる弁作用を有する金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、珪素などの金属単体、またはこれらの合金である。また多孔質の形態については、圧延箔のエッチング物、微粉焼結体などの多孔質成形体の形態であればいずれでもよい。
前記のように支持板を導電性の支持板とした場合、例えば、モノマー含有溶液への浸漬に先立ち、表面に微細孔を有する弁作用金属の薄板または箔を支持板に取り付け、これを誘電体層形成溶液に浸漬して通電を行なうことにより誘電体酸化皮膜を形成することが好ましい。
このような導体を支持板に10〜50個程度取り付けることで、これらを支持板の下辺に沿って平行に列状に配置する。取り付け方法は特に限定されず、通常は、ハンダ付け、溶接等により行なう。支持板をさらにハンドリングフレームと称される支持枠に数10〜数100枚ずつをセットし処理してもよい。
本発明におけるモノマーを含む溶液に浸漬後乾燥する工程1は、誘電体表面上及び重合体組成物上にモノマーを供給するために実施される。さらに、誘電体表面上及び重合体組成物上にモノマーを均一に付着させるためにモノマー含有液を含浸後、一定の時間空気中で放置し溶媒を気化させる。この条件は溶媒の種類によって変わるが、概ね0℃以上から溶媒の沸点までの温度で行う。放置時間は、溶媒の種類によって変わるが、概ね5秒〜15分、例えばアルコール系溶媒では、5分以内でよい。この放置時間を設けることによりモノマーが誘電体表面上に均一に付着し、さらに次工程の酸化剤含有液への浸漬時の汚れを少なくすることができる。
工程1で適用される浸漬時間は、含有液中のモノマー成分が金属箔基板の誘電体表面上に付着するに十分な時間以上15分未満の時間、好ましくは0.1秒〜10分、より好ましくは1秒〜7分とする。
本発明の工程2において用いられる溶液の溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)やジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、または水あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは、水、アルコール類またはケトン類あるいはそれらの混合系が望ましい。
上記化合物群から選ばれる化合物の重合条件等には特に制限はなく、簡単な実験により予め好ましい条件を確認した上で容易に実施することができる。
例えば、EDTモノマー及び酸化剤を好ましくは溶液の形態において、前後して別々にまたは一緒に金属箔の酸化皮膜層に付着させて形成する方法等が利用できる(特許第3040113号公報、米国特許第6229689号公報)。
また、モノマーを含む溶液もしくは酸化剤を含む溶液を微粒子を含む懸濁液として、導電性重合体膜の形成を促進する方法が提案されており、微粒子として導電性ポリマー粒子を添加する方法(特許第3478987号公報)、ポリマー微粒子を含むコロイド粒子を添加する方法(特開平9-306788号公報)、無機微粒子を添加する方法(特開平11-283875号公報)が開示されている。本発明でもこれらの方法を用いることができる。
(a)支持板への導体の取り付け
アルミニウム箔表面に慣用の方法により化成処理を施して形成したアルミニウム化成箔(厚み100μm)を1片が3mm×10mmの矩形状となるように切り出した。この化成箔30枚を短辺(3mm)側の端部から2mm迄がステンレス鋼製支持板(224mm×15mm×1.0mm(SUS304製)。以下、テンポラリーバーという。)に重なるように4mm間隔で1列にハンダ付けした。次いで、各化成箔について、長軸方向を4mmと5mmの部分に区切るように、両面に幅1mmのフッ素樹脂を周状に塗布、乾燥させマスキングを作成した。
アルミニウム化成箔を列状に取り付けたこのテンポラリーバーを、5質量%アジピン酸アンモニウム水溶液上に移動させ、前記溶液に向けて垂直に降下させることにより、各化成箔の3mm×4mmの部分を溶液に浸漬させ、そのまま、4Vの電圧を印加して切り口部分に化成し、誘電体酸化皮膜を形成した。
次に、このテンポラリーバーを3,4−エチレンジオキシチオフェンを溶解させた2.0mol/Lのイソプロピルアルコール(IPA)溶液(モノマー溶液)上に移動させ、前記溶液に向けて垂直に降下させることにより、各化成箔の3mm×4mmの部分を前記溶液に3秒間浸漬させた。これを化成箔列を水平に保ったまま引き上げ、室温で2分間乾燥した。
一方、20質量%の過硫酸アンモニウム水溶液(酸化剤溶液)を調整し、前記のテンポラリーバーをこの溶液上に移動し、前記溶液に向けて垂直に降下させることにより、各化成箔の3mm×4mmの部分を前記溶液に浸漬させた。5秒経過後、テンポラリーバーの右側だけを2mm上昇させ、続いて全体を過硫酸アンモニウム水溶液から引き上げた。この時の引き上げ速度は3200μm/secで実施した。続いてこのアルミニウム箔を40℃の大気中で10分間放置して酸化的重合を進行させた。
以上の(c)〜(d)の各浸漬工程及び重合工程を全体で20回実施したが、(d)工程の過硫酸アンモニウム水溶液への浸漬では、奇数回はテンポラリーバーの右側、偶数回はテンポラリーバーの左側を2mmだけ、それぞれ引き上げ前に上昇させた後テンポラリーバーの全体を引き上げた。最終的に生成したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を50℃温水中で洗浄し、その後、110℃で10分乾燥を行い、固体電解質層を形成した。
次に、固体電解質層を形成した3mm×4mmの部分を、5質量%アジピン酸アンモニウム溶液中に浸漬し、再化成を行なった。
さらに、上記アルミニウム箔の導電性重合体組成物層を形成した部分にカーボンペーストと銀ペーストを付着させて上記アルミニウム箔を4枚積層し、陰極リード端子を接続した。また、導電性重合体組成物層の形成されていない部分には陽極リード端子を溶接により接続した。この素子をエポキシ樹脂で封止した後、125℃で定格電圧(2V)を印加して2時間エージングを行い、コンデンサを完成させた。
実施例1の引き上げ速度を3000μm/secにした以外は、実施例1と同様にして、固体電解質層を形成した。実施例1と同様にして測定したアルミニウム箔の厚みを測定した。素子の平均膜厚及び標準偏差(σ/平均膜厚)を、製造条件とともに表1にまとめて示す。
実施例1の引き上げ速度を2500μm/secにしたこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解質層を形成した。実施例1と同様にして測定したアルミニウム箔の厚みを測定した。素子の平均膜厚及び標準偏差(σ/平均膜厚)を、製造条件とともに表1にまとめて示す。
実施例1において、いずれの溶液からの引き上げもテンポラリーバーを水平のまま(すなわち、斜め引き上げを実施せず)行なった以外は、実施例1と同様にして、固体電解質層を形成した。同様にして測定したアルミニウム箔の厚みを測定したところ、平均膜厚は201μm、標準偏差は33.6μmであった。テンポラリーバーの中央部分と両端部分のアルミニウム箔の厚みを測定したところ、それぞれ358μm、135μmであり、著しく大きな差が生じていることが確認できた。
実施例2において、引き上げ時にテンポラリーバーの傾斜引き上げを実施しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、固体電解質層を形成した。テンポラリーバーの中央部分と両端部分のアルミニウム箔の厚みを測定したところ、それぞれ317μm、128μmであり、著しく大きな差が生じていることが確認できた。
150枚のテンポラリーバーを4mm間隔で、SUSステンレス製枠体(ハンドリングフレーム)に収容し、ハンドリングフレームごと上昇・下降・傾斜を行なうことにより、実施例1及び比較例1と同様の処理を行った(本実施例4及び本比較例3)ところ、実施例4では、実施例1〜3及び比較例1,2の場合と同様に、テンポラリーバーの中央部における層厚と両端部の層厚の差が比較例3よりもそれぞれ数十%程度低減されており、比較例3に見られる中央部が極端に厚くなる現象が緩和された。
2 誘電体(酸化皮膜)層
3 マスキング層
4 半導体(固体電解質)層
5 導電体層
6 コンデンサ素子
7 陽極リード線
8 陰極リード線
9 封止樹脂
10 支持板(テンポラリーバー)
11 処理液
Claims (12)
- 固体電解コンデンサ素子用導体を複数個、支持板に列状に取り付け、この導体列をモノマー含有溶液と酸化剤含有溶液に順次浸漬し引き上げることにより各導体表面上に固体電解質層を形成するに際し、各導体の高さが異なるように支持板を引き上げる工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 支持板を液面に対して傾斜させて引き上げることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 引き上げ操作を複数回繰り返し、引き上げごとに前記傾斜の向きを変化させる請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 酸化剤を含む溶液からの引き上げを前記傾斜の向きを変化させて行なう請求項3に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 表面に微細孔を有する弁作用金属の薄板または箔を誘電体層形成溶液に浸漬して通電を行なうことにより誘電体酸化皮膜を形成する工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 傾斜度(傾斜時における支持板両端の導体の高さの差/両導体間の距離)が0.05〜2.5%となるように傾斜させて引き上げを行なう請求項1〜5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 傾斜度が0.3〜1.5%となるように傾斜させて引き上げを行なう請求項6に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 固体電解コンデンサ素子用導体を取り付けた複数の支持板を枠体に保持し、枠体の傾斜度を制御しつつ処理液上で上下させて前記浸漬及び引き上げ操作を行なう請求項1〜7のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により製造される固体電解コンデンサ素子。
- 請求項9に記載の固体電解コンデンサ素子を複数積層してなる積層型固体電解コンデンサ。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法を採用する固体電解コンデンサ素子製造装置。
- 請求項10に記載の積層型固体電解コンデンサを備えた電気機器。
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JP2011129805A (ja) * | 2009-12-21 | 2011-06-30 | Murata Mfg Co Ltd | 固体電解コンデンサ及びその製造方法 |
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2006
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