JP2005157251A - リフレクタ、光源装置、及び投射型表示装置 - Google Patents

リフレクタ、光源装置、及び投射型表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 光を熱に変換して効率よく放散すると同時に、各部の熱膨張係数の差に起因する応力歪みを緩和して性能劣化を抑えることができ、さらにはコストを低減、小型・軽量化を可能とする。
【解決手段】 リフレクタを構成する凹面鏡基材1は、熱伝導率の大きいアルミニウム等の基材で構成する。赤外線熱変換層2は、前記アルミニウム等の基材を陽極酸化することで成膜形成して、可視光反射層4を透過する波長領域の光を吸収させ、これを熱に変換させる。光沢緩衝層3は、赤外線熱変換層2の内側(光源側の面)に、Si系樹脂もしくはポリイミド系樹脂を高温で焼成することで成膜形成して、赤外線熱変換層2と可視光反射層4とが直接接しないように両者を緩衝させると共に、赤外線熱変換層2に生じた凹凸の影響を軽減させ、可視光反射層4の光源側の表面を平滑面にさせる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光源から放射される光を所望の方向へ反射させるリフレクタと、前記リフレクタを備えた光源装置、及び前記リフレクタを含む光源装置を備えた投射型表示装置に関する。
従来の投射型表示装置では、輝度の高い光源として、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等を使用しており、また、光源から放射される光を所望の方向へ反射させるリフレクタを使用していた。このリフレクタは、主として凹面鏡から成り、光源から放射される光を所望の方向へ反射させる機能を備えている。
前記メタルハライドランプや、高圧水銀ランプは、発熱量が大きいので、そのままでは、使用時にランプ自体が高温に達するため、強制冷却しなければならない。即ち、使用時にランプ自体が高温に達すると、ランプ本体、及びランプからの光を所望の方向へ反射させる前述の凹面鏡の温度を過度に上昇させることになり、ランプ自体の寿命を縮めたり、凹面鏡の反射層に劣化を生じさせる等の様々なトラブルを生じる。このため、前述の高輝度光源装置では、上記光源とリフレクタを備えた光源装置の周辺に冷却ファンを配置して、光源装置全体を強制冷却する冷却機構の付加が不可欠となっていた。
従来、このような高輝度光源装置を使用する投射型表示装置は、据え置き型の比較的大きなものが主流であったが、最近は、持ち運びが容易な小型軽量のものが求められている。このため、光源装置としても、小型の投射型表示装置向けの小型高輝度光源装置が要求されている。
このような光源装置の小型化のためには、ランプ自体の小型化だけではなく、リフレクタの主たる構成要素である凹面鏡も小さくすることが求められる。しかし、凹面鏡を小さくすると、凹面鏡(リフレクタ)は光源の放熱器としての役割も担っているため、光源自体の放熱能力が低下するという問題点が生じる。
このような問題点の対策として、発光管側より冷却風を吹き込むための吹き付け冷却ファンを設ける手段と、吹込んだ冷却風が発光管や封止管部を冷却し、発光管挿入筒部を抜けて一方の封止管部を冷却する手段と、さらに熱を投射型表示装置外部に排気させる手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
図6は、従来のリフレクタ、光源装置、及び投射型表示装置の全体構成を示す構成図である。
同図において、従来の投射型表示装置は、主要な構成要素として、リフレクタを含む光源装置100と、回転するカラーホイール101と、ロッドレンズ102と、コンデンサレンズ103と、TIRプリズム104と、反射ミラー105と、光変調部106と、投影レンズ107(拡大投影用光学系)と、強制冷却機構110とを備える。
光源装置100は、凹面鏡基材1cと、可視光反射層4と、光源10と、固着部材11と、透明の防爆ガラス12とを備える。
以下、まず、従来の光源装置の構造と機能について説明する。
図5において、従来の光源装置100の凹面鏡基材1cは、アルミニウム等の基材で構成されている。この凹面鏡基材1cの内側(光源側の面)には、コールドミラー層から成る可視光反射層4が形成されている。この可視光反射層4は、光源10から放射される赤外線を透過し、かつ可視光を選択的に反射する機能を有する。なお、光源10は、二酸化チタンと二酸化シリコンとを交互に蒸着した多重干渉膜で構成され、凹面鏡基材1に固着部材11によって固着されている。
次に、図6に示す従来の投射型表示装置の機能を説明する。
光源10から出力した光は、凹面反射鏡をなす可視光反射層4で反射し、さらに回転するカラーホイール101により、時分割でR、G、Bの光を順次透過させる。カラーホイール101を透過した光は、ロッドレンズ102により拡散整形され、コンデンサレンズ103、TIRプリズム104、反射ミラー105を経て、光変調部106に投射される。光変調部106は、投射された光の色と画像情報とに応じて、光変調を行う。そして光変調された光を、拡大投影用光学系107を経てスクリーン(図示せず)に投射することにより、フルカラー画像の表示を行うことができる。
この強制冷却機構110を強化する手段としては、強制冷却機構自体を大きくすることであるため、システムの小型化という本来の目的との間に矛盾を生じてしまう。また、冷却ファンによる騒音の問題も生じてしまう。
そこで、リフレクタ自体の放熱能力を向上させることにより、冷却能力を向上させる手段が開示されている。すなわち、可視光反射手段(可視光反射層4)にてランプから放射された赤外線を吸収し、これを熱として効率良く前記凹面鏡基材1(金属またはセラミックスより成る基材)に伝える手段として、該可視光反射層4と該凹面鏡基材1間に、ケイ素、チタンおよびクロムからなる群から選ばれた元素の黒色酸化物の薄膜を蒸着にて成膜させ、リフレクタ自体の放熱能力を向上させる手段が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
放熱能力強化型のリフレクタは、一般には、特定の波長領域の光を反射する特定波長領域反射手段(可視光反射層)と、前記反射手段を透過する波長領域の光を吸収して熱に変換する光熱変換手段(黒色酸化物等を含む光熱変換層)と、前記光熱変換手段で光から変換された熱を放散する熱放散手段(アルミニウム、銅、鉄等の金属、シリコンカーバイト等を含むセラミックスの熱放散層)とを備え、前記光熱変換手段を熱放散手段と特定波長領域反射手段の間に配置すると共に、前記光熱変換手段と特定波長領域反射手段とが直接接する形で積層されている。
特開平11−39934号公報 特開昭64−90401号公報
しかしながら、上記背景技術で述べた従来のリフレクタ、光源装置、及び投射型表示装置にあっては、例えば、前述の放熱能力強化型のリフレクタの場合、光熱変換手段で発生した熱が、熱放散手段だけでなく、特定波長領域反射手段側にも伝わるため、熱ストレスにより、特定波長領域反射手段の特性を劣化させるという問題点があった。
また、光熱変換手段と特定波長領域反射手段が直接接合している場合、その接合境界面に、膨張係数の差に起因する応力歪みが生じ、特定波長領域反射手段の剥離、欠損が生じるという問題点があった。
さらに、光熱変換手段の光吸収効率を向上させるためには、前記光熱変換手段の光源側表面に凹凸を付けるなどの方法で、前記表面を非平滑面とすることが望ましいが、その場合、前記光熱変換手段の上に積層して形成される特定波長領域反射手段の表面も平滑でなくなってしまうので、特定波長領域反射手段側の性能を低下させてしまうという問題点があった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、光を熱に変換して効率よく放散すると同時に、各部の膨張係数の差に起因する熱応力歪みを緩和して性能劣化を抑えることができ、さらにはコストを低減、小型・軽量化を可能とするリフレクタ、光源装置、及び投射型表示装置を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明に係るリフレクタは、凹面鏡形状の基材で構成された熱放散手段と、前記熱放散手段の光の反射面側に配設されて所定波長領域の光を吸収して熱に変換する光熱変換部材と、前記光熱変換部材上に特定の波長領域の光を反射し、前記所定波長領域の光を透過する特定波長領域反射部材と、前記光熱変換部材と前記特定波長領域反射部材との間に配設されて、前記光熱変換部材と特定波長領域反射部材とが直接接しないように緩衝すると共に、前記特定波長領域反射部材を透過する所定波長領域の光を透過させる緩衝部材とを備えたことを特徴とする。
前記リフレクタは、前記光熱変換部材、前記緩衝部材、及び特定波長領域反射部材が、前記熱放散手段の反射面上にこの順に積層され、かつ各層が面で接合していることを特徴とする。
前記リフレクタは、前記光熱変換部材と前記熱放散手段との接合部における接合境界面に、凹凸を設けたことを特徴とする。
前記リフレクタは、前記光熱変換部材の前記緩衝部材側の表面に、凹凸を設けたことを特徴とする。
前記リフレクタは、前記熱放散手段が、10W/m・K以上の熱伝導率を有する基材で構成され、前記赤外線熱変換部材としての機能を兼備えたことを特徴とする。
前記リフレクタは、前記光熱変換部材が、アルミニウムを無水クロム酸水溶液中で陽極酸化して形成されたものであることを特徴とする。
前記リフレクタは、前記緩衝部材が、前記光熱変換部材の光吸収面側に、Si系樹脂もしくはポリイミド系樹脂を高温で焼成することで成膜形成されたものであることを特徴とする。
さらに前記リフレクタは、前記凹面鏡形状の基材の外面に、該基材と一体の放熱フィン形状を備え蛸とを特徴とする。
本発明に係る光源装置は、光源に加えて、前記リフレクタを備えたことを特徴とする。
本発明に係る投射型表示装置は、前記光源装置を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、前記光熱変換手段により、前記特定波長領域反射部材を透過する波長領域の光を吸収して、これを効率良く熱に変換することが可能となり、また、前記緩衝部材の配設により、次の効果を奏する。
(1) 前記光熱変換部材と前記特定波長領域反射部材との接合境界面に生じる熱膨張率の差異に起因する熱により、応力が発生して、前記熱放散手段に歪みを生じることを阻止し、これにより、光源からの投影光が直進しなくなる現象を防止できる。
(2) 前記光熱変換部材に生じた凹凸の影響を軽減し、前記特定波長領域反射部材の光源側の表面を平滑面とし、これにより、光源からの投影光が直進しなくなる現象を防止できる。
光熱変換部材と熱放散手段との接合部における接合境界面に、凹凸を設けたことにより、
(1) 前記光熱変換部材表面での赤外線吸収効率を向上すること、
(2) 赤外線を散乱させ、反射した赤外線が特定の部位に集中しないようにすること、
を可能にする。
また、光熱変換部材の緩衝部材側の表面に、凹凸を設けたことにより、
(1) 吸収できず反射された光を光熱変換部材に再度入射させること、
(2) 吸収できず反射された光が特定の部分に集中することを防ぐこと、
を可能にするリフレクタを実現することができる。
また、熱放散手段を、10W/m・K以上の熱伝導率を有する基材で構成して、赤外線熱変換部材としての機能を兼備えることができるので、熱放散手段の基材として、例えば、アルミニウムを使用した場合、このリフレクタを備えた光源装置全体の放熱能力が向上し、これにより、光源の強制冷却システムの簡易化や小型化が可能となり、さらに光源装置の長寿命化を実現することが可能となる。
また、凹面鏡状の基材の外面に放熱フィン形状を一体に構成することにより、光源装置周囲の空気中への放熱効率をより向上させることができる。
また、リフレクタの熱放散手段を強制冷却するための強制冷却機構を省略することができるので、製造コストを削減すると共に、小型・軽量化を達成できる投射型表示装置を提供することができる。
以下、本発明のリフレクタ、光源装置、及び投射型表示装置の最良の実施形態について、第1の実施形態〜第5の実施形態の順に図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係るリフレクタを含む光源装置の全体構成を示す構成図である。なお、図6に示す従来のリフレクタと同じ構成要素については同じ符合で示す。
同図において、本発明の第1の実施形態に係る光源装置30aは、リフレクタ20aに加えて、光源10と、透明の防爆ガラス12を備える。リフレクタ20aは、凹面鏡基材(熱放散手段)1と、凹面鏡基材1の鏡面側(光源側の面)に積層されて成る赤外線熱変換層(光熱変換部材)2、光沢緩衝層(緩衝部材)3、及び可視光反射層(特定波長領域反射部材)4とを備える。
以下、本実施形態に係るリフレクタ及び光源装置の詳細構造と機能を説明する。
図1において、本実施形態に係るリフレクタ20aは、凹面鏡基材1、赤外線熱変換層2、光沢緩衝層3、及び可視光反射層4が、この順で積層されて成る。また、各層は、互いに面で接合されている。
凹面鏡基材1は、熱伝導率の大きいアルミニウム等の基材で構成されている。赤外線熱変換層2は、前記アルミニウム等の基材を陽極酸化することで凹面の鏡面側に成膜形成される。光沢緩衝層3は、赤外線熱変換層2上(光の吸収面側)に、Si系樹脂あるいはポリイミド系樹脂を高温で焼成することで成膜形成される。赤外線熱変換層2は、可視光反射層4を透過する波長領域の光を吸収して、これを効率良く熱に変換する。
可視光反射層4は、光沢緩衝層3上に形成され、赤外線を透過し、可視光を選択的に反射するコールドミラー層から成る。
光源10は、二酸化チタンと二酸化シリコンとを交互に蒸着した多重干渉膜で構成され、凹面鏡基材1に固着部材11によって固着されている。光源10は、1実施例として、200W相当の高圧水銀ランプで構成することができる。
なお、光沢緩衝層3は、赤外線熱変換層2と可視光反射層4とが直接接しないように両者を緩衝すると共に、可視光反射層4を透過する波長領域の光(赤外線)を透過させる機能を有する。また、赤外線熱変換層2に生じた凹凸の影響を軽減し、可視光反射層4の光源側の表面を平滑面とする機能を有する。
ちなみに、この光沢緩衝層3が無ければ、赤外線熱変換層2と可視光反射層4との接合境界面に生じる熱膨張率の差異に起因する熱により、応力が発生して、凹面鏡基材1に歪みを生じ、光源10からの投影光が直進しないことになる。
以下、本実施形態に係るリフレクタ20aの実施例について詳しく説明する。
凹面鏡基材1は、10W/m・K以上の大きい熱伝導率を有する基材(以下、「高熱伝導率リフレクタ基材」と呼称する)を用いて構成することができる。これにより、赤外線熱変換手段としての機能を兼備えることができる。一般に、アルミニウムの熱伝達率は約200W/m・Kと、従来の光源に使用されていたホウ珪酸ガラスや多結晶化ガラスの約1W/m・Kに比較して約200倍となっている。
さらに、赤外線を効率良く熱に変換するための成膜(赤外線熱変換層2)を形成する手法として、アルマイトを生成する手法が知られているが、本発明ではアルミニウムを無水クロム酸水溶液中で陽極酸化することで得られるクロム酸アルマイトで成膜している。この結果、高圧水源ランプの点灯による300℃以上の高耐熱、急激な温度変化、繰り返し疲労にも耐えるクラックフリー皮膜を得ることができた。
また、前記クロム酸アルマイトの場合、基材を純アルミとした場合通常不透明な灰白色〜灰色となるが、今回の発明では、基材をダイキャストに適した材料(ADC12等)に含まれるNi、Mg等の合金と反応し、黒色系に発色させることが可能となった。結果的に、赤外線を熱に変換する度合を示す放射率を黒体(放射率が1.0)に極めて近い0.9以上(300℃において)に確保することができた。
さらに、光源10から放射される赤外線を透過、可視光を選択的に反射するコールドミラー層から成る可視光反射層4を、蒸着等で成膜する場合、前記光源からの可視光を如何に有効に反射させて(即ち、散乱光を低減させ)、所定の位置に集光させるかが重要な課題となってくる。従って、凹面鏡基材1の凹面鏡表面は波長オーダーの光沢面が要求される。
ところが、本発明のように赤外線熱変換層2としてクロム酸アルマイトのような酸化皮膜を選択した場合、可視光反射層4との間に光沢度を鏡面レベルまで向上させるための成膜が必要となる。従来例では、光源から放射した光を凹面鏡で反射させた場合、散乱光が多く所定の位置に反射することが難しい。
さらには、従来提案のあった光源では赤外線熱変換層2に直接可視光反射層4を蒸着等で成膜するものであるが、二酸化チタンと二酸化シリコンとを交互に蒸着した多重干渉膜の場合、線膨張率は3〜5×10-6/℃であり、アルミニウムの25×10-6/℃に対し、約1桁の差が生じてしまう。もしも、この光沢緩衝層3が無くて、両層が直接接合した場合、接合境界面の膨張係数の差に起因する応力歪みによる可視光反射層4のクラック、剥離、欠損が発生する。
本発明に係るリフレクタでは、Si系樹脂あるいはポリイミド系樹脂を高温で焼成することで成膜される光沢緩衝層3を赤外線熱変換層2と可視光反射層4との緩衝材として使用して、応力歪みによる性能低下を抑えている。
また、光沢緩衝層3を本発明に係るリフレクタの構成要素とすることにより、可視光反射層4を成膜する下地処理として鏡面レベルまで光沢度を上げる手段として、従来例では達成できなかった0.9以上の超高放射率と、従来方式に対し約30%以上の超高反射率の両立を得ることができた。ちなみに、今回開発したSi系樹脂の線膨張係数は12×10-6/℃となっており、アルミニウムと可視光反射層の線膨張率の中間的な数字となっている。同様にポリイミド系樹脂でも同じ効果を得ることができているが、光沢緩衝層3の機械的フレキシビリティーによっては、線膨張率は必ずしも中間である必要はない。今回の別な実験結果では、40×10-6/℃の線膨張率を有するポリイミド系樹脂でも、引張伸度80%と延伸性に優れたものであれば同様に緩衝層としての機能を備えているとの結果を得ている。なお、図2は、本実施形態に係るリフレクタを含む光源装置と、従来のリフレクタを含む光源装置との投入電力リフレクタ内面温度の関係を示すグラフである。
〔第2の実施形態〕
図3は、本発明の第2の実施形態に係るリフレクタの構造を示す構造図である。
第1の実施形態に係るリフレクタ20aでは、凹面鏡基材1、赤外線熱変換層2、光沢緩衝層3、及び可視光反射層4の各層が互いに面で接合されているものとしたが、図3に示すように、本実施形態に係るリフレクタ20bでは、前記各層の接合面に凹凸を設けている。
より具体的には、まず、凹面鏡基材1bと赤外線熱変換層2bとの間の、凹面鏡基材1bの表面に、凹凸を設ける。
また、前記赤外線熱変換層2bと光沢緩衝層3bとの間の、前記赤外線熱変換層2bの表面に、凹凸を設ける。
上記のように凹面鏡基材1bの光源側の表面、ならびに赤外線熱変換層2bの光源側に、凹凸を設けることにより、
(1) 赤外線熱変換層2表面での赤外線吸収効率を向上することができる。
(2) この凹凸により、赤外線が散乱され、反射した赤外線が特定の部位に集中しないようにすることができる。
また、この場合も、光沢緩衝層3bは、赤外線熱変換層2bと可視光反射層4とが直接接しないように両者を緩衝すると共に、赤外線熱変換層2bに設けられた凹凸の影響を軽減し、可視光反射層4の光源側の表面を平滑面とすることができる。
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態に係るリフレクタの構成は、本発明の第1あるいは第2の実施形態に係るリフレクタの構成と同じであり、赤外線熱変換層2と光沢緩衝層3の構成要素の形成方法と、一部の構造が相違するだけであるから、以下では、その相違点だけを説明する。
赤外線熱変換層2は、アルミニウムで形成された凹面鏡基材1をセラミックコーティングし、これらを焼成することにより形成する。即ち、この焼成により、凹面鏡基材1とセラミックコーティングとの境界面の変質により、金属酸化層が生じる。この金属酸化層は、赤外線を熱に変換する機能を有する。
光沢緩衝層3は、セラミックコーティングにより形成する。
以下、赤外線熱変換層2を上記方法で形成する根拠を説明する。
一般に、アルミニウム基材にセラミックコーティングを塗布したものを焼成した場合以下に示す反応を示す。
(1) フリット(セラミックコーティング用粒)粒界を通じて雰囲気中の酸素が界面に到達してアルミニウム基材面を酸化する。
(2) フリットが溶解して、アルミニウムの酸化層を濡らして封じ込め、それ以上の酸化を防ぐことができるが、他方、アルミニウム基材に吸蔵された水素が界面に拡散して酸化アルミニウム層内に水素還元で微細なアルミニウム粒ができる。
(3) 溶融コーティングが酸化アルミニウム層を溶解し、他方でコーティング中に存在する酸化コバルトや酸化ニッケルが微細アルミニウムで還元されて、界面にAl−CoやAl−Niの樹枝状結晶(デイドライト)が析出する。これにより、界面に析出されたCoやNiと、基材のアルミニウムとが局部電池を形成し、アルミニウム面が腐食されて界面の荒れが進行し、アルミニウムとガラス層とが十分に付着する。
(4) 基材界面でコーティングが基材と反応する一方で、表面では焼成によって平滑化が進む。
以上の反応により成膜される赤外線熱変換層2と光沢緩衝層3との効果は第1の実施形態と同様であり、放射率と反射率の具体的な数値も同様な結果が得られている。
〔第4の実施形態〕
図4は、本発明の第4の実施形態に係るリフレクタを含む光源装置の全体構成を示す構成図である。この光源装置30cのリフレクタ20cは、第1の実施形態に示すリフレクタ20aとほぼの同じ構成であるが、凹面鏡基材1cの外面に放熱フィン50を一体に設けた点が異なる。この構成により、熱変換層2から凹面鏡基材1cの内面に伝わった熱は凹面鏡基材1cの熱伝導率に応じてフィン50の先端まで伝導する。凹面鏡外面からの放熱量は例えば自然対流による放熱の場合は次の式で算出できる。
放熱量Q=熱伝達率h[W/m2K]×凹面鏡外表面積S[m2]×温度差ΔT[K]
h=2.51×C×(ΔT/L)0.25
ここでQは放熱量[W]、Cは凹面鏡基材の形状によって決まる係数、ΔTは凹面鏡外面と周囲の空気の温度差[K]、Lは凹面鏡の形状によって決まる係数である。
実施形態を用いて放熱量を算出すると、
・フィン無し:2.51×0.52×((250−25)/0.05)0.25×0.009×(250−25)=21.6 [W]
・フィン有り:2.51×0.45×((230−25)/0.05)0.25×0.027×(230−25)=50.0 [W]
こうして、放熱フィン50を設けることによって放熱効率が2倍以上になることがわかる。
なお、本実施形態のリフレクタの構造は、凹面鏡基材以外は第1の実施形態と同一としたが、第2、3の実施形態の構造でも構わない。
〔第5の実施形態〕
図5は、本発明の第5の実施形態に係る投射型表示装置の全体構成を示す構成図である。なお、従来の光源装置と同じ構成要素については同じ符合で示す。
同図において、本発明の第5の実施形態に係る投射型表示装置は、主要な構成要素として、リフレクタ20を含む光源装置30と、回転するカラーホイール101と、ロッドレンズ102と、コンデンサレンズ103と、TIRプリズム104と、反射ミラー105と、光変調部106と、拡大投影用光学系107とを備える。
ここで、光源装置30は、前述の本発明の第1〜第4のいすれかの実施形態に係るリフレクタ20を備えるものとする。
次に、図5に示す本実施形態に係る投射型表示装置の機能を説明する。
光源装置10から出力した光は、凹面反射鏡で反射し、さらに回転するカラーホイール101により、時分割でR、G、Bの光を順次透過させる。カラーホイール101を透過した光は、ロッドレンズ102により拡散整形され、コンデンサレンズ103、TIRプリズム104、反射ミラー105を経て、光変調部106に投射される。光変調部106は、投射された光の色と画像情報とに応じて、光変調を行う。そして光変調された光を、投影レンズ107(拡大投影用光学系)を経てスクリーン(図示せず)に投射することにより、フルカラー画像の表示を行うことができる。
なお、図5に示す本実施形態に係る投射型表示装置は、カラーシーケンシャル方式の投射型表示装置であり、光源装置30の放熱能力が大きく、凹面反射鏡での光の反射効率が高いため、図6に示した従来の光源装置100を用いた投射型表示装置に比べて、
(1) 図5に示すような強制冷却機構110を、簡素化乃至は省略できる。
(2) 光源装置から可視光と共に出力される赤外線が少ないため光源装置と他の構成要素との間隔を小さくすることできる、
(3) 同じ投入電力でも輝度を3割程度向上できる、
などの新たな効果がある。
なお、前述の第1〜第4の実施形態では、リフレクタ基材(凹面鏡基材1)にアルミニウム、光源10に高圧水銀ランプ、赤外線熱変換層2にクロム酸アルマイト並びにシリコンコーティングによる金属酸化物、光沢緩衝膜3にSi系樹脂もしくはポリイミド系樹脂、並びにセラミックを使用する場合を説明した。
しかしながら、本発明に係るリフレクタは、一般に、以下に示す材料を使用して構成することも可能である。
(1) 凹面鏡基材1には、熱伝導率が10W/m・K以上であれば、銅、鉄等の金属、グラファイト系、シリコン系のセラミックス等を使用。
(2) 光源10には、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、キセノンランプ等を使用。
(3) 赤外線熱変換層2には、他のアルマイトや金属酸化膜層等の赤外線領域の放射率が高い材料を使用。
(4) 光沢緩衝層3には、赤外線を透過し、赤外熱変換層の凹凸を平滑化できるNi−Fe(ニッケル−鉄)スピネル系顔料、フッ素系コーティング、テフロン(R)コーティング、PFA(ポリ・フルオロ・エチレン)系コーティング、及び石英ガラスコーティング等を使用。
その他、凹面鏡基材1、光源10、赤外線熱変換層2、及び光沢緩衝層3は、それぞれの目的機能に合致したものを採用すれば良く、前述の各実施形態で挙げた材料に限定するものではない。
また、前述の各実施形態では、リフレクタ基材(凹面鏡基材1)と、赤外線熱変換層2とを、それぞれ別個の構成要素として構成しているが、本発明では、一般に、リフレクタ基材(凹面鏡基材1)と、赤外線熱変換層2とを、同じ材質の材料を用いて一体構造として構成しても良い。
本発明の第1の実施形態に係るリフレクタを含む光源装置の全体構成を示す構成図である。 本発明に係るリフレクタを含む光源装置と、従来のリフレクタを含む光源装置との投入電力リフレクタ内面温度の関係を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係るリフレクタの構造を示す構造図である。 本発明の第4の実施形態に係るリフレクタを含む光源装置の全体構成を示す構成図である。 本発明の第5の実施形態に係る投射型表示装置の全体構成を示す構成図である。 従来のリフレクタ、光源装置、及び投射型表示装置の全体構成を示す構成図である。
符号の説明
1 凹面鏡基材(熱放散手段)
2 赤外線熱変換層(光熱変換部材)
3 光沢緩衝層(緩衝部材)
4 可視光反射層(特定波長領域反射部材)
10 光源
20 リフレクタ
30 光源装置
11 固着部材
12 防爆ガラス
101 カラーホイール
102 ロッドレンズ
103 コンデンサレンズ
104 TIRプリズム
105 反射ミラー
106 光変調部
107 投影レンズ

Claims (10)

  1. 凹面鏡形状の基材で構成された熱放散手段と、
    前記熱放散手段の光の反射面側に配設されて所定波長領域の光を吸収して熱に変換する光熱変換部材と、
    前記光熱変換部材上に特定の波長領域の光を反射し、前記所定波長領域の光を透過する特定波長領域反射部材と、
    前記光熱変換部材と前記特定波長領域反射部材との間に配設されて、前記光熱変換部材と特定波長領域反射部材とが直接接しないように緩衝すると共に、前記特定波長領域反射部材を透過する所定波長領域の光を透過させる緩衝部材と、
    を備えたことを特徴とするリフレクタ。
  2. 前記光熱変換部材、前記緩衝部材、及び特定波長領域反射部材が、前記熱放散手段の反射面上にこの順に積層され、かつ各層が面で接合していることを特徴とする請求項1記載のリフレクタ。
  3. 前記光熱変換部材と前記熱放散手段との接合部における接合境界面に、凹凸を設けたことを特徴とする請求項2記載のリフレクタ。
  4. 前記光熱変換部材の前記緩衝部材側の表面に、凹凸を設けたことを特徴とする請求項2記載のリフレクタ。
  5. 前記熱放散手段は、10W/m・K以上の熱伝導率を有する基材で構成され、前記赤外線熱変換部材としての機能を兼備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリフレクタ。
  6. 前記光熱変換部材は、アルミニウムを無水クロム酸水溶液中で陽極酸化して形成されたものであることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のリフレクタ。
  7. 前記緩衝部材は、前記光熱変換部材の光吸収面側に、Si系樹脂もしくはポリイミド系樹脂を高温で焼成することで成膜形成されたものであることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載のリフレクタ。
  8. 前記凹面鏡形状の基材の外面に、該基材と一体の放熱フィン形状を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のリフレクタ。
  9. 光源に加えて、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のリフレクタを備えたことを特徴とする光源装置。
  10. 請求項9記載の光源装置を備えたことを特徴とする投射型表示装置。

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