JP3803736B2 - 投影装置用光源 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶プロジェクタやオーバーヘッドプロジェクタ等の光学機器のバックライトに用いられるショートアーク型放電灯として最適な投影装置用光源および投影装置用光源に用いる反射鏡に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶プロジェクタやオーバヘッドプロジェクタ等の光学機器のバックライトとして、金属ハロゲン化物を発光管内に封入し、その金属特有の発光を利用し、かつ電極間距離を短くしたショートアークタイプのメタルハライドランプを反射鏡と組み合わせた投影装置用光源が用いられている。
【0003】
最近、このようなメタルハライドランプに代わって、さらに高輝度とするために点灯中の水銀の蒸気圧を200atm以上に高めて、発光効率や色特性の改善を図った高圧水銀放電ランプが、反射鏡と組み合わされて投影装置用光源として使用されている。ところが、この種の点灯中の蒸気圧を高めた放電ランプは、発光管の内圧が高くなるため破裂しやすく、液晶プロジェクタ装置等の精密機器装置内に取り付けた場合、放電ランプが破裂した際に液晶パネルやレンズ系に発光管の破片が飛散して、精密機器内の部材を損傷させてしまうという問題があった。
【0004】
そこで、反射鏡の前面開口部のフランジ部分を利用して前面板ガラスを設けて、高圧水銀放電ランプが破裂した際の精密機器内への発光管の飛散を防止した投影装置用光源が提案され実用化されている。前面板ガラスを反射鏡のフランジ部に設けた投影装置用光源においては、放電ランプが破裂した際、発光管の破片が前面板ガラスを突き破って、精密機器装置内に飛散することはなくなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが前面板ガラスを設けると反射鏡内が密封されるので、点灯中の高圧水銀放電ランプの温度が高くなり内圧も高くなる。そのため、前記放電ランプの破裂の可能性も高くなる。一方、高圧水銀放電ランプで最も破裂の可能性が高い個所は、発光管両端部の電極心棒とモリブデン箔との溶接部分であり、反射鏡の底部開口部側に反射鏡の焦点が位置し、該焦点位置近傍に高圧水銀放電ランプの光中心が位置しているため、前記電極心棒とモリブデン箔との溶接部分から破裂が起こった場合、前記溶接部分に近い反射鏡の底部開口部側が最も強い衝撃を受け、この近傍付近から反射鏡にクラックが入ったり、割れや欠けが発生して、投影装置用光源部材が飛散し、精密機器内の部材を損傷させてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、高圧水銀放電ランプと反射鏡と前面板ガラスとを組み合わせた投影装置用光源の上記問題点を解決するためになされたもので、前記反射鏡の外面に耐熱性有機系被膜を施すことにより、反射鏡の耐熱性と機械的強度を高め、高圧放電ランプが万一破裂した際、反射鏡の飛散およびランプ部材の飛散を防止することができ、液晶プロジェクタ装置等の精密機器用に最適な投影装置用光源を提供することを目的とする。また、当該投影装置用光源に用いられる反射鏡を提供する事を特徴とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、本発明は、発光管の内部に少なくとも水銀を封入してなる高圧放電ランプが、ガラス製の凹面状反射鏡と組み合わされた投影装置用光源において、前記凹面状反射鏡の外面に、該反射鏡が前記高圧放電ランプの破裂による衝撃で破損してその反射鏡やランプの破片が飛散することを防止する耐熱性有機系被膜が施され、該被膜の膜厚が、前記反射鏡の底部開口部側において最も厚く、その底部開口部側から前面開口部に向かって徐々に薄くなっていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記凹面状反射鏡の外面に施す耐熱性有機系被膜を、ポリイミド系被膜とすることを特徴とする請求項1記載の投影装置用光源であり、請求項3記載の発明は、前記凹面状反射鏡の外面に施す耐熱性有機系被膜を、暗色系とすることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の投影装置用光源である。
【0009】
また、請求項4記載の発明は、前記凹面状反射鏡の外面に施す耐熱性有機系被膜の膜厚を、前記反射鏡の底部開口部の発光部側を最も厚くし、前記反射鏡の前面開口部に向かって膜厚を徐々に薄くしていくことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の投影装置用光源であり、請求項5記載の発明は、前記凹面状反射鏡の外面に施す耐熱性有機系被膜の熱膨張率は、前記反射鏡の熱膨張率よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれかに記載の投影装置用光源である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を図を用いて説明する。図1は本発明に係わる一実施例の投影装置用光源の断面図である。石英ガラス製発光管1の内容積は約55μlで、両端に電極2が封着され、その間のアーク長は約1mmに設定されている。そして、発光管1の内部には水銀を発光物質とし、始動補助ガスとしてアルゴンとともに、臭化水素がアルゴンに対し10%分圧したものが約2×104Pa封入されている。
【0012】
そして、電極心棒3にはモリブデン箔4が溶接されて、電極封止部5が形成され、反射鏡底部開口部側の電極封止部5には口金6が取付けられている。前記口金6は、内面に多層膜を形成し、可視光を反射し赤外光を透過するようにした反射鏡7の底部にセメント8を介して固定されている。この際前記反射鏡7の略焦点位置には発光管1の光中心を位置させ、かつ前記反射鏡7の光軸上には前記発光管1のアーク軸が位置するように固定される。そして前記反射鏡7の前面開口部のフランジ部分を利用して、反射鏡7とほぼ同じの熱膨張率を有する前面板ガラス9が嵌合されている。また、前記前面板ガラス9の両面には無反射コーティングが施されている。
【0013】
そして、反射鏡7の外面には飛散防止膜としての耐熱性有機系被膜が形成されている。この耐熱性有機系被膜としては、ポリイミド系材料が最適である。発光管1が万一破裂した際に飛散する破裂部材の衝撃を大きく受ける部分にはポリイミドコーティング膜10を厚く(膜厚0.3mm〜0.5mm)、それ以外の部分にはポリイミドコーティング膜10を薄く(膜厚0.1mm)分布させることにより、破裂部材が反射鏡に当たって強い衝撃を与えても、反射鏡の飛散およびランプ部材の飛散を防止し、液晶プロジェクタ等の精密機器内の部材を損傷させることはなくなる。
【0014】
ここで、ポリイミドコーティング膜は耐熱温度が400℃であり、一般照明用の外球飛散防止膜として利用されるフッ素樹脂膜と比較すると約2倍の耐熱温度となっていて、耐熱性が高い。
また、液晶プロジェクタ装置の小型化を行なう際には、液晶パネルや放電ランプ用安定器を高温にさせないよう、投影装置用光源に送風を行なって冷却する必要がある。しかし、投影装置用光源に送風を行なう必要があっても、電気的なノイズや容量の面から送風ファンの大きさや送風ファン電圧に制限を受けて風量があまり得られない場合がある。こういった液晶プロジェクタ装置においては、ポリイミドコーティング膜の色を暗色系とすることで熱の放射度が上がり(黒色が最も熱の放射度が高い)、液晶プロジェクタ装置内の送風装置の大きさや風量が制限されても、わずかな風量で効果的に反射鏡を冷却することができる。
【0015】
これは、放電ランプから放射されるエネルギーの内、赤外域を透過するように反射鏡内面に多層膜を施してあるため、赤外光(熱線)は反射鏡を透過してポリイミドコーティング膜に熱線が到達し、この熱線によって反射鏡の温度は上昇するが、ポリイミドコーティング膜が暗色で、熱放射性に優れるため、わずかな風量で反射鏡を冷却することができるためである。
【0016】
反射鏡の外面にポリイミドを塗布する方法としては、反射鏡の底部側を下向きにして、ガラス生地を粘度が5P〜100P(20℃)で、熱膨張係数が30×10−7cm/℃〜40×10−7cm/℃の黒色のポリイミドを入れた槽に入れ、該槽に反射鏡ガラス生地全体を浸してから引き上げる、ディッピング法により行なう。反射鏡のガラス生地をポリイミド槽から引き上げた後、ポリイミドの粘性が30P(20℃)の場合、30秒程度ポリイミド液が滴下するのを待つ。次に、300℃に設定した炉に10分間以上入れてポリイミドを固着させる。そして、反射鏡のガラス生地を取り出し、反射鏡底部側を切断して開口部を作製した後、洗浄、内面多層膜の蒸着の工程を踏んでポリイミドコーティング膜付反射鏡が作製される。
【0017】
上記方法により、放物面または楕円面よりなる反射面を有する焦点距離が10mm以下の凹面状反射鏡の外面に、焦点付近の軸の延長上に厚く、他は薄く膜厚分布を持った被膜を形成することができる。このように被膜を形成した反射鏡を用いて投影装置用光源としたものを、コンデンサに充電したエネルギーによって、点灯中に強制的に放電ランプを破裂させて実験を行なった所、通常の破裂エネルギーの2〜3倍かけて破裂させても、破裂部材による反射鏡の飛散およびランプ部材の飛散は全く見られなかった。なお、凹面状反射鏡の外面をほぼ均等な凹凸面形状とすれば、有機系被膜が剥離しづらくなり、被膜強度も上がることは言うまでもない。また、基板となるガラス生地の熱膨張係数よりポリイミドの熱膨張率が小さい方が、放電ランプの破裂時に反射鏡のガラスの飛散防止に大きく関与していることも確認できた。これは、ポリイミドの熱膨張率がガラス生地の熱膨張率より小さいと、ガラスに対して圧縮応力が働くため、ガラスが飛散しづらくなるためである。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように、反射鏡の外面に飛散防止用として耐熱性有機系被膜を形成し、特にポリイミド系被膜を分布を持たせて施すことにより、反射鏡の耐熱性と機械的強度を高め、高圧放電ランプが万一破裂した際の反射鏡の飛散およびランプ部材の飛散を防止することができる。また、暗色系の被膜とすることで放熱性の高い、液晶プロジェクタ装置等の精密機器用に最適な投影装置用光源が得ることができる。
さらに、反射鏡の外面に飛散防止用としてポリイミド系被膜を施すことにより、投影装置用光源の反射膜として好適な反射鏡を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施例の投影装置用光源の断面図。
【符号の説明】
1 発光管
2 電極
3 電極心棒
4 モリブデン箔
5 電極封止部
6 口金
7 反射鏡
8 セメント
9 前面板ガラス
10 ポリイミドコーティング膜
Claims (3)
- 発光管の内部に少なくとも水銀を封入してなる高圧放電ランプが、ガラス製の凹面状反射鏡と組み合わされた投影装置用光源において、前記凹面状反射鏡の外面に、該反射鏡が前記高圧放電ランプの破裂による衝撃で破損してその反射鏡やランプの破片が飛散することを防止する耐熱性有機系被膜が施され、該被膜の膜厚が、前記反射鏡の底部開口部側において最も厚く、その底部開口部側から前面開口部に向かって徐々に薄くなっていることを特徴とする投影装置用光源。
- 前記耐熱性有機系被膜が、ポリイミド系被膜である請求項1記載の投影装置用光源。
- 前記耐熱性有機系被膜の膜色が暗色系である請求項1又は2記載の投影装置用光源。
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