JP2005047956A - タイヤトレッド用ゴム組成物 - Google Patents

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Katsumi Hayashida
克己 林田
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Yokohama Rubber Co Ltd
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Abstract

【課題】良好な加工性、帯電防止性、耐摩耗性、転がり抵抗、及びウェット制動性をバランス良く兼備するタイヤトレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】基−CX−N=(XはO又はS)を有する化合物、ベンゾフェノン、チオベンゾフェノン、イソシアナート化合物、及びハロゲン化スズ化合物からなる群から選ばれる、少なくとも1種の変性剤によって変性された変性溶液重合SBR20〜70重量部を含んでなるゴム成分 100重量部に対して、
特定のカーボンブラックに対して3〜20重量%のシリカを付着させることによって得られる表面処理カーボンブラックを10〜80重量部、
特定のポリシロキサンを、前記表面処理カーボンブラックに対して 0.2〜30重量%、並びに
下式:
【化1】
Figure 2005047956

によって表される有機シラン化合物(x=2〜3)を、前記表面処理カーボンブラックに対して1〜10重量%、配合してなる、タイヤトレッド用ゴム組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物に関する。より詳細には、未加硫時に良好な加工性を有し、かつ、加硫後に、良好な帯電防止性、耐摩耗性、転がり抵抗、及びウェット制動性をバランス良く兼備する、タイヤトレッド用ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、タイヤ用ゴム組成物においては、加硫後のゴム組成物の強度及び耐摩耗性の向上を目的として、カーボンブラックが配合されてきたが、カーボンブラックはヒステリシス損が大きく、カーボンブラックが配合されているゴム組成物が使用されているタイヤにおいては、転がり抵抗が大きくなる傾向があった。
【0003】
近年においては、環境保護及び経済性の両観点から、低燃費性を有するタイヤに対する要求が益々増大しており、かかる要求を満足することを目的として、タイヤの転がり抵抗の低減による低燃費化を目的として、転がり抵抗の低減には不利な、ヒステリシス損が大きいカーボンブラックを、ヒステリシス損が小さいシリカに置き換えたゴム組成物が採用される傾向にある。
【0004】
しかしながら、上記の如くカーボンブラックがシリカに置き換えられているゴム組成物においては、シリカの導電性が低いために、静電気の蓄積が問題となりがちであること、及びカーボンブラックが配合されているゴム組成物と比較して、耐摩耗性が低下しがちであることが当該技術分野において知られている。
【0005】
また、上述の如くカーボンブラックをシリカに置き換えることによって、タイヤ用ゴム組成物の転がり抵抗を低減することができるものの、ヒステリシス損の低下に伴い、タイヤとしてのグリップ性能(制動性)が低下する傾向にあることも、当該技術分野において知られている。すなわち、ゴム組成物のヒステリシス損という観点において、転がり抵抗の低減と制動性の向上とは、二律背反の関係にあると言える。
【0006】
更に、シリカが配合されてなるゴム組成物においては、ゴム成分中でのシリカの分散を改良する目的で、カップリング剤が配合されるのが一般的であるが、従来使用されているカップリング剤(例えば、Degussa社製「Si69」等)においては、ゴムポリマーのゲル化を引き起こすために、ゴム組成物の混合温度を十分に上げることができず、ゴム組成物の構成要素の混合及び/又は分散が不良となり、所望の特性が必ずしも十分に達成されているとは言えない。
【0007】
上述の如く、加硫前のゴム組成物において、ゴムポリマーのゲル化を伴わずに、構成要素の良好な混合及び分散を達成するのに十分に高い混合温度において混合することを可能とし(未加硫時の良好な加工性)、かつ、加硫後のゴム組成物において、良好な帯電防止性、耐摩耗性、転がり抵抗、及びウェット制動性を同時に達成することは極めて困難である。
【0008】
一方、タイヤの転がり抵抗を低減するための方策の1つとして、特定の変性剤によって変性された変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)をタイヤ用ゴム組成物のゴム成分に配合することも提案されているが、これらの提案によっても、上記要求条件のすべてを同時に満足することはできていない。従って、当該技術分野においては、上記要求条件のすべてを同時に満足するタイヤトレッド用ゴム組成物に対する継続的な要求が存在している。
【0009】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】
特開2001−89598号公報
【特許文献2】
特開平11−157302号公報
【特許文献3】
特開平10−95873号公報
【特許文献4】
特開平11−209517号公報
【特許文献5】
特開平11−181156号公報
【特許文献6】
公開特許第2788212号公報
【特許文献7】
特開平10−152582号公報
【特許文献8】
特開平10−53722号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、未加硫時に良好な加工性を有し、かつ、加硫後に、良好な帯電防止性、耐摩耗性、転がり抵抗、及びウェット制動性をバランス良く兼備する、タイヤトレッド用ゴム組成物を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、
基−CX−N=(式中、Xは酸素又は硫黄原子を示す)を有する化合物、ベンゾフェノン、チオベンゾフェノン、イソシアナート化合物、及びハロゲン化スズ化合物からなる群から選ばれる、少なくとも1種の変性剤によって変性された変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)20〜70重量部を含んでなるゴム成分100重量部に対して、
100〜150m/gの窒素吸着比表面積(N SA)及び100〜140cm/100gのDBP吸収量を有するカーボンブラックの表面をアルコキシシランによって処理して、カーボンブラックに対して3〜20重量%のシリカを付着させることによって得られる表面処理カーボンブラックであって、前記アルコキシシランによる処理の前後でのヨウ素吸着量(IA)の差(ΔIA)が10mg/g以上である表面処理カーボンブラックを10〜80重量部、
アルコキシシリル基又はアシルオキシシリル基を有し、200〜300000の数平均分子量を有するポリシロキサンを、前記表面処理カーボンブラックに対して0.2〜30重量%、並びに
下式:
【0012】
【化2】
Figure 2005047956
【0013】
によって表される有機シラン化合物であって、上式中、xの平均値が2〜3である有機シラン化合物を、前記表面処理カーボンブラックに対して1〜10重量%、配合してなる、タイヤトレッド用ゴム組成物、によって達成される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、特定の変性剤によって変性された変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を含んでなるゴム成分に対して、特定の表面処理カーボンブラック、ポリシロキサン、及び有機シラン化合物を配合することにより、未加硫時に良好な加工性を有し、かつ、加硫後に、良好な帯電防止性、耐摩耗性、転がり抵抗、及びウェット制動性をバランス良く兼備する、タイヤトレッド用ゴム組成物を提供することが可能であることを見出したことに基づくものである。
【0015】
すなわち、本発明に係るゴム組成物は、
基−CX−N=(式中、Xは酸素又は硫黄原子を示す)を有する化合物、ベンゾフェノン、チオベンゾフェノン、イソシアナート化合物、及びハロゲン化スズ化合物からなる群から選ばれる、少なくとも1種の変性剤によって変性された変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)20〜70重量部を含んでなるゴム成分100重量部に対して、
100〜150m/gの窒素吸着比表面積(N SA)及び100〜140cm/100gのDBP吸収量を有するカーボンブラックの表面をアルコキシシランによって処理して、カーボンブラックに対して3〜20重量%のシリカを付着させることによって得られる表面処理カーボンブラックであって、前記アルコキシシランによる処理の前後でのヨウ素吸着量(IA)の差(ΔIA)が10mg/g以上である表面処理カーボンブラックを10〜80重量部、
アルコキシシリル基又はアシルオキシシリル基を有し、200〜300000の数平均分子量を有するポリシロキサンを、前記表面処理カーボンブラックに対して0.2〜30重量%、並びに
下式:
【0016】
【化3】
Figure 2005047956
【0017】
によって表される有機シラン化合物であって、上式中、xの平均値が2〜3である有機シラン化合物を、前記表面処理カーボンブラックに対して1〜10重量%、配合してなる、タイヤトレッド用ゴム組成物、である。
【0018】
上記ゴム成分における必須の構成要素である変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)は当該技術分野において周知である。変性されるべき溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)は、当該技術分野において一般的に知られている方法に従って、溶液重合によって得られるいずれのスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)とすることもでき、単独で、又は任意の混合物として使用することができる。
【0019】
また、上記溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を変性させるための変性剤は、基−CX−N=(式中、Xは酸素又は硫黄原子を示す)を有する化合物、ベンゾフェノン、チオベンゾフェノン、イソシアナート化合物、及びハロゲン化スズ化合物からなる群から適宜選択することができる。
【0020】
上記溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を上記変性剤によって変性させるための方法については、例えば、特開昭60−137913号公報及び特開平61−42552号公報(−CX−N=基変性)、特開昭59−117514号公報(ベンゾフェノン)、特開昭61−103903号公報及び同61−103904号公報(スズ変性、ベンゾフェノン変性、−CX−N=基変性)、特開昭63−245405号公報(イソシアナート変性)等に詳細に記載されている。ゴムポリマー分子との反応(結合)性の観点からは、チオベンゾフェノン類及び/又は基−CX−N=(式中、Xは酸素又は硫黄原子を示す)を有する化合物を使用するのが望ましい。
【0021】
上記変性剤によって変性される位置は、上記溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)のポリマー分子末端、主鎖、及び側鎖のいずれであってもよく、上記変性剤の導入量は特に限定されるものではないが、上記溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)のポリマー分子鎖1モルあたり上記変性剤が0.1〜100モル結合しているのが好ましい。
【0022】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物を構成するゴム成分における上記変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)の配合量は、ゴム成分100重量部に対して、20〜70重量部、好ましくは30〜60重量部であるのが望ましい。
【0023】
上記変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)の配合量がゴム成分100重量部に対して20重量部未満である場合には、タイヤとしてのグリップ性能(制動性)が低下するので好ましくなく、逆に70重量部を超える場合には、耐摩耗性が低下するので好ましくない。
【0024】
また、本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物を構成するゴム成分における上記変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)以外の構成要素としては、特に限定されないが、天然ゴム(NR)またはジエン系合成ゴムのいずれか、あるいはこれらの混合系を用いることができる。ジエン系合成ゴムとしては、例えば、各種ブタジエンゴム(BR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等を例として挙げることができる。
【0025】
好ましくは、上記タイヤトレッド用ゴム組成物を構成するゴム成分における上記変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)以外の構成要素としては、天然ゴム(NR)及び/又は各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を使用することができる。
【0026】
上述の如く、本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、特定の表面処理を施されたカーボンブラックを補強用充填剤として含んでなる。表面処理されるべきカーボンブラックとしては、100〜150m/g、好ましくは110〜130m/gの窒素吸着比表面積(N SA)及び100〜140cm/100g、好ましくは100〜120cm/100gのDBP吸収量を有するカーボンブラックを使用するのが望ましい。
【0027】
上記表面処理されるべきカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N SA)が100m/g未満である場合には、耐摩耗性が低下するので好ましくなく、逆に150m/gを超える場合には、未加硫時の加工性、特に混合分散性が悪化するので好ましくない。同様に、上記表面処理されるべきカーボンブラックのDBP吸収量が100cm/100g未満である場合には、耐摩耗性が低下するので好ましくなく、逆に140cm/100gを超える場合には、未加硫時の加工性、特に混合分散性が悪化するので好ましくない。
【0028】
尚、本明細書の記載において、窒素吸着比表面積(N SA)とは、ASTM−D3037−78「窒素吸着によるカーボンブラック表面積処理標準法」の方法Cによる測定値を意味する。
【0029】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物において補強用充填剤として配合される表面処理カーボンブラックは、上記表面処理されるべきカーボンブラックの表面をアルコキシシランによって処理することによって得ることができる。より詳細には、上記表面処理カーボンブラックは、上記表面処理されるべきカーボンブラックとアルコキシシランとを混合し、カーボンブラックの表面が酸化される温度未満(通常は約200℃以下)かつアルコキシシランが分解又は縮合する温度以上(一般的には約60℃以上)の温度において加熱して、カーボンブラックの表面に二酸化ケイ素(SiO )残基を付着させることによって得ることができる。
【0030】
上記アルコキシシランとしては、当該技術分野において周知のいずれのアルコキシシランを使用することもできる。上記アルコキシシランの具体例としては、例えば、下式:
【0031】
【化4】
Figure 2005047956
【0032】
によって表されるものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。上式中、R 、R 、R 、及びR は、一般に知られている有機基から独立に選ばれ、すべて同一であっても、それぞれが異なっていてもよい。R 、R 、R 、及びR の例としては、例えば、置換又は未置換の、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基、アルキルアミノ基、エポキシ基、カルボキシアルキル基、カルビノール基、メタクリル酸基、メルカプト基、アルキルフェニル基等を挙げることができる。
【0033】
上記表面処理カーボンブラックにおけるシリカの付着量は、SiO 換算で、カーボンブラックに対して3〜20重量%、好ましくは5〜10重量%であるのが望ましい。上記表面処理カーボンブラックにおけるシリカの付着量がカーボンブラックに対して3重量%未満である場合には、所望の効果を得ることができないので好ましくなく、逆に20重量%を超える場合には、表面処理カーボンブラックの導電性が低下し、ゴム組成物としての帯電防止性が悪化するので好ましくない。
【0034】
また、上記表面処理されるべきカーボンブラックは、上記アルコキシシランによる処理の前後でのヨウ素吸着量(IA)の差(ΔIA)が10mg/g以上、好ましくは15mg/g以上であるのが望ましい。このΔIAが10mg/g未満である場合には、耐摩耗性及び制動性が不十分となるので好ましくない。
【0035】
尚、本明細書の記載において、ヨウ素吸着量(IA)とは、JIS K6217に準拠して測定される、カーボンブラック1gあたりに吸着されるヨウ素の量(mg)を意味する。
【0036】
上述の如く、本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、アルコキシシリル基又はアシルオキシシリル基を有するポリシロキサンを更に含んでなる。より詳細には、上記ポリシロキサンは、下式(I)によって表されるアルコキシシリル基又は下式(II)によって表されるアシルオキシシリル基を有するポリシロキサンである。
【0037】
【化5】
Figure 2005047956
【0038】
上式中、Rは、1〜18個の炭素原子を有する置換又は未置換の1価の炭化水素基若しくはエーテル結合含有有機基である。
【0039】
また、上記ポリシロキサンは、200〜300000、好ましくは1000〜200000の数平均分子量を有するのが望ましい。上記ポリシロキサンの数平均分子量が200未満である場合には、シリカ表面のシラノール基と反応する量が少なくなるので好ましくなく、逆に300000を超える場合には、シラノール基との量的なバランス及びゴム組成物の調製時の作業性が悪くなるので好ましくない。
【0040】
更に、上記ポリシロキサンの配合量は、上記表面処理カーボンブラックに対して0.2〜30重量%、好ましくは4〜10重量%であるのが望ましい。上記ポリシロキサンの配合量が上記表面処理カーボンブラックに対して0.2重量%未満である場合には、所望の効果を得ることができないので好ましくなく、逆に30重量%を超える場合には、シラノール基と有機シランとの反応点が無くなるので好ましくない。
【0041】
更なる必須の構成要素として、本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、下式:
【0042】
【化6】
Figure 2005047956
【0043】
によって表される有機シラン化合物であって、上式中、xの平均値が2〜3である有機シラン化合物を、上記表面処理カーボンブラックに対して1〜10重量%、好ましくは6〜10重量%含んでなる。
【0044】
尚、上記xの平均値は、例えば、1%のテトラメチルシランを基準物質として含有している重クロロホルムに上記シランカップリング剤を溶解させて、40℃において、日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「JNM−GSX 270」を使用して H−NMRスペクトルを求め、当該スペクトルにおける種々の長さの硫黄連鎖に結合しているαメチレンに基づく各々のシグナルの積分強度から算出することができる。具体的には、硫黄原子数(上記化学式におけるxに対応する)が1個、2個、3個、4個、5個、及び6個以上の硫黄連鎖に結合しているαメチレンの化学シフトは、それぞれ、2.54、2.72、2.91、2.99、3.02、及び3.03 ppmであるので、それぞれのαメチレンに基づくシグナルの積分強度に基づいて、硫黄連鎖に含まれる硫黄原子数の重み付け平均を求めることによって、上記xの平均値を算出することができる。
【0045】
上記xの平均値が3を超える場合には、上記ゴム組成物の未加硫時の加工性、特に混合分散性が悪化するので好ましくない。また、上記有機シラン化合物の配合量が上記表面処理カーボンブラックに対して1重量%未満である場合には、所望の効果を得ることができないので好ましくなく、逆に10重量%を超える場合には、スコーチタイムの短縮等の加工性の悪化が生ずるので好ましくない。
【0046】
好ましい態様において、上記タイヤトレッド用ゴム組成物は、上述の各種構成成分に加えて、シリカを更に含んでいてもよい。上記タイヤトレッド用ゴム組成物に配合されるシリカとしては、本発明の目的に反しない限り、当該技術分野において一般的に使用されているいずれのシリカを使用してもよい。
【0047】
上記シリカの配合量は、上記ゴム成分100重量部に対して、5〜80重量部、好ましくは30〜60重量部であるのが望ましい。シリカの配合量が、上記ゴム成分100重量部に対して5重量部未満である場合には、所望のウェット制動性の改良効果及び転がり抵抗の低減効果が得られないので好ましくなく、逆に80重量部を超える場合には、加硫後のゴム組成物における帯電防止性及び耐摩耗性が低下するので好ましくない。
【0048】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物には、更に、プロセスオイル、可塑剤、軟化剤、加硫助剤、加硫遅延剤、加硫活性化剤、老化防止剤等、及び/又はゴム配合技術分野において一般的に使用される他の各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0049】
本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部において使用されるゴム組成物は、公知のゴム用混練機械(例えば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等)を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0050】
以下に記載する実施例及び比較例によって本発明を更に詳しく説明するけれども、本発明の技術的範囲は、これらの例に限定されるものではない。
【0051】
【実施例】
実施例1及び2並びに比較例1〜6
各種配合成分
後述する各種試験片及び各種試験タイヤを構成する各種ゴム組成物の調製において使用される各種配合成分を、以下に列記する。
【0052】
ゴム成分:
スチレン−ブタジエン共重合体ゴム1(SBR−1):溶液重合SBR試作品(変性有り)
スチレン−ブタジエン共重合体ゴム2(SBR−2):溶液重合SBR試作品(変性無し)
スチレン−ブタジエン共重合体ゴム3(SBR−3):日本ゼオン株式会社製「Nipol 9520」(市販品、変性無し、37.5重量部油展)
天然ゴム(NR):TSR−20
【0053】
上記SBR−1は、例えば、炭化水素溶媒(例えば、シクロヘキサン)中で、アルキルリチウム(例えば、n−ブチルリチウム)を開始剤として使用して、スチレン及びブタジエンを重合させ、得られたリチウム末端を有する活性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムを、当該共重合体ゴムポリマー分子1モルあたり、0.75モルのN−メチルピロリドン及び0.25モルのハロゲン化スズ化合物と反応させることによって調製されるものである。
【0054】
上記SBR−2は、例えば、炭化水素溶媒(例えば、シクロヘキサン)中で、アルキルリチウム(例えば、n−ブチルリチウム)を開始剤として使用して、スチレン及びブタジエンを重合させ、得られたリチウム末端を有する活性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムを停止剤(例えば、メタノール)によって失活させて重合を停止させることによって調製されるものである。
【0055】
上記スチレン−ブタジエン共重合体ゴム1〜3(SBR−1〜3)の物性を、以下の表Iに示す。
【0056】
【表1】
Figure 2005047956
【0057】
補強用充填材:
カーボンブラック1(CB−1):表面処理カーボンブラック(N SA=125m/g、DBP吸収量=125cm/100g、ΔIA=15mg/g(処理前IA=120mg/g、処理後IA=105mg/g))
カーボンブラック2(CB−2):表面処理カーボンブラック(N SA=92m/g、DBP吸収量=120cm/100g、ΔIA=4mg/g(処理前IA=90mg/g、処理後IA=86mg/g))
カーボンブラック3(CB−3):昭和キャボット(株)製「ショウブラックN234」(ISAF−HS)(N SA=125m/g、CTAB=119m/g)
シリカ:Rhodia社製「ZEOSIL 165GR」(N SA=159m/g、CTAB=160m/g)
【0058】
尚、本明細書の記載において、CTAB吸着比表面積(CTAB)とは、JIS K6217に準拠して、カーボンブラックにCTAB(界面活性剤の一種である臭化セチルトリメチルアンモニウム)を吸着させることによって測定される比表面積(m/g)を意味する。
【0059】
カップリング剤:
有機シラン化合物1(Si−69):Degussa社製シランカップリング剤「Si−69」(平均硫黄長(x)=3.75)
有機シラン化合物2(Si−75):Degussa社製シランカップリング剤「Si−75」(平均硫黄長(x)=2.35)
【0060】
その他の構成成分:
ポリシロキサン:日本ユニカー株式会社製「KI−90E」(ポリメチルエトキシシロキサン、数平均分子量=4200)
アロマオイル:昭和シェル石油株式会社製「デソレックス 3号」
ワックス:大内新興化学工業株式会社製「サンノック」
老化防止剤(6PPD):FLEXSYS社製「SANTOFLEX 6PPD」(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン)
亜鉛華:正同化学工業株式会社製「酸化亜鉛 3種」
ステアリン酸:日本油脂株式会社製「ビーズステアリン酸」
硫黄:鶴見化学工業株式会社「金華印5%油入微粉硫黄」
加硫促進剤(CBS):FLEXSYS社製「SANTOCURE CZ」(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0061】
各種ゴム組成物、各種試験片、及び各種試験タイヤの調製
以下の表IIに示す硫黄及び加硫促進剤以外の成分を、以下の表IIに示す配合量で、容量1.3Lの密閉式混合機中で5分間混合して、実施例1及び2並びに比較例1〜6のゴム組成物のための各種マスターバッチとした。
【0062】
次に、上記各種マスターバッチに、以下の表IIに示す配合量の硫黄及び加硫促進剤を添加し、14インチのオープンロールで混練して、実施例1及び2並びに比較例1〜6のゴム組成物を得た。次に、各種ゴム組成物を、15×15×0.2cmの金型中で160℃において15分間プレス加硫して、目的とする各種試験片を調製した。
【0063】
更に、上記実施例1及び2並びに比較例1〜6のゴム組成物をトレッド部に使用して、当該技術分野において知られている従来の成形・加硫方法によって、205/65R15サイズの乗用車用タイヤを製造し、それぞれ、実施例1及び2並びに比較例1〜6の試験タイヤとした。
【0064】
【表2】
Figure 2005047956
【0065】
尚、上記表IIにおいて、「オイル成分」として記載されている配合量は、上記SBR−3に油展分として含まれているオイルと上記アロマオイルとの合計配合量を意味し、「SBR−3」として記載されている配合量は、SBR−3の配合量から、上記油展分として含まれているオイルに対応する量を差し引いた値を意味する。
【0066】
各種ゴム組成物の加工性の測定
上記マスターバッチ混合の際に、それぞれのマスターバッチについて、異なる種々の混合温度において混合を行い、加工性に関する以下のパラメーターを測定した。
【0067】
1)混合上限温度:
上記各種マスターバッチのそれぞれについて、マスターバッチのゲル化を伴わずに混合することができる最高温度を、各種ゴム組成物の各々についての混合上限温度[℃]として記録した。この混合上限温度が高いほど、ゲル化を伴わずにより高い混合温度において混合することができるので、マスターバッチを構成する各種構成要素をより均一に混合することができる。すなわち、混合上限温度は品質安全上の目安である。
【0068】
2)粘度:
上記各種マスターバッチのそれぞれを上記混合上限温度で放出し、冷却させた後、JIS K6300に準拠して、100℃においてムーニー粘度(ML1+4)を測定し、比較例6のムーニー粘度を100とする指数で表示した。このムーニー粘度の指数が低いほど、押出、圧延等の加工を容易に行うことができる。
【0069】
各種試験片の加硫物性の測定
上記各種試験片の各種加硫物性を、以下の試験方法に従って測定した。
【0070】
3)体積抵抗率:
上記各種試験片について、室温において、JIS K6911に準拠して、体積抵抗率[Ω・cm]を測定した。この測定値が低いほど、導電性が高く、帯電防止性が高いことを意味する。
【0071】
4)ランボーン耐摩耗性(耐摩耗性):
上記各種試験片について、JIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所(株)製)を使用して、荷重49N、スリップ率25%、時間4分、室温において測定し、比較例6についての測定値を100とした指数にて表示した。この指数が大きいほど、耐摩耗性が良好であることを意味する。
【0072】
各種試験タイヤのタイヤ性能の測定
上記各種試験タイヤのタイヤ性能を、以下の試験方法に従って測定した。
【0073】
5)転がり抵抗:
上記各種試験タイヤについて、ドラム径1707mm、荷重26.7kN、速度80km/hにおける転がり抵抗値を計測し、比較例6についての測定値を100とした指数で表示した。この指数が小さいほど、転がり抵抗値が低いことを示す。
【0074】
6)ウェット制動性:
上記各種試験タイヤを、それぞれ、正規空気圧で、正規リムに組み込み、2500ccの乗用車に装着し、水深3mmの路面(ウェット環境)において、初速100km/hからABSを作動させて急制動し、ブレーキを踏んでから停止するまでの距離[m]を測定し、比較例6について測定された制動距離を100とした指数によって表示した。この指数が大きいほど、制動距離が短く、ウェット制動性能が良好であることを意味する。
【0075】
上記各種ゴム組成物、各種試験片、及び各種試験タイヤについての、上記1)〜6)の各種測定の結果は、すべて上記表IIに示されている。
【0076】
各種測定結果の評価
上記各種ゴム組成物、各種試験片、及び各種試験タイヤについての、上記1)〜6)の各種測定の結果についての比較評価を以下に行う。尚、当該比較評価においては、上述の如く、比較例6を対照標準とする。
【0077】
比較例6のゴム組成物は、本発明の規定を満足する変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR−1)ではなく、当該技術分野において一般的に使用されている未変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR−2)を含んでなるゴム成分に対して、本発明の規定を満足する表面処理カーボンブラック(CB−1)、ポリシロキサン、及び有機シラン化合物(Si75)を配合してなる、対照標準用のゴム組成物である。本発明の規定を満足する表面処理カーボンブラック(CB−1)、ポリシロキサン、及び有機シラン化合物(Si75)が配合されていることもあり、加工性、体積抵抗率、及び転がり抵抗に関しては問題無いレベルではあるものの、耐摩耗性及びウェット制動性については更なる改良が望まれる。
【0078】
実施例1のゴム組成物は、当該技術分野において一般的に使用されている未変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR−2)の代わりに、本発明の規定を満足する変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR−1)を使用したことを除き、比較例6と同じ組成を有する、本発明に係るゴム組成物である。当該技術分野において一般的に使用されている未変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR−2)の代わりに、本発明の規定を満足する変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR−1)を使用した結果、比較例6と同等の加工性(混合上限温度(165℃)及び混合後の粘度)を維持しつつ、加硫後には、比較例6と同等の体積抵抗率を維持しつつ、より高い耐摩耗性を呈した。更に、当該ゴム組成物をトレッド部に使用した試験タイヤは、比較例6と同等の転がり抵抗を維持しつつ、より高いウェット制動性を呈した。すなわち、本発明に係る実施例1のゴム組成物は、未加硫時に良好な加工性を有し、かつ、加硫後に、良好な帯電防止性、耐摩耗性、転がり抵抗、及びウェット制動性をバランス良く兼備する。
【0079】
比較例1のゴム組成物は、本発明の規定を満足する表面処理カーボンブラック(CB−1)の代わりに一般的なカーボンブラック(CB−3)を使用し、これに対応して、有機シラン化合物(Si75)を使用しなかったことを除き、実施例1と同じ組成を有する、比較用のゴム組成物である。CB−1をCB−3に置き換えたことに伴い、対照標準である比較例6と比較して転がり抵抗が増大し、また、実施例1において認められたウェット制動性の改良効果も得られず、寧ろ対照標準である比較例6よりもウェット制動性が更に悪化する結果となった。
【0080】
比較例2のゴム組成物は、本発明の規定を満足する有機シラン化合物(Si75)の代わりに当該技術分野において一般的に使用されている有機シラン化合物(Si69)を使用したことを除き、実施例1と同じ組成を有する、比較用のゴム組成物である。Si75をSi69に置き換えたことに伴い、比較例6や実施例1と比較して、混合上限温度が大幅に低下し、これに伴って混合後の粘度も増大し、加工性が大幅に悪化した。その結果、実施例1において認められた耐摩耗性の改良効果が得られず、寧ろ対照標準である比較例6よりも悪化した。
【0081】
比較例3のゴム組成物は、本発明の規定を満足するポリシロキサン(ポリメチルエトキシシロキサン)を使用しなかったことを除き、実施例1と同じ組成を有する、比較用のゴム組成物である。ポリシロキサンを使用しなかったことに伴い、比較例6や実施例1と比較して、混合上限温度が大幅に低下し、これに伴って混合後の粘度も大幅に増大し、加工性が著しく悪化した。その結果、実施例1において認められた耐摩耗性及びウェット制動性の改良効果が得られず、耐摩耗性については寧ろ対照標準である比較例6よりも悪化した。更に、転がり抵抗も比較例6や実施例1よりも増大した。
【0082】
比較例4のゴム組成物は、本発明の規定を満足する表面処理カーボンブラック(CB−1)の代わりにシリカを使用したことを除き、実施例1と同じ組成を有する、比較用のゴム組成物である。CB−1をシリカに置き換えたことに伴い、比較例6や実施例1と比較して、混合上限温度が大幅に低下し、これに伴って混合後の粘度も大幅に増大し、加工性が著しく悪化した。また、体積抵抗率も大幅に増大し、実施例1において認められた耐摩耗性の改良効果も得られず、寧ろ対照標準である比較例6よりも著しく悪化した。
【0083】
比較例5のゴム組成物は、本発明の規定を満足する表面処理カーボンブラック(CB−1)の代わりに、本発明の規定を満足しない(具体的には、N SA及びΔIAが共に本発明の規定を下回っている)表面処理カーボンブラック(CB−2)を使用したことを除き、実施例1と同じ組成を有する、比較用のゴム組成物である。加工性及び体積抵抗率に関しては、比較例6や実施例1と同等レベルであったものの、CB−1をCB−2に置き換えたことに伴い、実施例1において認められた耐摩耗性及びウェット制動性の改良効果が得られず、ウェット制動性については寧ろ対照標準である比較例6よりも悪化した。更に、転がり抵抗も大幅に増大した。
【0084】
実施例2のゴム組成物は、本発明の規定を満足する表面処理カーボンブラック(CB−1)の配合量を60重量部から40重量部に減らし、これに対応して、20重量部のシリカを配合したことを除き、実施例1と同じ組成を有する、本発明の好ましい態様に係るゴム組成物である。CB−1とシリカとを併用することにより、加工性、体積抵抗率、及び耐摩耗性を実施例1とほぼ同等なレベルに維持しつつ、転がり抵抗及びウェット制動性を更に改良することができた。
【0085】
以上の結果から、本発明の規定に従って、特定の変性剤によって変性された変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を含んでなるゴム成分に対して、特定の表面処理カーボンブラック、ポリシロキサン、及び有機シラン化合物を配合することにより、未加硫時に良好な加工性を有し、かつ、加硫後に、良好な帯電防止性、耐摩耗性、転がり抵抗、及びウェット制動性をバランス良く兼備する、タイヤトレッド用ゴム組成物を提供することが可能であることが明らかとなった。
【0086】
【発明の効果】
本発明により、未加硫時に良好な加工性を有し、かつ、加硫後に、良好な帯電防止性、耐摩耗性、転がり抵抗、及びウェット制動性をバランス良く兼備する、タイヤトレッド用ゴム組成物が提供される。

Claims (2)

  1. 基−CX−N=(式中、Xは酸素又は硫黄原子を示す)を有する化合物、ベンゾフェノン、チオベンゾフェノン、イソシアナート化合物、及びハロゲン化スズ化合物からなる群から選ばれる、少なくとも1種の変性剤によって変性された変性溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)20〜70重量部を含んでなるゴム成分100重量部に対して、
    100〜150m/gの窒素吸着比表面積(N SA)及び100〜140cm/100gのDBP吸収量を有するカーボンブラックの表面をアルコキシシランによって処理して、カーボンブラックに対して3〜20重量%のシリカを付着させることによって得られる表面処理カーボンブラックであって、前記アルコキシシランによる処理の前後でのヨウ素吸着量(IA)の差(ΔIA)が10mg/g以上である表面処理カーボンブラックを10〜80重量部、
    アルコキシシリル基又はアシルオキシシリル基を有し、200〜300000の数平均分子量を有するポリシロキサンを、前記表面処理カーボンブラックに対して0.2〜30重量%、並びに
    下式:
    Figure 2005047956
    によって表される有機シラン化合物であって、上式中、xの平均値が2〜3である有機シラン化合物を、前記表面処理カーボンブラックに対して1〜10重量%、配合してなる、タイヤトレッド用ゴム組成物。
  2. 前記ゴム成分100重量部に対して、5〜80重量部のシリカを更に配合してなる、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
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