JP5991064B2 - タイヤ用ゴム組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、コロイダル特性を制御したカーボンブラックを配合してタイヤにしたときの転がり抵抗を小さくしながら耐摩耗性を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供する。
近年、空気入りタイヤに対する要求性能として、地球環境問題への関心の高まりに伴い燃費性能が優れることが求められている。燃費性能を向上するためには転がり抵抗を低減することが知られている。このため空気入りタイヤを構成するゴム組成物の発熱を抑え、タイヤにしたときの転がり抵抗を小さくすることが行われている。ゴム組成物の発熱性の指標としては一般に動的粘弾性測定による60℃のtanδが用いられ、ゴム組成物のtanδ(60℃)が小さいほど発熱性が小さくなる。
ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくする方法として、特許文献1は変性ブタジエンを含むゴム成分にシリカ及びシランカップリング剤を配合することを提案している。しかし近年の転がり抵抗を更に低減する要望や、低転がり抵抗と操縦安定性、耐摩耗性とを高次にバランスさせる要望が強く、シリカ配合系だけでなくカーボンブラックからも上述した性能を向上させることが望まれている。
カーボンブラックによりゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくする方法として、例えばカーボンブラックの配合量を少なくしたり、カーボンブラックの比表面積を大きくしたり、アグリゲート(凝集体)のサイズを小さくしたりすることが挙げられる。しかし、このような方法では、引張り破断強度、ゴム硬度などの機械的特性が低下し、タイヤにしたとき耐摩耗性、耐久性が低下するという問題がある。
このため特許文献2は、主に比表面積(BET比表面積、CTAB比表面積、沃素吸着指数IA)、DBP構造値、ストークス直径dst等を調整したカーボンブラックを配合することにより、ゴム組成物を低発熱化することを提案している。しかし、このゴム組成物では、ゴム組成物の低発熱性と耐摩耗性とを両立する効果が必ずしも十分ではなく更なる改良が求められていた。
特開2010−132872号公報 特表2004−519552号公報
本発明の目的は、コロイダル特性を制御したカーボンブラックを配合してタイヤにしたときの転がり抵抗を小さくしながら、耐摩耗性を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ガラス転移温度が−40℃以上の芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマーを20重量%以上含むゴム成分100重量部に対し、カーボンブラックを5〜80重量部、シリカを5〜100重量部、前記カーボンブラックとシリカの合計を40〜120重量部配合したタイヤ用ゴム組成物であって、前記ゴム成分の平均ガラス転移温度が−60℃以上であると共に、前記カーボンブラックの凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dstが145nm以上、窒素吸着比表面積N2SAが45〜70m2/g、よう素吸着量IA(単位mg/g)に対する前記窒素吸着比表面積N2SAの比N2SA/IAが1.00〜1.40、DBP吸収量が100〜160ml/100gであり、かつ前記カーボンブラックのN 2 SAが55m 2 /g以下のとき、前記ストークス径のモード径Dstが180nm以下であり、前記カーボンブラックのN 2 SAが55m 2 /gを超えるとき、前記ストークス径のモード径Dstが下記の式(1)
Dst<1979×(N 2 SA) -0.61 (1)
(式中、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N 2 SAは窒素吸着比表面積(m 2 /g)である。)
の関係を満たすことを特徴とする。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ガラス転移温度が−40℃以上の芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマーを20重量%以上含み、平均ガラス転移温度が−60℃以上であるゴム成分100重量部に対し、カーボンブラック凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dstが145nm以上、窒素吸着比表面積N2SAが45〜70m2/g、よう素吸着量IA(単位mg/g)に対する窒素吸着比表面積N2SAの比N2SA/IAが1.00〜1.40、DBP吸収量が100〜160ml/100gであり、かつN 2 SAが55m 2 /g以下のとき、前記ストークス径のモード径Dstが180nm以下であり、前記カーボンブラックのN 2 SAが55m 2 /gを超えるとき、前記ストークス径のモード径Dstが前記式(1)の関係を満たすカーボンブラックを5〜80重量部、シリカを5〜100重量部、前記カーボンブラックとシリカの合計を40〜120重量部配合するようにしたので、ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくしタイヤにしたときの転がり抵抗を小さくしながら、耐摩耗性を従来レベル以上に向上することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤトレッド部に使用するのが好適である。このタイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤは、転がり抵抗を小さくし燃費性能を改良しながら、耐摩耗性を従来レベル以上に向上することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分はガラス転移温度が−40℃以上の芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマーを必ず含む。芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマーの含有量は、ゴム成分100重量%中、20重量%以上、好ましくは50〜100重量%である。芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマーの含有量が、20重量%未満であると耐摩耗性を改良することができない。またタイヤにしたとき操縦安定性が低下する虞がある。
本発明で使用する芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマーは、ガラス転移温度が−40℃以上である。ガラス転移温度は、好ましくは−40〜−20℃、より好ましくは−35℃〜−25℃であるとよい。ガラス転移温度が−40℃未満であると、耐摩耗性能には優れるが、低温領域、特に−10℃付近のtanδが下がりすぎてウェットグリップ性能が悪化し実用上好ましくない。このためタイヤトレッド部に使用したとき耐摩耗性能とグリップ性能とを両立できない。芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマーのガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、低温側のベースラインと転移域の傾き(傾斜直線)とのそれぞれの延長線の交点の温度とする。また、芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマーが油展品であるときは、油展成分(オイル)を含まない状態における芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマーのガラス転移温度とする。
芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマーとしては、例えばガラス転移温度が−40℃以上のスチレンブタジエンゴム(SBR)を例示することができる。スチレンブタジエンゴムの種類としては、上述したガラス転移温度を有するものであれば、溶液重合スチレンブタジエンゴム、乳化重合スチレンブタジエンゴムのいずれでもよい。
本発明において、ゴム成分として芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマー以外の他のゴム成分を配合することができる。他のゴム成分としては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等を例示することができる。なかでも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴムがよい。また本発明が解決すべき課題の達成を妨げない範囲内であればガラス転移温度が−40℃未満の芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマーを配合することができる。このようなゴム成分は、単独又は複数のブレンドとして使用することができる。
本発明では、芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマーを含むゴム成分の平均ガラス転移温度を−60℃以上、好ましくは−60℃〜−30℃、より好ましくは−55℃〜−30℃にする。ゴム成分の平均ガラス転移温度が−60℃未満であると、タイヤトレッド部に使用したとき耐摩耗性能とグリップ性能とを両立することができない。ゴム成分の平均ガラス転移温度は、ゴム成分を構成する各ゴムのガラス転移温度を上述した方法で測定し、各ゴムのゴム成分中の重量比に基づくガラス転移温度の加重平均により算出された平均値である。
本発明のゴム組成物において、シリカ及びカーボンブラックを必ず配合する。シリカ及びカーボンブラックの配合量の合計は、ゴム成分100重量部に対し40〜120重量部、好ましくは50〜100重量部配合する。シリカ及びカーボンブラックの合計量をこのような範囲にすることにより、ゴム組成物の低転がり抵抗及び耐摩耗性をより高いレベルでバランスさせることができる。シリカ及びカーボンブラックの合計が40重量部未満であると、耐摩耗性を確保することができない。シリカ及びカーボンブラックの合計が120重量部を超えると、発熱性が大きくなり転がり抵抗が悪化する。
またシリカの配合量はゴム成分100重量部に対し5〜100重量部、好ましくは20〜90重量部配合する。シリカの配合量をこのような範囲にすることにより、ゴム組成物の低転がり抵抗と耐摩耗性とを両立する。シリカの配合量が5重量部未満であると、タイヤにしたときの転がり抵抗を十分に小さくすることができない。シリカの配合量が100重量部を超えると、混合性が低下することによりフィラー分散性が低下し転がり抵抗性が悪化すると共に、ウェットグリップ性が不十分となり実用上好ましくない。
シリカとしてはCTAB比表面積が好ましくは80〜300m2/gにするとよい。シリカのCTABが80m2/g未満であると、ゴム組成物に対する補強性が不十分となり耐摩耗性及び操縦安定性が不足する。またシリカのCTABが300m2/gを超えると、転がり抵抗が大きくなる。なおシリカのCTAB比表面積は、ISO 9277に準拠して求めるものとする。
本発明で使用するシリカは、上述した特性を有するシリカであればよく、製品化されたもののなかから適宜選択してもよいし、通常の方法で上述した特性を有するように製造してもよい。シリカの種類としては、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは表面処理シリカなどを使用することができる。
本発明のゴム組成物において、シリカと共にシランカップリング剤を配合することが好ましく、シリカの分散性を向上しゴム成分との補強性をより高くすることができる。シランカップリング剤は、シリカ配合量に対して好ましくは3〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%配合するとよい。シランカップリング剤の配合量がシリカ重量の3重量%未満の場合、シリカの分散性を向上する効果が十分に得られない。また、シランカップリング剤の配合量が20重量%を超えると、シランカップリング剤同士が縮合してしまい、所望の効果を得ることができなくなる。
シランカップリング剤としては、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましく、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物では、特定の凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dst、DBP吸収量、窒素吸着比表面積N2SA及びよう素吸着量IAに対する窒素吸着比表面積の比N2SA/IAを限定した新規のカーボンブラックを配合することにより、粒子径が大きいカーボンブラックを用いてゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくしながら、耐摩耗性を維持・向上することができる。カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し5〜80重量部、好ましくは10〜70重量部にする。カーボンブラックの配合量が5重量部未満であると、ゴム組成物の耐摩耗性が悪化する。またカーボンブラックの配合量が80重量部を超えると、tanδ(60℃)が大きくなると共に、配合できるシリカ量が減るのでウェットグリップ性が悪化し実用上好ましくない。
本発明で使用するカーボンブラックは、窒素吸着比表面積N2SAが45〜70m2/g、好ましくは48〜62m2/gである。N2SAが45m2/g未満であると、ゴム組成物の耐摩耗性が低下する。N2SAが70m2/gを超えると、tanδ(60℃)が大きくなる。N2SAは、JIS K6217−2に準拠して、測定するものとする。
またカーボンブラックのよう素吸着量IA(単位mg/g)に対する窒素吸着比表面積N2SAの比N2SA/IAは1.00〜1.40、好ましくは1.01〜1.27にする。このコロイダル特性の比N2SA/IAが1.00未満であると、ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくすることができない。また比N2SA/IAが1.40を超えると、表面活性が高すぎて混合性が悪化する。よう素吸着量IAは、JIS K6217−1に準拠して、測定するものとする。
また、カーボンブラックのDBP吸収量は、100〜160ml/100g、好ましくは110〜150ml/100gである。DBP吸収量が100ml/100g未満であるとゴム組成物の成形加工性が低下しカーボンブラックの分散性が悪化するのでカーボンブラックの補強性能が十分に得られず、耐摩耗性が悪化する。DBP吸収量が160ml/100gを超えると、モジュラス、硬度が高くなり過ぎてしまい引張り破断強度、引張り破断伸びなどの機械的特性を改良する効果が十分に得られず、耐摩耗性が却って悪化する。また粘度の上昇により加工性が悪化する。DBP吸収量は、JIS K6217−4吸油量A法に準拠して、測定するものとする。
本発明で使用するカーボンブラックは、凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dst(以下「ストークス径Dst」ということがある。)が、145nm以上、好ましくは150nm以上である。ストークス径Dstを145nm以上にすることにより、ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくしながら、耐摩耗性を維持・向上することができる。本発明において、凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dstとは、カーボンブラックを遠心沈降させ、光学的に得た凝集体のストークス径の質量分布曲線における最大頻度のモード径をいう。本発明において、DstはJIS K6217−6ディスク遠心光沈降法による凝集体分布の求め方に準拠して、測定するものとする。
またストークス径Dstの上限は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積N2SAとの関係で決める。すなわちカーボンブラックのN2SAが45m2/g以上55m2/g以下のとき、ストークス径Dstは180nm以下である。またカーボンブラックのN2SAが55m2/gを超え70m2/g以下のとき、ストークス径Dstは、下記の式(1)の関係を満たす。
Dst<1979×(N2SA)-0.61 (1)
(式(1)中、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/g)である。)
カーボンブラックのストークス径Dstの上限を上述した範囲にすることにより、カーボンブラックの生産性及びコストの両立ができる。
すなわち本発明では、N2SAが45〜70m2/gの範囲において、比N2SA/IAを1.00〜1.40、DBP吸収量を100〜160ml/100g、ストークスDstを145nm以上にした特定のカーボンブラックを使用する。このようなカーボンブラックは、凝集体のストークス径が大きく、ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくすると共に、ゴムに対する補強性能を高くするため、ゴム組成物の耐摩耗性を従来レベル以上に向上することができる。
上述したコロイダル特性を有するカーボンブラックは、例えば、カーボンブラック製造炉における原料油導入条件、燃料油及び原料油の供給量、燃料油燃焼率、反応時間(最終原料油導入位置から反応停止までの燃焼ガスの滞留時間)などの製造条件を調整して製造することができる。
タイヤ用ゴム組成物には、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、各種無機充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのキャップトレッド部、アンダートレッド部、サイドウォール部、ビードフィラー部、ランフラットタイヤにおける断面三日月型のサイド補強ゴム層、リムクッション部、インナーライナー部、或いはカーカス層、ベルト層、ベルトカバー層などのコード被覆用ゴムなどに好適に使用することができる。とりわけトレッド部に使用することが好ましく、特にキャップトレッドに使用するのがよい。これらの部材に本発明のゴム組成物を使用した空気入りタイヤ、特にタイヤトレッド部を本発明のゴム組成物で構成した空気入りタイヤは、走行時の発熱性が小さくなるので、転がり抵抗を小さくし燃費性能を改良することができる。同時に、耐摩耗性が優れ、従来レベル以上に維持・向上することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
8種類のカーボンブラック(CB1〜CB8)を使用して16種類のゴム組成物(実施例1〜6、比較例1〜10)を調製した。このうち3種類のカーボンブラック(CB1〜CB3)は市販グレード、5種類のカーボンブラック(CB4〜CB8)は試作品であり、それぞれのコロイダル特性を表1に示した。
Figure 0005991064
表1において、各略号はそれぞれ下記のコロイダル特性を表わす。
・N2SA:JIS K6217−2に基づいて測定された窒素吸着比表面積
・IA:JIS K6217−1に基づいて測定されたよう素吸着量
・CTAB:JIS K6217−3に基づいて測定されたCTAB吸着比表面積
・DBP:JIS K6217−4(非圧縮試料)に基づいて測定されたDBP吸収量
・24M4:JIS K6217−4(圧縮試料)に基づいて測定された24M4−DBP吸収量
・Dst:JIS K6217−6に基づいて測定されたディスク遠心光沈降法による凝集体のストークス径の質量分布曲線の最大値であるモード径
・△D50:JIS K6217−6に基づいて測定されたディスク遠心光沈降法による凝集体のストークス径の質量分布曲線において、その質量頻度が最大点の半分の高さのときの分布の幅(半値幅)
・α:上述したDst及びN2SAを下記式(3)の関係に当てはめたときの係数α
Dst=α×(N2SA)-0.61 (3)
(式中、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/g)である。)
・N2SA/IA:窒素吸着比表面積N2SAとよう素吸着量IAの比
表1において、カーボンブラックCB1〜CB3は、それぞれ以下の市販グレードを表わす。またカーボンブラックCB3〜CB8は以下の製造方法により調製した。
・CB1:東海カーボン社製シーストKHP
・CB2:東海カーボン社製シーストKH
・CB3:東海カーボン社製シースト116HM
カーボンブラックCB4〜CB8の製造
円筒反応炉を使用して、表2に示すように全空気供給量、燃料油導入量、燃料油燃焼率、原料油導入量、反応時間を変えて、カーボンブラックCB4〜CB8を製造した。
Figure 0005991064
タイヤ用ゴム組成物の調製及び評価
上述した8種類のカーボンブラック(CB1〜CB8)を用いて、表3,4に示す配合からなる16種類のゴム組成物(実施例1〜6、比較例1〜10)を調製するに当たり、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く成分を秤量し、55Lのニーダーで15分間混練した後、そのマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを55Lのニーダーに供し、硫黄及び加硫促進剤を加え、混合しタイヤ用ゴム組成物を得た。なお、表3,4において、SBR1及びSBR2が油展品であるため、油展オイルを含むSBRの配合量を記載すると共に、その下の括弧内に油展オイル量を除いた正味のゴム成分の配合量を記載した。またゴム成分の平均ガラス温度を求め「ゴム成分の平均Tg」の欄に記載した。
得られた16種類のゴム組成物を使用してタイヤトレッド部を構成するようにして、以下のタイヤサイズの空気入りタイヤを加硫成形した。得られた16種類の空気入りタイヤの転がり抵抗、耐摩耗性及びウェットグリップ性を下記に示す方法により評価した。
転がり抵抗
タイヤサイズが195/65R15の空気入りタイヤを加硫成形し、得られたタイヤを標準リム(サイズ15×6Jのホイール)に組み付け、JIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)に取り付け、JIS D4230の「6.4高速性能試験A」に記載される高速耐久性の試験に準拠して高速耐久性試験を実施し、試験荷重2.94kN、速度50km/時の抵抗力を測定し、転がり抵抗とした。得られた結果は、比較例1の値の逆数を100とする指数として表3,4の「転がり抵抗」の欄に示した。この指数が大きいほど転がり抵抗が小さく燃費性能が優れていることを意味する。
耐摩耗性
タイヤサイズが225/50R17の空気入りタイヤを加硫成形し、得られたタイヤを標準リム(サイズ17×7.5Jのホイール)に組み付け、JIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)に取り付け、JIS D4230の「6.4高速性能試験A」に記載される高速耐久性の試験に準拠して高速耐久性試験を実施し、試験荷重2.94kN、速度50km/時で20000kmの走行試験を行った。試験後のタイヤ幅方向中央領域の主溝深さの変化から摩耗量を測定した。得られた結果は、比較例1の値の逆数を100とする指数として表3,4の「耐摩耗性」の欄に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性が優れていることを意味する。
ウェットグリップ性
タイヤサイズが225/50R17の空気入りタイヤを加硫成形し、得られたタイヤを標準リム(サイズ17×7.5Jのホイール)に組み付け、撒水したアスファルト路面を初速40km/hで走行し、制動したときの制動距離を測定し、比較例1を100とする指数として表3,4の「ウェットグリップ性」の欄に示した。この指数が大きいほどウェットグリップ性が優れていることを意味する。
Figure 0005991064
Figure 0005991064
なお、表3,4において使用した原材料の種類を下記に示す。
NR:天然ゴム、RSS#3、Tg=−64℃
SBR1:スチレン−ブタジエンゴム、旭化成ケミカルズ社製E580、Tg=−27℃、ゴム成分100重量部に対しオイル37.5重量部を配合した油展品
SBR2:スチレン−ブタジエンゴム、旭化成ケミカルズ社製タフデン1834、Tg=−71℃、ゴム成分100重量部に対しオイル37.5重量部を配合した油展品
BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220、Tg=−107℃
CB1〜CB8:上述した表1に示したカーボンブラック
アロマオイル:ジャパンエナジー社製プロセスX−140
亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
ワックス:大内新興化学工業社製サンノック
老化防止剤:フレキシス社製SANTOFLEX6PPD
加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
硫黄:鶴見化学工業社製油処理硫黄
表3,4から明らかなように実施例1〜6のタイヤ用ゴム組成物は、低転がり抵抗、耐摩耗性及びウェットグリップ性が従来レベル以上に向上することが確認された。
表3から明らかなように、比較例1及び2のゴム組成物は、カーボンブラックCB1及びCB2のN2SAが45m2/g未満かつストークス径Dstが145nm未満であるため、実施例1〜4のタイヤ用ゴム組成物に比べ、低転がり抵抗及び耐摩耗性のバランスが劣る。比較例3のゴム組成物は、カーボンブラックCB3のストークス径Dstが145nm未満、比N2SA/IAが1.00未満であるため、低転がり抵抗及び耐摩耗性が悪化する。比較例4のゴム組成物は、カーボンブラックCB4のDBP吸収量が160ml/100gを超えるので、耐摩耗性が悪化する。
表4から明らかなように、比較例5のゴム組成物は、Tgが−40℃以上であるSBR1の配合量が20重量部未満、ゴム成分の平均ガラス転移温度が−60℃未満であるのでウェットグリップ性が悪化する。
比較例6のゴム組成物は、SBR2のTgが−40℃未満、ゴム成分の平均ガラス転移温度が−60℃未満であるのでウェットグリップ性が悪化する。
比較例7のゴム組成物は、ゴム成分の平均Tgが−60℃より低いのでウェットグリップ性が悪化する。
比較例8のゴム組成物は、カーボンブラックCB6及びシリカの合計が120重量部を超えるので転がり抵抗性及びウェットグリップ性が悪化する。
比較例9のゴム組成物は、カーボンブラックCB6の配合量が80重量部を超えるので、転がり抵抗性及びウェットグリップ性が悪化する。
比較例10のゴム組成物は、シリカの配合量が100重量部を超えるので転がり抵抗性及びウェットグリップ性が悪化する。

Claims (3)

  1. ガラス転移温度が−40℃以上の芳香族ビニル共役ジエン共重合ポリマーを20重量%以上含むゴム成分100重量部に対し、カーボンブラックを5〜80重量部、シリカを5〜100重量部、前記カーボンブラックとシリカの合計を40〜120重量部配合したタイヤ用ゴム組成物であって、前記ゴム成分の平均ガラス転移温度が−60℃以上であると共に、前記カーボンブラックの凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dstが145nm以上、窒素吸着比表面積N2SAが45〜70m2/g、よう素吸着量IA(単位mg/g)に対する前記窒素吸着比表面積N2SAの比N2SA/IAが1.00〜1.40、DBP吸収量が100〜160ml/100gであり、かつ前記カーボンブラックのN 2 SAが55m 2 /g以下のとき、前記ストークス径のモード径Dstが180nm以下であり、前記カーボンブラックのN 2 SAが55m 2 /gを超えるとき、前記ストークス径のモード径Dstが下記の式(1)
    Dst<1979×(N 2 SA) -0.61 (1)
    (式中、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N 2 SAは窒素吸着比表面積(m 2 /g)である。)
    の関係を満たすことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
  2. タイヤトレッド部に使用する請求項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物でタイヤトレッド部を構成したことを特徴とする空気入りタイヤ。
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