JP2004324018A - ポリオレフィン製タフティングマット及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリオレフィン製の一次基布2にポリオレフィン製のパイル糸3をタフテイングしてパイル布4を形成し、パイル糸3を低融点の接合用ポリオレフィン6によって一次基布2に接合してなるタフティングマット1において、ポリオレフィンがいずれもメタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、及び/又は、ポリプロピレンからなることを特徴とするポリオレフィン製タフティングマット。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン製タフティングマット、さらに詳しくは、軽量で、耐水性、柔軟性に優れ、かつ、パイル糸の抜け落ちがなく、耐久性に優れ、また、リサイクル性のよいポリオレフィン製タフティングマットに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、人工芝生、敷物としてパイル糸を植生したタフティングマットが広く使用されている。かかるタフティングマット20は、図7に示すように、一次基布21にパイル糸22をタフティングして得られたパイル布23の裏面にラテックス24を塗布することによってパイル糸を固定して人工芝生とされている。
【0003】
しかし、かかるタフティングマット20は、パイル糸22がポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等によって製造され、一次基布21にポリエステル、ポリプロピレン等が用いられて、多彩な材料で形成されており、また、パイル糸22を固定する接着剤としてラテックスが使用されるため、得られたタフティングマット20は多種の材料が混在することになり、タフティングマット20の回収、再生を難しくしていた。
【0004】
この問題に着目し、タフティングマット20の回収、再生を容易にするために、特許文献1には、一次基布21及びパイル糸22にポリプロピレンを用い、裏面にラテックス24に替えてポリエチレンフィルムを接合してパイル糸を固定したタフティングマットが提案されている。
【0005】
タフティングマット20を全ポリオレフィン化することによって回収、再生を容易にすることができる。しかし、従来のチーグラー触媒を用いて重合されたポリエチレン、ポリプロピレンは、融点が高く、パイル糸を接合するためのバッキング材の熱処理に高温を必要とするため、基布、パイル糸の収縮の問題があり、また、腰があり柔軟性に乏しいために、巻き癖が付き、タフティングマットを敷設したときに敷設面に密着せず波打ちが生じ易い問題がある。さらに、従来のチーグラー触媒を用いて重合されたポリエチレン、ポリプロピレンは、基布を製織する際、縦裂けが生じ易く強度が低下する問題もあり、実用的な特性を有するタフティングマットとしては満足できるものでなかった。
【0006】
また、パイル糸22をタフティングしたパイル布20の裏面は、パイル糸22によって無数の凹凸が形成されているため、ポリエチレンをフィルム状にしてこれを加熱溶融してロール等で押圧接合するときは、パイル糸22による凸部によって全面の押圧が阻害され、凸部の周りには非接着部が残存することになり、視覚的に美観を損なうと共にパイル糸の固定機能が充分発揮できず、使用中にパイル糸22が抜け落ちるおそれがある。
【0007】
このため、特許文献1は、裏打するポリエチレンとして、微粉末のポリエチレンを用い、パイル布の裏面に敷き広げた後、これを加熱溶融する方式を提案している。しかし、ポリエチレンを微粉末化するためには手数がかかりコスト高となる外、敷き広げられたポリエチレンを加熱溶融してパイル布の裏面に接合するためには時間を要し、生産性を上げることができないという問題があり、生産効率が高く、接合性の優れたタフティングマットの開発が要請されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−17605号公報
【特許文献2】特開平11−222804号公報
【特許文献3】特開平11−241307号公報
【特許文献4】特開2000−8239号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、人工芝生、敷物として好適な、軽量で、耐水性に優れ、柔軟で波打ちすることがなく敷設面に密着し、また、パイル糸の抜け落ちがなく、耐久性に優れ、リサイクル性のよいポリオレフィン製タフティングマットを提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果なされたもので、具体的には、ポリオレフィン製の一次基布にポリオレフィン製のパイル糸をタフティングしてパイル布を形成し、パイル糸を低融点の接合用ポリオレフィンによって一次基布に接合してなるタフティングマットにおいて、ポリオレフィンがいずれもメタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、及び/又は、ポリプロピレンからなることを特徴とするポリオレフィン製タフティングマットを提供するものである。
【0011】
また、本発明は、低融点のフィルム状の接合用ポリオレフィンが積層された一次基布にパイル糸をタフティングし、これを熱処理することによってパイル糸を接合してなる上記のポリオレフィン製タフティングマット、一次基布にパイル糸をタフティングしてパイル布を形成し、得られたパイル布の裏面に低融点の溶融フィルム状の接合用ポリオレフィンを積層し、必要に応じて熱処理することによってパイル糸を接合してなる上記のポリオレフィン製タフティングマット、及び、ポリオレフィンからなる基層の表面に低融点の接合用ポリオレフィンの表層が形成された複合線条体で形成された一次基布に、パイル糸をタフティングし、熱処理することによってパイル糸を接合してなる上記のポリオレフィン製タフティングマットを提供するものである。
【0012】
さらに、本発明は、タフティングマットが人工芝生である上記のいずれかに記載のポリオレフィン製タフティングマット、タフティングマットがカーペットである上記のポリオレフィン製タフティングマットを提供するものである。
【0013】
さらに、また、本発明は、ポリオレフィン製の一次基布にポリオレフィン製のパイル糸をタフティングし、該パイル糸を低融点の接合用ポリオレフィンによって一次基布に接合するタフティングマットの製造方法において、ポリオレフィンとして、メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、及び/又は、ポリプロピレンを用いることを特徴とするポリオレフィン製タフティングマットの製造方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、低融点の接合用ポリオレフィンを溶融フィルム状としてポリオレフィン製の一次基布に積層し、得られた積層シートにポリオレフィン製のパイル糸をタフティングし、これを熱処理することによって、パイル糸を接合する上記のポリオレフィン製タフティングマットの製造方法、ポリオレフィン製の一次基布にポリオレフィン製のパイル糸をタフティングしてパイル布を形成すると共に、低融点の接合用ポリオレフィンのフィルムを輻射熱によって加熱溶融して、パイル布の裏面に積層することによって、パイル糸を接合する上記のポリオレフィン製タフティングマットの製造方法、低融点のフィルム状の接合用ポリオレフィンを輻射熱によって加熱溶融して、パイル布の裏面に空気圧を利用して接合することによって、接合用ポリオレフィンのフィルムをパイル糸による凹凸に沿わせて、パイル布の裏面の実質的全面に密着せしめることによって、パイル糸を接合する上記のポリオレフィン製タフティングマットの製造方法、一次基布として、接合用ポリオレフィン層を積層した一次基布を用いる上記のポリオレフィン製タフティングマットの製造方法、及び、接合用ポリオレフィンとして、輻射熱吸収性の微粉末が配合された接合用ポリオレフィンを使用する上記のポリオレフィン製タフティングマットの製造方法を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のタフティングマット1は、図1(A)、(B)に示すように、ポリオレフィン製の一次基布2にポリオレフィン製のパイル糸3をタフティングしてパイル布4を形成すると共に接合用ポリオレフィン層6によってパイル糸3を一次基布2に接合することによって得られ、ポリオレフィンとして、メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、及び/又は、ポリプロピレンが使用される。
【0016】
メタロセン触媒としては、後述するように、メタロセン化合物を主成分とする重合用触媒を意味し、メタロセン化合物は、シクロペンタジエニル又はその誘導体と遷移金属化合物から構成される化合物が使用される。
【0017】
一次基布2は、メタロセン触媒を用いて重合されたポリオレフィンからなる線条体5を布状体として用いられる。本発明において布状体とは、線条体5からなる可撓性のシート状体を総称するものとし、線条体5は、細幅の一軸延伸物を意味し、ヤーン、テープ、スプリットヤーン、モノフィラメント、短繊維、長繊維等を含むものであり、これらは、必要に応じて撚糸される。
【0018】
線条体5としては、図5(A)に示すように、熱可塑性樹脂からなる基層10の単層体であってもよく、また、図5(B)に示すように、基層10の片面に接合層11が積層されたものであってもよく、また、図5(C)に示すように、基層10の両面に接合層11を積層したものであってもよい。さらに、図5(D)に示すように、シースコア構造とすることができ、図5(E)に示すように、サイドバイサイド構造とすることもできる。中でも、図5(C)に示すように、テープ状基層10の両面に低融点の接合層11を積層したものが望ましい。
【0019】
線条体5の単層体、又は、複層体の基層を構成するポリオレフィンとしては、延伸効果の大きい結晶性ポリオレフィンが望ましく、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体が用いられる。
【0020】
高密度ポリエチレンとしては、密度が0.930〜0.970g/cm3、好ましくは0.940〜0.960g/cm3、MFRが0.2〜10.0g/10分、好ましくは0.3〜3.0g/10分のものが望ましい。
【0021】
接合層11は布状体とした後、線条体5間を接合し、あるいは、パイル糸3及び線条体5と接合用ポリオレフィン層6とを接合する機能を果たすもので、基層10を構成する合成樹脂より融点が低く熱融着性の優れた合成樹脂が選択され、好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上融点の低い熱可塑性樹脂が選択される。融点は分子量の調節、共重合単量体の添加量等によって調節することができる。
【0022】
基層10あるいは接合層11を形成する熱可塑性樹脂には、目的に応じて各種の添加剤を添加することができる。具体的には、フェノール系、有機ホスファイト系、ホスナイトなどの有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アルカリ土類金属塩のカルボン酸塩系等の塩素補足剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;ヒドラジン系、アミンアシド系等の金属不活性剤;含臭素有機系、リン酸系、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、赤リン等の難燃剤;有機顔料;無機顔料;無機充填剤、有機充填剤;金属イオン系などの無機、有機抗菌剤等が挙げられる。
【0023】
これら添加剤は、適宜組み合わされて、線条体5の材料組成物を製造するいずれかの工程で配合される。添加剤の配合は、従来の公知の二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール等の混練装置を用いて所定割合に混合して、これを溶融混練して調製してもよいし、高濃度のいわゆるマスターバッチを作製し、これを希釈して使用するようにしてもよい。
【0024】
また、延伸は、熱ロールによる延伸、熱板による延伸、熱風炉による延伸等によって行なうことができる。延伸倍率は通常3〜10倍程度とされる。
【0025】
線条体5として積層体が使用される場合、成形材料となる積層フィルムを成形する手段としては、予め基層10となるフィルムと接合層11となるフィルムを形成してドライラミネート法や熱ラミネート法を用いて複層化する方法や、基層10となるフイルムの表面に接合層11となる熱可塑性合成樹脂をコーティングする方法、予め形成した基層10となるフィルムに接合層11を押出ラミネートする方法、あるいは、多層共押出法によって基層10と接合層11の積層フィルムとして押出成形するなどの公知の手段から適宜選択して用いればよいが、成形の容易さやコスト面、並びに、製品の各層間の接着性及び光透過性の点では、多層共押出法によって基層10と接合層11の積層体を一段で得る方法が望ましい。シースコア構造、あるいは、サイドバイサイド構造については共押出法によるのが一般的である。
【0026】
線条体5の太さはなんらの制限なく目的に応じて任意に設定することができるが、線条体5として一軸延伸フラットヤーンを用いるときは、一般的には、75〜2000デシテックス、糸幅が0.3〜10mmの範囲とされる。こうして得られた一軸延伸フラットヤーンは、縦方向に小さな切れ目を入れてスプリットヤーンとすることもできる。スプリットヤーンとすることによって風合い、手触りを改良することができる。
【0027】
また、線条体5としては、延伸されたモノフィラメントを使用することもでき、さらに、不織布とするときは短繊維を使用することができる。また、短繊維を紡績して得られた撚糸を使用することも可能である。
【0028】
こうして得られた一軸延伸テープ等の線条体5は、図3(A)、(B)に示すように平織とし、また、綾織、斜文織、畦織、二重織、模紗織等の方法で織製し、あるいは、図4に示すように、多数の線条体5bを並列し、その上に交差するように線条体5aを配設してその交点を接合した交差結合布(ソフ)とした一次基布2を用いることができ、また、タテ編み、ヨコ編み、ラッセル編み、トリコット編み等に編込むことによって一次基布2とすることができる。
【0029】
なお、一次基布2としてソフを用いるときは、図4に示すように、結晶性のポリオレフィンからなる基層10の表面に、基層10より低融点の接合層11を積層することが望ましく、低融点の接合層11を積層することによって熱融着によって交点を接合することができる。
【0030】
パイル糸3は、メタロセン触媒を用いて重合されたポリオレフィンを一軸延伸することによって形成される。パイル糸3を形成するポリオレフィンとしては、延伸効果の大きい結晶性のポリオレフィンが用いられ、結晶性の高い高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体が望ましい。
【0031】
なお、本発明においてパイル糸3は、結晶性のポリオレフィンの単層体であってもよいが、結晶性のポリオレフィンからなる基層の表面に、顔料又は無機フィラーを配合した表層を積層した複合繊維とすることができる。複合繊維の構造、製造方法は、線条体5と同様に行なうことができ、表層は、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体を用いることが好ましい。
【0032】
表層は、パイル糸に風合いを与え、あるいは、タフティングマット1を希望の色彩に着色するもので、顔料又は無機フィラーの配合量の少ない基層に、顔料又は無機フィラーの配合量の多い表層を積層することによって機能分化することができ、基層によって機械的強度が付与され、表層によって色彩、風合いが付与される。その結果、機械的強度を低下することなく、所望のパイル糸3を得ることができる。
【0033】
これらパイル糸3を構成するポリオレフィンには、目的に応じて各種の添加剤を添加することができる。具体的には、フェノール系、有機ホスファイト系、ホスナイトなどの有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アルカリ土類金属塩のカルボン酸塩系等の塩素補足剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;ヒドラジン系、アミンアシド系等の金属不活性剤;含臭素有機系、リン酸系、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、赤リン等の難燃剤;有機顔料;無機顔料;無機充填剤、有機充填剤;金属イオン系などの無機、有機抗菌剤等が挙げられる。
【0034】
これら添加剤は、適宜組み合わせて、基層や表層の材料組成物を製造するいずれかの工程で配合される。添加剤の配合は、従来の公知の二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール等の混練装置を用いて所定割合に混合して、これを溶融混練して調製してもよいし、高濃度のいわゆるマスターバッチを作製し、これを希釈して使用するようにしてもよい。
【0035】
得られたパイル糸3は、一次基布2にタフティングされてパイル布4とされる。パイル糸3のタフティングは、従来公知のタフティングカーペットの製造方法と同様の方法によって行うことができる。
【0036】
本発明においては、メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、及び/又は、ポリプロピレンによって形成された一次基布2とパイル糸3が、同様に、メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、及び/又は、ポリプロピレンからなる接合用ポリオレフィンによって、接合されるところに特徴を有す。メタロセン触媒を用いて重合されたポリオレフィンを用いることによって、パイル糸3の接合が容易となって強固に固定することができ、また、柔軟性に優れたタフティングマットを得ることができる。
【0037】
中でも、MFRが10以上、好ましくはMFRが15以上、さらに好ましくはMFRが20以上の線状低密度ポリエチレンが望ましい。MFRが10未満では一次基布2への接合が難しくなるため、接合温度を高くする必要が生じて、パイル糸3が収縮するおそれが生じる。
【0038】
接合用ポリオレフィンの厚さは、任意であり、目的に応じて選定することができるが、一般には、8μm以上、好ましくは12μm以上2mm以下程度とされる。
【0039】
接合用ポリオレフィンの適用は各種の方法を採ることができる。その一例としては、図1に示すように、パイル糸3を一次基布2にタフティングしてパイル布4を形成した後、パイル布4の裏面に溶融フィルム状の接合用ポリオレフィンを添着して接合用ポリオレフィン層6を形成することによって行なうことができる。
【0040】
接合用ポリオレフィン層6の接合は、空気圧を用いて押圧することが望ましく、空気圧を用いて押圧することにより、接合用ポリオレフィン層6がパイル糸3によって形成された凹凸に沿って賦形され、パイル布4の裏面全体に接合することができる。
【0041】
空気圧を用いて接合する方法としては、図6に示すように、パイル布4を裏面が上面となるようにして接合装置に供給し、その上に接合用ポリオレフィンフィルム6を重ねると共に、加熱ヒーター等の輻射熱加熱方式の加熱装置15を用いて加熱することによって接合用ポリオレフィンフィルム6を溶融し、ついで、エアーナイフ等の熱風噴き出し装置16を用いて接合用ポリオレフィンフィルム6を押圧することによって、接合用ポリオレフィンフィルム6をパイル布4に接合することができる。接合用ポリオレフィンフィルム6とパイル布4の接合は、パイル糸3が収縮しない温度範囲で行なわれる。
【0042】
空気圧を用いて接合することにより、図1(B)に示すように、パイル糸3によって形成された凸部12の間に連続した凹部13が形成され、凹部13はタフティングマット1が敷設された際に雨水等を排水する排水路として機能させることができる。なお、必要に応じて、接合用ポリオレフィン層6に所定の間隔をおいて多数の排水孔を設けることによってタフティングマット1を敷設した際の上面の排水を図ることもできる。
【0043】
また、接合用ポリオレフィンフィルム6に輻射熱吸収性物質の微粉末を配合することによって、接合用ポリオレフィンフィルム6を接合する場合に輻射熱による加熱効率を向上することができる。輻射熱吸収性物質としては、カーボンブラック、グラファイトが好ましい。
【0044】
また、接合用ポリオレフィン層6による接合は、図2(A)、(B)に示すように、接合用ポリオレフィンフィルム6を一次基布2に積層して積層シートを形成し、得られた積層シートにパイル糸3をタフティングしてパイル布4とした後、これを熱処理することによって行なうことができる。さらに、接合用ポリオレフィンフィルム6を一次基布2に積層した積層シートの利用に併せて、さらに、得られたパイル布4の裏面に接合用ポリオレフィンフィルム7を添着することができ、パイル糸3を上下から固定することができる。
【0045】
本発明に使用されるポリオレフィンを重合するためのメタロセン触媒としては、メタロセン化合物を主成分とする重合用触媒が用いられ、メタロセン化合物は、シクロペンタジエニル又はその誘導体と遷移金属化合物から構成される化合物で、例えば、次の一般式(1)、(2)で表せる化合物を用いることができる。
【0046】
(a−1) (C5H5−aR1 a)(C5H5−aR2 a)MXY (1)
(a−2) Q(C5H4−bR1 b)(C5H4−bR2 b)MXY (2)
【0047】
上記の一般式(1)、(2)において、Qは二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を表す。Mは周期律表第4〜6族遷移金属を表し、中でもチタン、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
【0048】
XおよびYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20の珪素含有炭化水素基を示す。
【0049】
R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、珪素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基またはホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のR1または2個のR2がそれぞれ結合してC4〜C10環を形成して、例えば、フルオレニル基、インデニル基、アズレニル基を形成していてもよい。aおよびbは、0≦a≦5、0≦b≦4を満足する整数である。
【0050】
2個の共役五員環配位子の間を架橋する結合性基Qは、例としてアルキレン基、アルキリデン基、シリレン基、ゲルミレン基等が挙げられる。これらは水素原子がアルキル基、ハロゲン等で置換されたものであってもよい。
【0051】
これらメタロセン触媒成分(成分a)は、メタロセン触媒を活性化する助触媒成分(成分b)と組合されて使用される。助触媒成分としては、特開平6−239914号、特開平8−208733号に例示された化合物を使用することができ、例えば、次の化合物を使用することができる。
【0052】
成分(b−1):アルミニウムオキシ化合物、
成分(b−2):ルイス酸、
成分(b−3):成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換するこ とが可能なイオン性化合物、あるいは、
成分(b−4):イオン交換性層状珪酸塩
【0053】
アルミニウムオキシ化合物(成分(b−1))としては、アルモキサンとも呼ばれる化合物であって、一種類のトリアルキルアルミニウム、または二種類以上のトリアルキルアルミニウムと水との反応により得られる生成物を使用することができる。
【0054】
また、成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物(成分(b−3))としては、一般式(3)で表されるものが好ましい。
【0055】
[K]e+[Z]e− (3)
【0056】
ここで、Kはイオン性のカチオン成分であって、例えばカルボニウムカチオン、トロピリウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン等が挙げられる。
【0057】
上記の一般式(3)におけるZはイオン性のアニオン成分であり、成分(a)が変換されたカチオン種に対して対アニオンとなる成分であって、例えば、有機ホウ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオン、などが挙げられる。
【0058】
本発明において、成分(b−4)として用いられるイオン交換性層状珪酸塩からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物であり、含有するイオンが交換可能なものをいう。
【0059】
具体的には、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
【0060】
本発明タフティングマットは、野球、サッカー、ラグビー等の多目的グランド、テニスコート、ゴルフ練習場の人工芝生として用いることができ、また、歩行路、車、飛行機、ホール等のカーペット等の敷物として用いることができる。
【0061】
【発明の効果】
本発明ポリオレフィン製タフティングマットは、メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、及び/又は、ポリプロピレンからなるから、柔軟で敷設面への従応性がよく、敷設した際浪打がなく、また、軽量であり、線条体の縦裂けもなく、耐久性に優れ、また、ポリオレフィンのみで構成されるから、回収、再生のリサイクルが容易となる。
【0062】
さらに、パイル糸は低融点の接合用ポリオレフィンで結合されるから、結合が強固で、パイル糸が抜け落ちることがなく、耐久性に優れたポリオレフィン製タフティングマットが得られる。
【0063】
また、パイル布に裏打された接合用ポリオレフィンは、パイル布裏面の凹凸に沿って賦形されるから、凸部の間に連続した凹部が形成され、凹部が排水路を形成するから、コンクリート上に敷設した際にも迅速に排水されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明タフティングマットの一例を示す(A)は正断面図、(B)は側断面図
【図2】本発明タフティングマットの他の例を示す(A)は正断面図、(B)は側断面図
【図3】一次基布の例を示す(A)は平面図、(B)は縦断面図
【図4】一次基布の他の例を示す縦断面図
【図5】パイル糸の例を示す縦断面図
【図6】タフティングマットの製造方法の例を示す側面図
【図7】従来のタフティングマットを示す縦断面図
【符号の説明】
1:タフティングマット
2:一次基布
3:パイル糸
4:パイル布
5:線条体
6:接合用ポリオレフィン層(接合用ポリオレフィンフィルム)
10:基層
11:接合層
12:凸部
13:凹部
15:加熱装置
16:熱風噴出し装置
Claims (12)
- ポリオレフィン製の一次基布にポリオレフィン製のパイル糸をタフティングしてパイル布を形成し、パイル糸を低融点の接合用ポリオレフィンによって一次基布に接合してなるタフティングマットにおいて、ポリオレフィンがいずれもメタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、及び/又は、ポリプロピレンからなることを特徴とするポリオレフィン製タフティングマット。
- 低融点のフィルム状の接合用ポリオレフィンが積層された一次基布にパイル糸をタフティングし、これを熱処理することによってパイル糸を接合してなる請求項1に記載のポリオレフィン製タフティングマット。
- 一次基布にパイル糸をタフティングしてパイル布を形成し、得られたパイル布の裏面に低融点の溶融フィルム状の接合用ポリオレフィンを積層し、必要に応じて熱処理することによってパイル糸を接合してなる請求項1に記載のポリオレフィン製タフティングマット。
- ポリオレフィンからなる基層の表面に低融点の接合用ポリオレフィンの表層が形成された複合線条体で形成された一次基布に、パイル糸をタフティングし、熱処理することによってパイル糸を接合してなる請求項1に記載のポリオレフィン製タフティングマット。
- タフティングマットが、人工芝生である請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン製タフティングマット。
- タフティングマットが、カーペットである請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン製タフティングマット。
- ポリオレフィン製の一次基布にポリオレフィン製のパイル糸をタフティングし、該パイル糸を低融点の接合用ポリオレフィンによって一次基布に接合するタフティングマットの製造方法において、ポリオレフィンとして、メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、及び/又は、ポリプロピレンを用いることを特徴とするポリオレフィン製タフティングマットの製造方法。
- 低融点の接合用ポリオレフィンを溶融フィルム状としてポリオレフィン製の一次基布に積層し、得られた積層シートにポリオレフィン製のパイル糸をタフティングし、これを熱処理することによって、パイル糸を接合する請求項7に記載のポリオレフィン製タフティングマットの製造方法。
- ポリオレフィン製の一次基布にポリオレフィン製のパイル糸をタフティングしてパイル布を形成すると共に、低融点の接合用ポリオレフィンのフィルムを輻射熱によって加熱溶融して、パイル布の裏面に積層することによって、パイル糸を接合する請求項7に記載のポリオレフィン製タフティングマットの製造方法。
- 低融点のフィルム状の接合用ポリオレフィンを輻射熱によって加熱溶融して、パイル布の裏面に空気圧を利用して接合することによって、接合用ポリオレフィンのフィルムをパイル糸による凹凸に沿わせて、パイル布の裏面の実質的全面に密着せしめることによって、パイル糸を接合する請求項7に記載のポリオレフィン製タフティングマットの製造方法。
- 一次基布として、接合用ポリオレフィン層を積層した一次基布を用いる請求項9又は10に記載のポリオレフィン製タフティングマットの製造方法。
- 接合用ポリオレフィンとして、輻射熱吸収性の微粉末が配合された接合用ポリオレフィンを使用する請求項9〜11のいずれかに記載のポリオレフィン製タフティングマットの製造方法。
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