JP3949030B2 - 高透明補強合成樹脂シート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高透明補強合成樹脂シート、さらに詳しくは、機械的強度、寸法安定性に優れ、かつ、透明性に優れた高透明補強合成樹脂シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンは、安価で透明性、耐候性に優れていることからフィルム状体として、工場、オフィス等の仕切、機器のカバー、機材保護カバー、トンネル栽培、農業用ハウス等の農業用被覆材、屋外工事現場用保護シート等広くの分野で使用されている。
【0003】
工場、オフィス等の仕切、機器のカバー、機材保護カバー等においては内部がくっきりと見えることが望ましく、また、農業用被覆材においても、太陽光を取り込むためには透明性に優れたものであることが要請される。
【0004】
また、熱可塑性合成樹脂は、引張り力が作用すると伸長し、寸法安定性に乏しく、また、引裂き強度が低いために局部的な傷がついて裂け目が生じると簡単にその裂け目が拡大して破断する問題がある。
【0005】
このため、合成樹脂フィルムの補強を目的として、合成樹脂フィルムの中間に糸状体を介在せしめた補強合成樹脂シートが開発されている。しかし、従来の補強合成樹脂シートは、糸状体間のフィルム部分においても透明性が不足し、また、糸状体を介在せしめることによって、さらに透明性が阻害され、透視性が悪化する問題がある。このため、強度に優れ、透明性に優れた合成樹脂製の補強シートの開発が要請されている。
【0006】
従来の補強合成樹脂シート1の製造は、図5に示すように、糸状体で形成された布状体11をラミネーターに供給し、該布状体11にTダイ12から押出された溶融状態の合成樹脂フィルム13を重ねると共に、ゴムロール15を布状体11側に当て、布状体11と合成樹脂フィルム13を金属ロール14とゴムロール15で挟圧して両者を積層した後、同様の方法によって布状体11の他の面に合成樹脂フィルム13を積層することによって、布状体11を芯材としてその両面に合成樹脂フィルム13、13を積層したサンドイッチ構造の補強合成樹脂シート1を得る方法が採られている。
【0007】
本発明者等が、このように製造された従来の補強合成樹脂シートの透明性について詳細に検討した結果、従来の補強合成樹脂シート1は、図6に示すように、フィルム13同士の界面に凹凸が発生して、界面に凹凸が残存した状態で接合されており、この凹凸によって透明性が阻害されていることが判明した。
【0008】
この凹凸は、最初に布状体11とフィルム13とを積層する工程で発生するものと考えられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、機械的強度、寸法精度に優れると共に透明性の高い合成樹脂製のシートを提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の知見に基づき、目的を達成するために鋭意検討をした結果なされたもので、具体的には、熱可塑性合成樹脂の一軸延伸糸によって形成され、一軸延伸糸間に間隙を有する状態に構成された布状体の両面に、ポリオレフィン層を、金属ロールと表面の最大高さ粗さRzが15μm以下の弾性ロールで挟圧して積層してなる複合シートにおいて、複合シートの光線透過率を90%以上としてなることを特徴とする高透明補強合成樹脂シート積層してなる複合シートにおいて、複合シートの光線透過率を90%以上としてなることを特徴とする高透明補強合成樹脂シート。
【0011】
また、本発明は、下記式で求められる空隙率が20〜70%の布状体を使用してなる上記の高透明補強合成樹脂シートを提供するものである。
【0012】
【数2】
【0013】
さらにまた、本発明は、一軸延伸糸がポリオレフィン系重合体からなる基層の片面又は両面に基層のポリオレフィン系重合体より融点の低いポリオレフィン系重合体からなる接合層が積層されてなる上記の高透明補強合成樹脂シート、一軸延伸糸の接合層がメタロセン系触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体である上記の高透明補強合成樹脂シート、及び、一軸延伸糸がプロピレン系重合体からなる基層の片面又は両面にメタロセン系触媒を用いて製造され、Q値が1.5〜3.5、MFRが0.3〜50g/10分、DSCで測定した融解ピーク温度Tpが110≦Tp≦150のプロピレン系重合体が積層されてなる上記の高透明補強合成樹脂シートを提供するものである。
【0014】
また、本発明は、布状体に積層されたポリオレフィン層の少なくとも一層がメタロセン系触媒を用いて製造されたエチレン系重合体又はプロピレン系重合体である上記の高透明補強合成樹脂シート、及び、布状体に積層されたポリオレフィン層の少なくとも一層がメタロセン系触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体からなる上記の高透明補強合成樹脂シートを提供するものである。
【0015】
さらに、本発明は、布状体が織布、又は、編成物である上記の高透明補強合成樹脂シート、布状体が延伸ヤーンを一方向に並列し、その上に交差する方向に延伸ヤーンを並列して交点を接合したものである上記の高透明補強合成樹脂シート、布状体が割繊維不織布からなる上記の高透明補強合成樹脂シートを提供するものである。
【0016】
また、本発明は、熱可塑性合成樹脂の一軸延伸糸からなり一軸延伸糸間に間隙を有する状態に形成された布状体と、溶融フィルム状のポリオレフィンとを重ね合わせ、金属ロールと表面の最大高さ粗さRzが15μm以下の弾性ロールで挟圧することによって積層することを特徴とする高透明補強合成樹脂シートの製造方法、及び、弾性ロールが表面をシリコンゴムでコーティングされてなる上記の高透明補強合成樹脂シートの製造方法を提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明高透明補強合成樹脂シート1は、図1(A)、(B)に示すように、熱可塑性樹脂の一軸延伸糸からなる一軸延伸糸2a、2bが交差されて得られた布状体3の両面に、ポリオレフィン層4、4が積層された複合シートによって構成される。
【0018】
本発明において布状体とは、一軸延伸糸を交差せしめて可撓性のシート状としたものを総称し、図1に示すように、一軸延伸糸2a、2bを経緯糸として平織り等の織布とするほか、図2に示すように、多数の一軸延伸糸2aを一方向に並列し、その上に交差する方向に多数の一軸延伸糸2bを並列するとともに、その交点をホットメルト剤等の接合剤を用いて、あるいは、熱融着によって接合したソフを使用することができる。また、トリコット編み等の編成体として使用することができ、さらに、図3に示すように、一軸延伸糸に縦方向に多数の切れ目を形成したスプリットヤーンを拡幅して網状としたもの、あるいは、こうして得られた網状体に交差するように一軸延伸糸を接合したものを用いることもできる。
【0019】
従って、本発明において一軸延伸糸あるいは一軸延伸糸とは、テープ状体、モノフィラメント状体、マルチフィラメント、スパン糸等の長尺体を含み、また、一軸延伸糸が縦横に交差されたとは、織布構造、編物構造、網目構造をも包含するものである。
【0020】
一軸延伸糸2としては、結晶性熱可塑性合成樹脂の単層体であってもよいが、基層となる熱可塑性合成樹脂の片面又は両面、あるいは外周に、接合層が形成された積層体とすることができる。
【0021】
例えば、図3(A)に示すように、結晶性の熱可塑性合成樹脂の単層体を用いることができ、また、図3(B)に示すように、接合層7が基層6の片面に積層された構造とすることができる。また、図3(C)に示すように、基層6の両面に接合層7が積層された構造とすることができ、また、図3(D)に示すように、シースコア構造、図3(E)に示すように、サイドバイサイド方式とすることもできる。中でも、図3(C)に示すように、テープ状基層6の両面に低融点の熱可塑性合成樹脂からなる接合層7を積層したものが望ましい。
【0022】
一軸延伸糸2の単層体、あるいは、基層6を構成する熱可塑性合成樹脂としては、延伸効果の大きい樹脂、一般には結晶性樹脂が使用され、具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、変性ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66のポリアミド等が用いられる。中でも加工性と経済性から高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体が望ましい。
【0023】
接合層7の低融点の熱可塑性合成樹脂は、布状体3とされた後、一軸延伸糸2間を接合し、あるいは、布状体3とポリオレフィン層4間を接合するもので、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、変性ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66のポリアミド等を用いることができ、基層6の熱可塑性合成樹脂との関係で基層6より融点が低い熱可塑性合成樹脂、好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上低融点の熱可塑性合成樹脂が選択される。
【0024】
中でも加工性と経済性からポリオレフィン系重合体が好ましく、エチレン系重合体、プロピレン系重合体が望ましく、特に高圧法低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いたエチレン・α−オレフィン共重合体、ポリプロピレンが望ましい。
【0025】
本発明においてエチレン系重合体、プロピレン系重合体とは、エチレン又はプロピレンの単独重合体の他、エチレン又はプロピレンと他のコモノマーとの共重合体を意味し、コモノマーとしては、一般に炭素数2〜20のα−オレフィンが使用され、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、オクテン−1等が使用される。
【0026】
基層6と接合層7の組み合わせの例を示せば、基層/接合層の形で表示すると、ポリプロピレン/高圧法低密度ポリエチレン、ポリエステル/ポリエチレン、高密度ポリエチレン/高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン/メタロセン系触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン/エチレン・プロピレンランダム重合体、メタロセン系触媒を用いて重合したプロピレン系重合体/メタロセン系触媒を用いて重合したエチレン系重合体、メタロセン系触媒を用いて重合したプロピレン系重合体/メタロセン系触媒を用いて重合したプロピレン系重合体の組み合わせを用いることができる。
【0027】
本発明の基層6あるいは接合層7として使用されるメタロセン系触媒を用いて重合したプロピレン系重合体としては、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比であるQ値を1.5〜3.5の範囲とすることが望ましい。ここでQ値とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)として定義され、分子量分布の尺度となるものである。Q値としては、好ましくは2.0〜3.3の範囲から選択される。
【0028】
また、JIS−K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定されたMFR(メルトフローレート)が、0.3〜50g/10分、好ましくは0.5〜40g/10分、さらに好ましくは1.0〜30g/10分のものを使用することが望ましい。MFRが上記範囲を超えると溶融張力が不足して押出成形性が不良となり、MFRが上記範囲未満では押出成形時に流動不良となって厚み変動が生じやすくなる。
【0029】
さらに、走査熱量計(DSC、Differential ScanningCalorimeter )による融解ピーク温度(Tp)が、110℃≦Tp≦150℃、好ましくは115℃≦Tp≦140℃の範囲のものが使用される。DSCによる融解ピーク温度が110℃未満ではフィルムのベタツキが発生して延伸、あるいは、巻き取り操作の操作性が悪化し、DSCによる融解ピーク温度Tpが150℃を超えると一軸延伸糸間の融着性が不良となり、また、コスト高となって経済性も低下する。
【0030】
これら基層6あるいは接合層7を形成する重合体には、発明の効果を損なわない程度で、適宜、各種の添加剤を配合することができる。具体的には、フェノール系、有機ホスファイト系、ホスナイトなどの有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;金属イオン系などの無機、有機抗菌剤等があげられる。
【0031】
これら重合体を延伸することによって布状体成形用材料としての一軸延伸糸2とすることができる。
【0032】
積層された一軸延伸糸2を生産するための積層フィルムを得る方法としては、自体公知の手段によって行なうことができ、基層6となるフィルム上に接合層7となるフィルムを重ねて熱ロールを用いて熱圧着する方法、あるいは両フィルムをホットメルト剤等の接着剤によって接着する方法、延伸前の、あるいは、延伸された基層6となる樹脂フィルム上に接合層7となる樹脂をフィルム状に押出して押出しラミネートする方法、基層6となる樹脂と接合層7となる樹脂を共押出しする方法によって行なうことができる。
【0033】
得られた積層フィルムは、テープ状に裁断する前、又はテープ状に裁断した後延伸操作に付される。延伸操作としては、例えば、熱風循環オーブン、熱ロール、熱板等を用いて、一段でもしくは二段以上の多段で、引取り方向へ2.5〜10.0倍程度に延伸し、更に熱風循環式オーブン、熱ロール、熱板等を用いて60〜160℃の温度下に、0〜30%の弛緩熱処理が施される。
【0034】
一軸延伸糸の冷却固化後の肉厚は、30〜500μm前後、テープ状体の裁断幅は1〜30mm程度が望ましく、これらの工程を経て得られる一軸延伸糸は、50〜10000デシテックス、糸幅が0.3〜20mm、肉厚が15〜100μm程度が望ましい。
【0035】
なお、一軸延伸糸の基層6と接合層7の厚み比は、接合層7が両面に積層されるときは、接合層:基層:接合層=5:90:5から25:50:25程度とされる。接合層7の厚みは、基層6である延伸テープの表裏で異なっていてもよく、時には基層6や表層7を各々複層構造としてもよい。
【0036】
こうして形成された一軸延伸糸は、単独で又は他のヤーンと共に布状体3とされる。一軸延伸糸2を布状体3とする方法としては、上記一軸延伸糸2を少なくとも緯糸2a又は経糸2bとして、図1(A)、(B)に示すように、織製し、必要に応じてその経緯交差部を熱接着して布状体3とすることができる。また、編製することによって布状体3とすることもできる。さらに、図2に示すように、一軸延伸糸2aを一方向に並列し、その上に直交する方向に一軸延伸糸2bを並列してその交点をを融着することによってソフとして、あるいは、図3に示すようにスプリット加工を施した幅広のウェブを拡幅し積層した割繊維不織布として布状体3とすることもできる。
【0037】
布状体3を形成する方法としては、サーキュラー織機、スルザー型織機、ウォータージェット型織機など公知の織機を用いて織製することができる。その織り組織としては、平織、綾織、からみ織など種々の形状が適用される。編布を形成する方法としては、横編み、縦編みいずれでもよく、具体的にはトリコット編、ミラニーズ編、ラッセル編等が挙げられる。布状体3は、仕様に応じて熱風、加熱ロールや熱板等により縦糸2aと横糸2bの交差部を熱接着することができる。
【0038】
こうして得られた布状体3にはポリオレフィン層4が積層され、本発明高透明補強合成樹脂シート1とされる。ポリオレフィン層4を形成するポリオレフィンとしては、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレンを主成分とする線状低密度ポリエチレン、あるいは、メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレンを主成分とするポリオレフィン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等、又は、これらの混合物を用いることができる。中でも、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体からなる線状低密度ポリエチレン、あるいは、メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン系重合体を主成分とするポリオレフィンが望ましい。
【0039】
線状低密度ポリエチレンとしては、次の特性を持つエチレン・炭素数3〜18のα−オレフィン共重合体が望ましい。
【0040】
MFRは、JIS−K7210によるMFRが0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜80g/10分の物性を示すものが用いられる。MFRが上記範囲より大きいときは、溶融弾性が低くなって押出しラミネート加工時のネックインがおおきくなって耳高で加工性が悪くなり、また、材料自体の強度も低下する。一方、MFRが上記範囲より低いときは、樹脂の押出し圧力が高くなって、押出し安定性が低下し、また、押出しラミネート加工時の延展性が悪くなる。
【0041】
密度は、JIS−K7112による密度が、0.870〜0.915g/cm3、好ましくは0.870〜0.910g/cm3の範囲である。密度が上記範囲より大きいと、柔軟性が劣る。また、上記範囲より小さいときは、耐熱性が低下したり、シート表面にべたつきが生じ、加工性や取扱い性が悪くなる。
【0042】
これらポリオレフィンには、発明の効果を損なわない程度で、適宜、各種の添加剤を配合することができる。具体的には、フェノール系、有機ホスファイト系、ホスナイトなどの有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;金属イオン系などの無機、有機抗菌剤等があげられる。
【0043】
ポリオレフィン層4の肉厚は、目的に応じて任意に設定することができるが、一般には、10〜300μm、好ましくは15〜200μmとされる。
【0044】
ポリオレフィン層4を積層する方法としては、基本的には、自体公知の手段によって行なうことができ、図5に示すように、一軸延伸糸で形成された布状体3をラミネーターに供給し、該布状体3とTダイ12から押出された溶融状態のポリオレフィンフィルム4とを重ねると共に、弾性ロール15を布状体3側に当て、弾性ロール15と金属ロール14とで挟圧して布状体3と溶融ポリオレフィンフィルム4を積層した後、同様の方法によって他の面に溶融ポリオレフィンフィルム4を積層することによって、図1に示すように、布状体3を芯材としてその両面にポリオレフィンフィルム4、4を積層したサンドイッチ構造の補強フィルム1を得る方法を採用することができる。
【0045】
なお、図1は、作図上内部に空気層を有する形式で記載されているが、空気層をなくしてポリオレフィン層4、4を密着させることもできる。
【0046】
しかして、本発明においては、布状体3と溶融ポリオレフィンフィルム4を押圧する弾性ロール15として、表面の平滑なロールが用いられ、弾性ロール15の周面最大高さ粗さRzが15μm以下、好ましくは10μm以下の平滑な弾性ロール15が使用される。このような周面が平滑な弾性ロールは、ゴムロールの表面をシリコンゴムでコーティングすることによって得ることができる。
【0047】
なお、布状体3と積層されるポリオレフィン層4は、それぞれの層を複層とすることができ、たとえば、内部ポリオレフィン層4を接着性に優れたポリオレフィンを用いて形成し、外面のポリオレフィン層4を引掻きに対して強いポリオレフィンを使用した複合シートとすることができる。
【0048】
本発明において使用されるメタロセン系触媒は、メタロセン系遷移金属化合物を主成分とする重合触媒を意味し、成分(a)メタロセン系遷移金属化合物としては、下記一般式(1)又は(2)で示されるものを例示することができる。
【0049】
Q(C5H4−aR1 a)(C5H4−bR2 b)MeXY ・・(1)
(C5H5−aR1 a)(C5H5−bR2 b)MeXY ・・(2)
【0050】
[ここでQは二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基であり、Meはジルコニウム、ハフニウムを表わし、X及びYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20の燐含有炭化水素基又は炭素数1〜20の珪素含有炭化水素基を表わす。R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、アルコキシ基、珪素含有炭化水素基、燐含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、硼素含有炭化水素基を表わし、隣接する2個のR1及びR2は、2個のR1、R2がそれぞれ結合して環を形成してもよい。a及びbは0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。ただし、R1及びR2を有する2個の五員環配位子は基Qを介して相対位置の観点において、Meを含む平面に関して非対象のものである。]
【0051】
上記一般式(I)のQは、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基であり、具体的には、(イ)炭素数1〜20、好ましくは1〜6の2価の炭化水素基、更に詳しくは、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基等の不飽和炭化水素基、(ロ)炭素数1〜20、好ましくは1〜12の炭化水素基を有するシリレン基、(ハ)炭素数1〜20、好ましくは1〜12の炭化水素基を有するゲルミレン基である。なお、2価のQ基の両結合手間の距離は、その炭素数の如何に関わらず、Qが鎖状の場合には4原子程度以下、就中3原子以下であることが好ましい。Qが環状基を有するものである場合には当該環状基+2原子程度以下、就中当該環状基のみであることが好ましい。
【0052】
かかるメタロセン系遷移金属化合物は、メタロセン系遷移金属化合物を活性化する助触媒と組合されて触媒として用いられる。そのような成分(b)助触媒としては、次の成分(b−1)〜成分(b−4)から選択して用いることができる。
【0053】
成分(b−1):アルミニウムオキシ化合物、
成分(b−2):ルイス酸、
成分(b−3):成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物、
成分(b−4):イオン交換性層状珪酸塩
【0054】
アルミニウムオキシ化合物(成分(b−1))は、アルモキサンとも呼ばれる化合物であって、一種類のトリアルキルアルミニウム、または二種類以上のトリアルキルアルミニウムと水との反応により得られる生成物を使用することができる。具体的には、
(イ)一種類のトリアルキルアルミニウムと水から得られるメチルアルモキサン、エチルアルモキサン、プロピルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、
(ロ)二種類のトリアルキルアルミニウムと水から得られるメチルエチルアルモキサン、メチルブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン等が例示される。これらの中で、特に好ましいのはメチルアルモキサンおよびメチルイソブチルアルモキサンである。
【0055】
また、成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物(成分(b−3))としては、一般式(2)で表されるものが好ましい。
【0056】
[K]e+[Z]e- (2)
【0057】
ここで、Kはイオン性のカチオン成分であって、例えばカルボニウムカチオン、トロピリウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスフォニウムカチオン等が挙げられる。また、それ自身が還元されやすい金属の陽イオンや有機金属の陽イオン等も挙げられる。
【0058】
上記の一般式(2)におけるZはイオン性のアニオン成分であり、成分(a)が変換されたカチオン種に対して対アニオンとなる成分であって、例えば、有機ホウ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオン、有機ガリウム化合物アニオン、有機リン化合物アニオン、有機ひ素化合物アニオン、有機アンチモン化合物アニオンなどが挙げられる。
【0059】
本発明において、成分(b−4)として用いられるイオン交換性層状珪酸塩からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物であり、含有するイオンが交換可能なものをいう。大部分のイオン交換性層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、イオン交換性層状珪酸塩は特に、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
【0060】
イオン交換性層状珪酸塩としては、例えば、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族等を挙げることができる。
【0061】
メタロセン系触媒においては必要に応じて成分(c)有機アルミニウム化合物が使用され、有機アルミニウム化合物としては、一般式(3)で示されるものが好ましい。
【0062】
(AlR4 nX3−n)m (3)
【0063】
[R4は炭素数1〜20、好ましくは1〜8のアルキル基を示し、Xはハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。nは1〜3までの整数、好ましくは3であり、mは1又は2、好ましくは1である。]で示される化合物であり、これら有機アルミニウム化合物は単独或いは複数種にて使用することができる。具体的な有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等を挙げることができる。これらの中でも、トリアルキルアルミニウム及びジアルキルアルミニウムヒドリド等が好ましい。特に炭素数1〜8のトリアルキルアルミニウムを用いることが好ましい。
【0064】
こうして得られた本発明高透明補強合成樹脂シートには、各種の加工を行なうことができ、シートの端部を折り返し、熱よる融着、接着剤による接着、あるいは、縫成する等によって端部のほつれを防止することができる。また、縁部にハトメを打ったり、縫成、融着等によっては幅継ぎを行なうこともできる。
【0065】
また、肥料袋等の包装袋、工場、オフィス等の仕切、機器のカバー、機材保護カバー、トンネル栽培、農業用ハウス等の農業用被覆材、屋外工事現場用保護シート、簡易ハウス、ショッピングバッグ、書類用バッグ、肥料袋等の包装袋等広範囲の分野に使用することができる。
【0066】
【発明の効果】
本発明は、かかる構成からなるから、機械的強度、寸法精度に優れると共に透明性の高い熱可塑性合成樹脂製シートが得られる。
【0067】
【実施例】
(物性評価)
透明性(全光線透過率、HAZE)
装置:直続ヘイズメーター、(株)東洋精機製作所
【0068】
(実施例1)
一軸延伸糸の基層として、低圧法高密度ポリエチレン(日本ポリケム社製HY433、融点132℃)を使用し、接合層として高圧法低密度ポリエチレン(日本ポリケム社製X−419、融点116℃)を使用して、インフレーション成形法で接合層/基層/接合層のサンドイッチ構造の三層構造積層フィルムを形成した。得られたフィルムをレザーを用いてスリットした後、熱風炉で7倍に延伸し、次いで6%の弛緩処理を行った。得られた一軸延伸積層糸は、繊度が670デシテックス、糸幅が0.85mm、厚み比が接合層/基層/接合層=10/80/10であった。
【0069】
こうして得られた一軸延伸積層糸をスルーザー織機を用いてタテ5本/25.4mm、ヨコ5本/25.4mmの平織に織成することによって布状体を得た。
【0070】
上記の布状体に、図5に示す装置を用いて、溶融押出し法により、線状低密度ポリエチレン(日本ポリケム社製KC570S、密度0.906、MFR10)を積層した。厚み比は、60μm/60μmであった。なお、押圧ロールとして、シリコンコーティングしたゴムロールを用いた(最大高さ粗さRz=2.2μm)。次いで同様の方法で他の布状体面に前記と同様の線状低密度ポリエチレンを積層して補強合成樹脂シートを得た。
【0071】
得られた補強合成樹脂シートの透明性と強度を測定した。その結果は表1の通りであった。
【0072】
(比較例1)
押圧ロールとして、最大高さ粗さRz=16.5μmのシリコンコーティングしたゴムロールを用いた外は、実施例1と同様の方法で補強合成樹脂シートを得た。その結果は表1の通りであった。
【0073】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明高透明補強合成樹脂シートの例を示す(A)は平面図、(B)は縦断面図
【図2】本発明高透明補強合成樹脂シートの他の例を示す縦断面図
【図3】延伸ヤーンの例を示す縦断面図
【図4】布状体の他の例を示す平面図
【図5】補強合成樹脂シートを製造する方法を示す側面図
【図6】従来の補強合成樹脂シートを示す縦断面図
【符号の説明】
1:高透明補強合成樹脂シート
2:一軸延伸糸
3:布状体
4:ポリオレフィン層
6:基層
7:接合層
Claims (12)
- 熱可塑性合成樹脂の一軸延伸糸によって形成され、一軸延伸糸間に間隙を有する状態に構成された布状体の両面に、ポリオレフィン層を、金属ロールと表面の最大高さ粗さRzが15μm以下の弾性ロールで挟圧して積層してなる複合シートにおいて、複合シートの光線透過率を90%以上としてなることを特徴とする高透明補強合成樹脂シート。
- 一軸延伸糸が、ポリオレフィン系重合体からなる基層の片面又は両面に基層のポリオレフィン系重合体より融点の低いポリオレフィン系重合体からなる接合層が積層されてなる請求項1又は2に記載の高透明補強合成樹脂シート。
- 一軸延伸糸の接合層が、メタロセン系触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体である請求項3に記載の高透明補強合成樹脂シート。
- 一軸延伸糸が、プロピレン系重合体からなる基層の片面又は両面にメタロセン系触媒を用いて製造され、Q値が1.5〜3.5、MFRが0.3〜50g/10分、DSCで測定した融解ピーク温度Tpが110≦Tp≦150のプロピレン系重合体が積層されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の高透明補強合成樹脂シート。
- 布状体に積層されたポリオレフィン層の少なくとも一層が、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン系重合体又はプロピレン系重合体である請求項1〜5のいずれかに記載の高透明補強合成樹脂シート。
- 布状体に積層されたポリオレフィン層の少なくとも一層が、メタロセン系触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体からなる請求項1〜6のいずれかに記載の高透明補強合成樹脂シート。
- 布状体が、織布、又は、編成物である請求項1〜7のいずれかに記載の高透明補強合成樹脂シート。
- 布状体が、延伸ヤーンを一方向に並列し、その上に交差する方向に延伸ヤーンを並列して交点を接合したものである請求項1〜7のいずれかに記載の高透明補強合成樹脂シート。
- 布状体が、割繊維不織布からなる請求項1〜7のいずれかに記載の高透明補強合成樹脂シート。
- 熱可塑性合成樹脂の一軸延伸糸からなり、一軸延伸糸間に間隙を有する状態に形成された布状体と、溶融フィルム状のポリオレフィンとを重ね合わせ、金属ロールと表面の最大高さ粗さRzが15μm以下の弾性ロールで挟圧することによって積層することを特徴とする高透明補強合成樹脂シートの製造方法。
- 弾性ロールが、表面をシリコンゴムでコーティングされてなる請求項11に記載の高透明補強合成樹脂シートの製造方法。
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