JP2004275097A - 飲食品の塩味増強方法及びそれに用いられる調味料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塩分を含有する飲食品に、GABAと、有機酸及び/又はその塩とを添加する、あるいは飲食品に、GABAと、有機酸及び/又はその塩とを含有する調味料を添加する。前記飲食品中に、γ−アミノ酪酸が0.00005〜1質量%、有機酸及び/又はその塩が0.0005〜1質量%となるように添加することが好ましい。また、前記調味料として、昆布エキスと、GABAと、有機酸及び/又はその塩とを含有する調味料を用いることが好ましく、昆布エキスを含む原料を乳酸菌で発酵させることによって得られる発酵物から調製された調味料を用いることがより好ましい。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲食品の風味を損なうことなく、その塩味を増強し、結果的に塩分添加量を減少できる、飲食品の塩味増強方法及びそれに用いられる調味料に関する。
【0002】
【従来の技術】
「塩味」は、人間の舌でとらえられる味の基本である四原味(甘味、塩味、酸味、苦味)の一つである。
【0003】
例えば、食塩(塩化ナトリウム)は、飲食品の調味(塩味の付与)だけでなく、飲食品の保存性の向上や物性改善等のために一般に用いられているが、食塩の過剰摂取は、高血圧等の様々な疾患の原因になると考えられており、特に高齢化社会を迎えた現代においては、食塩の摂取量を減らすことが望まれている。
【0004】
しかしながら、飲食品の調味や加工において、食塩の使用量を減らした場合、その飲食品の美味しさが損なわれる場合が多い。
【0005】
従来より、飲食品の美味しさを損なうことなく食塩の使用量を減らすために、食塩に近い呈味を有し、生理機能の点で食塩のような問題のない塩化カリウム等の食塩代替物質や、食塩と共存させることにより、その塩味を増強する性質を有する物質、いわゆる塩味増強物質を使用する方法等が知られている。
【0006】
例えば、塩味増強剤あるいは塩味増強方法として、下記特許文献1には、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸及びコハク酸又はその塩を食塩含有飲食品に添加することを特徴とする飲食品の食塩味増強方法、及び酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸及びコハク酸又はその塩を含有する食塩味増強剤が開示されている。
【0007】
下記特許文献2には、食品又は飲料に食塩味増強量のタン白加水分解タン白源を添加することを特徴とする、通常量より少ない食塩量を含有する食品又は飲料の塩味の増強方法が開示されている。
【0008】
下記特許文献3には、通常量より少ない食塩及び食塩味強化量のカプセル化アンモニウム塩を食品又は飲料に含ませることを特徴とする、食塩味を強化した組成物が開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−345430号公報
【特許文献2】
特開平7−289198号公報
【特許文献3】
特開平6−237732号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の食塩代替物質や塩味増強剤を使用した減塩方法は、特に得られる飲食品の風味の点で十分に満足できるものではなかった。例えば、塩化カリウムや塩化アンモニウムは独特の苦味を有しており、タンパク加水分解物も苦味を有するペプチドを含んでいるため、飲食品に塩味だけでなく、好ましくない風味までも付与してしまうという問題があった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、飲食品の風味を良好に維持しつつ、その塩味を効果的に増強させ、結果的に塩分添加量を減少できる飲食品の塩味増強方法及びそれに用いられる調味料を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、γ−アミノ酪酸と有機酸とを併用することにより、飲食品の塩味を効果的に増強することができ、飲食品への塩分添加量を減少できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の一つは、塩分を含有する飲食品に、γ−アミノ酪酸と、有機酸及び/又はその塩とを添加することを特徴とする飲食品の塩味増強方法を提供するものである。
【0014】
上記塩味増強方法によれば、飲食品の風味を良好に維持しつつ、該飲食品の塩味を効果的に増強することができるので、飲食品への塩分添加量を減らすことができる。
【0015】
また、本発明のもう一つは、飲食品に、γ−アミノ酪酸と、有機酸及び/又はその塩とを含有する調味料を添加することを特徴とする飲食品の塩味増強方法を提供するものである。
【0016】
上記塩味増強方法によれば、飲食品の風味を良好に維持しつつ、該飲食品の調味と塩味増強を同時に行うことができる。
【0017】
上記塩味増強方法においては、前記飲食品中に、γ−アミノ酪酸が0.00005〜1質量%、有機酸及び/又はその塩が0.0005〜1質量%となるように添加することが好ましい。この態様によれば、飲食品の風味を良好に維持しつつ、塩味増強効果を更に高めることができる。
【0018】
また、昆布エキスと、γ−アミノ酪酸と、有機酸及び/又はその塩とを含有する調味料を用いることが好ましい。この態様によれば、飲食品の塩味を増強して塩分添加量を減少することができるだけでなく、風味のバランスも向上することができる。
【0019】
更に、前記調味料が、昆布エキスを含む原料を乳酸菌で発酵させることによって得られる発酵物から調製されたものであることが好ましい。この態様によれば、γ−アミノ酪酸、有機酸、昆布エキスに由来する成分等を含む発酵物を得ることができ、天然物のみを利用した添加剤未使用タイプの調味料として塩味増強効果を有する調味料を工業的に安価に製造することができる。また、この発酵物には、γ−アミノ酪酸や有機酸だけでなく、様々な発酵産物も含まれており、これらの成分による相乗効果により、更に効果的に飲食品の塩味を増強することができる。また、発酵により、昆布の風味が程よく改善されるので、飲食品の風味のバランスも更に向上することができる。
【0020】
また、本発明のもう一つは、γ−アミノ酪酸と、有機酸及び/又はその塩とを含有することを特徴とする調味料を提供するものである。
【0021】
本発明の調味料は、γ−アミノ酪酸と、有機酸及び/又はその塩とを含有しているので、飲食品に添加することにより、該飲食品の風味を良好に維持しつつ、該飲食品の調味と塩味増強を行うことができる。
【0022】
上記調味料においては、昆布エキスと、γ−アミノ酪酸と、有機酸及び/又はその塩とを含有することが好ましい。
【0023】
また、昆布エキスを含む原料を乳酸菌で発酵させることによって得られる発酵物から調製されたものであることが好ましい。
【0024】
これらの態様によれば、飲食品の塩味を増強するだけでなく、風味のバランスも向上することができる調味料を提供できる。
【0025】
【発明の実施の形態】
γ−アミノ酪酸(以下、GABAと略記する)は、動植物等に広く存在している非タンパク質構成アミノ酸であり、生体内では、グルタミン酸の脱炭酸によって生成され、中枢神経系において抑制性伝達物質として重要な役割を果たしているほか、血圧降下作用等を有していることが知られている。
【0026】
本発明で用いられるGABAは、飲食品に使用可能なものであれば特に制限なく用いることができる。GABAは、例えば、発芽玄米や、茶の生葉を嫌気的に処理してGABA含量を増加させた「ギャバロン茶」、紅麹、酵母エキス等に比較的多く含まれていることが知られており、これらの原料から調製されたものを用いることができる。
【0027】
また、グルタミン酸を含有する原料を、グルタミン酸脱炭酸酵素や、グルタミン酸脱炭酸酵素活性を有する微生物(例えば、乳酸菌等)等を用いて発酵させて得られる発酵物から調製されたGABAを用いることもできる。なお、上記のような原料から抽出・精製されたGABAは市販されており、例えば、商品名「純GABA」(山口化研株式会社製)、商品名「GABA発酵大豆」(池田糖化株式会社製)、商品名「スーパーギャバ」(フジッコ株式会社製)等を用いることもできる。
【0028】
本発明で用いられる有機酸としては、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸等が例示でき、これらの有機酸の混合物を用いることもできる。また、有機酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が例示できる。本発明においては、醸造酢が好ましく用いられる。
【0029】
以下、本発明の塩味増強方法について詳細に説明する。
本発明の塩味増強方法の一つは、塩分を含有する飲食品に、GABAと、有機酸及び/又はその塩とを添加する方法である。この方法によれば、飲食品に含まれる塩分の塩味を増強することができるので、調味のために使用する塩分の量を減らすことができる。
【0030】
この方法においては、塩分を含有する飲食品に、GABAと、有機酸及び/又はその塩とを、それぞれ別々に添加してもよく、同時に添加してもよい。これらの成分の添加時期は、特に制限されず、他の原料と共に最初から添加してもよく、製造工程中の適当な段階で添加してもよい。
【0031】
また、本発明の塩味増強方法のもう一つは、飲食品に、GABAと、有機酸及び/又はその塩とを含有する調味料を添加する方法である。この方法によれば、飲食品の調味と塩味増強を同時に行うことができる。
【0032】
上記調味料としては、昆布エキスと、GABAと、有機酸及び/又はその塩とを含有する調味料を用いることがより好ましく、昆布エキスを含む原料を乳酸菌で発酵させることによって得られる発酵物から調製された調味料を用いることが特に好ましい。
【0033】
上記調味料は、GABA1質量部に対して、有機酸及び/又はその塩を0.0005〜2,000質量部、更には昆布エキスを0.1〜2000,000質量部の比率で含むことが好ましく、有機酸及び/又はその塩を0.05〜20質量部、更には昆布エキスを10〜1,000質量部の比率で含むことがより好ましい。GABAに対する、有機酸及び/又はその塩や昆布エキスの含有比率が上記範囲外であると、有機酸の有する好ましくない風味や昆布の風味が強くでてしまい、少なすぎると十分な塩味増強効果が得られない。
【0034】
なお、昆布エキスとは、昆布原藻、もしくはその乾燥物を、切断し、砂等の異物を取り除いた後、熱水抽出して得られる抽出液、該抽出液の濃縮液、あるいは該抽出液を粉末化したものを意味するが、更に調味料等の添加物を含有していてもよい。昆布エキスは一般に市販されており、例えば、商品名「天然だし昆布」(ヤマキ株式会社製)、商品名「昆布エキスNo.500」(焼津水産化学工業株式会社製)等を用いることができる。
【0035】
また、昆布エキスを含む原料を乳酸菌で発酵させることによって得られる発酵物とは、昆布エキスのみ、もしくは必要に応じて糖質、タンパク質及びその分解物、酵母エキス、有機酸等を含む原料を、グルタミン酸脱炭酸酵素活性を有する乳酸菌で発酵させることによって得られるものである。
【0036】
上記乳酸菌としては、例えば、ヨーグルト等の発酵乳製品中に含まれる乳酸菌(特開平10−295394号公報参照)、醸造食品に通常見られるラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus Plantarum)(特許2704493号公報参照)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobatillus brevis、IFO3345、IFO3960、IFO12005、IFO12520等)(特開2000−210075号公報参照)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトコッカス・ラクチス(Lacto coccus lactis)、ラクトコッカス・ラクチスサブスピーシーズ.クレモリス(Lactococcus lactis ss. cremoris、ATCC19257)(特許3172150号公報参照)等を用いることができるが、中でも耐塩性の高い乳酸菌を用いることが好ましく、特にラクトバチルス・ヒルガルディー(Lactobacillus hilgardii)K−3(FERM P−18422)を用いることが好ましい。
【0037】
上記発酵物は、例えば、以下のようにして調製することができる。すなわち、昆布エキスを、好ましくはブリックス0.5〜25%、塩分濃度5質量%以下となるように水で希釈し、有機酸(好ましくは醸造酢)を添加してpH5.0〜6.0に調整する。この原料液に、乳酸菌の前培養液を適量(通常、原料液1,000kgに対して、乳酸菌の前培養液を0.1〜50kg)加えて、適宜撹拌しながら、25〜35℃で48〜180時間発酵を行う。発酵終了後、発酵液を加熱殺菌して菌体等の不溶物を濾過して除去し、好ましくはブリックス5〜30%となるように濃縮すればよい。
【0038】
昆布エキスを含む原料を上記乳酸菌で発酵させることにより、該原料中のグルタミン酸がGABAに変換されると共に、乳酸等の有機酸をはじめとする様々な発酵産物が生成され、これらの成分により、非常に優れた塩味増強効果を有する発酵物を得ることができる。また、昆布の風味も改善され、飲食品に添加した際に風味のバランスを更に向上することができる。
【0039】
上記のようにして得られる発酵物は、通常、固形分中に、GABAを0.02〜20質量%、有機酸及び/又はその塩を0.02〜20質量%含んでおり、これをそのままの調味料として用いることができる。本発明においては、固形分中に、GABAを0.1〜5質量%、有機酸及び/又はその塩を0.2〜10質量%含むものを用いることことが好ましい。
【0040】
したがって、上記調味料は、それ自体の塩味が、GABAと、有機酸及び/又はその塩とによって増強されているので、他の調味料に比べて少ない使用量で飲食品に十分な塩味を付与することができ、また、飲食品に含まれる塩分の塩味も増強することができる。更に、飲食品の風味のバランスを向上することもできる。
【0041】
なお、上記調味料は、他の成分として、塩、糖質、タンパク質、タンパク分解物、アミノ酸、核酸、香料、着色料、酸化防止剤、乳化剤、増粘剤等を適宜含むことができる。
【0042】
本発明の塩味増強方法においては、飲食品中に、GABAが0.00005〜1質量%、有機酸及び/又はその塩が0.0005〜1質量%となるように添加することが好ましく、GABAが0.0002〜0.004質量%、有機酸及び/又はその塩が0.001〜0.05質量%となるように添加することがより好ましい。GABAや、有機酸及び/又はその塩の添加量が多すぎると、飲食品にGABAや有機酸の有する好ましくない風味が付与されてしまい、少なすぎると十分な塩味増強効果が得られない。
【0043】
本発明の塩味増強方法及び調味料は、飲食品の風味を良好に維持しつつ、塩味を効果的に増強することができるので、結果的に飲食品への塩分添加量を減少させることができ、例えば、めんつゆ、ラーメンスープ、つけもの、ドレッシング、ソース、飲料等の様々な飲食品に適用することができ、これらの飲食品における食塩の使用量を0.5〜10%程度減らすことができる。
【0044】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0045】
参考例
天然物由来のGABA(純度98%以上、山口化研株式会社製)と各種有機酸を、表1に示す割合で混合して官能試験を行った。その結果を併せて表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から分かるように、GABAを添加することにより、各有機酸の酸味が改善されている。
【0048】
実施例1
参考例の結果に基づいて、以下のサンプル▲1▼〜▲6▼を調製して、20名のパネラーにより、順位法(「おいしさを測る−食品官能検査の実際−」(古川秀子、株式会社幸書房(2001)参照)により、塩味に関する官能試験を行った。なお、評価は、塩味を強く感じる方から順に、1位:1点、2位:2点、3位:3点、4位:4点、5位:5点、6位:6点をつけてもらい、その合計点で判断した。その結果を表2に示す。
【0049】
▲1▼ 0.7%(w/v)食塩水に、GABAを0.006%(w/v)及び醸造酢を0.04%(w/v)添加したサンプル(サンプル▲1▼)。
【0050】
▲2▼ 0.7%(w/v)食塩水に、GABAを0.006%(w/v)、醸造酢を0.04%(v/v)及び常法により得られた昆布エキスを2%(v/v)添加したサンプル(サンプル▲2▼)。
【0051】
▲3▼ 0.7%(w/v)食塩水に、GABAのみ添加(0.006%(w/v))したサンプル(サンプル▲3▼)。
【0052】
▲4▼ 0.7%(w/v)食塩水に、醸造酢のみ添加(0.04%(w/v))したサンプル(サンプル▲4▼)。
【0053】
▲5▼ 0.7%(w/v)食塩水に、昆布エキスのみ添加(2%(w/v))したサンプル(サンプル▲5▼)。
【0054】
▲6▼ 0.7%(w/v)食塩水(サンプル▲6▼)
【0055】
【表2】
【0056】
表2から分かるように、GABAのみ(サンプル▲3▼)、あるいは醸造酢のみ(サンプル▲4▼)でも、多少の塩味増強効果は認められたが、GABAと醸造酢を併用したサンプル(サンプル▲1▼)や、GABAと醸造酢と昆布エキスを併用したサンプル(サンプル▲2▼)では、大幅に塩味が増強されている。一方、昆布エキスのみ(サンプル▲5▼)では逆に塩味が減少していることが分かる。本試験では、ケンダールのW検定により、1%の危険率でパネラーの判断に一致性が見られた。
【0057】
実施例2
常法で得られた昆布エキスを水で希釈してブリックスを9%、塩分濃度5質量%以下に調整すると共に、醸造酢を加えてpH5.2〜5.6に調整した。この昆布エキス希釈液100kgに対して乳酸菌(ラクトバチルス・ヒルガルディー(Lactobacillus hilgardii)K−3(FERM P−18422))の前培養液を2kg添加し、適宜撹拌を行いながら、30℃で5日間発酵を行った。発酵終了後、加熱殺菌を行い、濾過して菌体等の不溶物を除去し、濃縮した後、更に濾過して濾液を回収し、殺菌を行った。得られた発酵物(以下、昆布エキス発酵液という)の成分分析の結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
得られた昆布エキス発酵液を希釈して塩分濃度0.9%(w/v)に調整し、同じ塩分濃度に調整した昆布エキスを対照として、13名のパネラーにより、どちらのサンプルの方が塩味を強く感じるが官能試験を行った。その結果を表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
表4から分かるように、同じ塩分濃度であるのにも関わらず、昆布エキス発酵液の方が原料の昆布エキスよりも塩味が強いと判断した人の割合が多かった(有意差有り、2点比較法(両側検定)p<0.05)。
【0062】
次に、希釈して塩分濃度0.9%(w/v)に調整した昆布エキス発酵液が、どの程度の塩分濃度の食塩水と同じ塩味を有するかを検討した。具体的には、13名のパネラーにより、希釈した昆布エキス発酵液と、塩分濃度0.83〜1.01%(w/v)に調整した食塩水とを比較して、希釈した昆布エキス発酵液と同じ程度の塩味を感じた食塩水を選んでもらった。その結果を表5に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
表5から分かるように、希釈した昆布エキス発酵液が実際の塩分濃度よりも高いと判断した人(食塩濃度0.90〜0.94%以上と判断した人)は、13名中10名(76.9%)であり、有意(p<0.05)に塩味増強効果が認められた。
【0065】
実施例3
市販の浅漬けの素(塩分8.6%(w/w))に、昆布エキス発酵液を10.2%(w/v)添加して、これに適当な大きさにカットしたきゅうり及び大根を浸漬して浅漬けを作った(試験品)。対照として、市販の浅漬けの素に、塩分濃度が試験品と同じになるように食塩を添加したものを用いて同様にして浅漬けを作った(対照品)。得られた各浅漬けを16名のパネラーに試食してもらい、どちらの方が塩味を強く感じるかどうか判断してもらったところ、16名中15名(93.8%)が試験品の方が対照品に比べて塩味が強く感じられると判断した(有意差あり、p<0.001)。また、試験品の方は、味が濃く、シャープで、漬物らしさがあるとの評価であった。一方、対照品は、味が薄く、苦味や甘味があり、後味が青っぽいとの評価であった。
【0066】
実施例4
表6に示す配合のドレッシング3種類(A、B、C)を調製した。各ドレッシングをキャベツの千切りにかけて、5名のパネラーに試食してもらい、プロファイル法(「新エスカ21・食品学総論」、安本教傅他、同文書院(1987)参照)を用いた食味の評価を行った。また、20名のパネラーにより、評点法(「おいしさを測る−食品官能検査の実際−」(古川秀子、株式会社幸書房(2001)参照)を用いた塩味の評価を行った。なお、評点法の採点基準は、塩味が強さ(弱い方から強い方)に応じて、−2点、−1点、0点、1点、2点の5段階で評価し、その合計点を求めた。これらの結果を併せて表6に示す。
【0067】
【表6】
【0068】
表6のプロファイル法による評価結果から、昆布エキス発酵液を添加することにより、塩味が増強され、同時に呈味の改善効果も得られることが分かる。また、評点法による評価結果から、AとB、及びAとCとの間には有意差(p<0.01)があったが、BとCの間には有意差が見られなかった。このことから、BとCはほぼ同程度の塩味強度である判断でき、塩分を比較するとCではBよりも10%の減塩を達成できたことになる。
【0069】
実施例5
市販の冷やし中華のタレ(塩分5.6%(w/w))(対照品)、及び該タレに昆布エキス発酵液を2%(w/v)添加したもの(試験品)を、それぞれ麺にかけて、16名のパネラーに試食してもらい、どちらの方が塩味を強く感じるかどうか判断してもらったところ、16名中14名(87.5%)が試験品の方が対照品に比べて塩味が強く感じられると判断した(有意差あり、p<0.01)。また、試験品の方は、味が濃く、スッキリとまとまった味であるとの評価であった。一方、対照品は、味が薄く、酸味が突出した味であるとの評価であった。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、塩分を含有する飲食品に、GABAと、有機酸及び/又はその塩とを添加する、あるいは飲食品に、GABAと、有機酸及び/又はその塩とを含有する調味料を添加することにより、飲食品の風味を良好に維持しつつ、該飲食品の塩味を効果的に増強することができるので、飲食品における塩分添加量を減らすことができる。更に、GABAは、脳代謝促進作用や血圧降下作用等の様々な生理活性作用を有しており、それらの生理作用も期待することができる。
【0071】
また、本発明の調味料は、GABAと、有機酸及び/又はその塩とを含有しているので、飲食品に添加することにより、該飲食品の風味を良好に維持しつつ、調味と塩味増強を行うことができる。
Claims (8)
- 塩分を含有する飲食品に、γ−アミノ酪酸と、有機酸及び/又はその塩とを添加することを特徴とする飲食品の塩味増強方法。
- 飲食品に、γ−アミノ酪酸と、有機酸及び/又はその塩とを含有する調味料を添加することを特徴とする飲食品の塩味増強方法。
- 前記飲食品中に、γ−アミノ酪酸が0.00005〜1質量%、有機酸及び/又はその塩が0.0005〜1質量%となるように添加する、請求項1又は2記載の飲食品の塩味増強方法。
- 昆布エキスと、γ−アミノ酪酸と、有機酸及び/又はその塩とを含有する調味料を用いる、請求項2記載の飲食品の塩味増強方法。
- 前記調味料が、昆布エキスを含む原料を乳酸菌で発酵させることによって得られる発酵物から調製されたものである、請求項4記載の飲食品の塩味増強方法。
- γ−アミノ酪酸と、有機酸及び/又はその塩とを含有することを特徴とする調味料。
- 昆布エキスと、γ−アミノ酪酸と、有機酸及び/又はその塩とを含有する、請求項6記載の調味料。
- 昆布エキスを含む原料を乳酸菌で発酵させることによって得られる発酵物から調製されたものである、請求項7記載の調味料。
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