JP7335295B2 - 塩麹およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は塩麹およびその製造方法に関する。さらに詳しくは従来の塩麹よりも旨味(うま味)の一層加味された新規な塩麹およびその製造方法に関する。
塩麹は、麹菌を蒸米に生育させて得られる米麹を食塩存在下に発酵・熟成させて得られる発酵調味料である。塩麹は、その発酵・熟成過程にて、麹菌が生成する酵素の働きにより、原料の米のデンプンや蛋白質が分解されているので、塩味に加え、甘味や旨味の加味されたマイルドな味を呈する。さらに、調理前に食肉を漬ければ、残存酵素により、食肉蛋白の分解が進むので、肉の柔らかさと旨味が増す。
こうして、塩味をベースとする癖のない味が評価され、塩麹は万能調味料として広く普及されるに至っている。
他方、「味に癖の無い万能調味料」という評価を反映して、塩麹は、その製造工程では無論のこと、流通過程に至るまで、乳酸菌等による味の変質には特に注意が払われている。例えば、特許第5039964号公報(以下、特許文献1)には、「塩糀は固形分と略同量の水分を含んでおり、常温保存すると、空気中から自然に混入した酵母や乳酸菌によりアルコール発酵や乳酸発酵が進行して、変質することが懸念される。かかる懸念に対応するため、出来上がった塩糀に対してアルコールを添加したり、熱を加えたりして滅菌消毒する方法を採用するケースが見受けられる」と記載されている(同文献、段落[0010])。
特許第5039964号公報
上記のとおり、万能調味料として広く普及している塩麹ではあるが、その味は、塩味と甘味を基本とする単調な味であり、やや旨味に乏しいという問題があった。その原因は、伝統的な味噌・醤油(ともに主原料は大豆)と比較して、塩麹の主原料の米は蛋白含量が少なく、かつ塩麹の製造工程には、味噌・醤油に見られる酵母や乳酸菌による発酵工程がないことに起因する。
そのため、米麹を出発原料とする限り、塩麹の呈味性(特に旨味)の改善は困難であるとの考えが定着しているように思われた。実際、塩麹と旨味の有る蛋白加水分解物などを合わせて食材を調味している例は見受けられるが、発明者の知る限り、塩麹そのものの呈味性を更に改善しようとする試みは見受けられない。
そこで本発明者らは、旨味の増した塩麹及びその効率的な製造方法の確立を課題とし、鋭意検討を加えた。
その結果、本発明者らは、従来乳酸菌の混入を意識的に排除していた塩麹の製造に際し、米麹と食塩水を混合して仕込んだ諸味に敢えて乳酸菌を加え、塩麹の製造を試みたところ、「特定の耐塩性乳酸菌株」を用いる場合には、乳酸生成を伴うにもかかわらず、最終的に得られる塩麹の呈味性が大きく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明に言う「特定の耐塩性乳酸菌株」とは、耐塩性乳酸菌の一種テトラジェノコッカス・ハロフィルス(Tetragenococcus halophilus)のうち、アスパラギン酸を脱炭酸してアラニンに変換する性能を有する変異株(以下、アスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株と称する。)である。これに対し、アスパラギン酸脱炭酸性能を有していない通常のテトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株(以下、アスパラギン酸非脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株と称する。)を用いたのでは、塩麹の酸味と塩味が増すばかりで、本発明の目的を達成することは出来ない。
諸味の熟成中に米由来たんぱく質は麹菌由来の酵素(プロテアーゼやペプチダーゼ)により各種アミノ酸に分解されるが、本発明の塩麹は、上記菌株の働きにより、アスパラギン酸がアラニンに変換する。このアミノ酸組成の変化により、最終的に得られる塩麹の旨味が劇的に改善される。
アスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株は、醤油諸味や味噌仕込み液中に生育する耐塩性乳酸菌の変異株として採取・育種できる。
具体的には、上記変異株は「アスパラギン酸1モルから、1モルのアラニンと1モルの二酸化炭素を生成する」ので、「培養中の炭酸ガスの発生」および「培養前後のアスパラギン酸/アラニンの存在比を比較する」ことで、通常乳酸菌株より分取できる。
本発明の目的にかなうアスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株は、微生物寄託機関からも入手できる。
入手可能なアスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌として、例えば、製品評価技術基盤機構生物遺伝資源センター(NITE Biological Resource Center, 以下「NBRC」の略称を用いる)よりRD株(スクリーニング株)として入手可能なテトラジェノコッカス属乳酸菌株(RD N0.012591)が挙げられる。
本発明の塩麹は、その塩麹に含まれるアスパラギン酸とアラニンの合計に対するアラニンの比率(mol/mol)が0.7以上の塩麹である。上記比率が0.7以上の塩麹は、旨味、甘味、及び「味の持続力」が増し、従来の塩麹よりも好ましい調味料となる。上記比率は0.8以上であることが一層好ましく、0.9以上であることが最も好ましい。上記比率が0.8以上になると従来の塩麹と比較して、塩味が抑制されたものとなり、使い勝手の良い調味料となる。
アスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株の使用により、本発明の塩麹には、上記アミノ酸組成の変化に加え、有機酸組成にも変化が生じる。すなわち、従来の塩麹よりも、全有機酸に対する乳酸の割合が増す。
本発明の塩麹では、多くの場合、有機酸の合計に対する乳酸の比率(mol/mol)は0.5以上である。好条件下で菌株が働いた場合には上記比率は0.7以上となる。
乳酸の生成により塩麹の酸味は増すが、上記アミノ酸組成の変化と相まって、塩麹の呈味バランスを改善する。すなわち、旨味、甘味、及び「味の持続力」が高まり、塩味が抑制されたものとなる。
本発明の塩麹は、米麹と食塩水を混合して仕込んだ諸味をアスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株の存在下に発酵・熟成させることにより効率よく得ることが出来る。
なお、「諸味をアスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株の存在下に発酵・熟成させる」とは、仕込んだ諸味の熟成開始より滅菌・除菌処理前までのいずれかの期間に、諸味中に当該菌株が存在する期間が設けられることを意味する。つまり、諸味中で上記菌株の作用により、アスパラギン酸の脱炭酸反応が十分に完結する時間が確保できれば、菌株の添加時期は問わない。
したがって、本発明の塩麹を効率的に得る方法は、イ)諸味の仕込み時に上記菌株を添加し、諸味を発酵・熟成させる態様を基本とするが、変法として、ロ)諸味の発酵・熟成期間の中途に上記菌株を添加し、諸味の発酵・熟成を継続する方法や、ハ)米麹と食塩水を混合して仕込んだ諸味を従来方法にて発酵・熟成した後、上記菌株を添加し、引き続き諸味の発酵・熟成を完結する方法も採用することができる。
なお、アスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株は、別途調整した培地に本菌株を植え、菌株数を十分に増やした菌培養物の形で加えても良い。
発酵・熟成中の諸味温度は、麹菌由来酵素及びアスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株の至適温度の観点から、20~37℃の範囲に保つのが好ましく、25~35℃の範囲に保つのがより好ましい。
また、アスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株の活性の観点から、同菌株添加時の諸味pHは、5.0~7.5の範囲が好ましい。
諸味中にて、たんぱく質成分のアミノ酸への分解と上記菌株によるアスパラギン酸のアラニンへの変換を完結させるとともに、他方で雑酵母による望ましくない発酵を避ける観点から、諸味の発酵・熟成期間は、7~21日の範囲が好ましく、10~14日の範囲がより好ましい。
本発明の塩麹は、諸味の発酵・熟成を上記アスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株の存在下に行う点を除けば、従来の塩麹の製造と同様の方法に従って得る事が出来る。
本発明の塩麹に用いる麹は従来の塩麹と同様の方法にて調整する。その一例を示せば以下のとおりである。
米を水に一晩浸漬する。米としては、精白米、玄米のいずれも用いられる。精白米を用いれば雑味の少ない塩麹が得られ、玄米を用いれば旨味に富む塩麹が得られる。
ついで、水に浸漬後の米を水切りし、常圧下100℃にて20~60分をかけて蒸煮する。
蒸煮後の米(蒸米)の温度を35~45℃の範囲に収まるまで冷やした後、麹菌(種麹)を均一にまぶす。この際、種麹の全量をあらかじめ少量の蒸米に加え、蒸米表面に麹菌がまんべんなく付着させたのち、それを残りの蒸米に混ぜてもよい。これにより、麹菌を蒸米全体により均一にまぶせる。
なお麹菌としては、アスペルギウスオリゼ(Aspergillius oryzae)とアスペルギウスソーヤ(Aspergillius sojae)など、味噌・醤油・清酒などに常用されている黄麹菌が好適に用いられる。
ついで、麹菌をまぶした蒸米を適当な温度(例えば25~37℃)にて、24~48時間培養して麹にする。培養中、必要に応じ加温・保温する。
なお、市販の米麹を用いれば上記の全工程を省略できる。
諸味の仕込みも従来の塩麹の製造と同様に行う。一例を示せば下記のとおりである。
製麹工程を経て得られた麹に食塩水を混合し諸味にする。諸味の塩分(食塩)濃度(以下、単に「塩分濃度」と称する。)は8~20質量%の範囲にする。乳酸菌の活性を旺盛にする観点から、塩分濃度は好ましくは10~15質量%の範囲である。
諸味中のたんぱく質成分の増量のため、必要に応じ、白ぬか、蒸煮玄米を加えてもよい。また、製麹工程を省略して、市販の麹を用いる場合には、市販の麹に食塩水と適量の蒸煮米を加え、初期諸味とすることができる。
諸味を十分に発酵・熟成したのちは、雑菌による変質防止のため、加熱又はアルコール添加による殺菌処理や、除菌処理を施しても良い。さらに、乾燥処理をしても良い。
また調味料としての利便性向上のため、固液分離処理を施して、液体塩麹としてもよい。
アスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株により、本発明の塩麹は乳酸を含有するものとなるが、他方で諸味の発酵・熟成中に生成されるアミノ酸のうち、アスパラギン酸がアラニンに転換される。その結果、最終的に得られる塩麹は、旨味が増すとともに、塩味が抑えられ、かつ味の持続力が向上するという効果も見出された。
製造例1、実施例1、及び比較例1の塩麹のアミノ酸組成を示す図である。 製造例1、実施例1、及び比較例1の塩麹の官能試験の結果をレーダーグラフにて示す図である。
以下、実施例にて本発明の態様を具体的に示す。
<テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株のアスパラギン酸脱炭酸性確認>
実施例、比較例にて使用する下記菌株A、Bにつき、そのアスパラギン酸脱炭酸性能の有無を調べた。
・乳酸菌株A:NBRCより入手のテトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株(RD No.012591)。本株は、2018年10月31日に、NBRCにNITE AP-02841(受領番号)として寄託されている。
・乳酸菌株B:NBRCより入手のテトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株(RD No.012572)。
以下の予備試験により、上記乳酸菌株A,Bのアスパラギン酸脱炭酸性の有無を調べた。
<予備試験>
1.醤油生揚げ20%(w/v)、グルコース1%(w/v)、食塩水を配合し、塩分12%(w/v)、pH7.0となるように調製した液体培地をオートクレーブ滅菌した。滅菌培地の液を採取し、アミノ酸分析をした。
2.滅菌後の培地に乳酸菌株を植菌し(培地10mLに対し、前培養液100μL)、30℃にて2日間培養した。
3.培養前後の液をアミノ酸分析に供し、アスパラギン酸増加とアラニン減少の有無を調べた。
アミノ酸の定量には全自動アミノ酸分析装置を使用した。
結果を表1に示す。

表1より、乳酸菌株A、Bを添加した培養液はともに、「アミノ酸とアンモニアの合計」に対する「アスパラギン酸とアラニンの合計」の比率(mol/mol)が0.15であり、培養前と変わっていない。他方、アスパラギン酸とアラニンの合計に対するアラニンの比率(mol/mol)に注目すると、菌株B使用の場合は培養前の値0.5と変わりがないのに対し、菌株A使用の場合、上記比率は0.9にも達している。これより、乳酸菌株Aはアスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株であり、乳酸菌株Bはアスパラギン酸非脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株であることを確認した。
以下、乳酸菌株A,Bを用いて、塩麹の製造及びその呈味性試験(官能試験)を行った。
なお、以下の試験においては、各測定、試験は下記方法、試験機に拠った。
・諸味、塩麹のpH:pH計により測定した。
・全窒素量:燃焼法又はケルダール法に拠った。
・塩分濃度:電位差滴定法に拠った。
・Brix値:糖用屈折計に拠った。
・有機酸濃度:電気泳動法に拠った(アジレント・テクノロジー(株)製Agilent7100キャピラリー電気泳動システムを使用。)。
・アミノ酸濃度:全自動アミノ酸分析装置(日本電子(株)製JLC 500V2)にて測定した。
[実施例1]
白米を水に浸し、一晩静置した。その後、水切りをし、蒸し器に入れ、常圧下100℃にて蒸煮し、蒸煮米を得た。その蒸煮米を広げ、温度が40℃に降下した時点で、その上に種麹の黄麹菌を撒き、均一に分散するよう混ぜた。均一分散後、30℃にて48時間発酵させ、米麹を得た。
かくして得られた米麹500gに塩分濃度20%の汲み水800mlを加え、諸味を仕込んだ。
ついで、諸味中の生菌数が1.0×105個/mLオーダーとなるよう、乳酸菌株Aの培養液を0.1%(v/v)加えた。諸味の初期pHは5.1であった。
こうして得た諸味を30℃に保ち、14日間発酵・熟成し、塩麹を得た。熟成後の諸味(塩麹)のpHは4.4、塩分濃度は13.8%であった。
塩麹中の有機酸含量及びアミノ酸含量、Brix値を測定した。結果を表2に示す。アスパラギン酸の含量は0.5mmol/Lであり、アラニンの含量は9.4mmol/Lであった(両アミノ酸成分の合計は9.9mmol/Lとなる)。これより、アスパラギン酸とアラニンの合計に対するアラニンの比率(mol/mol)は0.9と算出される。
なお、塩麹中の乳酸含量は13.7mmol/Lであり、クエン酸含量は検出限界以下(0.0mmol/L)であった。また、全有機酸に占める乳酸の比率(mol/mol)は0.7である。
[製造例1]
本試験例は従来法による塩麹に相当するものである。
実施例1において、諸味仕込み後、乳酸菌株Aを加えないで発酵・熟成を行った他は同様にして塩麹を得た。初期諸味のpHは5.1、熟成後の諸味(塩麹)のpHは4.8、塩分濃度は13.9%であった。塩麹中の有機酸含量、アミノ酸含量、Brix値を表1に示す。
乳酸菌を加えていないので、塩麹中の乳酸含量は僅かに0.3mmol/Lであった。他方、クエン酸含量は4.1mmol/Lであった。全有機酸に占める乳酸の比率(mol/mol)は0.04である。
アスパラギン酸の含量は4.7mmol/Lであり、アラニン含量は5.6mmol/Lであった(両アミノ酸成分の合計は10.3mmol/Lとなる)。これより、アスパラギン酸とアラニンの合計に対するアラニンの比率(mol/mol)は0.5と算出される。
[比較例1]
実施例1において、乳酸菌株Aに代えて乳酸菌株Bを用いた他は同様にして塩麹を得た。初期諸味のpHは5.1、熟成後の諸味(塩麹)のpHは4.4、塩分濃度は13.9%であった。塩麹中の有機酸含量、アミノ酸含量、Brix値を表1に示す。
乳酸含量は15.1mmol/Lであり、クエン酸含量は0.0mmol/Lであり、実施例1と同等の乳酸発酵が進んだことをうかがわせる結果となった。また、全有機酸に占める乳酸の比率(mol/mol)は0.6である。
他方、アスパラギン酸の含量は3.9mmol/Lであり、アラニンの含量は5.7mmol/Lであった(両アミノ酸成分の合計は9.6mmol/L)。これより、アスパラギン酸とアラニンの合計に対するアラニンの比率(mol/mol)は0.6と算出される。
以上、実施例1、製造例1、及び比較例1を対比すると、三例とも、アスパラギン酸とアラニンを除いた残りのアミノ酸成分の含量は略等しい(表2、図1)。他方、アスパラギン酸とアラニンに着目すると、製造例1と比較例1とでは、その含量に大きな変化が見られないのに対し、実施例1においては、アスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株の作用により、アスパラギン酸が大きく減少し、その分アラニンが大きく増加しているのが明らかである(表2、図1)。
他方、有機酸含量(組成)に着目すると、乳酸菌を加えた実施例1及び比較例1では、乳酸菌と酢酸(特に乳酸)の割合が大きいのに対し、乳酸菌を加えない製造例1では、クエン酸の割合が大きい。
<官能試験>
実施例1、製造例1、及び比較例1で得た塩麹の呈味性を以下の要領にて比較した(官能試験1、2)。
[官能試験1]
パネラー5名により、製造例1の塩麹(乳酸菌を添加しない従来法による塩麹)を対照例(基準)とし、各塩麹サンプルの旨味、甘味、塩味、酸味、及び味の持続力について評価点を付け、その平均点をその評価項目の評点とした(官能所見とともに表3に示す)。
<評価点>
・5:対照例に対し、強い。
・4:対照例に対し、やや強い。
・3:対照例と同等。
・2:対照例に対し、やや弱い。
・1:対照例に対し、弱い。
これより、アスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株の存在下に諸味を発酵・熟成した塩麹(実施例1)は、従来の塩麹(製造例1)と比較して、酸味がやや増すものの、旨味、甘味、及び「味の持続力」が増し、塩味が抑制されたものであることが分かる。特に旨味と「味の持続力」の向上が顕著であり、抑制された塩味と相まって、呈味性に優れる調味料である。
他方、アスパラギン酸非脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株の存在下に諸味を発酵・熟成した塩麹(比較例1)では、旨味、甘味、及び「味の持続力」の向上は全く見られず、むしろ酸味と塩味が増すばかりで、塩麹の呈味性改善には至らなかった。
[官能試験2]
本発明の塩麹の調味料としての性能を評価するため、製造例1、実施例1、及び比較例1にて得られた塩麹を用いて、きゅうりの浅漬け、鮭の塩麹焼きを以下の手順にて作った。
<きゅうりの浅漬け>
1) 5mm厚さの輪切りにしたきゅうり200g、塩麹40gをビニール袋に入れ、きゅうりと塩麹がなじむよう軽く揉んだ後、真空シーラーで空気を抜いて袋を密封した。
2) 密封袋を冷蔵庫に5時間保管した後、官能試験に供した。
<鮭の塩麹焼き>
1) クッキングペーパーであらかじめ水気を拭き取った15mm厚さの生鮭の切り身2切れ、その生鮭の総重量の30重量パーセント相当の塩麹をビニール袋に入れ、生鮭と塩麹がなじむよう揉んだ後、真空シーラーで空気を抜いて袋を密封した。密封袋を冷蔵庫に3時間保管した。
2) 次いで、袋より鮭を取り出し、軽く汁きりをした後、鮭の表面の塩麹を軽く拭い、グリルにて焼いた。
3) 調理後の鮭を官能試験に供した。
パネラー5名の官能所見を表4にまとめた。
これより、比較例1の塩麹には従来の塩麹(製造例1)に対し何らのメリットも見出せないのに対し、実施例1の塩麹は、従来の塩麹よりも、塩カドがとれ、旨味付与の効果も大きいことが分かる。
[実施例2]
実施例1で得られた塩麹と比較例1で得られた塩麹を各々1:2の重量比にて混合して塩麹を調整した。本塩麹に含まれる全有機酸は22.6mmol/L、乳酸は14.6mmol/Lであった。これより、全有機酸に占める乳酸の比率(mol/mol)は0.6と算出される。また、本塩麹に含まれるアスパラギン酸は2.8mmol/L、アラニンは6.9mmol/Lであり、アスパラギン酸とアラニンの合計に対するアラニンの比率(mol/mol)は0.7である。
製造例1の塩麹を対照例として前記同様に本塩麹の官能試験を行ったところ、旨味:4、甘味:4、塩味:3、酸味:4、及び味の持続力:4の結果であった。
[実施例3]
乳酸菌株Aを、諸味の発酵・熟成終期に添加した他は実施例1と同様にして諸味の発酵・熟成を行ったところ、全有機酸に占める乳酸の比率(mol/mol)0.7、アスパラギン酸2.7mmol/L、アラニン6.8mmol/L、アスパラギン酸とアラニンの合計に対するアラニンの比率(mol/mol)0.7の塩麹が得られた。
製造例1の塩麹を対照例として前記同様に本塩麹の官能試験を行ったところ、旨味:4、甘味:4、塩味:3、酸味:4、及び味の持続力:4の結果であった。

Claims (2)

  1. 米麹と食塩水を混合して仕込んだ諸味にアスパラギン酸脱炭酸性テトラジェノコッカス・ハロフィルス菌株を加え、発酵・熟成させる塩麹の製造方法であって、
    前記塩麹の塩分濃度は8~20質量%であり、かつ、
    イ)前記塩麹中の、アスパラギン酸とアラニンの合計に対するアラニンの比率(mol/mol)は0.7以上であり、
    ロ)前記塩麹中の、有機酸の合計に対する乳酸の比率(mol/mol)は0.5以上である、塩麹の製造方法。
  2. 前記塩麹の塩分濃度は10~15質量%である、請求項1に記載の塩麹の製造方法。



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