JP3530851B1 - 新規乳酸菌及びこれを用いた風味改良調味料 - Google Patents
新規乳酸菌及びこれを用いた風味改良調味料Info
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Abstract
マスキングし、豊かな風味を付与し、更に日持ちを向上
させて改良した風味を維持する飲食品の風味改良調味料
を提供する。 【解決手段】寄託番号、FERM P−19250号と
して寄託されているラクトコッカス・ラフィノラクティ
ス(Lactococcus raffinolactis)に属する新規微生物、
及びこの微生物を乳清、或いは予め分解酵素を作用させ
た乳清を含有する培地で培養して得られた発酵液から不
溶物及び乳酸菌体を除去した上清からなる飲食品の風味
改良調味料、及びこの飲食品の風味改良調味料を添加し
てなる風味が改良された飲食品である。
Description
の乳酸菌を乳清を含有する培地で培養することにより得
られた培養液を飲食品に添加することにより、飲食品の
異味、異臭をマスキングし、豊かな風味を付与し、更に
日持ちを向上させて改良した風味を維持する飲食品の風
味改良調味料及び風味を改良された飲食品に関する。
が悪いために使用されずに廃棄される食品、畜肉、魚介
類等がある。これらの食材を有効利用するために、風味
を改良する調味料が望まれている。従来より、タレ類、
ドレッシング等の調味料に、旨味や風味を増強する目的
でアミノ酸、核酸等の旨味調味料、畜肉、野菜エキス等
を発酵させた旨味調味料を添加することが知られてい
る。その中で近年、乳製品の製造時に生成する乳清を乳
酸菌で発酵させた風味改良剤を利用する方法が提案され
ている。具体的には食品へのコク味付与を目的として乳
清の乳酸発酵液を利用する方法(例えば、特許文献1、
特許文献2参照)がある。また、調味料、飲料への熟成
風味付与のため乳清の乳酸発酵液を使用する方法がある
(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
従来の乳清乳酸発酵液にあっては、食品が微生物汚染を
受けると、折角の風味が変質して風味維持が困難になる
という欠点があった。また、製造中の微生物汚染を防止
するために、乳清発酵液を加熱したり、保存安定性を高
めるため異性化糖を加えたりする処理が行われていた
が、これでは乳清発酵液本来の効果が充分に発揮されな
かった。
することを目的とし、その構成は、寄託番号、FERM
P−19250号として寄託されているラクトコッカ
ス・ラフィノラクティス(Lactococcus raffinolactis)
に属する新規微生物、及びこの微生物を乳清、或いは予
め分解酵素を作用させた乳清を含有する培地で培養して
得られた発酵液から不溶物及び乳酸菌体を除去した上清
からなる飲食品の風味改良調味料、及びこの飲食品の風
味改良調味料を添加してなる風味が改良された飲食品で
ある。
ラフィノラクティス(Lactococcusraffinolactis)に属
する新規乳酸菌を分離し、この乳酸菌を乳清を主体とす
る培地で培養して乳清発酵液を得た。この乳清発酵液が
飲食品の風味を顕著に改良するのみならず、改良した風
味を長期間維持することを見出して本発明を完成するに
至った。本発明風味改良剤は不快臭であるケトン、アミ
ン類の発生を抑制することから生臭みのマスキング効果
を発揮する。また、乳清由来蛋白質及び乳酸発酵による
ペプチド、アミノ酸を多く含むため、食品にコク味、旨
味、甘味を付与する他、pHを低く維持し、肉の保水性
を高め、肉質を柔らかく維持する効果を有する。
味の経時変化が少なく高い風味維持効果を有することが
発見されたが、これは雑菌の増殖が抑制されたことに起
因することが判明した。本発明品は同様にpH調整作用
を有する乳酸や酢酸と比較して顕著に菌の増殖を抑制す
ることから、乳清を乳酸発酵させた際に生じる有機酸の
みならず、様々なアミノ酸、ペプチド類が複合的に作用
し風味を維持していることが考えられる。本効果は乳酸
発酵工程中にも発揮されることから、製造中の雑菌汚染
を防止し、乳清に加熱、加糖等の処理を加えることなく
高品質の乳清発酵液を得ることができる。
に添加することにより、飲食品の味、香り、食感を改良
し、なおかつ日持ち向上効果によりその食味を長く維持
することができる。また本発明乳清発酵物は熱、pHに
比較的安定であることから飲食品の作業工程に左右され
ることなく、風味改良、風味維持効果を発現することが
できる。更に、本発明は食品由来の乳酸菌を用い、乳清
を培地として発酵させたものであるから安全な食味改良
剤として利用できる。
FERM P−19250として寄託されており、標準
条件で培養して球菌であり、グラム陽性、カタラーゼ陰
性、非運動性、非胞子形成性である。本菌の糖の資化性
など諸性質からラクトコッカス・ラフィノラクティスと
99%以上の相同性を示したが、特に乳清含有培地にお
いて風味改良効果及び日持ち向上効果を有する複合物質
を産生することから新規の菌であることが判明した。糖
の資化性について下記表1及び表2に示す。なお、糖を
資化した場合を+、資化しない場合を−で示した。
生成する、牛乳等の獣乳から脂肪、カゼイン、脂溶性ビ
タミン等を除いた透明な液であり、乳清蛋白質、乳糖、
ミネラル、香気成分等を含有する。乳清には、甘性ホエ
ーと呼ばれる、チーズ製造時にレンネット凝固したカゼ
インを除去した上清、酸性ホエーと呼ばれる、等電点に
おいてカゼインを沈殿させた後の上清、その他、膜濃縮
で濃縮乳を作成した時の透過液等がある。これらはいず
れも本発明に使用することができる。また、乳清の酵素
分解物或いは乳清を噴霧乾燥して得られたパウダー等も
使用することができる。乳酸菌培養に使用する乳清の濃
度は、乳糖の濃度を指標として0.1〜10%、好まし
くは3〜6%であるが、特に限定はない。
他の乳酸菌増殖因子を添加することができる。糖源とし
てはグルコース、ガラクトース、ラクトース等を挙げる
ことができる。窒素源としては、食品用酵母エキス、乳
清蛋白濃縮物分解物、コーンペプチド、大豆ペプチド、
業務用調味液原料、焼酎粕等を添加するとよい。発酵後
にさわやかな芳香を得るためには、乳清蛋白濃縮物分解
物を添加することが好ましく、飲食品に適度なコク味と
熟成風味を付与するためには酵母エキスを添加すること
が好ましい。
5〜37℃で100〜300rpmで撹拌しながら10
〜20時間行われる。このようにして得られた発酵液は
遠心分離、ろ過等の公知の手段を用いて不溶物及び菌体
を除去して本発明飲食品の風味改良調味料を得る。食品
の風味改良調味料はそのまま使用してもよいが、濃縮液
或いは乾燥した粉体として使用に供する。乾燥粉体化に
は凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラムドライ等公知の手段が用
いられる。
に、或いは製品に添加すればよく、添加量は固形分とし
て0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜5質量%
で、風味改良、及び改良された風味の持続効果を発現す
る。本発明乳酸菌培養液は乳そのものの風味を持ち込む
ことなく、食品本来の風味を引き出すことができる。畜
肉、魚介類製品の生臭みをマスキングし、旨味、コク
味、甘味を付与し、畜肉にあっては食感を柔らかくジュ
ーシーにする。また、カスタードクリーム等の卵製品や
蒸しパン等の小麦粉製品、更に果汁飲料等においても甘
味や熟成風味を付与し、この風味を長期間維持すること
ができる。
食塩0.5%を加え、121℃で15分間加熱滅菌を行
った。次いで乳酸菌スターターとしてラクトコッカス・
ラフィノラクティス(FERM P−19250)をM
RS broth(OXOID社製)にて前培養したものを上
記乳清培地に5%添加し、37℃、20時間、150r
pmで撹拌しながら培養した。得られた乳酸菌培養液を
1万rpmで遠心分離し、不溶分及び菌体を除去した乳
清発酵液を得た。この乳清発酵液を凍結乾燥して乾燥粉
体200gを得た。
果) 魚介類の生臭みが問題となるサーモンについて風味改良
効果を測定した。サーモン切り身を実施例1で得られた
乳清発酵液の乾燥粉体の5%溶液に浸漬し、10分間真
空タンブリング処理した後、液切りし、6分間焼成して
実施例2のサンプルを得た。乳清発酵液の乾燥粉体を加
えない以外は実施例2と同様にして比較例1のサンプル
を得た。更に、魚介類、畜肉製品は酸性側で生臭さが除
去されるという報告もあることから、乳清乳酸菌発酵液
に代えて、乳成分を乳酸菌によって発酵させたヨーグル
トを用いた以外は実施例2と同様にして、比較例2のサ
ンプルを得た。
官能検査を行った。生臭みの成分は分子量58に集中し
ており、プロパノール、プロピオナルアルデヒド、メチ
ルアセトアルデヒド等であった。これらの発生量を無添
加区を100%として比較した結果を表3に示した。
り、不快臭が大幅に減少することが判明した。ヨーグル
トと比較してもその減少率が大きいことから、マスキン
グ効果はpHの低下に起因するものではなく、本発明風
味改良剤そのものの効果であることが判明した。また、
これらのサンプルについて10人のパネラーによるマス
キング効果、旨味、柔らかさについての評価の平均点を
表4に示した。
みが無い」を+3点、「臭みが無い」を+2点、「臭み
が少ない」を+1点、「標準」を0点、「少し臭みがあ
る」を−1点、「臭みがある」を−2点、「かなり臭み
がある」を−3点の7段階で評価し、平均点数を表示し
た。0.5点以上差がある場合を有意差として評価し
た。旨味向上効果については、「明らかに良い」を+3
点、「良い」を+2点、「少し良い」を+1点、「標
準」を0点、「少し悪い」を−1点、「悪い」を−2
点、「かなり悪い」を−3点の7段階で評価し、平均点
数を表示した。柔らかさについては、「かなり柔らか
い」を+3点、「柔らかい」を+2点、「少し柔らか
い」を+1点、普通(標準)を0点、「少しかたい」を
−1点、「かたい」を−2点、「かなりかたい」を−3
点の7段階で評価し、平均点数を表示した。
ると明らかな生臭みのマスキング効果及び風味改良効果
が得られることが判明した。なお、上記サンプルを25
℃で保存し、直後、1日後及び2日後の一般生菌数(/
g)を測定したところ、直後は10であったが、実施例
2は1日後10、2日後7.5×104 で推移した。一
方、比較例1、2はいずれも1日後に1.0×105に
達し、2日後には1.0×109と増加していた。
効果を測定した。すなわち、マスキング効果、旨味、柔
らかさについて官能試験及びテクスチァーアナライザー
による解析を行った。マトンの切り身を実施例1で得ら
れた乳清発酵液の乾燥粉体の5%溶液に浸漬し、10分
間真空タンブリングした後液切りし、2分間ボイルして
実施例3のサンプルを得た。乳清発酵液の乾燥粉末を加
えない以外は実施例3と同様にして比較例3のサンプル
を得た。これらのサンプルについてテクスチァーアナラ
イザーによる解析を行った結果を表5に示した。
著に柔らかくなることが判明した。また、これらのサン
プルについて10人のパネラーによるマスキング効果、
旨味、柔らかさについての評価の平均点を表6に示し
た。なお、マスキング効果、旨味及び柔らかさについて
は実施例2と同一の評価基準を用いた。
ると、獣臭の明らかなマスキング効果及び風味改良効果
が得られることが判明した。なお、上記サンプルを25
℃で保存し、直後、1日後及び2日後の一般生菌数(/
g)を測定したところ、直後は10であったが、実施例
3は1日後及び2日後も1.9×102で推移した。一
方、比較例3は1日後に1.4×104、2日後は1.
8×106 と増加していた。
上効果) 殺菌乳、グラニュウ糖、卵黄、コーンスターチ、生クリ
ーム及びバターを原料としてカスタードクリームを製造
した。実施例1で製造した乳清発酵液の乾燥粉末を前記
原料の0.5%添加し、常法により90℃、15分間加
熱しながら材料の混合を行い冷却した。得られたカスタ
ードクリームを実施例4とし、甘味及びコク味について
10人のパネラーによる官能評価を行い、その結果を表
7に示した。別に、乳清発酵液の乾燥粉末を添加しなか
った以外は実施例4と同様にしてカスタードクリームを
製造し、比較例4とし、官能評価の結果を表7に併記し
た。
し、「かなり甘い」を+3点、「甘い」を+2点、「少
し甘い」を+1点、「標準」を0点、「少し甘さが足り
ない」を−1点、「甘さが足りない」を−2点、「かな
り甘さが足りない」を−3点の7段階で評価し、平均点
数を表示した。コク味向上効果については、「明らかに
良い」を+3点、「良い」を+2点、「少し良い」を+
1点、普通(標準)を0点、「少し悪い」を−1点、
「悪い」を−2点、「かなり悪い」を−3点の7段階で
評価し、平均点数を表示した。
すると、カスタードクリームの風味が向上することが判
明した。なお、上記サンプルを30℃で保存し、直後、
1日後及び3日後の一般生菌数(/g)の変化を測定し
たところ、直後は10であったが、実施例4は1日後は
102であり、3日後は1.2×106であった。一方、
比較例4は1日後に1.8×106、3日後には1.3
×108と増加していた。
培地で発酵させると、食品に添加するのみで飲食品の異
味、異臭をマスキングし、豊かな風味を付与し、更に日
持ちを向上させて改良された風味を維持する飲食品の風
味改良調味料を提供することができる。
Claims (5)
- 【請求項1】寄託番号、FERM P−19250号と
して寄託されているラクトコッカス・ラフィノラクティ
ス(Lactococcus raffinolactis)に属する新規微生物。 - 【請求項2】乳清を含有する培地で、乳酸菌ラクトコッ
カス・ラフィノラクティス(Lactococcus raffinolacti
s)寄託番号、FERM P−19250号を培養して得
られた飲食品の風味改良調味料。 - 【請求項3】乳酸菌発酵乳清液が不溶物及び乳酸菌体を
除去した上清であることを特徴とする請求項2記載の飲
食品の風味改良調味料。 - 【請求項4】乳酸菌発酵乳清液が、予め分解酵素を作用
させた乳清に乳酸菌を接種し、発酵させたことを特徴と
する請求項2又は3記載の飲食品の風味改良調味料。 - 【請求項5】請求項2ないし4のいずれかに記載する飲
食品の風味改良調味料を添加してなる風味が改良された
飲食品。
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TWI753593B (zh) * | 2015-07-21 | 2022-01-21 | 日商泰寶美客股份有限公司 | 新穎發酵調味料組合物、加工食品、與用於食品原料之素材感及風味之提昇、臭味遮蔽之劑及其方法 |
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---|---|---|---|---|
JP3343790B2 (ja) * | 1993-09-06 | 2002-11-11 | 日本たばこ産業株式会社 | 果実風味増強剤および風味が増強された果実飲料 |
JP3333011B2 (ja) * | 1993-09-06 | 2002-10-07 | 日本たばこ産業株式会社 | 調味液風味改良剤および風味が改良された調味液 |
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-
2003
- 2003-03-20 JP JP2003079107A patent/JP3530851B1/ja not_active Expired - Lifetime
Non-Patent Citations (1)
Title |
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生物工学会誌,Vol.80,No.12(2002),p.569−573 |
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