JP6568717B2 - 煮付け用調味液 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば魚介又は畜肉の煮付けを製造する際に好適に用いられる煮付け用調味液に関する。
従来、例えば魚、畜肉等を、醤油を含有する調味液で煮付けた料理や、魚、畜肉等を、醤油を含有する調味液と共に耐熱性容器に封入して加熱殺菌したレトルト食品が食されている。この場合、魚、畜肉等の食材は、特有の生臭みがあるため、これを調味液によって軽減するようにしている。
例えば、下記非特許文献1には、鮮魚の調理方法として、魚を煮る、焼く、蒸す等の調理があり、煮魚と蒸し魚では、使用する醤油と清酒等の発酵性調味料が魚の臭いを抑制していることが記載されている。
また、下記非特許文献2には、醤油を添加して焼いたみりん干しにおいては、魚臭が抑制されることが記載されている。
更に、下記特許文献1には、イソアミルアルコール及び/又はβ−フェネチルアルコールの濃度を増加させ、更にクエン酸の濃度を増加させることにより、肉の獣臭、魚の生臭さ、乳製品の乳臭さに対するマスキング効果を向上した醤油様調味料が開示されている。
「魚の調理に関する研究」、日本家政学会誌、Vol.48、No.9、753〜762頁(1997) 「しょう油添加によるみりん干しの魚臭抑制」、Nippon Suisan Gakkaishi、56(4)、619-623(1990)
特開2012−95596号公報
上記非特許文献1,2には、醤油を添加することにより、魚臭が抑制されることが記載されているが、本発明者らの研究によれば、醤油本来の香りを豊富に含む本醸造醤油を煮付け用の調味液に使用しても、魚肉、畜肉等の食材が有する特有の生臭みを、必ずしも効果的に抑制できないことがわかった。
その理由はよくわからないが、本醸造醤油に含まれる香り成分の中には、魚肉、畜肉等の食材が有する特有の生臭みを抑制するのに寄与する香り成分と、寄与しない香り成分とがあり、寄与しない香り成分の含量が多いと、魚肉、畜肉等の食材が有する好ましい香りや旨味も抑制されてしまうためではないかと考えられた。
一方、上記特許文献1に記載された醤油様調味料では、イソアミルアルコール及び/又はβ−フェネチルアルコールの濃度と、クエン酸の濃度とを増加させることにより、肉の獣臭、魚の生臭さ、乳製品の乳臭さに対するマスキング効果を向上させているが、その効果は未だ充分とは言えなかった。
その理由はよくわからないが、イソアミルアルコール及び/又はβ−フェネチルアルコールは、醤油に含まれる、肉の獣臭、魚の生臭さ、乳製品の乳臭さに対するマスキング効果を有する成分のうちの一部にすぎないためと考えられる。
したがって、本発明の目的は、魚介、畜肉等の食材が有する特有の生臭みを軽減し、食材自体の味や香りやおいしさを高めることができるようにした煮付け用調味液を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の煮付け用調味液は、本醸造醤油と、糖類と、食塩とを含有し、前記本醸造醤油の含有量が10〜40%(W/W)であり、全窒素1.0%(W/V)当り、4−ヒドロキシ−2(又は5)エチル−5(又は2)メチル−3(2H)フラノンの含有量が15.0ppm以下であることを特徴とする。
本発明の煮付け用調味液によれば、本醸造醤油を所定量含有しながら、4−ヒドロキシ−2(又は5)エチル−5(又は2)メチル−3(2H)フラノンの含有量が少ないことにより、本醸造醤油特有の強い醤油臭が低減されているため、本醸造醤油の有する、食材の風味に影響を与えないよい香りを付与すると共に、醤油特有の香りが目立たないようにすることができ、それによって、煮付け料理の食材の生臭さを軽減し、食材本来の味やよい香りを引き立たせることができる。
本発明の煮付け用調味液においては、前記本醸造醤油として、醤油麹に、該醤油麹の調製に用いられた、生種子換算での植物種子の容積に対して、170〜450%(V/V)となる量の食塩水を仕込んで醤油諸味を調製し、前記醤油諸味を発酵熟成させ、前記発酵熟成途中の醤油諸味に、醤油麹あるいは醤油麹及び食塩水を添加し、前記添加後の醤油諸味を更に発酵熟成させて得られたものを含有することが好ましい。これによれば、本醸造醤油中の4−ヒドロキシ−2(又は5)エチル−5(又は2)メチル−3(2H)フラノンの含有量がより効果的に少なくなるので、本発明の上記効果を高めることができる。
また、本発明の煮付け用調味液においては、全窒素1.0%(W/V)当り、イソアミルアルコールの含有量が5.0ppm以上であることが好ましい。4−ヒドロキシ−2(又は5)エチル−5(又は2)メチル−3(2H)フラノンに代表される醤油特有の香りを抑制しつつ、本醸造醤油の有する、食材の風味に影響を与えないよい香りを高めることができる。
また、本発明の煮付け用調味液は、特に生臭さが問題となる魚介又は畜肉の煮付け用に好適に用いられる。
更に、本発明の煮付け用調味液は、耐熱性容器に封入して加熱殺菌される魚介又は畜肉に付与されることが好ましい。これによれば、耐熱性容器に封入されて加熱殺菌される魚介又は畜肉の生臭さやレトルト臭を効果的に軽減できる。
本発明の煮付け用調味液によれば、本醸造醤油の有する、食材の風味に影響を与えないよい香りを付与すると共に、醤油特有の香りが目立たないようにすることができ、それによって、煮付け料理の食材の生臭さを軽減し、食材本来の味やよい香りを引き立たせることができる。
本発明において、本醸造醤油とは、醤油の日本農林規格における本醸造方式による醤油をいう。すなわち、本醸造方式による醤油とは、大豆、もしくは、大豆と、麦、米等の穀類とを、蒸煮その他の方法で処理し、麹菌を接種培養して得られる醤油麹、もしくは、米を蒸煮、膨化又は麹菌により糖化して該醤油麹に加えたものに、食塩水又は生揚げを加えて醗酵、熟成させて得られる清澄な液体調味料である。また、本醸造方式による醤油を火入れ(加熱殺菌)して、本発明の本醸造醤油としてもよい。
本醸造醤油としては、醤油独特の香りが軽減されつつ、魚、畜肉等の食材の有する生臭さの軽減に寄与する香りを豊富に含むものが好ましく用いられる。ここで、醤油独特の香りの代表的なものとしては、4−ヒドロキシ−2(又は5)エチル−5(又は2)メチル−3(2H)フラノン(以下「HEMF」と略称する)が知られている。そこで、本発明では、全窒素1.0%(W/V)当りのHEMFの含有量を指標にして、醤油独特の香りの量を規定している。
すなわち、本発明の煮付け用調味液は、全窒素1.0%(W/V)当りのHEMFの含有量が15.0ppm以下に規定している。HEMFの含有量が15.0ppmを超える場合は、醤油独特の香りが強くなり、食材本来の風味が損なわれると共に、本醸造醤油が有する他の好ましい香りが感じられにくくなるため、食材の有する生臭さの軽減効果が低減してしまうことがわかった。なお、全窒素1.0%(W/V)当りのHEMFの含有量は、12.0ppm以下であることがより好ましい。
一方、魚介、畜肉等の食材の有する生臭さの軽減に寄与する香りは、本醸造醤油に含まれる多種類の香り成分が関与していると考えられるが、その中の1つであるイソアミルアルコールの含有量を指標として、上記生臭さの軽減に寄与する好ましい香り成分の含有量を推測することができる。
このため、本発明の煮付け用調味液は、全窒素1.0%(W/V)当りのイソアミルアルコールの含有量が5.0ppm以上であることが好ましく、8.0ppm以上であることがより好ましい。
なお、本発明において、全窒素量は、しょうゆ試験法(財団法人、日本醤油研究所編、昭和60年(1985年)3月1日発行)に記載されている方法により測定することができ、HEMF及びイソアミルアルコールの含有量は、ガスクロマトグラフィーにて分析定量することができる(Journal of Agricultural and Food Chemistry Vol.39,934(1991)参照)。
醤油独特の香りであるHEMF等の含有量が少なく、イソアミルアルコール等の他の好ましい香り成分の含有量が高い本醸造醤油は、例えば再公表特許WO2007/116474号公報に記載された製造方法によって得ることができる。
上記製造方法は、醤油麹に、該醤油麹の調製に用いられた、生種子換算での植物種子の容積に対して、170〜450%(V/V)となる量の食塩水を仕込んで醤油諸味を調製し、前記醤油諸味を発酵熟成させ(第1段発酵熟成工程)、前記発酵熟成途中の醤油諸味に、醤油麹あるいは醤油麹及び食塩水を添加し、前記添加後の醤油諸味を更に発酵熟成させる(第2段発酵熟成工程)ことを特徴とする方法である。上記製造方法の概要を説明すると、次の通りである。
(1)醤油麹の調製
先ず、通常の醸造醤油の製造法に従い、大豆、脱脂加工大豆等の蛋白質原料を蒸煮変性したものと、麦類(小麦、大麦、裸麦、はと麦)及び米類等の澱粉質原料を加熱変性したものとを混和し、該混和物の水分を35〜50%(W/W)に調整した後、これにアスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・オリーゼ等の種麹菌を接種し、20〜40℃で2〜4日間培養して醤油麹を調製する。
本発明において醤油麹の調製に用いられる「植物種子」とは、大豆、脱脂加工大豆等の蛋白質原料、ならびに、麦類(小麦、大麦、裸麦、はと麦)、米類等の澱粉質原料の総称である。本発明において「生種子」とは、乾燥、加熱、粉砕、蒸煮等の処理を施す前の前記植物種子を指す。
蛋白質原料と澱粉質原料の配合比率は任意でよいが、その生種子容積比で、蛋白質原料:澱粉質原料=50〜75%(V/V):50〜25%(V/V)で行うことがより好ましい。
植物蛋白質原料として脱脂加工大豆を用いる場合は、脱脂加工大豆重量(kg)=生大豆原料容積(L)×0.6として算出し、澱粉質原料として小麦を用いる場合は、生小麦原料重量(kg)=生小麦原料容積(L)×0.75として算出する。その他原料を用いる場合も、同様に単位容積あたりの重量を係数として算出すればよい。
(2)食塩水の調製
食塩水は、第2段発酵熟成工程後の、熟成が完了した第2段諸味中の食塩濃度が13.0〜20.0%(W/V)となる濃度が好ましく、14.0〜18.0%(W/V)がより好ましく、15.0〜17.0%(W/V)が最も好ましい。なお、第1段諸味中の食塩濃度は、上記第2段諸味の濃度を採用することが好ましい。
第1段諸味及び第2段諸味の食塩濃度は13.0%(W/V)未満では諸味が腐敗する危険があるため好ましくない。反対に20.0%(W/V)より高い濃度では酵母の増殖が著しく阻害されるため好ましくない。
(3)第1段諸味の調製
仕込に用いる食塩水は、汲水歩合170〜450%(V/V)となる量の食塩水である。すなわち醤油麹の原料である蛋白質原料を生種子に換算したときの容積(イ)と、同じく醤油麹の原料である澱粉質原料を生種子に換算したときの容積(ロ)との合計容積に対して170〜450%(V/V)となる容積の食塩水を用いる。
本発明において、このことは重要であって、汲水歩合が170%(V/V)未満及び450%(V/V)を越えるときは、醤油香が少なく、かつ芳醇な香気を有する醸造醤油を得ることができない。
(4)第1段発酵熟成工程
第1段発酵熟成工程では、乳酸菌による乳酸発酵と酵母菌による酵母発酵が進行する。
(乳酸発酵)
上記条件で仕込んだ第1段諸味は、乳酸菌を添加して、あるいは添加せずに、10〜20℃の温度にて乳酸発酵を行う。このとき、醤油酵母発酵が先行しないよう、極力通気を避け、20℃以下の低温で管理することが望ましい。乳酸発酵は、醤油諸味中に0.5%(W/V)以上の乳酸を生成させるまで行うことが好ましい。このように乳酸の生成蓄積した醤油は、食した際に、醤油として良好な風味を有するので好ましい。
(醤油酵母の添加)
醤油麹を食塩水に仕込んで得られる醤油諸味(pH5.8〜6.2である)は、次第に溶解(加水分解)して、原料溶出及び乳酸発酵が開始され、諸味のpHが5.3〜4.5に低下する。そして酵母の増殖に好適な醤油諸味となる。醤油酵母は早湧きを防止するため、乳酸発酵終了後、すなわち諸味のpHが5.3以下に低下したときに添加することが好ましい。
本発明において酵母発酵に用いられる醤油酵母としては、食塩濃度10.0〜20.0%(W/V)の醤油諸味中で旺盛に生育繁殖可能な耐塩性醤油酵母が好ましい。このような醤油酵母としては、Zygosaccharomyces rouxii、Candida(Torulopsis)属酵母、C.etchellsii、C.verstilis等が挙げられる。 酵母は、速やかな発酵を促すため、初発菌数が諸味1g当たり1×10〜1×10個となるように、予め培養しておいた酵母を醤油諸味に添加することが好ましい。
(好気的発酵)
酵母発酵は、諸味を好気的に保つことが好ましい。このように第1段諸味の仕込み時における汲水歩合を、従来法に比べて著しく高い値(170〜450%(V/V))とした醤油諸味を好気的に保持するときは、酵母の生育は旺盛になるが、驚くべきことにHEMFの生成を顕著に抑制できる。諸味を好気的に保つためには、該諸味に酸素、空気又はそれらの混合気体を通気するか、又は通気と機械的攪拌(プロペラ式回転攪拌機、ブレード式回転攪拌機)を併用する。
このようにして製造した醤油諸味は、通常の醤油諸味と比較してかなりの高汲水歩合となる。そのため、従来法における醤油諸味の汲水歩合(約120%(V/V))と比べて、醤油諸味中の固形分含量が少なく、諸味粘度が低くなるために通気効率が良く、その結果、必要通気量も少なくてすむために、諸味の着色、アルコールの飛散等を最小限に抑えることができるという利点を有する。更には、HEMFの生成前駆体である全窒素濃度と糖濃度が低いことから、酵母の増殖が旺盛となるにもかかわらず、HEMF生成量を規定量以下に抑えることができる。
(第1段諸味の特徴)
第1段発酵熟成工程を完了させて、第1段諸味から直接に製品を得ると、醤油香が少ない醤油が得られる。しかし、全窒素濃度が低く、味に厚みが出ない。またアルコール濃度が低く、有害微生物による汚染を招く危険性があるため、諸味管理が困難である。更には諸味も柔らかすぎるため、通常の圧搾装置で圧搾することは困難であり、特別な圧搾装置を必要とする。また好気的条件下で発酵させることから、芳醇な香りに欠け、熟成させると酵母臭が生じるという問題を有する。
(5)第2段諸味の調整
このように、第1段諸味の段階での製品化には種々の問題が生じるため、第2段諸味を調製する。すなわち第1段発酵熟成工程の途中の第1段諸味に対し醤油麹(追加麹)若しくは醤油麹及び食塩水(追加諸味)を添加することが必要である。
第1段諸味に対する追加麹又は追加諸味の添加は、第1段諸味で不足している全窒素やアルコールを補うことを目的とする。追加麹、又は追加諸味の調製に用いる醤油麹に、特別なものを用いる必要はない。
追加麹又は追加諸味の使用量は、第1段諸味の仕込み時における汲水歩合に応じて適宜決定することができる。追加麹又は追加諸味の使用量は、最終的に得られる醤油製品中の全窒素濃度が通常の醸造醤油並みとなる量であることが好ましい。ゆえに、最終的な汲水歩合(総汲水歩合)は、80〜160%(V/V)の範囲に調製することが好ましく、更に100〜150%(V/V)の範囲では、圧搾等、諸味の取扱が容易になるためより好ましく、特に120〜140%(V/V)の範囲では、歩留まり、品質共に優れているため、最も好ましい。「最終的な汲水歩合」あるいは「総汲水歩合」とは、最終製品である醸造醤油の製造工程の全体で使用された植物種子材料の合計容積に対する食塩水の合計容積の比である。具体的には、第1段諸味に追加麹を添加する実施形態においては、「最終的な汲水歩合」あるいは「総汲水歩合」は、第1段諸味の調製のための醤油麹の原料である植物種子材料の容積(生種子換算)と、追加麹の原料である植物種子材料の容積(生種子換算)との合計容積に対する、第1段諸味の調製のための食塩水の容積の比を意味する。また第1段諸味に追加諸味を添加する実施形態においては、「最終的な汲水歩合」あるいは「総汲水歩合」は、第1段諸味の調製のための醤油麹の原料である植物種子材料の容積(生種子換算)と、追加諸味の調製のための醤油麹の原料である植物種子材料の容積(生種子換算)との合計容積に対する、第1段諸味の調製のための食塩水の容積と、追加諸味の調製のための食塩水の容積との合計容積の比を意味する。
また、第1段諸味の調製のための醤油麹に対する、追加麹、又は追加諸味の調製のための醤油麹の割合は50〜300%(W/W)になるようにすればよい。この割合が50%(W/W)以下であると、追加諸味でなく追加麹を添加する場合であっても、最終的に得られる醸造醤油中の全窒素濃度が低くなるため、好ましくない。反対にこの割合が300%(W/W)を超える場合は、第2段諸味の原料溶出が悪化するため、原料利用率が低下し、好ましくない。この割合が50〜300%(W/W)の範囲内の場合は、諸味粘度も適正で、圧搾の問題もなく良好な品質の諸味が得られる。特に100〜200%(W/W)の範囲内である場合には、品質のバランスが良く、好ましい。
また、追加諸味の調製に用いる食塩水の濃度は、第1段諸味の食塩濃度、及び追加諸味の調製に用いる醤油麹と食塩水との配合割合に左右されるが、追加諸味添加後の醤油諸味(第2段諸味)の食塩濃度が13.0〜20.0%(W/V)となるような濃度であればよい。
(追加麹又は追加諸味の添加時期)
追加麹又は追加諸味の添加時期については、厳密に規定されるわけではないが、第1段諸味において、酵母の生菌数が第1段諸味1g当たり3×10個以上、特に5×10個以上に達している期間に添加することが望ましい。酵母の生菌数が第1段諸味1g当たり3×10個以上に達していない状態、あるいは死滅期に入り、酵母の生菌数が3×10個を下回った状態で追加麹又は追加諸味を添加すると、原料溶出による糖源の蓄積速度が、酵母による糖源の資化速度を上回り、HEMFが生成するため好ましくない。逆に第1段諸味1g当たり3×10個以上の生菌数に達している場合は、溶出とほぼ同時に糖源が資化されるため、HEMFが生成せず、また最終諸味の還元糖(RS)も低く抑えることができるため、色も淡色に仕上がり、色沢安定性に優れているため、より好ましい。
(6)第2段発酵熟成工程
第2段発酵熟成工程では、追加麹又は追加諸味の添加後の諸味(すなわち第2段諸味)を更に発酵熟成させる。この工程では新たな乳酸菌及び酵母の添加は行わずに、第1段諸味から移行した酵母及び乳酸菌の働きにより発酵熟成を完了させることが好ましい。この工程では糖源の溶出と、第1段諸味から移行した酵母による糖源の資化がほぼ同時に行われる。すなわち、諸味中の糖濃度が顕著に上昇することなくアルコールが生成蓄積される。その結果、HEMFの生成量を最小限に抑えることができる。またこの発酵により、諸味の香気バランスも良好となり、諸味の微生物安定性も向上する。追加諸味添加後の通気については、激しく実施するとアルコールが飛散するため、適度に実施することが望ましい。第1段発酵熟成工程の途中で追加麹又は追加諸味を添加して得られる第2段諸味は、該添加後の乳酸発酵が期待できないため、第1段発酵熟成工程において、充分に乳酸発酵を行わせ、0.5%(W/V)以上の乳酸を生成させておくことが好ましい。
(第2段諸味の管理)
第2段発酵熟成工程における第2段諸味の管理は、一般的な諸味管理方法に準じればよいが、HEMFを低めに調製したい場合は25℃以下の低温管理を行うことが好ましい。特に20℃以下で管理を行えば、HEMFの生成量をほぼゼロに抑えることが可能となるため、更に好ましい。
(圧搾、製品化)
このようにして熟成した諸味を、定法により圧搾濾過し、得られた清澄な液体を火入して、本醸造醤油を得ることができる。このようにして、醤油独特の香りであるHEMF等の含有量が少なく、イソアミルアルコール等の他の好ましい香り成分の含有量が高い本醸造醤油を得ることができる。
本発明においては、上記製造工程において、例えば一段諸味の汲水歩合を高めたり、第2段発酵熟成工程を20℃以下で管理したりすることにより、HEMFの含有量の少ない本醸造醤油を得ることができ、そのような本醸造醤油の配合量を調整することによって、所望のHEMF含有量にすることができる。
また、本発明において、イソアミルアルコールの含有量を高めるためには、上記製造工程において、例えば一段諸味の汲水歩合を高めることにより、イソアミルアルコールの含有量の多い本醸造醤油を得て、そのような本醸造醤油の配合量を調整することによって、所望のイソアミルアルコール含有量にすることができる。
本発明では、例えば上記のような製造方法によって得られる、HEMF等の含有量が少なく、イソアミルアルコール等の他の好ましい香り成分の含有量が高い本醸造醤油を単独で用いてもよく、上記本醸造醤油と、通常の製造方法で得られる本醸造醤油とを併用してもよい。
本発明の煮付け用調味液は、本醸造醤油の含有量が10〜40%(W/W)であることが必要であり、本醸造醤油の含有量が10〜30%(W/W)であることが好ましい。本醸造醤油の含有量が10%(W/W)未満では、煮付け料理の食材の生臭さの軽減効果が乏しくなり、40%(W/W)を超えると、食材本来の味やよい香りが抑えられるため好ましくない。
なお、本発明の煮付け用調味液における上記本醸造醤油の含有量は、煮付け調味液として使用する際の含有量を意味している。したがって、例えば濃縮して、本醸造醤油の含有量が40%を超える範囲となっていても、使用時に薄めることにより、10〜40%(W/W)になればよく、本願発明の煮付け用調味液は、そのような態様も包含するものである。
本発明の煮付け用調味液は、本醸造醤油の他に、糖類と、食塩とを含有する。糖類としては、特に限定されないが、例えば、砂糖、ぶどう糖、果糖、水飴、異性化液糖等の糖類や、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール類が用いられる。また、みりん、酒精含有調味料等の甘味調味料や、サッカリン、ステビオサイド、アスパルテーム等の甘味料等を用いることもできる。
煮付け用調味液中の糖類の含有量は、1〜40%(W/W)が好ましく、10〜30%(W/W)がより好ましい。また、煮付け用調味液中の食塩の含有量は、0.5〜20%(W/W)が好ましく、5〜15%(W/W)がより好ましい。
また、本発明の醤油含有調味液は、必要により、ダシ汁類、エキス類、各種具材を含有していてもよい。
ダシ汁類としては、例えば、鰹節、宗田節、鯖節、鮪節、鰯節等の魚節類の粉砕物や削り節類、あるいは、鰯、鯖、鯵、エビ等を干して乾燥した煮干し類の粉砕物等を、熱水やエタノール等で抽出して得るダシ汁類が挙げられる。また、コンブ、ワカメ等の海藻類、しいたけ等のキノコ類のダシ汁も挙げられる。
エキス類としては、例えば、鰹エキス、鰹節エキス、ホタテエキス等の魚介類エキスや、鶏、豚、牛等の畜肉類から得られる畜肉エキス、ニンニクや生姜、椎茸等の野菜エキス等が挙げられる。また、各種の蛋白加水分解物、酵母エキス等を使用することもできる。
具材としては、特に限定されないが、例えば、大根、玉ネギ、長ネギ、人参、牛蒡、れんこん、生姜、ニンニク、ピーマン、トマト、コーン、タケノコ等の野菜類や、シソ、パセリ、セロリ、ニラ、ミツバ等の香辛野菜類や、椎茸、マッシュルーム、エノキ、シメジ等のキノコ類や、リンゴ、ナシ、キウイ、パイナップル、梅等の果実類や、ゴマ、ナッツ、栗等の種実類や、ツナ、イカ、ホタテ、カニ、鮭等の魚介類や、ひじき、昆布、ワカメ等の海藻類や、豚、牛、鶏等の畜肉類や、ハム、ベーコン、ヤキブタ等の食肉加工品、豆腐、油揚げ、こんにゃく、粒状大豆たんぱく等の加工食品等が好ましく用いられる。
これらの具材は、必要により、すりおろしたり、ペースト状にしたり、粉砕したり、細切りしたり、ダイス状、短冊状等の形状にカットして、用いることができる。その場合、最大長さが1〜100mmとなるように調製することが好ましい。
また、これらの具材は、醤油含有調味液を加熱殺菌する場合には、生のものでもよいが、予め加熱調理したものでもよい。また、乾燥物であってもよい。
本発明の醤油含有調味液は、その他、必要により、グルタミン酸ナトリウム、グリシン等のアミノ酸系調味料、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の核酸系調味料等の調味料類、でん粉、加工でん粉、多糖類、ガム類等の増粘剤、酸味調味料、有機酸類、食酢、果汁、清酒、ワイン、発酵調味料、味噌、大豆油、ナタネ油、ゴマ油、ラー油等の食用油脂類、小麦粉、カレー粉、オイスターソース、乳化剤、香料、着色料等を含有していてもよい。
本発明の煮付け用調味液の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記の各種原料を、必要に応じて適量の水を加えて混合し、必要があれば加熱溶解して調製することができる。上記加熱溶解は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは55〜95℃で加熱しながら、混合することによって行うことができる。
こうして得られた煮付け用調味液は、必要により加熱殺菌してもよい。加熱殺菌は、容器に充填する前又は後に行うことができる。加熱殺菌条件は、特に限定されないが、例えば80〜120℃で、5〜40分間行うことが好ましい。
本発明の煮付け用調味液は、各種の食材の煮付けに用いることができる。食材としては、特に限定されないが、例えばブリ、サバ、サワラ、スズキ、タイ、アナゴ、カレイ、タラ、マグロ、メバル、アサリ、イカ、タコ等の魚介類や、牛、豚、鶏、馬、羊、山羊等の畜肉類や、鹿、イノシシ、ウサギ等の野生の鳥獣類が挙げられる。これらの中でも、魚臭や獣臭等が問題となる、魚介魚又は畜肉に好適である。
本発明の煮付け用調味液を用いた食材の煮付け方法は、特に限定されないが、例えば魚や畜肉等の食材100質量部に対して、本発明の煮付け用調味液を10〜500質量部添加し、鍋等に入れて、70〜100℃で5〜40分間程度加熱処理すればよい。また、食材と煮付け用調味液とを耐熱性容器に封入して、100〜120℃で5〜40分間程度加熱殺菌することにより、結果的に食材を煮付けた状態にしてもよい。
こうして得られる煮付けは、魚、畜肉等の食材の有する生臭さ等が軽減され、食材本来の味やよい香りを引き立ったものとなる。
また、本発明の煮付け用調味液を用いると、耐熱性容器に封入して加熱殺菌した場合であっても、魚、畜肉等の食材の有する生臭さを軽減し、レトルト臭やムレ臭等の劣化臭も少ない煮付けを得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)低HEMF本醸造用醤油の調製
(醤油麹の調製)
脱脂加工大豆10kg(生大豆容積換算で17L)に80℃の温水を13L加え、蒸煮圧力2kg/cm(ゲージ圧力)で20分間加圧加熱蒸煮したものに、生小麦10kg(生小麦容積換算で13L)を炒熬した後割砕した炒熬割砕小麦を混合して水分約40%(W/W)の製麹用原料を調製した。この製麹用原料に、アスペルギルス・オリーゼ(ATCCD14895)のフスマ種麹を約0.1%(W/W)接種して麹蓋に盛り込み、30℃で42時間製麹して醤油麹24kgを得た。
(第1段発酵熟成工程−酵母高含有諸味の調製)
上記醤油麹0.8kg(生種子容積換算で1L)を仕込みタンクにとり、諸味の発酵熟成後の食塩濃度が16.0%(W/V)になるように食塩水2.1Lを混和して醤油諸味を調製した。該食塩水の量は、醤油麹の調製に用いられた生種子換算での植物種子の容積に対して210%(V/V)であった。上記醤油諸味に醤油乳酸菌を1×10個/g諸味となるように添加し、諸味品温を15℃に保持して乳酸発酵を約1カ月間行い、次に、醤油酵母を5×10個/g諸味となるように添加した後、諸味品温20℃で通気撹拌を7日間行い、酵母高含有諸味を得た。
(第2段発酵熟成工程−低HEMF本醸造醤油の調製)
上記酵母高含有諸味全部に、前記醤油麹の調製に従って製造した醤油麹1.6kg及び食塩水2.1Lを加えて醤油諸味を調製した。該醤油諸味に使用した食塩水の合計は4.2Lであり、醤油麹の合計2.4kgに用いられた生種子換算での植物種子の容積3Lに対して140%(V/V)であった。次に、該醤油諸味を品温15〜25℃で2カ月間発酵、熟成を行い、常法により圧搾濾過して得られた生醤油を食塩水で調整後火入れして、醤油香の穏やかな低HEMF本醸造醤油を調製した。
なお、当該低HEMF本醸造醤油の成分分析値は、全窒素濃度1.6%(W/V)、食塩濃度15%(W/V)、エタノール濃度3.2%(V/V)、pH5.3、還元糖1.0%(W/V)、醤油の標準色31番、全窒素1.0%(W/V)当たりのHEMF濃度13.9ppm、全窒素1.0%(W/V)当たりのn−ブチルアルコール濃度1.0ppm、全窒素1.0%(W/V)当たりのイソアミルアルコール濃度22.7ppm、無塩可溶性固形分17.92%であった。
なお、上記低HEMF本醸造醤油の他に、通常の方法で製造された市販の本醸造醤油(濃口醤油、キッコーマン株式会社製)も使用した。
(2)煮付け用調味液の調製
上記で得られた低HEMF本醸造醤油と、通常の方法で製造された本醸造醤油(濃口醤油、キッコーマン株式会社製)とを用いて、下記表1の配合により、煮付け用調味液を調製した。すなわち、上記低HEMF本醸造醤油又は上記濃口醤油、上白糖、食塩、水を混合撹拌し、湯煎にて80℃まで撹拌しながら加温した。その後、水冷にて冷却後、規定量まで水で調整して、煮付け用調味液とした。なお、表1中の配合量は、いずれも%(W/W)である。
こうして得られた煮付け用調味液について、食塩分(%(W/W))と、可溶性固形分(%(W/W))と、HEMF濃度(ppm)と、全窒素(%(W/V))と、全窒素1.0%(W/V)当たりのHEMF(ppm)とを測定し、その結果を表2(後述)に示した。なお、食塩分、可用性固形分、全窒素の測定は、しょうゆ試験法(財団法人、日本醤油研究所編、昭和60年(1985年)3月1日発行)に記載されている方法により行った。また、HEMF及びイソアミルアルコールの濃度は、ガスクロマトグラフィーにて分析定量した(Journal of Agricultural and Food Chemistry Vol.39,934(1991)参照)。
なお、以下に示す表1、2における「KMF」は、上記で得られた低HEMF本醸造醤油を意味し、「濃口」は、上記市販の本醸造醤油(濃口醤油、キッコーマン株式会社製)を意味する。
(3)魚の煮つけの作成
上記で調整した調味液100gと、市販の生のメカジキの切り身100gとを、アルミパウチ(東洋製缶社製)に充填しシール後、熱水式レトルト殺菌装置(日阪社製)にて100℃10分加熱殺菌した後、水冷して、魚の煮付けを製造した。
(4)魚の煮つけの官能評価
魚の煮つけの製造1時間後、アルミパウチを開封し、魚の煮つけを2cm角に切り分けてその一片を食し、魚の生臭さの抑制、魚の味(醤油の味ではなく魚自体の味の好ましさ)、色(素材の色の鮮やかさ)、良い香り(魚の生臭さではない、魚自体の食欲をそそるような香り)、魚のおいしさ、総合評価について評価した。
官能評価は10人の専門パネルにて、各評価項目について5段階で評価した。すなわち、魚の生臭さについては対照例を基準として、「強い」を1、「やや強い」を2、「同じ」を3、「やや弱い」を4、「弱い」を5とした。魚の味(醤油の味ではなく魚自体の味の好ましさ)、色(素材の色の鮮やかさ)、良い香り(魚の生臭さではない、魚自体の食欲をそそるような香り)、魚のおいしさ、総合評価については、「悪い」が1、「やや悪い」が2、「同じ」が3、「やや良い」が4、「良い」が5とした。総合評価については、各評価項目の点数の合計を平均した点数とし、3以下が×、3より大きく4未満が○、4以上が◎とした。
上記官能評価の結果を下記表2に示す。
表2に示されるように、低HEMF本醸造醤油(KMF)を配合し、全窒素1.0%(W/V)当りのHEMF含量が12.0ppm及び全窒素1.0%当りのイソアミルアルコール含量が9.63ppmとされた実施例1,2,3の煮付けは、魚の生臭さの抑制効果が高く、魚の味や、素材の色の鮮やかさや、魚自体の食欲をそそるような香りや、魚のおいしさに優れていた。
一方、濃口醤油を10%配合し、全窒素1.0%(W/V)当りのHEMF含量が20.13ppm及び全窒素1.0%当りのイソアミルアルコール含量が3.13ppm以下である比較例1(対照例)は、魚の生臭さの抑制効果が、実施例1,2,3に比べて不十分であり、魚の味や、香りや、おいしさの点でも劣っていた。
また、濃口醤油を30%配合し、全窒素1.0%(W/V)当りのHEMF含量が20.13ppm及び全窒素1.0%当りのイソアミルアルコール含量が3.13ppm以下である比較例2は、魚の生臭さの抑制効果はあったが、魚の味や、色や、香りや、おいしさの点で実施例1,2,3に比べて劣っていた。
<実施例2>
(1)煮付け用調味液の調製
実施例1で製造した低HEMF本醸造醤油(KMF)と、通常の方法で製造された本醸造醤油(濃口醤油、キッコーマン株式会社製)とを用いて、下記表3の配合により、煮付け用調味液を調製した。すなわち、上記低HEMF本醸造醤油(KMF)及び/又は上記濃口醤油、上白糖、食塩、水を混合撹拌し、湯煎にて80℃まで撹拌しながら加温した。その後、水冷にて冷却後、規定量まで水で調整して、煮付け用調味液とした。なお、表3中の配合量は、いずれもW/W%である。
こうして得られた煮付け用調味液について、前記実施例1と同様な方法で、食塩分(%(W/W))と、可溶性固形分(%(W/W))と、HEMF濃度(ppm)及びイソアミルアルコール濃度(ppm)と、全窒素(%(W/V))と、全窒素1.0%(W/V)当たりのHEMF(ppm) 及びイソアミルアルコール濃度(ppm)とを測定し、その結果を表4(後述)に示した。
(2)豚肉の煮込みの作成
上記で調整した調味液100gと、5〜6cm角にカットした市販の生の豚モモ肉100gとを、アルミパウチ(東洋製缶社製)に充填しシール後、熱水式レトルト殺菌装置(日阪社製)にて100℃10分加熱殺菌した後、水冷して、豚肉の煮込みを製造した。
(3)豚肉の煮込みの官能評価
豚肉の煮込みの製造1時間後、アルミパウチを開封し、豚肉の煮込みを1〜2cm角に切り分けてその一片を食し、前記実施例1と同様な評価基準により、豚肉の臭みの抑制、豚肉の味(醤油の味ではなく豚肉自体の味の好ましさ)、色(素材の色の鮮やかさ)、良い香り(豚肉の臭みではない、豚肉自体の食欲をそそるような香り)、豚肉のおいしさ、総合評価について評価した。
上記官能評価の結果を下記表4に示す。
表4に示されるように、低HEMF本醸造醤油(KMF)を配合し、全窒素1.0%(W/V)当りのHEMF含量が12.0ppm及び全窒素1.0%当りのイソアミルアルコール含量が9.63ppmである実施例4の煮込みは、豚肉の生臭さの抑制効果は比較例3と変わらなかったが、豚肉の味や、素材の色の鮮やかさや、豚肉自体の食欲をそそるような香りや、豚肉のおいしさに優れていた。
また、低HEMF本醸造醤油(KMF)と濃口醤油を配合し、全窒素1.0%(W/V)当りのHEMF含量が13.6ppm及び全窒素1.0%当りのイソアミルアルコール含量が8.33ppmである実施例5の煮込みは、豚肉の生臭さの抑制効果が高く、豚肉の味や、素材の色の鮮やかさや、豚肉自体の食欲をそそるような香りや、豚肉のおいしさに優れていた。
一方、濃口醤油を10%配合し、全窒素1.0%(W/V)当りのHEMF含量が20.1ppm及び全窒素1.0%当りのイソアミルアルコール含量が3.13ppmである比較例3(対照例)は、豚肉の味や、素材の色の鮮やかさや、豚肉自体の食欲をそそるような香りや、豚肉のおいしさの点で劣っていた。
また、濃口醤油を30%配合し、全窒素1.0%(W/V)当りのHEMF含量が20.1ppm及び全窒素1.0%当りのイソアミルアルコール含量が3.13ppmである比較例4は、豚肉の生臭さの抑制効果はあったが、豚肉の味や、素材の色の鮮やかさや、豚肉自体の食欲をそそるような香りや、豚肉のおいしさの点で劣っていた。

Claims (6)

  1. 本醸造醤油と、糖類と、食塩とを含有し、前記本醸造醤油の含有量が10〜40%(W/W)であり、全窒素1.0%(W/V)当り、4−ヒドロキシ−2(又は5)エチル−5(又は2)メチル−3(2H)フラノンの含有量が15.0ppm以下であり、かつ、全窒素1.0%(W/V)当り、イソアミルアルコールの含有量が5.0ppm以上であり、耐熱性容器に封入して加熱殺菌される魚介又は畜肉に付与されるものであることを特徴とする煮付け用調味液。
  2. 本醸造醤油と、糖類と、食塩とを含有し、前記本醸造醤油の含有量が10〜40%(W/W)であり、全窒素1.0%(W/V)当り、4−ヒドロキシ−2(又は5)エチル−5(又は2)メチル−3(2H)フラノンの含有量が15.0ppm以下であり、耐熱性容器に封入して加熱殺菌される魚介又は畜肉に付与されるものである煮付け用調味液であって、前記本醸造醤油として、醤油麹に、該醤油麹の調製に用いられた、生種子換算での植物種子の容積に対して、170〜450%(V/V)となる量の食塩水を仕込んで醤油諸味を調製し、前記醤油諸味を発酵熟成させ、前記発酵熟成途中の醤油諸味に、醤油麹あるいは醤油麹及び食塩水を添加し、前記添加後の醤油諸味を更に発酵熟成させて得られたものを含有することを特徴とする煮付け用調味液。
  3. 全窒素1.0%(W/V)当り、イソアミルアルコールの含有量が5.0ppm以上である請求項記載の煮付け用調味液。
  4. 本醸造醤油と、糖類と、食塩とを含有し、前記本醸造醤油の含有量が10〜40%(W/W)であり、全窒素1.0%(W/V)当り、4−ヒドロキシ−2(又は5)エチル−5(又は2)メチル−3(2H)フラノンの含有量が15.0ppm以下であり、かつ、全窒素1.0%(W/V)当り、イソアミルアルコールの含有量が5.0ppm以上である煮付け用調味液を、魚介又は畜肉に添加して耐熱性容器に封入し、加熱殺菌することを特徴とする魚介又は畜肉の煮付けにおける生臭み抑制方法。
  5. 本醸造醤油と、糖類と、食塩とを含有し、前記本醸造醤油の含有量が10〜40%(W/W)であり、全窒素1.0%(W/V)当り、4−ヒドロキシ−2(又は5)エチル−5(又は2)メチル−3(2H)フラノンの含有量が15.0ppm以下であり、前記本醸造醤油として、醤油麹に、該醤油麹の調製に用いられた、生種子換算での植物種子の容積に対して、170〜450%(V/V)となる量の食塩水を仕込んで醤油諸味を調製し、前記醤油諸味を発酵熟成させ、前記発酵熟成途中の醤油諸味に、醤油麹あるいは醤油麹及び食塩水を添加し、前記添加後の醤油諸味を更に発酵熟成させて得られたものを含有する煮付け用調味液を、魚介又は畜肉に添加して耐熱性容器に封入し、加熱殺菌することを特徴とする魚介又は畜肉の煮付けにおける生臭み抑制方法。
  6. 前記調味液は、全窒素1.0%(W/V)当り、イソアミルアルコールの含有量が5.0ppm以上である、請求項記載の魚介又は畜肉の煮付けにおける生臭み抑制方法。
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