JP6937956B1 - 容器詰組成物及びその使用並びに容器詰加工食品 - Google Patents

容器詰組成物及びその使用並びに容器詰加工食品 Download PDF

Info

Publication number
JP6937956B1
JP6937956B1 JP2021085253A JP2021085253A JP6937956B1 JP 6937956 B1 JP6937956 B1 JP 6937956B1 JP 2021085253 A JP2021085253 A JP 2021085253A JP 2021085253 A JP2021085253 A JP 2021085253A JP 6937956 B1 JP6937956 B1 JP 6937956B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
meat
composition
flavor
alanine
soy sauce
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2021085253A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021182910A (ja
Inventor
岳 岡村
岳 岡村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kikkoman Corp
Original Assignee
Kikkoman Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Family has litigation
First worldwide family litigation filed litigation Critical https://patents.darts-ip.com/?family=78028310&utm_source=google_patent&utm_medium=platform_link&utm_campaign=public_patent_search&patent=JP6937956(B1) "Global patent litigation dataset” by Darts-ip is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
Application filed by Kikkoman Corp filed Critical Kikkoman Corp
Priority to JP2021137783A priority Critical patent/JP2021184747A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6937956B1 publication Critical patent/JP6937956B1/ja
Publication of JP2021182910A publication Critical patent/JP2021182910A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Meat, Egg Or Seafood Products (AREA)
  • Seasonings (AREA)

Abstract

【課題】本発明の目的は、肉類の種類に限らず、肉類に特有の臭みを抑制し、肉のうま味が感じられるように肉類の風味を改善した組成物を提供することにある。【解決手段】上記目的は、動物肉と、1ppb以上1,500ppb未満のフェネチルアセテートとを含む、容器詰組成物;該組成物と食材とを混合することにより、加工食品を得る工程を含む、加工食品の製造方法;該組成物と食材とを混合したものを、加熱調理することにより、加熱調理食品を得る工程を含む、加熱調理食品の製造方法などにより解決される。【選択図】なし

Description

本発明は、容器詰組成物、該組成物を使用した加工食品、該加工食品の製造方法及び容器詰加工食品に関する。
一般に、天然の食材である肉類は、飼養された畜産動物から得られる。畜産動物の飼養方法は、国などの地域、畜産農家などによって様々であり、肉類の品質に影響を与え、結果として肉類の価格に変動を生じせしめる。
例えば、牛肉は、和牛、国産牛及び輸入牛に分けられる。このうち輸入牛は、和牛及び国産牛に比べて風味が劣るとされている。輸入牛の多くは、グラスフェッド牛(牧草飼育牛)であり、和牛、国産牛及びグレインフェッド牛(穀物飼育牛)に比較して、グラスフェッド牛の肉はグラス臭(青草臭)があり、うま味が少ない傾向にある。そこで、グラスフェッド牛肉の嗜好性を高めることは、非常に有用である。
ところで、黒毛和牛肉は、特有の和牛香を有し、これにはノナラクトン、デカラクトン、ウンデカラクトン、ドデカラクトンなどのラクトン類が寄与している可能性が高いことが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。特許文献1では、リパーゼを利用して、ラクトン類などに基づく和牛香を生成する方法が開示されている。
同様に、特許文献2には、グラスフェッド牛肉に、ラクトン類を、ラクトン類換算で0.1〜100ppmとなるように添加し、肉中にラクトン類を均一に分散させることを特徴とするグラス臭が改善された加工肉の製造方法が記載されている。
牛肉に限らず、鶏肉、豚肉などを含む肉類全般においてそれぞれ特有の臭みがあることが知られている。例えば、短期飼養種の弊害として特有のブロイラー臭がする鶏肉があり、豚肉は獣臭、酸化臭、血臭(鉄臭)、生臭みを合わせた不快な臭いがすることが知られている。例えば、特許文献3には、小麦粉及びクミン粉末を用いた鶏肉の臭み低減方法が記載されている。
特開2006−340693号公報 特許第4704300号 特許第6325277号
日畜会報 75 (3): 409-415, 2004
特許文献1及び2に記載されているように、ラクトン類を用いるとグラス臭は低減される。しかし、本発明者らが調べたところによれば、ラクトン類のノナラクトンは、確かにグラス臭を低減することができるものの、肉のうま味を改善するまでは至らないという問題がある。
また、特許文献3に記載の方法は、クミン粉末を利用するところ、クミン粉末はそれ自体で辛みがあり、強い芳香がすることから、使用する肉類にクミン特有の風味を付与するという問題がある。
さらに、特許文献1〜3に記載の方法は、それぞれ対象とする肉類が決まっており、肉類の種類に限らず肉類の風味を改善するような成分及び方法はこれまでにほとんど知られていない。
そこで、本発明は、肉類の種類に限らず、肉類に特有の臭みを抑制し、肉のうま味が感じられるように肉類の風味を改善した組成物を提供することを、本発明が解決しようとする課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ね、数多くの成分を単独で、又は適宜組み合せるなどして、肉類の種類に限らず、肉類の風味を改善した組成物を得ようと試行錯誤した。
そして、数々の失敗を重ねた結果、驚くべきことに、肉類とともに、所定量のフェネチルアセテートを添加したものは、肉類の風味が改善した組成物になり得ることを見出すに至った。フェネチルアセテートの臭い閾値が3,000ppbであるとされていることからすれば(国立医薬品食品衛生研究所、[online]http://www.nihs.go.jp/hse/food−info/chemical/kanshi/table3.xls)、この閾値以下の量によるフェネチルアセテートの肉類の風味改善作用は、フェネチルアセテートの香りのみによるものではない蓋然性があり、予想外の作用であるといえる。
さらに驚くべきことに、肉類だけではなく、魚介類についてもフェネチルアセテートは風味改善作用を有すること、フェネチルアセテートにアラニンを組み合わせて加えた場合には肉類、魚介類といった動物肉の風味改善作用が増強されることを見出した。
このような知見の下で、本発明者らは、本発明の課題を解決することができる、容器詰組成物;加工食品;加工食品の製造方法;容器詰加工食品;動物肉の風味の改善方法;動物肉の風味改善用組成物を創作することに成功した。本発明はこのような知見や成功例に基づいて完成するに至った発明である。
したがって、本発明の各一態様によれば、以下のものが提供される:
[1]肉類及び魚介類からなる群から選ばれる少なくとも1種の動物肉と、1ppb以上1500ppb未満のフェネチルアセテートとを含む、容器詰組成物。
[2]さらに0.1mg/g以上65mg/g未満のアラニンを含む、[1]に記載の組成物。
[3]前記組成物は、前記動物肉の風味改善用組成物である、[1]〜[2]のいずれか1項に記載の組成物。
[4]前記組成物は、加熱殺菌に供された組成物である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の組成物。
[5]前記組成物は、前記動物肉に対する前記フェネチルアセテートの含有量が5ppb以上7,500ppb未満であり、及び/又は、前記動物肉に対する前記アラニンの含有量が0.5mg/g以上325mg/gである、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の組成物。
[6]前記組成物は、しょうゆを含む、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の組成物。
[7]前記組成物は、前記しょうゆに対する前記フェネチルアセテートの含有量が10ppb以上15,000ppb未満であり、及び/又は前記しょうゆに対する前記アラニンの含有量が1mg/g以上650mg/gである、[6]に記載の組成物。
[8][1]〜[7]のいずれか1項に記載の組成物と食材とを原料として含む、加工食品。
[9][1]〜[7]のいずれか1項に記載の組成物と食材とを混合することにより、加工食品を得る工程を含む、加工食品の製造方法。
[10][1]〜[7]のいずれか1項に記載の組成物と食材とを混合したものを、加熱調理することにより、加熱調理食品を得る工程を含む、加熱調理食品の製造方法。
[11]肉類及び魚介類からなる群から選ばれる少なくとも1種の動物肉と、1ppb以上1,500ppb未満のフェネチルアセテートとを含む、容器詰加工食品。
[12]さらに0.1mg/g以上65mg/g未満のアラニンを含む、[11]に記載の容器詰加工食品。
[13]前記容器詰加工食品は、前記動物肉の風味を改善するための前記容器詰加工食品である、[11]〜[12]のいずれか1項に記載の容器詰加工食品。
[14]前記容器詰加工食品は、加熱殺菌に供された容器詰加工食品である、[11]〜[13]のいずれか1項に記載の容器詰加工食品。
[15]肉類及び魚介類からなる群から選ばれる少なくとも1種の動物肉とフェネチルアセテートとをフェネチルアセテートの含有量が1ppb以上1,500ppb未満になるように混合することにより、動物肉の風味を改善する工程を含む、動物肉の風味の改善方法。
[16]肉類及び魚介類からなる群から選ばれる少なくとも1種の動物肉とフェネチルアセテートとアラニンとを、フェネチルアセテートの含有量が1ppb以上1,500ppb未満になるように、及びアラニンの含有量が0.1mg/g以上65mg/g未満になるように混合することにより、動物肉の風味を改善する工程を含む、動物肉の風味の改善方法。
[17]フェネチルアセテートを有効成分として含む、肉類及び魚介類からなる群から選ばれる少なくとも1種の動物肉の風味改善用組成物。
[18]フェネチルアセテート及びアラニンを有効成分として含む、肉類及び魚介類からなる群から選ばれる少なくとも1種の動物肉の風味改善用組成物。
本発明によれば、肉類、魚介類といったように動物肉の種類に限らず、動物肉に特有の臭みを抑制し、肉のうま味が感じられるように動物肉の風味を改善することができる。結果として、本発明によれば、優れた風味を有する動物肉を含む加工食品、例えば、加熱調理食品を調理することが可能である。また、本発明によれば、生食用の動物肉につけることで、生食用肉の嗜好性を高くすることができる。
以下、本発明の各態様の詳細について説明するが、本発明は、本項目の事項によってのみに限定されず、本発明の目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている推測及び理論は、本発明者らのこれまでの知見及び経験によってなされたものであることから、本発明はこのような推測及び理論のみによって拘泥されるものではない。
「組成物」は、通常用いられている意味のものとして特に限定されないが、例えば、2種以上の成分が組み合わさってなる物が挙げられる。
「容器詰」は、容器の中に充填又は収容されることを意味する。
「ppb」は、通常知られている意味のとおりの単位であり、具体的には1ppbは1/10であり、グラム換算では1ng/gである。
「及び/又は」との用語は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
「含有量」は、濃度と同義であり、組成物の全体量に対する成分の量の割合を意味する。ただし、成分の含有量の総量は、100%を超えることはない。
数値範囲の「〜」は、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0%〜100%」は、0%以上であり、かつ、100%以下である範囲を意味する。「超過」及び「未満」は、その前の数値を含まずに、それぞれ下限及び上限を意味し、例えば、「1超過」は1より大きい数値であり、「100未満」は100より小さい数値を意味する。
「含む」は、含まれるものとして明示されている要素以外の要素を付加できることを意味する(「少なくとも含む」と同義である)が、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。すなわち、「含む」は、明示されている要素及び任意の1種若しくは2種以上の要素を含み、明示されている要素からなり、又は明示されている要素から本質的になることを意味し得る。要素としては、成分、工程、条件、パラメーターなどの制限事項などが挙げられる。
「風味」は、口に含んだ際に口腔内から鼻へ抜ける香り(レトロネーザル)、口に含んだ際に舌で感じる味(呈味)又はその両方を意味する。「香り」は、口に含まずに鼻だけで感じる香り(オルソネーザル)を意味する。「香味」とは、風味、香り又はその両方を意味する。
「動物肉」は、肉類、魚介類又はその両方を意味する。
「動物肉の風味の改善作用」は、動物肉の風味を向上すること、動物肉の風味を維持すること、及び動物肉の風味の劣化を抑制(緩和、防止及び阻止)することからなる群から選ばれる少なくとも1種の作用を意味する。
「F値」は、食品が基準温度で加熱されたのに相当する時間(分)を表わす。「F値」は基準温度及び微生物の耐熱性のパラメーターZ値により変わるため、基準温度121.1℃,Z値10℃のときのF値を「Fo値」で表示し、殺菌の評価に用いている。
整数値の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、1の有効数字は1桁であり、10の有効数字は2桁である。また、小数値は小数点以降の桁数と有効数字の桁数は一致する。例えば、0.1の有効数字は1桁であり、0.10の有効数字は2桁である。
本発明の一態様の組成物は、動物肉とフェネチルアセテートとを含む、容器詰組成物である。本発明の別の一態様の組成物は、動物肉とフェネチルアセテートとアラニンとを含む、容器詰組成物である。本発明の一態様の容器詰加工食品は、動物肉とフェネチルアセテートとを含む、容器詰加工食品である。本発明の一態様の容器詰加工食品は、動物肉とフェネチルアセテートとアラニンとを含む、容器詰加工食品である。本発明の一態様の組成物及び容器詰加工食品は、それ自体で、動物肉の風味が改善された組成物及び加工食品である。
本発明の一態様の組成物と本発明の一態様の容器詰加工食品とは、本発明の一態様の組成物が調味の用又は調理の用に供されることに対して、本発明の一態様の容器詰加工食品はそれ自体で喫食可能である点において相違し、その他の構成については共通する。そこで、以下では、本発明の一態様の組成物を例にとって説明することとし、本発明の一態様の容器詰加工食品については、本発明の一態様の組成物に関する説明を参照することができる。
通常、肉類を含む食品及び調味料を加熱殺菌に供すると、グラスフェッド牛のグラス臭、豚の獣臭、酸化臭、血臭(鉄臭)、生臭みを合わせた不快な臭い、鶏のブロイラー臭といった肉類の不快臭が醸し出され、肉のうま味が低減する。しかし、肉類とともに、フェネチルアセテートを含むものは、加熱殺菌に供しても、肉類の不快臭が感じられにくくなり、むしろ上質な肉類の香りが感じられるようになり、肉のうま味が向上する。このようなフェネチルアセテートの作用は、アラニンと組み合わせることにより増強される。したがって、本発明の一態様の組成物は、肉類とともに、フェネチルアセテート又はフェネチルアセテート及びアラニンを含むことにより、肉類の風味を改善するための容器詰組成物として利用できる。
肉類は食用可能な肉であれば特に限定されないが、例えば、牛、豚、鶏、羊、山羊、馬、トナカイ、スイギュウ、ヤク、ラクダ、ロバ、ラバ、ウサギ、アヒル、七面鳥、ホロホロチョウ、ガチョウ、ウズラ、カワラバトなどの動物の肉が挙げられるが、日本国において常用されている牛や豚などの畜肉及び鶏などの家禽肉が好ましく、加熱殺菌による不快臭が発生し易い牛肉、豚肉及び鶏肉がより好ましい。肉類の保存条件は特に限定されず、生肉、冷蔵肉、冷凍肉、乾燥肉など、いずれのものも用いることができる。また、肉類はこれらを炒める、焼く、煮るなどの加熱加工したものであってもよい。肉類の形態は特に限定されず、ひき肉、薄切り肉、塊肉など、いずれのものも用いることができる。肉類は、上記したものの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
一般的に、牧草飼育された輸入グラスフェッド牛の肉は、穀物飼育された和牛及び国産牛の肉に比べると、グラス臭がして、肉のうま味も劣るといわれている。しかし、本発明の一態様の組成物を利用すると、輸入グラスフェッド牛の肉は、グラス臭が感じられにくくなり、さらに肉のうま味が感じられるようになり、あたかも和牛のような風味がするようになる。また、本発明の一態様の組成物を利用すると、和牛は、それ自体の好ましい香りが一際目立つようになり、肉のうま味もさらに良いものとなる。したがって、肉類が牛肉の場合、使用する牛肉は和牛、国産牛及び輸入牛のいずれでもよいが、市場において量が多く、安価であることにより入手が容易であることから、輸入牛であることが好ましく、輸入グラスフェッド牛であることがより好ましい。
魚介類は魚肉として可食部分を有する魚介類であれば特に限定されないが、例えば、イワシ、カツオ、ブリ、ハマチ、カンパチ、ヒラマサ、タイ、マグロ、フグ、ヒラメ、アジ、サバ、ハタ、クエ、サケなどの海水魚、アユ、イワナ、ウナギ、ヤマメ、ワカサギなどの淡水魚、ホタテ、サザエ、ミル貝、赤貝、イカ、タコなどの軟体動物、エビ、カニなどの甲殻類などが挙げられるが、生食用のものとして生臭みが発生し易いイワシ、カツオ、ブリ、ハマチ、カンパチ、タイ、マグロなどの海水魚が好ましい。魚介類は、可食部である魚肉であればよく、魚肉としては生魚肉、冷蔵魚肉、冷凍魚肉、乾燥魚肉など、いずれのものも用いることができる。また、魚介類はこれらを炒める、焼く、煮るなどの加熱加工したものであってもよい。魚介類は、上記したものの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
フェネチルアセテートは、通常知られているとおりの、下記式(I)
Figure 0006937956
(I)
で示される構造からなる化合物である。
フェネチルアセテートの含有量は、動物肉の風味改善作用を発揮し得る量であればよい。後述する実施例に記載があるとおり、本発明者らが調べたところによれば、動物肉を含む調味液において、1ppb以上のフェネチルアセテートを含む場合、動物肉の風味が改善された。そこで、フェネチルアセテートの含有量の下限は、組成物の全体量に対して、1ppbである。
一方、フェネチルアセテートは、それ自体でバラ様の香りを有し、香りの閾値は3,000ppb〜3,800ppbとされている。そこで、フェネチルアセテートの含有量が多い場合、具体的には3,000ppb超過のフェネチルアセテートを含む場合、組成物に対して喫食時に所望としない花様の異質な香りを付与して好ましくない。そこで、フェネチルアセテートの含有量の上限は、組成物の全体量に対して、3,000ppbよりも少ない量の2,000ppb程度、具体的には1,500ppb未満である。
上記したフェネチルアセテートの下限及び上限を鑑みれば、フェネチルアセテートの含有量は、1ppb以上1,500ppb未満であり、より優れた動物肉の風味改善作用を発揮するためには、10ppb以上1,500ppb未満であることが好ましく、20ppb以上1,500ppb未満であることがより好ましく、20ppb〜1,000ppbであることがさらに好ましい。なお、「1ppb以上1,500ppb未満のフェネチルアセテート」とは、例えば、組成物 100gに対して、100ng以上150,000ng(=150μg)のフェネチルアセテートを意味する。
本発明者らが調べたところによれば、例えば、121.1℃、10分間の加圧加熱殺菌(Fo値10)によって、フェネチルアセテートが分解されて2割程度が分解する。そこで、フェネチルアセテートの含有量の上記範囲は、加熱殺菌する前の量であることが好ましい。また、加熱殺菌後の組成物についてフェネチルアセテートの含有量を測定した場合に、上記範囲から下回る値が特定されるとき(例えば、上記加圧加熱殺菌後の組成物中のフェネチルアセテートの含有量が0.8ppbであるとき)であっても、加熱殺菌前の値を類推適用して、フェネチルアセテートの含有量は上記範囲に含まれるとみなしてもよい。
また、動物肉に対してフェネチルアセテートを5ppb以上含む場合、動物肉の風味が改善される。そこで、フェネチルアセテートの含有量は、動物肉に対して5ppb以上7,500ppb未満であることが好ましく、より優れた動物肉の風味改善作用を発揮するためには、動物肉に対して50ppb以上7,500ppb未満であることがより好ましく、動物肉に対して100ppb以上7,500ppb未満であることがさらに好ましく、動物肉に対して100ppb〜5,000ppbであることがなおさらに好ましい。
アラニンは、通常知られているとおりのアミノ酸の一種のアラニンである。アラニンは、D−アラニン、L−アラニン及びこれらのラセミ体のいずれでもあってもよい。
アラニンの含有量は、動物肉の風味改善作用を発揮し得る量であればよい。後述する実施例に記載があるとおり、本発明者らが調べたところによれば、動物肉を含む調味液において、0.1mg/g以上のアラニンを含む場合、動物肉の風味が改善された。そこで、アラニンの含有量の下限は、組成物の全体量に対して、0.1mg/gである。
一方、アラニンは、それ自体で甘味を有する。そこで、アラニンの含有量の上限は、組成物に対して所望としない甘味を付与しない量であり、具体的には組成物の全体量に対して、65mg/gよりも少ない量である。
上記したアラニンの下限及び上限を鑑みれば、アラニンの含有量は、0.1mg/g以上65mg/g未満であり、より優れた動物肉の風味改善作用を発揮するためには、0.2mg/g〜50mg/gであることが好ましく、0.5mg/g〜30mg/gであることがより好ましく、0.6mg/g〜20mg/gであることがさらに好ましい。なお、「0.1mg/g以上65mg/g未満のアラニン」とは、例えば、組成物 100gに対して、10mg以上6,500mg(=6.5g)のアラニンを意味する。ただし、アラニンの含有量には、動物肉に含まれるアラニンの量は含まれない。
アラニンもまた、加熱殺菌により分解する可能性があることから、アラニンの含有量の上記範囲は、加熱殺菌する前の量であることが好ましい。また、加熱殺菌後の組成物についてアラニンの含有量を測定した場合に、上記範囲から下回る値が特定されるときであっても、加熱殺菌前の値を類推適用して、アラニンの含有量は上記範囲に含まれるとみなしてもよい。
また、動物肉に対してアラニンを0.5mg/g以上含む場合、動物肉の風味が改善される。そこで、フェネチルアセテートの含有量は、動物肉に対して0.5mg/g以上325mg/g未満であることが好ましく、より優れた動物肉の風味改善作用を発揮するためには、動物肉に対して1.0mg/g〜250mg/gであることが好ましく、2.5mg/g〜150mg/gであることがより好ましく、3mg/g〜100mg/gであることがさらに好ましい。
動物肉の含有量は特に限定されず、所望の風味に合わせて適宜設定できる。本発明の一態様の組成物を使用して食材を調理して得られる加工食品にしっかりとした動物肉の食感及び風味を付与したい場合は、動物肉の含有量は、例えば、組成物の全体量に対して、好ましくは1.0質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。動物肉の含有量の上限は特に限定されないが、例えば、本発明の一態様の組成物の全体量に対して、95質量%以下程度である。
本発明の一態様の組成物は、動物肉とともにしょうゆを含む場合であっても、フェネチルアセテートを含むことにより、動物肉の風味を改善することができる。しょうゆは様々な料理及び食品の調味に利用できることから、本発明の一態様の組成物は、しょうゆを含むことが好ましい。
しょうゆは、醤油、しょう油などと表記して通常知られているとおりのものであれば特に限定されず、例えば、農林水産省により示されている「しょうゆ品質表示基準」において定義付けされているものなどを挙げることができる。しょうゆの具体例としては、例えば、濃口醤油、淡口醤油、たまり醤油、再仕込醤油、白醤油、だし醤油、照り醤油、生揚げ醤油、生醤油などが挙げられるが、食材に対してしっかりとしたしょうゆ風味を付与するために濃口醤油及び淡口醤油であることが好ましい。なお、本醸造方式により得られるしょうゆは、通常、アラニンを含む。例えば、日本食品標準成分表2015年版(七訂)によると、しょうゆの種類によるアラニン量としては、濃口醤油では420mg/100g、淡口醤油では270mg/100gであることが示されている。本醸造方式により得られるしょうゆとは、例えば、加熱変性した大豆などのタンパク質原料及び加熱によりα化した小麦などのデンプン質原料の混合物に、麹菌を含む種麹を接種及び培養して製麹して醤油麹を得て、次いで得られた醤油麹を食塩水に仕込んで乳酸発酵及び熟成することにより醤油諸味を得て、次いで得られた醤油諸味を酵母発酵及び熟成することにより熟成諸味を得て、次いで得られた熟成諸味を圧搾処理やろ過処理に供することにより生醤油を得て、次いで得られた生醤油を火入れすることなどによって製造されるしょうゆが挙げられる。
しょうゆの形態は特に限定されず、液体状であっても、粉末状及び顆粒状などの固形状であっても、どちらでもよい。しょうゆは、上記したものの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。しょうゆは、しょうゆ本来の風味を有するために、例えば、HEMFの含有量は、20ppm以上であることが好ましく、30ppm以上であることがより好ましい。なお、本醸造方式により得られるしょうゆは、通常、20ppm以上のHEMFを含む。例えば、淡口醤油のHEMF含有量は20ppm以上であり、濃口醤油のHEMFの含有量は30ppm以上である。
また、後述する実施例に記載があるとおり、しょうゆ及び動物肉を含む調味液は、しょうゆに対してフェネチルアセテートを10ppb以上含む場合、動物肉の風味が改善される。そこで、フェネチルアセテートの含有量は、しょうゆに対して10ppb以上15,000ppb未満であることが好ましく、より優れた動物肉の風味改善作用を発揮するためには、しょうゆに対して20ppb以上15,000ppb未満であることがより好ましく、しょうゆに対して50ppb以上15,000ppb未満であることがさらに好ましく、しょうゆに対して50ppb〜10,000ppbであることがなおさらに好ましい。
さらに、後述する実施例に記載があるとおり、フェネチルアセテート、しょうゆ及び動物肉を含む調味液は、しょうゆに対してアラニンを1mg/g以上含む場合、動物肉の風味が改善される。そこで、アラニンの含有量は、しょうゆに対して1mg/g以上650mg/g未満であることが好ましく、より優れた動物肉の風味改善作用を発揮するためには、しょうゆに対して2mg/g〜500mg/gであることがより好ましく、しょうゆに対して5mg/g〜300mg/gであることがさらに好ましく、しょうゆに対して6mg/g〜200mg/gであることがなおさらに好ましい。
フェネチルアセテート及びアラニンは、フェネチルアセテート自体及びアラニン自体を使用してもよいし、フェネチルアセテートを含むフェネチルアセテート含有物及びアラニンを含むアラニン含有物を用いてもよい。フェネチルアセテート自体及びアラニン自体を使用する場合は、香料、食品添加物として市販されているものなどを使用することができる。
フェネチルアセテート含有物は、フェネチルアセテートを含む限り特に限定されないが、例えば、特許第6343710号に記載の方法で製造されるしょうゆなどが挙げられる。すなわち、通常のしょうゆの製造方法によって乳酸発酵を行った後に得られるしょうゆ諸味を固液分離し、さらに液体部分を珪藻土などのろ過材、UF膜及びMF膜などの各種透過膜などを用いたろ過処理に供してしょうゆ諸味液汁を得て、次いで該しょうゆ諸味液汁をしょうゆ酵母により酵母発酵に供することを含む方法により製造されるしょうゆである。このようなしょうゆはフェネチルアセテートを含むものであることから、フェネチルアセテート含有しょうゆとして使用可能である。フェネチルアセテート含有物のその他の具体例としては、清酒、吟醸酒といった日本酒などのアルコール飲料、発酵調味料などが挙げられる。
上記例示したフェネチルアセテート含有物にはアラニンが含まれている。したがって、上記例示したフェネチルアセテート含有物を、アラニン含有物として使用してもよい。また、通常の本醸造方式で得られるしょうゆは、フェネチルアセテートを含まず、アラニンを含む。そこで、通常の本醸造方式で得られるしょうゆをアラニン含有物として使用してもよい。
フェネチルアセテート含有しょうゆを用いる場合、本発明の一態様の組成物におけるしょうゆをフェネチルアセテート含有しょうゆとしてもよく、通常のしょうゆとフェネチルアセテート含有しょうゆとの混合しょうゆとしてもよい。
しょうゆの含有量は特に限定されず、所望の風味に合わせて適宜設定できる。本発明の一態様の組成物を使用して食材を調理して得られる加工食品にしっかりとしたしょうゆの風味を付与したい場合は、しょうゆの含有量は、例えば、組成物の全体量に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、なおさらに好ましくは10質量%以上である。しょうゆの含有量の上限は特に限定されないが、例えば、組成物の全体量に対して、90質量%以下程度である。
以下では、本発明の一態様の組成物の好適な態様である、動物肉、しょうゆ及びフェネチルアセテートを含む組成物を例にとって説明する。
本発明の一態様の組成物は、動物肉、しょうゆ及びフェネチルアセテートに加えて、その他の成分を含むことができる。その他の成分は特に限定されないが、例えば、食品及び調味料に使用される成分であり、具体的には、固形成分としては、食塩、糖類(砂糖、ぶどう糖、果糖、水飴、異性化液糖など)、穀類成分(パン粉、小麦粉、オートミールなど)、香辛料(生姜、唐辛子、こしょう、バジル、オレガノ、ジンジャー、ミックススパイスなど)、増粘剤(カラギーナンなどの増粘多糖類、でん粉、加工でん粉、ガム類など)、食肉加工成分(チキンパウダー、ミートパウダー、フィッシュパウダーなど)、化学調味料(グルタミン酸ナトリウム、グリシン、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムなど)、フレーバー、味噌、カレー粉などが挙げられ;液体成分としては、水、アルコール、甘味成分(みりん、液糖、水飴など)、酸味成分(食酢、りんご、ゆず、レモンといった香酸柑橘など)、油脂成分(ごま油、オリーブオイル、サラダ油、大豆油、ラー油、バター、牛脂、ラードなど)、酒類成分(ワイン、清酒など)、果汁(りんご果汁など)などが挙げられる。
本発明の一態様の組成物は、エキス、ダシ汁及び食材などを含んでもよい。
エキスとしては、例えば、鰹、鰹節、ホタテなどから得られる魚介類エキス;昆布などから得られる海藻エキス;鶏、豚、牛などの肉類から得られる肉エキス;ニンニク、生姜、椎茸などの野菜から得られる野菜エキス;酵母エキス;タンパク質加水分解物などが挙げられる。
ダシ汁としては、例えば、鰹節、宗田節、鯖節、鮪節、鰯節などの魚節類の粉砕物及び削り節、鰯、鯖、鯵、エビなどを干して乾燥した煮干し類の粉砕物、昆布、ワカメなどの海藻類、椎茸などのキノコ類などを、熱水、エタノールなどの溶媒で抽出して得られるダシ汁などが挙げられる。
食材としては、例えば、大根、玉ネギ、長ネギ、人参、牛蒡、れんこん、生姜、ニンニク、キャベツ、ピーマン、トマト、コーン、タケノコなどの野菜類;シソ、パセリ、セロリ、ニラ、ミツバなどの香辛野菜類;椎茸、マッシュルーム、エノキ、シメジなどのキノコ類;リンゴ、ナシ、キウイ、パイナップル、梅などの果実類;ゴマ、ナッツ、栗などの種実類;ひじき、昆布、ワカメなどの海藻類;卵、豆腐、油揚げ、こんにゃく、大豆たんぱくなどの加工食品などが挙げられる。これらの食材は、すりおろしたり、ペースト状にしたり、粉砕したり、細切りしたり、ダイス状、短冊状などの形状にカットしたりして、用いてもよい。
その他の成分は、上記したものなどの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。その他の成分の含有量は、本発明の課題を解決し得る限り、適宜設定することができる。その他の成分の具体例としては、例えば、本発明の一態様の組成物を肉豆腐を調理するために用いる場合には、本発明の一態様の組成物に甘味、粘性などを付与するために、食塩、砂糖、みりん、加工でん粉、牛脂、酵母エキス、昆布エキスなどが好ましく用いられる。
本発明の一態様の組成物は、その形態については特に限定されないが、例えば、容器詰調味用組成物という観点から、液状、懸濁状、ペースト状などの液性の組成物及び具の入った液性の組成物であることが好ましい。
本発明の一態様の組成物は、容器に充填して封止することにより密封した容器詰組成物である。容器は密封できる素材及び形状のものであれば特に限定されないが、例えば、アルミなどの金属、PETやPTPなどのプラスチック、1層又は積層(ラミネート)のフィルム、ガラスなどを素材とするパウチ、小袋、ボトル、缶、瓶などの包装容器が挙げられる。具体的には、ガラス瓶;内側にポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂からなる熱溶着可能な樹脂層を設け、外側にポリエステル、ポリアミドなどのガスバリア性の高い樹脂及び/又はアルミ箔などからなる層を設けて、積層加工(ラミネート加工)したフィルムでできた容器などが挙げられる。
本発明の一態様の組成物が有する、動物肉の風味を改善する作用は、例えば、アルミパウチに充填して85℃又は90℃、5分間の加熱殺菌に供した場合に、同量の動物肉を含みつつも、フェネチルアセテート及びアラニンを含まない組成物(コントロール)と比べて、動物肉の風味が改善したと感じられる作用であればよいが、好ましくは同量の動物肉及びしょうゆを含みつつも、フェネチルアセテートを含まない組成物と比べて、動物肉の風味が改善したと感じられる作用である。
動物肉の風味改善作用は、後述する実施例に記載の方法により確認できる。例えば、動物肉がグラスフェッド牛肉である場合、評価項目「和牛香」、「肉のうま味」及び「グラス臭」について官能評価を実施して、コントロールと比べて、「和牛香」を強く感じること、「肉のうま味」を強く感じること、及び「グラス臭」を弱く感じることからなる群から選ばれる少なくとも1種の評価結果、好ましくは2種の評価結果、より好ましくは3種全ての評価結果が得られる作用である。
本発明の一態様の組成物の使用量は、本発明の一態様の組成物が供すべき食材及び加工食品の種類などに応じて適宜設定でき、特に限定されない。例えば、本発明の一態様の組成物を肉豆腐を調理するために用いる場合は、豆腐 1丁(約350g)に対して、本発明の一態様の組成物 100g〜200gで使用すればよい。
本発明の一態様の組成物を製造する方法は特に限定されず、例えば、通常知られているとおりの各成分を混ぜ合わせて調味料を製造する方法などが挙げられ、具体的には動物肉、しょうゆ及びフェネチルアセテート、並びに必要に応じてその他の成分を、室温下又は加温下で撹拌処理などの混合手段に供して混合することを含む方法などを挙げることができる。動物肉及びその他の成分は、細断すること、粉砕すること、膨潤すること、加熱することなどの処理に供して、前処理したものであってもよい。
また、本発明の一態様の組成物は、保存性を考慮すれば、加熱殺菌などの殺菌処理に供されたものであることが好ましく、食品及び調味料を殺菌する際に通常採用されている条件での加熱殺菌に供された組成物であることがより好ましい。加熱殺菌は、長期保存が可能な状態に殺菌できる温度、圧力及び時間で行えばよく、特に限定されないが、例えば、常圧下又は加圧下、好ましくは常圧下で、130℃以下、1分間〜30分間で行う加熱殺菌が挙げられる。具体的には、60℃〜95℃、好ましくは80℃〜90℃で、約1〜20分間、好ましくは約5分間で行う加熱殺菌(以下、ノンレト殺菌ともよぶ。);及び100℃〜130℃、好ましくは約121.1℃で、4分間〜20分間、好ましくは約10分間で行う加熱殺菌(以下、レトルト殺菌ともよぶ。)などが挙げられる。なお、本発明の一態様の組成物の殺菌処理は、動物肉、しょうゆ、フェネチルアセテート及びその他の成分を混合した後で殺菌処理に供すること;動物肉、しょうゆ及びその他の成分を混合した後で殺菌処理に供し、これと予め殺菌処理に供したフェネチルアセテートとを混合すること;予め個別に殺菌処理に供した動物肉、しょうゆ、フェネチルアセテート及びその他の成分を混合することなど、いずれの方法を採用してもよい。
本発明の一態様の組成物は、例えば、所望の加工食品を得るために、水、糖類、野菜類、香辛野菜類、キノコ類、果実類、種実類、魚介類、海藻類、卵、食肉加工品、加工食品などの食材と混合して、常温にて、又は加熱して、調理するように使用できる。本発明の別の一態様は、本発明の一態様の組成物と食材とを原料として含む、加工食品である。
本発明の一態様の組成物とともに用いられる食材は、一口大に切断すること、焼くこと、炒めることなどの加熱することなどして、前処理したものであってもよい。本発明の一態様の組成物は、加熱殺菌による動物肉の風味の劣化を抑制し、もって加熱調理による動物肉の風味の劣化を抑制し得ることから、本発明の一態様の加工食品は、加熱調理食品であってもよい。以下では、本発明の一態様の組成物を利用して得られる加工食品について、加熱調理食品を例にとって説明するが、加工食品は加熱調理食品に限定されない。
本発明の一態様の組成物を利用して加熱調理する方法は特に限定されず、使用する食材の種類及び量、加熱調理食品の種類などに応じて適宜設定することができる。加熱調理としては、炒める、揚げる、焼く、蒸す、電子レンジを用いて加熱する、熱風により加熱する、熱水中で加熱するなどの通常の加熱調理方法が挙げられ、これらの加熱調理方法を適宜組合せて実施してもよい。加熱調理による動物肉の風味の劣化は、より高温で加熱されることになる炒め調理において顕著になる場合があることから、本発明の一態様の組成物は炒め調理に使用されることが好ましい。
本発明の一態様の組成物を利用して得られる加熱調理食品は特に限定されないが、例えば、肉豆腐、豚キムチ、鶏大根、肉じゃが、そぼろあんかけ、みぞれ炒め、みぞれ煮、オムレツ、肉野菜炒め、煮物、ゴーヤチャンプルなどが挙げられる。
本発明の一態様の組成物の具体的な使用方法としては、例えば、加熱調理食品が肉豆腐である場合は、サラダ油などの油をひいて熱したフライパンに豆腐を加えて焼き色がつく程度に炒め、次いで所望の野菜を加えて少し炒めた後、又は野菜を加えずに、本発明の一態様の組成物を加えて、数十秒〜数分間炒めることを含む方法などが挙げられる。
本発明の一態様の加工食品は、本発明の一態様の組成物と、野菜類、香辛野菜類、キノコ類、果実類、種実類、海藻類、卵、食肉加工品、加工食品などの食材とを原料として含む。本発明の一態様の加工食品は、本発明の一態様の組成物を用いて調理されたものであることにより、動物肉及びしょうゆに由来する動物肉の風味が改善された、風味が優れたものである。
本発明の一態様の加工食品の製造方法は、本発明の一態様の組成物と食材とを混合することにより、加工食品を得る工程を含む。本発明の一態様の加熱調理食品の製造方法は、本発明の一態様の組成物と食材とを混合したものを、加熱調理することにより、加熱調理食品を得る工程を含む。加熱調理食品の製造方法では、本発明の一態様の組成物と混合する前に、食材をあらかじめ炒めるなどして加熱しておくことが好ましい。本発明の一態様の加熱調理食品の製造方法によって得られる加熱調理食品は、本発明の一態様の組成物による加熱調理食品に対する調味作用を発揮せしめるために、加熱調理後速やかに、又は室温下に数分間おいた後に喫食することが好ましい。
加熱調理食品の製造方法の具体的態様としては、例えば、豆腐を用いた以下の方法などが挙げられるが、これに限定されない。すなわち、豆腐を一口大に切る。次いで、フライパンに適量の油を熱し、中火で豆腐を両面に焼き色がつくまで数分間炒め、さらに野菜類を加えて、中火で数分間炒める。次いで、本発明の一態様の組成物を加えて数十秒間〜数分間炒めることにより、肉豆腐として加熱調理食品を得る。
本発明の別の側面によれば、フェネチルアセテートが有する、動物肉の風味を改善する作用に着眼して、フェネチルアセテートを有効成分として含む、動物肉の風味改善用組成物;動物肉とフェネチルアセテートとをフェネチルアセテートの含有量が1ppb以上1,500ppb未満になるように混合することにより、動物肉の風味を改善する工程を含む、動物肉の風味の改善方法である。
本発明の別の側面によれば、フェネチルアセテート及びアラニンが有する、動物肉の風味を改善する作用に着眼して、フェネチルアセテート及びアラニンを有効成分として含む、動物肉の風味改善用組成物;動物肉とフェネチルアセテートとアラニンとを、フェネチルアセテートの含有量が1ppb以上1,500ppb未満になるように、及びアラニンの含有量が0.1mg/g以上65mg/g未満になるように混合することにより、動物肉の風味を改善する工程を含む、動物肉の風味の改善方法である。
動物肉の風味改善用組成物及び動物肉の風味の改善方法によれば、加熱殺菌に供さない、牛刺し、馬刺し、鳥刺し、魚の刺身、寿司などの生食用の動物肉に対して、生臭み、うま味といった動物肉の風味を改善することができる。
本発明の一態様の容器詰加工食品の具体例としては、上記した本発明の一態様の組成物を利用して得られる加熱調理食品を容器に詰めたものに加えて、その他の容器入りの惣菜、弁当などが挙げられるが、これらに限定されない。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
例1 フェネチルアセテートによる牛肉の風味改善作用評価
[1−1.液体調味料の調製]
100ml容メスフラスコに純度98%フェネチルアセテート(シグマアルドリッチ社) 1gを入れ、95%エタノールでメスアップして、フェネチルアセテート原液を調製した(1g/100ml)。次いで、各試験調味料に添加するフェネチルアセテート溶液を100μlに統一し、かつ各試験調味料に対するフェネチルアセテート含有量が所定の濃度になるように、フェネチルアセテート原液を水で希釈して、各フェネチルアセテート溶液を調製した。フェネチルアルコールに代えて純度98%δ−ノナラクトン(東京化成社)を用いたこと以外は、同様の方法により、ノナラクトン原液及びノナラクトン溶液を調製した。
下記表1に示す配合量で、牛ひき肉、しょうゆ(特丸)、食塩、砂糖、昆布エキス、フェネチルアセテート溶液及びノナラクトン溶液を混ぜ合わせて、全体で100gになるように水で調整することにより各試験調味液を調製した。なお、しょうゆ(特丸)は、フェネチルアセテートが検出されなかった「キッコーマン 特選丸大豆しょうゆ」(HEMF 30ppm以上;食塩13.68質量%;アラニン6.68mg/g;グルタミン酸8.77mg/g;キッコーマン食品社)を用いた。昆布エキスは、「コブコン日高P」(食塩7.2質量%;アラニン0.06mg/g;グルタミン酸0.24mg/g:キッコーマン食品社)を用いた。輸入グラスフェッド牛は、豪州産牛のもも肉(赤身率85%、5mmミンチ挽、牧草飼育)を用いた。和牛は、鹿児島県産黒毛和牛の肩肉(赤身率85%、5mmミンチ挽、穀物飼育)を用いた。
調製した試験調味液 100gをアルミパウチに充填した。これをノンレト殺菌(90℃、5分間)に供した。
Figure 0006937956
[1−2.官能評価方法]
殺菌に供した試験調味液について、肉風味の評価に秀でたパネル(A〜Cの3名)に常温で調味液の状態で匙にとって喫食させて、下記のとおりに喫食時に口腔内から鼻へぬける肉の各風味の強度を7段階で評価した。官能試験を実施するにあたり、該パネル(訓練期間:10〜20年)に対して、肉風味の討議と評価訓練を行った。肉風味の特性に対しては、パネル間で討議して、すり合わせを行うことで、各パネリストが共通認識を持つようにした。また、官能試験の妥当性を担保するために、いくつかの試験調味液を用いて、該パネルに評価訓練をさせ、各パネリストにおける評価の再現性を確認した。これらを行った後、該パネルを用いて、各試験調味液について肉風味の評価を行った。
和牛香は、口に含んだ際に感じる和牛特有の甘い香りとした。肉のうま味は、肉の脂っぽい香りがもたらす肉本来のうま味とした。グラス臭は、口に含んだ際に感じるグラスフェッド牛肉に特有の不快な臭いとした。
<和牛香>
1:極めて弱く感じる
2:非常に弱く感じる
3:やや弱く感じる
4:感じる
5:やや強く感じる
6:非常に強く感じる
7:極めて強く感じる
※ 評価基準として、コントロール(しょうゆの塩分濃度に相当する食塩をしょうゆの代わりに添加した試験区)を「1」とし、輸入グラスフェッド牛及びノナラクトン10ppmを含む試験調味液1−2を「4」とし、和牛を含む試験調味液1−10を「6」とした。
<肉のうま味>
1:極めて弱く感じる
2:非常に弱く感じる
3:やや弱く感じる
4:感じる
5:やや強く感じる
6:非常に強く感じる
7:極めて強く感じる
※ 評価基準として、コントロールを「1」とし、和牛を含む試験調味液1−10を「6」とした。
<グラス臭>
1:極めて強く感じる
2:非常に強く感じる
3:やや強く感じる
4:感じる
5:やや弱く感じる
6:非常に弱く感じる
7:感じない
※ 評価基準として、コントロールを「1」とし、輸入グラスフェッド牛及びノナラクトン10ppmを含む試験調味液1−2を「4」とし、和牛を含む試験調味液1−10を「6」とした。
[1−3.官能評価結果]
各試験調味液について、官能評価を実施した結果を表2A〜表2Cに示す。
Figure 0006937956
Figure 0006937956
Figure 0006937956
コントロールとしょうゆを含む試験調味液1−1との比較から、しょうゆを含むことにより、肉のうま味及びグラス臭は改善されたが、和牛香は付与されなかった。また、コントロール及び試験調味液1−1の両方ともに、グラス臭による肉の臭みが感じられた。
試験調味液1−1及び1−2との比較から、輸入グラスフェッド牛を含む試験調味液に対してノナラクトンを添加した場合、和牛香が改善された。しかし、グラス臭についてはわずかな改善しかみられず、肉のうま味について改善は認められなかった。また、ノナラクトンを添加した試験調味液1−2は、和牛の甘い香りは感じられるが、ココナッツ様の甘い香りがやや異質に感じられ、この香りは肉のうま味に寄与していなかった。
それに対して、試験調味液1−1及び1−3との比較から、輸入グラスフェッド牛を含む試験調味液に対してフェネチルアセテートを添加した場合、驚くべきことに、和牛香だけでなく、グラス臭及び肉のうま味についても改善が認められた。さらに、この改善作用は、添加するフェネチルアセテートの濃度依存的に向上した。
また、和牛を含む試験調味液に対してノナラクトンを添加した場合、和牛香及びグラス臭については改善が認められたものの、肉のうま味については明確な改善作用は認められなかった。特に、ココナッツ様の甘い香りがやや異質に感じられた。それに対して、和牛を含む試験調味液に対してフェネチルアセテートを添加した場合、驚くべきことに、和牛の風味がさらに向上した。
以上の結果より、以下の知見が得られた。
肉類の種類に限らず、フェネチルアセテートを添加することにより、和牛香、肉のうま味及びグラス臭が改善された。
肉風味の改善作用は、フェネチルアセテートの添加量が1ppb以上あればよく、10ppb、20ppbと添加量が多くなるごとに向上した。
δ−ノナラクトンは、和牛香を付与し、グラス臭を抑制する効果はあったが、肉のうま味を付与する効果は認められなかった。
例2 フェネチルアセテートによる豚肉の風味改善作用評価
[2−1.液体調味料の調製]
例1と同様にして、下記表3に示す配合量で、豚ひき肉、しょうゆ(特丸)、しょうゆ(淡口)、食塩、砂糖、昆布エキス、フェネチルアセテート溶液、アラニン溶液及び水を混ぜ合わせて、各試験調味液を調製し、ノンレト殺菌(90℃、5分)した。豚ひき肉は、カナダ産豚(雌雄:去勢、雌;品種:LWD)の肩肉(5mmミンチ挽)を用いた。なお、しょうゆ(淡口)は、フェネチルアセテートが検出されなかった「キッコーマン うすくちしょうゆ」(HEMF 20ppm以上;食塩15.68質量%;アラニン2.39mg/g;グルタミン酸7.54mg/g;キッコーマン食品社)を用いた。アラニン溶液は、400ml容メスフラスコに純度99.7%アラニン(武蔵野化学研究所社) 40gを入れ、水でフィルアップして、アラニン原液を調製した(100mg/g)。このアラニン原液 13gを水でフィルアップして、アラニン溶液を調製した(10mg/g)。
Figure 0006937956
[2−2.官能評価方法]
例1と同様にして、殺菌に供した試験調味液について、官能評価を実施した。豚肉の不快臭は、豚の獣臭、酸化臭、血臭(鉄臭)、生臭みを合わせた不快な臭いとした。また、豚肉の不快臭及び肉のうま味は以下の基準により評価した。
<豚肉の不快臭>
1:極めて強く感じる
2:非常に強く感じる
3:強く感じる
4:感じる
5:やや感じる
6:ほぼ感じない
7:感じない
※ 評価基準として、コントロールを「1」とし、フェネチルアセテート 20ppbを含む試験調味液2−3を「7」とした。
<肉のうま味>
1:極めて弱く感じる
2:非常に弱く感じる
3:弱く感じる
4:感じる
5:やや強く感じる
6:非常に強く感じる
7:極めて強く感じる
※ 評価基準として、コントロールを「1」とし、フェネチルアセテート 20ppbを含む試験調味液2−3を「7」とした。
[2−3.官能評価結果]
例1と同様にして、各試験調味液について、ノンレト殺菌後に官能評価を実施した。結果を表4A及び表4Bに示す。
Figure 0006937956
Figure 0006937956
表4A及び表4Bに示すように、フェネチルアセテートを含むことにより、濃度依存的に豚肉の風味は改善された。特に、フェネチルアセテートを1ppb以上含むことにより豚肉の不快臭は抑制され、豚肉のうま味が向上した。さらにフェネチルアセテートを20ppb以上含むことにより顕著に豚肉の風味が改善された。
また、フェネチルアセテートを含まない試験調味液であって、しょうゆを含む試験調味液2−1と、しょうゆに含まれる量と同程度のアラニンを含む試験調味液2−6との比較から、しょうゆの有する豚肉の風味改善作用はアラニンに依拠する可能性が高いことがわかった。さらに、アラニンの量を少なくすると、豚肉の風味改善作用は低下した。これらの結果から、フェネチルアセテートと同様に、アラニンもまた、豚肉の風味改善作用を有することがわかった。
しょうゆ及びフェネチルアセテートを含む試験調味液2−1〜2−4、並びにアラニン及びフェネチルアセテートを含む試験調味液2−7を用いた結果から、アラニン及びフェネチルアセテートを組み合わせることにより、顕著に優れた豚肉の風味改善作用が得られることがわかった。
以上の結果より、フェネチルアセテート及び/又はアラニンを添加することにより、濃度依存的に、豚肉の不快臭は抑制され、さらに肉のうま味が向上した。
例3 フェネチルアセテートによる鶏肉の風味改善作用評価
[3−1.液体調味料の調製]
例2と同様にして、下記表5に示す配合量で、鶏ひき肉、しょうゆ(特丸)、しょうゆ(淡口)、食塩、砂糖、昆布エキス、フェネチルアセテート溶液、アラニン溶液及び水を混ぜ合わせて、各試験調味液を調製し、ノンレト殺菌(90℃、5分間)した。鶏ひき肉は、国産鶏(ブロイラー;品種:(父)ホワイトコーニッシュ×(母)ホワイトプリマスロック)のむね肉(9mmミンチ挽)を用いた。
Figure 0006937956
[3−2.官能評価方法]
例1と同様にして、殺菌に供した試験調味液について、官能評価を実施した。ブロイラー臭は、若鶏特有の臭み及び鶏肉特有の獣臭を合わせた不快な臭いとした。また、ブロイラー臭及び肉のうま味は以下の基準により評価した。
<ブロイラー臭>
1:極めて強く感じる
2:非常に強く感じる
3:強く感じる
4:感じる
5:やや感じる
6:ほぼ感じない
7:感じない
※ 評価基準として、コントロールを「1」とし、フェネチルアセテート 20ppbを含む試験調味液3−3を「7」とした。
<肉のうま味>
1:極めて弱く感じる
2:非常に弱く感じる
3:弱く感じる
4:感じる
5:やや強く感じる
6:非常に強く感じる
7:極めて強く感じる
※ 評価基準として、コントロールを「1」とし、フェネチルアセテート 20ppbを含む試験調味液3−3を「7」とした。
[3−3.官能評価結果]
例1と同様にして、各試験調味液について、ノンレト殺菌後に官能評価を実施した。結果を表6A及び表6Bに示す。
Figure 0006937956
Figure 0006937956
表6A及び表6Bに示すように、フェネチルアセテートを含むことにより、濃度依存的に鶏肉の風味は改善された。特に、フェネチルアセテートを1ppb以上含むことにより鶏肉のブロイラー臭は抑制され、鶏肉のうま味が向上し、さらに余韻も感じられた。驚くべきことに、フェネチルアセテートを20ppb以上含むことにより顕著に鶏肉の風味が改善された。
また、例2と同様に、アラニンが鶏肉の風味改善作用を有すること、アラニン及びフェネチルアセテートを組み合わせることにより、顕著に優れた鶏肉の風味改善作用が得られることがわかった。
以上の結果より、フェネチルアセテート及び/又はアラニンを添加することにより、濃度依存的に、鶏肉のブロイラー臭は抑制され、さらに肉のうま味が向上した。
例4 フェネチルアセテート及びアラニンの組合せによる牛肉の風味改善作用評価(1)
[4−1.液体調味料の調製]
例1及び例2と同様にして、下記表7に示す配合量で、牛ひき肉、食塩、砂糖、昆布エキス、フェネチルアセテート溶液、アラニン溶液、ノナラクトン溶液及び水を混ぜ合わせて、各試験調味液を調製し、ノンレト殺菌(90℃、5分間)した。
Figure 0006937956
[4−2.官能評価結果]
例1と同様にして、各試験調味液について、ノンレト殺菌後に官能評価を実施した。なお、評価基準として、コントロールを「1」とした。結果を表8A〜表8Cに示す。
Figure 0006937956
Figure 0006937956
Figure 0006937956
まず、フェネチルアセテート及びアラニンを含まず、ノナラクトンを単独で含む試験調味料4−3は、和牛香及びグラス臭の改善がみられたものの、肉のうま味の改善効果はほとんどみられなかった。
試験調味液4−1、4−2、4−5及び4−6の比較から、ノナラクトンとともにフェネチルアセテート又はアラニンを含む場合、肉のうま味及びグラス臭が改善されるものの、これらはフェネチルアセテート又はアラニンを単独で含むものと同程度であった。
それに対して、試験調味液4−1、4−2及び4−4の比較から、フェネチルアセテート及びアラニンを含むものは、フェネチルアセテート又はアラニンを単独で含むものと比べて、顕著に肉のうま味及びグラス臭を改善した。
以上の結果をまとめると、ノナラクトンは牛肉の風味改善作用を有するものの、フェネチルアセテート又はアラニンと組み合わせても作用が増強されなかったのに対してフェネチルアセテート及びアラニンの組合せは、それぞれ単独に比べて作用が増強された。したがって、フェネチルアセテート及びアラニンの組合せによる牛肉の風味改善作用は、相加的というよりも、むしろ相乗的であることがわかった。
例5 フェネチルアセテート及びアラニンの組合せによる牛肉の風味改善作用評価(2)
[5−1.液体調味料の調製]
例1及び例2と同様にして、下記表9に示す配合量で、牛ひき肉、しょうゆ(淡口)、しょうゆ(特丸)、食塩、砂糖、昆布エキス、フェネチルアセテート溶液、アラニン溶液、アラニン原液及び水を混ぜ合わせて、各試験調味液を調製し、ノンレト殺菌(90℃、5分間)した。
Figure 0006937956
[5−2.官能評価結果]
例1と同様にして、各試験調味液について、ノンレト殺菌後に官能評価を実施した。なお、評価基準として、コントロールを「1」とした。結果を表10A〜表10Cに示す。
Figure 0006937956
Figure 0006937956
Figure 0006937956
表10A〜表10Cに示すように、アラニンを含むことにより、濃度依存的に肉のうま味が改善した。また、アラニンを0.67mg/g以上含むことにより、グラス臭が改善した。しかし、アラニンには和牛香の付与作用が認められなかった。
また、アラニン及びフェネチルアセテートを組み合わせることにより、アラニンの供給源がしょうゆであるか否かにかかわらず、牛肉の風味改善作用が向上した。ただし、アラニンを65mg/gで含む試験調味液5−16は、アラニン濃度が高くなるにつれ、アラニン由来の甘味が残った。
なお、コントロール及び試験調味液5−1〜5−3を121.1℃、10分間(Fo値10)のレトルト殺菌したところ、ノンレト殺菌同様に、コントロールと比較して。フェネチルアセテートの添加量が1ppb以上あることで和牛香の向上、グラス臭の改善及び肉のうまみの向上の各効果が確認された。また。10ppb、20ppbと添加量が多くなるごとに各効果は向上した。
例6 淡口しょうゆにアラニンを添加したことによる牛肉の風味改善作用評価
[6−1.液体調味料の調製]
例1及び例2と同様にして、下記表11に示す配合量で、牛ひき肉、しょうゆ(淡口)、砂糖、昆布エキス、フェネチルアセテート溶液、アラニン溶液及び水を混ぜ合わせて、各試験調味液を調製し、ノンレト殺菌(90℃、5分間)した。
Figure 0006937956
[6−2.官能評価結果]
例1と同様にして、各試験調味液について、ノンレト殺菌後に官能評価を実施した。結果を表12A〜表12Cに示す。
Figure 0006937956
Figure 0006937956
Figure 0006937956
表12A〜表12Cに示すように、しょうゆ(淡口)にアラニンを加えることにより、アラニンの濃度依存的に肉のうま味が改善した。また、アラニンの量が0.67mg/g以上含むことにより、グラス臭が改善した。しかし、アラニンによっては、和牛香は改善しなかった。
例5の結果と合わせると、しょうゆ(淡口)としょうゆ(特丸)とでは、含有するアミノ酸の組成が相違するものの、アラニン量によって同等の牛肉の風味改善作用が得られることがわかった。
例7 生肉の風味改善作用評価
[7−1.液体調味料の調製]
下記表13に示す配合量で、しょうゆ(特丸)及び例1と同様に調製したフェネチルアセテート溶液を混ぜ合わせて、各試験調味液を調製した。
Figure 0006937956
[2−2.官能評価方法]
生食用の肉及び魚の風味の評価に秀でたパネル(A〜Cの3名)に、常温で生食用の肉及び魚を各試験調味液につけて喫食させて、下記のとおりに喫食時に口腔内から鼻へぬける肉及び魚の各風味の強度を5段階で評価した。官能試験を実施するにあたり、該パネル(訓練期間:10〜20年)に対して、肉及び魚の風味の討議及び評価訓練を行った。肉及び魚の風味の特性に対しては、パネル間で討議して、すり合わせを行うことで、各パネリストが共通認識を持つようにした。また、官能試験の妥当性を担保するために、いくつかの試験調味液をつけた肉及び魚を用いて、該パネルに評価訓練をさせ、各パネリストにおける評価の再現性を確認した。これらを行った後、該パネルを用いて、各試験調味液をつけた肉及び魚について風味の評価を行った。
生食用の肉及び魚として、牛刺し(国産生食用冷凍品)、馬刺し(国産生食用冷凍品)及びかつお(国産生食用冷蔵品)を用いた。生食用の肉及び魚の生臭み及びうま味について、以下の以下の基準により評価した。
<肉・魚の生臭み>
1:非常に強く感じる
2:強く感じる
3:やや感じる
4:ほぼ感じない
5:感じない
※ 評価基準として、コントロールを「1」とした。
<肉・魚のうま味>
1:非常に弱く感じる
2:弱く感じる
3:やや強く感じる
4:強く感じる
5:非常に強く感じる
※ 評価基準として、コントロールを「1」とした。
[7−3.官能評価結果]
生食用の肉及び魚を各試験調味液につけて喫食して、官能評価を実施した結果を表14A〜表14Cに示す。
Figure 0006937956
Figure 0006937956
Figure 0006937956
牛や馬の生肉は、酸臭及び血液臭がまざった動物特異的な生臭みがする。フェネチルアセテートを添加した試験調味液により、牛刺し及び馬刺しの生臭い香りが抑えられ、うま味が強く感じられた(表14A及び表14Bを参照)。
かつおなどの魚類の内臓及び血肉にはジメチルアミンが含まれている。魚類に付着していた微生物がジメチルアミンを分解しながら繁殖することで、生臭いにおいの原因となるトリメチルアミンが発生し、結果として青くさい生臭い香りがする。フェネチルアセテートを添加した試験調味液により、かつお刺身の生臭い香りが抑えられ、うま味を強く感じ、獲れたての新鮮な魚の風味が感じられた。
以上の結果より、フェネチルアセテートは、生食用の肉及び魚の風味改善作用を有することがわかった。
なお、生肉及び加熱肉において、不快臭の成分は共通する場合がある。例えば、肉の脂質による酸化臭は,生肉でも感じられるが、加熱肉においてより強く感じられる。また、カルボニル化合物もまた、生肉及び加熱肉の両方に存在し、嗜好性の低下を導く(例えば、渡辺乾二ら、日本畜産学会報、45巻、(1974)、3号を参照)。また、魚の生臭みは、揮発性カルボニル、低級脂肪酸、揮発性含硫黄化合物などに起因するとされているところ、これらの大部分は生肉にも含まれる(例えば、太田静行、油化学、第29巻、(1980)、第7号を参照)。
例8 しょうゆ非存在下での魚肉の風味改善作用評価
[8−1.液体調味料の調製]
表3のコントロールの配合を参考にして、下記表15に示す配合量で、魚肉(ちりめんじゃこ)、食塩、砂糖、昆布エキス、フェネチルアセテート溶液及びアラニン溶液を混ぜ合わせて、全体で100gになるように水で調整することにより各試験調味液を調製した。
Figure 0006937956
調製した試験調味液 100gをそれぞれアルミパウチに充填した。これをレトルト殺菌(121.1℃、10分間(Fo値10))に供した。
評価基準用の液体調味液として、コントロールと同じ配合のものを2個用意し、一方はレトルト殺菌(121.1℃、10分間(Fo値10))に供し、他方は85℃に達温して殺菌した。
[8−2.官能評価方法]
レトルト殺菌に供したコントロール及び試験調味液301〜303について、魚肉の不快臭及び魚肉のうま味の嗅ぎ分けに秀でたパネル(A〜Cの3名)に常温で調味液の状態で匙にとって喫食させて、下記のとおりに喫食時に口腔内から鼻へぬける魚肉の不快臭(魚の生臭い香り、ムレ臭、えぐみ、及び苦味)及び魚肉のうま味を評価させた。なお、評価では、評価対象サンプルと同時に、ネガティブコントロール(レトルト殺菌に供したコントロール)及びポジティブコントロール(80℃達温品)を対照サンプルとしてパネルに提示させ、効果の有無を確認させた。
[8−3.官能評価結果]
試験調味液301及び302は、アラニン又はフェネチルアセテートを含むことにより、魚肉の風味は改善され、魚肉のうま味も向上した。
また、アラニン及びフェネチルアセテートの両方を含む試験調味料303は、ポジティブコントロールと同様の魚肉風味を有し、さらに魚肉のうま味も試験調味液301及び302よりも強く感じ、その効果が顕著であった。それに対して、コントロールの試験調味液は魚肉の不快臭を感じ、魚肉のうま味も不十分であった。
以上の結果より、フェネチルアセテート及びアラニンは、しょうゆを含まない調味液においても、魚肉風味改善作用及び魚肉うま味向上作用を有することがわかった。
本発明の一態様の組成物、加工食品及び容器詰加工食品は、動物肉の風味が改善されたものとして、工業的生産が可能なものであり、かつ、飲食店での提供が可能なものであることから、様々なシーンで利用される調味料及び食品として有用なものである。本発明の一態様の方法及び動物肉の風味改善用組成物は、本発明の一態様の組成物を得るためなどに利用可能である。

Claims (8)

  1. 肉類及び魚介類からなる群から選ばれる少なくとも1種の動物肉及びしょうゆを含みかつフェネチルアセテートの含有量が1ppb以上1,500ppb未満である、容器詰組成物。
  2. さらに0.1mg/g以上65mg/g未満のアラニンを含む、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記組成物は、前記動物肉に対する前記アラニンの含有量が0.5mg/g以上325mg/g未満である、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記組成物は、前記しょうゆに対する前記アラニンの含有量が1mg/g以上650mg/g未満である、請求項2〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 前記組成物は、前記動物肉の風味改善用組成物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 前記組成物は、加熱殺菌に供された組成物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
  7. 前記組成物は、前記動物肉に対する前記フェネチルアセテートの含有量が5ppb以上7,500ppb未満である、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
  8. 前記組成物は、前記しょうゆに対する前記フェネチルアセテートの含有量が10ppb以上15,000ppb未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
JP2021085253A 2020-05-22 2021-05-20 容器詰組成物及びその使用並びに容器詰加工食品 Active JP6937956B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021137783A JP2021184747A (ja) 2020-05-22 2021-08-26 容器詰組成物及びその使用並びに容器詰加工食品

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020089845 2020-05-22
JP2020089845 2020-05-22

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021137783A Division JP2021184747A (ja) 2020-05-22 2021-08-26 容器詰組成物及びその使用並びに容器詰加工食品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6937956B1 true JP6937956B1 (ja) 2021-09-22
JP2021182910A JP2021182910A (ja) 2021-12-02

Family

ID=78028310

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021085253A Active JP6937956B1 (ja) 2020-05-22 2021-05-20 容器詰組成物及びその使用並びに容器詰加工食品
JP2021137783A Pending JP2021184747A (ja) 2020-05-22 2021-08-26 容器詰組成物及びその使用並びに容器詰加工食品

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021137783A Pending JP2021184747A (ja) 2020-05-22 2021-08-26 容器詰組成物及びその使用並びに容器詰加工食品

Country Status (1)

Country Link
JP (2) JP6937956B1 (ja)

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6435097B2 (ja) * 2013-02-05 2018-12-05 キッコーマン株式会社 トマト含有調味料
KR102139018B1 (ko) * 2017-05-25 2020-07-28 지앙난대학교 고수율 β-페닐에탄올의 양조 효모 균주 및 이의 용도

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021182910A (ja) 2021-12-02
JP2021184747A (ja) 2021-12-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7024054B2 (ja) 容器詰調味用組成物及びその使用並びに容器詰加工食品
TW202108015A (zh) 新穎發酵調味料組合物
JP2004242586A (ja) 加工食品、加工食品の副合製品又はジュース類の製造方法
CN101584444A (zh) 杂辣椒的生产加工工艺
JP2022127549A (ja) 加熱劣化臭の抑制方法、加熱劣化臭が抑制された容器詰組成物及び加熱劣化臭抑制用組成物
JP6924317B2 (ja) 大豆タンパク加工品及び大豆タンパク加工品を含む食品
KR101190171B1 (ko) 고춧가루를 함유한 조미료 조성물
US20190142042A1 (en) Pasta sauce and method for producing same
JP6937956B1 (ja) 容器詰組成物及びその使用並びに容器詰加工食品
JP6568717B2 (ja) 煮付け用調味液
JP6098814B2 (ja) 味噌調味材及びその製造方法、並びに調味ソース及びその製造方法
EP3738444B1 (en) Ingredient-containing liquid seasoning in hermetically sealed container
JP6968721B2 (ja) 畜肉加熱調理用組成物、畜肉入りレトルト食品、畜肉入りレトルト食品の加熱臭抑制方法、及び畜肉入りレトルト食品の製造方法
WO2021235521A1 (ja) 容器詰組成物及びその使用並びに容器詰加工食品
JP2004350507A (ja) 唐辛子の糀醤油漬食用たれ及び該たれの製造方法
WO2022176979A1 (ja) 香りの優れた醤油及び醤油様調味料、並びに加熱劣化臭の抑制方法、加熱劣化臭が抑制された容器詰組成物及び加熱劣化臭抑制用組成物
JP2020124144A (ja) アスタキサンチン含有ソース
JP7431364B1 (ja) 風味付与用組成物
JP2018057373A (ja) 植物性食材用組成物及び植物性食材の調理方法
JP2013042738A (ja) 加工食品
JP3827289B2 (ja) 液状調味料セット
CN116963616A (zh) 香味优良的酱油和酱油样调味料、以及加热劣化气味的抑制方法、加热劣化气味得到了抑制的容器装组合物和用于抑制加热劣化气味的组合物
JP2013042736A (ja) 野菜入り酸性加工食品

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210806

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210806

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20210806

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210817

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210831

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6937956

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R157 Certificate of patent or utility model (correction)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R157

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250