JP6435097B2 - トマト含有調味料 - Google Patents

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Description

洋食のみならず和風・中華風料理にも使用できる、トマトの色素成分を含有するトマト含有調味料に関する。
トマトは、野菜の中で最も多く栽培されており、生食だけでなく調味料としても世界中で広く食され人々の健康増進に貢献している。トマトは栄養成分としてグルタミン酸、クエン酸、糖を含んでいる。また、近年トマトの色素成分であるリコピンは、強い抗酸化活性・細胞間コミュニケーション強化・アポトーシス正常化などの機能性を有することが明らかとなり、注目を集めている(例えば、非特許文献1参照)。
リコピンを初めとするトマトの色素成分は一般的に水に不溶であり、トマトの細胞内に含有されているため、生食用トマトよりも、加熱などの加工工程を経て細胞が壊れやすくなっているトマトペーストの方が、摂食後の体内における吸収が高いことが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。トマトペーストを使用した代表的な調味料としてはトマトケチャップが挙げられ、そのリコピンの含有量は14.64〜21.32mg%であることが報告されている(例えば、非特許文献3参照)。
このように、トマトは多種類の栄養成分だけでなく、健康機能を有する色素成分(リコピン、αカロテン、βカロテン、γカロテン、δカロテン等)を含有し、様々な料理に広く使えることから、世界中で消費されている。世界における1人当りのトマトの消費量は17.9(kg/年)である。一方で、日本における1人当りのトマトの消費量は9.0(kg/年)であり、日本においてトマトを摂取する機会は世界と比較して未だ少ない(例えば、非特許文献4参照)。
調味料としてトマトケチャップは日本の食卓に定着したが、用途は洋風料理(一部、中華料理)に限られるため、使用量は伸びていない。そこで、日本の食習慣の中でトマトまたはトマト由来の色素成分を摂取する機会を増やすため、様々なトマト加工品が開発されている。
調味料としては、(1)トマト酢(例えば、特許文献1参照)、(2)トマトケチャップと海苔を利用した調味料(例えば、特許文献2参照)が開示されている。(1)はトマト酢特有の青臭みを解消するトマト酢の製造方法に関するが、用途はトマト酢に限られ、リコピンを含有する調味料の風味を改善する目的には適さない。(2)はトマトケチャップと海苔を利用した調味料に関するが、海苔自体が特有の磯臭さを有するため、一部の食品との相性は良いものの、肉や魚への、つけかけ用途では生臭さが感じられ、汎用性は不十分であった。
飲料としては、(3)トマトが有する青臭い臭気を抑えたトマト果汁含有飲料(例えば、特許文献3参照)、(4)発酵トマト飲料(例えば、特許文献4参照)、(5)トマト果汁含有アルコール飲料(例えば、特許文献5参照)が開示されている。(3)では、トマト果汁含有液にポリフェノール類を添加することで、青臭い臭気であるヘキサナールを改善することを目的としている。(4)では、トマト原料にワイン酵母を添加し発酵させることで、飲み口と香気に優れ、リコピンを含有する発酵飲料を提供することを目的としている。(5)ではトマト果汁を乳酸菌で発酵させ、トマトの青臭い香りを除いた後、清澄トマト果汁とアルコールと混合し、安定化リコピンを添加することで、香味品質が改善され、オリの発生及び色調の変化の抑えられたトマト果汁含有アルコール飲料を提供することを目的としている。
これらの方法により、トマト果汁含有飲料におけるトマトの青臭さや、リコピンの安定化において改善が見られるものの、調味料のように食材と合わせて食した際に生じる不快臭・不快味を防ぐ目的に対しては検討されておらず、効果は不十分であった。
一方、酵母のアルコール発酵によって生じるエステル類の香気成分としてカプロン酸エチル、カプリル酸エチル、酢酸フェネチルが知られている。カプロン酸エチル、カプリル酸エチルは果実香を有し、吟醸酒の吟醸香として広く知られており、日本酒や焼酎においてこれらの生産量を高める方法が開示されている(例えば、特許文献6,7参照)。酢酸フェネチルは花や果実の香りを有することで知られ、この酢酸フェネチルを含む、果実または花様香気物質を生産する能力を有する微生物を用いる食品の香味改善方法(例えば、特許文献8参照)が開示されている。しかし、トマトを含有する調味料において、他の食材と合わせて食した際に生じる不快臭・不快味を防ぐ検討はなされていなかった。
従来のトマト加工品に加え、さらにこれらを改良しようとする取り組みは一定の効果を上げていると考えられるが、リコピン等のトマトの色素成分を含有し、洋風料理や中華料理だけでなく、和風料理など幅広い食品に適したトマト含有調味料は開発されていなかった。また、トマト含有調味料と、様々な食材とを合わせて食した際に生じる不快臭・不快味を防ぐために、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、酢酸フェネチルを含有させることで汎用性を高めたという報告はなかった。
特開2008−11711号公報 特開2000−152767号公報 特開2006−141260号公報 特開2005−176727号公報 特開2008−212070号公報 特開2002−253211号公報 特開平7−255456号公報 特開平4−78260号公報
日本食品保蔵科学会誌,第33巻,第3号,143〜157(2007) American Journal of Clinical Nutrition,66,116〜122(1997) 発酵と醸造〔III〕,第1版,光琳,310〜317(2004) FAO Statistics Division(2009)
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、様々な食材と合わせて食した際に発生する不快味・不快臭を低減させ、洋風料理や中華料理だけでなく、和風料理など幅広い食品に適したトマト含有調味料を提供することにある。
本発明者らは、ケチャップに代わるトマト含有調味料として、トマトと、和食に広く用いられる麹由来原料とを混合した新規トマト含有調味料を検討した。さらに、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、一定濃度以上となるようにトマトを含有させた調味料においては、従来まで知られているようなトマトのヘキサナール由来の青臭い香りではなく、口に含み咀嚼した後に生じる甘い香り(以下、トマトの口腔香という)が、野菜や魚などの食材と合わせて食した際に、野菜の青臭さ・えぐ味や、魚の生臭さを引き立たせていることを見出した。そこで、トマトの口腔香をマスキングする成分を探索した結果、驚くべきことに、カプロン酸エチルおよび/またはカプリル酸エチルおよび/または酢酸フェネチルを一定濃度以上含有する際に、トマトの口腔香をマスキング可能であり、さらに前記成分を含有するトマト含有調味料が、洋風・中華料理だけでなく、和風料理に適した汎用性の高い調味料となることを見出した。また、上記成分を含有する麹由来原料をトマトに添加する方法、または麹由来原料を添加した後に、上記成分が一定濃度以上に達するまで発酵する方法で得られた調味料であっても、同様のトマトの口腔香に対するマスキング効果が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
1)カプロン酸エチルおよび/またはカプリル酸エチルおよび/または酢酸フェネチルを含有し、トマトの色素成分を含有することを特徴とするトマト含有調味料、
2)カプロン酸エチル0.05ppm以上および/またはカプリル酸エチル0.09ppm以上および/または酢酸フェネチル0.15ppm以上含有することを特徴とする、上記1)に記載のトマト含有調味料、
3)リコピンを5mg%(w/v)以上含有することを特徴とする、1)〜2)のいずれかに記載のトマト含有調味料、
に関する。
本発明によれば、従来のトマトケチャップでは不快味・不快臭が発生して適さなかった野菜や魚などの食材や、これらの食材を用いた調理において、トマト含有調味料を美味しく使用することができるようになる。また、トマトケチャップが使われている洋風料理用途または中華料理の用途にとどまらず、和風料理の用途にも用いることが可能となるため、様々な食事の場面で使用することが可能となり、トマト成分摂取の機会が増えることで消費者の健康を増進する面からも、非常に有用な調味料である。
各調味料使用時の焼いた肉より検出されたヘキサナールのピーク面積値を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、トマトの口腔香をマスキングした汎用性の高いトマト含有調味料を得ることを目的とし、該調味料中にカプロン酸エチルおよび/またはカプリル酸エチルおよび/または酢酸フェネチルの各成分を含有させることを特徴とする。ここで、本発明における各成分の濃度(ppm)は、ミリグラム毎リットル(mg/l)である。
本発明は、簡便には上記各成分をトマト含有調味料へ添加することにより得られる。また、トマト含有調味料へ上記の各成分を含有する麹由来原料を添加することや、トマト含有調味料を酵母発酵させることにより、上記各成分を所望の量含有させた調味料とすることもできる。
例えば、
(1)トマトに、カプロン酸エチルおよび/またはカプリル酸エチルおよび/または酢酸フェネチルを添加する方法、
(2)トマトと、上記各成分を所望量含有するように添加した、あるいは発酵した麹由来原料を混合する方法、
(3)トマトと麹由来原料を混合し、上記各成分が所望量となるまで発酵する方法、
によって本発明のトマト含有調味料が得られる。
本明細書における「トマト」とは、果実のトマトだけでなく、加工されたトマト原料として、トマト果汁やダイストマト、トマトピューレ、トマトペースト、トマトエキス等を含む。トマト果汁は、トマトの果実を破砕して搾汁または裏ごし等をし、皮、種子等を除去し、加熱殺菌などを経て得られる。ダイストマトは、トマトの果実の皮、種子等を除去し、ダイス状に切り、加熱殺菌したものをいう。トマトピューレやトマトペーストは、トマト果汁を濃縮したものをいう。濃縮方法としては、制限無く公知の加熱による濃縮、真空濃縮、凍結濃縮、膜濃縮などが用いられる。トマトエキスは、リコピンが多く含有された濃縮トマト果汁を適宜希釈し、色素やパルプ分を除く遠心分離や精密膜ろ過などを実施して得られた透過液を、さらに濃縮したものをいう。トマトとしては、トマトの色素成分を多く含有するトマトピューレまたはトマトペーストが特に好ましい。各種トマトは色素成分以外の呈味や風味を考慮して組み合わせて用いることができる。
トマトの、糖度計や屈折計によって測定されるBrix(糖度)は5〜80%(w/w)であることが好ましく、10〜60%(w/w)であることが特に好ましい。濃度が薄すぎると、色素成分量が少なくなることがあるため好ましくない。濃度が濃すぎると、調味料としての呈味のバランスが損なわれることがある。従って、Brixが80%(w/w)を超える場合は、上記に示す濃度範囲になるように、水などで希釈することで原材料として用いることができる。
トマト含有調味料中の、トマトの配合量は5〜95%(w/w)であることが好ましく、8〜60%(w/w)であることが特に好ましい。配合量が5%未満では、トマトの色素成分量が少なくなるため好ましくない。また95%を超えると果実感が強くなり、調味料としての風味のバランスが損なわれるため好ましくない。
トマト含有調味料中の、トマト色素成分の濃度は、代表的な色素成分としてリコピンやカロテン類(αカロテン、βカロテン、γカロテン、δカロテンなど)を指標とすることができる。リコピンであれば1〜200ppmであることが好ましく、5〜40ppmの範囲であることが特に好ましい。トマトの代表的色素成分として、調味料中のリコピン濃度が1ppm未満の場合は、摂取可能な色素成分量が少なくなり好ましくない。200ppmを超えると、成分の風味が強くなり、調味料としての味のバランスを損なうため好ましくない。色素成分を添加する際には、市販の純品のほか、色素成分を含有する食用可能な原料(例えば、果汁、野菜汁、酒、果実酒、色素、香辛料、野菜・果実濃縮物、溶媒抽出物、乾燥物、食品添加物、発酵物等)を用いてもよい。また、上記色素成分以外にも、トマト由来のファイトエン、ファイトフルエン等の色素前駆体や、ルテイン、ゼアキサンチンなど色素から誘導される物質についても考慮することができる。
カプロン酸エチルの調味料中の濃度は、0.05〜9ppmであることが好ましく、0.2〜5ppmの範囲であることが特に好ましい。調味料中のカプロン酸エチル濃度が0.05ppm未満の場合は、口腔香のマスキング効果は十分ではない。0.05ppm以上の場合に、口腔香のマスキング効果が向上し、0.2ppm以上ではさらに顕著なマスキング効果の向上が見られる。10ppm以上になると成分の香りが強くなり、香りのバランスを損なうため好ましくない。カプロン酸エチルを添加する際には、市販の純品のほか、カプロン酸エチルを含有する食用可能な原料(例えば、果汁、野菜汁、酒、果実酒、香料、香辛料等)を用いてもよい。
カプリル酸エチルの調味料中の濃度は、0.09〜9ppmであることが好ましく、0.2〜5ppmの範囲であることが特に好ましい。調味料中のカプリル酸エチル濃度が0.09ppm未満の場合は、口腔香のマスキング効果は十分ではない。0.09ppm以上の場合に、口腔香のマスキング効果が向上し、0.2ppm以上ではさらに顕著なマスキング効果の向上が見られる。10ppm以上になると成分の香りが強くなり、香りのバランスを損なうため好ましくない。カプリル酸エチルを添加する際には、市販の純品のほか、カプリル酸エチルを含有する食用可能な原料(例えば、果汁、野菜汁、酒、果実酒、香料、香辛料等)を用いてもよい。
酢酸フェネチルの調味料中の濃度は、0.15〜9ppmであることが好ましく、0.3〜5.1ppmの範囲であることが特に好ましい。調味料中の酢酸フェネチル濃度が0.15ppm未満の場合は、口腔香のマスキング効果は十分ではない。0.15ppm以上の場合に、口腔香のマスキング効果が向上し、0.3ppm以上ではさらに顕著なマスキング効果の向上が見られる。10ppm以上になると成分の香りが強くなり、香りのバランスを損なうため好ましくない。酢酸フェネチルを添加する際には、市販の純品のほか、酢酸フェネチルを含有する食用可能な原料(例えば、果汁、野菜汁、酒、果実酒、香料、香辛料等)を用いてもよい。
カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、酢酸フェネチルは、調味料中に単独で含有されていても良く、組み合わせて含有されていても良い。上記3成分から選ばれる2成分以上の成分がバランス良く含まれている時は、相乗的にマスキング効果の向上がみられ、よりバランスの良い風味の調味料が得られるため好ましい。
本明細書における「麹由来原料」とは、その原料に麹そのもの、もしくは麹と食塩水を混和後に得られる諸味や、乳酸菌による乳酸発酵後の諸味、酵母による酵母発酵後の諸味、発酵熟成を終えた諸味を含み、さらに果汁、エキス類、ペースト類、だし類、調味料、発酵調味料、酸味料、香料等を混合したもの、またはこれらを混合後さらに発酵、熟成、裏ごし、火入れのいずれかの工程を経て得られる原料をいう。醤油麹に由来する醤油諸味や、豆麹・米麹・麦麹に由来する米みそ・麦みそ・豆みそ・調合みそが麹由来原料として好ましく、特に酵母発酵中または酵母発酵後または発酵・熟成後の醤油諸味が麹由来原料として好ましい。
<麹の調製>
麹は、公知の醤油・味噌用麹の製造方法に従い、得られる麹であれば良い。例えば、大豆、脱脂加工大豆等の蛋白質原料を加熱変性したものと、麦類(小麦、大麦、裸麦、はと麦)を炒熬・割砕したものまたは米類等の澱粉質原料を加熱変性したものとを混合し、該混合物の水分を35〜50%(w/w)に調整した後、これにAspergillus oryzae、Aspergillus sojae等の種麹を接種する。20〜40℃で2〜4日間培養して麹が得られる。
蛋白質原料の加熱変性は蒸煮により行われることが好ましいが、これに制限されることなく、連続膨化処理、気流式膨化処理、アルコール処理、エクストルーダーなどの変性処理を用いることができる。
麦類の加熱変性は炒熬・割砕により行なわれることが好ましいが、これに制限されることなく、連続膨化処理、気流式膨化処理、アルコール処理、エクストルーダーなどの変性処理を用いることができる。米類の加熱変性は蒸煮または炊飯により行なわれることが好ましい。
蛋白質原料と麦類および/または米類等の澱粉質原料の配合比率については、特に制限は無く、日本農林規格で定められる、米みそ、麦みそ、豆みそ、調合みそ、こいくちしょうゆ、うすくちしょうゆ、たまりしょうゆ、しろしょうゆ等で用いられている配合比率を用いることができる。より好ましくは蛋白質原料:澱粉質原料=30〜70%:30〜70%(v/v)の範囲で行なわれる。
麹を食塩水で仕込むことで醤油諸味が得られる。醤油諸味の食塩濃度は6〜20%(w/v)となる濃度が好ましく、10〜18%(w/v)がより好ましい。
<乳酸発酵>
麹を食塩水で仕込むことで得られた醤油諸味は、乳酸菌を添加して、あるいは非添加で15〜25℃の温度にて乳酸発酵を行う。本発明における乳酸発酵に用いられる乳酸菌としては、公知に醤油・味噌醸造に用いられているTetragenococcus halophilus等の耐塩性乳酸菌が好ましい。乳酸発酵開始時の醤油諸味は通常pH5.5〜6.5であり、乳酸発酵完了後の醤油諸味はpH4.2〜5.4である。
<酵母発酵>
乳酸発酵を完了した醤油諸味は、酵母を添加して、25〜30℃の温度にて酵母発酵を行う。本発明における酵母発酵に用いられる酵母としては、公知に醤油・味噌醸造に用いられているZygosaccharomyces rouxii、Zygosaccharomyces bailli、Candida etchellsii、Candida verstilis等の耐塩性酵母が好ましい。
酵母添加後の醤油諸味は、酵母の増殖を旺盛にするため、一定期間諸味を好気条件下で発酵させることが好ましい。好気条件下に保つためには、諸味に酸素または空気を通気する、プロペラ攪拌機を使用する等の方法が好ましい。
酵母の増殖は、寒天培養法により菌数を計数する他、諸味中のエタノール量を、ガスクロマトグラフ法を用いて測定することで確認することができる。醤油諸味の場合はエタノールが0.5〜2.5%となった際に好気条件下での酵母発酵を終えることが好ましい。
好気条件下での酵母発酵を終えた醤油諸味はさらに静置し、酵母・乳酸菌による発酵を継続し、その後熟成させることで、熟成を終えた醤油諸味が得られる。
醤油諸味は殺菌を行ってもよい。殺菌は、火入れと呼ばれる加熱殺菌工程を経る。火入れは公知の醤油製成過程で行なわれている加熱条件を用いればよい。好ましくは60〜90℃で20〜60分間、もしくは105〜130℃で5〜20秒間加熱し、その後冷却する。
<トマトと麹由来原料の混合>
麹由来原料にトマトを添加し発酵・熟成させる際に、トマトは、麹由来原料として乳酸発酵を終えた醤油諸味、または好気的条件下で酵母発酵中の醤油諸味、または好気的条件下での酵母発酵を終えて熟成途上の醤油諸味、または熟成を終えた醤油諸味、味噌等へ混合することが好ましい。好気的条件下での酵母発酵を終えた醤油諸味(発酵開始後約2ヶ月経過した諸味)または発酵熟成を終えた醤油諸味(発酵開始後4ヶ月以上経過した諸味)へ混合し発酵することがより好ましい。添加する時期が早過ぎると、醤油諸味における原料溶出や乳酸発酵が阻害されるため好ましくない。
<トマト添加後の食塩濃度、pH>
麹由来原料にトマトを添加した「トマト諸味」の食塩濃度は6.0〜20.0%(w/v)が好ましく、8.0〜15.0%(w/v)がより好ましい。トマト諸味では、食塩濃度が6.0%(w/v)未満では腐敗の危険性が高まるため好ましくない。反対に20.0%(w/v)を超えると酵母発酵が阻害されるため好ましくない。食塩濃度は、適宜食塩を添加・混合することにより、上記濃度範囲となるように調整することができる。
トマト諸味のpHは3.0〜6.0であることが好ましくpH3.5〜5.0であることが特に好ましい。pH3.0未満では酵母発酵が阻害され、pH6.0を超えると腐敗の危険性が高まるため好ましくない。上記のpH範囲より外れた場合には、適宜食品製造に使用可能な任意のpH調整剤でpHを調整することにより、発酵を促進させることもできる。
<トマト諸味の発酵>
トマト諸味は、酵母による発酵を効率よく行わせる観点から20〜35℃の温度において発酵を行うことが好ましい。醤油諸味中に醤油酵母が添加されていれば、トマト添加時に新たに酵母や特殊な酵母を添加しなくてもよいが、特に制限されることなく、発酵経過に応じて上述の酵母や乳酸菌を追加して添加することもできる。またトマト諸味を熟成させる目的で、香りが劣化しにくい10〜25℃の温度においてさらに熟成を行うことができる。
トマト諸味の発酵・熟成期間は1〜60日間程度が好ましく、1〜30日間がより好ましく、1〜20日間が特に好ましい。醤油諸味等に含有される酵母は、トマト諸味においても旺盛に生育し、上記各成分の他、同時にエタノールや各種の香気成分を生成する。
発酵熟成させて得られたトマト諸味は、カプロン酸エチルおよび/またはカプリル酸エチルおよび/または酢酸フェネチルの各成分が発酵により増加し、トマト含有調味料を使用した際の不快な口腔香に対するマスキング効果が高く、風味のバランスに優れ、汎用性の高い調味料となる。これらの成分が生成されているかは、定法に従ってガスクロマトグラフ法により定量することで確認することができる。発酵は、これら各成分の濃度が上述の濃度範囲に達したことを確認した後、終了することができる。発酵終了の決定に際しては、上記各成分以外にも、麹菌の酵素や、醤油酵母・醤油乳酸菌による発酵・熟成中のメイラード反応によって生じる成分も考慮することができる。
発酵を終了したトマト諸味は、一般成分分析、香気成分分析を行い、成分を調整することができる。この際pHや塩分、エタノール濃度、グルタミン酸濃度、香気成分濃度、トマト色素濃度を適宜調整してもよい。好ましくはpHが3.0〜6.0、塩分が6.0〜18.0%となるように調整することが好ましい。
発酵・熟成を終了したトマト諸味は、裏ごしまたは微細化処理または磨砕処理を行ってもよい。これらの方法としては、制限なく従来公知の裏ごし機、摩砕機、粉砕機、ホモジェナイザーなどを用いることができる。トマト諸味はさらに殺菌を行う。殺菌は、前述の火入れを行なえば良い。殺菌後、トマト含有調味料が得られる。
本発明のトマト含有調味料は、和風・洋風・中華風を問わず、様々な食材と共に、つけたり、かけたり、調理に使用することが可能である。また任意の飲食品に配合することができる。例えば、味噌、もろみ風調味料、しょうゆ、しょうゆ加工品、みりん、つゆ、たれ、和風だし、洋風だし、中華だし、ドレッシング、ケチャップ、トマトソース、パスタソース、ウスターソースおよびその他ソース等の調味料、パン類、麺類、冷凍食品、レトルト食品、フリーズドライ食品、乳製品、スープ類、各種発酵食品等の任意の加工食品に添加して用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。
<各種成分のトマト諸味への添加>
トマト含有調味料の対照品として、脱脂大豆と小麦より調製された脱脂大豆醤油諸味(キッコーマン食品社製、脱脂大豆:小麦=50:50(w:w)、5ヶ月発酵のもの)とトマトペースト(日本デルモンテ社製、トルコ産)を50:50(w:w)となるように混合した。トマトペースト2000g、脱脂大豆醤油諸味2000g、食塩40gを混合後、しょうゆ酵母等を添加せず、速やかに80℃達温30分間の殺菌を行なうことで酵素や酵母による発酵反応を停止した。この対照品にカプロン酸エチル、カプリル酸エチル、酢酸フェネチルをそれぞれ添加・混合し、試験品1−1〜1−18を調製した。
<各種成分を添加したトマト含有調味料の官能評価>
トマト含有調味料の口腔香を評価するため、キュウリと鮭のソテーを調製し、官能評価に用いた。キュウリと鮭のソテーは下記の方法に従い用意した。官能評価は、訓練され識別能力を有するパネル5名による評点法で行った。
<キュウリの調製>
市販のキュウリを購入し、洗浄後、約1cm角のダイス状にカットした。パネルが任意の量の対照品または試験品をダイス状キュウリに付け、官能評価を行った。
<鮭ソテーの調製>
サラダ油(日清オイリオグループ社製)15mlをフライパンで加熱し、生鮭(北海道産)100gを約5分間加熱調理した。パネルが任意の量の対照品または試験品をカットした鮭ソテー20gに付け、官能評価を行った。
キュウリの青臭さの評価、鮭の生臭さの評価、口腔香の総合評価について、上記のように用意した対照品または試験品を食材に付け、口腔内で咀嚼した際に生じる口腔香を評価した。評点は下記の基準に従った。試験結果を表1に示す。
(キュウリの青臭さの評価)
1:口腔内で感じる青臭さが、調味料をつける前よりかなり強くなる
2:口腔内で感じる青臭さが、調味料をつける前より強くなる
3:口腔内で感じる青臭さが、調味料をつける前と同等
4:口腔内で感じる青臭さが、調味料をつける前より弱くなる
5:口腔内で感じる青臭さが、調味料をつける前よりかなり弱くなる

(鮭の生臭さの評価)
1:口腔内で感じる生臭さが、調味料をつける前よりかなり強くなる
2:口腔内で感じる生臭さが、調味料をつける前より強くなる
3:口腔内で感じる生臭さが、調味料をつける前と同等
4:口腔内で感じる生臭さが、調味料をつける前より弱くなる
5:口腔内で感じる生臭さが、調味料をつける前よりかなり弱くなる

(口腔香の総合評価)
1:対照品のほうが、とても好ましい
2:対照品のほうが、やや好ましい
3:同等
4:試験品のほうが、やや好ましい
5:試験品のほうが、とても好ましい
Figure 0006435097
表1の官能評価結果より、トマト含有調味料において、酢酸フェネチルは0.15ppm以上、カプロン酸エチルは0.05ppm以上、カプリル酸エチルは0.09ppm以上を含有させることで、不快な口腔香がマスキングされ、総合評価の向上が見られた(試験品1−1、1−6、1−11)。また、酢酸フェネチルとカプリル酸エチル、カプロン酸エチルが共に含有されるときには、さらに口腔香の改善効果が高まった(試験品1−16〜18)。酢酸フェネチルは10.1ppm、カプロン酸エチルは10ppm、カプロン酸エチルは10.04ppmを超えて含有させると、成分由来の香りが強くなり、不快な口腔香のマスキング効果はみられるものの、口腔香の総合評価において評価が下がった(試験品1−5、1−10、1−15)。
<トマト諸味の調製>
トマトとしてトルコ産トマトペースト(日本デルモンテ社製、Brix30−32%(w/w))を、麹由来原料として醤油諸味を用意した。醤油諸味は脱脂大豆と小麦より調製された脱脂大豆醤油諸味(キッコーマン食品社製、脱脂大豆:小麦=50:50(w:w)、5ヶ月発酵のもの)、脱脂大豆醤油諸味をパルパーフィニッシャー(ヤエス社製、型式HC−1)により定法に従い裏ごしした裏ごし脱脂大豆醤油諸味、丸大豆と小麦より調製された丸大豆醤油諸味(キッコーマン食品社製、丸大豆:小麦=50:50(w:w)、2ヶ月発酵のものと5ヶ月発酵のもの)を用いた。トマトペーストと醤油諸味は50:50(w:w)となるように混合した。さらに食塩を加え、しょうゆ酵母としてZygosaccharomyces rouxiiを約1/10 cfu/gとなるように加えよく混合し、4040gずつトマト諸味を仕込んだ。対照品は実施例1と同様にして調製した。対照品と各試作品の配合を表2に示す。
Figure 0006435097
<トマト諸味の発酵・熟成>
諸味品温を25〜30℃に保持し、4時間(試験品2−3)または7日間(試験品2−1〜2−2、2−4〜2−5)通気攪拌し、酵母発酵を行った。さらに諸味品温を25〜30℃に保持し発酵・熟成させた(試験品2−1〜2−2、2−4〜2−5)。
4時間〜18日間の発酵で得られたトマト諸味について80℃達温30分間の火入れを行い試験品2−1〜2−5のトマト含有調味料を得た。
<一般成分分析>
トマト含有調味料の一般成分分析は、しょうゆ試験法(財団法人、日本醤油研究所編、昭和60年(1985年)3月1日発行)記載の方法に従い分析を行った。
<リコピンの分析>
新・食品分析法(光琳社、(社)日本食品科学工学会編纂、1996年、p.644〜646)記載の方法に従った。すなわちサンプル1gを量り取り25mLに超純水でメスアップし、よく攪拌した。1mLをガラス管に取り、抽出液(アセトン:ヘキサン=40:60)4mLを加え、10分間攪拌した。遠心分離後、上清2mLをディスポーザブルチューブに分取した。抽出液2mLを加え、同様にして攪拌、遠心分離、分取を2回繰り返し、得られた色素抽出液について、分光光度計で663、645、505、453nmの吸光度を測定後、文献記載の方法に従い定量した。
<香気成分分析>
酢酸フェネチル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチルはヘッドスペースGC−MSを用いた標準添加法にて分析定量した。試料として対照品または試験品10mlをバイアル瓶に2本ずつ入れた。既知濃度の上記成分を1本の試料入りバイアル瓶に入れ、上記成分未添加の試料入りバイアル瓶と合わせて用意した。ヘッドスペースサンプラ(Agilent Technologies社製、G1888)にそれぞれセットし、分析を行った。
分析条件は下記のようにして行った。
測定機器: Agilent Technologies社製、6890N GC + 5973MSD
カラム: DB−WAX(Agilent Technologies社製、60m×内径0.25mm×膜厚0.5μm)
昇温条件: 40℃、3分保持後、3℃/分の速度で220℃まで昇温
注入モード: スプリットレスモード
キャリアガス: ヘリウム、流速1.5ml/分
測定モード: SIMモード
検出された標品ピークの面積値から検量線を作成し、濃度を算出した。前記3成分の検出下限濃度は0.01ppm以下であった。比較品として、対照品に使用したトルコ産トマトペーストの香気成分を分析した。
<官能評価>
官能評価は、訓練され識別能力を有するパネル5名による評点法で行った。実施例1と同様にして、キュウリの青臭さの評価、鮭の生臭さの評価、口腔香の総合評価を行った。
対照品および試験品の一般成分分析値、香気成分分析値、官能評価結果を表3に示す。
Figure 0006435097
表3に示す香気成分分析値より、トマトと麹由来原料として醤油諸味を混合後、発酵・熟成させることにより、酢酸フェネチル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチルを含有するトマト含有調味料が得られた。リコピンは22.9〜29.3mg/100g含有されていた。酢酸フェネチルは0.16〜0.81ppm、カプロン酸エチルは0.33〜0.77ppm、カプリル酸エチルは0.09〜1.98ppmとなり、対照品・比較品と比較して顕著に高くなっていることが分かる。
表3に示す官能評価結果より試験品2−1〜2−5は対照品と比較して、顕著に不快な口腔香をマスキングし、好ましい風味を呈することが分かる。
脱脂大豆醤油諸味を使用した場合(試験品2−2)と、丸大豆醤油諸味を使用した場合(試験品2−4、試験品2−5)で官能評価結果に大きな差は見られなかったが、パネルのコメントとして「丸大豆醤油諸味を使用した試験品2−5はより風味がまろやかである」「味噌っぽさが感じられる」などが挙げられた。
丸大豆醤油諸味を使用し、短時間発酵した試験品2−3についても、上記3香気成分は十分に含有されており、不快な口腔香のマスキング作用を有していた。これは、短時間の発酵であっても酵素や酵母の発酵により香気成分が生成したことや、上記3香気成分が使用した丸大豆醤油諸味に含有されていたことなどが考えられた。
試験品2−1のように裏ごしした脱脂大豆醤油諸味を使用した場合も香気成分は裏ごししなかったものと大きな差は無かった。物性としては大豆・小麦の粒が少ない滑らかなペースト状の調味料が得られた。なお、試験品2−2のように脱脂大豆醤油諸味とトマトペーストを混合・発酵後に、試験品2−1と同様に裏ごしすることも可能であった。
<濃度を変えたトマト諸味の調製>
トマトとして米国産トマトペースト(日本デルモンテ社製、Brix32−36%(w/w))を、麹由来原料として醤油諸味は実施例1で用いた丸大豆醤油諸味(キッコーマン食品社製、丸大豆:小麦=50:50(w:w)、5ヶ月発酵のもの)を用いた。トマトペーストの配合量が8%(w/w、試験品3−1)、24%(w/w、試験品3−2)、40%(w/w、試験品3−3)、59%(w/w、試験品3−4)となるように混合した。さらに食塩を加え、しょうゆ酵母としてZygosaccharomyces rouxiiを約1/10 cfu/gとなるように加えよく混合し、トマト諸味を仕込んだ。対照品は実施例1と同様にして調製した。対照品と各試作品の配合を表4に示す。
Figure 0006435097
<トマト諸味の発酵・熟成>
諸味品温を25〜30℃に保持し、7日間通気攪拌することで酵母発酵を行った。さらに諸味品温を25〜30℃に保持しさらに23日間発酵・熟成させた。
30日間の発酵で得られたトマト諸味について80℃達温30分間の火入れを行い試験品3−1〜3−4のトマト含有調味料を得た。
一般成分分析、リコピンの分析、香気成分分析、官能評価は実施例1と同様にして実施した。対照品および試験品の各種分析値、官能評価結果を表5に示す。
Figure 0006435097
表5に示す香気成分分析値のように、トマトと醤油諸味を混合後、発酵・熟成させることにより、酢酸フェネチル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチルを含有するトマト含有調味料が得られた。リコピンは7.3〜36.2mg/100g含有されていた。酢酸フェネチルは0.33〜0.72ppm、カプロン酸エチルは0.14〜0.33ppm、カプリル酸エチルは0.68〜1.66ppmとなり、対照品と比較して顕著に高くなっていることが分かる。
表5に示す官能評価結果より試験品3−1〜3−4は対照品と比較して、顕著に不快な口腔香をマスキングし、好ましい風味を呈することが分かる。
以上の結果より、トマトと麹由来原料を混合・発酵させ、酢酸フェネチルおよび/またはカプロン酸エチルおよび/またはカプリル酸エチルを含有させることにより、リコピン等のトマト色素を含有し、不快な口腔香をマスキングできるトマト含有調味料を得られることが示された。
<試作品2−2を用いた調理試験>
和風、中華風、洋風料理における本発明のトマト含有調味料の調理適性を評価した。和風料理として肉じゃが、つけかけを、中華風料理としてマーボー豆腐、つけかけを、洋風料理としてパスタ、ドレッシングを試験した。訓練され識別能力を有するパネル8名により、官能評価を行った。
<マーボー豆腐の試験>
表6に記載の材料を用意した。耐熱容器にキッチンペーパーを敷いて豆腐を入れ、ラップをせずに電子レンジ(600W)で2分30秒加熱し、2cm角に切った。フライパンにサラダ油を熱し、にんにく、しょうが、赤唐がらし、豆板醤を炒め、ひき肉を加えてパラパラになるまで炒めた。市販品を使用する場合は甜麺醤、酒、しょうゆを加え混ぜ、水・鶏がらスープを加えて煮立て、豆腐を加え30秒ほど煮た。試作品2−2を使用する場合は、甜麺醤・酒・しょうゆ・鶏がらスープを使用せず、試作品2−2のみで味を調えた。最後にねぎ、花山椒をふり、水溶き片栗粉でとろみをつけ、ごま油を回しかけた。器に盛り、万能ねぎを散らし、官能評価に供した。
Figure 0006435097
<肉じゃがの試験>
じゃがいもは4cm大に切り、玉ねぎは1cm幅のくし形に切った。鍋に油を温め、玉ねぎ、豚肉を炒めた。じゃがいもを加えてさらに炒め、だし汁・水を加え、沸騰したら中火にして煮た。最後にみりんと丸大豆しょうゆまたは試験品2−2を加え、5分煮て味をしみ込ませ完成とした。お椀型の容器に取り分け、官能評価に供した。
Figure 0006435097
<パスタの試験>
玉ねぎをみじん切りにした。フライパンにオリーブオイルを熱し、玉ねぎを軽く色づくまで炒め、ひき肉も加えてさらに炒めた。トマトソース(日本デルモンテ社製 基本のトマトソース)を加えて4〜5分煮た後、塩・こしょうで味を調え、これをミートソースとした。試作品2−2を使用した場合は、トマト缶(日本デルモンテ社製、ダイストマト)と共に砂糖、にんにく、試作品2−2を加えて同様にして煮た。スパゲティは6〜7分茹でた後、器に盛り、前述のミートソースをかけ、官能評価に供した。
Figure 0006435097
<ドレッシングの試験>
表9に示す材料を混合し、もろみドレッシングを得た。1cm角のダイス上に切ったキュウリ、大根、ニンジンと共にドレッシングを官能評価に供した。
Figure 0006435097
<つけかけの試験>
冷凍餃子(味の素社製、ギョーザ)、冷凍春巻き(ニチレイ社製、春巻き)を説明書に従い解凍した。官能評価パネルは任意の量の試作品2−2をつけ、官能評価に供した。
嗜好性に関する官能評価結果を表10に示す。
Figure 0006435097
表10の結果より、マーボー豆腐のように、これまでトマトが使われてこなかった中華風料理についても、トマト含有調味料であれば違和感無く使用できることが示された。また驚くべきことに、本発明のトマト含有調味料には花山椒などの香辛料の風味を立たせる作用があることが分かった。このことから、アジア・エスニック・インド料理など、スパイスを多く使用する調理にも応用可能であることが考えられる。
和風料理として肉じゃがについても、これまでトマトが使われることは無かったが、本発明のトマト含有調味料であれば違和感無く使えることが示された。つけかけでは、餃子・春巻きにつけて食したところ、サッパリと食べられると評価したパネルが多かった。トマトをこうした料理につけることはこれまで無かったが、トマト含有調味料であれば、日本の食卓に見られる各種惣菜について、つけかけにも用途を広げられることが示された。
洋風料理としてパスタについては、これまでトマトが使用されてきたミートソースについて、本発明のトマト含有調味料も合わせて違和感なく使えることが示された。パネルからは「ミートソース中の肉の味を引き立たせる」「ミートソースの旨味やコク、風味の広がりが増す」などのコメントがあった。またドレッシングについても、トマト含有調味料を違和感無く使えることが示された。
<試作品2−2のオフフレーバー低減効果の評価>
牛100%の挽肉(オーストラリア産牛肉)に、調味料として(1)16%食塩水+3%エタノール、(2)こいくちしょうゆ(キッコーマン食品社製)をそれぞれ6.4ml、(3)試作品2−2を6.4mlに相当するように比重で合わせた7.7gを加え、良くこねた。こねた肉(肉パテ)を8g計量し、丸め、軽く押して俵状にしたものを、8分間フライパンで焼いた。粗熱が取れた後、小袋に小分けにし、測定まで冷凍保存した。測定日に肉パテを解凍し、80℃の水浴にて肉パテを温めた。
分析は内部標準を1,2−ジクロロベンゼンとし、焼いた肉のオフフレーバーとしてよく知られているヘキサナール(Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety,Vol.5,18−25(2006))についてGC/MSによる分析を行った。
肉8gに対して64mlの蒸留水を加えて破砕したサンプル10gをバイアルに入れて、TWISTER(GERSTEL社製、100%ポリジメチルシロキサン(PDMS)をコーティングさせた攪拌子、膜厚0.5mm、長さ10mm)をサンプルに触れないように1本入れて蓋をし、50℃で2時間サンプルを撹拌しながら、ヘキサナールを吸着させた。TWISTERをバイアルから取り出し、加熱脱着システム(型式MPS−TDU、GERSTEL社製)にセットし、GC/MSシステムに導入し、下記の条件で分析に供した。得られたヘキサナールのピーク面積を内部標準のピーク面積で割ることで補正し、各調味料を練りこんだ肉を焼くことにより生じたヘキサナールの面積値を比較した。
<分析条件>
測定機器: アジレント・テクノロジーズ社製(型式5975C)
カラム: HP−INNOWAX(Agilent Technologies社製、60m×内径0.25mm×膜厚0.5μm)
温度プログラム: 40℃、2分保持後、5℃/分の速度で240℃まで昇温
注入モード:スプリットレス
キャリアガス: ヘリウム、流速1.8ml/min
測定モード: Scanモード
各調味料使用時の焼いた肉パテのヘキサナール量について、そのピーク面積を図1に示す。食塩とエタノールを加えた肉パテに比べ、こいくちしょうゆと試験品2−2を使用した際に、オフフレーバーの生成量は顕著に抑えられていた。特に試験品2−2は、こいくちしょうゆよりもさらに強くオフフレーバーの生成を抑制していることが示された。ヘキサナールは肉に含まれる油の酸化によって生じることが知られている。本発明のトマト含有調味料は、香気成分を含有しているだけでなく、抗酸化成分としてリコピンやカロテン類、クエン酸等の成分も含んでおり、これらの成分が複合的に働き、加熱調理時や保存中に生じる脂質酸化に由来する不快臭を抑える効果が強くなったことが推察された。以上より、本発明のトマト含有調味料は、口腔内で食材とトマトを合わせた時に生じる不快臭をマスキングするだけでなく、焼いた肉など加熱調理時に発生するオフフレーバーの生成を抑える機能が高いことが示された。
以上より、本発明のトマト含有調味料は、口腔内で食材とトマトを合わせたときに生じる不快臭をマスキングし、和・洋・中の各種料理に適しているだけでなく、香辛料の風味を増す、油物をサッパリ食べられる、脂質酸化に伴い生じる不快臭を低減する、旨味・風味・コクが増すなどの有用な調理機能を有していることが示された。

Claims (2)

  1. トマト、醤油諸味及び公知に醤油・味噌製造に用いられている耐塩性酵母を含むトマト諸味の酵母発酵物であるトマト含有調味料であって、
    カプロン酸エチル0.05ppm以上および/またはカプリル酸エチル0.09ppm以上および/または酢酸フェネチル0.15ppm以上を含有し、トマトの色素成分を含有することを特徴とするトマト含有調味料。
  2. リコピンを5mg%(w/v)以上含有することを特徴とする、請求項1に記載のトマト含有調味料。
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